(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173323
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及びヘッドユニットの故障診断方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091667
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小杉 康彦
(72)【発明者】
【氏名】松林 友大
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EA20
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB50
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC28
2C056EC69
2C056EC79
2C056HA52
2C057AF61
2C057AG44
2C057AL25
2C057AP14
2C057AP34
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】信頼性が高められた液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、第1プリントヘッドの温度を示す第1温度信号を取得し、第1温度信号に基づく温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、温度情報信号に基づいて、プリントヘッドの状態を判定する状態判定回路と、を備え、第1プリントヘッドは、第1振動板に対して第1積層方向の他方側に位置し、第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、第1温度信号として出力する第1温度検出部を有し、状態判定回路は、第1温度信号に応じた第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、第1温度信号に応じた第1圧力室の温度が第1所定値を超えていない場合、第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する、液体吐出装置。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す第1温度信号を取得し、前記第1温度信号に基づく前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
前記温度情報信号に基づいて、前記第1プリントヘッドの状態を判定する状態判定回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、前記第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記状態判定回路は、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを備え、
前記温度情報出力回路は、前記第2プリントヘッドの温度を示す第2温度信号を取得し、前記第1温度信号と前記第2温度信号と基づく前記温度情報信号を出力し、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を取得し、前記第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記状態判定回路は、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えている場合、前記第2圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記状態判定回路が、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定した場合、前記第1プリントヘッドは、液体を吐出せず、前記第2プリントヘッドは、前記第1プリントヘッドを補完する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
報知部を有し、
前記報知部は、前記状態判定回路が、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定した場合、前記第1プリントヘッドの異常を報知する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記状態判定回路は、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値よも低い第2所定値未満の場合であって、前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第2所定値以上の場合、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する伝搬経路に異常が生じたと判定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記状態判定回路が、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する前記伝搬経路に異常が生じたと判定した場合、前記第1プリントヘッドは、液体を吐出せず、前記第2プリントヘッドは、前記第1プリントヘッドを補完する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
報知部を有し、
前記報知部は、前記状態判定回路が、前記伝搬経路に異常が生じたと判定した場合、前記伝搬経路の異常を報知する、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有する第1プリントヘッドを備えたヘッドユニットの故障診断方法であって、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定する工程と、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する工程と、
を含むことを特徴とするヘッドユニットの故障診断方法。
【請求項9】
前記ヘッドユニットは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記
第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を取得し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有する第2プリントヘッドを備え、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えている場合、前記第2圧力室に貯留される液体が不足していると判定する工程と、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のヘッドユニットの故障診断方法。
【請求項10】
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値よも低い第2所定値未満であって、前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第2所定値以上の場合、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する伝搬経路に異常が生じていると判定する工程を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のヘッドユニットの故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びヘッドユニットの故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有する液体吐出ヘッドを備え、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで、圧力室に供給された液体をノズルから吐出する液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体を吐出する液体吐出装置の信頼性をさらに高めるとの観点において、特許文献1に記載の技術のみでは十分でなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す第1温度信号を取得し、前記第1温度信号に基づく前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
前記温度情報信号に基づいて、前記第1プリントヘッドの状態を判定する状態判定回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、前記第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記状態判定回路は、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する。
【0006】
本発明に係るヘッドユニットの故障診断方法一態様は、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記
第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有する第1プリントヘッドを備えたヘッドユニットの故障診断方法であって、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定する工程と、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】プリントヘッドの構造を示す分解斜視図である。
【
図3】プリントヘッドをZ軸に沿って見た場合の平面図である。
【
図8】温度情報出力回路の構成の一例を示す図である。
【
図9】状態判定回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.液体吐出装置の構造
[液体吐出装置の構造]
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態の液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド22を搭載したキャリッジ21が走査軸に沿って往復動し、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに所望画像を形成する所謂シリアル印刷方式のインクジェットプリンターである。また、液体吐出装置1における媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。なお、液体吐出装置1は、シリアル印刷方式のインクジェットプリンターに限るものではなく、ライン印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。また、液体吐出装置1は、インクジェットプリンターに限るものではなく、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出装置、立体造形装置、及び捺染装置等であってもよい。
【0010】
ここで、以下の説明では、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸を用い
て説明を行う。また、以下の説明において、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿った方向の向きを特定する場合、図示するX軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+X側、起点側を-X側と称し、図示するY軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Y側、起点側を-Y側と称し、図示するZ軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Z側、起点側を-Z側と称する。
【0011】
図1に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、移動ユニット30、搬送ユニット40、及びインク容器90を備える。
【0012】
インク容器90には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。このようなインクが貯留されるインク容器90としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0013】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、ヘッドユニット20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0014】
ヘッドユニット20は、キャリッジ21、及び複数のプリントヘッド22を含む。キャリッジ21は、後述する移動ユニット30に含まれる無端ベルト32に固定されている。複数のプリントヘッド22は、キャリッジ21に搭載されている。また、複数のプリントヘッド22のそれぞれには、制御ユニット10が出力する制御信号Ctrl-H、及び駆動信号COMが入力される。さらに、複数のプリントヘッド22のそれぞれには、インク容器90に貯留されているインクが、不図示のチューブ等を介して供給される。プリントヘッド22は、入力される制御信号Ctrl-H及び駆動信号COMに基づいて、インク容器90から供給されるインクを吐出する。このとき、プリントヘッド22がインク吐出するZ軸に沿った方向であって、Z軸に沿って-Z側から+Z側に向かう方向を吐出方向と称する場合がある。
【0015】
移動ユニット30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、X軸に沿って延在し、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ21がX軸に沿って移動する。すなわち、移動ユニット30は、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22をX軸に沿って往復動させる。ここで、以下の説明において、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22が移動するX軸に沿った方向を走査方向と称する場合がある。
