(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173370
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業車のクローラ走行装置
(51)【国際特許分類】
B62D 55/14 20060101AFI20241205BHJP
B62D 55/32 20060101ALI20241205BHJP
B62D 55/104 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B62D55/14
B62D55/32
B62D55/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091740
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 博司
(72)【発明者】
【氏名】澤村 亮
(72)【発明者】
【氏名】二神 伸
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 学
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑典
(72)【発明者】
【氏名】玉田 晋太郎
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業車のクローラ走行装置を修理する場合に、クローラベルトを取り外す作業が簡単に行えるようにすることが課題である。
【解決手段】駆動出力軸23に取り付ける駆動スプロケット3とスライド軸28に枢支する従動ローラ14とトラックフレームに設ける複数のアイドルローラ4にクローラベルト6を巻回して構成するクロ-ラ走行装置1において、走行車体2の底部左右に前後方向に長いトラックフレーム7を設け、該トラックフレーム7下側に位置してアイドルローラ4を軸支したローラブラケット25をトラックフレーム7の下部に着脱可能に取り付けたことを特徴とする作業車のクローラ走行装置とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動出力軸(23)に取り付ける駆動スプロケット(3)とスライド軸(28)に枢支する従動ローラ(14)とトラックフレーム(7)に設ける複数のアイドルローラ(4)にクローラベルト(6)を巻回して構成するクロ-ラ走行装置(1)において、走行車体(2)の底部左右に前後方向に長いトラックフレーム(7)を設け、該トラックフレーム(7)下側に位置してアイドルローラ(4)を軸支したローラブラケット(25)をトラックフレーム(7)の下部に着脱可能に取り付けたことを特徴とする作業車のクローラ走行装置。
【請求項2】
前記アイドルローラ(4)は左ローラ部(4L)と右ローラ部(4R)と軸支部(4S)から構成し、アイドルローラ(4)をローラブラケット(25)を介してトラックフレーム(7)取り付けた状態においては、左ローラ部(4L)はトラックフレーム(7)の左側に位置し、右ローラ部(4R)はトラックフレーム(7)の右側に位置するように構成し、左ローラ部(4L)と右ローラ部(4R)はそれぞれ単独で着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車のクローラ走行装置。
【請求項3】
駆動スプロケット(3)と従動ローラ(14)の前後略中間に設ける中間アイドルローラ(4b)は他のアイドルローラ(4a)よりもクローラベルト(6)との接触面を僅かに上側にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のクローラ走行装置。
【請求項4】
複数のアイドルローラ(4)の左右幅内に設けるクローラガイド(27a,27b)の端部を中間アイドルローラ(4b)側で上に逃がしたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のクローラ走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を走行しながら収穫作業を行うコンバイン等作業車のクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場などの柔らかい地面を走行する作業車はクローラ走行装置が採用されている。
【0003】
このクローラ走行装置は、特開2015-157592号公報に記載の如く、ミッションケースの出力駆動軸に取り付けた前側の駆動スプロケットと後ろ側のスライドテンション軸に枢支した従動輪と中間部でトラックフレームの枢支軸に枢支した複数のアイドルローラにクローラベルトが巻回されて構成され、クローラベルトが前後に幅広く接地しながら走行することで、走行車体の沈み込みが少なく走行出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記クローラ走行装置は、クローラベルトが損壊や摩耗した場合に、クローラベルトを走行車体から取り外すが、クローラベルトを外すためにトラックフレームに突設した枢支軸から複数のアイドルローラを引き抜かなければならず、この作業が走行車体の下部で行わなければならず、面倒で手間がかかる。
【0006】
