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特開2024-173348付加製造装置、製造条件決定装置、及び製造条件決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173348
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】付加製造装置、製造条件決定装置、及び製造条件決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20241205BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20241205BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241205BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/135
B33Y10/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091703
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】厨川 常元
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正義
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AB16
4F213AR12
4F213AR19
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる技術を提供する。
【解決手段】付加製造装置は、基台と、基台上の紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、原料が硬化した層を形成する層形成部と、コントローラと、備え、コントローラは、層の目標膜厚、及び層形成部による原料への紫外線レーザの照射回数を取得し、目標膜厚及び照射回数と予め取得された関係とに基づいて、紫外線レーザの照射条件を決定し、予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さと、原料の硬化後における原料への侵入深さと、照射条件との関係であり、決定された照射条件に基づいて、層形成部から紫外線レーザを照射させる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元形状の造形物を形成する付加製造装置であって、
紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料が供給される基台と、
前記基台上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、前記原料が硬化した層を形成する層形成部と、
前記層形成部を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記層の目標膜厚、及び、前記層形成部による前記原料への前記紫外線レーザの照射回数を取得し、
取得された前記目標膜厚及び前記照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、前記紫外線レーザの照射条件を決定し、前記予め取得された関係は、前記照射回数と、前記原料の硬化前における前記原料への侵入深さである第1侵入深さと、前記原料の硬化後における前記原料への侵入深さである第2侵入深さと、前記照射条件との関係であり、
決定された前記照射条件に基づいて、前記層形成部から前記紫外線レーザを照射させる、
付加製造装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記照射条件を決定する前に、前記第1侵入深さと、前記紫外線レーザを前記原料の所定の領域に照射する際に形成される第1膜の硬化深さと、前記紫外線レーザを前記第1膜が形成された前記領域に照射する際に更に形成される第2膜の硬化深さと、に基づいて、前記第2侵入深さを算出する、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記第2侵入深さは、以下の数式(1)の関係を満たす、請求項2に記載の付加製造装置。
【数1】

ここで、Dは前記第1侵入深さ、D’は前記第2侵入深さ、Zは前記第1膜の前記硬化深さ、Zは前記第1膜の前記硬化深さと前記第2膜の硬化深さとの和である。
【請求項4】
前記予め取得された関係は、スラリー状の前記原料が硬化する最小の前記紫外線レーザのエネルギー値を更に含む、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記層形成部は、前記紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、前記第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら前記照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射する第1照射を実行して前記原料を硬化させ、
前記照射回数、前記第1侵入深さ、前記第2侵入深さ、及び前記照射条件は、前記予め取得された関係として、以下の数式(2)~(5)の関係を満たす、請求項1に記載の付加製造装置。
【数2】

ここで、yは前記第2方向に沿った方向における前記層の位置、Z(y)は前記第1照射における1番目の前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、Dは前記第1侵入深さ、woは前記紫外線レーザのスポット半径、Emaxは前記紫外線レーザの照射エネルギー、Eは前記原料が硬化する最小の前記紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は前記第1照射における1番目からn番目(nは2以上の整数)までの前記紫外線レーザの照射後の前記層の前記位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は前記第1照射における1番目から(n-1)番目までの前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、aは前記第1照射におけるn番目の前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、dは前記距離、D’は前記第2侵入深さ、Pは前記紫外線レーザの照射出力、及びVは前記紫外線レーザの照射速度である。
【請求項6】
前記層形成部は、前記第1照射後に、前記紫外線レーザにおける第2方向に沿った走査を、前記第1方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら複数回行う第2照射を実行して前記原料を硬化させ、
前記紫外線レーザの照射回数、前記第1侵入深さ、及び前記第2侵入深さは、前記予め取得された関係として、以下の数式(6)及び(7)の関係を満たす、請求項5に記載の付加製造装置。
【数3】

ここで、zch(y)は前記第2照射後の前記層の前記位置yにおける硬化形状、ach(y)は前記第2照射時の前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状である。
【請求項7】
前記コントローラが決定する前記照射条件は、紫外線レーザの照射出力、照射半径、及び照射速度の少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項8】
3次元形状の造形物を形成する付加製造装置であって、
紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料が供給される基台と、
前記基台上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、前記原料が硬化した層を形成する層形成部と、
前記層形成部を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記層の目標膜厚、及び、前記層を形成する際の前記原料への前記紫外線レーザの照射回数を入力し、前記層形成部に、紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、前記第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射させ、
前記紫外線レーザの照射条件は、以下の数式(8)~(11)の関係を満たす、付加製造装置。
【数4】

ここで、yは前記第2方向に沿った方向における前記層の位置、Z(y)は1番目の前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、Dは前記原料の硬化前における前記原料への侵入深さである第1侵入深さ、woは前記紫外線レーザのスポット半径、Emaxは前記紫外線レーザの照射エネルギー、Eは前記原料が硬化する最小の前記紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は1番目からn番目(nは2以上の整数)までの前記紫外線レーザの照射後の前記層の前記位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は1番目から(n-1)番目までの紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、aはn番目の紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、dは前記距離、D’は前記原料の硬化後における前記原料への侵入深さである第2侵入深さ、Pは前記紫外線レーザの照射出力、及びVは前記紫外線レーザの照射速度である。
【請求項9】
紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射して層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、前記紫外線レーザの照射条件を決定する装置であって、
前記層の目標膜厚、及び、前記層を形成する際の前記原料への前記紫外線レーザの照射回数を取得する取得部と、
取得された前記目標膜厚及び前記照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、前記照射条件を決定する決定部であって、前記予め取得された関係は、前記照射回数と、前記原料の硬化前における前記原料への侵入深さである第1侵入深さと、前記原料の硬化後における前記原料への侵入深さである第2侵入深さと、前記照射条件との関係である、前記決定部と、
を備える、製造条件決定装置。
【請求項10】
紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に、紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、前記第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射することで層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、前記紫外線レーザの照射条件を決定する装置であって、
前記層の目標膜厚、及び、前記層を形成する際の前記原料への前記紫外線レーザの照射回数を取得する取得部と、
取得された前記目標膜厚及び前記照射回数を入力とし、前記照射条件を決定する決定部と、
を備え、
前記照射条件は、以下の数式(12)~(15)の関係を満たす、製造条件決定装置。
【数5】

