(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173383
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アンモニアエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20241205BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20241205BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02D19/08 Z
C01B3/04 B
F02M25/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091761
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神山 真巳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】下 俊久
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB09
3G092AB19
3G092DE01S
3G092DE02S
3G092FA31
(57)【要約】
【課題】アンモニアエンジンの始動を早期に行う。
【解決手段】アンモニアエンジンシステム10は、アンモニアエンジン11と、アンモニアエンジン11に酸素を含む空気を供給する第1供給流路12と、第1供給流路12に設けられる第1調整弁15と、改質器23と、改質器23に酸素を含む空気と共にアンモニアを供給する第2供給流路24と、第2供給流路24に供給される酸素を含む空気の量を調整する第2調整弁33と、第1供給流路12にアンモニアを供給する燃料インジェクタ14と、改質器23により生成された水素を第1供給流路12に供給する第3供給流路31と、空気よりも酸素濃度を高めた酸素富化空気を第1供給流路12に供給する第1酸素富化膜53と、アンモニアエンジン11の始動時に、燃料インジェクタ14から第1供給流路12にアンモニアを供給するとともに、第1調整弁15を開弁状態にする制御部37と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料としてアンモニアを用いるアンモニアエンジンと、
前記アンモニアエンジンに酸素を含む空気を供給する第1供給流路と、
前記第1供給流路に設けられ、前記第1供給流路から前記アンモニアエンジンに供給される酸素を含む空気の量を調整する第1調整弁と、
アンモニアを改質して水素を生成する改質部と、前記改質部を昇温させる昇温部と、を有する改質器と、
前記改質器に酸素を含む空気と共にアンモニアを供給する第2供給流路と、
前記第2供給流路に供給される酸素を含む空気の量を調整する第2調整弁と、
前記第1供給流路にアンモニアを供給する供給部と、
前記改質器により生成された水素を前記第1供給流路に供給する第3供給流路と、
前記第1供給流路における前記第1調整弁よりも上流側に設けられ、空気よりも酸素濃度を高めた酸素富化空気を前記第1供給流路に供給する酸素富化膜と、
前記アンモニアエンジンの始動時に、前記供給部から前記第1供給流路にアンモニアを供給するとともに、前記第1調整弁を開弁状態にする制御部と、を備えることを特徴とするアンモニアエンジンシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記アンモニアエンジンの高負荷運転時に、前記アンモニアエンジンに供給される酸素の量が閾値以下となるように、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御する、請求項1に記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記アンモニアエンジンの運転時に、前記アンモニアエンジンに供給されるアンモニア、酸素、及び水素の総量に対する前記アンモニアエンジンに供給される酸素の量の割合が23%以上60%以下となるように、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御する、請求項1又は請求項2に記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項4】
前記アンモニアエンジンは、
空気が流れる第4供給流路と、
前記第1供給流路における前記酸素富化膜よりも下流側であって且つ前記第1調整弁よりも上流側に設けられる上流調整弁と、を備え、
前記第1供給流路のうち、前記上流調整弁よりも上流部分を上流流路とし、前記上流調整弁よりも下流部分を下流流路とすると、
前記制御部は、前記アンモニアエンジンの運転状態に応じて前記上流調整弁を調整することによって、前記上流流路から前記下流流路に流れる酸素富化空気の量と前記第4供給流路から前記下流流路に流れる空気の量とを調整する、請求項1又は請求項2に記載のアンモニアエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のアンモニアエンジンシステムは、燃料としてアンモニアを用いるアンモニアエンジンと、アンモニアエンジンに空気を供給する第1供給流路と、第1供給流路に設けられる第1調整弁と、改質器と、を備える。改質器は、アンモニアを改質して水素を生成する改質部と、改質部を昇温させる昇温部と、を有する。さらに、アンモニアエンジンシステムは、改質器に空気と共にアンモニアを供給する第2供給流路と、第2供給流路に設けられる第2調整弁と、第1供給流路にアンモニアを供給する供給部と、を備える。改質器にて生成された水素は、第1供給流路を介してアンモニアエンジンに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改質器による水素の生成は、昇温部によってアンモニアを水素に分解するために最適な温度にまで改質部が昇温されてから行われる。