【0016】
搬送ユニット40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、媒体Pを挟持した状態で、搬送モーター41の動作に従って回転する。これにより、搬送ローラー42に挟持された媒体PがY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送される。すなわち、搬送ユニット40は、媒体PをY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送させる。ここで、以下の説明において、媒体Pが搬送される-Y側から+Y側に向かう方向を搬送方向と称する場合がある。
【0017】
以上のように構成された液体吐出装置1は、移動ユニット30が、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動を制御するとともに、搬送ユニット40が、媒体Pの搬送方向に沿った方向に搬送を制御する。そして、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動と媒体Pの搬送方向への搬送とに連動して、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド22がイ
ンクを吐出する。その結果、プリントヘッド22が吐出するインクを媒体Pの任意の表面に着弾させることができ、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0018】
[吐出モジュールの構造]
次に、ヘッドユニット20が有するプリントヘッド22の構造の一例について説明する。
図2は、プリントヘッド22の構造を示す分解斜視図であり、
図3は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であり、
図4は、
図3に示すA-a断面を示す断面図であり、
図5は、
図4の要部の詳細を示す要部詳細図であり、
図6は、
図3に示すB-b断面を示す断面図である。
【0019】
図2に示すように、プリントヘッド22は、圧力室基板310、連通板315、ノズルプレート320、コンプライアンス基板345、後述する振動板350、後述する圧電素子60、保護基板330、ケース部材340、及び配線基板420を有する。
【0020】
圧力室基板310は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。
図3に示すように、圧力室基板310には、複数の圧力室312がY軸に沿って並ぶ圧力室列が、X軸に沿って2列配置されている。ここで、2列の圧力室列のうち、+X側に位置する圧力室列を第1圧力室列と称し、第1圧力室列の-X側に位置する圧力室列を第2圧力室列と称する場合がある。なお、
図3は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であるが、圧力室基板310の周辺構成を図示し、保護基板330、ケース部材340等の図示を省略している。
【0021】
また、各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸に沿った位置が同じ位置となるように、Y軸に沿った直線上に配置されている。そして、Y軸に沿って互いに隣り合う圧力室312は、
図6に示す隔壁311によって区画されている。もちろん、圧力室312の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿って並ぶ複数の圧力室312の配置が、各圧力室312を1つ置きにX軸に沿った方向においてずれて位置する所謂千鳥配置であってもよい。
【0022】
また、本実施形態の圧力室312は、+Z側から見た平面視においてX軸に沿った方向の長さがY軸に沿った方向の長さよりも長い、所謂長方形に形成されている。もちろん、+Z側からの平面視における圧力室312の形状は、長方形に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。ここで、オーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれる。
【0023】
図2に示すように、圧力室基板310の+Z側には、連通板315と、ノズルプレート320及びコンプライアンス基板345とが積層されている。
【0024】
図2、
図4、及び
図5に示すように、連通板315には、圧力室312とノズル321とを連通するノズル連通路316が設けられている。また、連通板315には、複数の圧力室312が連通する共通液室となるマニホールド400の一部を構成する第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318が設けられている。第1マニホールド部317は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部318は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通することなく、+Z側の面に開口して設けられている。
【0025】
さらに、連通板315には、圧力室312のX軸に沿った方向の一方の端部に連通する供給連通路319が、圧力室312の各々に独立して設けられている。供給連通路319は、第2マニホールド部318と各圧力室312とを連通し、マニホールド400内のイ
ンクを各圧力室312に供給する。
【0026】
連通板315としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。なお、連通板315は、熱膨張率が圧力室基板310と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、圧力室基板310及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因して圧力室基板310及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0027】
ノズルプレート320は、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。ノズルプレート320には、各圧力室312にノズル連通路316を介して連通するノズル321が形成されている。
【0028】
本実施形態では、プリントヘッド22は複数のノズル321を有し、複数のノズル321は、Y軸に方向に沿って並んで配置されている。具体的には、ノズルプレート320には、複数のノズル321が列設されたノズル列がX軸に沿った方向に離れて2列で設けられている。この2列のノズル列が、第1圧力室列、第2圧力室列にそれぞれ対応している。また、各列の複数のノズル321は、X軸に沿った方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なお、ノズル321の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿った方向に並んで配置されるノズル321は、1つ置きにX軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0029】
ノズルプレート320の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらに、ノズルプレート320の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などであってもよい。ただし、ノズルプレート320は、連通板315の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、ノズルプレート320及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因してノズルプレート320及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0030】
コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320とともに、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。このコンプライアンス基板345は、ノズルプレート320の周囲に設けられ、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318の開口を封止する。コンプライアンス基板345は、可撓性を有する薄膜からなる封止膜346と、金属等の硬質の材料からなる固定基板347と、を含む。そして、固定基板347のマニホールド400に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部348となっている。このため、マニホールド400の一方面は、可撓性を有する封止膜346のみで封止されたコンプライアンス部349となっている。
【0031】
一方、圧力室基板310のノズルプレート320等とは反対側、すなわち-Z側の面には、振動板350と、この振動板350を撓み変形させて圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電素子60とが積層されている。換言すると、振動板350は、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられ、圧力室基板310は振動板350に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられている。なお、
図4は、プリントヘッド22の全体構成を説明するための図であり、圧電素子60の構成については簡略化している。
【0032】
さらに、圧力室基板310の-Z側の面には、圧力室基板310と略同じ大きさを有す
る保護基板330が接着剤等によって接合されている。保護基板330は、圧電素子60を保護する空間である保持部331を有する。保持部331は、Y軸に沿った方向に並んで配置された圧電素子60の列毎に独立して設けられた空間であって、X軸に沿った方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板330には、X軸に沿った方向に並んで配置された2つの保持部331の間にZ軸に沿った方向に貫通する貫通孔332が設けられている。
【0033】
また、保護基板330上には、複数の圧力室312に連通するマニホールド400を圧力室基板310とともに画成するケース部材340が固定されている。ケース部材340は、-Z側からの平面視において上述した連通板315と略同一形状を有し、保護基板330に接合されるとともに、上述した連通板315にも接合されている。
【0034】
このようなケース部材340は、保護基板330側に、圧力室基板310及び保護基板330を収容可能な深さの空間である収容部341を有する。収容部341は、保護基板330の圧力室基板310に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部341に圧力室基板310及び保護基板330が収容された状態で、収容部341のノズルプレート320側の開口面が連通板315によって封止されている。
【0035】
また、ケース部材340には、X軸に沿った方向における収容部341の両外側のそれぞれには、第3マニホールド部342が画成されている。そして、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318と、第3マニホールド部342と、によってマニホールド400が構成されている。マニホールド400は、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられており、各圧力室312とマニホールド400とを連通する供給連通路319は、Y軸に沿った方向に並んで配置されている。
【0036】
また、ケース部材340には、マニホールド400に連通して各マニホールド400にインクを供給するための供給口344が設けられている。さらに、ケース部材340には、保護基板330の貫通孔332に連通して配線基板420が挿通される接続口343が設けられている。
【0037】
このようなプリントヘッド22は、インク容器90に貯留されたインクを供給口344から取り込む。そして、マニホールド400からノズル321に至るまで内部を当該インクで満たした後、集積回路421から、圧力室312に対応するそれぞれの圧電素子60に駆動信号COMに基づく信号が供給される。これにより圧電素子60とともに振動板350がたわみ変形し、各圧力室312内の圧力が高まり、各ノズル321からインクが吐出される。
【0038】
次に、上述した振動板350、圧電素子60を含む、圧力室基板310の-Z側に積層形成される構成について説明する。プリントヘッド22は、圧力室基板310の-Z側に積層される構成として、振動板350、圧電素子60に加え、個別リード電極391、共通リード電極392、測定用リード電極393、及び抵抗配線401を有する。
【0039】
図4~
図6に示すように、振動板350は、圧力室基板310側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜351と、弾性膜351上に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜352と、を含んで構成されている。圧力室312等の液体流路は、圧力室基板310を+Z側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室312等の液体流路の-Z側の面は、弾性膜351で構成されている。なお、振動板350の構成は特に限定されるものではなく、例えば、弾性膜351と絶縁体膜352とのいずれか一方で構成されていてもよく、さらには、弾性膜351及び絶縁体膜352以外のその他の膜が含まれていてもよい。ここで、振動板350を構成するその他の膜の材料としては