ここで、yは前記第2方向に沿った方向における前記層の位置、Z(y)は1番目の前記紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、Dは前記原料の硬化前における前記原料への侵入深さである第1侵入深さ、woは前記紫外線レーザのスポット半径、Emaxは前記紫外線レーザの照射エネルギー、Eは前記原料が硬化する最小の前記紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は1番目からn番目(nは2以上の整数)までの前記紫外線レーザの照射後の前記層の前記位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は1番目から(n-1)番目までの紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、aはn番目の紫外線レーザの照射によって前記原料が硬化して形成される硬化部の前記位置yにおける硬化形状、dは前記距離、D’は前記原料の硬化後における前記原料への侵入深さである第2侵入深さ、Pは前記紫外線レーザの照射出力、及びVは前記紫外線レーザの照射速度である。
【請求項11】
紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射して層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、前記紫外線レーザの照射条件を決定する装置としてコンピュータを機能させる製造条件決定プログラムであって、前記コンピュータを、
前記層の目標膜厚、及び、前記層を形成する際の前記原料への前記紫外線レーザの照射回数を取得する取得部、並びに、
取得された前記目標膜厚及び前記照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、前記照射条件を決定する決定部であって、前記予め取得された関係は、前記照射回数と、前記原料の硬化前における前記原料への侵入深さである第1侵入深さと、前記原料の硬化後における前記原料への侵入深さである第2侵入深さと、前記照射条件との関係である、前記決定部、
として機能させる、製造条件決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付加製造装置、製造条件決定装置、及び製造条件決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、3次元形状の造形物を形成する付加製造装置を開示する。この装置は、セラミックス粉末と光硬化樹脂とを含む原料の薄膜を形成する。この装置は、形成された薄膜に選択的に紫外線レーザを照射し、紫外線レーザが照射された領域に含まれる光硬化樹脂を硬化させて、任意の2次元形状の硬化物(原料が硬化した層)を形成する。この装置は、2次元形状の硬化物を1層ずつ積層することで、最終的に造形物を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-011050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の付加製造装置において、3次元形状の造形物の品質を向上させるためには、造形物を構成する2次元形状の硬化物の厚さ(硬化した層の膜厚)を精度良く制御する必要がある。本開示は、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る付加製造装置は、3次元形状の造形物を形成する付加製造装置であって、基台、層形成部、及び、コントローラを備える。基台は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料が供給される。層形成部は、基台上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、原料が硬化した層を形成する。コントローラは、層形成部を制御する。コントローラは、層の目標膜厚、及び、層形成部による原料への紫外線レーザの照射回数を取得し、取得された目標膜厚及び照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、紫外線レーザの照射条件を決定する。予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さと、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さと、照射条件との関係である。コントローラは、決定された照射条件に基づいて、層形成部から紫外線レーザを照射させる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る付加製造装置の概要図である。
図2図2は、造形物が形成される例の模式図である。
図3図3は、紫外線レーザのX方向に沿った走査の例の模式図である。
図4図4は、紫外線レーザの照射により複数の硬化部が形成される例の模式図である。
図5図5は、クロスハッチングにより層が形成される例の模式図である。
図6図6は、コントローラによる一連の製造条件決定処理を示すフローチャートである。
図7図7は、紫外線の照射エネルギーと硬化部の硬化深さとの関係を示すグラフの一例である。
図8】(A)は、第1膜の例の模式図、(B)は、第1膜及び第2膜の例の模式図、(C)は、領域に紫外線レーザをN=(n+1)回照射した場合に形成された膜の例の模式図である。
図9図9は、各位置における層の硬化形状の予測を示すグラフを示す図である。
図10図10は、製造条件決定プログラムの構成を示す図である。
図11図11は、紫外線硬化樹脂のみを含む原料を硬化させた場合の硬化深さを示すグラフである。
図12図12は、紫外線硬化樹脂及びセラミックス粒子を含む原料を硬化させた場合の硬化深さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0009】
(条項1) 本開示の一側面に係る付加製造装置は、3次元形状の造形物を形成する付加製造装置であって、基台、層形成部、及び、コントローラを備える。基台は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料が供給される。層形成部は、基台上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、原料が硬化した層を形成する。コントローラは、層形成部を制御する。コントローラは、層の目標膜厚、及び、層形成部による原料への紫外線レーザの照射回数を取得し、取得された目標膜厚及び照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、紫外線レーザの照射条件を決定する。予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さと、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さと、照射条件との関係である。コントローラは、決定された照射条件に基づいて、層形成部から紫外線レーザを照射させる。
【0010】
紫外線硬化樹脂を含む原料の硬化形状と紫外線レーザの照射条件とは、一般的にLambert Beerの法則に従うことが知られている。しかしながら、本発明者は、原料にセラミックス粒子がさらに含まれる場合、原料の硬化後の原料への侵入深さは、原料の硬化前の侵入深さから変化することを見出し、Lambert Beerの法則を拡張させた新たな関係を導くに至った。新たな関係とは、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射する場合には、原料の硬化前後の原料への侵入深さ、原料に照射する紫外線レーザの照射回数、及び、レーザの照射条件が既知であれば、原料の硬化形状を算出できるという関係である。原料の硬化前後の原料への侵入深さは、予め取得され得る。このため、目標膜厚(原料の硬化形状)及び紫外線レーザの照射回数が設定された場合、上記の予め取得された関係を用いてレーザの照射条件が決定され得る。この付加製造装置は、上記の予め取得された関係を用いることにより、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。そして、付加製造装置は、決定された照射条件で層を形成できる。
【0011】
(条項2) 条項1に記載の付加製造装置において、コントローラは、照射条件を決定する前に、第1侵入深さと、紫外線レーザを原料の所定の領域に照射する際に形成される第1膜の硬化深さと、紫外線レーザを第1膜が形成された領域に照射する際に更に形成される第2膜の硬化深さと、に基づいて、第2侵入深さを算出してもよい。この場合、付加製造装置は、第2侵入深さを予め取得できる。
【0012】
(条項3) 条項2に記載の付加製造装置において、第2侵入深さは、以下の数式(1)の関係を満たしてもよい。
【数1】

ここで、Dは第1侵入深さ、D’は第2侵入深さ、Zは第1膜の硬化深さ、Zは第1膜の硬化深さと第2膜の硬化深さとの和である。この場合、付加製造装置は、数式(1)に基づいて第2侵入深さを予め取得できる。
【0013】
(条項4) 条項1~3のいずれか一項に記載の付加製造装置において、上記予め取得された関係は、スラリー状の原料が硬化する最小の紫外線レーザのエネルギー値を更に含んでもよい。この場合、付加製造装置は、スラリー状の原料が固体状に変化する臨界値を考慮して照射条件を決定できる。
【0014】
(条項5) 条項1~4のいずれか一項に記載の付加製造装置において、層形成部は、紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射する第1照射を実行して原料を硬化させ、照射回数、第1侵入深さ、第2侵入深さ、及び照射条件は、予め取得された関係として、以下の数式(2)~(5)の関係を満たしてもよい。
【数2】

ここで、yは第2方向に沿った方向における層の位置、Z(y)は第1照射における1番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、Dは第1侵入深さ、woは紫外線レーザのスポット半径、Emaxは紫外線レーザの照射エネルギー、Eは原料が硬化する最小の紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は第1照射における1番目からn番目(nは2以上の整数)までの紫外線レーザの照射後の層の位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は第1照射における1番目から(n-1)番目までの紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、aは第1照射におけるn番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、dは上記距離、D’は第2侵入深さ、Pは紫外線レーザの照射出力、及びVは紫外線レーザの照射速度である。この場合、付加製造装置は、数式(2)~(5)に基づいて目標膜厚に対する紫外線レーザの照射条件を決定できる。
【0015】
(条項6) 条項5に記載の付加製造装置において、層形成部は、第1照射後に、紫外線レーザにおける第2方向に沿った走査を、第1方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら複数回行う第2照射を実行して原料を硬化させ、紫外線レーザの照射回数、第1侵入深さ、及び第2侵入深さは、予め取得された関係として、以下の数式(6)及び(7)の関係を満たしてもよい。
【数3】

ここで、zch(y)は第2照射後の層の位置yにおける硬化形状、及びach(y)は第2照射時の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状である。この場合、付加製造装置は、硬化部が平坦な層となるように走査方向を交差させるクロスハッチングが行われて層が形成される場合であっても、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0016】
(条項7) 条項1~6のいずれか一項に記載の付加製造装置において、コントローラが決定する照射条件は、紫外線レーザの照射出力、照射半径、及び照射速度の少なくとも1つを含んでもよい。この場合、付加製造装置は、目標膜厚の形成に影響のある紫外線レーザのパラメータを決定できる。
【0017】
(条項8) 本開示の一側面に係る別の付加製造装置は、3次元形状の造形物を形成する付加製造装置であって、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料が供給される基台と、基台上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射することによって、原料が硬化した層を形成する層形成部と、層形成部を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、層の目標膜厚、及び、層を形成する際の原料への紫外線レーザの照射回数を入力し、層形成部に、紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射させ、紫外線レーザの照射条件は、以下の数式(8)~(11)の関係を満たす。
【数4】

