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特開2024-173391撮像装置、撮像装置の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173391
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/695 20230101AFI20241205BHJP
   H04N 23/69 20230101ALI20241205BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N23/695
H04N23/69
H04N7/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091774
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】中前 慧子
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054AA02
5C054CA04
5C054CC02
5C054CF06
5C054EA01
5C054FE04
5C054HA19
5C122DA03
5C122DA04
5C122EA47
5C122EA61
5C122EA63
5C122FA01
5C122FA16
5C122FE02
5C122FE03
5C122FE06
5C122FH10
5C122GD04
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA82
5C122HA87
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】画角に適したPT駆動速度がカメラの最低駆動速度よりも小さい場合に、ユーザの望むPT制御を行うことができるようにする。
【解決手段】切り出し表示領域であるデジタルPT領域が検知枠からはみ出たことを検知すると、まず、撮影映像の静止画像を取得する。そして、静止画像を取得した時点でのデジタルPT領域の位置が撮影映像の中心になるようにメカPT制御を行うよう指示を出す。そして、メカPT制御が行われている間、取得した静止画像の中で画角に適したPT駆動速度に相当する速度でデジタルPT制御を行うように制御し、メカPTが目標位置まで達すると、メカPT制御を停止するとともに、静止画像の中でのデジタルPT制御を停止し、撮影映像でデジタルPT制御を再開する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影映像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御手段と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理手段と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された駆動速度が、予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御手段による制御から前記画像処理手段による制御に切り替える制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記撮像手段へのパン方向及びチルト方向の駆動指示に従って、前記撮像手段のズームを変更した状態で前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出し、前記駆動指示での方向へ前記決定手段によって決定された駆動速度に相当する速度で前記切り出した領域を前記撮影映像の中で移動させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮影映像よりも小さく、かつ前記切り出した領域よりも大きい矩形領域を前記撮影映像の中に設定する設定手段をさらに有し、
前記切り出した領域が前記矩形領域からはみ出た場合に、前記撮像手段は静止画像を取得し、
前記画像処理手段は前記取得した静止画像の中で前記切り出した領域を変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理手段により前記取得した静止画像の中で前記切り出した領域を変更する間、
前記駆動制御手段は、前記静止画像を取得した時点での前記切り出した領域の位置が撮影映像の中央の位置になるよう、前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させ、
前記制御手段は、前記静止画像を取得した時点での前記切り出した領域の位置が撮影映像の中央に到達した後は、前記駆動制御手段による制御から前記画像処理手段による制御に切り替える
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記駆動制御手段による前記撮像手段の回転により前記撮影映像の中央から端までの距離を移動する時間に基づいて、前記矩形領域の大きさを設定することを特徴とする請求項3または4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮影映像よりも小さく、かつ前記切り出した領域よりも大きい矩形領域を前記撮影映像の中に設定する設定手段をさらに有し、