、例えば、シリコン、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0040】
圧電素子60は、圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーターとして機能する。この圧電素子60は、振動板350側である+Z側から-Z側に向かって順次積層された電極360と、圧電体370と、電極380とを有する。換言すると、圧電素子60は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に設けられている。
【0041】
電極360及び電極380は、いずれも配線基板420と電気的に接続されている。そして、配線基板420に実装される集積回路421から供給される信号が電極360に供給され、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が電極380に供給されることで、圧電体370に、集積回路421から供給される信号と基準電位の信号とが供給される。そして、電極360と電極380との間に生じた電位差により圧電体370が変形する。この圧電体370の変形により、振動板350が変形又は振動し、振動板350の変形により圧力室312の容積が変化する。そして、圧力室312の容積変化によって生じた圧力の変化が、圧力室312に収容されているインクに付与されることで、圧力室312に収容されているインクが、ノズル連通路316を介してノズル321から吐出される。このとき、ノズル321から吐出されるインクの吐出量は、圧力室312の容積変化量となる。
【0042】
ここで、以下の説明において、圧電素子60の内、電極360と電極380との間に電圧を印加した際に、圧電体370に圧電歪みが生じる部分を活性部410と称し、圧電体370に圧電歪みが生じない部分を非活性部415と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれた部分が活性部410に相当し、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれていない部分が非活性部415に相当する。また、圧電素子60を駆動させた際、Z軸に沿った方向に変位する部分を可撓部と称し、Z軸に沿った方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧力室312にZ軸に沿った方向で対向する部分が可撓部に相当し、圧力室312の外側部分が非可撓部に相当する。なお、活性部410は能動部、非活性部415は非能動部と称する場合がある。
【0043】
一般的には、活性部410のいずれか一方の電極を活性部410毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部410に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、集積回路421が出力する信号が供給される電極360を個別電極として構成し、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が供給される電極380を共通電極として構成しているとして説明を行う。
【0044】
具体的には、電極360は、圧電体370に対して+Z側に設けられ、圧力室312毎に切り分けられて活性部410毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、電極360は、複数の圧力室312に対して個別に設けられる。電極360は、Y軸に沿った方向において、圧力室312の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、Y軸に沿った方向において、電極360の端部は、圧力室312に対向する領域の内側に位置している。
【0045】
また、電極360の+X側の端部360a及び-X側の端部360bは、それぞれ圧力室312の外側に配置されている。例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、電極360の端部360aは、圧力室312の+X側の端部312aよりも+X側に配置されている。電極360の端部360bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも-X側に配置されている。
【0046】
電極360の材料は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極360として白金(Pt)を用いた。
【0047】
圧電体370は、
図3に示すように、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。すなわち、圧電体370は、所定の厚さで圧力室312の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体370の厚さは特に限定されないが、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0048】
また、
図5に示すように、圧電体370のX軸に沿った方向の長さは、圧力室312の長手方向であるX軸に沿った方向の長さよりも長い。このため、圧力室312のX軸に沿った方向の両側では、圧電体370は、圧力室312の外側まで延在している。このように、圧電体370がX軸に沿った方向において圧力室312の外側まで延在していることで、振動板350の強度が向上する。したがって、活性部410を駆動させて圧電素子60を変位させた際、振動板350や圧電素子60にクラック等が発生するおそれを低減することができる。
【0049】
また、例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、圧電体370の+X側の端部370aは、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。すなわち、電極360の端部360aは圧電体370によって覆われている。一方、圧電体370の-X側の端部370bは、電極360の端部360bよりも内側となる+X側に位置しており、電極360の端部360bは、圧電体370では覆われていない。
【0050】
なお、圧電体370には、
図3及び
図6に示すように、各隔壁311に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部371が形成されている。本実施形態の溝部371は、圧電体370をZ軸に沿った方向に完全に除去することで形成されている。すなわち、圧電体370が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体370がZ軸に沿った方向に完全に除去されたものも含む。もちろん、溝部371の底面に圧電体370が他の部分よりも薄く形成されていてもよい。
【0051】
また、溝部371のY軸に沿った方向の長さ、つまり溝部371の幅は、隔壁311の幅と同一もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、溝部371の幅は、隔壁311の幅よりも広くなっている。このような溝部371は、-Z側からの平面視において、矩形状となるように形成されている。もちろん、溝部371の-Z側からの平面視した形状は、矩形状に限定されず、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0052】
圧電体370に溝部371を設けることにより、振動板350の圧力室312のY軸に沿った方向の端部に対向する部分、いわゆる振動板350の腕部の剛性が抑えられるため、圧電素子60をより良好に変位させることができる。
【0053】
圧電体370としては、電極360上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、所謂ペロブスカイト型結晶が挙げられる。圧電体370の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)
、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体370として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
【0054】
また、圧電体370の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1-x)TiO3]-(1-x)[BiFeO3]、略「BKT-BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1-x)[BiFeO3]-x[BaTiO3]、略「BFO-BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1-x)[Bi(Fe1-yMy)O3]-x[BaTiO3](Mは、Mn、Co又はCr))等が挙げられる。
【0055】
電極380は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、圧電体370に対して、電極360とは反対側である-Z側に設けられ、複数の活性部410に共通する共通電極を構成する。すなわち、電極380は、複数の圧力室312に対して共通に設けられている。電極380は、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。この電極380は、溝部371の内面、すなわち圧電体370の溝部371の側面上及び溝部371の底面である絶縁体膜352上にも設けられている。なお、溝部371内に関しては、電極380は、溝部371の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部371の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0056】
また、例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、電極380の+X側の端部380aが、圧電体370で覆われている電極360の端部360aよりも外側となるように+X側に配置されている。すなわち、電極380の端部380aは、圧力室312の端部312aよりも外側となる+X側で、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。本実施形態では、電極380の端部380aは、X軸に沿った方向において、圧電体370の端部370aと実質的に一致している。このため、活性部410の+X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極360の端部360aによって規定されている。
【0057】
一方、電極380の-X側の端部380bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも外側となる-X側であって、圧電体370の端部370bよりも内側となる+X側に配置されている。上述のように圧電体370の端部370bは、電極360の端部360bよりも+X側となる内側に位置している。したがって、電極380の端部380bは、電極360の端部360bよりも+X側となる圧電体370上に位置している。このため、電極380の端部380bの-X側には、圧電体370の表面が露出された部分が存在する。
【0058】
このように電極380の端部380bは、圧電体370の端部370b、及び電極360の端部360bよりも+X側に配置されている。そのため、活性部410の-X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極380の端部380bによ
って規定される。
【0059】
電極380の材料は特に限定されないが、電極360と同様に、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極380としてイリジウム(Ir)を用いた。
【0060】
また、電極380の端部380bの外側、すなわち電極380の端部380bのさらに-X側には、電極380と同一層となるが、電極380とは電気的に不連続となる配線部385が設けられている。また、配線部385は、電極380の端部380bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体370上から圧電体370よりも-X側に延設された電極360上に亘って形成されている。この配線部385は、活性部410毎に独立して設けられている。すなわち、配線部385は、Y軸に沿った方向において所定の間隔で複数配置されている。なお、配線部385は、電極380とは別の層で形成されていてもよいが、電極380と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部385の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0061】
また、圧電素子60を構成する電極360と電極380とには、電極360には個別リード電極391が接続され、電極380には駆動用共通電極である共通リード電極392がそれぞれ電気的に接続されている。個別リード電極391、及び共通リード電極392の圧電素子60に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板420が電気的に接続されている。配線基板420には、制御ユニット10、温度情報出力回路26、及び不図示の複数の回路と接続するための複数の配線が形成されている。本実施形態において、配線基板420は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)など、可撓性を有する任意の基板により構成されてもよい。
【0062】
本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。また、配線基板420には、圧電素子60を駆動するための信号を出力する集積回路421が実装されている。
【0063】