ここで、yは第2方向に沿った方向における層の位置、Z(y)は1番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、Dは原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さ、woは紫外線レーザのスポット半径、Emaxは紫外線レーザの照射エネルギー、Eは原料が硬化する最小の紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は1番目からn番目(nは2以上の整数)までの紫外線レーザの照射後の層の位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は1番目から(n-1)番目までの紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、aはn番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、dは距離、D’は原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さ、Pは紫外線レーザの照射出力、及びVは紫外線レーザの照射速度である。本開示の別の付加製造装置は、上記付加製造装置と同様の理由により、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0018】
(条項9) 本開示の一側面に係る製造条件決定装置は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射して層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、紫外線レーザの照射条件を決定する装置である。製造条件決定装置は、取得部、及び決定部を備える。取得部は、層の目標膜厚、及び、層を形成する際の原料への紫外線レーザの照射回数を取得する。決定部は、取得された目標膜厚及び照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、照射条件を決定する。予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さと、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さと、照射条件との関係である。本開示の製造条件決定装置は、上記付加製造装置と同様の理由により、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0019】
(条項10) 本開示の一側面に係る別の製造条件決定装置は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に、紫外線レーザにおける第1方向に沿った走査を、第1方向に交差する第2方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射することで層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、紫外線レーザの照射条件を決定する装置である。製造条件決定装置は、取得部、及び決定部を備える。取得部は、層の目標膜厚、及び、層を形成する際の原料への紫外線レーザの照射回数を取得する。決定部は、取得された目標膜厚及び照射回数を入力とし、照射条件を決定する。照射条件は、以下の数式(12)~(15)の関係を満たす。
【数5】

ここで、yは第2方向に沿った方向における層の位置、Z(y)は1番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、Dは原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さ、woは紫外線レーザのスポット半径、Emaxは紫外線レーザの照射エネルギー、Eは原料が硬化する最小の紫外線レーザのエネルギー値、Z(y)は1番目からn番目(nは2以上の整数)までの紫外線レーザの照射後の層の位置yにおける硬化形状、Zn-1(y)は1番目から(n-1)番目までの紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、aはn番目の紫外線レーザの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状、dは距離、D’は原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さ、Pは紫外線レーザの照射出力、及びVは紫外線レーザの照射速度である。本開示の製造条件決定装置は、上記付加製造装置と同様の理由により、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0020】
(条項11) 本開示の一側面に係る製造条件決定プログラムは、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザを複数回照射して層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、紫外線レーザの照射条件を決定する装置としてコンピュータを機能させる。製造条件決定プログラムは、コンピュータを、取得部、及び決定部として機能させる。取得部は、層の目標膜厚、及び、層を形成する際の原料への紫外線レーザの照射回数を取得する。決定部は、取得された目標膜厚及び照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、照射条件を決定する。予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さと、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さと、照射条件との関係である。本開示の製造条件決定プログラムは、上記付加製造装置と同様の理由により、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0021】
[本開示の実施形態の例示]
図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0022】
[付加製造装置の一例]
図1は、付加製造装置1の概要図である。図中のX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。以下ではZ方向を上下方向ともいう。付加製造装置1は、3次元形状の造形物を形成する。付加製造装置1は、例えば3次元のCADデータに基づいて造形物を形成する。3次元のCADデータは、一層ごとの断面形状のデータを含む。一例として、付加製造装置1は、断面形状のデータに基づいて造形物の断面を一層ずつ形成する。付加製造装置1は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に紫外線を照射することによって層を形成する。原料とは、造形物の材料である。原料は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含むスラリー状の混合物である。原料は、紫外線硬化樹脂及びセラミックス粒子の他に、金属、及びその他の樹脂を含んでもよい。紫外線硬化樹脂とは、紫外線の波長の光を吸収して固体に変化する合成有機材料である。
【0023】
付加製造装置1は、層形成部2、ステージ機構3、原料供給部4、及びコントローラ(製造条件決定装置)10を備える。
【0024】
層形成部2は、層を形成するための一構成要素である。ステージ機構3は、基台31を備える。層形成部2は、基台31上の原料に光を照射することによって、原料が硬化した層を形成する。基台31には、原料が供給される。層形成部2による層の形成方法の詳細については後述する。
【0025】
層形成部2は、一例として、光学ユニット20、光反射部材21,23、及び回転駆動部22,24を備える。光学ユニット20は、例えば光源20a及び光学部材20bを備え、紫外線レーザLを出射する。光反射部材21,23は、例えばカルバノミラーであり、光学ユニット20から出射された紫外線レーザLの光路を変更する。光反射部材21,23は、回転駆動部22,24により、所定の回転軸を中心として回転動作をする。光反射部材21,23が回転制御されることにより、層形成部2は、層形成高さ位置において、水平方向の所定位置に対して紫外線レーザLを照射することができる。層形成高さ位置とは、紫外線レーザLが照射される高さ位置として予め定められた高さである。紫外線レーザLが照射された場合、原料に含まれる紫外線硬化樹脂が硬化するため、紫外線レーザLが照射された部分のみが層として形成される。層形成部2は、CADデータに基づく断面形状を再現するように紫外線レーザLを照射して、造形物の断面を一層分形成する。
【0026】
原料供給部4は、基台31上に原料を供給する。原料供給部4は、例えば、水平方向に移動しながら原料を供給する。原料供給部4は、一例として、原料を供給するヘッドと、供給された原料をならすブレードとを有する。ヘッドから供給された原料がブレードによって平坦化されることにより、基台31上に一層分の原料が供給される。
【0027】
基台31は、層形成部2に対して相対的に上下動する。一例として、ステージ機構3は、駆動部32を備える。駆動部32は、基台31に接続され、基台31を上下動させる。駆動部32は、例えば電動シリンダである。駆動部32は、一層分の高さ単位で基台31を上下動させる。
【0028】
コントローラ10は、付加製造装置1の全体を制御するハードウェアである。コントローラ10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、及び通信装置等を有する汎用コンピュータで構成される。
【0029】
コントローラ10は、層形成部2、原料供給部4、及び駆動部32と通信可能に接続される。コントローラ10は、層形成部2、原料供給部4、及び駆動部32へ制御信号を出力し、層形成部2、原料供給部4、及び駆動部32を制御する。コントローラ10は、タッチパネル等の操作盤(図示せず)に接続されており、操作盤によって受け付けられた作業員のコマンド操作に応じて、層形成部2、原料供給部4、及び駆動部32を動作させる。コントローラ10は、記憶装置に記憶された3次元のCADデータに基づいて層形成部2、原料供給部4、及び駆動部32を動作させてもよい。
【0030】
[付加製造方法]
最初に、コントローラ10は、基台31上に造形物を形成する。具体的には、付加製造装置1の層形成部2に対して、基台31を相対的に上下動させることにより、基台31上に造形物を形成する。まず、コントローラ10は、原料供給部4に、基台31上へ一層分の原料を供給させる。続いて、コントローラ10は、層形成部2に、紫外線レーザLを照射させる。層形成部2は、供給された原料に対して、CADデータに基づいて紫外線レーザLを照射する。紫外線レーザLが照射された原料に含まれる紫外線硬化樹脂は硬化する。これにより、造形物の層が形成される。
【0031】
続いて、コントローラ10は、基台31の高さを駆動部32に調整させる。駆動部32は、基台31の上面が層形成高さ位置となるように、基台31の高さを調整する。具体的には、駆動部32は、基台31を一層分の高さだけ下降させる。
【0032】
続いて、コントローラ10は、原料供給部4に、基台31上へ一層分の原料を供給させる。これにより、既に形成された層が原料に埋もれた状態となる。層形成部2は、供給された原料に対して、CADデータに基づいて紫外線を照射する。紫外線が照射された原料は硬化する。コントローラ10は、このような層の形成を繰り返し、層を形成して一層ずつ積み上げる。これにより、造形物が積層される。図2は、造形物が形成される例の模式図である。図2に示される例では、コントローラ10が、供給された原料に対して紫外線レーザLを層形成部2に照射させることにより、層iが形成される。そして、コントローラ10は、このような層iの形成を繰り返し、層iを一層ずつ積み上げて造形物Iを形成する。造形物Iは、図示しない焼成装置へと搬送され、焼成される。以上のようにして、造形物が形成される。
【0033】
[層形成部による層の形成方法]
以下、層形成部2による層の形成方法の詳細について説明する。層形成部2は、コントローラ10による制御により、基台31上の原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザLを複数回照射する。具体的には、層形成部2は、紫外線レーザLにおけるX方向に沿った走査を、Y方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射する第1照射を実行して原料を硬化させる。すなわち、硬化部を形成する走査が繰り返し行われることによって、複数の硬化部が形成され、当該複数の硬化部が層となる。
【0034】
以下、層形成部2による第1照射について、図3,4の例を用いて説明する。図3は、紫外線レーザLのX方向に沿った走査Dの例の模式図である。図4は、紫外線レーザLの照射により複数の硬化部が形成される例の模式図である。図3に示される例のように、走査Dによって原料Cが硬化することにより形成される硬化部m11は、Z方向に突出する山状(放物線状)となる。
【0035】
このように、各走査によって形成される硬化部は、Z方向に突出する山状となるため、仮に、照射範囲の一部が互いに重複せずにX方向に沿った走査が複数回行われる場合、層における裏面(下面)が凸凹状になってしまう。そこで、層形成部2は、図4に示される例のように、各硬化部が互いに干渉し合う走査間隔である距離dにて紫外線レーザLを照射する。具体的には、層形成部2は、上記X方向に沿った走査をY方向に沿って距離dずつ移動させながら照射範囲の一部が互いに重なるように複数回照射する。これにより、層の裏面は均一(平坦)に近づく。
【0036】
より詳細には、まず、層形成部2は、第1照射における1回目の照射により硬化部m11を形成する。そして、層形成部2は、紫外線レーザLをY方向に沿って距離d移動させて、2回目の照射により硬化部m12を形成する。更に、層形成部2は、紫外線レーザLをY方向に沿って距離d移動させて、3回目の照射により硬化部m13を形成する。図4に示される重複照射部J1は、1回目の照射の照射範囲の一部と2回目の照射との照射範囲の一部とが互いに重なった部分であり、重複照射部J2は、2回目の照射の照射範囲の一部と3回目の照射との照射範囲の一部とが互いに重なった部分である。これにより、複数の硬化部m11~m13の裏面は均一状態に近づく。以下、当該複数の硬化部によって構成される硬化部の集合を「第1硬化部」として説明する。
【0037】
第1硬化部を形成する際の紫外線レーザLの照射回数Nは、以下の数式(16)によって表される。
【数6】

