(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173350
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/36 20180101AFI20241205BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241205BHJP
F24F 8/30 20210101ALI20241205BHJP
F24F 1/0076 20190101ALI20241205BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20241205BHJP
F25B 1/00 20060101ALN20241205BHJP
F24F 110/65 20180101ALN20241205BHJP
【FI】
F24F11/36
F24F11/74
F24F8/30
F24F1/0076
F25B49/02 520M
F25B1/00 396E
F24F110:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091707
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】井川 慎介
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭弘
【テーマコード(参考)】
3L051
3L260
【Fターム(参考)】
3L051BC00
3L260AB02
3L260AB18
3L260BA52
3L260CA17
3L260CA28
3L260CB62
3L260FA02
3L260FA07
3L260FB12
3L260FC22
(57)【要約】
【課題】低風量モード(第1運転モード)と高風量モード(第2運転モード)とがある場合において、特に低風量モード(第1運転モード)での冷媒の着火を抑制する。
【解決手段】空気調和装置は、可燃性の冷媒が流れる熱交換器と、ファンと、放電部と、ファン及び放電部を制御する制御部とを備えている。制御部は、ファンを第1風量Q1で運転させる低風量モードと、ファンを第2風量Q2(>Q1)で運転させる高風量モードとを実行可能である。制御部は、低風量モードで放電部を運転させず、高風量モードで放電部を運転させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性の冷媒が流れる熱交換器(22)と、ファン(21)と、放電部(31)と、前記ファン(21)及び前記放電部(31)を制御する制御部(100)と、を備え、
前記制御部(100)は、前記ファン(21)を第1風量で運転させる第1運転モードと、前記ファン(21)を前記第1風量よりも大きい第2風量で運転させる第2運転モードと、を実行可能であり、
前記制御部(100)は、前記第1運転モードで前記放電部(31)を運転させず、前記第2運転モードで前記放電部(31)を運転させる、空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記冷媒は空気よりも重く、
前記放電部(31)が前記熱交換器(22)の下端よりも上方に位置する、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記制御部(100)は、前記第1運転モードと前記第2運転モードとを選択的に実行する場合において、前記放電部(31)の運転中に前記ファン(21)の風量を前記第2風量から前記第1風量に変更する指令を受けると、前記放電部(31)の運転停止と前記風量の変更とを実行する、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記制御部(100)は、前記第1運転モードと前記第2運転モードとを選択的に実行する場合において、前記放電部(31)の運転中に前記ファン(21)の風量を前記第2風量から前記第1風量に変更する指令を受けると、前記風量の変更を実行せずに前記放電部(31)の運転を維持する、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記熱交換器(22)が前記ファン(21)の上流に位置する、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項6】
前記制御部(100)は、前記第2運転モードの実行中に、前記冷媒の漏洩を検知すると、前記放電部(31)の運転を停止させる、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項7】
前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、
前記基準値は、吹出口面積から定まる、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項8】
前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、
前記基準値は、空調能力と設置空間に関する値とのいずれかから定まる、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項9】