これにより、アンモニアエンジンの始動時に、改質器にて生成された水素をアンモニアエンジンに供給する場合、改質器にて生成された水素がアンモニアエンジンに供給されるまでに時間を要するため、アンモニアエンジンの始動が遅れるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するアンモニアエンジンシステムは、燃料としてアンモニアを用いるアンモニアエンジンと、前記アンモニアエンジンに酸素を含む空気を供給する第1供給流路と、前記第1供給流路に設けられ、前記第1供給流路から前記アンモニアエンジンに供給される酸素を含む空気の量を調整する第1調整弁と、アンモニアを改質して水素を生成する改質部と、前記改質部を昇温させる昇温部と、を有する改質器と、前記改質器に酸素を含む空気と共にアンモニアを供給する第2供給流路と、前記第2供給流路に供給される酸素を含む空気の量を調整する第2調整弁と、前記第1供給流路にアンモニアを供給する供給部と、前記改質器により生成された水素を前記第1供給流路に供給する第3供給流路と、前記第1供給流路における前記第1調整弁よりも上流側に設けられ、空気よりも酸素濃度を高めた酸素富化空気を前記第1供給流路に供給する酸素富化膜と、前記アンモニアエンジンの始動時に、前記供給部から前記第1供給流路にアンモニアを供給するとともに、前記第1調整弁を開弁状態にする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、第1供給流路には、酸素富化膜によって空気よりも酸素濃度が高められた酸素富化空気が流入する。これにより、アンモニアエンジンの始動時に、改質器からアンモニアエンジンに供給される水素の量を減らしても、酸素濃度が高められた酸素富化空気を第1供給流路からアンモニアエンジンに供給できるため、アンモニアエンジンを始動させることができる。また、改質器による水素の生成は、昇温部によってアンモニアを水素に分解するために最適な温度にまでアンモニアエンジンの始動前から改質部が昇温された後に行われるため、改質器にて生成された水素がアンモニアエンジンに供給されるまでに時間を要する。制御部は、アンモニアエンジンの始動時に、供給部から第1供給流路にアンモニアを供給するとともに、第1調整弁を開弁状態にする。これにより、アンモニアエンジンの始動時に、第1供給流路からアンモニアエンジンに酸素を供給できる。したがって、アンモニアエンジンの始動時に、第1供給流路からアンモニアエンジンに酸素を供給せず、且つ改質器からアンモニアエンジンに水素を供給する場合と比較して、アンモニアエンジンの始動を早期に行える。
【0007】
アンモニアエンジンシステムにおいて、前記制御部は、前記アンモニアエンジンの高負荷運転時に、前記アンモニアエンジンに供給される酸素の量が閾値以下となるように、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御してもよい。
【0008】
上記構成によれば、アンモニアエンジンに対する酸素の供給量が多くなるほど、アンモニアエンジンの燃焼温度は高くなる傾向にある。また、アンモニアエンジンに対する水素の供給量が多くなるほど、アンモニアエンジンの燃焼温度は高くなる傾向にはある。しかしながら、アンモニアエンジンへの水素の供給量に対する燃焼温度の上昇幅は、アンモニアエンジンへの酸素の供給量に対する燃焼温度の上昇幅よりも緩やかである。アンモニアエンジンの高負荷運転時には、アンモニアエンジンでの燃焼に伴う窒素酸化物の生成が懸念されるが、こうした場合に、アンモニアエンジンに供給される酸素の量を少なくすることで、アンモニアエンジンでの燃焼温度を下げられる。したがって、アンモニアエンジンでの燃焼に伴う窒素酸化物の生成を抑制できる。
【0009】
アンモニアエンジンシステムにおいて、前記制御部は、前記アンモニアエンジンの運転時に、前記アンモニアエンジンに供給されるアンモニア、酸素、及び水素の総量に対する前記アンモニアエンジンに供給される酸素の量の割合が23%以上60%以下となるように、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御してもよい。
【0010】
アンモニアエンジンシステムにおいて、前記アンモニアエンジンは、空気が流れる第4供給流路と、前記第1供給流路における前記酸素富化膜よりも下流側であって且つ前記第1調整弁よりも上流側に設けられる上流調整弁と、を備え、前記第1供給流路のうち、前記上流調整弁よりも上流部分を上流流路とし、前記上流調整弁よりも下流部分を下流流路とすると、前記制御部は、前記アンモニアエンジンの運転状態に応じて前記上流調整弁を調整することによって、前記上流流路から前記下流流路に流れる酸素富化空気の量と前記第4供給流路から前記下流流路に流れる空気の量とを調整してもよい。
【0011】
上記構成によれば、酸素富化空気に加えて、酸素濃度が高められていない状態の空気をアンモニアエンジンに供給できるため、アンモニアエンジンの運転状態に応じてより適切な量の酸素をアンモニアエンジンに供給できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、アンモニアエンジンの始動を早期に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態におけるアンモニアエンジンシステムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、酸素の割合とアンモニアエンジンの燃焼速度との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、変更例におけるアンモニアエンジンシステムを示す模式図である。
【
図4】
図4は、変更例におけるアンモニアエンジンシステムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、アンモニアエンジンシステムを具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
<アンモニアエンジンシステムの基本構成>
図1に示すように、アンモニアエンジンシステム10は、アンモニアエンジン11と、第1供給流路12と、を備えている。本実施形態におけるアンモニアエンジンシステム10は、エンジン式の車両に搭載されている。アンモニアエンジン11は、燃料としてアンモニア(NH
