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特開2024-173390含フッ素重合体、離型剤組成物および離型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173390
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】含フッ素重合体、離型剤組成物および離型方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/00 20060101AFI20241205BHJP
   B29C 33/60 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08F220/00
B29C33/60
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091773
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】石井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】植畑 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中前 靖史
【テーマコード(参考)】
4F202
4J100
【Fターム(参考)】
4F202CA30
4F202CB01
4F202CM47
4F202CM64
4F202CM66
4F202CM83
4F202CM90
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL11Q
4J100BA02P
4J100BB18P
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC08Q
4J100BC09Q
4J100BC12Q
4J100BC43Q
4J100BC48Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100JA01
4J100JA20
4J100JA21
(57)【要約】
【課題】優れた離型性を有する、新規離型剤組成物の提供。
【解決手段】(A)含フッ素単量体、および(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、含フッ素単量体(A)が、式:CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Y12-R[式中、各記号は、明細書中の記載と同意義である]で示される化合物である、含フッ素重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)含フッ素単量体、および
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体
から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、
含フッ素単量体(A)が、式:
CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Y12-R
[式中、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基またはハロゲン原子であり、
11は、直接結合、-O-または-NH-であり、
12は、直接結合、または二価の基である。]
で示される化合物である、含フッ素重合体。
【請求項2】
含フッ素単量体(A)において、Y12は、式(I):
-(Ar)a1-(CFH)b1-(CHc1-(O)d1- (I)
[式中:
Arは、フッ素原子またはRにより置換されていてもよい2価の芳香族基であり、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
a1は、0~10の整数であり、
b1は、0~200の整数であり、
c1は、0~200の整数であり、
d1は、0~10の整数であり、
符号a1、b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
含フッ素単量体(A)において、Rは、CFO-、CFNH-、又は(CFN-である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
含フッ素単量体(A)において、X11が水素原子、メチル基または塩素原子である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
ラジカル重合反応性単量体(B)は、式(II)
【化1】
[式中、
は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子又はメチル基である。)
で表されるアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
(1)請求項1~5のいずれか1項に記載の含フッ素重合体、および
(2)水および有機溶媒から選択された少なくとも1種である液状媒体
を含んでなる離型剤組成物。
【請求項7】
離型剤組成物が、有機溶媒を含有する溶液またはエアゾール、あるいは水を含有する水系エマルションである、請求項6に記載の離型剤組成物。
【請求項8】
含フッ素重合体(1)の含有量が離型剤組成物に対して0.1~50重量%である、請求項6に記載の離型剤組成物。
【請求項9】
(i)請求項6に記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程
を含む、離型剤被膜の形成方法。
【請求項10】
(i)請求項6に記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程、
(ii)離型剤組成物の被膜を有する成形型に成形用組成物を充填して成形体を得る工程;および
(iii)成形体を成形型から取り出す工程