前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、
前記基準値は、冷媒充填量から定まる、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項10】
前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、
前記基準値は、吹出口面積と、空調能力、設置空間
に関する値及び冷媒充填量のいずれかと、から定まる、請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項11】
前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、
前記制御部(100)は、ユーザにより入力された値に基づいて、前記基準値を導出する、請求項1~10のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可燃性の冷媒が流れる熱交換器を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の室内機は、可燃性の冷媒が流れる熱交換器と、室内ファンと、放電装置と、室内ファン及び放電装置を制御する制御部とを備えている。特許文献1において、制御部は、熱交換器から漏洩した冷媒が運転中の放電装置に接触して着火するのを抑制するため、室内ファンの回転数が最低回転数以上であるときに放電装置の運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の室内機(空気調和装置)では、室内ファン(ファン)が生成する吹出風が低風量の状態で可燃性冷媒が漏洩した場合、冷媒が十分に拡散されないため、可燃性冷媒が放電部に接して引火するおそれが高まる。
【0005】
本開示の目的は、特にファンの風量が小さい低風量モードでの冷媒の着火を抑制することができる空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1観点に係る空気調和装置は、可燃性の冷媒が流れる熱交換器と、ファンと、放電部と、前記ファン及び前記放電部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ファンを第1風量で運転させる第1運転モードと、前記ファンを前記第1風量よりも大きい第2風量で運転させる第2運転モードと、を実行可能であり、前記制御部は、前記第1運転モードで前記放電部を運転させず、前記第2運転モードで前記放電部を運転させる。
【0007】
本開示の第1観点によると、制御部は、第1運転モードで放電部を運転させず、第2運転モードで放電部を運転させる。これにより、特に第1運転モードでの冷媒の着火を抑制することができる。
【0008】
本開示の第2観点に係る空気調和装置は、上記第1観点において、前記冷媒は空気よりも重く、前記放電部が前記熱交換器の下端よりも上方に位置する。
【0009】
本開示の第2観点によると、熱交換器から漏れ出た空気よりも重い冷媒が放電部に接触するのを抑制できる。
【0010】
本開示の第3観点に係る空気調和装置は、上記第1又は第2観点において、前記制御部は、前記第1運転モードと前記第2運転モードとを選択的に実行する場合において、前記放電部の運転中に前記ファンの風量を前記第2風量から前記第1風量に変更する指令を受けると、前記放電部の運転停止と前記風量の変更とを実行する。
【0011】
本開示の第3観点によると、第1運転モードと第2運転モードとが選択的に実行される場合において、指令に応じた風量での運転を継続することができる。
【0012】
本開示の第4観点に係る空気調和装置は、上記第1又は第2観点において、前記制御部は、前記第1運転モードと前記第2運転モードとを選択的に実行する場合において、前記放電部の運転中に前記ファンの風量を前記第2風量から前記第1風量に変更する指令を受けると、前記風量の変更を実行せずに前記放電部の運転を維持する。
【0013】
本開示の第4観点によると、第1運転モードと第2運転モードとが選択的に実行される場合において、放電を継続することができる。
【0014】
本開示の第5観点に係る空気調和装置は、上記第1~第4観点のいずれかにおいて、前記熱交換器が前記ファンの上流に位置する。
【0015】
本開示の第5観点によると、ファンの気流によって冷媒が拡散し易い。
【0016】
本開示の第6観点に係る空気調和装置は、上記第1~第5観点のいずれかにおいて、前記制御部は、前記第2運転モードの実行中に、前記冷媒の漏洩を検知すると、前記放電部の運転を停止させる。
【0017】
本開示の第6観点によると、第2運転モードの実行中であって、気流による冷媒の拡散が期待される場合であっても、冷媒の漏洩を検知すると、放電部の運転を停止させる。これにより、冷媒の着火をより確実に抑制することができる。
【0018】
本開示の第7観点に係る空気調和装置は、上記第1~第6観点のいずれかにおいて、前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、前記基準値は、吹出口面積から定まる。