前記切り出した領域が前記矩形領域からはみ出た場合に、前記駆動制御手段は、前記画像処理手段による前記切り出した領域の移動と同時に、前記撮像手段の回転を行い、前記画像処理手段は、前記駆動制御手段による回転を打ち消すように、前記決定手段によって決定された駆動速度に相当する速度で前記切り出した領域を変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影映像を取得する撮像手段を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御工程と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理工程と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された駆動速度が予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御工程による制御から前記画像処理工程による制御に切り替える制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項8】
撮影映像を取得する撮像手段を有する撮像装置を制御するためのプログラムであって、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御工程と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理工程と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された駆動速度が予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御工程による制御から前記画像処理工程による制御に切り替える制御工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、パンチルト制御を行うために用いて好適な撮像装置、撮像装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パン、チルト(PT)機構を備えたカメラでは、同じPT駆動速度でPT駆動させたとき、広角側よりも望遠側の方が画面内の撮像物の移動速度が相対的に大きく感じられる。このため、望遠側で広角側と同じPT駆動速度でPT駆動させると、撮影方向が急激に変化したように感じ、監視対象を追うなどのユーザの望むPT操作が困難になる場合がある。そこで、画角に合わせて適切なPT駆動速度を計算し、PT駆動速度をその計算した速度に制限する技術が一般的に知られている。
【0003】
一方で、カメラの機械的制約によりカメラのPT駆動には最低駆動速度が設定されている。現在の画角から計算された適切なPT駆動速度が最低駆動速度より小さいとき、適切な速度よりも大きい速度でPT駆動する必要があるため、撮影方向が急激に変化してPT操作が困難になる。また、近年はカメラの高画素化に伴い、デジタルズームの性能も向上しており、ズーム倍率が高いほど画角に合わせた適切なPT駆動速度は低速になる傾向にある。そこで特許文献1には、現在の制御可否パラメータに応じて機械的なPT(メカPT)制御または撮影画像内で切り出し位置を変更するデジタルPT制御によって、表示領域内のポインタで指定した位置が中央になるようにPT制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-7662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、メカPTかデジタルPTかを選択する技術であるため、メカPTとデジタルPTとの間の切り替えをスムーズに行うための技術ではない。そのため、高倍率なデジタルズーム領域で適切なPT駆動速度がカメラの最低駆動速度よりも小さいときに、監視対象を追うなどのユーザの望むPT操作が困難になるという課題は十分に解消できていない。
【0006】
本発明は前述の問題点に鑑み、画角に適したPT駆動速度がカメラの最低駆動速度よりも小さい場合に、ユーザの望むPT制御を行うことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、撮影映像を取得する撮像手段と、前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御手段と、前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理手段と、前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された駆動速度が、予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御手段による制御から前記画像処理手段による制御に切り替える制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画角に適したPT駆動速度がカメラの最低駆動速度よりも小さい場合に、ユーザの望むPT制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る撮像システムの全体的な構成例を示す図である。