個別リード電極391及び共通リード電極392は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極391と共通リード電極392とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極391と共通リード電極392とを異なる層で形成してもよい。
【0064】
個別リード電極391及び共通リード電極392の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392として金(Au)を用いた。また、個別リード電極391及び共通リード電極392は、電極360及び電極380や振動板350との密着性を向上する密着層を有してもよい。
【0065】
個別リード電極391は、活性部410毎、すなわち、電極360毎に設けられたものである。
図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、個別リード電極391は、配線部385を介して、圧電体370の外側に設けられた電極360の端部360b付近に接続され、圧力室基板310上、実際には振動板350上まで-Xに沿った方向に引き出さ
れている。
【0066】
一方、
図3に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極392は、Y軸に沿った方向の両端部において、圧電体370上の共通電極を構成する電極380上から振動板350上にまで-X側に引き出されている。また、共通リード電極392は、延設部392a、及び延設部392bを有する。
図3、
図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部392aは、圧力室312の端部312aに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設され、延設部392bは、圧力室312の端部312bに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設される。これら延設部392a、及び延設部392bは、複数の活性部410に対してY軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。
【0067】
また、延設部392a、及び延設部392bは、X軸に沿った方向において、圧力室312の内側から圧力室312の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子60の活性部410は、圧力室312のX軸に沿った方向の両端部において圧力室312の外側まで延設されており、延設部392a、及び延設部392bは、この活性部410上を圧力室312の外側まで延設されている。
【0068】
図5に示すように、振動板350の-Z側の面には、抵抗配線401が設けられる。抵抗配線401は、電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用し、圧力室312の温度を検出する。このような抵抗配線401の材料としては、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であって、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、また、安定性と精度が高い。さらに、白金(Pt)は、温度変化に対する抵抗値の変化の線形性も高い。係る観点から抵抗配線401の材料としては、白金(Pt)が好適に採用される。すなわち、抵抗配線401は、白金(Pt)を含んで構成されていることが好ましい。また、本実施形態では、抵抗配線401を、電極360と同層であって、電極360と電気的に不連続となるように、振動板350の-Z側の面に積層形成されている。すなわち、抵抗配線401は、振動板350のZ軸に沿った方向における-Z側の面に積層された配線パターンを含み、当該配線パターンは、白金(Pt)を含む。
【0069】
図3に示すように、抵抗配線401の一端は測定用リード電極393aと接続され、抵抗配線401の他端は測定用リード電極393bと接続されている。また、測定用リード電極393a,393bは、配線基板420と電気的に接続されている。これにより、抵抗配線401が検出した圧力室312の温度であって、圧力室312の温度によって変化する電気抵抗値に応じた電圧値の信号が、プリントヘッド22から出力される。また、本実施形態では、抵抗配線401は、圧電体370に覆われており、Z軸に沿った方向において、振動板350と圧電体370との間に位置している。
【0070】
抵抗配線401は、X軸に沿った方向において+X側に位置する第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸に沿った方向において-X側に位置する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。すなわち、抵抗配線401は、複数の圧力室312が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室312が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。
【0071】
また、
図4、
図5に示すように、圧力室312の-Z側の端部と抵抗配線401とのZ
軸に沿った方向における距離は、圧力室312のZ軸に沿った方向における寸法より短い。また、例えば、第1圧力室列では、圧力室312の+X側の端部312aと抵抗配線401とのX軸に沿った方向における最長距離は、圧力室312のX軸に沿った方向における寸法より短い。このため、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室312の温度変化に対応して変化しやすい。
【0072】
測定用リード電極393a及び測定用リード電極393bを含む測定用リード電極393は、本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0073】
測定用リード電極393の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、測定用リード電極393として金(Au)を用いた。よって、測定用リード電極393の材料は、個別リード電極391及び共通リード電極392と同じ材料である。また、測定用リード電極393は、抵抗配線401や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態では、測定用リード電極393は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。これにより、圧力室312の温度によって変化する抵抗配線401の電気抵抗値が配線基板420を介してプリントヘッド22から出力される。
【0075】
すなわち、本実施形態のヘッドユニット20が有するプリントヘッド22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の他方側である-Z側に位置し、圧力室312の温度に応じた温度を取得する抵抗配線401と、を含む。
【0076】
2.液体吐出装置の機能構成
[液体吐出装置の機能構成]
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。
図7は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。
図7に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、キャリッジモーター31、搬送モーター41、エンコーダーセンサー92、及び報知回路94を備える。
【0077】
制御ユニット10は、駆動回路50、基準電圧出力回路52、状態判定回路56、及び、制御回路100を有する。制御回路100は、例えば、CPUやFPGA等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含む。制御回路100には、液体吐出装置1の外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等の外部機器から画像データ等を含む画像情報信号が入力される。制御回路100は、入力される画像情報信号に基づいて、液体吐出
装置1を制御するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0078】
具体例には、制御回路100には、上述した画像情報信号に加えて、エンコーダーセンサー92から、ヘッドユニット20に含まれる上述したキャリッジ21の走査位置に基づく検出信号が入力される。これにより、制御回路100は、キャリッジ21の走査位置であって、プリントヘッド22を含むヘッドユニット20の走査位置を把握する。制御回路100は、入力される画像情報信号と、把握したヘッドユニット20の走査位置とに応じた各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0079】
詳細には、制御回路100は、ヘッドユニット20の走査位置に応じて、ヘッドユニット20の走査軸に沿った移動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。これにより、キャリッジモーター31が動作し、キャリッジ21に搭載されたヘッドユニット20の走査軸に沿った移動、及び走査位置が制御される。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が動作し、媒体Pの搬送方向に沿った移動が制御される。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、キャリッジモーター31に入力されてもよく、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0080】
また、制御回路100は、外部機器から入力される画像情報信号と、ヘッドユニット20の走査位置と、に基づいて、ヘッドユニット20を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、印刷データ信号SI1~SIn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、ヘッドユニット20に出力する。
【0081】
さらに、制御回路100は、所定のタイミングでヘッドユニット20の温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、ヘッドユニット20に出力する。これにより、制御回路100には、温度取得要求信号TDに応じたヘッドユニット20の温度を含む温度情報信号TIが入力される。制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、ヘッドユニット20の状態を把握するとともに、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正し、対応する構成に出力する。これにより、プリントヘッド22の温度であって、温度情報信号TIに応じて液体吐出装置1、及びヘッドユニット20の動作が制御される。その結果、液体吐出装置1、及びヘッドユニット20から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0082】
また、ヘッドユニット20から入力される温度情報信号TIは、状態判定回路56にも入力される。状態判定回路56は、入力される温度情報信号TIに基づいて、ヘッドユニット20の状態であって、ヘッドユニット20が有する後述するプリントヘッド22-1~22-nの状態を判定する。そして、状態判定回路56は、判定結果に応じた状態信号SSを生成し、制御回路100に出力する。なお、状態判定回路56におけるプリントヘッド22-1~22-nの状態の判定方法の詳細は後述する。
【0083】
また、制御回路100は、制御信号Ctrl-Hとして、デジタル信号である基駆動信号dA1を生成し、駆動回路50に出力する。駆動回路50は、駆動信号COMとして、基駆動信号dA1によって規定される信号波形の駆動信号COMを生成し、ヘッドユニット20に出力する。
【0084】
具体的には、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動回路50に入力される。駆動回路50は、入力される基駆動信号dA1をデジタル/アナログ信号変換した後、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、ヘッドユニッ
ト20に出力する。すなわち、制御回路100は、温度情報信号TIに基づいて補正した制御信号Ctrl-Hとしての基駆動信号dA1を出力し、駆動回路50は、温度情報信号TIに基づいて補正された基駆動信号dA1に応じた補正された駆動信号COMを出力する。ここで、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定するデジタル信号であるとして説明を行うが、基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定することができればよく、アナログ信号であってもよい。また、駆動回路50は、基駆動信号dA1によって規定される信号波形をA級増幅、B級増幅、AB級増幅することで、駆動信号COMを生成してもよい。
【0085】
基準電圧出力回路52は、基準電圧信号VBSを生成し、ヘッドユニット20に出力する。この基準電圧信号VBSは、圧電素子60の駆動の基準となる電圧値が一定の信号であって、共通電極である電極380に供給される。このような基準電圧信号VBSの電圧値は、例えば、グラウンド電位で一定の信号であってもよく、5.5Vや6V等の電位で一定であってもよい。
【0086】
また、制御回路100は、駆動回路50,基準電圧出力回路52、及びヘッドユニット20の動作状況を使用者に報知するための制御信号Ctrl-Mを生成し、報知回路94に出力する。これにより、液体吐出装置1の動作状況が使用者に報知される。ここで、報知回路94としては、使用者に液体吐出装置1の動作状況を報知できる構成であればよい。そのため、報知回路94は、動作状況を視覚的に報知する液晶ディスプレイや発光素子を含んで構成されてもよく、聴覚的に報知するスピーカーやブザーを含んで構成されてもよい。