【0019】
本開示の第7観点によると、冷媒が十分に拡散する基準値を設定できる。
【0020】
本開示の第8観点に係る空気調和装置は、上記第1~第6観点のいずれかにおいて、前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、前記基準値は、空調能力と設置空間に関する値とのいずれかから定まる。
【0021】
本開示の第8観点によると、冷媒が十分に拡散する基準値を設定できる。
【0022】
本開示の第9観点に係る空気調和装置は、上記第1~第6観点のいずれかにおいて、前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、前記基準値は、冷媒充填量から定まる。
【0023】
本開示の第9観点によると、冷媒が十分に拡散する基準値を設定できる。
【0024】
本開示の第10観点に係る空気調和装置は、上記第1~第6観点のいずれかにおいて、前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、前記基準値は、吹出口面積と、空調能力、設置空間に関する値及び冷媒充填量のいずれかと、から定まる。
【0025】
本開示の第10観点によると、冷媒が十分に拡散する基準値を設定できる。
【0026】
本開示の第11観点に係る空気調和装置は、上記第1~第10観点のいずれかにおいて、前記第1風量<基準値≦前記第2風量であり、前記制御部は、ユーザにより入力された値に基づいて、前記基準値を導出する。
【0027】
本開示の第11観点によると、空気調和装置の機種や設置空間に適した基準値を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る空気調和装置である室内機と、室外機とを含む冷媒回路を示す図である。
【
図4】
図2の室内機における前面パネルが開いた状態の斜視図である。
【
図5】
図2の室内機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】自動運転において低風量モードと高風量モードとが選択的に実行される様子を示すグラフである。
【
図7】本開示の第1実施形態において自動運転で実行されるプログラムを示すフロー図である。
【
図8】本開示の第2実施形態において自動運転で実行されるプログラムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る空気調和装置の室内機1について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0030】
[1] 室内機を含む冷媒回路全体の構成
室内機1は、
図1に示すように、室外機2と配管を介して接続されている。室内機1は、室内ファン21と、室内熱交換器22とを有する。室外機2は、室外ファン41と、室外熱交換器42と、膨張弁43と、閉鎖弁44,45と、圧縮機46と、四方弁47と、アキュムレータ48とを有する。室外機2の圧縮機46、四方弁47、室外熱交換器42及び膨張弁43と、室内機1の室内熱交換器22とで、冷媒回路5を構成し、室内の冷暖房を行う。
【0031】
冷房運転時(除湿運転時を含む。)には、圧縮機46から吐出された高圧冷媒が、四方弁47を通って、室外機2の室外熱交換器42に入る。室外熱交換器42で凝縮された冷媒は、膨張弁43で減圧された後、室内機1の室内熱交換器22に入る。室内熱交換器22で蒸発した冷媒は、四方弁47及びアキュムレータ48を通って、圧縮機46の吸入側に戻る。このように、圧縮機46、室外熱交換器42、膨張弁43、室内熱交換器22及びアキュムレータ48の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが実行される。そして、室内ファン21により室内熱交換器22を介して室内空気を循環させることにより、室内の冷房を行う。
【0032】
暖房運転時には、圧縮機46から吐出された高圧冷媒が、四方弁47を通って、室内機1の室内熱交換器22に入る。室内熱交換器22で凝縮された冷媒は、膨張弁43で減圧された後、室外機2の室外熱交換器42に入る。室外熱交換器42で蒸発した冷媒は、四方弁47及びアキュムレータ48を通って、圧縮機46の吸入側に戻る。このように、圧縮機46、室内熱交換器22、膨張弁43、室外熱交換器42及びアキュムレータ48の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが実行される。そして、室内ファン21により室内熱交換器22を介して室内空気を循環させることにより、室内の暖房を行う。
【0033】
[2] 室内機の構成
室内機1は、
図2に示すように、一方向に細長く、その長手方向が水平となるように室内の壁面に据え付けられる。室内機1は、壁掛け型である。
【0034】
以下、室内機1が壁面に据え付けられたときの上記長手方向を「左右方向」と称し、壁面から室内機1に向かう方向を「前方」と称し、室内機1から壁面に向かう方向を「後方」と称す。
【0035】
室内機1は、ケーシング10と、ケーシング10内に収容される本体部20及びストリーマ放電ユニット30(
図3及び
図4参照)と、制御部100(
図5参照)とを有する。