図2】撮像システムにおける各装置の内部構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るリモートカメラにおいて、メカPT制御かデジタルPT制御かを選択する全体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】デジタルPT制御における撮影映像とデジタルPTの表示領域との関係を説明するための図である。
図5】撮影映像内の検知枠を説明するための図である。
図6】第1の実施形態におけるPT制御を説明するための図である。
図7】第1の実施形態におけるデジタルPT制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態におけるデジタルPT制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において示す構成は一例に過ぎず、図示された構成について限定されるものではない。
【0011】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態における撮像システム10について説明する。図1は、本実施形態に係る撮像システム10の全体的な構成例を示す図である。また、図2は、撮像システム10における各装置の内部構成例を示すブロック図である。撮像システム10は、パン/チルト機構を有する回転可能なリモートカメラ(撮像装置)100と、リモートカメラ100で撮影された画像を表示してリモートカメラ100に対する操作を受け付けるコントローラ装置(制御装置)102とを備えて構成される。リモートカメラ100とコントローラ装置102は、ネットワーク103を介して接続されている。
【0012】
リモートカメラ100は、撮像部201、画像処理部202、システム制御部203、記憶部204、パン駆動部205、チルト駆動部206、ズーム駆動部207、駆動制御部208、および通信部209を有する。撮像部201は、レンズ(撮像光学系)および撮像素子を備えて構成され、被写体の撮像および電気信号への変換を行う。画像処理部202は、撮像部201により変換された電気信号に画像処理および圧縮符号化処理を行って画像データを生成し、システム制御部203へ伝達する。また、画像処理部202は、システム制御部203からの指示に従い、撮影画像内で切り出し位置を変更するデジタルパンチルト(以下、デジタルPT)、およびデジタルズームを実行する。
【0013】
システム制御部203は、通信部209を介して、生成された画像データをコントローラ装置102に送信する。また、システム制御部203は、通信部209を介してコントローラ装置102から受信した制御コマンドを解析し、制御コマンドに応じた処理を行う。システム制御部203は、例えば、画像処理部202に対して画質調整の設定などの撮影パラメータ設定の指示を行う。また、システム制御部203は、機械的なパンチルト(以下、メカPT)およびズームの駆動を指示するユーザ入力信号を受信し、その入力信号に基づいて駆動制御部208に対してメカPTおよびズームの駆動を指示するパラメータを出力する。さらにシステム制御部203は、画像処理部202に対してデジタルPT、デジタルズームの指示を出力する。
【0014】
また、本実施形態においては、PT駆動に関してPT駆動速度自動計算モードが存在する。PT駆動速度自動計算モードが有効である場合、システム制御部203は、現在の画角に適したPT駆動速度を計算し、計算したPT駆動速度を超えない駆動速度になるように駆動制御部208に対してPT駆動を指示する。PT駆動速度自動計算モードが無効である場合、システム制御部203は、コントローラ装置102でユーザ側が指示したPT駆動速度でPT駆動するように駆動制御部208に指示を出す。
【0015】
記憶部204は、画質調整のパラメータやネットワークの設定値を記憶しており、リモートカメラ100が再起動した場合でも以前設定した値を参照することが可能である。パン駆動部205は、パン動作を行うメカ駆動系と、そのメカ駆動系の駆動源としてのモータとを備えて構成される。パン駆動部205のモータの駆動により、パン駆動機構を介して撮像部201がパン方向に駆動される。チルト駆動部206は、チルト動作を行うメカ駆動系と、そのメカ駆動系の駆動源としてのモータとを備えて構成される。チルト駆動部206のモータの駆動により、チルト駆動機構を介して撮像部201がチルト方向に駆動される。ズーム駆動部207は、ズーム動作を行うメカ駆動系と、そのメカ駆動系の駆動源としてのモータとを備えて構成される。ズーム駆動部207のモータ駆動により、ズーム駆動機構を介して撮像部201の光学系が光軸方向に駆動される。
【0016】
駆動制御部208は、システム制御部203から受け取ったメカPT駆動およびズーム駆動の指示に従い、パン駆動部205、チルト駆動部206、およびズーム駆動部207に対して駆動させるように指示する。また、カメラやモータの機械的な制約により、パン駆動、チルト駆動それぞれに最低駆動速度が設定されており、駆動制御部208にはその値が保持されている。また、駆動制御部208は、その他機械的なパン、チルト、ズームの速度や位置に関するパラメータも保持しており、それらのパラメータはシステム制御部203を介して画像処理部202に提供される。通信部209は、LANによるネットワーク通信の処理を行う。
