(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173333
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 23/00 20060101AFI20241205BHJP
F02B 37/20 20060101ALI20241205BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02D23/00 P
F02B37/20
F02D43/00 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091686
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 賢宏
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G005FA04
3G005FA10
3G005GD05
3G005HA02
3G005HA05
3G005HA19
3G005JB02
3G005JB18
3G092AA01
3G092AA18
3G092AC02
3G092BA01
3G092BA09
3G092BB10
3G092DB03
3G092FA10
3G384AA01
3G384BA05
3G384BA07
3G384BA14
3G384BA24
3G384BA35
3G384CA12
3G384DA05
3G384FA06Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関において、過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を適正に実行する。
【解決手段】過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関の制御装置は、車両のアクセル開度が、所定開度以上になった後に当該所定開度よりも小さい予め定められた小開度以下に所定時間だけ維持されたこと、および内燃機関の回転数が所定の回転数範囲内に含まれることを条件に、過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関の制御装置であって、
前記車両のアクセル開度が、所定開度以上になった後に前記所定開度よりも小さい予め定められた小開度以下に所定時間だけ維持されたこと、および前記内燃機関の回転数が所定の回転数範囲内に含まれることを条件に、前記過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を実行する内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記アンチラグ制御の開始後に、予め定められた実行時間が経過した段階で、他の実行条件の成立に拘わらず前記アンチラグ制御を終了させる内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記車両の車速が所定車速以上であることを条件に、前記アンチラグ制御を実行する内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、
前記車両の運転者の要求に応じて車外装置により前記アンチラグ制御の実行が許可されていることを条件に、前記アンチラグ制御を実行する内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記アンチラグ制御は、前記内燃機関におけるフューエルカットを禁止し、前記内燃機関の吸入空気量をアイドル運転時に比べて嵩上げし、かつ前記内燃機関における点火時期を遅角する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関を制御する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ポートを有するシリンダヘッドと、吸気通路に配置されたコンプレッサおよび排気通路における排気ポートの下流に配置されたタービンを有するターボ過給機と、コンプレッサの下流側に位置するように吸気通路に配置されたインタークーラとを含む過給エンジンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような過給機を有する内燃機関では、例えばアクセルペダルの踏み込みが解除されているときに点火時期を遅角してタービン直前で未燃焼ガスを燃焼させることで、排気ガスのエネルギー不足を補ってタービン回転数の低下を抑制し、その後にアクセルペダルが踏み込まれたときの再加速性を向上させることができるであろう。しかしながら、タービン回転数の低下を抑制する制御の実行タイミングによっては、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保し得なくなることがある。
【0005】