【0036】
ケーシング10は、
図2に示すように、グリル11と、前面パネル12とを含む。グリル11は、略直方体形状の箱部材であり、前方及び後方に開口している。前面パネル12は、グリル11の前方の開口部11cを開閉可能に、グリル11に取り付けられている。
【0037】
グリル11の上面には、吸込口11aが形成されている。前面パネル12の上面部には、吸込口12aが形成されている。吸込口11aは、左右方向に細長いスリット状の開口を複数設けることで、形成されている。吸込口11a,12aを合わせて吸込口10aと称す。
【0038】
グリル11の下部には、吹出口11bが形成されている。吹出口11bは、左右方向に細長い矩形状の開口である。
【0039】
室内機1は、
図3に示すように、室内ファン21と、室内熱交換器22と、ストリーマ放電ユニット30が取り付けられる取付部23と、水平羽根24とを含む。
【0040】
室内ファン21は、クロスフローファンであり、左右方向に沿った軸を中心に回転することにより、上方及び/又は前方の空気を吸い込みかつ下方に空気を吹き出すような気流(
図3の太矢印参照)を生成する。
【0041】
室内熱交換器22は、室内ファン21の上流(室内ファン21に対し、室内ファン21が生成する気流の上流)に位置している。室内熱交換器22は、室内ファン21の上方と前方を取り囲んでいる。
【0042】
室内熱交換器22には、可燃性の冷媒が流れる。当該冷媒は、空気よりも重く、例えば強燃性冷媒(プロパン等の炭化水素系冷媒)である。
【0043】
ストリーマ放電ユニット30は、
図3に示すように、放電部31と、放電部31を支持するフレーム32とを含む。フレーム32は、絶縁性合成樹脂からなる略矩形状の部材であり、放電部31を支持した状態で、取付部23に対して着脱可能である。フレーム32が取付部23に取り付けられた状態において、放電部31及びフレーム32は、共に、側面視において室内熱交換器22の下端よりも上方に位置し、室内熱交換器22の前側の傾斜面22aと平行に配置される。また、
図3に示すように、室内ファン21が回転することで、吸込口11a,12aから吸い込まれた空気が、放電部31、室内熱交換器22へと、順に流れる。
【0044】
放電部31に電圧が印加されると、ストリーマ放電が発生し、低温プラズマが生成される。低温プラズマによって、高速電子、イオン、水酸化ラジカル、励起酸素分子等の活性種が生成される。活性種は、アンモニア類、アルデヒド類、窒素酸化物等の小さな有機分子からなる空気中の有害成分や臭気成分を分解する能力を有する。
【0045】
水平羽根24は、
図2~
図4に示すように、吹出口11bを開閉可能に、グリル11に取り付けられている。水平羽根24により、吹出口11bから吹き出される気流の上下方向の向きを調整できる。
【0046】
制御部100は、
図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等で構成され、室内ファン21及び放電部31と電気的に接続されている。制御部100は、さらに、室内機1に付属するリモートコントローラ200と電気的に接続されている。制御部100は、リモートコントローラ200からの指令に基づいて、室内ファン21及び放電部31を制御する。また、制御部100は、圧縮機46、膨張弁43等の冷媒回路5の制御も行う。
【0047】
[3] 室内機の動作
制御部100の制御により室内ファン21が駆動されると、吸込口10aからケーシング10内に空気が吸い込まれる。
【0048】
吸込口10aの左側部分から吸い込まれた空気は、室内熱交換器22を通過して熱交換された後、室内ファン21を通過して、吹出口11bから吹き出される。
【0049】
吸込口10aの右側部分から吸い込まれた空気のうち、一部は、開口部23aから取付部23内に流入し、ストリーマ放電ユニット30を通過する。このとき、ストリーマ放電ユニット30の放電部31において、ストリーマ放電が発生することにより、活性種が生成される。ストリーマ放電ユニット30を通過した空気は、室内熱交換器22と室内ファン21とを通過して、吹出口11bから吹き出される。
【0050】
吸込口10aの右側部分から吸い込まれた空気のうち、残りは、ストリーマ放電ユニット30を通過せずに、室内熱交換器22と室内ファン21とを通過して、吹出口11bから吹き出される。
【0051】
[4]空調運転
ユーザは、リモートコントローラ200により、自動運転、冷房運転、暖房運転、除湿運転等を選択可能である。制御部100は、ユーザのリモートコントローラ200を介した指示にしたがい、自動運転、冷房運転、暖房運転、除湿運転等を選択的に実行する。
【0052】
自動運転において、制御部100は、室温等に応じて、暖房運転及び冷房運転のいずれかを選択する。
【0053】
[5] 運転モード
制御部100は、上述した冷房運転及び暖房運転といった空調運転中の室内ファン21の設定風量として、2種類の運転モード(本開示の「第1運転モード」である低風量モード、及び、本開示の「第2運転モード」である高風量モード)を実行可能である。例えば、ユーザが低風量モード又は高風量モードを設定したうえでリモートコントローラ200により空調運転の指示をすると、制御部100は指定された風量設定に従い空調運転を行う。或いは、制御部100は、ユーザの指示に応じてではなく、例えば空調負荷(設定温度と室内温度との差等)に応じて、風量設定を行い、空調運転を行ってもよい。特に、自動運転において、制御部100は、空調負荷に応じて風量設定を行う。