3)ガスを用いる。アンモニアエンジン11は、燃焼室11aを有している。アンモニアエンジン11は、例えば4気筒エンジンであり、例えば4つの燃焼室11aを有する。
【0015】
第1供給流路12は、アンモニアエンジン11に酸素を含む空気を供給する流路である。第1供給流路12は燃焼室11aに接続されている。第1供給流路12を流れる酸素を含む空気は、燃焼室11aに供給される。
【0016】
アンモニアエンジンシステム10は、排気流路13を備えている。排気流路13は、アンモニアエンジン11から排気ガスが排出される流路である。排気流路13は燃焼室11aに接続されている。燃焼室11aにて発生した排気ガスは、排気流路13に排出された後、排気流路13を流れる。
【0017】
アンモニアエンジンシステム10は、排気触媒ユニット16を備えている。排気触媒ユニット16は、排気流路13に設けられている。排気触媒ユニット16は、三元触媒17と、SCR触媒18と、を有している。なお、排気触媒ユニット16は、三元触媒17及びSCR触媒18のどちらか一方のみを有していてもよい。
【0018】
三元触媒17は、排気流路13を流れる排気ガスに残留するアンモニアを酸化することにより、排気ガスからアンモニアを除去する。三元触媒17は、排気ガスの熱によって活性化される。
【0019】
SCR触媒18は、排気流路13における三元触媒17よりも下流側に配置されている。SCR触媒18は、選択式還元触媒(Selective Catalytic Reduction)である。SCR触媒18は、排気流路13を流れる排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)をアンモニアにより窒素(N2)に還元する。さらに、SCR触媒18は、三元触媒17を通過したアンモニアを捕集して除去する。
【0020】
アンモニアエンジンシステム10は、アンモニアタンク21と、気化器22と、を備えている。アンモニアタンク21は、液体状態のアンモニアである液体アンモニアを貯蔵する。気化器22は、アンモニアタンク21に貯蔵された液体アンモニアを気化させることにより、アンモニアガスを生成する。
【0021】
アンモニアエンジンシステム10は、第1調整弁15と、供給部としての燃料インジェクタ14と、を備えている。燃料インジェクタ14は、例えば電磁式の噴射弁である。燃料インジェクタ14は、気化器22と接続される。気化器22から燃料インジェクタ14にアンモニアガスが供給される。燃料インジェクタ14は、第1供給流路12にアンモニアガスを噴射することにより、第1供給流路12にアンモニアを供給する。燃料インジェクタ14から第1供給流路12に供給されたアンモニアは、第1供給流路12を流れる酸素と共に燃焼室11aに流入する。
【0022】
第1調整弁15は、第1供給流路12に設けられている。第1調整弁15は、例えば電磁式の流量制御弁である。第1調整弁15は、第1供給流路12の開度を調整することにより、第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給される空気の量を調整する。これにより、第1調整弁15は、第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給される酸素を含む空気の量を調整する。
【0023】
アンモニアエンジンシステム10は、改質器23を備えている。改質器23は、アンモニアを改質して水素(H2)を生成する改質部42を有する。詳細には、改質部42は、水素を含有した改質ガスを生成する。改質部42は、例えば、改質触媒が塗布された図示しない担体を有する。担体は、例えばハニカム構造を有する。改質器23に供給されたアンモニアが改質部42を通過する際に、改質部42にてアンモニアを改質して改質ガスを生成する。改質触媒は、アンモニアを水素に分解する機能に加えて、アンモニアを燃焼させる機能を有している。改質触媒は、例えばATR(Autothermal Reformer)式アンモニア改質触媒である。
【0024】
改質器23は、改質部42を昇温させる昇温部41を有する。昇温部41は例えば電気ヒータである。昇温部41は、改質部42を昇温させることにより、改質部42における改質触媒の温度を、アンモニアを水素に分解するために最適な温度に調整する。昇温部41は、例えば、改質部42の温度が規定温度未満であるときにのみ改質部42を昇温させ、改質部42の温度が規定温度以上であるときには改質部42を昇温させない。昇温部41が電気ヒータである場合、昇温部41は、通電されることで改質部42を昇温させるとともに、昇温部41への通電が停止されることで改質部42の昇温が停止される。
【0025】
改質部42が規定温度以上になると、改質部42におけるアンモニアの流れ方向の上流部分にて、アンモニアが燃焼する。改質部42に供給されるアンモニアの一部は、上記の上流部分にて燃焼せずに、改質部42におけるアンモニアの流れ方向の下流部分にまで至る。この下流部分において、アンモニアは改質触媒によって改質される。改質部42での燃焼反応によって生じる燃焼熱により、改質部42の温度は規定温度以上に維持される。これにより、改質部42でのアンモニアの改質が継続される。
【0026】
アンモニアエンジンシステム10は、第2供給流路24を備えている。さらに、アンモニアエンジンシステム10は、改質インジェクタ27を備えている。改質インジェクタ27は、例えば電磁式の噴射弁である。改質インジェクタ27は、気化器22と接続される。気化器22から改質インジェクタ27に、アンモニアガスが供給される。改質インジェクタ27は、第2供給流路24のうち、改質器23よりも上流にアンモニアガスを噴射する。改質インジェクタ27から第2供給流路24に供給されたアンモニアガスは、第2供給流路24を流れる空気と共に改質器23に流入する。したがって、第2供給流路24は、改質器23に酸素を含む空気と共にアンモニアを供給する。
【0027】
昇温部41は、第2供給流路24から改質器23に流入した空気及びアンモニアを加熱する。昇温部41による加熱を受けて昇温した空気及びアンモニアは、改質部42に供給される。これにより、改質部42は昇温する。
【0028】