を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素重合体、離型剤組成物および離型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂やゴム等を成形する際に、成形型(金型)の内面にあらかじめ離型剤(外部離型剤)を塗布して離型性を高めることが必要とされている。
【0003】
従来、離型剤としては、ワックス系及びシリコーン系の離型剤に加えてフッ素系の離型剤が使用されてきた(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5060847号
【特許文献2】特公平3-8245号公報
【特許文献3】特開昭60-262870号公報
【特許文献4】特開2014-129517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、優れた離型性を有する、新規離型剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] (A)含フッ素単量体、および
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体
から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、
含フッ素単量体(A)が、式:
CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Y12-R
[式中、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基またはハロゲン原子であり、
11は、直接結合、-O-または-NH-であり、
12は、直接結合、または二価の基である。]
で示される化合物である、含フッ素重合体。
[2] 含フッ素単量体(A)において、Y12は、式(I):
-(Ar)a1-(CFH)b1-(CHc1-(O)d1- (I)
[式中:
Arは、フッ素原子またはRにより置換されていてもよい2価の芳香族基であり、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
a1は、0~10の整数であり、
b1は、0~200の整数であり、
c1は、0~200の整数であり、
d1は、0~10の整数であり、
符号a1、b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、上記[1]に記載の含フッ素重合体。
[3] 含フッ素単量体(A)において、Rは、CFO-、CFNH-、又は(CFN-である、上記[1]または[2]に記載の含フッ素重合体。
[4] 含フッ素単量体(A)において、X11が水素原子、メチル基または塩素原子である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
[5] ラジカル重合反応性単量体(B)は、式(II)
【化1】
[式中、
は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子又はメチル基である。)
で表されるアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
[6](1)上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の含フッ素重合体、および
(2)水および有機溶媒から選択された少なくとも1種である液状媒体
を含んでなる離型剤組成物。
[7] 離型剤組成物が、有機溶媒を含有する溶液またはエアゾール、あるいは水を含有する水系エマルションである、上記[6]に記載の離型剤組成物。
[8] 含フッ素重合体(1)の含有量が離型剤組成物に対して0.1~50重量%である、上記[6]または[7]に記載の離型剤組成物。
[9](i)上記[6]~[8]のいずれかに記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程
を含む、離型剤被膜の形成方法。
[10](i)上記[6]~[8]のいずれかに記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程、
(ii)離型剤組成物の被膜を有する成形型に成形用組成物を充填して成形体を得る工程;および
(iii)成形体を成形型から取り出す工程
を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、優れた離型性を有する新規離型剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[離型剤組成物の成分]
離型剤組成物は、
(1)含フッ素重合体、および
(2)水および/または有機溶媒である液状媒体
を含んでなる。
離型剤組成物において、含フッ素重合体が離型剤として働く。離型剤組成物は、溶液または水系エマルションであることが好ましい。
【0009】
(1)含フッ素重合体
含フッ素重合体は、離型剤組成物における活性成分、すなわち、離型剤である。
【0010】
含フッ素重合体は、
(A)含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位、および
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体から誘導された繰り返し単位
を有する。含フッ素重合体は、繰り返し単位(A)および(B)に加えて、他の繰り返し単位(C)(他の単量体(C)から誘導された繰り返し単位)を有してもよい。
【0011】
(A)含フッ素単量体
含フッ素単量体(A)は、式:
CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Y12-R
[式中、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-である、
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基またはハロゲン原子であり、