【0054】
制御部100は、低風量モードにおいて室内ファン21を第1風量Q1で運転させ、高風量モードにおいて室内ファン21を第2風量Q2で運転させる。第1風量Q1及び第2風量Q2は、それぞれ室内ファン21の回転数が一定となったときの風量である。
【0055】
第1風量Q1は所定の基準値Q0よりも低い風量であり、第2風量Q2は基準値Q0以上の風量である(第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2)。第2風量Q2は第1風量Q1よりも大きい(Q2>Q1)。
【0056】
室内熱交換器22から冷媒が漏洩すると、当該冷媒は、吹出口11bから空気と共に吹き出され、室内に拡散した後、吸込口10aから空気と共にケーシング10内に吸い込まれる。ケーシング10内に吸い込まれた冷媒は、運転中の放電部31に接触すると、着火し得る。一方、室内ファン21の風量が大きいと、気流によって冷媒が室内に十分に拡散し、冷媒の濃度が薄くなることで、運転中の放電部31に冷媒が接触したとしても、着火しない。
【0057】
制御部100は、基準値Q0(上記のように気流によって冷媒が室内に十分に拡散して冷媒の濃度が薄くなる風量)よりも低い風量での運転である低風量モードでは放電部31を運転させず、基準値Q0以上の風量での運転である高風量モードでは放電部31を運転させる。低風量モードで放電部31を運転させないことで、低風量モードでの冷媒の着火を抑制できる。
【0058】
基準値Q0は、例えば、国際規格IEC60335-2-40:2022 Annex GG.2.3に基づく下記式(1)(2)から定まる。
【0059】
【0060】
【0061】
上記式(1)(2)において、
Q0: 基準値(m3/h)
Amin: 室内機1が設置される部屋(設置空間)の必要最小床面積(m2)
A: 吹出口面積(m2)
mc: 室内機1における冷媒充填量(kg)
CF: 濃度係数
LFL: 燃焼下限界濃度(kg/m3)
2.2: 室内機1が設置される部屋(設置空間)の高さ(m)
Y: 定数
【0062】
上記式(1)(2)によると、基準値Q0は、吹出口面積Aの1/2乗、冷媒充填量mcの3/4乗、係数等の積から算出される。
吹出口面積Aが大きいほど、基準値Q0が大きくなる。吹出口面積Aは、冷媒の拡散力に関連し、冷媒が放電部31に接触する可能性と大きく関連する。具体的には、吹出口面積Aが大きいほど、風速が小さくなって冷媒の拡散力が低下するため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。
冷媒充填量mcが大きいほど、基準値Q0が大きくなる。具体的には、冷媒充填量mcが大きいほど、冷媒漏洩時に室内に放出される冷媒の量が多くなり、冷媒が放電部31に接触する可能性が大きくなるため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。
【0063】
或いは、基準値Q0は、Daniel Colbourne (”Minimum airflow rates to dilute R290 concentrations arising from leaks in room air conditioners”, 13th IIR Gustav Lorentzen Conference, 1104(2018)) に基づく下記式(3)から定まる。
【0064】
【0065】
上記式(3)において、
Q0: 基準値(m3/min)
A: 吹出口面積(m2)
G: LFL=燃焼下限界濃度(kg/m3)
w: 冷媒漏洩速度(kg/h)
h: 吹出口中心の高さ(m)
F: 安全係数(0.25)
【0066】
上記式(3)によると、基準値Q0は、吹出口面積Aの1/2乗、冷媒漏洩速度wの3/4乗、係数等の積から算出される。また、冷媒漏洩速度wは冷媒充填量の因数であるため、上記式(3)によると、基準値Q0は、吹出口面積Aの1/2乗、冷媒充填量の3/4乗、係数等の積から算出される。吹出口面積Aが大きいほど、基準値Q0が大きくなる。冷媒漏洩速度及び冷媒充填量が大きいほど、基準値Q0が大きくなる。
【0067】
冷媒充填量は、空調能力、及び、設置空間に関する値(面積、高さ等)と関連する。したがって、基準値Q0は、吹出口面積Aの1/2乗、空調能力の3/4乗、係数等の積から算出されてよい。基準値Q0は、吹出口面積Aの1/2乗、設置空間に関する値(面積、高さ等)の3/4乗、係数等の積から算出されてよい。空調能力が大きいほど、基準値Q0が大きくなる。設置空間が大きいほど、基準値Q0が大きくなる。具体的には、設置空間が大きくなるにつれて、大きな空調能力が必要となり、冷媒充填量が増える。この場合、冷媒漏洩時に室内に放出される冷媒の量が多くなり、冷媒が放電部31に接触する可能性が大きくなるため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。
【0068】