ここで、Lは第1硬化部の成膜幅である。成膜幅Lは、目標となるY方向における第1硬化部の幅である。成膜幅L及び距離dは、例えば、予め設定されている。走査回数Nは、予め設定されてもよいし、層形成部2によって算出されてもよい。例えば、総回数は、断面データに基づいて決定される照射領域と、レーザ幅と、照射間隔とに基づいて算出されてもよい。層形成部2は、X方向に沿った走査を、Y方向に沿って距離dごとにN回行うことにより、第1硬化部を形成する。
【0038】
本実施形態では、層形成部2は、層の裏面をより均一に形成するために、クロスハッチングを行う。具体的には、層形成部2は、第1硬化部の下方の原料を更に硬化させる第2照射を実行する。第2照射は、第1照射後に、紫外線レーザLにおけるY方向に沿った走査を、X方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら複数回行う照射である。
【0039】
図5は、クロスハッチングにより層が形成される例の模式図である。図5に示される例では、第1照射により、硬化部m11~m13が形成されている。そして、層形成部2が、紫外線レーザLにおけるY方向に沿った走査を、X方向に沿って所定の距離ずつ移動させながら複数回行うことにより、硬化部mz21~mz23が更に形成される。具体的には、まず、層形成部2は、第2照射における1回目の照射により原料Cを硬化させて硬化部m21を形成する。そして、層形成部2は、紫外線レーザLをX方向に沿って所定の距離移動させて、2回目の照射により硬化部m22を形成する。更に、層形成部2は、紫外線レーザLをX方向に沿って所定の距離移動させて、3回目の照射により硬化部m23を形成する。これにより、層の裏面は、より均一になる。以下、当該複数の硬化部によって構成される硬化部の集合を「第2硬化部」として説明する。なお、第2硬化部を形成する際の紫外線レーザLの照射回数は、第1硬化部の照射回数Nの場合と同様の手法により算出されてもよい。
【0040】
[コントローラによる照射条件の決定処理]
目標とする造形物の寸法を得るためには、目標となる硬化膜厚(以下、「目標膜厚」という)に各層が形成される必要がある。ここでいう膜厚とは、図2に示される層の膜厚itのように、層のZ方向における厚さを意味する。各層の目標膜厚を得るためには、原料に照射される紫外線レーザLのエネルギー(以下、「紫外線レーザLの照射エネルギー」という場合がある)をコントロールする必要があり、そのためには目標膜厚に適した紫外線レーザLの照射条件を求める必要がある。そこで、付加製造装置1では、コントローラ10が、目標膜厚に適した紫外線レーザLの照射条件を決定する。以下、1つの層に着目して説明するが、紫外線レーザLの照射条件の決定手法については他の層も同様である。
【0041】
付加製造装置1においては、原料への侵入深さが活用される。侵入深さは、原料にレーザ光を当てた際に、原料の表面(上面)から、光(紫外線)強度が1/eまで減少するポイントまでのZ方向における深さである。具体的には、コントローラ10は、原料の硬化前及び硬化後それぞれにおける原料への侵入深さが用いられて予め取得された関係に基づいて、紫外線レーザLの照射条件を決定する。予め取得された関係の詳細については後述する。以下、原料の硬化前における原料への侵入深さを第1侵入深さDといい、原料の硬化後における原料への侵入深さを第2侵入深さD’という。
【0042】
図1に示されるように、コントローラ10は、機能的構成要素として、第1取得部11、第1算出部12、第2取得部13(取得部の一例)、及び決定部14を有する。後述の製造条件決定方法の説明において、各機能部の機能(動作)を詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0043】
第1取得部11は、第1侵入深さD、及び臨界エネルギー(エネルギー値)Eを取得する。第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEは、後述する照射条件の算出に用いられる。第1取得部11は、作業員による入力操作、通信又は記憶媒体を介して、第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEを取得する。第1算出部12は、第2侵入深さD’を算出する。第2取得部13は、層の目標膜厚、及び、層を形成する際の原料への紫外線レーザLの照射回数を取得する。決定部14は、取得された目標膜厚及び照射回数と、予め取得された関係とに基づいて、照射条件を決定する。
【0044】
以下、図6に示されるフローチャートを用いて、コントローラ10による製造条件決定処理について説明する。図6は、コントローラ10による一連の製造条件決定処理を示すフローチャートである。まず、第1取得部11が、第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEを取得する(ステップS01)。臨界エネルギーEは、スラリー状の原料が硬化する最小の紫外線レーザLのエネルギー値である。すなわち、臨界エネルギーEは、原料が硬化する紫外線レーザLの臨界値である。第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEは、後述するステップS02の第2侵入深さD’の算出処理に用いられる。一例として、第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEは、付加製造装置1内の記憶部(図示せず)等に記憶されている。
【0045】
以下、第1侵入深さD、及び臨界エネルギーEについて、簡単に説明する。まず、原料の所定の領域に対して照射が行われることで、1つの硬化部が形成される。続いて、形成された硬化部の硬化深さCを測定する。「硬化深さ」とは、形成された硬化部の面内それぞれの位置における厚さ(Z方向における大きさ)うち、最大の厚さである。そして、紫外線レーザLの照射エネルギーを互いに異なる複数の値に変えて、硬化部の形成及び硬化部の測定が繰り返し行われる。続いて、片対数グラフ上に、横軸に紫外線レーザLの各照射エネルギーを、縦軸に形成した各硬化部の硬化深さCをプロットする。このようにしてプロットされた紫外線の照射エネルギーと硬化部の硬化深さCとの関係を示す複数の点は、ほぼ直線を描く。そして、当該複数の点に基づいて得られる直線の傾きが、第1侵入深さDとして得られ、硬化深さC=0の際の照射エネルギー(すなわち、直線の最も下端部)が、臨界エネルギーEとして得られる。
【0046】
図7は、紫外線の照射エネルギーと硬化部の硬化深さCとの関係を示すグラフG1の一例である。図7に示される例では、以下の条件に設定された紫外線レーザLによる走査が複数回行われている。
照射出力P=100~300mW
走査速度V=500~5000mm/s、
紫外線レーザLのスポット半径wo=419.7(照射出力P=300mW時),426.5(照射出力P=200mW時),443.8(照射出力P=100mW時)
【0047】
方対数グラフであるグラフG1には、グラフG1にプロットされた複数の点に基づく直線Liが示されている。直線Liを表す式は、y=201.8(x)-317.6である。したがって、直線Liの傾きである201.8μmが、第1侵入深さDとして得られ、硬化深さC=0の際の照射エネルギー4.82mJ/cmが、臨界エネルギーEとして得られる。
【0048】
図6に戻り、第1算出部12は、第2侵入深さD’を算出する(ステップS02)。第1算出部12は、原料における所定の領域に対して2回照射を行った際の1回目の照射によって形成される硬化部、及び2回目の照射によって形成される硬化部のそれぞれの硬化深さからD’を算出する。
【0049】
第2侵入深さD’は、原料における所定の領域に対して紫外線レーザLを2回照射する際に形成される2つの硬化部の硬化深さを用いて求めることが可能である。具体的には、第2侵入深さD’は、1回目の行った際に形成される第1膜の硬化深さ、及び第1膜の形成後に当該領域に対して2回目の照射を行った際に形成される第2膜の硬化深さを用いて求められる。
【0050】
図8の(A)は、第1膜M1の例の模式図、図8の(B)は、第1膜M1及び第2膜M2の例の模式図である。図8の(A)に示される例では、原料における所定の領域Rに対して、紫外線レーザLによる照射エネルギーEの1回目の照射が行われて、第1膜M1が形成されている。図8の(B)に示される例では、領域Rに対して、紫外線レーザLによる照射エネルギーEの2回目の照射が行われて、第1膜M1が形成された領域よりも下方において第2膜M2が形成されている。そして、図8の(A),図8の(B)に示される例では、第1膜M1の硬化深さがZとして、第2膜M2の硬化深さがaとして示されている。
【0051】
このような第1膜M1及び第2膜M2を用いて、第1算出部12は、第2侵入深さD’を以下のように求める。
【0052】
まず、第1膜M1の硬化深さZは、例えば、以下の数式(17)によって表される。
【数7】