11は、直接結合、-O-または-NH-であり、
12は、直接結合、または二価の基である。]
で示される化合物である。
【0012】
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-である。Rは、好ましくはCFO-、CFNH-、(CFN-、CFS-、CFC(=O)-、CFC(=O)O-、CFOC(=O)-、CFCONH-、CFNHCO-、CFCON(CF)-、又は(CFNCO-、さらに好ましくはCFO-、CFNH-、又は(CFN-であり得る。
【0013】
一の態様において、Rは、CFO-であり得る。
【0014】
別の態様において、Rは、CFNH-又は(CFN-、好ましくはCFNH-であり得る。
【0015】
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)である。X11は、水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
【0016】
11は、直接結合、-O-または-NH-である。Y11は、-O-であることが好ましい。すなわち、含フッ素単量体(A)はアクリレートエステルであることが好ましい。
【0017】
12は、直接結合、または二価の基である。Y12は、好ましくは、
-(Ar)a1-(CFH)b1-(CHc1-(O)d1
[式中:
Arは、フッ素原子またはRにより置換されていてもよい2価の芳香族基であり、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
a1は、0~10の整数であり、
b1は、0~200の整数であり、
c1は、0~200の整数であり、
d1は、0~10の整数であり、
符号a1、b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である。ただし、式中、酸素原子は連続して存在しないことが好ましい。即ち、-O-O-結合は存在しないことが好ましい。なお、Y12は、右側がRに結合する。
【0018】
上記芳香族基は、環原子として炭素のみを含む芳香環(いわゆるアリーレン)に加え、さらに窒素、酸素又は硫黄を含む芳香環(いわゆるヘテロアリーレン)、及び複数の芳香環を有する基も包含する。
【0019】
上記芳香族基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、オバレン環、インドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する。
【0020】
一の態様において、上記芳香族基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、又はオバレン環、より好ましくはベンゼン環、又はナフタレン環、さらに好ましくはベンゼン環を有する。
【0021】
別の態様において、上記芳香族基は、好ましくはインドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、又はピラジン環、さらに好ましくはインドール環を有する。
【0022】
別の態様において、上記芳香族基は、好ましくはビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する。
【0023】
一の態様において、Arは、非置換の2価の芳香族基である。
【0024】
別の態様において、Arは、フッ素原子またはRにより置換されていている2価の芳香族基である。
【0025】
別の態様において、Arは、Rにより置換されていている2価の芳香族基である。
【0026】
別の態様において、Arは、フッ素原子により置換されていている2価の芳香族基である。
【0027】
上記芳香族基の置換基の数は、特に限定されないが、例えば1~10個、1~5個、1~3個、1個、2個、又は3個であり得る。一の態様において、上記芳香族基の置換基の数は、1個以上である。別の態様において、上記芳香族基は、全置換されている。
【0028】
a1は、0~10の整数、好ましくは0又は1である。
【0029】
一の態様において、a1は、0である。
【0030】
別の態様において、a1は、1である。
【0031】
b1は、0~200の整数、好ましくは0~6の整数である。
【0032】
c1は、0~200の整数、好ましくは0~30の整数である。
【0033】
d1は、0~10の整数、好ましくは0~3の整数である。
【0034】
一の態様において、Y12は、
-(CHc1-(O)d1-(Ar)a1
[式中:
Arは、フッ素原子またはRにより置換されていてもよい2価の芳香族基、好ましくは非置換の2価の芳香族基であり、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
a1は、0または1であり、
c1は、1~36の整数、好ましくは1~30の整数であり、例えば1~9の整数、1~3の整数、又は2~3の整数であり得、
d1は、0または1であり、
符号a1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である。なお、Y12は、右側がRに結合する。
【0035】
一の態様において、Y12は、
-(CHc1
[式中、c1は、1~36の整数、好ましくは1~30の整数であり、例えば1~9の整数、1~3の整数であり得る。]
で表される基である。
【0036】
一の態様において、Y12は、-Ar-
[式中:
Arは、フッ素原子またはRにより置換されていてもよい2価の芳香族基、好ましくは非置換の2価の芳香族基であり、
は、CF-、CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-である。]
で表される基である。なお、Y12は、右側がRに結合する。
【0037】
含フッ素単量体の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=C(-H)-C(=O)-O-CH-R