【0087】
ヘッドユニット20は、複数のプリントヘッド22としてのプリントヘッド22-1~22-n、及び、温度情報出力回路26を有する。また、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれは、駆動信号選択回路200、温度検出回路250、及び複数の圧電素子60を含む。
【0088】
プリントヘッド22-1には、制御回路100が出力する印刷データ信号SI1、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、クロック信号SCK、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。プリントヘッド22-1に入力されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SI1、及び駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。
【0089】
駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SI1に基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。具体的には、駆動信号選択回路200は、ラッチ信号LATとチェンジ信号CHとで規定されるタイミングにおいて、クロック信号SCKに同期して入力される印刷データ信号SIにしたがって、駆動信号COMに含まれる信号波形の選択、又は非選択を制御する。これにより、駆動信号選択回路200は、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0090】
駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、対応する圧電素子60のそれぞれの一端であって、個別電極である電極360のそれぞれに供給される。このとき、複数の圧電素子60の他端であって、共通電極である電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。これにより、複数の圧電素子60のそれぞれは、電極360に入力される駆動信号VOUTと、電極380に入力される基準電圧信号VBSとの電位差により変位し、圧電素子60の変位に応じた量のインクが、プリントヘッド22-1が有する対応するノズル321から吐出される。ここで、駆動信号選択回路200は、少なく
とも一部が、上述した集積回路421としてプリントヘッド22-1の配線基板420に実装されていてもよい。
【0091】
また、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路250は、プリントヘッド22-1の温度を検出する。そして、温度検出回路250は、検出したプリントヘッド22-1の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1を取得し、取得したヘッド温度情報tc1を含むヘッド温度信号TC1を温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路250の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401としてプリントヘッド22-1に設けられている。すなわち、温度検出回路250が出力するプリントヘッド22-1の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1には、温度によって変化する抵抗配線401の抵抗値に応じて変化する電圧値の情報が含まれる。
【0092】
また、プリントヘッド22-2~22-nは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみでプリントヘッド22-1と同様の構成であり、同様の動作を実行する。具体的には、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SIi、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。そして、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIiに基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60の電極360に出力する。また、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60の電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。これにより、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60が駆動し、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、プリントヘッド22-iが有するノズル321から吐出される。
【0093】
また、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路250は、プリントヘッド22-iの温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tciを取得し、取得したヘッド温度情報tciを含むヘッド温度信号TCiを温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200の少なくとも一部が、上述した集積回路421として、プリントヘッド22-iの配線基板420に実装され、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路250の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401として、プリントヘッド22-iに設けられている。
【0094】
ここで、以下の説明において、プリントヘッド22-1~22-nを区別する必要がない場合のプリントヘッド22には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHと、印刷データ信号SI1~SInとしての印刷データ信号SIと、駆動信号COMと、基準電圧信号VBSと、が入力されるとして説明を行う。そして、プリントヘッド22の温度検出回路250は、プリントヘッド22の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1~tcnとしてのヘッド温度情報tcを取得し、プリントヘッド22は、取得したヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TC1~TCnとしてのヘッド温度信号TCを出力するとして説明を行う。
【0095】
温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれが出力するヘッド温度信号TC1~TCnと、制御回路100が出力する温度取得要求信号TDと、に応じて、温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。
【0096】
具体的には、温度情報出力回路26は、ヘッド温度信号TC1~TCnを増幅するとともに、増幅したヘッド温度信号TC1~TCnを、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じて、選択する。そして、温度情報出力回路26は、選択した増幅したヘッド温度信号TC1~TCnを、対応するプリントヘッド22の温度に対応する応じ
た温度情報信号TIに変換し、制御回路100に出力する。
【0097】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する駆動回路50と、駆動信号COMに応じた駆動信号VOUTを受けて液体を吐出するプリントヘッド22-1~22-nと、プリントヘッド22-1~22-nの温度を示すヘッド温度信号TC1~TCnを取得し、ヘッド温度信号TC1~TCnの少なくともいずれかに基づく温度情報信号TIを出力する温度情報出力回路26と、温度情報信号TIに基づいて、対応するプリントヘッド22-1~22-nの状態を判定する状態判定回路56と、使用者に情報を報知する報知回路94と、を備える。
【0098】
[温度情報出力回路の構成]
次に、温度情報出力回路26の構成、及び動作について説明する。
図8は、温度情報出力回路26の構成の一例を示す図である。温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれから入力されるヘッド温度情報tc1~tcnのそれぞれを含むヘッド温度信号TC1~TCnを取得し、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じたプリントヘッド22の温度を示す温度情報信号TIを生成する。そして、温度情報出力回路26は、生成した温度情報信号TIを制御回路100、及び状態判定回路56に出力する。
【0099】
図8に示すように、温度情報出力回路26は、制御回路500、増幅回路510-1~510-n、マルチプレクサー530、AD変換回路540、DA変換回路560、及び記憶回路570を含む。
【0100】
増幅回路510-1~510-nは、プリントヘッド22-1~22-nに対応して設けられている。増幅回路510-1~510-nのそれぞれには、対応するプリントヘッド22-1~22-nが出力するヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれと、基準電位信号Vrefと、が入力される。増幅回路510-1~510-nのそれぞれは、基準電位信号Vrefの電圧値と、ヘッド温度信号TC1~TCnの電圧値であって、ヘッド温度情報tcの電圧値と、の差分を増幅することでヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnを生成し、出力する。すなわち、増幅回路510-1~510-nのそれぞれは、差動増幅回路を含む。
【0101】
具体的には、増幅回路510-1には、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1と、基準電位信号Vrefと、が入力される。増幅回路510-1は、入力されるヘッド温度信号TC1の電圧値と基準電位信号Vrefの電圧値との差分を増幅したヘッド温度増幅信号ATC1を出力する。また、増幅回路510-j(jは1~nのいずれか)には、プリントヘッド22-jが出力するヘッド温度信号TCjと、基準電位信号Vrefと、が入力される。増幅回路510-jは、入力されるヘッド温度信号TCjの電圧値と基準電位信号Vrefの電圧値との差分を増幅したヘッド温度増幅信号ATCjを出力する。ここで、増幅回路510-1~510-nはいずれも同様の構成であり、以下の説明において区別する必要がない場合、増幅回路510と称する場合がある。この場合において、増幅回路510には、ヘッド温度信号TC1~TCnとしてのヘッド温度信号TCと、基準電位信号Vrefとが入力され、ヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnとしてのヘッド温度増幅信号ATCを出力するとして説明を行う。
【0102】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれが出力するヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnは、マルチプレクサー530に入力される。また、マルチプレクサー530には、制御回路500が出力するセレクト信号Selが入力される。マルチプレクサー530は、入力されるセレクト信号Selに従って、増幅回路510-1~510-nのそれぞれから入力されるヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnのいずれかを選択し、選択温度
信号STCとして出力する。
【0103】
AD変換回路540には、マルチプレクサー530が出力する選択温度信号STCと、制御回路500が出力するイネーブル信号EN1と、が入力される。AD変換回路540は、入力されるイネーブル信号EN1が有効である期間に入力される選択温度信号STCをデジタル信号に変換し、制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、イネーブル信号EN1が有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに含まれるヘッド温度情報tcの電圧値を、増幅回路510が増幅した電圧値に応じたデジタル信号であって、イネーブル信号EN1が有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに対応するプリントヘッド22の温度に応じた電圧値のデジタル信号を生成し、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路540が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dtcと称する。
【0104】
制御回路500は、要求解析部502、温度情報出力部504、及びメモリー制御部508を含む。制御回路500には、温度取得要求信号TDが入力される。そして、制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDに応じたセレクト信号Sel、イネーブル信号EN1、及びデジタル基準電位信号dvrefを出力する。これにより、制御回路500は、温度情報出力回路26に含まれる各種の構成を制御する。また、制御回路500には、デジタル温度情報dtcが入力される。制御回路500は、入力されるデジタル温度情報dtcに基づいて温度情報信号TIを生成し、温度情報出力回路26から出力する。
【0105】
具体的には、要求解析部502は、制御回路500に入力される温度取得要求信号TDを取得する。要求解析部502は、取得した温度取得要求信号TDを解析し、解析結果に応じたデジタル基準電位信号dvref、セレクト信号Sel、及びイネーブル信号EN1を生成する。制御回路500は、要求解析部502が生成したデジタル基準電位信号dvref、セレクト信号Sel、及びイネーブル信号EN1を、温度情報出力回路26の対応する構成に出力する。