そこで、本開示は、過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関において、過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を適正に実行することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の内燃機関の制御装置は、過給機を含むと共に車両に搭載される内燃機関の制御装置であって、前記車両のアクセル開度が、所定開度以上になった後に前記所定開度よりも小さい予め定められた小開度以下に所定時間だけ維持されたこと、および前記内燃機関の回転数が所定の回転数範囲内に含まれることを条件に、前記過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を実行するものである。
【0007】
本開示の内燃機関の制御装置によれば、車両の運転者による減速要求に応じて、過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を適正に実行することが可能となるので、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の制御装置により制御される内燃機関を示す概略構成図である。
【
図2】本開示の制御装置を示す制御ブロック図である。
【
図3】本開示の制御装置により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の制御装置により制御される内燃機関であるエンジン10を示す概略構成図である。同図に示すエンジン10は、は、当該エンジン10のみを動力発生源とする車両、あるいは当該エンジン10に加えてモータジェネレータを含むハイブリッド車両である車両1に搭載される。本実施形態において、エンジン10は、エンジンブロック11に形成された複数の燃焼室(気筒)12における炭化水素系燃料と空気との混合気の燃焼に伴うピストン13の往復運動をクランクシャフト(出力軸)14の回転運動へと変換する多気筒ガソリンエンジン(例えば、直列4気筒エンジンあるいはV型6気筒エンジン)である。
【0011】
エンジン10は、
図1に示すように、エンジンブロック11、複数の燃焼室12、ピストン13およびクランクシャフト14に加えて、エアクリーナ15と、吸気管16と、電子制御式のスロットルバルブ17と、吸気マニホールド18と、複数の吸気弁19iと、複数の排気弁19eと、複数のポート噴射弁20pと、複数の筒内噴射弁20dと、複数の点火プラグ21と、排気通路を形成する排気管22とを含む。吸気マニホールド18は、サージタンクおよび複数の吸気ポートを有する。複数の吸気弁19iは、それぞれ対応する吸気ポートを開閉し、複数の排気弁19eは、それぞれ対応する排気ポートを開閉する。複数のポート噴射弁20pは、それぞれ対応する吸気ポート内に燃料を噴射し、複数の筒内噴射弁20dは、それぞれ対応する燃焼室12内に燃料を直接噴射する。
【0012】
また、エンジン10は、それぞれ排気管22に組み込まれた上流側浄化装置23および下流側浄化装置24を含む。上流側浄化装置23は、エンジン10の各燃焼室12からの排ガス中のCO(一酸化炭素)やHC、NOxといった有害成分を浄化するNOx吸蔵型の排ガス浄化触媒(三元触媒)を含むものである。下流側浄化装置24は、排ガス中の粒子状物質(微粒子)を捕集するパティキュレートフィルタ(GPF)を含み、上流側浄化装置23の下流側に配置される。
【0013】
加えて、エンジン10は、各燃焼室12からの排ガスのエネルギを利用して吸入空気を圧縮する過給機28と、当該過給機28により圧縮された空気を冷却する例えば液冷式のインタークーラ29とを含む。過給機28は、ターボチャージャであり、タービンホイール28tと、コンプレッサホイール28cと、タービンホイール28tおよびコンプレッサホイール28cを一体に連結するタービンシャフト28sと、ウェイストゲートバルブ28wと、エアバイパスバルブ(ブローオフバルブ)28bとを含む。タービンホイール28tは、上流側浄化装置23の上流側に位置するように排気管22に形成されたタービンハウジング内に回転自在に配置される。コンプレッサホイール28cは、エアクリーナ15とスロットルバルブ17との間に位置するように吸気管16に形成されたコンプレッサハウジング内に回転自在に配置される。
【0014】
上述のように構成されるエンジン10は、図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータや、各種駆動回路、各種ロジックIC等を含むエンジン電子制御装置(以下、「エンジンECU」という。)100により制御される。エンジンECU100は、
図2に示すように、クランク角センサ14aやエアフローメータ16a、吸気圧センサ16p、過給圧センサ16c、吸気温センサ16t、スロットル開度センサ17o、サージ圧センサ18p、温度センサ18t、上流側空燃比センサ22f、下流側空燃比センサ22r、排ガス温度センサ22t、水温センサ25t等の検出値を図示しない入力ポートを介して取得する。
【0015】
クランク角センサ14aは、クランクシャフト14の回転位置(クランクポジション)を検出する。エアフローメータ16aは、吸気管16のコンプレッサホイール28cの上流側で吸入空気量Qaを検出する。吸気圧センサ16pは、吸気管16のコンプレッサホイール28cの上流側における吸気圧Pinを検出する。過給圧センサ16cは、吸気管16のコンプレッサハウジングとインタークーラ29との間でコンプレッサホイール28cにより圧縮された空気の圧力である過給圧Pcを検出する。吸気温センサ16tは、吸気管16のコンプレッサホイール28cの上流側で吸気温度Tinを検出する。