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-R
CH=C(-H)-C(=O)-O-C-R
CH=C(-H)-C(=O)-NH-(CH-R
CH=C(-CH)-C(=O)-O-CH-R
CH=C(-CH)-C(=O)-O-(CH-R
CH=C(-CH)-C(=O)-O-(CH-R
CH=C(-CH)-C(=O)-NH-(CH-R
CH=C(-F)-C(=O)-O-(CH-R
CH=C(-F)-C(=O)-NH-(CH-R
CH=C(-F)-C(=O)-NH-(CH-R
CH=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH-R
CH=C(-Cl)-C(=O)-NH-(CH-R
[上記式中、Rは、上記と同意義である。]
【0038】
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体
【0039】
単量体(B)は、官能基を有しない単量体である。単量体(B)は官能基を含まないので、使用時において離型剤と成形材料との反応を避けることができる。
【0040】
単量体(B)は、単量体(A)と共重合可能な単量体である。
【0041】
単量体(B)は、ラジカル重合反応性部位を有している。ラジカル重合反応性部位としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート基、メタアクリレート基、ビニル基、ビニリデン基及びアリル基等が挙げられる。ラジカル重合反応性部位としては、アクリレート基及びメタアクリレート基が好ましい。
【0042】
単量体(B)の、ラジカル重合反応性部位を除く部位の構造は、本発明の効果が損なわれない限り、広範囲のものから選択可能である。単量体(B)は、ラジカル重合反応性部位の他に、成形材料との反応に関して不活性な、アルキル基をはじめとする一種以上の置換基をさらに有していてもよい。単量体(B)は、さらに、その置換基同士の間、又は置換基とラジカル重合反応性部位の間に、成形材料との反応に関して不活性な、エステル結合をはじめとする結合が挿入されていてもよい。
【0043】
単量体(B)としては、例えば、下記式(II):
【化2】
[式中、
は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子又はメチル基である。]
で表される(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0044】
式(II)において、Rは、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基である。Rは、好ましくは炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の炭素数6~12の芳香族炭化水素基又は一価の炭素数6~12の環状脂肪族炭化水素基である。
【0045】
上記において、炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~30のアルキル基が挙げられ、炭素数1~22のアルキル基が好ましい。
【0046】
具体的には、炭素数1~22のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、セチル基、ステアリル基及びベヘニル基等が挙げられる。
【0047】
具体的には、一価の炭素数6~12の芳香族炭化水素基として、フェニル基、2-エチルフェニル基、インデニル基、トルイル基及びベンジル基等が挙げられる。
【0048】
具体的には、一価の炭素数6~12の環状脂肪族炭化水素基として、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、イソボルニル基、ボルニル基、メンチル基、オクタヒドロインデニル基、アダマンチル基及びジメチルアダマンチル基等が挙げられる。
【0049】
式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロインデニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-エチルフェニル、(メタ)アクリル酸インデニル、(メタ)アクリル酸トルイル及び(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。特に、アクリル酸ステアリル及びアクリル酸ベヘニルが好ましい。
【0050】
本発明の離型剤は、上記した単量体(B)のうち一種を単量体(A)と共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる離型剤であってもよいし、二種以上を単量体(A)と共重合して得られうる含フッ素ポリマー構造からなる離型剤であってもよい。
【0051】
(C)他の単量体
含フッ素重合体は、他の単量体から誘導された繰り返し単位を有してもよい。含フッ素重合体は、他の単量体から誘導された繰り返し単位を有しないことが好ましい。すなわち、含フッ素重合体が、単量体(A)および(B)から誘導された繰り返し単位からなることが好ましい。他の単量体(C)の例は、ケイ素含有単量体、例えば、変性シリコーンオイル、例えば、アミノ変性シリコーンオイルおよびアクリル変性シリコーンオイル;およびジ(メタ)アクリレート単量体などである。他の単量体の別の例は、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルなどである。
【0052】
単量体(A)~(C)のそれぞれは、1種単独であってよく、あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0053】
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に1000~1000000、例えば2000~500000、特に3000~200000であってよい。含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。
