(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173393
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 30/40 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
G16H30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091776
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久根崎 遥加
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恭子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】医用画像に対するセグメンテーションを正確に行うこと。
【解決手段】 実施形態に係る医用情報処理装置は、算出部と、判定部と、調整部と、を備える。算出部は、医用画像上の各領域が特定の組織に該当する確率を組織の種類ごとに算出する。判定部は、組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定する。調整部は、前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像上の各領域について特定の組織に該当する確率を組織の種類ごとに算出する算出部と、
組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定する判定部と、
前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整する調整部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記領域の判定結果に基づいて、前記医用画像上に組織の領域を表すレイヤーを重ねた重畳画像をディスプレイに表示させる表示制御部をさらに備え、
前記調整部は、前記閾値の入力を受け付ける入力部を前記ディスプレイに表示させ、前記入力部の操作による前記閾値の調整に応じて前記領域の判定結果を更新し、前記判定結果の更新に応じて前記レイヤーの表示を更新する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、医用画像の入力を受け付け、入力された医用画像の各領域が特定の組織に該当する確率を、学習済みモデルに従って算出する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記医用画像の輝度値に基づいて、前記医用画像中の各領域について特定の組織に該当する確率を算出する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記組織に該当すると判定された領域の輝度値と基準値との差が大きい場合、警告する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
複数の組織に該当する重複領域を特定し、前記重複領域に関する情報をディスプレイに表示させる重複情報表示部をさらに備える、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記調整部は、初期値を前記閾値として設定した際に前記重複領域が特定された場合、前記重複領域が生じないように前記閾値を前記初期値から変更する、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記重複情報表示部は、前記組織の閾値が変化する度に、前記重複領域を再特定し、前記重複領域に関する情報の表示を更新する、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記重複情報表示部は、前記重複領域に表示させる組織の選択を受け付ける、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記重複情報表示部は、前記重複領域を複数のセグメントに分割し、設定値以上の体積の組織を含むセグメントでは、表示させる組織の選択を受け付け、前記設定値より小さい体積の組織を含むセグメントでは、前記確率が大きい組織を表示させる、
請求項9に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記重複情報表示部は、前記重複領域を複数のセグメントに分割し、設定値以上の体積の組織を含むセグメントについて、前記組織の選択を受け付け、前記設定値より小さい体積の組織を含むセグメントについて、予め設定された優先度が高い組織を表示させる、
請求項9に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
医用画像上の各領域が特定の組織に該当する確率を複数の組織について算出することと、
組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定することと、
前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整することと、
を備える、方法。
【請求項13】
コンピュータに、
医用画像上の各領域が特定の組織に該当する確率を複数の組織について算出する機能と、
組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定する機能と、
前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項14】
医用画像上の各領域について特定の抽出対象物に該当する確率を抽出対象物の種類ごとに算出する算出部と、
抽出対象物の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記抽出対象物の種類ごとに、当該領域が当該抽出対象物に該当するか否かを判定する判定部と、
前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整する調整部と、
を備える、医用情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディープラーニング(Deep Learning)技術の発展により、検査で得られた1つの医用画像に対して複数の臓器のセグメンテーション(Segmentation)を行い、セグメンテーション結果を用いて3次元画像を生成することや、セグメンテーション結果を臨床解析に用いることが増加している。
【0003】