【0106】
温度情報出力部504は、制御回路500に入力されるデジタル温度情報dtcを取得する。温度情報出力部504は、取得したデジタル温度情報dtcを、所定の変換関数を用いて、プリントヘッド22-1~22-nの温度に応じた温度情報信号TIに変換する。制御回路500は、温度情報出力部504によって変換されたデジタル温度情報dtcに対応する温度情報信号TIを、制御回路100に出力する。ここで、温度情報出力部504が、取得したデジタル温度情報dtcを、プリントヘッド22-1~22-nの温度に応じた温度情報信号TIに変換する所定の変換関数としては、抵抗配線401の抵抗値の温度特性に準じた関数を用いることができる。すなわち、温度変化に対する抵抗値の変化の線形性が高い白金(Pt)が抵抗配線401として用いられる本実施形態の液体吐出装置1では、変換関数として一次関数を用いることができる。
【0107】
メモリー制御部508は、記憶回路570にアクセスするためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路570に出力するとともに、メモリー制御信号MAに応じたて記憶回路570が出力するメモリー読出信号MRを取得する。
【0108】
具体的には、記憶回路570には、上述した基準電位信号Vrefの電圧値の情報や、デジタル温度情報dtcを温度情報信号TIに変換する際に用いる所定の変換関数の情報が記憶されている。さらに、記憶回路570には、抵抗配線401を含む各種構成のばらつきを補正するための補正値が記憶されていてもよい。
【0109】
メモリー制御部508は、記憶回路570に記憶されている基準電位信号Vrefの電圧値の情報や、デジタル温度情報dtcを温度情報信号TIに変換する際に用いる所定の変換関数の情報を読み出すためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路570に出力する。記憶回路570は、入力されるメモリー制御信号MAに応じて、基準電位信号Vrefの電圧値の情報や、デジタル温度情報dtcを温度情報信号TIに変換する際に用いる所定の変換関数の情報を読み出し、読み出した情報を含むメモリー読出信号MRを出力する。これにより、記憶回路570に記憶されている情報が、制御回路500に読み出される。
【0110】
以上のように構成された温度情報出力回路26は、例えば、集積回路として構成されることが好ましい。こりより、ヘッドユニット20における温度情報出力回路26の実装面積を小さくすることができ、その結果、ヘッドユニット20の小型化が可能となる。この場合において、温度情報出力回路26を構成する集積回路は、1つに限るものではなく複数であってもよい。
【0111】
[温度情報出力回路の動作]
次に、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIが入力され、ヘッドユニット20の状態であって、ヘッドユニット20が有する後述するプリントヘッド22-1~22-nの状態を判定する状態判定回路56の動作について説明する。
【0112】
図9は、状態判定回路56の動作を説明するための図である。状態判定回路56は、動作の開始に伴って、所定の初期化処理を実行する。具体的には、状態判定回路56は、インク供給異常フラグFink1~Finknの論理レベル、COM配線異常フラグFcl1~Fclnの論理レベル、及び、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルを、いずれもLレベルに初期化するとともに、変数pを“1”に初期化する(ステップS10)。
【0113】
ここで、インク供給異常フラグFink1~Finknは、プリントヘッド22-1~22-nの状態を示すフラグの1つであって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれにインクが正常に供給されているか否かを示すフラグである。具体的には、インク供給異常フラグFink1は、プリントヘッド22-1にインクが正常に供給されているか否かを示すフラグであって、インク供給異常フラグFinkiは、プリントヘッド22-iにインクが正常に供給されているか否かを示すフラグである。以下の説明において、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに正常にインクが供給されている場合のインク供給異常フラグFink1~Finknの論理レベルをLレベル、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに正常にインクが供給されていない場合のインク供給異常フラグFink1~Finknの論理レベルをHレベルとして説明を行う。
【0114】
また、COM配線異常フラグFcl1~Fclnは、プリントヘッド22-1~22-nの状態を示すフラグの1つであって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路が正常であるか否かを示すフラグである。具体的には、COM配線異常フラグFcl1は、プリントヘッド22-1に供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路が正常であるか否かを示すフラグであって、COM配線異常フラグFcliは、プリントヘッド22-iに供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路が正常であるか否かを示すフラグである。以下の説明において、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路が正常な場合のCOM配線異常フラグFcl1~Fclnの論理レベルをLレベル、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路が正常でない場合のCOM配線異常フラグFcl1~Fclnの論理レベルをHレベルとして説明を行う。
【0115】
また、駆動信号異常フラグFcomは、プリントヘッド22-1~22-nの状態を示すフラグの1つであって、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMが正常であるか否かを示す。具体的には、駆動信号異常フラグFcomは、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMを、駆動回路50が正常に出力しているか否か示すフラグである。以下の説明において、駆動回路50が、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMを正常に出力している場合の駆動信号異常フラグFcomの論理レベルをLレベル、駆動回路50が、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMを正常に出力していない場合の駆動信号異常フラグFcomの論理レベルをHレベルとして説明を行う。
【0116】
状態判定回路56は、初期化処理が終了した後、温度情報出力回路26が温度取得要求信号TDに基づいて取得したプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度に応じた温度情報信号TIを取得する。ここで、以下の説明において、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIの内、プリントヘッド22-1の温度に応じた温度情報信号TIを温度情報信号TI1と称し、プリントヘッド22-iの温度に応じた温度情報信号TIを温度情報信号TIiと称する。すなわち、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応する温度情報信号TI1~TInを取得する(ステップS20)。
【0117】
そして、状態判定回路56は、取得した温度情報信号TI1~TInに基づくプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度と、所定の閾値温度Th1と比較する。
【0118】
具体的には、状態判定回路56は、変数pが“1”であるが故に、温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えているか否かを判定する(ステップS30)。そして、状態判定回路56が温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていると判定した場合(ステップS30のY)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクが不足していると判定し、インク供給異常フラグFink1の論理レベルをHレベルとする(ステップS40)。一方で、状態判定回路56が温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていないと判定した場合(ステップS30のN)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクは不足していないと判定し、インク供給異常フラグFink1の論理レベルをLレベルで保持する。
【0119】
その後、状態判定回路56は、変数pがプリントヘッド22の総数である“n”未満であるか否かを判定し(ステップS50)、状態判定回路56が、変数pはプリントヘッド22の総数である“n”未満であると判定した場合(ステップS50のY)、状態判定回路56は、変数pに1を加算し、新たな変数pとして保持する(ステップS60)。そして、状態判定回路56は、変数pが“2”であるが故に、温度情報信号TI2に基づくプリントヘッド22-2の温度であって、プリントヘッド22-2の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えているか否かを判定する(ステップS30)。
【0120】
すなわち、状態判定回路56は、上述したステップS30からステップS60を繰り返し実行する。これにより、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えているか否かを個別に判定する。そして、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を
超えているか否かの判定結果に応じて、プリントヘッド22-1~22-nの圧力室312に貯留されるインクが不足しているか否かを個別に判定し、判定結果に応じて、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応するインク供給異常フラグFink1の論理レベルを変更する。
【0121】
換言すれば、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えている場合、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクが不足していると判定し、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていない場合、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクが不足していないと判定する。
【0122】
また、状態判定回路56は、プリントヘッド22-iの圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えている場合、プリントヘッド22-iの圧力室312に貯留されるインクが不足していると判定し、プリントヘッド22-iの圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていない場合、プリントヘッド22-iの圧力室312に貯留されるインクが不足していないと判定する。
【0123】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えている場合、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクが不足していると判定する工程と、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていない場合、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留されるインクが不足していないと判定する工程とを含むヘッドユニット20の故障診断方法を実行し、さらに、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えている場合、プリントヘッド22-iの圧力室312に貯留されるインクが不足していると判定する工程と、プリントヘッド22-iの圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1を超えていない場合、プリントヘッド22-iの圧力室312に貯留されるインクが不足していないと判定する工程とを含むヘッドユニット20の故障診断方法を実行する。
【0124】
圧力室312に十分なインクが貯留されている場合、圧電素子60の駆動により生じた熱は、圧力室312に貯留されるインクに伝導する。そして、圧電素子60の駆動により圧力室312に貯留されるインクがノズル321から吐出されることで、インクに伝導した熱が放出される。一方で、圧力室312に十分なインクが貯留されていない場合、圧電素子60の駆動により生じた熱は、圧力室312に貯留されるインクに伝導することなく蓄積される。その結果、圧電素子60の温度が上昇し、圧電素子60が設けられた振動板350に形成された抵抗配線401の検出温度が上昇する。
【0125】
本実施形態の液体吐出装置1では、この抵抗配線401における検出温度の上昇に基づいて、圧力室312に十分なインクが貯留されているか否かであって、プリントヘッド22に十分なインクが供給されているか否かを検出する。これにより、圧力室312の内部に十分な液体が貯留されていない状態で圧電素子60が駆動するおそれが低減し、圧電素子60や振動板350に異常が生じるそれが低減される。その結果、プリントヘッド22-1~22-nを有するヘッドユニット20、及びヘッドユニット20を備えた液体吐出装置1の信頼性を高めることができる。