【0054】
(2)液状媒体
液状媒体は、水および有機溶媒から選択された少なくとも1種である。液状媒体は、有機溶媒単独であってよい。あるいは、液状媒体は、水性媒体であってよい。水性媒体は、すなわち、水の単独、あるいは水と(水混和性)有機溶媒との混合物であってよい。水混和性有機溶媒の量は、液状媒体に対して、30重量%以下、例えば10重量%以下(好ましくは0.1%以上)であってよい。
【0055】
液状媒体の量は、離型剤組成物に対して、30~99.1重量%、特に50~99重量%であってよい。
【0056】
(3)他の成分
離型剤組成物は、他の成分を含有してもよい。
【0057】
離型剤組成物は、水系エマルションである場合に、乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤は、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、アニオン乳化剤および両性乳化剤の中から選択された少なくとも1種であってよい。
【0058】
離型剤組成物は、他の成分として、添加剤を含有してもよい。
【0059】
添加剤の例は、含ケイ素化合物、ワックス、アクリルエマルションなどである。添加剤の他の例は、他の含フッ素重合体、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、界面活性剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤等である。
【0060】
他の成分の量は、離型剤組成物に対して、0.1~20重量%、例えば0.5~10重量%であってよい。
【0061】
[離型剤組成物の製造(含フッ素重合体の製造)]
本発明の離型剤は、
(A)含フッ素単量体、及び
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性の単量体
を共重合する工程を含む方法により製造できる。
【0062】
共重合は、乳化重合であってもよいし、溶液重合であってもよい。
【0063】
乳化重合は、特に限定されないが、例えば次のようにして行うことができる。重合開始剤及び乳化剤の存在下で、各種単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して共重合させる。
【0064】
乳化重合において、重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3-カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン-二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の水溶性の重合開始剤、並びにアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート及びアゾビスメチルプロピオネート等の油溶性の重合開始剤が挙げられる。
【0065】
乳化重合において、重合開始剤は、通常、単量体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0066】
乳化重合において、放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが好ましい。
【0067】
乳化重合において、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性又はノニオン性の各種乳化剤を用いることができる。乳化剤は、通常、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。乳化剤としてノニオン性乳化剤又はアニオン性乳化剤が好ましい。
【0068】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0069】
アニオン性乳化剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては特に限定されないが、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
カチオン性乳剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0071】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0072】
乳化重合において、単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体を充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性及び共重合性を向上させることが可能である。
【0073】
相溶化剤としての水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコール及びエタノール等が挙げられる。水溶性有機溶剤は、通常、水100重量部に対して、1~50重量部の範囲で用いられる。水溶性有機溶剤は、好ましくは水100重量部に対して、10~40重量部の範囲で用いられる。
【0074】
乳化重合において、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸2-エチルヘキシル及び2,3-ジメチルカプト-1-プロパノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いてもよい。連鎖移動剤は、通常、単量体100重量部に対して0.001~7.0重量部の範囲で用いられる。
【0075】
溶液重合は、特に限定されないが、例えば次のようにして行うことができる。重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート及びジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。重合開始剤は、通常、単量体100重量部に対して、0.01~20重量部の範囲で用いられる。重合開始剤は、好ましくは、単量体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0076】