アンモニアエンジンシステム10は、第3供給流路31を備えている。第3供給流路31は、改質器23における改質部42と第1供給流路12とを接続している。詳細には、第3供給流路31の一端は改質部42に接続され、第3供給流路31の他端は第1供給流路12における第1調整弁15より下流側に接続されている。第3供給流路31は、改質部42により生成された水素を含む改質ガスを第1供給流路12に導入する流路である。言い換えると、第3供給流路31は、改質器23により生成された水素を第1供給流路12に供給する。
【0029】
アンモニアエンジンシステム10は、クーラ32を備えている。クーラ32は、第3供給流路31に設けられている。クーラ32は、第3供給流路31を流れる改質ガスを冷却する。クーラ32は、例えば、クーラ32の内部を流れる冷却水と第3供給流路31を流れる改質ガスとで熱交換させることにより、第3供給流路31を流れる改質ガスを冷却する。クーラ32によって冷却された改質ガスが、第3供給流路31を通って第1供給流路12に導入される。これにより、改質ガスの熱による第1調整弁15等の吸気系部品の損傷を抑制できる。改質ガスの冷却に伴って改質ガスの体積膨張が抑制されるため、第1供給流路12から燃焼室11aに空気が流入しやすくなっている。
【0030】
アンモニアエンジン11は第2調整弁33を備えている。第2調整弁33は、第2供給流路24に設けられている。第2調整弁33は、例えば電磁式の流量制御弁である。第2調整弁33は、第2供給流路24の開度を調整する。これにより、第2調整弁33は、第2供給流路24に供給される酸素を含む空気の量を調整する。第2調整弁33は、第2供給流路24から改質器23に供給される空気の量を調整する。
【0031】
アンモニアエンジンシステム10は、第1エアクリーナ51と、第2エアクリーナ52と、を備えている。第1エアクリーナ51及び第2エアクリーナ52は、空気に含まれる塵及び埃等の異物を除去する。第1エアクリーナ51は、第1供給流路12の上流端に接続されている。これにより、第1エアクリーナ51は、異物が除去された空気を第1供給流路12に導入する。第2エアクリーナ52は、第2供給流路24の上流端に接続されている。これにより、第2エアクリーナ52は、異物が除去された空気を第2供給流路24に導入する。
【0032】
<酸素富化膜>
アンモニアエンジンシステム10は、酸素富化膜としての第1酸素富化膜53を備えている。第1酸素富化膜53は、第1供給流路12における調整弁としての第1調整弁15よりも上流側に設けられている。詳細には、第1酸素富化膜53は、第1供給流路12のうち、第1エアクリーナ51と第1調整弁15との間に設けられている。第1エアクリーナ51から第1供給流路12に流入した空気は、第1酸素富化膜53を介して第1供給流路12における第1酸素富化膜53よりも下流側に流れる。この際、第1供給流路12を流れる空気は、第1酸素富化膜53によって酸素濃度が高められる。したがって、第1酸素富化膜53は、空気よりも酸素濃度を高めた酸素富化空気を第1供給流路12に供給する。酸素富化空気は、第1供給流路12を流れてアンモニアエンジン11に供給される。
【0033】
アンモニアエンジンシステム10は、第2酸素富化膜54を備えている。第2酸素富化膜54は、第2供給流路24のうち、第2エアクリーナ52と第2調整弁33との間に設けられている。第2エアクリーナ52から第2供給流路24に流入した空気は、第2酸素富化膜54を介して第2供給流路24における第2酸素富化膜54よりも下流側に流れる。この際、第2供給流路24を流れる空気は、第2酸素富化膜54によって酸素濃度が高められる。したがって、第2酸素富化膜54は、空気よりも酸素濃度を高めた酸素富化空気を第2供給流路24に供給する。酸素富化空気は、第2供給流路24を流れて改質器23に供給される。
【0034】
酸素富化膜としては、セラミック系、高分子系、グラフェン系があるが、常温で使用でき、酸素供給量の多いグラフェン系が好ましい。
<アンモニアエンジンシステムの動作>
第1調整弁15が開弁されることにより、第1エアクリーナ51及び第1酸素富化膜53を介して酸素富化空気が第1供給流路12に供給される。第2調整弁33が開弁されることにより、第2エアクリーナ52及び第2酸素富化膜54を介して酸素富化空気が第2供給流路24に供給される。
【0035】
燃料インジェクタ14は、第1供給流路12に向けてアンモニアガスを噴射する。これにより、アンモニアは、酸素富化空気と共に第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給される。改質インジェクタ27は、第2供給流路24に向けてアンモニアガスを噴射する。これにより、アンモニアは、酸素富化空気と共に第2供給流路24から改質器23に供給される。
【0036】
改質器23においては、昇温部41は、アンモニアエンジン11の始動前に、改質部42の昇温を開始する。これにより、昇温部41は、改質器23に供給された酸素富化空気及びアンモニアの昇温を行う。改質部42における改質触媒の温度がアンモニアを水素に分解するために最適な温度まで昇温すると、改質部42によるアンモニアの改質が開始される。これにより、改質部42によって水素を含む改質ガスが生成される。生成された改質ガスは、改質器23から第3供給流路31に供給された後、第3供給流路31及び第1供給流路12を介してアンモニアエンジン11に供給される。
【0037】
燃焼室11aに空気が供給されているとき、燃焼室11aにおいて、アンモニアは空気中の酸素と共に燃焼する。燃焼室11aに改質ガスが供給されているとき、燃焼室11aにおいて、アンモニアは改質ガス中の水素と共に燃焼する。こうして、燃焼室11aにおいてアンモニアが燃焼する。
【0038】
<制御部>
アンモニアエンジンシステム10は、制御部37を備えている。制御部37は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部37は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部37は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0039】
アンモニアエンジンシステム10は、イグニッションスイッチ35と、温度センサ36と、を備えている。車両の運転者によってイグニッションスイッチ35が操作されると、イグニッションスイッチ35は制御部37に操作信号を出力する。温度センサ36は、改質部42の温度に係る検出信号を制御部37に出力する。