【0016】
スロットル開度センサ17oは、スロットルバルブ17の開度THを検出する。サージ圧センサ18pは、サージタンク内の空気の圧力であるサージ圧Psを検出し、温度センサ18tは、サージタンク内の空気の温度であるサージ温度Tsを検出する。上流側空燃比センサ22fは、上流側浄化装置23の上流側で当該上流側浄化装置23に流入する排ガスの空燃比である上流側空燃比AFfを検出し、下流側空燃比センサ22rは、上流側浄化装置23の下流側で下流側浄化装置24に流入する排ガスの空燃比である下流側空燃比AFrを検出する。排ガス温度センサ22tは、排気管22の上流側浄化装置23と下流側浄化装置24との間の部分を流通する排ガスの温度Tegを検出する。水温センサ25tは、エンジンブロック11から熱を奪った(流出した)冷却水の水温Tw(エンジン10の温度)を検出する。
【0017】
エンジンECU100は、クランク角センサ14aからのクランクポジションに基づいてエンジン10(クランクシャフト14)の回転数Neを算出する。また、エンジンECU100は、エアフローメータ16aからの吸入空気量Qaとエンジン10の回転数Neとに基づいて負荷率KLを算出する。負荷率KLは、エンジン10の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクル中に実際に吸入される空気の容積の割合である。そして、エンジンECU100は、回転数Neや負荷率KL等に基づいて、スロットルバルブ17や、図示しない動弁機構、複数のポート噴射弁20pおよび複数の筒内噴射弁20d、複数の点火プラグ21等を制御する。更に、エンジンECU100は、上記冷却水を圧送する図示しない電動ポンプや、過給機28のウェイストゲートバルブ28wおよびエアバイパスバルブ28bを制御する。
【0018】
また、エンジンECU100は、車速センサ90により検出される車速V、アクセルペダルポジションセンサ91により検出される図示しないアクセルペダルの踏み込み量を示すアクセル開度Acc等を取得する。更に、エンジンECU100は、車載通信機95を介して、例えば車両1の製造者等により管理される車外装置としてのサーバ200と情報をやり取りする。本実施形態において、車両1の運転者は、例えばサーキットを走行するとき等に、例えばタッチパネル式の表示装置99の画面を操作し、車載通信機95を介して、過給機28におけるターボラグの発生を抑制するためのアンチラグ制御の実行許可をサーバ200に対して要求することができる。サーバ200は、例えば予め定められた料金の支払い方法の認証がなされたことを条件に、車両1におけるアンチラグ制御の実行を許可するための信号を車両1の車載通信機95に送信する。サーバ200からアンチラグ制御の実行を許可する旨の信号を受信した車載通信機95は、サーバ200によりアンチラグ制御の実行が許可された旨をエンジンECU100に通知する。
【0019】
続いて、車両1におけるアンチラグ制御について説明する。
図3は、アンチラグ制御の実行の要否を判定するために、エンジン10が運転されている間にエンジンECU100により実行されるルーチンの一例を示すフローチャートである。エンジンECU100は、車両1において何らかのフェイルが発生しておらず、かつサーバ200やエンジンECU100以外の車両1の制御装置(例えば、自動変速機の制御装置)によりアンチラグ制御の実行が許可されているときに、
図3のルーチンを予め定められた時間(微小時間)おきに繰り返し実行する。
【0020】
図3のルーチンの実行タイミングが到来すると、エンジンECU100は、アンチラグ制御の実行の要否を判定するために必要な情報を取得する(ステップS100)。ステップS100において、エンジンECU100は、エンジン10の暖機状態、車速センサ90により検出された車速V、別途算出したエンジン10の回転数Ne、アクセルペダルポジションセンサ91により検出されたアクセル開度Acc、アクセルペダルの開度履歴を取得する。次いで、エンジンECU100は、エンジン10の暖機が完了しているか否かを判定する(ステップS110)。
【0021】
エンジン10の暖機が完了している場合(ステップS110:YES)、エンジンECU100は、車両1の車速Vが所定車速Vref(例えば、20-30km程度)以上であるか否かを判定する(ステップS120)。車速Vが所定車速Vref以上である場合(ステップS120:YES)、エンジンECU100は、エンジン10の回転数Neが所定の回転数範囲内に含まれるか否か、すなわち回転数Neが第1回転数N1以上かつ第2回転数N2以下であるか否かを判定する(ステップS130)。本実施形態において、第1回転数N1は、エンジン10の負荷が比較的高くなった後であることを判別することができるように、例えば、2000rpm程度に定められる。また、第2回転数N2は、回転数Neが比較的高いときに過給機28におけるターボラグの発生が抑制されることを考慮して、例えば4500rpm程度に定められる。
【0022】