【0126】
そして、状態判定回路56が、変数pはプリントヘッド22の総数である“n”未満でないと判定した場合(ステップS50のN)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上であるか否かを判定する(ステップS70)。
【0127】
状態判定回路56がプリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上ではない判定した場合(ステップS70のN)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2未満であるか否かを判定する(ステップS80)。
【0128】
ここで、所定の閾値温度Th2は、例えば、圧電素子60に駆動信号COMが供給された場合に最低限生じる発熱量に応じた温度に設定される。すなわち、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上であると判定した場合(ステップS70のY)、プリントヘッド22-1~22-2の全てに、正常な信号波形の駆動信号COMが供給されている。
【0129】
したがって、状態判定回路56は、駆動回路50が、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMを正常に出力していると判定するとともに、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに供給される駆動信号COMが伝搬する伝搬経路も正常であると判定する。よって、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上であると判定した場合、状態判定回路56は、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルをLレベルで保持するとともに、COM配線異常フラグFcl1~Fclpの論理レベルをLレベルで保持する。
【0130】
また、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2未満であると判定した場合(ステップS80)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMが異常であると判定する。すなわち、状態判定回路56は、駆動回路50が、プリントヘッド22-1~22-nに共通に供給される駆動信号COMを正常に出力していないと判定する。そのため、状態判定回路56は、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルをHレベルとする(ステップ
S90)。
【0131】
状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上ではない判定し(ステップS70のN)、且つ、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2未満でないと判定した場合(ステップS80のN)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの内のいずれかには、駆動信号COMが正常に供給され、プリントヘッド22-1~22-nの内の異なるいずれかには、駆動信号COMが正常に供給されていないと判定する。そのため、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMを伝搬する伝搬経路のいずれかに異常が生じていると判定する。そこで、状態判定回路56は、変数pを“1”に初期化した後(ステップS100)、異常が生じた駆動信号COMの伝搬経路を特定する。
【0132】
具体的には、状態判定回路56は、変数pが“1”であるが故に、温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、状態判定回路56が温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上であると判定した場合(ステップS110のY)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1に駆動信号COMを伝搬する伝搬経路は正常であると判定し、COM配線異常フラグFcl1の論理レベルをLレベルで保持する。
【0133】
一方で、状態判定回路56が温度情報信号TI1に基づくプリントヘッド22-1の温度であって、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2未満であると判定した場合(ステップS110のY)、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1に駆動信号COMを伝搬する伝搬経路が異常であると判定し、COM配線異常フラグFcl1の論理レベルをHレベルとする。
【0134】
その後、状態判定回路56は、変数pがプリントヘッド22の総数である“n”未満であるか否かを判定し(ステップS130)、状態判定回路56が、変数pはプリントヘッド22の総数である“n”未満であると判定した場合(ステップS130のY)、状態判定回路56は、変数pに1を加算し、新たな変数pとして保持する(ステップS140)。そして、状態判定回路56は、変数pが“2”であるが故に、温度情報信号TI2に基づくプリントヘッド22-2の温度であって、プリントヘッド22-2の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0135】
すなわち、状態判定回路56は、上述したステップS110からステップS140を繰り返し実行する。これにより、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上であるか否かを個別に判定する。そして、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上であるか否かの判定結果に応じて、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに駆動信号COMを伝搬する伝搬経路に異常が生じているか否かを判定し、判定結果に応じて、COM配線異常フラグFcl1の論理レベルを変更する。
【0136】
すなわち、本実施形態の状態判定回路56は、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド
温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2未満の場合であって、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上の場合、プリントヘッド22-1に駆動信号COMを伝搬する伝搬経路に異常が生じたと判定する。
【0137】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、プリントヘッド22-1の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TI1であって、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-1の圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2未満であって、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)の圧力室312の温度に応じた温度情報信号TIiであって、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCに応じたプリントヘッド22-iの圧力室312の温度が、所定の閾値温度Th2以上の場合、プリントヘッド22-1に駆動信号COMを伝搬する伝搬経路に異常が生じたと判定する工程を含むヘッドユニット20の故障診断方法を実行する。
【0138】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1において状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度に基づいて、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かを判定する。このとき、本実施形態の液体吐出装置1では、温度検出回路250がプリントヘッド22に対して個別に設けられているが故に、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度を個別に取得することができる。すなわち、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度に基づいて、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かを、個別に判定することができる。これにより、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かに加え、プリントヘッド22-1~22-nに供給される駆動信号COMに異常が生じた場合に、当該異常が、駆動信号COMを出力する駆動回路50に起因する異常なのか、駆動信号COMが伝搬する伝搬経路に起因する異常なのかを判定することができる。したがって、液体吐出装置1の信頼性をさらに高めることができる。
【0139】
そして、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nの温度に対応する温度情報信号TI1~TInで規定される温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度の全てが、所定の閾値温度Th1よりも低い所定の閾値温度Th2以上であると判定した場合(ステップS70のY)、状態判定回路56が、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルをHレベルとした後、又は、状態判定回路56が、変数pはプリントヘッド22の総数である“n”未満でないと判定した場合(ステップS130のY)、状態判定回路56は、インク供給異常フラグFink1~Finknの論理レベル、COM配線異常フラグFcl1~Fclnの論理レベル、及び、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルに応じた状態信号SSを生成し、制御回路100に出力する(ステップS150)。
【0140】
制御回路100は、入力される状態信号SSから把握されるインク供給異常フラグFink1~Finknの論理レベル、COM配線異常フラグFcl1~Fclnの論理レベル、及び、駆動信号異常フラグFcomの論理レベルに応じて、プリントヘッド22-1~22-nの状態を把握する。
【0141】
そして、制御回路100は、プリントヘッド22-1~22-nの内、状態信号SSに基づいて把握した異常が生じているプリントヘッド22の動作を停止し、動作が停止したプリントヘッド22を他のプリントヘッド22によって補完するとともに、異常が生じた旨を使用者に報知する。
【0142】
すなわち、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1の圧力室312に貯留される液体が不足していると判定し、プリントヘッド22-iの圧力室312に貯留される液体は不足していないと判定した場合、制御回路100は、プリントヘッド22-1が、インクを吐出しないように制御するとともに、プリントヘッド22-iがプリントヘッド22-1を補完するように動作するように制御し、さらに、プリントヘッド22-1の異常を、報知回路94を介して使用者に報知する。また、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1に駆動信号COMを伝搬する伝搬経路に異常が生じたと判定し、プリントヘッド22-iに駆動信号COMを伝搬する伝搬経路に異常は生じていないと判定した場合、制御回路100は、プリントヘッド22-1が、インクを吐出しないように制御するとともに、プリントヘッド22-iがプリントヘッド22-1を補完するように動作するように制御し、さらに、プリントヘッド22-1の異常を、報知回路94を介して使用者に報知する。
【0143】
これにより、プリントヘッド22-1~22-nのいずれかに異常が生じた場合であっても、液体吐出装置1は、動作を継続できることで、液体吐出装置1の信頼性を高めることができるとともに、当該異常を使用者に報知することで、当該場に対する適切な処理を促すことができ、液体吐出装置1の信頼性をさらに高めることができる。
【0144】
ここで、駆動信号COMが駆動信号の一例であり、駆動信号VOUTが駆動信号COMの信号波形御を選択、又は非選択とすることで生成される点に鑑みると、駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例である。また、プリントヘッド22-1が第1プリントヘッドの一例であり、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1が第1温度信号の一例であり、ヘッド温度信号TC1に含まれるヘッド温度情報tc1が第1温度情報の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる電極360が第1電極の一例であり、電極380が第2電極の一例であり、圧電体370が第1圧電体の一例であり、圧電素子60が第1圧電素子の一例であり、振動板350が第1振動板の一例であり、圧力室312が第1圧力室の一例であり、圧力室基板310が第1圧力室基板の一例であり、ノズル321が第1ノズルの一例であり、温度検出回路250、及び抵抗配線401が第1温度検出部の一例であり、電極360、圧電体370、及び電極380が積層されるZ軸に沿った方向が第1積層方向の一例である。また、プリントヘッド22-iが第2プリントヘッドの一例である。プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCiが第2温度信号の一例であり、ヘッド温度信号TCiに含まれるヘッド温度情報tciが第2温度情報の一例であり、プリントヘッド22-iに含まれる電極360が第3電極の一例であり、電極380が第4電極の一例であり、圧電体370が第2圧電体の一例であり、圧電素子60が第2圧電素子の一例であり、振動板350が第2振動板の一例であり、圧力室312が第2圧力室の一例であり、圧力室基板310が第2圧力室基板の一例であり、ノズル321が第2ノズルの一例であり、温度検出回路250、及び抵抗配線401が第2温度検出部の一例であり、電極360、圧電体370、及び電極380が積層されるZ軸に沿った方向が第2積層方向の一例である。また、所定の閾値温度Th1が第1所定値の一例であり、所定の閾値温度Th2が第2所定値の一例である。また、報知回路94が報知部の一例である。
