(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173353
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241205BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/2475
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091714
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 寛
(72)【発明者】
【氏名】永田 定嗣
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 裕也
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅基
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
(72)【発明者】
【氏名】大見 正宣
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126FF10
5H127AA05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB26
5H127BB37
5H127CC06
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】 燃料電池モジュールにおいて、ユーザの要求に応じて、柔軟に構成をカスタマイズすることができる技術を提供する。
【解決手段】 本明細書は、ハウジングを備える燃料電池モジュールを開示する。前記ハウジングは、燃料電池スタック又は前記燃料電池スタックを駆動させる補機を挿入可能に構成されている複数の挿入口を備える、燃料電池モジュール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを備える燃料電池モジュールであって、
前記ハウジングは、燃料電池スタック又は前記燃料電池スタックを駆動させる補機を挿入可能に構成されている複数の挿入口を備える、
燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記補機は、第1の補機と、前記第1の補機とは異なる第2の補機を含み、
前記複数の挿入口は、前記燃料電池スタックを挿入可能であるとともに前記補機を挿入不能に構成されている第1の挿入口と、前記第1の補機を挿入可能であるとともに前記燃料電池スタック及び前記第2の補機を挿入不能に構成されている第2の挿入口と、前記第2の補機を挿入可能であるとともに前記燃料電池スタック及び前記第1の補機を挿入不能に構成されている第3の挿入口と、を有する、
燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記補機は、前記燃料電池スタックに空気を供給するコンプレッサと、前記燃料電池スタックに水素を供給する水素タンクと、前記燃料電池スタックが発電する電力を変圧するコンバータと、前記燃料電池スタックを冷却する冷却装置と、のうちの少なくとも1つを含み、
前記燃料電池スタック及び前記補機を前記挿入口に挿入したときに、前記燃料電池スタックと前記補機が接続される、
燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールであって、
前記ハウジングには、前記燃料電池スタックにより発電した電力を外部へ供給するための外部端子が設けられている、
燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池スタックと、燃料電池スタックを駆動させる複数の補機と、点検又はメンテナンスされる複数のメンテナンス部品と、を備える燃料電池モジュールが開示されている。この燃料電池モジュールでは、フレーム内の空間に燃料電池スタック及び補機が収納され、フレーム外の空間にメンテナンス部品が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の燃料電池モジュールでは、燃料電池スタックや補機のそれぞれが、フレーム内の予め定められた空間に配置される。このため、燃料電池モジュールの機能や能力が予め決まっており、例えば、燃料電池の出力の変更や補機の変更等、ユーザの要求に対して柔軟に対応することができない。本明細書では、燃料電池モジュールにおいて、ユーザの要求に応じて、柔軟に構成をカスタマイズすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1の態様として、ハウジングを備える燃料電池モジュールを開示する。前記ハウジングは、燃料電池スタック又は前記燃料電池スタックを駆動させる補機を挿入可能に構成されている複数の挿入口を備える。
【0006】
上記の燃料電池モジュールでは、ハウジングが複数の挿入口を備えており、この挿入口は、燃料電池スタック又は補機を挿入可能に構成されている。このため、用途や機能に応じて、燃料電池スタックや補機の種類や数を自由に変更することができる。すなわち、この燃料電池モジュールは、ユーザの要求に応じて、構成をカスタマイズすることができ、利便性が高い。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記補機は、第1の補機と、前記第1の補機とは異なる第2の補機を含んでもよい。前記複数の挿入口は、前記燃料電池スタックを挿入可能であるとともに前記補機を挿入不能に構成されている第1の挿入口と、前記第1の補機を挿入可能であるとともに前記燃料電池スタック及び前記第2の補機を挿入不能に構成されている第2の挿入口と、前記第2の補機を挿入可能であるとともに前記燃料電池スタック及び前記第1の補機を挿入不能に構成されている第3の挿入口と、を有してもよい。