溶液重合において、有機溶剤としては、単量体に対して不活性であり、かつこれらを溶解するものであればよく、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、クロロホルム、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル及び酢酸ブチル等が挙げられる。有機溶剤は、通常、単量体の合計100重量部に対して、50~2000重量部の範囲で用いられる。有機溶剤は、好ましくは、単量体の合計100重量部に対して、50~1000重量部の範囲で用いられる。
【0077】
[離型剤組成物の形態と用途]
離型剤組成物の形態は、使用目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液、エマルション又はエアゾールである。離型剤組成物が、有機溶媒を含有する溶液またはエアゾール、あるいは水を含有する水系エマルションであることが好ましい。
【0078】
離型剤組成物は、含フッ素重合体を、離型剤組成物に対して、0.5重量%~50重量%、より好ましくは1.0重量%~30重量%、特に好ましくは1.5重量%~20重量%含有することが好ましい。
【0079】
離型剤組成物は、成形型への濡れ性を向上させる目的で、さらに界面活性剤(乳化剤)を含有していてもよい。界面活性剤としては、フッ素系又は非フッ素系の界面活性剤等を用いることができる。フッ素系又は非フッ素系の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を用いることができる。
【0080】
フッ素系界面活性剤としては、含フッ素のポリオキシエチレン、スルホン酸塩、カルボン酸塩、第4級アンモニウム塩等があげられる。
【0081】
非フッ素系アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0082】
非フッ素系ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0083】
非フッ素系カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0084】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0085】
界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の量は、離型剤組成物に対して、0.01重量%~20重量%であり、好ましくは0.01重量%~15重量%であり、より好ましくは0.05重量%~10重量%であってよい。
【0086】
離型剤組成物は、離型性及び/又は仕上がり性を向上させる目的で、シリコーン化合物、ワックス系化合物及びフッ素系化合物等からなる群より選択される少なくとも1種の離型向上添加剤をさらに含有していてもよい。
【0087】
シリコーン化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル(例えば、アミノ変性シリコーンオイル)、フルオロシリコーンオイル及びシリコーンレジン等が挙げられる。ワックス系化合物としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス及びカルナバワックス等が挙げられる。フッ素系化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロポリエーテル及びフルオロクロロポリエーテル等が挙げられる。
【0088】
離型向上添加剤の量は、離型剤組成物に対して、0.01重量%~20重量%であり、好ましくは0.02重量%~15重量%であってよい。
【0089】
離型剤組成物は水性エマルションである場合、乳化剤としてノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤及びカチオン性乳化剤からなる群より選択される少なくとも一種の乳化剤を含有することが好ましい。
【0090】
ノニオン性乳化剤としては、本開示の含フッ素重合体を乳化して水性エマルション中に分散させることができるものであればよく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0091】
アニオン性乳化剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0092】
カチオン性乳化剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0093】
乳化剤の量は、含フッ素重合体100重量部に対して、通常、0.5重量部~25重量部であり、好ましくは1.0重量部~20重量部であり、より好ましくは2.0重量部~15重量部である。
【0094】
離型剤組成物は、溶液である場合、さらに、有機溶剤等を含有していてもよい。
【0095】
離型剤組成物は、エアゾールである場合、噴射剤を用いてエアゾール缶に充填できる。噴射剤としては、例えば、LPG、ジメチルエーテル及び二酸化炭素等が挙げられる。噴射剤の量は、通常、離型剤組成物と噴射剤の合計量に対して、10~95重量%、好ましくは20~90重量%、より好ましくは30~90重量%である。噴射剤の量が10重量%以上であればより良好に噴射でき、より均一な被膜が得られる傾向がある。また、噴射剤の量が95重量%以下であれば被膜が薄くなりすぎず、離型性が低下しすぎない傾向がある。
【0096】
離型剤組成物は、内部離型剤または外部離型剤として使用できる。外部離型剤として使用することが好ましい。
【0097】
離型剤組成物は、通常、次のようにして使用される。離型剤組成物を成形型の内面に塗布し、溶剤や分散剤が乾燥し除去された後、成形型に離型剤被膜(含フッ素重合体の被膜)が形成され、該型内に成形用組成物を充填して成形材料を成形し、該型から成形材料を取り出す。
