(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173366
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】内燃機関の排気処理装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20241205BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241205BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F01N3/36 R
F01N3/08 B
F01M13/00 N
F01M13/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091736
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高野 智識
【テーマコード(参考)】
3G015
3G091
【Fターム(参考)】
3G015BD10
3G015BD18
3G015BD24
3G091AA19
3G091AB02
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA18
3G091DB10
3G091EA01
3G091EA03
3G091EA17
3G091EA33
3G091EA34
3G091EA35
3G091HA10
3G091HA36
3G091HA37
3G091HB09
(57)【要約】
【課題】機関燃料を利用することなく炭化水素選択還元型触媒に還元剤を供給する。
【解決手段】内燃機関10は、炭化水素選択還元型の第2触媒22を排気通路14に備える。内燃機関10の排気処理装置は、内燃機関10のブローバイガスを還元剤として第2触媒22に供給する供給通路30を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素選択還元型の触媒を排気通路に備える内燃機関の排気処理装置であって、
前記内燃機関のブローバイガスを還元剤として前記触媒に供給する供給通路を備える
内燃機関の排気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の内燃機関は、炭化水素を還元剤として利用することにより排気中のNOxを浄化する炭化水素選択還元型触媒を排気通路に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガソリンや軽油などの燃料は炭化水素を含んでいるため、そうした燃料を炭化水素選択還元型触媒に供給する炭化水素として利用することは可能である。しかしながら、還元剤として燃料を利用すると燃料の消費量が増加する。そのため、機関燃料を利用することなく炭化水素選択還元型触媒に還元剤を供給することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する内燃機関の排気処理装置は、炭化水素選択還元型の触媒を排気通路に備える内燃機関の排気処理装置であって、前記内燃機関のブローバイガスを還元剤として前記触媒に供給する供給通路を備えている。
【発明の効果】
【0006】
この内燃機関の排気処理装置は、機関燃料を利用することなく炭化水素選択還元型触媒に還元剤を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態における排気処理装置を備える内燃機関の構成示す模式図である。
【
図2】
図2は、同実施形態の制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関の排気処理装置の一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
<内燃機関の構成>
図1に示すように、内燃機関10は水素ガスを機関燃料として使用する機関である。内燃機関10では、燃焼室内に水を噴射する水噴射が行われる。この水噴射が行われると、燃焼室内の温度が低下するため、NOxの発生が抑えられる。
【0009】
内燃機関10の排気通路14には、第1触媒21及び第2触媒22が直列に配置されている。なお、以下では、内燃機関10の燃焼室から排気通路14に排出された排気の流れ方向を排気流れ方向といい、排気流れ方向の上流側を「上流側」、排気流れ方向の下流側を「下流側」という。
【0010】
第1触媒21は、排気の温度を高めるために設けられている酸化触媒である。
第2触媒22は、第1触媒21の下流側に設けられている。第2触媒22は、炭化水素を還元剤として利用することにより排気中のNOxを浄化する炭化水素選択還元型の触媒、いわゆるHC-SCR触媒である。
【0011】
第1触媒21よりも上流側の排気通路14には、第1温度センサ71が設けられている。第1温度センサ71は、第1触媒21に流入する排気の温度を検出する。
第1触媒21と第2触媒22との間の排気通路14には、第2温度センサ72が設けられている。第2温度センサ72は、第2触媒22に流入する排気の温度を検出する。
【0012】
第2触媒22よりも下流側の排気通路14には、NOxセンサ73が設けられている。NOxセンサ73は、第2触媒22から流出した排気のNOx濃度及び酸素濃度を検出する。
【0013】
内燃機関10は、ブローバイガスを処理するブローバイガス処理装置16を備えている。ブローバイガス処理装置16は、内燃機関10のクランクケース内のブローバイガスを内燃機関10の吸気通路に導入する装置であり、PCVバルブ18を備えている。PCVバルブ18は、吸気通路に導入するブローバイガスの流量を調整するバルブであり、クランクケース及び吸気通路の圧力差を利用してバルブの開度が変化する。
【0014】
PCVバルブ18には、ブローバイガスを還元剤として第2触媒22に供給する供給通路30が接続されている。