上記手法において、1つの医用画像から複数の臓器のセグメンテーションを行う方法として、医用画像から特定の種類の臓器の領域を抽出するディープラーニング(DL)推論器を複数用いて複数の臓器のマスク画像を生成し、複数のマスク画像を1つの医用画像上に重畳する方法がある。各DL推論器においてマスクされる領域が被った場合、各臓器の領域が重複することがある。各臓器の領域が重複した場合、セグメンテーションを正確に行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像に対するセグメンテーションを正確に行うことである。本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、算出部と、判定部と、調整部と、を備える。算出部は、医用画像上の各領域が特定の組織に該当する確率を組織の種類ごとに算出する。判定部は、組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、前記閾値と前記確率とに基づいて、前記領域ごと、かつ、前記組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定する。調整部は、前記閾値の入力に応じて前記閾値を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置によるセグメンテーション支援処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態の第1の変形例に係る医用情報処理装置により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態の第2の変形例に係る医用情報処理装置により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態の第3の変形例に係る医用情報処理装置により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態の他の変形例に係る医用情報処理装置により表示される重複範囲表示部の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態の他の変形例に係る医用情報処理装置により表示される重複範囲表示部の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の他の変形例に係る医用情報処理装置により表示される重複範囲表示部の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の他の変形例に係る医用情報処理装置により表示される重複範囲表示部の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態の他の変形例に係る医用情報処理装置により表示される重複範囲表示部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置、方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、医用情報処理装置10の構成を示す図である。医用情報処理装置10は、ネットワークを介して、病院情報システム(Hospital Information System:HIS、放射線部門情報管理システム(Radiological Information System:RIS)等の外部システムや医用画像診断装置等の外部機器と接続されている。医用情報処理装置10は、ネットワークを介して、医用画像等の情報を外部システムや外部機器との間で送受信することができる。医用画像診断装置は、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置(Computed Tomography:CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging:MRI装置)、超音波診断装置、X線診断装置等の、被検体の内部を撮影するモダリティである。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)である。なお、ネットワークへの接続は、有線接続、及び無線接続を問わない。また、VPN(Virtual Private Network)等によりセキュリティが確保されるのであれば、接続される回線はLANに限定されない。インターネット等、公衆の通信回線に接続するようにしても構わない。
【0010】
医用情報処理装置10は、メモリ11、通信インタフェース12、ディスプレイ13、入力インタフェース14及び処理回路15を備えている。なお、以下、医用情報処理装置10は、単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明するが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。例えば、医用情報処理装置10が実行する各機能は、異なるコンソール装置又はワークステーション装置に分散して搭載されても構わない。
【0011】
メモリ11は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路等の記憶装置である。また、メモリ11は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。なお、メモリ11は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ11の保存領域は、医用情報処理装置10内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0012】
メモリ11は、処理回路15によって実行されるプログラム、処理回路15の処理に用いられる各種データ等を記憶する。プログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、処理回路15の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。また、メモリ11には、各種処理で用いられる医用画像、医用データ、学習済みモデル等が記憶されている。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。メモリ11は、記憶部の一例である。
【0013】
通信インタフェース12は、ネットワークを介して外部システムや外部機器との通信を伝送制御するネットワークインタフェースである。
【0014】
ディスプレイ13は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ13は、処理回路15によって生成された医用情報や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ13は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ13は、表示部の一例である。
【0015】
入力インタフェース14は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15に出力する。例えば、入力インタフェース14は、医用情報の入力、各種コマンド信号の入力等を操作者から受け付ける。入力インタフェース14は、処理回路15の各種処理等を行うためのマウスやキーボード、トラックボール、スイッチボタン、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェース14は、処理回路15に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。なお、本明細書において、入力インタフェースは、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路15へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。入力インタフェース14は、入力部の一例である。