本発明は、作業車のクローラ走行装置を修理する場合に、クローラベルトを取り外す作業が簡単に行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、駆動出力軸23に取り付ける駆動スプロケット3とスライド軸28に枢支する従動ローラ14とトラックフレーム7に設ける複数のアイドルローラ4にクローラベルト6を巻回して構成するクロ-ラ走行装置1において、走行車体2の底部左右に前後方向に長いトラックフレーム7を設け、該トラックフレーム7下側に位置してアイドルローラ4を軸支したローラブラケット25をトラックフレーム7の下部に着脱可能に取り付けたことを特徴とする作業車のクローラ走行装置とする。
【0009】
請求項2の発明は、前記アイドルローラ(4)は左ローラ部(4L)と右ローラ部(4R)と軸支部(4S)から構成し、アイドルローラ(4)をローラブラケット(25)を介してトラックフレーム(7)取り付けた状態においては、左ローラ部(4L)はトラックフレーム(7)の左側に位置し、右ローラ部(4R)はトラックフレーム(7)の右側に位置するように構成し、左ローラ部(4L)と右ローラ部(4R)はそれぞれ単独で着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車のクローラ走行装置とする。
【0010】
請求項3の発明は、駆動スプロケット3と従動ローラ14の前後略中間に設ける中間アイドルローラ4bは他のアイドルローラ4aよりもクローラベルト6との接触面を僅かに上側にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のクローラ走行装置とする。
【0011】
請求項4の発明は、複数のアイドルローラ4の左右幅内に設けるクローラガイド27a,27bの端部を中間アイドルローラ4b側で上に逃がしたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のクローラ走行装置とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明で、クロ-ラ走行装置1は駆動スプロケット3と従動ローラ14と複数のアイドルローラ4に巻回したクローラベルト6が広い面積で接地するので、走行車体1が地面に沈み込むことなく走行可能であるが、クローラベルト6の取り外しが、従動ローラ14の張りを緩めてアイドルローラ4を軸支したローラブラケット25をトラックフレーム7の下部から取り外すことで可能になり、従来の走行車体2の下部でアイドルローラ4を枢支軸から引き抜く作業がなく、取り外し作業が容易になる。
【0013】
請求項2の発明で、アイドルローラ4を構成する左ローラ部(4L)と右ローラ部(4R)はそれぞれ単独で着脱できるので、アイドルローラ4の軸を外す必要がなく、保守管理が容易となる。
【0014】
請求項3の発明で、クロ-ラ走行装置1はクローラベルト6の底面が接地して走行するし、畔などの突状部を乗り越える際にはクローラベルト6が突きあげられてクロ-ラ走行装置1の前後が大きく傾いて機体傾斜が大きくなるが、クロ-ラ走行装置1の中間アイドルローラ4bのクローラベルト6との接触面を他のアイドルローラ4aよりも僅かに上側にすることで、この部分を地面の突状部が通過する際にクローラベルト6が上に撓んで機体の前後傾きが緩和される。
【0015】
請求項4の発明で、クローラガイド27a,27bの端部を中間アイドルローラ4bの前後で上に逃がしたことで、クローラベルト6が上に撓み易く、畔越え時の機体の前後傾きをさらに緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態にかかる作業車として汎用コンバインの右側面図である。
【
図3】同上コンバインの走行車体の右側面図である。
【
図5】同上コンバインのクローラ走行装置の拡大側面図である。
【
図6】同上クローラ走行装置のアイドルローラとクローラベルトの正断面図である。
【
図7】同上クローラ走行装置のトラックフレームの部分拡大斜視図である。
【
図8】本発明の別実施例のトラックフレームの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例で説明する。なお、実施例の説明において、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後退方向を後というが、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0018】
なお、実施例として示す作業車は汎用コンバインを示しているが、本発明のクローラ走行装置は、軟弱地を走行する作業車の全てに適用可能である。
【0019】
図1、
図2には、本発明に係るコンバイン(いわゆる汎用コンバイン)を示している。本発明における汎用コンバインは、クロ-ラ走行装置1を備えた走行車体2の前側に、昇降自在な刈取装置15を設け、この走行車体2に脱穀装置16を搭載し、脱穀装置16の右側にグレンタンク17を搭載して構成する。
【0020】
前記刈取装置15は、掻込オーガ(図示省略)を回転自在に内装するバケットフレーム18に対して、その左右の側壁の前端部に分草体19を取り付け、その底部の前端に刈刃装置20を取り付け、その後端上部には、多数のタインを備えた掻込リール21を昇降自在に支持する支持フレーム22の基部を上下回動自在に軸支する。
【0021】
掻込リール21は、左右の側枠21e,21eの側面視六角角部に六本の横杆21aを横架し、この横杆21aに所定間隔でタイン21bを下向きに維持するように取り付け、左右の支持フレーム22,22に左右の側枠21e,21eを一体で回転するように軸支している。すなわち、掻込リール21の回転でタイン21bが前方から後方へ穀稈を掻き込むようにする。