【0040】
<制御部による制御>
制御部37は、例えば、イグニッションスイッチ35の操作信号と温度センサ36の検出信号とに基づいて、各種制御を行う。制御部37は、第1調整弁15、第2調整弁33、燃料インジェクタ14、改質インジェクタ27、及び昇温部41等を制御する。
【0041】
制御部37は、例えば、第1調整弁15自体の大きさや第1供給流路12の流路断面積などに基づいて、第1調整弁15の開度を調整する。こうして第1調整弁15の開度を調整することで、制御部37は、第1供給流路12に供給される酸素を含む空気の量を調整する。また、制御部37は、例えば、第2調整弁33自体の大きさや第2供給流路24の流路断面積などに基づいて、第2調整弁33の開度を調整する。こうして第2調整弁33の開度を調整することで、制御部37は、第2供給流路24に供給される酸素を含む空気の量を調整する。
【0042】
例えば、制御部37は、アンモニアエンジン11を停止させる停止制御を実行する。制御部37は、イグニッションスイッチ35の操作信号に基づいてイグニッションスイッチ35がオフ操作されたと判断したことを条件に停止制御を行う。
【0043】
停止制御において、制御部37は、燃料インジェクタ14及び改質インジェクタ27からのアンモニアガスの噴射を停止させるとともに、第1調整弁15及び第2調整弁33を閉弁状態にする。これにより、アンモニアエンジン11が停止される。
【0044】
<始動時の制御>
制御部37は、アンモニアエンジン11を始動させる始動制御を実行する。制御部37は、イグニッションスイッチ35の操作信号に基づいてイグニッションスイッチ35がオン操作されたと判断したことを条件に始動制御を行う。始動制御において、制御部37は、改質インジェクタ27からアンモニアガスを噴射しないとともに第2調整弁33を閉弁状態にする。
【0045】
始動制御において、制御部37は、アンモニアエンジン11をクランキングさせるように不図示のスタータモータを制御することにより、アンモニアエンジン11を始動させる。
【0046】
始動制御において、制御部37は、燃料インジェクタ14からアンモニアガスを噴射させるとともに、第1調整弁15を開弁状態にする。すなわち、制御部37は、アンモニアエンジン11の始動時に、供給部としての燃料インジェクタ14から第1供給流路12にアンモニアを供給するとともに、第1調整弁15を開弁状態にする。
【0047】
始動制御の実行中、第1供給流路12から燃焼室11aに酸素富化空気と共にアンモニアが供給される。燃焼室11aにおいて、アンモニアは酸素と共に燃焼する。燃焼室11aにおいてアンモニアが燃焼した後、制御部37は始動制御を終了させる。
【0048】
<低負荷運転時の制御>
制御部37は、始動制御の終了後に、アンモニアエンジン11の負荷に応じた制御を行う。アンモニアエンジン11の低負荷運転時には、制御部37は、燃料インジェクタ14からアンモニアガスを噴射させるとともに第1調整弁15を開弁状態にする。さらに、アンモニアエンジン11の低負荷運転時に、制御部37は、改質インジェクタ27からアンモニアガスを噴射させるとともに第2調整弁33を開弁状態にする。なお、低負荷運転時は、例えば、アクセルペダルの開度に急速な変化がない場合等、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量を調整しなくてもアンモニアエンジン11からのNOx排出量が基準値以下となるときのアンモニアエンジン11の運転時を指す。
【0049】
アンモニアエンジン11の低負荷運転時に、制御部37は、温度センサ36の検出値に基づいて、改質部42の温度が規定温度以上であるかどうかを判断する。規定温度とは、改質部42によってアンモニアの燃焼が可能となる温度であり、例えば200℃程度である。制御部37は、改質部42の温度が規定温度以上であると判断したときは、昇温部41による改質部42の昇温を停止させるように昇温部41を制御する。改質部42の昇温に伴って、改質部42によって水素を含有した改質ガスが生成される。改質ガスが改質器23から第3供給流路31に流入する。
【0050】
アンモニアエンジン11の低負荷運転時、第1供給流路12から燃焼室11aに酸素富化空気と共に燃料インジェクタ14からアンモニアが供給されるとともに、第3供給流路31から燃焼室11aに改質ガスが供給される。燃焼室11aにおいて、アンモニアは酸素及び水素と共に燃焼する。
【0051】
アンモニアエンジン11の低負荷運転時において、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度は適宜変更してもよい。アンモニアエンジン11に供給されるアンモニア、酸素、及び水素の総量を総量Tともいう。例えば、アンモニアエンジン11の低負荷運転時において、制御部37は、第1調整弁15の開度及び第2調整弁33の開度を調整することにより、総量Tに対する酸素と水素の割合を調整してもよい。例えば、アンモニアエンジン11の低負荷運転時において、制御部37は、総量Tに対する酸素の割合を、総量Tに対する水素の割合よりも多くしてもよい。
【0052】
制御部37は、例えば、アンモニアエンジン11の回転数やトルクに応じて、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度を切り替えてもよい。これにより、アンモニアエンジン11の低負荷運転時において、第1調整弁15及び第2調整弁33は、一方の開度が他方の開度よりも大きいときと、一方の開度が他方の開度よりも小さいときと、が切り替えられてもよい。なお、アンモニアエンジン11の低負荷運転時において、第1調整弁15及び第2調整弁33の一方の開度が他方の開度よりも大きい状態で、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度が調整されてもよい。要するに、アンモニアエンジン11に供給されるアンモニアと酸素と水素の比率が好ましい比率となるように、制御部37は、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度を調整していればよい。
【0053】