【0145】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1では、状態判定回路56が、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの振動板350に形成された抵抗配線401における検出温度の上昇に基づいて、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの圧力室312に十分なインクが貯留されているか否かであって、プリントヘッド22-1~22-nに十分なインクが供給されているか否かを個別に検出することができる。これにより、圧力室312の内部に十分な液体が貯留されていない状態で圧電素子60が駆動するおそれが
低減し、圧電素子60や振動板350に異常が生じるそれが低減される。その結果、プリントヘッド22-1~22-nを有するヘッドユニット20、及びヘッドユニット20を備えた液体吐出装置1の信頼性を高めることができる。
【0146】
また、本実施形態の液体吐出装置1では、状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度に基づいて、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かを判定する。このとき、本実施形態の液体吐出装置1では、温度検出回路250がプリントヘッド22に対して個別に設けられているが故に、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度を個別に取得することができる。すなわち、本実施形態の液体吐出装置1が備える状態判定回路56は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度に基づいて、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かを、個別に判定することができる。これにより、プリントヘッド22-1~22-nに駆動信号COMが供給されているか否かに加え、プリントヘッド22-1~22-nに供給される駆動信号COMに異常が生じた場合に、当該異常が、駆動信号COMを出力する駆動回路50に起因する異常なのか、駆動信号COMが伝搬する伝搬経路に起因する異常なのかを判定することができる。したがって、液体吐出装置1の信頼性をさらに高めることができる。
【0147】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0148】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0149】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0150】
液体吐出装置の一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す第1温度信号を取得し、前記第1温度信号に基づく前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
前記温度情報信号に基づいて、前記第1プリントヘッドの状態を判定する状態判定回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に
対応する第1温度情報を取得し、前記第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記状態判定回路は、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する。
【0151】
この液体吐出装置によれば、温度検出部の温度上昇に基づいて、圧力室に液体が充填されているか否かを検出することができ、液体吐出装置の信頼性を高めることができる。
【0152】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを備え、
前記温度情報出力回路は、前記第2プリントヘッドの温度を示す第2温度信号を取得し、前記第1温度信号と前記第2温度信号と基づく前記温度情報信号を出力し、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を取得し、前記第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記状態判定回路は、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えている場合、前記第2圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定してもよい。
【0153】
この液体吐出装置によれば、複数のプリントヘッドを有する場合に、複数のプリントヘッド毎に、温度検出部の温度上昇に基づいて、圧力室に液体が充填されているか否かを検出することができ、液体吐出装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0154】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記状態判定回路が、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定した場合、前記第1プリントヘッドは、液体を吐出せず、前記第2プリントヘッドは、前記第1プリントヘッドを補完してもよい。
【0155】
この液体吐出装置によれば、一方のプリントヘッドに液体が貯留されていない場合であっても、他方のプリントヘッドを用いて液体の吐出を継続することができる。これにより、液体吐出装置に不用意な動作の停止が生じるおそれが低減される。
【0156】
上記液体吐出装置の一態様において、
報知部を有し、
前記報知部は、前記状態判定回路が、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定し、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定した場合、前記第1プリントヘッドの異常を報知してもよい。
【0157】
この液体吐出装置によれば、使用者に適切なメンテナンスを促すことができる。
【0158】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記状態判定回路は、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値よも低い第2所定値未満の場合であって、前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第2所定値以上の場合、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する伝搬経路に異常が生じたと判定してもよい。
【0159】
この液体吐出装置によれば、温度変化に応じて、圧電素子が駆動しているか否かを判定することができるとともに、複数のプリントヘッドの内の一方のみの温度が上昇しないことから、駆動信号が伝搬する伝搬経路の異常を特定することができる。これにより、液体吐出装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0160】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記状態判定回路が、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する前記伝搬経路に異常が生じたと判定した場合、前記第1プリントヘッドは、液体を吐出せず、前記第2プリントヘッドは、前記第1プリントヘッドを補完してもよい。
【0161】
この液体吐出装置によれば、一方のプリントヘッドに液体が貯留されていない場合であっても、他方のプリントヘッドを用いて液体の吐出を継続することができる。これにより、液体吐出装置に不用意な動作の停止が生じるおそれが低減される。
【0162】
上記液体吐出装置の一態様において、
報知部を有し、
前記報知部は、前記状態判定回路が、前記伝搬経路に異常が生じたと判定した場合、前記伝搬経路の異常を報知してもよい。
【0163】
この液体吐出装置によれば、使用者に適切なメンテナンスを促すことができる。
【0164】
ヘッドユニットの故障診断方法の一態様は、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を取得し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有する第1プリントヘッドを備えたヘッドユニットの故障診断方法であって、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が第1所定値を超えている場合、前記第1圧力室に貯留される液体が不足していると判定する工程と、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合
、前記第1圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する工程と、
を含む。
【0165】
このヘッドユニットの故障診断方法によれば、温度検出部の温度上昇に基づいて、圧力室に液体が充填されているか否かを検出することができ、ヘッドユニットの信頼性を高めることができる。
【0166】
上記ヘッドユニットの故障診断方法の一態様において、
前記ヘッドユニットは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、液体が貯留されるとともに前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を取得し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有する第2プリントヘッドを備え、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えている場合、前記第2圧力室に貯留される液体が不足していると判定する工程と、
前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第1所定値を超えていない場合、前記第2圧力室に貯留される液体は不足していないと判定する工程と、
を含んでもよい。
【0167】
このヘッドユニットの故障診断方法によれば、複数のプリントヘッドを有する場合に、複数のプリントヘッド毎に、温度検出部の温度上昇に基づいて、圧力室に液体が充填されているか否かを検出することができ、ヘッドユニットの信頼性をさらに高めることができる。
【0168】
上記ヘッドユニットの故障診断方法の一態様において、
前記第1温度信号に応じた前記第1圧力室の温度が前記第1所定値よも低い第2所定値未満であって、前記第2温度信号に応じた前記第2圧力室の温度が前記第2所定値以上の場合、前記第1プリントヘッドに前記駆動信号を伝搬する伝搬経路に異常が生じていると判定する工程を含んでもよい。
【0169】
このヘッドユニットの故障診断方法によれば、温度変化に応じて、圧電素子が駆動しているか否かを判定することができるとともに、複数のプリントヘッドの内の一方のみの温度が上昇しないことから、駆動信号が伝搬する伝搬経路の異常を特定することができる。これにより、ヘッドユニットの信頼性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0170】
1…液体吐出装置、10…制御ユニット、20…ヘッドユニット、21…キャリッジ、22…プリントヘッド、26…温度情報出力回路、30…移動ユニット、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送ユニット、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、52…基準電圧出力回路、56…状態判定回路、60…圧電素子、90…インク容器、92…エンコーダーセンサー、94…報知回路、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、250…温度検出回路、310…圧力室基板、311
…隔壁、312…圧力室、312a,312b…端部、315…連通板、316…ノズル連通路、317…第1マニホールド部、318…第2マニホールド部、319…供給連通路、320…ノズルプレート、321…ノズル、330…保護基板、331…保持部、332…貫通孔、340…ケース部材、341…収容部、342…第3マニホールド部、343…接続口、344…供給口、345…コンプライアンス基板、346…封止膜、347…固定基板、348…開口部、349…コンプライアンス部、350…振動板、351…弾性膜、352…絶縁体膜、360…電極、360a,360b…端部、370…圧電体、370a,370b…端部、371…溝部、380…電極、380a,380b…端部、385…配線部、391…個別リード電極、392…共通リード電極、392a,392b…延設部、393…測定用リード電極、393a,393b…測定用リード電極、400…マニホールド、401…抵抗配線、410…活性部、415…非活性部、420…配線基板、421…集積回路、500…制御回路、502…要求解析部、504…温度情報出力部、508…メモリー制御部、510…増幅回路、530…マルチプレクサー、540…AD変換回路、560…DA変換回路、570…記憶回路、600…吐出部、P…媒体