エンジン10の回転数Neが第1回転数N1以上かつ第2回転数N2以下の回転数範囲内に含まれている場合(ステップS130:YES)、エンジンECU100は、アクセルペダルの開度履歴に基づいて、アクセル開度Accが比較的大きい所定開度Aref(例えば、50-60%)以上になっていた履歴(大開度履歴)が存在するか否かを判定する(ステップS140)。アクセル開度Accが所定開度Arefになっていた履歴が存在する場合(ステップS140:YES)、エンジンECU100は、更に、アクセル開度Accが当該所定開度Arefよりも小さい予め定められた小開度A0(例えば、20-30%)以下であるか否かを判定する(ステップS150)。
【0023】
アクセル開度Accが当該小開度A0以下である場合(ステップS150:YES)、エンジンECU100は、カウンタCをインクリメントすると共に(ステップS160)、当該カウンタCが所定範囲内に含まれるか否か、すなわちカウンタCが第1回数C1以上かつ第2回数C2以下であるか否かを判定する(ステップS170)。本実施形態において、第1回数C1は、
図3のルーチンの実行周期と当該第1回数C1との積が所定時間t0(例えば、0.5秒程度)になるように定められる。また、第2回数C2は、
図3のルーチンの実行周期と当該第2回数C2との積が、当該所定時間t0と予め定められた実行時間t1(例えば、1秒程度)との和になるように定められる。そして、カウンタCが第1回数C1以上かつ第2回数C2以下である場合(ステップS170:YES)、エンジンECU100は、アンチラグ制御の実行が必要であるとみなし、アンチラグ制御実行フラグをオンして(ステップS180)、
図3のルーチンを一旦終了させる。
【0024】
アンチラグ制御実行フラグがオンされている間、エンジンECU100は、次のようなアンチラグ制御を実行する。すなわち、アンチラグ制御実行フラグがオンされている間、エンジンECU100(燃料噴射制御部)は、エンジン10におけるフューエルカットを禁止する。また、アンチラグ制御実行フラグがオンされている間、エンジンECU100(スロットルバルブ17の制御部)は、エンジン10の吸入空気量(目標値)を通常のアイドル運転時(自立運転時)に比べて嵩上げする。本実施形態において、吸入空気量の嵩上げ量は、充填効率を通常時の例えば10%から例えば20-80%まで増加させるように予め適合されている。更に、エンジンECU100(点火時期制御部)は、吸入空気量の嵩上げ量に応じた遅角量だけ各燃焼室12における点火時期を遅角する。また、アンチラグ制御実行フラグがオンされている間、エンジンECU100(過給機制御部)は、ウェイストゲートバルブ28wおよびエアバイパスバルブ28bを閉鎖させる(全閉にする)。
【0025】
これに対して、エンジン10の暖機が完了していない場合(ステップS110:NO)、車速Vが所定車速Vref未満である場合(ステップS120:NO)、エンジン10の回転数Neが第1回転数N1から第2回転数N2までの回転数範囲外である場合(ステップS130:NO)、アクセル開度Accが所定開度Arefになっていた履歴が存在しない場合(ステップS140:NO)、アクセル開度Accが小開度A0を上回っている場合(ステップS150:NO)、またはカウンタCが第1回転数N1から第2回転数N2までの回転数範囲内に含まれていない場合(ステップS170:NO)、エンジンECU100は、カウンタCをリセットすると共にアンチラグ制御実行フラグをオフし(ステップS190)、
図3のルーチンを一旦終了させる。
【0026】
上述のように、エンジンECU100により
図3のルーチンが実行される結果、過給機28を含むエンジン10では、車両1のアクセル開度Accが、所定開度Aref以上になった後に当該所定開度Arefよりも小さい小開度A0以下に所定時間t0だけ維持されたこと、およびエンジン10の回転数Neが第1回転数N1から第2回転数N2までの回転数範囲内に含まれることを条件に(ステップS130-S160,S170:YES)、過給機28(タービンホイール28t)の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御が実行されることになる(ステップS180)。これにより、少なくともアクセルペダルの踏み込みを緩めることによる運転者の減速要求に応じて、過給機28の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を適正に実行することが可能となるので、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保することができる。
【0027】
また、エンジンECU100は、アンチラグ制御の開始後に、予め定められた実行時間t1が経過した段階で、他の実行条件の成立に拘わらずアンチラグ制御を終了させる(ステップS170:NO、S190)。これにより、アンチラグ制御が必要以上に実行されないようにして、フューエルカットの禁止等によるエンジン10の効率低下(燃費の悪化)を抑制することが可能になる。
【0028】
更に、エンジンECU100は、車両1の車速Vが所定車速Vref以上であることを条件に、アンチラグ制御を実行する(ステップS120:YES、S180)。これにより、車両1が比較的高速で走行しているときの減速要求に応じてアンチラグ制御を実行して、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保することが可能になる。
【0029】
また、エンジンECU100は、車両1の運転者の要求に応じて車外装置としてのサーバ200によりアンチラグ制御の実行が許可されていることを条件に、