ここで、Eは紫外線レーザLの照射エネルギーである。照射エネルギーEは、以下の数式(18)によって表される。
【数8】

ここで、woは紫外線レーザLのスポット半径、Pは紫外線レーザLの照射出力、及びVは紫外線レーザLの走査速度である。このように、第1膜M1の硬化深さZを得ることができる。
【0053】
また、第2膜M2の硬化深さaは、以下の数式(19)によって表される。
【数9】

ここで、Eは、第2膜M2の寄与照射エネルギーである。寄与照射エネルギーは、紫外線レーザLの照射エネルギーのうち、原料の硬化に寄与するエネルギーである。例えば、原料において硬化部(膜)を有しない領域(レーザ未照射領域)に紫外線レーザLが照射される場合には、当該領域に形成される硬化部の形成に寄与する寄与照射エネルギーは、紫外線レーザLそのものの照射エネルギーと等しくなる。一方、原料において既に形成された硬化部を有する領域(レーザ照射領域)に紫外線レーザLが再び照射される場合には、紫外線レーザLの照射エネルギーが当該既に形成された硬化部において減衰するため、当該既に形成された硬化部よりも下方に更に形成される硬化部に対する寄与照射エネルギーは、紫外線レーザLそのものの照射エネルギーとは異なる。寄与照射エネルギーEは、以下の数式(20)によって表される。
【数10】
【0054】
数式(19)のEに数式(20)を代入することによって、以下の数式(21)に示される第2膜M2の硬化深さaが得られる。また、第1膜M1の硬化深さZと第2膜M2の硬化深さaとの和であるZは、以下の数式(22)によって表される。
【数11】
【0055】
続いて、数式(22)を変換することによって、以下の数式(23)に示される第2侵入深さD’が得られる。
【数12】
【0056】
以上のように、第1算出部12は、照射条件を決定する前に、第1侵入深さDと、紫外線レーザLを原料の所定の領域に照射する際に形成される第1膜の硬化深さと、紫外線レーザLを第1膜が形成された領域に照射する際に更に形成される第2膜の硬化深さと、に基づいて、第2侵入深さD’を算出する。また、第2侵入深さD’は、上記数式(23)の関係を満たす。これにより、付加製造装置1は、数式(23)に基づいて第2侵入深さD’を予め取得できる。
【0057】
図6に戻り、第2取得部13が、目標膜厚、及び層形成部2による原料への紫外線レーザLの照射回数を取得する(ステップS03)。一例として、第2取得部13は、操作盤を介して作業員から目標膜厚の入力を受け付けることにより、目標膜厚を受け付ける。また、第2取得部13は、距離d及び成膜幅Lを示す情報を取得して、上述した数式(16)に基づいて照射回数を算出してもよいし、また、操作盤を介して作業員から照射回数の入力を受け付けることにより、照射回数を受け付けてもよい。
【0058】
続いて、決定部14が、紫外線レーザLの照射条件を決定する(ステップS04)。決定部14は、ステップS03において取得した目標膜厚、及び、原料に対する紫外線レーザLの照射回数と、ステップS01において取得した第1侵入深さDと、ステップS02において算出した第2侵入深さD’との予め取得された関係に基づいて、照射条件を決定する。以下、上記予め取得された関係について説明する。
【0059】
予め取得された関係は、照射回数と、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さDと、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さD’と、臨界エネルギーEと、照射条件との関係である。予め取得された関係は、以下で説明する複数の導出式によって表される。当該複数の導出式のそれぞれは、層の膜厚を算出するための式である。層の膜厚は、第1硬化部の膜厚と第2硬化部の膜厚との累積である。
【0060】
当該複数の導出式は、以下の2点が考慮されて導出される。第1に、上述したように、第1硬化部は、紫外線レーザLが複数回照射されて形成された複数の硬化部の集合であって、当該複数の硬化部においては、照射範囲の一部同士が互いに重複している。したがって、第1硬化部の硬化深さは、Y方向に沿った層(第1硬化部)の位置yごとに異なり得る。第2に、硬化部が存在しない箇所に紫外線レーザLを照射して硬化部を形成する場合と、硬化部がすでに存在する箇所に紫外線レーザLを照射して当該硬化部の下方に更に新たな硬化部を形成する場合とでは、硬化部の形成の態様が異なる。これは、硬化前と硬化後とでは、原料の光の吸収度合いが異なり、硬化後の原料の侵入深さ(すなわち、第2侵入深さD’)は、硬化前の原料への侵入深さ(すなわち、第1侵入深さD)とは異なるためであると考えられる。これら2点を踏まえて、上記複数の導出式は、第1硬化部の位置y、第1侵入深さD、及び第2侵入深さD’が考慮されて表される。以下、上記複数の導出式の詳細について説明する。
【0061】
上記複数の導出式は、位置yにおける第1硬化部を構成する各硬化部の硬化形状を表す複数の数式、及び位置yにおける第2硬化部を構成する各硬化部の硬化形状を表す数式を含む。硬化形状は、位置yにおける硬化部の厚さである。すなわち、硬化深さは、硬化部の最大厚さであるのに対して、硬化形状は、硬化部のY方向に沿った所定の位置の厚さ(Z方向における大きさ)である。以下、まず、位置yにおける第1硬化部を構成する各硬化部の硬化形状を表す複数の数式について説明した後、位置yにおける第2硬化部を構成する各硬化部の硬化形状を表す数式について説明する。
【0062】
位置yにおける第1硬化部を構成する各硬化部の硬化形状を表す複数の数式は、第1照射における紫外線レーザLの1番目の照射によって形成される硬化部に対応する数式、2番目以降の照射によって形成される硬化部に対応する数式を含む。
【0063】
第1照射における1番目の照射によって形成される硬化部に対応する数式について説明する。まず、この1番目の紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける寄与照射エネルギーE(y,z)は、Lambert Beerの法則に基づいて、以下の数式(24)によって表される。
【数13】