【0098】
離型剤組成物が用いられる成形型としては、例えば、アルミ、SUS、鉄などの金属の型、エポキシ樹脂および木の型、並びにニッケル電鋳又はクロムメッキされた型等が挙げられる。
【0099】
離型剤組成物を利用して離型される成形材料としては、例えば、ウレタンゴム、H-NBR、NBR、シリコーンゴム、EPDM、CR、NR、フッ素ゴム、SBR、BR、IIR及びIR等のゴムや、ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びFRP(例えば、CFRPおよびGFRP)等の熱硬化性樹脂、ABS、ポリカーボネートおよびPBT等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【実施例0100】
以下に実施例を掲げて本開示をさらに詳しく説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
合成例1
WO2020/168011Alの記載を参考に、銀トリフラート、フッ化カリウム、1-(クロロメチル)-4-フルオロ-4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラフルオロボレートの塩、および、ベンジルオキシエタノールを酢酸エチル中、16時間、30℃で反応させて、[2-(トリフルオロメトキシ)エトキシ]メチル]ベンゼンを得た(化合物1)。
【0102】
合成例2
[2-(トリフルオロメトキシ)エトキシ]メチル]ベンゼン(化合物1)をパラジウム触媒存在下、水素還元を行い(50psi、35℃、24h)、2-(トリフルオロメトキシ)エタノール(化合物2)を得た。
【0103】
合成例3
合成例2で得られたアルコールとメタクリル酸メチルを塩基性触媒(水酸化カルシウム)存在下、反応を行い、含フッ素メタクリレート(化合物3)を得た。
【0104】
製造例1
合成例3で得た化合物:CFO-CHCH-OCO-C(CH)=CH 41g及びステアリルアクリレート10gを十分に溶解させた後、ポリオキシエチレン(n=20)ラウリルエーテル(ノニオン性乳化剤)4g、ラウリルメルカプタン0.2g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル7g及びイオン交換水95gを加え、高圧ホモジナイザーで乳化した。得られた乳化液を還流冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた300ml四つ口フラスコに入れ、窒素気流下に約1時間60℃に保った。開始剤として過硫酸アンモニウム0.3gを水5gに溶解したものを添加し、重合を開始した。60℃で3時間加熱攪拌し、水性共重合体エマルションを調製し、得られた水性エマルションをイオン交換水で固形分濃度が0.3質量%になるように調整した。
【0105】
製造例2
合成例3で得た化合物:CFO-CHCH-OCO-C(CH)=CH 35g及びステアリルアクリレート25gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0106】
製造例3
合成例3で得た化合物:CFO-CHCH-OCO-C(CH)=CH 44g及びイソボルニルメタクリレート5gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0107】
製造例4
合成例3で得た化合物:CFO-CHCH-OCO-C(CH)=CH 23g及びステアリルメタクリレート50gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0108】
製造例5
合成例3で得た化合物:CFO-CHCH-OCO-C(CH)=CH 14g及びラウリルアクリレート70gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0109】
製造例6
グリシジルメタクリレート50gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0110】
製造例7
グリシジルメタクリレート61g及びステアリルアクリレート19gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0111】
製造例8
ヒドロキシブチルアクリレート10g及びステアリルアクリレート50gを十分に溶解させた後、製造例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0112】
製造例9
特許第5664745号の実施例1を参考に作製した化合物(対照化合物2)をイオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0113】
製造例10
ジメチルシリコーンエマルション、SM67036EX(対照化合物2ダウ・東レ(株)製)50gをイオン交換水で固形分濃度0.3質量%となるように調整した。
【0114】
実施例
各試験を10の化合物を用いて行った。即ち、製造例1~5での化合物を実施例1~5、製造例6~10での化合物を比較例1~5として下記の試験を行った。
結果を表1に示す。
【0115】
「離型試験」
次の条件で実施した。
(1)過酸化物加硫型のシリコーンゴムKE-941U(信越化学工業株式会社製)を100重量部、及び加硫剤としてC-8A(信越化学工業株式会社製)0.6重量部をゴム用の練りロールで混練りし、未加硫のゴム生地を得た。
(2)180℃に保温した36個取りの金型(中型)に実施例1~5、及び比較例1~5で調製した化合物を、それぞれスプレーガンを用いて同一条件で塗布し、小さくカットした上記(1)のゴム生地片1g36個を中型に入れた。その後、中型と同サイズの金型2枚を中型の上(上型)と下(下型)にかぶせて180℃×10分でプレス成型した。
(3)成型後、上型と下型を外して中型だけを取り出した。その後、プッシュプルゲージで成型後のゴム片を押し出して、その際に必要な押出力を測定し、36個押し出した時の力の平均値を離型力(N)とした。