なお、例えば、第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給される酸素量と、第3供給流路31からアンモニアエンジン11に供給される水素量と、を制御部37は推定あるいは検知してもよい。その結果に基づいて、制御部37は、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度を調整してもよい。
【0054】
<高負荷運転時の制御>
アンモニアエンジン11の高負荷運転時は、低負荷運転時と同様に、制御部37は、燃料インジェクタ14からアンモニアガスを噴射させるとともに第1調整弁15を開弁状態にする。制御部37は、改質インジェクタ27からアンモニアガスを噴射させるとともに第2調整弁33を開弁状態にする。なお、高負荷運転時は、例えば、アクセルペダルの開度が一定量である状態が継続された後に大きくなる場合に、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量を調整しないとアンモニアエンジン11からのNOx排出量が基準値を超えるおそれのある運転時を指す。
【0055】
アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、総量Tに対する水素の割合は、アンモニアエンジン11の始動時及び低負荷運転時よりも多くなる。そのため、アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rは、アンモニアエンジン11の始動時及び低負荷運転時よりも少なくなる。したがって、制御部37は、アンモニアエンジン11の高負荷運転時に、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量が閾値以下となるように、第1調整弁15及び第2調整弁33を制御する。なお、閾値は、実験などによって予め設定された値である。閾値は、例えば、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量が閾値以下であるときに、アンモニアエンジン11からのNOx排出量が基準値以下になる値に設定されている。閾値は、例えば、アンモニアエンジン11の始動時にアンモニアエンジン11に供給される酸素の量よりも少ない値であって、且つアンモニアエンジン11の低負荷運転時にアンモニアエンジン11に供給される酸素の量よりも少ない値に設定されている。
【0056】
例えば、制御部37は、アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量が閾値以下となるように、第1調整弁15の開度と第2調整弁33の開度とを調整する。これにより、例えば、アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、制御部37は、第1調整弁15の開度及び第2調整弁33の開度を調整することにより、総量Tに対する酸素と水素の割合を調整してもよい。例えば、アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、制御部37は、総量Tに対する水素の割合を、総量Tに対する酸素の割合よりも多くしてもよい。第1調整弁15及び第2調整弁33の開度を調整することで、制御部37は、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量を閾値以下に調整する。アンモニアエンジン11の高負荷運転時において、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度は適宜変更してもよい。例えば、アンモニアエンジン11の回転数やトルクに応じて、第1調整弁15及び第2調整弁33の開度を切り替えてもよい。
【0057】
アンモニアエンジン11の高負荷運転時では、低負荷運転時と同様に、第1供給流路12から燃焼室11aに酸素富化空気と共にアンモニアが供給されるとともに、第3供給流路31から燃焼室11aに改質ガスが供給される。燃焼室11aにおいて、アンモニアは酸素及び水素と共に燃焼する。
【0058】
<アンモニアエンジンへの酸素の供給量>
制御部37は、アンモニアエンジン11の運転時に総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rが23%以上60%以下となるように、第1調整弁15及び第2調整弁33を制御する。詳細には、例えば、アンモニアエンジン11の低負荷運転時の割合Rが、アンモニアエンジン11の高負荷運転時の割合Rよりも、上記の23%以上60%以下の範囲内で高くなるように、制御部37は、第1調整弁15及び第2調整弁33を制御する。
【0059】
図2は、エンジン試験にて求められたものである。
図2は、アンモニアエンジン11が安定して運転できる条件下での、アンモニアエンジン11の運転時における総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rと、アンモニアエンジン11の燃焼速度と、の関係を示す図である。
図2においては、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合毎に、割合Rと燃焼速度との関係を異なる線種で示している。なお、割合Rが21%であるときは、酸素濃度が高めらない状態の空気が第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給されたと仮定した場合に相当する。また、割合Rが21%である状況下において、アンモニアエンジン11の運転時に要求される総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合は20~50%である。
【0060】
図2に示すように、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が50%であるときであって、且つ割合Rが21%であるとき、燃焼速度は第1燃焼速度SP1である。そして、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が0(ゼロ)%であるときに、第1燃焼速度SP1を実現させる場合、割合Rは50%である。総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が20%であるときであって、且つ割合Rが21%であるとき、燃焼速度は第2燃焼速度SP2である。そして、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が0(ゼロ)%であるときに、第2燃焼速度SP2を実現させる場合、割合Rは27%である。