供給通路30の途中には、ブローバイガスを蓄えるタンク32や、タンク32にブローバイガスを圧送するポンプ34が設けられている。タンク32は、タンク32内の内圧であるタンク圧Pを検出する圧力センサ74を備えている。
【0015】
そして、供給通路30の末端には、タンク32に蓄えたブローバイガスを第2触媒22に向けて噴射する噴射弁38が接続されている。噴射弁38は、第1触媒21と第2触媒22との間の排気通路14に設けられており、噴孔は第2触媒22に向けられている。
【0016】
内燃機関10の各種制御は、制御装置100によって実行される。
制御装置100には、上記第1温度センサ71、上記第2温度センサ72、上記NOxセンサ73、及び圧力センサ74の検出信号が入力される。その他、制御装置100には、各種の検出信号が入力される。そして、制御装置100は、各種の検出信号に基づいて機関回転速度や、機関負荷率などを算出する。
【0017】
制御装置100は、CPU110や、制御用のプログラム等が保存されたメモリ120などを備えている。そして、メモリ120に記憶されたプログラムをCPU110が実行することにより、内燃機関10の各種制御を実行する。
【0018】
<還元剤の供給処理>
図2に、還元剤の供給処理についてその手順を示す。還元剤の供給処理は、第2触媒22に対して還元剤を供給するために、制御装置100が所定周期毎に実行する処理である。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0019】
本処理を開始すると、制御装置100は、還元剤量RVを取得する(S100)。還元剤量RVは、第2触媒22が有している還元剤の量であり、制御装置100が別の処理にて算出している。例えば、制御装置100は、上記NOxセンサ73の検出値や機関回転速度及び機関負荷率などの機関運転状態などに基づいて還元剤量RVを算出する。
【0020】
次に、制御装置100は、取得した現在の還元剤量RVが既定の閾値RVref以下であるか否かを判定する(S110)。閾値RVrefは、例えば、第2触媒22にてNOxの浄化を行うために必要な還元剤量RVの最小値である。
【0021】
そして、制御装置100は、還元剤量RVが閾値RVref以下であると判定する場合(S110:YES)、上記タンク圧Pを取得する(S120)。
次に、制御装置100は、所得した現在のタンク圧Pが既定の閾値Pref以上であるか否かを判定する(S130)。閾値Prefは、例えばタンク32に蓄えられたブローバイガスを第2触媒22に供給するために必要な噴射弁38の最低噴射圧である。
【0022】
そして、制御装置100は、タンク圧Pが閾値Pref以上であると判定する場合(S130:YES)、還元剤の供給処理を実行する(S140)。制御装置100は、還元剤の供給処理として、タンク32に蓄えられたブローバイガスを噴射弁38から噴射する処理を実行する。
【0023】
そして、S140の処理を終了した場合、あるいはS110の処理で否定判定する場合、またはS130の処理にて否定判定する場合には、制御装置100は、今回の周期における本処理の実行を終了する。
【0024】
<作用>
本実施形態の作用を説明する。
図2に示す処理が実行されることにより、還元剤量RVが閾値RVref以下であり、且つタンク圧Pが閾値Pref以上である場合には、噴射弁38から第2触媒22に向けてブローバイガスが供給される。これによりブローバイガス中のエンジンオイルに含まれる炭化水素が供給通路30を介して炭化水素選択還元型の触媒である第2触媒22に供給される。
【0025】
<効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)ブローバイガス中のエンジンオイルに含まれる炭化水素が供給通路30を介して第2触媒22に供給される。従って、内燃機関10の機関燃料を利用することなく、炭化水素選択還元型触媒である第2触媒22に還元剤を供給することができる。
【0026】
(2)水素ガスを燃料とする場合には、水素由来の凝縮水が燃焼室内に生成される。この燃料由来の凝縮水や水噴射に由来する凝縮水は、内燃機関10のシリンダ壁面を伝って、機関下部のオイルパンに溜まる。そのため、オイルパンでは、凝縮水を含んだエンジンオイルの量が増加する。凝縮水を含んだエンジンオイルの量が増加すると、エンジン暖機後においてオイル成分及び水を含んだ気体が蒸発することにより、ブローバイガスの量が増える。このように、水素ガスを燃料とし、水噴射が実行される内燃機関10では、他の内燃機関と比べてブローバイガスの量は増える傾向がある。この点、本実施形態では、そうして増えるブローバイガスを第2触媒22の還元剤として有効利用することができる。
【0027】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0028】
・PCVバルブ18は、制御装置100によってバルブの開度が調整される電動式のバルブでもよい。この場合には、タンク32におけるブローバイガスの蓄圧を任意のタイミングで行うことができる。
【0029】
・供給通路30をPCVバルブ18に接続したが、ブローバイガス処理装置16においてブローバイガスが流れる他の部位に接続してもよい。また、内燃機関10のクランクケースに接続してもよい。
【0030】
・上記第1温度センサ71及び上記第2温度センサ72の少なくとも1つを省略してもよい。この場合、省略した温度センサが検出していた排気温度を制御装置100にて推定してもよい。
【0031】
・内燃機関10は、ガソリンや軽油等を機関燃料とする内燃機関でもよい。この場合でも、上記(1)の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…内燃機関
14…排気通路
16…ブローバイガス処理装置
18…PCVバルブ
21…第1触媒
22…第2触媒
30…供給通路
32…タンク
34…ポンプ
38…噴射弁
71…第1温度センサ
72…第2温度センサ
73…NOxセンサ
74…圧力センサ
100…制御装置
110…CPU
120…メモリ