【0008】
このような構成では、燃料電池スタック、第1の補機、及び第2の補機が、それぞれに対応する挿入口にのみ挿入可能に構成されている。このため、各部材の挿入口への誤挿入を抑制することができる。
【0009】
第3の態様では、上記第1又は第2の態様において、前記補機は、前記燃料電池スタックに空気を供給するコンプレッサと、前記燃料電池スタックに水素を供給する水素タンクと、前記燃料電池スタックが発電する電力を変圧するコンバータと、前記燃料電池スタックを冷却する冷却装置と、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。前記燃料電池スタック及び前記補機を前記挿入口に挿入したときに、前記燃料電池スタックと前記補機が接続されてもよい。
【0010】
このような構成では、燃料電池スタック及び各補機を挿入口に挿入することにより、各部材間を容易に接続することができる。このため、燃料電池モジュールの機能を容易に発揮することができる。
【0011】
第4の態様では、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記ハウジングには、前記燃料電池スタックにより発電した電力を外部へ供給するための外部端子が設けられていてもよい。
【0012】
このような構成では、燃料電池スタックにより発電した電力を様々な機器(例えば、電気自動車や電動バイク等の移動体)に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例に係る燃料電池モジュールの構成を示す模式図。
【
図2】実施例に係る燃料電池モジュールを構成する燃料電池システムの概略系統図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)
以下、図面を参照して、実施例の燃料電池モジュール2(以下、「燃料電池」を「FC」と表記することがある。)について説明する。
図1に示すように、FCモジュール2は、ハウジング3と、FCスタック12と、複数の補機(後述)と、を備えている。
【0015】
図1に示すように、ハウジング3は、複数の挿入口4を備えている。挿入口4は、FCスタック12又はFCスタック12を駆動させる補機を挿入可能に構成されている。本実施例では、補機として、コンプレッサ22、水素タンク31、ポンプ45、コンバータ54を例に挙げて説明する。これらの機能等については後述する。
【0016】
挿入口4は、挿入口4a、4b、4c、4d、4eを有している。本実施例では、各挿入口4a、4b、4c、4dが2つずつ設けられ、挿入口4eが1つ設けられている。挿入口4aは、FCスタック12を挿入可能に構成されている。挿入口4bは、コンプレッサ22を挿入可能に構成されている。挿入口4cは、水素タンク31を挿入可能に構成されている。挿入口4dは、ポンプ45を挿入可能に構成されている。挿入口4eは、コンバータ54を挿入可能に構成されている。
【0017】
図1に示すように、各挿入口4は、互いに異なる形状を有している。例えば、挿入口4a、4b、4d、4eは略直方体形状を有しており、挿入口4cは略円柱形状を有している。FCスタック12は、挿入口4aと略同形状を有している。コンプレッサ22は、挿入口4bと略同形状を有している。水素タンク31は、挿入口4cと略同形状を有している。ポンプ45は、挿入口4dと略同形状を有している。コンバータ54は、挿入口4eと略同形状を有している。なお、これらの部材12、22、31、45、54は、上記した対応する挿入口4以外の挿入口には、挿入不能となっている。
【0018】
FCスタック12は、図示していないが、複数の単セルが直列に接続されて構成されている。各単セルは、電解質層と、電解質層を挟持する燃料極層(アノード電極)及び空気極層(カソード電極)とからなる膜電極接合体(MEA)を備えている。MEAの両側には、燃料ガスである水素ガス及び酸化ガスである空気(酸素)を供給するとともに、電気化学反応によって生じた電気を集電するためのガス拡散層(GDL)が形成されている。GDLが両側に配置された膜電極接合体は、MEGAと称され、MEGAは、一対のセパレータにより挟持されている。MEGAが燃料電池の発電部であり、ガス拡散層がない場合には、MEAが燃料電池の発電部となる。
【0019】
FCスタック12は、ハウジング3の挿入口4aに挿入されると、FCスタック12を駆動するための様々な部材に接続され、
図2に示すように、FCモジュール2が、空気供給系20、水素ガス供給系30、冷却系40、及び制御系50を構成する。
図2は、FCスタック12、コンプレッサ22、水素タンク31、及びコンバータ54が各挿入口4に挿入された状態の系統図を示している。
【0020】
空気供給系20は、FCスタック12を構成する各単セルのカソード電極に空気を供給し、各単セルで電気化学反応に供された後のオフガスをFCスタック12から排出するように構成されている。空気供給系20には、FCスタック12の上流側から、エアクリーナ21、コンプレッサ22、及びインタクーラ23等が設けられ、FCスタック12の下流側には、マフラ28等が設けられている。
【0021】
エアクリーナ21は、大気中から取り込む空気中の塵埃等を除去する。コンプレッサ22は、挿入口4bに挿入されると、エアクリーナ21及びインタクーラ23に接続される。コンプレッサ22は、エアクリーナ21を介して導入された空気を圧縮し、圧縮された空気をインタクーラ23へ圧送する。インタクーラ23は、コンプレッサ22から圧送された空気を、例えば冷却液との熱交換によって冷却し、FCスタック12のカソード電極に供給する。本実施例のFCモジュール2では、空気供給系20において、コンプレッサ22がハウジング3の挿入口4aに挿入され、FCスタック12の補機として機能する。
【0022】