【0061】
したがって、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が0(ゼロ)%であるときに、割合Rを27%以上50%以下に調整することにより、アンモニアエンジン11の運転時の要求を満たすことができる。なお、実際には、アンモニアエンジン11の運転時には、総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される水素の量の割合が0(ゼロ)%ではないため、割合Rは上記の範囲よりも幅を持たせた23%以上60%以下が望ましい。制御部37は、アンモニアエンジン11の運転時に総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rを23%以上60%以下に制御することにより、アンモニアエンジン11の運転時の要求を満している。
【0062】
[実施形態の作用及び効果]
上記実施形態によれば以下の作用及び効果を得ることができる。
(1-1)第1供給流路12には、酸素富化膜としての第1酸素富化膜53によって空気よりも酸素濃度が高められた酸素富化空気が流入する。これにより、アンモニアエンジン11の始動時に、改質器23からアンモニアエンジン11に供給される水素の量を減らしても、酸素濃度が高められた酸素富化空気を第1供給流路12からアンモニアエンジン11に供給できる。そのため、アンモニアエンジン11を始動させることができる。また、改質器23による水素の生成は、昇温部41によってアンモニアを水素に分解するために最適な温度にまでアンモニアエンジン11の始動前から改質部42が昇温された後に行われる。そのため、改質器23にて生成された水素がアンモニアエンジン11に供給されるまでに時間を要する。制御部37は、アンモニアエンジン11の始動時に、供給部としての燃料インジェクタ14から第1供給流路12にアンモニアを供給するとともに、第1調整弁15を開弁状態にする。これにより、アンモニアエンジン11の始動時に、第1供給流路12からアンモニアエンジン11に酸素を供給できる。したがって、アンモニアエンジン11の始動時に、第1供給流路12からアンモニアエンジン11に酸素を供給せず、且つ改質器23からアンモニアエンジン11に水素を供給する場合と比較して、アンモニアエンジン11の始動を早期に行える。
【0063】
(1-2)制御部37は、アンモニアエンジン11の高負荷運転時に、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量が閾値以下となるように、第1調整弁15及び第2調整弁33を制御する。アンモニアエンジン11に対する酸素の供給量が多くなるほど、アンモニアエンジン11の燃焼温度は高くなる傾向にある。また、アンモニアエンジン11に対する水素の供給量が多くなるほど、アンモニアエンジン11の燃焼温度は高くなる傾向にはある。しかしながら、アンモニアエンジン11への水素の供給量に対する燃焼温度の上昇幅は、アンモニアエンジン11への酸素の供給量に対する燃焼温度の上昇幅よりも緩やかである。アンモニアエンジン11の高負荷運転時には、アンモニアエンジン11での燃焼に伴う窒素酸化物の生成が懸念されるが、こうした場合に、アンモニアエンジン11に供給される酸素の量を少なくすることで、アンモニアエンジン11での燃焼温度を下げられる。したがって、アンモニアエンジン11での燃焼に伴う窒素酸化物の生成を抑制できる。
【0064】
(1-3)第1供給流路12からアンモニアエンジン11に酸素を供給せず、且つ改質器23からアンモニアエンジン11に水素を供給する場合と比較して、改質器23の体格を小さくできる。したがって、アンモニアエンジンシステム10の体格を小さくできる。
【0065】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0066】
○
図3に示すように、アンモニアエンジン11は、空気が流れる第4供給流路62と、上流調整弁63と、を備えてもよい。詳細には、第4供給流路62の上流端には第3エアクリーナ61が設けられている。第4供給流路62には酸素富化膜が設けられていない。そのため、第3エアクリーナ61を介して第4供給流路62に流入した空気は、第4供給流路62の下流端まで第4供給流路62を流れる。第4供給流路62の下流端は、第1供給流路12における第1酸素富化膜53と第1調整弁15との間に接続されている。上流調整弁63は、第1供給流路12における第4供給流路62の接続先に設けられている。これにより、上流調整弁63は、第1供給流路12における酸素富化膜としての第1酸素富化膜53よりも下流側であって且つ第1調整弁15よりも上流側に設けられる。第1供給流路12のうち、上流調整弁63よりも上流部分を上流流路12aとし、上流調整弁63よりも下流部分を下流流路12bとする。制御部37は、アンモニアエンジン11の運転状態に応じて上流調整弁63を調整することによって、上流流路12aから下流流路12bに流れる酸素富化空気の量と第4供給流路62から下流流路12bに流れる空気の量とを調整する。なお、制御部37は、アンモニアエンジン11の運転状態に応じて、上流流路12aと第4供給流路62とで下流流路12bに連通する流路を切り替えてもよい。この変更例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0067】
(2-1)制御部37は、アンモニアエンジン11の運転状態に応じて上流調整弁63を調整することによって、上流流路12aから下流流路12bに流れる酸素富化空気の量と第4供給流路62から下流流路12bに流れる空気の量とを調整する。これにより、酸素富化空気に加えて、酸素濃度が高められていない状態の空気をアンモニアエンジン11に供給できるため、アンモニアエンジン11の運転状態に応じてより適切な量の酸素をアンモニアエンジン11に供給できる。