【0022】
この掻込リール21の左後部には四角ボックス状ケースの内部に搬送コンベアを内装する搬送コンベア23’を設けて脱穀装置16へ連通しているが、その前方に位置する掻込リール21のタイン21bは、他の部分よりも横配列間隔を狭くして、掻込が強く作用するようにしている。
【0023】
走行車体2の下部に左右一対設けるクロ-ラ走行装置1は、
図5に示す如く、前部の駆動出力軸23に取り付けたスプロケット3と、複数アイドルローラ4aと、前後略中間部の中間アイドルローラ4bと後上部の上部ローラ4cと後部のテンションローラ14間にクローラベルト6を掛け回して走行駆動する構成になっている。
【0024】
アイドルローラ4(アイドルローラ4a,中間アイドルローラ4b,上アイドルローラ4c)は、
図6の如く、正面視で左ローラ部4Lと右ローラ部4Rと軸支部4Sから構成されている。ローラブラケット25に対して軸支部4Sを介して左ローラ部4Lと右ローラ部4Rを取り付ける構成としている。左ローラ部4Lと右ローラ部4Rは、軸支部4Sに対してそれぞれ単独で着脱可能に構成している。即ち、ボルト4Sbを外すと左ローラ部4Lと右ローラ部4Rが単独で外れるので、軸支部4Sの軸を外す必要がなく保守管理が容易となる。
クローラベルト6の内周面に設けるガイド突起6aを跨いで接触し、トラックフレーム7を左右に挟むローラブラケット25はトラックフレーム7の側面取付具24の下部にボルト26で取り付けている。
【0025】
図7の如く、トラックフレーム7は四角筒状で、その側面に側面取付具24を溶接し、ローラブラケット25をボルト26で取り付けている。なお、トラックフレーム7を四角筒材を上下に重ねてその上下重ね部に側面取付具24を溶接する構成でも良い。
【0026】
また、
図8の如く、トラックフレーム7の側面に取付折り曲げ部30aを形成したサイドプレート30を溶接して、ローラブラケット25をボルト26で取り付ける構成でも良い。
【0027】
前後に7個並ぶアイドルローラ4の前から4番目の中間アイドルローラ4bは他のアイドルローラ4aよりも僅かに高く、各アイドルローラ4a,4bの間でクローラベルト6のガイド突起6aに挟まれた位置に前後ガイドロッド27a,27bをトラックフレーム7に設け、この前後ガイドロッド27a,27bの中間アイドルローラ4bに向かう側では僅かに上方へ傾斜させている。
【0028】
このことによって、クロ-ラ走行装置1が畔の突状部を通過する際に中間アイドルローラ4b位置でクローラベルト6が上方に撓んで機体が前後に大きく傾くのを防ぐようになる。
【0029】
なお、中間アイドルローラ4bを他のアイドルローラ4aよりも小径とすることで軸位置が同じ高さであってもクローラベルト6の内周面との接触を浅くすることが出来る。
【0030】
また、他のアイドルローラ4aと中間アイドルローラ4bと上アイドルローラ4cを同一のもので共用しても良い。
【0031】
走行車体2は、
図4の如く、クローラベルト6を架設するトラックフレーム7から上方に向けて突設するフットフレーム8の上端側には、前後方向に平行な左右の走行フレーム(車体下部フレーム)10,10に対応する切欠凹部(凹部)9,9が切欠き形成されている。そして、これら左右の切欠凹部9,9には、前記左右の走行フレーム10,10を直接嵌め込んで溶着固定するか、若しくは、図例のように、走行フレーム10,10の下面に沿わせて設けた補強フレーム11,11を介して嵌合固着するように構成している。
【0032】
上側の左右走行フレーム10,10と下側の左右補強フレーム11,11とは、左右方向に横たわる等辺角チューブからなる前後の横フレーム12,12によって連結保持させている。つまり、前後の横フレーム12,12は、上下二つのフレーム10,11をまたぐ中央位置で連結するように構成している。
【0033】
前記補強フレーム11は、角チューブを使用し、走行フレーム10の前後長さよりも短くしてある。しかも、その補強フレームの後端部は走行クローラ後部のアイドルローラ4より後方まで延設することで、前後バランスを確保することができる。
【0034】
前記フットフレーム8は、前フットフレーム8Fと後フットフレーム8Rを含む。前後のフットフレーム8F,8Rは、断面U字型に形成され、前記横フレーム12を下から挟むように受け止め保持させるようになっており、両者を溶着手段により一体化することで強度が大幅にアップする。なお、このU字型フレームの開放端側は泥土などが侵入しないように鉄板13を当てて閉塞するように溶着している。この構成によると、フットフレーム自体の強度を強化することができる。
【0035】
トラックフレーム7の前端上部にミッションケースの駆動出力軸23が位置してその端部に駆動スプロケット3を取り付け、トラックフレーム7後部上にスライドブラケット27を取り付け、このスライドブラケット27にスライド可能に取り付けるスライド軸28をバネ29で付勢して従動ローラ14を枢着している。トラックフレーム7の側面には、側面取付具24でアイドルローラ4を枢支するローラブラケット25をボルト26で取り付けている。また、トラックフレーム7の下方にクローラガイド27a,27bをクローラベルト6の内面に沿わせて設けている。
【符号の説明】
【0036】
1 クロ-ラ走行装置
3 駆動スプロケット
4 アイドルローラ
4L 左ローラ部
4R 右ローラ部
4S 軸支部
4a 他のアイドルローラ
4b 中間アイドルローラ
6 クローラベルト
7 トラックフレーム
14 従動ローラ
23 駆動出力軸
25 ローラブラケット
27a,27b クローラガイド