水素ガス供給系30は、FCスタック12を構成する各単セルのアノード電極に水素ガスを供給し、各単セルで電気化学反応に供された後のオフガスをFCスタック12から排出するように構成されている。水素ガス供給系30は、FCスタック12の上流側から、水素タンク31及びインジェクタ33が設けられ、FCスタック12の下流側には、気液分離器37が設けられている。水素ガス供給系30は、気液分離器37を通過した水素ガスを上流側に循環させる水素ポンプ38を備えている。
【0023】
水素タンク31は、挿入口4cに挿入されると、インジェクタ33に接続される。インジェクタ33は、水素タンク31から供給される水素ガスをFCスタック12に供給する。気液分離器37は、オフガスに含まれる生成水を分離する。生成水を分離した水素ガスは水素循環ポンプ38に送られ、生成水はマフラ28に送られる。水素循環ポンプ38は、気液分離器37で分離された水素ガスを圧送して、燃料ガス供給流路へ循環させる。本実施例のFCモジュール2では、水素ガス供給系30において、水素タンク31がハウジング3の挿入口4cに挿入され、FCスタック12の補機として機能する。
【0024】
冷却系40は、FCスタック12を冷却するように構成されている。冷却系40は、循環系であり、冷却系40には、ロータリバルブ42、熱交換器43、ポンプ45、イオン交換器47、及び冷却液タンク48が設けられている。ロータリバルブ42は、FCスタック12から排出された冷却液を、熱交換器43またはイオン交換器47に分流する。熱交換器43は、FCスタック12から排出される冷却液を冷却する。ポンプ45は、挿入口4dに挿入されると、ロータリバルブ42と熱交換器43を接続する配管に介装される。ポンプ45は、熱交換器43で冷却された冷却液をFCスタック12に圧送する。イオン交換器47は、FCスタック12を冷却する冷却液からイオンを除去する機能を有しており、バイパス通路に設けられている。冷却液タンク48は、冷却系40に補給するための冷却液を収容しており、冷却液の不足時に、冷却系40に補給用の冷却液が供給される。本実施例では、冷却系40において、ポンプ45がハウジング3の挿入口4cに挿入され、FCスタック12の補機として機能する。
【0025】
制御系50は、FCスタック12の駆動等を制御するように構成されている。制御系50には、制御装置51、バッテリ52、コンバータ54、負荷56、及び外部端子58が設けられている。制御装置51は、FCモジュール2内の各バルブの開閉や、コンバータ54を制御する。制御装置51は、これにより、FCスタック12に供給される水素ガスと空気(酸素)の量を調整し、FCスタック12の出力電力を調整することができる。バッテリ52は、FCスタック12で発電された電力を蓄電する。コンバータ54は、挿入口4eに挿入されると、FCスタック12の出力端に接続される。コンバータ54は、FCスタック12の出力電圧を昇圧して負荷56又は外部端子58に供給する。外部端子58は、
図1に示すように、ハウジング3から外側に延びている。外部の機器を外部端子58に接続することにより、FCスタック12により発電した電力を当該機器に供給することができる。本実施例のFCモジュール2では、制御系50において、コンバータ54がハウジング3の挿入口4eに挿入され、補機として機能する。
【0026】
以上に説明したように、本実施例のFCモジュール2では、ハウジング3が複数の挿入口4を備えており、この挿入口4は、FCスタック12又は各種の補機を挿入可能に構成されている。このため、用途や機能に応じて、FCスタック12や補機の種類や数を自由に変更することができる。例えば、2つの挿入口4aのそれぞれにFCスタック12を挿入することで、FCモジュール2の出力を増大することができる。また例えば、2つの挿入口4dのそれぞれにポンプ45を挿入することで、冷却性能を向上させることができる。すなわち、このFCモジュール2は、ユーザの要求に応じて、構成をカスタマイズすることができ、利便性が高い。
【0027】
また、本実施例のFCモジュール2では、FCスタック12や、各種の補機が、それぞれに対応する挿入口4a~4eにのみ挿入可能に構成されている。このため、各部材の挿入口4への誤挿入を抑制することができる。
【0028】
また、本実施例のFCモジュール2では、FCスタック12及び各種の補機を挿入口4に挿入することにより、
図2に示すように、各部材間を容易に接続することができる。このため、FCモジュール2の機能を容易に発揮することができる。
【0029】
また、本実施例のFCモジュール2では、FCスタック12により発電した電力を、外部端子58を介して、様々な機器(例えば、電気自動車や電動バイク等の移動体)に使用することができる。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下、上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0031】
上述した実施例において、
図1に示す各挿入口4の配置や形状は一例であり、各挿入口4の配置や形状は、扱い易さや補機等の形状に応じて適宜変更してもよい。
【0032】
また、FCスタック12に供給される燃料ガス(水素)は、水素タンク31から供給される水素ガスに限られない。例えば、水素タンク31に代えてアンモニアタンクを使用し、アンモニアガスを改質することにより水素を生成して、生成した水素を燃料ガスとして用いてもよい。
【0033】
また、ハウジング3の挿入口4に挿入可能な補機は、上述したものに限られない。各挿入口4には、FCモジュール2を構成する他の部材を挿入可能に構成してもよい。
【0034】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
2:燃料電池モジュール、3:ハウジング、4:挿入口、12:燃料電池スタック、20:空気供給系、30:水素ガス供給系、40:冷却系、50:制御系、58:外部端子