【0068】
○
図4に示すように、実施形態におけるアンモニアエンジンシステム10から、第2供給流路24、改質器23、及び第3供給流路31を省略してもよい。より詳細には、実施形態におけるアンモニアエンジンシステム10から、さらに、第2エアクリーナ52、第2酸素富化膜54、第2調整弁33、及びクーラ32が省略されている。これにより、アンモニアエンジン11には、改質器23によって生成された水素は供給されず、第1供給流路12から酸素富化空気が供給される。この変更例によれば、アンモニアエンジンシステム10からアンモニアエンジン11への水素の供給系を省略できるため、その分だけアンモニアエンジンシステム10の体格を小さくできる。また、アンモニアタンク21に貯留されるアンモニアを全てアンモニアエンジン11への供給のために用いることができる。そのため、アンモニアタンク21に貯留されるアンモニアの一部が改質器23に供給される場合と比較して、改質部42での燃焼反応に使用される分のアンモニアを削減できる分だけ、アンモニアタンク21を小さくできる。したがって、アンモニアタンク21の設置スペースを削減できる。
【0069】
○ アンモニアエンジン11の運転時に、アンモニアエンジン11に供給される総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rが23%未満となるように、制御部37は第1調整弁15及び第2調整弁33を制御してもよい。アンモニアエンジン11の運転時に、アンモニアエンジン11に供給される総量Tに対するアンモニアエンジン11に供給される酸素の量の割合Rが60%より高くなるように、制御部37は第1調整弁15及び第2調整弁33を制御してもよい。
【0070】
○ 水素は単位発熱量が少ない性質を有するため、アンモニアエンジン11に水素を供給する場合、水素によってアンモニアエンジン11のトルクは大きくなり難い。その反面、アンモニアエンジン11に水素を供給するとともにアンモニアエンジン11に供給する酸素の量を増やすと、アンモニアエンジン11のトルクは大きくなりやすい。そのため、アンモニアエンジン11の高負荷運転時に要求されるトルクに応じてアンモニアエンジン11に供給される酸素の量が、低負荷運転時よりも多くなるように、制御部37は第1調整弁15や第2調整弁33の開度を調整してもよい。制御部37は、第1調整弁15や第2調整弁33の開度を調整することで、アンモニアエンジン11の運転状態に応じてアンモニアエンジン11に供給される酸素の量を調整してもよい。
【0071】
○ 制御部37は、アンモニアエンジン11の高負荷運転時にアンモニアエンジン11に供給される酸素の量が閾値より多くなるように、第1調整弁15及び第2調整弁33を制御してもよい。
【0072】
○ 制御部37は、アンモニアエンジン11の始動時に、改質インジェクタ27から第2供給流路24にアンモニアを供給するとともに、第2調整弁33を開弁状態にしてもよい。要するに、制御部37は、アンモニアエンジン11の始動時に、供給部としての燃料インジェクタ14から第1供給流路12にアンモニアを供給するとともに、第1調整弁15を開弁状態にすればよい。
【0073】
○ 制御部37は、アンモニアエンジン11の運転条件、改質器23への供給空気量、改質インジェクタ27からの噴射量、昇温部41への通電時間などから、改質部42の温度が規定温度以上であるかどうかを判断してもよい。この場合、アンモニアエンジン11から温度センサ36を省略してもよい。
【0074】
○ 第2調整弁33は、第3供給流路31に設けられていてもよい。この変更例における第2調整弁33は、第3供給流路31の開度を調整することにより、第3供給流路31を介して第2供給流路24から改質器23に供給される空気の量を調整する。これにより、この変更例における第2調整弁33は、第2供給流路24に供給される酸素を含む空気の量を調整する。
【0075】
○ アンモニアエンジンシステム10は、燃料インジェクタ14以外の供給部を備えていてもよい。この場合の供給部は、例えばミキサーである。また、アンモニアエンジンシステム10は、改質インジェクタ27にかえて、第2供給流路24にアンモニアガスを噴射するミキサーを備えてもよい。
【0076】
○ アンモニアエンジンシステム10から気化器22を省略してもよい。この場合、アンモニアタンク21は、燃料インジェクタ14及び改質インジェクタ27の各々に接続される。これにより、アンモニアタンク21に貯蔵された液体アンモニアが、燃料インジェクタ14及び改質インジェクタ27に供給される。燃料インジェクタ14及び改質インジェクタ27は、液体アンモニアを噴射する。なお、この場合、アンモニアエンジンシステム10は、燃料噴射用のポンプを有してもよい。燃料噴射用のポンプによってアンモニアタンク21から燃料インジェクタ14及び改質インジェクタ27へと液体アンモニアが供給されてもよい。
【0077】
○ アンモニアエンジンシステム10から第2酸素富化膜54を省略してもよい。
○ 第1エアクリーナ51と第2エアクリーナ52にかえて、1つのエアクリーナをアンモニアエンジンシステム10に設けてもよい。例えば、この場合のエアクリーナは、第1供給流路12に設けられる。第2供給流路24の上流端は、第1供給流路12におけるエアクリーナと第1酸素富化膜53との間に接続される。これにより、第1供給流路12における第1酸素富化膜53よりも下流側には、第1酸素富化膜53によって酸素濃度が高められた酸素富化空気が流れる。第2供給流路24には、第1酸素富化膜53によって酸素濃度が高められていない空気が流れる。なお、第2供給流路24の上流端は、第1供給流路12における第1酸素富化膜53と第1調整弁15との間に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
R…割合、T…総量、10…アンモニアエンジンシステム、11…アンモニアエンジン、12…第1供給流路、12a…上流流路、12b…下流流路、14…供給部としての燃料インジェクタ、15…第1調整弁、23…改質器、24…第2供給流路、31…第3供給流路、33…第2調整弁、37…制御部、41…昇温部、42…改質部、53…酸素富化膜としての第1酸素富化膜、62…第4供給流路、63…上流調整弁。