ここで、zは、第1照射における1番目の紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状である。また、Emaxは、数式(18)で表されるEと等しい。すなわち、Emaxは、以下の数式(25)によって表される。
【数14】
【0064】
続いて、この数式(24)中の寄与照射エネルギーE(y,z)を臨界エネルギーEに置き換えて、数式(24)を変換する。これにより、位置yにおける硬化形状zであるz(y)を表す以下の数式(26)が得られる。
【数15】
【0065】
次に、第1照射における2番目以降の照射によって形成される各硬化部に対応する数式について説明する。まず、n番目の紫外線レーザLの照射によって形成される硬化部の位置yにおける寄与照射エネルギーE(y,z)は、以下の数式(27)で表される。nは、2以上の整数であって、取得された照射回数以下である。つまり、数式(27)は、全体の照射回数のうち、n番目の紫外線レーザLの照射によって形成される硬化部の位置yにおける寄与照射エネルギーを表す。
【数16】

ここで、zは、第1照射におけるn番目の紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状であって、zn―1(y)は、第1照射における1番目から(n-1)番目の照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状である。具体的には、硬化形状zn-1(y)は、位置yにおいて、1番目の照射によって形成される硬化部から、(n-1)番目の照射によって形成される硬化部までの合計の厚さである。
【0066】
そして、この数式(27)を変換することによって、位置yにおける硬化形状zであるa(y)を表す以下の数式(28)が得られる。換言すれば、硬化形状a(y)は、n番目の紫外線レーザLの照射のみによって形成される硬化部の位置yにおける厚さ(Z方向における大きさ)である。
【数17】
【0067】
1番目からn番目まで紫外線レーザLが照射された時点において、上記のように得られた各硬化形状の累積は、第1硬化部(層)の位置yにおける硬化形状となる。したがって、第1照射における1番目からn番目まで紫外線レーザLが照射後の第1硬化部の位置yにおける硬化形状z(y)は、以下の数式(29)で表される。硬化形状z(y)は、後述する層の膜厚の導出に用いられる。
【数18】
【0068】
次に、第2照射によって形成される第2硬化部に対応する数式について説明する。まず、第2照射によって原料が硬化して形成される第2硬化部の位置yにおける寄与照射エネルギーEch(y)を表す式は、以下の数式(30)によって表される。
【数19】
【0069】
続いて、この数式(30)中、寄与照射エネルギーEch(y)を臨界エネルギーEに置き換え、硬化形状zを、第2照射時の紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される硬化部の位置yにおける硬化形状ach(y)に置き換えて、数式(30)を変換する。これにより、硬化形状ach(y)を表す以下の数式(31)が得られる。
【数20】
【0070】
上記のように得られた第1硬化部の硬化形状z(y)と第2硬化部の硬化形状ach(y)との累積は、層の位置yにおける硬化形状となる。したがって、第2照射後の層の位置yにおける硬化形状zch(y)は、以下の数式(32)で表される。
【数21】
【0071】
ここで、図9に示されるグラフを用いて、上記各数式(24)~(32)について説明する。図9は、X方向から層を見た場合において、位置yにおける層の硬化形状の予測を示すグラフGpを示す図である。グラフGpにおいて、横軸は位置yを表し、縦軸左側は各硬化部の硬化形状(硬化深さ)Zを表し、縦軸右側は寄与照射エネルギーEを表す。
【0072】
グラフGpの上側半分には、第1照射における1番目から5番目までの紫外線レーザLの各寄与照射エネルギーE~E、及び第2照射における紫外線レーザLの寄与照射エネルギーEchが示されている。グラフGの下側半分には、第1硬化部を構成する各硬化部mz11~mz15の硬化形状z~z、及び第2硬化部を構成する硬化部mz2の硬化形状zchが示されている。硬化部mz11は、第1照射における1番目の照射によって原料が硬化されて形成された硬化部である。硬化部mz12は、第1照射における2番目の照射によって形成された硬化部である。硬化部mz13は、第1照射における3番目の照射によって原料が硬化されて形成された硬化部である。硬化部mz14は、第1照射における4番目の照射によって形成された硬化部である。硬化部mz15は、第1照射における5番目の照射によって形成された硬化部である。図9に示されるように、各硬化部mz11~mz15は、グラフGにおける左側から順番に、一部同士が互いに重なるように形成される。硬化部mz2は、第1照射後の第2照射によって形成された硬化部である。
【0073】
寄与照射エネルギーEは、硬化部mz11の形成に寄与するエネルギーである。寄与照射エネルギーEは、硬化部mz12の形成に寄与するエネルギーである。寄与照射エネルギーEは、硬化部mz13の形成に寄与するエネルギーである。寄与照射エネルギーEは、硬化部mz14の形成に寄与するエネルギーである。寄与照射エネルギーEは、硬化部mz15の形成に寄与するエネルギーである。寄与照射エネルギーEchは、硬化部mz2の形成に寄与するエネルギーである。
【0074】
位置yにおける寄与照射エネルギーEは、数式(24)に基づいて求められる。位置yにおける各寄与照射エネルギーE~Eは、数式(27)に基づいて求められる。位置yにおける寄与照射エネルギーEchは、数式(30)に基づいて求められる。具体的には、各数式(24),(27),(30)中の各位置y、照射回数n、第1侵入深さD、第2侵入深さD’、距離d、紫外線レーザLの照射出力P、紫外線レーザLの走査速度V、臨界エネルギーEに適宜適切な値を代入することにより、各寄与照射エネルギーE~E,Echの予測が行われる。
【0075】
硬化部mz11の位置yにおける硬化形状zは、数式(26)に基づいて求められる。各硬化部mz12~mz15の位置yにおける硬化形状z~zは、数式(28),(29)に基づいて求められる。硬化部mz2の位置yにおける硬化形状zchは、数式(31),(32)に基づいて求められる。具体的には、各数式(26),(28),(29),(31),(32)中の各位置y、照射回数n、第1侵入深さD、第2侵入深さD’、距離d、紫外線レーザLの照射出力P、及び紫外線レーザLの走査速度V、及び臨界エネルギーE内のパラメータに適切な値を代入することにより、各硬化形状z~z,zchの予測が行われる。
【0076】
コントローラ10は、以上のように表される複数の数式(25),(26),(28),(29),(31),(32)を用いて、照射条件を決定する。より詳細には、コントローラ10は、目標膜厚、及び照射回数を取得した場合、目標膜厚を数式(32)中の硬化形状zch(y)として設定する。そして、コントローラ10は、層の各位置yにおいて目標膜厚=z(y)+a(y)の関係が満たされるように、数式(25),(26),(28),(29),(31),(32)内の所定のパラメータを調整してフィッティングを行う。
【0077】
具体的には、コントローラ10は、紫外線レーザLがN回照射されて形成される層の各位置yが限りなく目標膜厚となるように、紫外線レーザLの照射条件としてのパラメータを決定する。紫外線レーザLの照射条件は、上記複数の導出式に含まれるEmaxを表す数式(25)中の紫外線レーザLのスポット半径wo、紫外線レーザLの照射出力P、及び紫外線レーザLの走査速度Vの少なくとも1つを含む。すなわち、コントローラ10は、層の各位置が限りなく目標膜厚となるように、スポット半径wo、照射出力P、及び走査速度Vの少なくとも1つを決定する。これにより、付加製造装置1は、目標膜厚の形成に影響のある紫外線レーザLのパラメータを決定できる。一例として、コントローラ10は、紫外線レーザLの照射出力P、及び紫外線レーザLの走査速度Vを決定する。
【0078】
このように、決定部14は、取得された目標膜厚及び照射回数を入力とし、照射条件を決定する。これにより、セラミックス粒子と紫外線硬化樹脂とを含む原料を硬化させる場合に、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0079】
以上のようにして、製造条件決定処理が終了する。このように、コントローラ10は、付加製造装置1の層形成部2等の制御装置としてだけでなく、製造条件決定装置としても機能する。製造条件決定装置は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料に、照射範囲の少なくとも一部が互いに重なるように紫外線レーザLを複数回照射して層を形成し、3次元形状の造形物を形成する付加製造において、紫外線レーザLの照射条件を決定する装置である。
【0080】
照射条件を決定すると、コントローラ10は、照射条件に基づいて、層形成部2から紫外線レーザLを照射させる。具体的には、コントローラ10は、決定したスポット半径wo、照射出力P、及び走査速度Vの少なくとも1つの条件に設定された紫外線レーザLを、基台31上の原料に照射することによって、原料が硬化した層を形成する。
【0081】
[製造条件決定プログラム]