【0017】
コントローラ装置102は、通信部210、システム制御部211、表示部212、および入力部213を有する。入力部213は、マウスポインタ、ジョイスティック、またはボタンなどの操作部であるが、これらに限定されるものではなく、ユーザからの各種操作を受け付けることが可能であれば、他の操作部であってもよい。システム制御部211は、ユーザによる入力部213の操作に応じて、通信部210を介してリモートカメラ100にメカPTおよびズームの駆動を指示する制御コマンドなどを送信する。また、システム制御部211は、リモートカメラ100により撮影された画像(画像データ)を受信し、表示部212に表示する。
【0018】
次に、図3を参照しながら、本実施形態におけるメカPT制御とデジタルPT制御との切り替え方法について説明する。図3は、本実施形態に係るリモートカメラ100において、メカPT制御かデジタルPT制御かを選択する全体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。図3の各ステップは、主に、システム制御部203により実行される。また、図3の処理は、ユーザがコントローラ装置102のマウスポインタなどの入力部213を用いてPT駆動を指示し、制御コマンドをコントローラ装置102から受信したときに開始される。
【0019】
まず、S301において、システム制御部203は、前述したPT駆動速度自動計算モードが有効であるか否かを確認する。この確認の結果、PT駆動速度自動計算モードが有効である場合はS302に進む。一方、PT駆動速度自動計算モードが無効である場合はS305に進み、システム制御部203は、駆動制御部208に対し、ユーザが指示したPT駆動速度でメカPTの駆動制御を指示する。但し、ユーザが指示したPT駆動速度がパン、チルトの何れかで最低駆動速度を下回る場合には、システム制御部203は、駆動制御部208に対し、最低駆動速度でメカPTの駆動制御を指示するものとする。
【0020】
S302においては、システム制御部203は、現在の画角に適したPT駆動速度を計算する。現在の画角に適したPT駆動速度とは、目安として例えば現在の水平画角がH(deg)である場合にパン駆動速度VmをH(deg/s)以下として駆動させれば監視対象の追尾が可能であるなど操作しやすいと判断できる速度とする。チルト駆動についても同様である。なお、その他独自の計算式で現在の画角に適したPT駆動速度を計算してもよく、予め画角に適したPT駆動速度のテーブルを用意しておき、そのテーブルに基づいてPT駆動速度を決定するようにしてもよい。
【0021】
次に、S303において、システム制御部203は、S302で計算した画角に適したPT駆動速度が、駆動制御部208に設定されているパンチルトそれぞれの最低駆動速度を下回るかどうかを判断する。この判断の結果、パン、チルトの何れかの駆動速度が最低駆動速度を下回る場合はS304に進み、後述するデジタルPT制御に切り替える。このとき、メカPTの駆動は停止させる。一方で、パン、チルトの駆動速度がどちらも最低駆動速度を下回らない場合は前述したS305に進む。
【0022】
次に、図4から図7を参照しながら、S304におけるデジタルPT制御の具体的な手順について説明する。デジタルPT制御では、光学ズーム最大位置において撮影した映像の中で、S302で計算したPT駆動速度に相当するデジタルPTの速度を算出し、その速度でデジタルPT制御を実行する。
【0023】
図4は、デジタルPT制御における撮影映像とデジタルPTの表示領域との関係を説明するための図である。図4(A)の撮影映像401は、光学ズーム最大位置における撮影映像を表している。本実施形態のデジタルPT制御では、撮影映像401の中でデジタルPTが実行され、コントローラ装置102の表示部212には、撮影映像401の一部のデジタルPTの表示領域に該当するデジタルPT領域402のデジタルズームされた映像が表示される。ここで、ユーザが撮影対象を追跡するために、入力部213からデジタルPT領域402を右へ移動させる指示を入力したものとする。この指示によりデジタルPT領域402は右側へ移動し、図4(B)に示すように、デジタルPT領域402が撮影映像401の右端に到達する。このとき、メカPTの駆動は停止しているため、これ以上右側へデジタルPT領域402を移動させることができず、右へと移動し続ける撮影対象を撮影することができない。
【0024】
そこで本実施形態では、デジタルPTにより現在のメカPTの撮影領域を超えてそのままデジタルPT領域を移動させ続けられるように、メカPTも連動して駆動させる。そのために本実施形態では、図5に示すように、デジタルPT領域402よりも大きく撮影映像401よりも小さい矩形領域として検知枠501を設定する。この検知枠501は、メカPTを駆動させるタイミングを測るためのものであり、この検知枠501より外側にデジタルPT領域402がはみ出た場合に、メカPTとデジタルPTとを連携させて現在の撮影領域を超えて撮影できるようにする。なお、検知枠501はコントローラ装置102側で確認できるようにしてもよいし、そうでなくてもよい。