(4)再度、含フッ素ポリマー組成物を上記(2)と同様に塗布・成型し、(3)と同様に評価を連続4回まで繰り返し実施した。
【0116】
「離型剤の成型物への被覆面積率」
離型試験時に得た未加硫のゴム生地を100×100×10mmにカットしSUS板上に乗せ、180℃×10分でプレス成型してシリコーンゴムシートを作製した。次に作製したゴムシートを垂直に立てた状態にして製造例1~10で調製した離型剤をスプレーガンを用い、ウエット重量が5g/m2となるようスプレー吐出量と時間を調整し、塗布した時の配合液の被覆面積を測定し、下記のように分類した。
◎:離型剤の被覆面積率が80%以上(離型剤の成型物に対する濡れ性が非常に良い)
○:離型剤の被覆面積率が60~80%以上(離型剤の成型物に対する濡れ性が良い)
△:離型剤の被覆面積率が20~60%以上(離型剤の成型物に対する濡れ性が悪い)
×:離型剤の被覆面積率が20%未満(離型剤の成型物に対する濡れ性が非常に悪い)
【0117】
「金型汚れ評価」
上記離型試験を、連続4回行った後の金型に付着した型汚れを採取し、その量を比較例9の重量と比較した。
◎:比較例10の1/20
○:比較例10の1/10
△:比較例10の1/4
×:比較例9と同等
【0118】
なお、表中において、各略号はそれぞれ以下に示す化合物を指す。
「STA」:ステアリルアクリレート
「IBM」:イソボルニルメタクリレート
「STMA」:ステアリルメタクリレート
「LA」:ラウリルアクリレート
「GMA」:グリシジルメタクリレート
「HBA」:ヒドロキシブチルアクリレート
【0119】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本開示の離型剤組成物は、内部離型剤または外部離型剤として使用できる。本開示の離型剤組成物は、種々の成形に使用することができる。
本開示の離型剤組成物は、一般に、塗料の形態である。本開示の離型剤組成物は、防錆剤、防湿剤、防水剤、撥水剤および防汚剤として使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)含フッ素単量体、および
(B)官能基を有しないラジカル重合反応性単量体
から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、
含フッ素単量体(A)が、式:
CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Y12-R
[式中、
CFO-、CFNH-、CFCHNH-、(CFN-、(CFCHN-、CFS-、CFC(=O)-、CFCHC(=O)-、CFC(=O)O-、CFCHOC(=O)-、CFCONH-、CFCHCONH-、CFNHCO-、CFCHNHCO-、CFCON(CF)-、CFCHCON(CF)-、CFCON(CHCF)-、CFCHCON(CHCF)-、(CFNCO-又は(CFCHNCO-であり、
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基またはハロゲン原子であり、
11-O-または-NH-であり、
12は、式(I):
-(Ar) a1 -(CFH) b1 -(CH c1 -(O) d1 - (I)
[式中:
Arは、フッ素原子またはR により置換されていてもよい2価の芳香族基であり、
は、CF -、CF O-、CF NH-、CF CH NH-、(CF N-、(CF CH N-、CF S-、CF C(=O)-、CF CH C(=O)-、CF C(=O)O-、CF CH OC(=O)-、CF CONH-、CF CH CONH-、CF NHCO-、CF CH NHCO-、CF CON(CF )-、CF CH CON(CF )-、CF CON(CH CF )-、CF CH CON(CH CF )-、(CF NCO-又は(CF CH NCO-であり、
a1は、0~10の整数であり、
b1は、0~200の整数であり、
c1は、0~200の整数であり、
d1は、0~10の整数であり、
符号a1、b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である。]
で示される化合物であ
ラジカル重合反応性単量体(B)が、式(II)
【化1】
[式中、
は、炭素数1~22のアルキル基、フェニル基、2-エチルフェニル基、インデニル基、トルイル基又はベンジル基であり、
は、水素原子又はメチル基である。)
で表されるアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、
含フッ素重合体。
【請求項2】
含フッ素単量体(A)において、Rは、CFO-、CFNH-、又は(CFN-である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
含フッ素単量体(A)において、X11が水素原子、メチル基または塩素原子である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
(1)請求項1~のいずれか1項に記載の含フッ素重合体、および
(2)水および有機溶媒から選択された少なくとも1種である液状媒体
を含んでなる離型剤組成物。
【請求項5】
離型剤組成物が、有機溶媒を含有する溶液またはエアゾール、あるいは水を含有する水系エマルションである、請求項に記載の離型剤組成物。
【請求項6】
含フッ素重合体(1)の含有量が離型剤組成物に対して0.1~50重量%である、請求項に記載の離型剤組成物。
【請求項7】
(i)請求項に記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程
を含む、離型剤被膜の形成方法。
【請求項8】
(i)請求項に記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤組成物の被膜を形成する工程、
(ii)離型剤組成物の被膜を有する成形型に成形用組成物を充填して成形体を得る工程;および
(iii)成形体を成形型から取り出す工程
を含む、成形体の製造方法。