製造条件決定装置としての機能を有するコントローラ10としてコンピュータを機能させるための製造条件決定プログラムPR1を、図10を用いて説明する。図10は、製造条件決定プログラムPR1の構成を示す図である。
【0082】
図10に示されるように、製造条件決定プログラムPR1は、メインモジュールPR11、第1取得モジュールPR12、第1算出モジュールPR13、第2取得モジュールPR14、及び決定モジュールPR15を備える。メインモジュールPR11は、製造条件決定装置に係る処理を統括的に制御する部分である。第1取得モジュールPR12、第1算出モジュールPR13、第2取得モジュールPR14、及び決定モジュールPR15を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記実施形態における第1取得部11、第1算出部12、第2取得部13、及び決定部14の機能と同様である。
【0083】
製造条件決定プログラムPR1は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及び半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体MDによって提供される。製造条件決定プログラムPR1は、データ信号としてネットワークを介して提供されてもよい。
【0084】
[実施形態のまとめ]
付加製造装置1、製造条件決定装置、及び製造条件決定プログラムPR1においては、紫外線レーザLの照射回数と、第1侵入深さDと、第2侵入深さD’と、紫外線レーザLの照射条件との予め取得された関係、及び取得した層の目標膜厚に基づいて、紫外線レーザLの照射条件を決定する。よって、この付加製造装置1は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料からなり且つ重複領域を有する層を形成する場合であっても、層の目標膜厚に対して適切なレーザの照射条件を得ることができる。
【0085】
一般に、層の膜厚と、紫外線レーザLの照射エネルギーとの間には、相関があると考えられる。したがって、予め、層の膜厚と紫外線レーザLの照射エネルギーとの相関関係を把握しておくことにより、目標膜厚に適した照射条件を算出することが可能となる。しかしながら、付加製造装置1が形成する層の目標膜厚と、紫外線レーザLの照射エネルギーとの相関関係を従来の手法によって把握するには、以下の問題がある。
【0086】
すなわち、まず、1の走査によって形成された硬化部の硬化形状については、上記数式(26)で示されるLambert Beerの法則によって、上記相関関係を得ることが可能である。しかしながら、付加製造装置1によって形成される層においては、層における裏面を均一にするために、紫外線レーザLを、照射範囲の一部が互いに重なるように複数回走査する。そうすると、層において、重複して硬化する重複領域(干渉領域)が発生する。よって、実際に層を形成する際には、上記数式(26)に基づいて目標膜厚を得るのに適切な紫外線レーザLの照射エネルギーを把握することは困難である。
【0087】
また、付加製造装置1に用いられる原料には、紫外線硬化樹脂に加えて、セラミックス粒子が含まれている。例えば、原料が樹脂のみからなる場合には、層の膜厚は、照射する紫外線の総エネルギー量によって決定される。しかしながら、原料が紫外線硬化樹脂に加えてセラミックス粒子を含む場合には、結果的には総エネルギー量が同一であっても、紫外線レーザLの照射回数によって層の膜厚が異なってくる。
【0088】
ここで、図11及び図12を用いて、紫外線硬化樹脂のみを含む原料の硬化深さの態様と、紫外線硬化樹脂及びセラミックス粒子を含む原料の硬化深さの態様との比較について説明する。図11は、紫外線硬化樹脂のみを含む原料を硬化させた場合の硬化深さを示すグラフG2を示す図である。グラフG2において、横軸は照射回数nを示し、縦軸は硬化深さを示す。図12は、紫外線硬化樹脂及びセラミックス粒子を含む原料を硬化させた場合の硬化深さを示すグラフG3を示す図である。グラフG3において、横軸は照射回数nを示し、縦軸は硬化深さを示す。
【0089】
図11に示される例、及び図12に示される例のそれぞれにおいて、紫外線レーザLがある領域に1回照射されたケースにおける硬化深さ、及び当該領域に複数回照射されたケースにおける硬化深さが示されている。1回照射のケース、及び複数回照射のケースにおいて、上記領域に照射された紫外線レーザLの総照射エネルギー、及び上記領域に紫外線レーザLが照射された時間は互いに同一である。図11に示される例、及び図12に示される例のそれぞれにおいて、複数回照射のケースにおいては、1回、5回、及び10回照射した場合のそれぞれの硬化深さがプロットされている。また、図11に示される例、及び図12に示される例のそれぞれにおいて、1回照射のケースにおいては、複数回照射のケースと同様に1回、5回、及び10回照射した場合と同条件の下の硬化深さがプロットされている。
【0090】
図11に示されるように、紫外線硬化樹脂のみを含む原料を硬化させた場合においては、各照射回数において、複数回照射のケースの各硬化深さは、1回照射のケースの各硬化深さと同等であった。これに対し、図12に示されるように、紫外線硬化樹脂及びセラミックス粒子を含む原料を硬化させた場合においては、5回照射時、及び10回照射時において、複数回照射のケースの各硬化深さは、1回照射のケースの各硬化深さよりも小さくなった。すなわち、紫外線硬化樹脂のみを含む原料を硬化させた場合、紫外線レーザLの照射回数にかかわらず、層の硬化深さ(膜厚)は紫外線レーザLの総照射エネルギーによって決定付けられる。これに対し、原料が紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む場合には、層の膜厚は紫外線レーザLの照射回数に左右され、層の膜厚を紫外線レーザLの総照射エネルギーによって決定付けることは困難である。
【0091】
そこで、付加製造装置1においては、原料への侵入深さが活用される。原料の硬化後の原料への侵入深さは、原料の硬化前の侵入深さから変化する。これは、硬化後は硬化に必要なエネルギーが不要なため硬化前より光を通し易いと考えるためである。そして、このような原料の硬化前及び硬化後それぞれにおける原料への侵入深さを用いることで、層の目標膜厚を得るのに適した紫外線レーザLの照射条件の予測が可能である。具体的には、付加製造装置1においては、硬化前の原料への侵入深さと、硬化後の原料への侵入深さと、紫外線レーザLの照射回数と、レーザの照射条件との予め取得された関係、及び取得した層の目標膜厚に基づいて、レーザの照射条件を決定する。よって、この付加製造装置1は、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含む原料からなり且つ重複領域を有する層を形成する場合であっても、層の目標膜厚に対して適切なレーザの照射条件を得ることができる。
【0092】
付加製造装置1では、上記予め取得された関係が、スラリー状の原料が硬化する最小の紫外線レーザLのエネルギー値である臨界エネルギーEを含む。これにより、付加製造装置1は、スラリー状の原料が固体状に変化する臨界値を考慮して照射条件を決定できる。
【0093】
付加製造装置1では、照射回数、第1侵入深さD、第2侵入深さD’、及び照射条件は、予め取得された関係として、上記各数式(25),(26),(28),(29)の関係を満たす。これにより、付加製造装置1は、上記各数式(25),(26),(28),(29)に基づいて目標膜厚に対する紫外線レーザLの照射条件を決定できる。また、照射回数、第1侵入深さD、第2侵入深さD’、及び照射条件は、予め取得された関係として、更に上記各数式(31),(32)の関係を満たす。これにより、付加製造装置1は、硬化部が平坦な層となるように走査方向を交差させるクロスハッチングが行われて層が形成される場合であっても、目標膜厚の層を形成するためのレーザの照射条件を決定できる。
【0094】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0095】
コントローラ10は、第2取得部13、及び決定部14を有していればよく、第1取得部11、及び第1算出部12を有していなくてもよい。その場合、コントローラ10は、例えば、付加製造装置1の記憶部、又は付加製造装置1の外部のサーバ(図示せず)等から第2侵入深さD’を取得してもよい。製造条件決定プログラムPR1は、第2取得モジュールPR14、及び決定モジュールPR15を有していればよく、第1取得モジュールPR12、及び第1算出モジュールPR13を有していなくてもよい。
【0096】
製造条件決定装置は、コントローラ10とは別の装置であってもよく、例えば、付加製造装置1の外部のサーバであってもよい。
【0097】
層形成部2は、クロスハッチングを行わなくてもよい。すなわち、層形成部2は、第2照射を実行せずに、第1硬化部を形成する第1照射のみを実行してもよい。
【0098】
層形成部2は、所定の領域に紫外線レーザLを複数回照射して層を形成してもよい。その場合、コントローラ10は、図8(C)を用いて以下に説明する予め定められた関係を用いて紫外線レーザLの照射条件を決定してもよい。
【0099】
図8(C)は、領域Rに紫外線レーザLをN=(n+1)回照射した場合に形成された膜Mnの例の模式図である。まず、n番目の紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される膜Mnの硬化深さan+1は、以下の数式(33)によって表される。
【数22】