【0025】
次に、図6を参照しながら、検知枠501を用いたメカPTとデジタルPTとの連携方法を説明する。まず、図6(A)に示すように、システム制御部203は、デジタルPT制御によりデジタルPT領域402が検知枠501からはみ出たことを検知する。デジタルPT領域402が検知枠501からはみ出たことを検知すると、システム制御部203は、まず撮影映像401の静止画像を取得する。そして、静止画像を取得した時点でのデジタルPT領域402の位置が撮影映像の中心になるようにメカPT制御を行うよう駆動制御部208に対して指示を出す。図6(B)は、静止画像を取得した時点でのデジタルPT領域402の位置が撮影映像の中心になるようメカPTの駆動が行われた撮影映像を示している。さらに、メカPT制御が行われている間、システム制御部203は、取得した静止画像の中でS302において計算した画角に適したPT駆動速度に相当する速度でデジタルPT制御を行うように画像処理部202に対して指示を出す。図6(C)は、静止画像の中でデジタルPT制御を行ってデジタルPT領域が移動している様子を示している。
【0026】
メカPTが目標位置まで達すると、システム制御部203は、メカPT制御の停止を指示するとともに、静止画像の中でのデジタルPT制御の停止を指示する。そして、システム制御部203は、図6(D)に示すように、メカPTの駆動後の撮影映像401でデジタルPT制御を再開するよう画像処理部202に対して指示を出す。
【0027】
図7は、本実施形態において、図3のS304におけるデジタルPT制御の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。デジタルPT制御はシステム制御部203によって実行される。
まず、S700において、システム制御部203は、ズーム駆動部207により撮影映像の光学ズームを最大にするよう駆動制御部208に対して指示を出す。そして、システム制御部203は、光学ズームを最大にする前の現在の画角に対応する撮影領域をデジタルPT領域に設定するとともに検知枠を設定する。このとき、システム制御部203は、デジタルPT領域に相当するデジタルズームされたライブビュー画像(動画像)を、通信部209を介してコントローラ装置102に送信するよう切り替える。
【0028】
次に、S701において、システム制御部203は、現在のデジタルPT領域が検知枠からはみ出ているか否かを判断する。この判断の結果、検知枠からはみ出ている場合はS702に進んでメカPTとの連携を開始する。一方、検知枠501からはみ出ていない場合はS708に進む。
【0029】
S702においては、撮像部201は、現在のメカPTの停止位置にて光学ズームが最大の状態で静止画像を撮影する。そして、システム制御部203は、コントローラ装置102がライブビューとして表示できるように送信していた動画像を、撮影した静止画像内のデジタルPT領域をデジタルズームした画像に切り替える。
【0030】
続いてS703において、システム制御部203は、駆動制御部208に対しメカPTの駆動指示を出す。メカPTの駆動目標位置は、現在のデジタルPT領域が、撮影画像の中央に来るような位置とする。
【0031】
次に、S704において、システム制御部203は、S302で計算した現在の画角に適したPT駆動速度と同等となるように、デジタルPTの速度を計算する。ここで、画素ピッチと焦点距離とから1ピクセル当たりの画角を算出することができる。例えば、現在のデジタルズーム領域での1ピクセル当たりの水平画角をX(deg)とし、現在の画角に適したPT駆動速度をVm(deg/s)とすると、以下の式(1)によりデジタルPTでのパン速度Vdを算出できる。
Vd=Vm/X [ピクセル毎秒] ・・・(1)
チルト速度を計算する際には1ピクセル当たりの垂直画角を用い、同様に算出することができる。
【0032】
次に、S705において、システム制御部203は、S702で取得した静止画像内においてS704で計算したデジタルPTの速度でデジタルPTを実行するよう画像処理部202に指示を出す。これにより、S703の指示によりメカPTが駆動している間も静止画像内でデジタルPTが行われるので、撮影方向が急変しないようなPT制御を実現できる。
【0033】
次に、S706において、システム制御部203は、S703で指示したメカPTが駆動目標位置まで到達し、メカPTの駆動が停止したか否かを判断する。この判断の結果、メカPTの駆動が停止した場合はS707へ進み、停止していない場合はS705へ戻り、デジタルPTを続行する。
【0034】
S707においては、システム制御部203は、コントローラ装置102に送信する画像を、メカPTの駆動後の撮影映像内のデジタルPT領域に相当するライブビュー画像(動画像)に切り替える。このとき、システム制御部203は、静止画像内の最終的なデジタルPT領域と同じ位置になるように、メカPTの駆動後の撮影映像内のデジタルPT領域の位置を更新する。
【0035】