制御部100は、ユーザによりリモートコントローラ200等を介して入力された値(吹出口面積、冷媒充填量、空調能力、設置空間に関する値等)に基づいて、基準値Q0を導出する。導出された基準値Q0は、ROM102に記憶される。制御部100は、ROM102に記憶された基準値Q0に基づいて、基準値Q0よりも低い風量での運転である低風量モードでは放電部31を運転させず、基準値Q0以上の風量での運転である高風量モードでは放電部31を運転させる、という制御を実行する。
【0069】
[6] 自動運転で実行されるプログラム
ユーザが自動運転を選択し、リモートコントローラ200から自動運転の指令を受けると、制御部100は、室温等に応じて、暖房運転及び冷房運転のいずれかを選択し、かつ、室内ファン21の風量を選択して、室内ファン21を駆動させる。
【0070】
ユーザがリモートコントローラ200によって自動運転を指示すると、制御部100は、
図6に示すように、低風量モードと高風量モードとを選択的に実行する(
図7のS1)。室温等によっては、低風量モードのみ、又は、高風量モードのみが実行される場合がある。
【0071】
S1の後、制御部100は、室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する指令をリモートコントローラ200等から受けたか否かを判断する(S2)。
【0072】
室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する指令を受けたと判断した場合(S2:YES)、制御部100は、放電部31の運転中であるか否かを判断する(S3)。
【0073】
放電部31の運転中であると判断した場合(S3:YES)、制御部100は、放電部31の運転停止と風量の変更とを実行する(S4)。例えば、放電部31の運転を停止させた後、室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する。
【0074】
放電部31の運転中でないと判断した場合(S3:NO)、制御部100は、室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する(S5)。
【0075】
S4若しくはS5の後、又は、室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する指令を受けていないと判断した場合(S2:NO)、制御部100は、運転停止の指令をリモートコントローラ200等から受けたか否かを判断する(S6)。
【0076】
運転停止の指令を受けていないと判断した場合(S6:NO)、制御部100は、処理をS1に戻す。
【0077】
運転停止の指令を受けたと判断した場合(S6:YES)、制御部100は、室内ファン21及び放電部31の運転を停止させ(S7)、当該プログラムを終了する。
【0078】
[7] 冷媒漏洩時の制御
室内機1は、ケーシング10内に、冷媒を検知するセンサ51(
図5参照)を有する。センサ51は、冷媒を検知すると、検知信号を制御部100に送信する。
【0079】
制御部100は、低風量モード及び高風量モードのいずれの実行中においても(即ち、高風量モードにおいて気流による冷媒の拡散が期待される場合であっても)、センサ51からの検知信号を受信すると、放電部31及び圧縮機46の運転を停止させる。
【0080】
圧縮機46の運転を停止させることで、冷媒回路5における冷媒の循環を止め、冷媒の漏洩を抑制することができる。また、放電部31の運転を停止させることで、冷媒の着火をより確実に抑制することができる。なお、センサ51は、本実施形態ではケーシング10内に設けられているが、室内機1とは別に、例えば室内の床面付近に設けられてもよい。
【0081】
[8] 本実施形態の効果
以上に述べたように、本実施形態によると、制御部100は、低風量モードで放電部31を運転させず、高風量モードで放電部31を運転させる。これにより、特に気流による冷媒の拡散が十分でない低風量モードであっても、冷媒の着火を抑制することができる。
【0082】
冷媒は空気よりも重く、放電部31が室内熱交換器22の下端よりも上方に位置する(
図3参照)。この場合、室内熱交換器22から漏れ出た空気よりも重い冷媒が放電部31に接触するのを抑制できる。
【0083】
制御部100は、低風量モードと高風量モードとを選択的に実行する場合において、放電部31の運転中に室内ファン21の風量を第2風量Q2から第1風量Q1に変更する指令を受けると(S2:YES→S3:YES)、放電部31の運転停止と風量の変更とを実行する(S4)。この場合、低風量モードと高風量モードとが選択的に実行される場合において、指令に応じた風量での運転を継続することができる。
【0084】
室内熱交換器22が室内ファン21の上流に位置する。この場合、室内ファン21の気流によって冷媒が拡散し易い。ひいては、冷媒の濃度が薄くなることで、運転中の放電部31に冷媒が接触したとしても、着火し難い。また、室内熱交換器22が室内ファン21の上流に位置するという構成は上記式(1)~(3)に適合するものであり、基準値Q0を適切に設定できる。
【0085】