図3のルーチンを実行し、必要な場合にアンチラグ制御を実行する。これにより、車両1の運転者によりアンチラグ制御の実行が要求されたときにのみ、当該アンチラグ制御の実行を許容することが可能になる。ただし、必ずしも、アンチラグ制御の実行可否をサーバ200に照会する必要はなく、
図3のルーチンは、車両1においてフェイルが発生しておらず、かつエンジンECU100以外の車両1の制御装置(例えば、自動変速機の制御装置)によりアンチラグ制御の実行が許可されているときに、常時実行されてもよい。
【0030】
また、
図3のルーチンは、車両1がサーキットを走行するときにのみ実行されてもよい。この場合、エンジンECU100は、ステップS100にて、自車位置情報に基づく車両1の走行路に関する情報を取得してもよく、走行路に関する情報に基づいて、車両1の走行路がサーキットであるか否かを判定してもよい。そして、エンジンECU100は、車両1の走行路がサーキットである場合、
図3のステップS110以降の処理を実行してもよく、車両1の走行路がサーキットではない場合、ステップS190の処理を実行してもよい。
【0031】
更に、上記実施形態において、アンチラグ制御は、エンジン10の各燃焼室12におけるフューエルカットを禁止し、エンジン10の吸入空気量をアイドル運転時に比べて嵩上げし、かつエンジン10における点火時期を遅角するものである。これにより、エンジン10から実質的にトルクを出力させることなく、過給機28に排ガスを供給したり、タービンホイール28tの直前で未燃焼ガスを燃焼させたりして、過給機28の回転数の低下を抑制することが可能になる。
【0032】
ただし、アンチラグ制御は、上述のものには限られない。すなわち、吸気管16と排気管22とを連通させるバイパス管および当該バイパス管を開閉するバルブを含むエンジンでは、アンチラグ制御は、アンチラグ制御実行フラグがオンされている間に、当該バルブを開弁させるものであってもよい。
【0033】
以上説明したように、本開示の内燃機関の制御装置は、過給機(28)を含むと共に車両(1)に搭載される内燃機関(10)の制御装置(100)であって、前記車両(1)のアクセル開度(Acc)が、所定開度(Aref)以上になった後に前記所定開度(Aref)よりも小さい予め定められた小開度(A0)以下に所定時間(t0)だけ維持されたこと、および前記内燃機関(10)の回転数(Ne)が所定の回転数範囲(N1-N2)内に含まれることを条件に、前記過給機(28)の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を実行するものである(ステップS130-S160,S170:YES、S180)。
【0034】
本開示の内燃機関の制御装置によれば、車両の運転者による減速要求に応じて、過給機の回転数の低下を抑制するアンチラグ制御を適正に実行することが可能となるので、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保することができる。
【0035】
また、前記制御装置(100)は、前記アンチラグ制御の開始後に、予め定められた実行時間(t1)が経過した段階で、他の実行条件の成立に拘わらず前記アンチラグ制御を終了させるものであってもよい(ステップS170:NO、S190)。
【0036】
これにより、アンチラグ制御が必要以上に実行されないようにして、内燃機関の効率低下を抑制することが可能になる。
【0037】
更に、前記制御装置(100)は、前記車両(1)の車速(V)が所定車速(Vref)以上であることを条件に、前記アンチラグ制御を実行するものであってもよい(ステップS120:YES、S180)。
【0038】
これにより、車両が比較的高速で走行しているときの減速要求に応じてアンチラグ制御を実行して、減速後の再加速時における過給圧を良好に確保することが可能になる。
【0039】
また、前記制御装置(100)は、前記車両(1)の運転者の要求に応じて車外装置(200)により前記アンチラグ制御の実行が許可されていることを条件に、前記アンチラグ制御を実行するものであってもよい。
【0040】
これにより、車両の運転者によりアンチラグ制御の実行が要求されたときにのみ、当該アンチラグ制御の実行を許容することが可能になる。
【0041】
更に、前記アンチラグ制御は、前記内燃機関(10)におけるフューエルカットを禁止し、前記内燃機関(10)の吸入空気量をアイドル運転時に比べて嵩上げし、かつ前記内燃機関(10)における点火時期を遅角するものであってもよい。
【0042】
これにより、内燃機関から実質的にトルクを出力させることなく、過給機に排ガスを供給したり、過給機の直前で未燃焼ガスを燃焼させたりして、過給機の回転数の低下を抑制することが可能になる。
【0043】
本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、内燃機関や車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両、10 エンジン、28 過給機、100 エンジン電子制御装置(エンジンECU)、200 サーバ(車外装置)、A0 小開度、Aref 所定開度、N1 第1回転数、N2 第2回転数、t0 所定時間、t1 実行時間。