S708およびS709は、デジタルPT領域が検知枠501からはみ出ていない場合に行われる処理である。S708はS704と同様の処理であり、システム制御部203は、デジタルPTの速度を計算する。そして、S709において、システム制御部203は、撮影映像内のデジタルPT領域に対して、S708で計算したデジタルPTの速度でデジタルPTを実行する。
【0036】
S710においては、システム制御部203は、コントローラ装置102からの制御コマンドに基づき、デジタルPTを終了するか否かを判断する。この判断の結果、デジタルPTを終了する場合はそのまま図7の処理を終了し、デジタルPTを継続する場合はS701に戻る。以上のように図7に示す手順でデジタルPT制御を行うことにより、撮影方向が急変することを防止しつつ、現在のメカPTの撮影領域を超えてデジタルPTを行うことができる。
【0037】
以上説明したように本実施形態によれば、高倍率なデジタルズーム領域で適切なPT駆動速度がカメラの最低駆動速度以下である場合に、画角に適したPT駆動速度に相当する速度を算出し、その速度でデジタルPT制御を行うようにした。これにより、撮影方向が急変することを防止し、ユーザの望むPT制御を行うことができる。また、メカPTを駆動している間は静止画像内でデジタルPTを行うようにしたので、撮影方向が急変せずに違和感なくPT制御を行うことができる。
【0038】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、デジタルPT制御を行う際に静止画像を使用せずにメカPTを同時に駆動させ、メカPTの駆動を打ち消すようにデジタルPTを行う例について説明する。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成については第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0039】
図8は、本実施形態において、図3のS304におけるデジタルPT制御の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、図8のS800、S801、S802は、それぞれ第1の実施形態で説明した図7のS700、S701、S703と同様であるので説明を省略する。なお、本実施形態では、静止画像は取得せずにメカPTの駆動を指示するものとする。
【0040】
S803においては、システム制御部203は、デジタルPTの速度を計算する。本実施形態では、メカPTが駆動している状態で撮影映像をデジタルズームした画像がコントローラ装置102で表示されることになる。そこで、デジタルズーム領域で撮影方向の急変が起きないように、メカPTの駆動速度を打ち消すようにデジタルPTの速度を計算する。以下、具体的な計算方法について説明する。
【0041】
まず、現在駆動中のメカPTの駆動速度をデジタルPTの速度に換算する。例えば、現在のメカPTのパン駆動速度をデジタルPTのパン速度に換算した速度Z[ピクセル毎秒]は、前述した式(1)を用いて算出することができる。このとき、現在の画角に適したPT駆動速度を現在駆動中のメカPTの駆動速度に置き換えて計算する。なお、メカPTの駆動速度については特に限定しないが、撮影映像のブレをなるべく小さくするために、本実施形態では最低駆動速度でパン方向に駆動させる。
【0042】
続いて、第1の実施形態と同様に、現在のデジタルズーム領域での1ピクセル当たりの水平画角をX(deg)とし、現在の画角に適したPT駆動速度をVm(deg/s)とする。そして、以下の式(2)により現在のメカPT駆動を打ち消したデジタルPTのパン速度Vdを算出できる。
Vd=Vm/X-Z [ピクセル毎秒] ・・・(2)
チルト速度を計算する際には1ピクセル当たりの垂直画角を用い、同様に算出することができる。
【0043】
S804においては、システム制御部203は、撮影映像内のデジタルPT領域に対して、S803で計算したデジタルPTの速度でデジタルPTを実行するよう画像処理部202に指示を出す。そして、S805において、システム制御部203は、S802で指示したメカPTが駆動目標位置まで到達し、メカPTの駆動が停止したか否かを判断する。この判断の結果、メカPTの駆動が停止した場合はS808に進み、メカPTの駆動が停止していない場合はS803へ戻り、現在のメカPTの駆動速度を打ち消すデジタルPTの速度を計算しなおす。S806~S808は、それぞれ図7のS708~S710と同様である。
【0044】
以上のように本実施形態によれば、高倍率なデジタルズーム領域で適切なPT駆動速度がカメラの最低駆動速度以下である場合でも、ライブビューを維持したまま、撮影方向が急変することを防止しながら適切な速度でPT制御を行うことができる。
【0045】
(その他の実施形態)
前述した第1及び第2の実施形態において、S700(S800)で設定する検知枠501の位置及び大きさをどのように決定するかは特に限定しないが、コントローラ装置102においてユーザの操作により決定できるようにしてもよい。また、図7のS703で指示するメカPTは、最大でも光学ズーム最大位置における撮影映像の画面中央から画面端までの距離しか移動しない。そこで、撮影映像の画面中央から画面端までのメカPTの駆動にかかる時間に基づいて検知枠501の位置及び大きさを決定してもよい。この場合、デジタルPT領域402が検知枠501を出てから静止画像の画面端まで到達する時間が、撮影映像の画面中央から画面端までのメカPTの駆動にかかる時間より大きくなるように、検知枠の位置及び大きさを調整する。このようにすることで、メカPTの駆動中にデジタルPT領域が静止画像の端にまで到達するのを防ぐようにする。