制御部100は、高風量モードの実行中に、冷媒の漏洩を検知すると、放電部31の運転を停止させる。高風量モードの実行中であって、気流による冷媒の拡散が期待される場合であっても、冷媒の漏洩を検知すると、放電部31の運転を停止させる。これにより、冷媒の着火をより確実に抑制することができる。
【0086】
第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2であり、基準値Q0は、吹出口面積から定まる。吹出口面積は、冷媒の拡散力に関連し、冷媒が放電部31に接触する可能性と大きく関連する。具体的には、吹出口面積Aが大きい場合、風速が小さくなって冷媒の拡散力が低下するため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。本実施形態のように基準値Q0が吹出口面積Aから定まる場合、冷媒が十分に拡散する基準値Q0を設定できる。
【0087】
第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2であり、基準値Q0は、空調能力と設置空間に関する値とのいずれかから定まる。具体的には、設置空間が大きくなるにつれて、大きな空調能力が必要となり、冷媒充填量が増える。この場合、冷媒漏洩時に室内に放出される冷媒の量が多くなり、冷媒が放電部31に接触する可能性が大きくなるため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。設置空間に関する値(面積、高さ等)は、測定は煩雑だが、機器の定格能力(空調能力)から推定可能である。また、空調能力は、一般に、想定設置空間と対応付けて販売される。このため、空調能力と設置空間に関する値とのいずれかから基準値Q0を定めれば、冷媒が十分に拡散する基準値Q0を機種ごとに容易に設定できる。
【0088】
第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2であり、基準値Q0は、冷媒充填量から定まる。具体的には、冷媒充填量が大きいほど、冷媒漏洩時に室内に放出される冷媒の量が多くなり、冷媒が放電部31に接触する可能性が大きくなるため、基準値Q0を大きく設定することが好ましい。本実施形態のように基準値Q0が冷媒充填量mcから定まる場合、冷媒が十分に拡散する基準値Q0を設定できる。
【0089】
第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2であり、基準値Q0は、吹出口面積と、空調能力、設置空間に関する値及び冷媒充填量のいずれかと、から定まる。この場合、上記パラメータを任意に組み合わせることで、冷媒が十分に拡散する基準値Q0を設定できる。
【0090】
第1風量Q1<基準値Q0≦第2風量Q2であり、制御部100は、ユーザにより入力された値に基づいて、基準値Q0を導出する。この場合、室内機1の機種や設置空間に適した基準値Q0を設定できる。
【0091】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態について、
図8を参照して説明する。
【0092】
本実施形態に係る空気調和装置は、自動運転で実行されるプログラムを除き、第1実施形態と同じである。
【0093】
本実施形態において自動運転で実行されるプログラム(
図8参照)は、S4がS24に変更された点を除き、第1実施形態において自動運転で実行されるプログラム(
図7参照)と同じである。
【0094】
本実施形態では、放電部31の運転中であると判断した場合(S3:YES)、制御部100は、風量の変更を実行せずに、放電部31の運転を維持する(S24)。
【0095】
本実施形態によると、低風量モードと高風量モードとが選択的に実行される場合において、放電を継続することができる。
【0096】
<変形例>
本開示に係る空気調和装置は、上述の実施形態のような室内機に限定されず、室外機であってもよい。
【0097】
本開示に係る空気調和装置は、上述の実施形態のような壁掛け型に限定されず、天井設置型、床置き型等であってもよい。
【0098】
放電部は、上述の実施形態ではストリーマ放電を発生させるが、これに限定されず、グロー放電、バリア放電等を発生させてもよい。
【0099】
基準値は、上述の実施形態では、吹出口面積と、空調能力、設置空間に関する値及び冷媒充填量のいずれかとから定まるが、これに限定されない。例えば、基準値の設定パラメータとして、吹出口面積は含まれるが、空調能力、設置空間に関する値及び冷媒充填量は含まれなくてもよい。或いは、基準値の設定パラメータとして、空調能力、設置空間に関する値及び冷媒充填量のいずれかは含まれるが、吹出口面積は含まれなくてもよい。
【0100】
基準値は、上述の実施形態では、ユーザにより入力された値に基づいて、制御部により導出されるが、これに限定されない。例えば、基準値は、実験結果に基づいて定められてもよい。
【0101】
基準値は、製造時に設定されてもよいし、製造後にユーザの入力等に基づいて設定されてもよい。
【0102】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0103】
1 室内機(空気調和装置)
11b 吹出口
21 室内ファン(ファン)
22 室内熱交換器(熱交換器)
31 放電部
100 制御部