ここで、Eは、n番目の紫外線レーザLの照射による寄与照射エネルギーであって、以下の数式(34)によって表すことができる。
【数23】

ここで、zは、1番目からn番目までの紫外線レーザLの照射によって原料が硬化して形成される各膜の合計の硬化深さである。
【0100】
数式(33)のEに数式(34)を代入することによって、膜Mnの硬化深さan+1は以下の数式(35)によって表される。また、1番目からn番目までの紫外線レーザLの照射によって形成された各膜の合計の硬化深さZn+1は、以下の数式(36)によって表される。
【数24】
【0101】
続いて、数式(36)の両辺のそれぞれから、(Dp’/Dp)×Zを引くことにより、硬化深さZn+1は、以下の数式(37)によって表される。
【数25】
【0102】
ここで、数式(37)は等比数列となるので、以下の数式(38)に表され、数式(38)を変換することで、硬化深さZを示す数式(39)が得られる。
【数26】
【0103】
また、数式(39)は、硬化深さZ及びZを用いることによって、以下の数式(40)のように表される。
【数27】
【0104】
以上のような複数の数式を用いることで、層形成部2が所定の領域に紫外線レーザLを複数回照射して層を形成する場合であっても、コントローラ10は、上記実施形態と同様に、目標膜厚に適した紫外線レーザLの照射条件を決定できる。
【0105】
さらに、紫外線レーザの照射条件は、数式(2)~(5)の関係を満たせばよく、照射条件の決定方法は、種々の方法で実施されてもよい。例えば、コントローラ10は、プログラムを実行して数式(2)~(5)を演算し、紫外線レーザの照射条件を決定してもよい。あるいは、コントローラ10は、論理回路又は集積回路によって数式(2)~(5)を演算し、紫外線レーザの照射条件を決定してもよい。あるいは、コントローラ10は、目標膜厚と照射回数と紫外線レーザの照射条件とを記憶したテーブルを有し、当該テーブルを参照することで、数式(2)~(5)の関係を満たす紫外線レーザの照射条件を決定してもよい。あるいは、例えば、照射回数、原料の硬化前における原料への侵入深さである第1侵入深さ、原料の硬化後における原料への侵入深さである第2侵入深さ、及び、照射条件をデータベース化し、これらを教師データとした機械学習で、数式(2)~(5)の関係を満たす紫外線レーザの照射条件が決定されてもよい。数式(8)~(11)、数式(12)~(15)についても、数式(2)~(5)と同一の手法で紫外線レーザの照射条件を決定できる。
[実施例]
【0106】
以下、発明者が確認した実施形態の効果について説明する。
【0107】
紫外線レーザLとして、レーザーマーカー(光響)を用意した。紫外線レーザLは、波長355nm、照射出力P=300mW、走査速度V=71mm/s、スポット半径wo=419.7μm、及び距離d=210,420,630μmである。
【0108】
原料として、紫外線硬化樹脂とセラミックス粒子とを含むスラリー状の原料を用意した。原料において、樹脂はアロニックス 0T-2506(東亜合成)であって、セラミックスは白色 TZ-PX-245(東ソー)40vol%である。また、開始剤は0mmirad380(IGM)1.0wt%である。当該原料における第1侵入深さDは、38.0μm、臨界エネルギーEは58,8mJ/cmである。
【0109】
層形成部2に上記紫外線レーザLを上記原料に照射させて、互いに距離dの異なる複数の層を形成した。具体的には、距離d=200μmの場合の層、距離d=400μmの場合の層、及びd=800μmの場合の層を形成した。そして、各層の膜厚を測定した。また、各層の膜厚を予測した。具体的には、まず、紫外線レーザLを照射して形成した第1膜及び第2膜を計測し、数式(23)を用いて第2侵入深さD’を算出した。続いて、層の位置y、照射回数n、第1侵入深さD、第2侵入深さD’、距離d、臨界エネルギーE、及び紫外線レーザLの上記照射条件を各数式(25),(26),(28),(29),(31)に適宜代入して、層の膜厚として数式(32)によって求められる硬化形状zchを得て、これを層の膜厚の予測とした。
【0110】
結果として、距離d=200μmの層については、予測の膜厚が134.9~138.0μmであったのに対し、実測の膜厚は136.8μmであった。距離d=400μmの層については、予測の膜厚が132.7~135.9μmであったのに対し、実測の膜厚は134.0μmであった。距離d=800μmの層については、予測の膜厚が122.6~133.6μmであったのに対し、実測の膜厚は126.4μmであった。いずれの距離dの場合においても、予測の膜厚は実測の膜厚と近い値を示した。つまり、第1侵入深さD及び第2侵入深さD’等を用いた本手法によれば、層の膜厚の予測を高精度に行うことができる。換言すれば、本手法によれば、層の目標膜厚に対して適切な紫外線レーザLの照射条件を決定することができる。なお、層の膜厚の予測と実測との誤差を考慮すると、最適な距離dは紫外線レーザLのスポット半径woと同等と考えられる。
【符号の説明】
【0111】
1…付加製造装置、2…層形成部、10…コントローラ(製造条件決定装置)、I…造形物、13…第2取得部(取得部)、14…決定部、m11,m12,m13,m21,m22,m23,mz2,mz11,mz12,mz13,mz14,mz15…硬化部、31…基台、C…原料、i…層、D…走査、d…距離、L…紫外線レーザ、M1…第1膜、M2…第2膜、PR1…製造条件決定プログラム、R…領域、z~z,zch…硬化形状。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12