【0046】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0047】
本実施形態の開示は、以下の構成、方法およびプログラムを含む。
【0048】
(構成1)
撮影映像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御手段と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理手段と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された駆動速度が、予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御手段による制御から前記画像処理手段による制御に切り替える制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【0049】
(構成2)
前記画像処理手段は、前記撮像手段へのパン方向及びチルト方向の駆動指示に従って、前記撮像手段のズームを変更した状態で前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出し、前記駆動指示での方向へ前記決定手段によって決定された駆動速度に相当する速度で前記切り出した領域を前記撮影映像の中で移動させることを特徴とする構成1に記載の撮像装置。
(構成3)
前記撮影映像よりも小さく、かつ前記切り出した領域よりも大きい矩形領域を前記撮影映像の中に設定する設定手段をさらに有し、
前記切り出した領域が前記矩形領域からはみ出た場合に、前記撮像手段は静止画像を取得し、
前記画像処理手段は前記取得した静止画像の中で前記切り出した領域を変更する、
ことを特徴とする構成1または2に記載の撮像装置。
(構成4)
前記画像処理手段により前記取得した静止画像の中で前記切り出した領域を変更する間、
前記駆動制御手段は、前記静止画像を取得した時点での前記切り出した領域の位置が撮影映像の中央の位置になるよう、前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させ、
前記制御手段は、前記静止画像を取得した時点での前記切り出した領域の位置が撮影映像の中央に到達した後は、前記駆動制御手段による制御から前記画像処理手段による制御に切り替える
ことを特徴とする構成3に記載の撮像装置。
(構成5)
前記設定手段は、前記駆動制御手段による前記撮像手段の回転により前記撮影映像の中央から端までの距離を移動する時間に基づいて、前記矩形領域の大きさを設定することを特徴とする構成3または4に記載の撮像装置。
(構成6)
前記撮影映像よりも小さく、かつ前記切り出した領域よりも大きい矩形領域を前記撮影映像の中に設定する設定手段をさらに有し、
前記切り出した領域が前記矩形領域からはみ出た場合に、前記駆動制御手段は、前記画像処理手段による前記切り出した領域の移動と同時に、前記撮像手段の回転を行い、前記画像処理手段は、前記駆動制御手段による回転を打ち消すように、前記決定手段によって決定された駆動速度に相当する速度で前記切り出した領域を変更する、
ことを特徴とする構成1または2に記載の撮像装置。
【0050】
(方法)
撮影映像を取得する撮像手段を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御工程と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理工程と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された駆動速度が予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御工程による制御から前記画像処理工程による制御に切り替える制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【0051】
(プログラム)
撮影映像を取得する撮像手段を有する撮像装置を制御するためのプログラムであって、
前記撮像手段をパン方向及びチルト方向に回転させる駆動制御工程と、
前記撮像手段が撮影した撮影映像から一部の領域を切り出す画像処理工程と、
前記撮像手段による現在の画角に応じたパン方向及びチルト方向の駆動速度を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された駆動速度が予め定められた駆動速度の下限である最低駆動速度を下回っている場合に、前記駆動制御工程による制御から前記画像処理工程による制御に切り替える制御工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0052】
201 撮像部、202 画像処理部、203 システム制御部、208 駆動制御部
図1
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