【0016】
処理回路15は、医用情報処理装置10全体の動作を制御する。処理回路15は、メモリ11内のプログラムを呼び出し実行することにより、算出機能151、判定機能152、表示制御機能153及び調整機能154を実行するプロセッサである。
【0017】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit :ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD))、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0018】
なお、
図1においては、単一の処理回路15にて算出機能151、判定機能152、表示制御機能153及び調整機能154が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、算出機能151、判定機能152、表示制御機能153及び調整機能154は、それぞれ個別のハードウェア回路として実装してもよい。処理回路15が実行する各機能についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0019】
また、医用情報処理装置10は単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明するが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。例えば、処理回路15の機能は、異なる装置に分散して搭載されても構わない。
【0020】
処理回路15は、算出機能151により、医用画像上の各領域について特定の組織に該当する確率を組織の種類ごとに算出する。算出機能151を実現する処理回路15は、算出部の一例である。
【0021】
医用画像は、例えば、医用画像診断装置を用いた検査で撮影された画像である。例えば、医用画像は、複数の組織を含むCT画像である。医用画像に含まれる組織は、体内の各臓器であり、例えば、骨、血管、肝臓、肺、大腸、心臓などである。医用画像上の領域は、医用画像上を複数に分割した領域である。領域は、例えば、医用画像を1画素ごとに分割した領域であってもよく、医用画像を複数画素ごとに分割した領域であってもよく、医用画像を特定の条件により分割したものであってもよい。
【0022】
特定の組織に該当する確率としては、例えば、組織の存在確率を用いることができる。存在確率は、例えば、0から1までの範囲の値を有し、値が大きいほど、その組織に該当する可能性が高いことを示す値である。算出機能151において処理回路15は、組織の種類ごとに、かつ、領域ごとに組織の存在確率を算出し、各組織の確率マップを生成する。
【0023】
算出機能151において処理回路15は、推論器111に従って組織の存在確率を算出する。推論器111は、学習済みの機械学習モデル(以下、学習済みモデルと呼ぶ)である。推論器111は、セグメンテーションを行う組織の種類の数だけ用意され、メモリ11に記憶されている。推論器111は、医用画像の入力を受け付け、入力された医用画像中の各領域について特定の組織に該当する確率を出力するように訓練されている。例えば、推論器111は、臓器のセグメンテーション結果を学習し、医用画像中の各場所について臓器の存在確率を出力するように形成されている。学習済みモデルとしては、例えば、DL(Deep Learning)推論器を用いることができる。処理回路15は、推論器111にセグメンテーションを行う医用画像を入力し、医用画像中の各領域が特定の組織に該当する確率を学習済みモデルに出力させる。
【0024】
例えば、CT画像に対して「骨」と「血管」のセグメンテーションを行う場合には、入力されたCT画像が「骨」である確率を画素ごとに出力する学習済みモデルと、入力されたCT画像が「血管」である確率を画素ごとに出力する学習済みモデルとの2つの学習済みモデルが予め訓練される。例えば、CT画像における「骨」の存在確率を出力する学習済みモデルの訓練時には、CT画像と、各画素の「骨」の存在確率を示す確率マップとのペアを複数含む教師データを機械学習モデルに学習させる。
【0025】
処理回路15は、判定機能152により、組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、閾値と存在確率とに基づいて、医用画像の領域ごと、かつ、組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定する。この際、処理回路15は、医用画像の特定の領域ごとに閾値と存在確率とを比較し、その領域が組織に該当するか否かを判定する。そして、上記判定を複数の組織について繰り返すことにより、医用画像の各領域について、組織に該当するか否かを複数の組織の種類ごとに判定する。判定機能152を実現する処理回路15は、判定部の一例である。
【0026】
処理回路15は、表示制御機能153により、種々の情報をディスプレイ13に表示させる。例えば、処理回路15は、医用画像や、医用画像の患者に関する情報や、各種操作を実行するためのインタフェースをディスプレイ13に表示させる。
【0027】
また、処理回路15は、表示制御機能153により、医用画像の各領域の判定結果に基づいて、医用画像上に組織の領域を表すレイヤーを重ねた重畳画像をディスプレイ13に表示させる。レイヤーは、例えば、対応する組織に該当する領域に特定の色を付したマスク画像である。典型的には、半透明のマスク画像がレイヤーとして用いられる。例えば、処理回路15は、複数の臓器に関する判定結果を用いて医用画像から複数の臓器領域を抽出し、抽出結果に基づいて各臓器のマスク画像を生成し、生成した複数のマスク画像を1つの医用画像上に重畳して表示する。表示制御機能153を実現する処理回路15は、表示制御部の一例である。
【0028】
処理回路15は、調整機能154により、調整対象の組織の閾値の入力に応じて閾値を調整する。この際、処理回路15は、調整対象の組織の閾値を、現在の値から入力された値に変更する。調整対象の組織は、1種類の組織であってもよく、2種類以上の組織であってもよい。また、調整対象の組織は、予め設定されていてもよく、ユーザにより選択されてもよい。調整機能154を実現する処理回路15は、調整部の一例である。
【0029】
また、処理回路15は、調整機能154により、閾値の入力を受け付ける入力部をディスプレイ13に表示させる。入力部は、例えば、スライダーバーである。ユーザは、スライダーバーを操作することにより、各組織に対する閾値を任意の値に調整することができる。なお、スライダーバーの代わりに、閾値として任意の値を直接入力可能な入力部を表示させてもよい。
【0030】
また、処理回路15は、調整機能154により、入力部の操作による閾値の調整に応じて、医用画像の各領域の判定結果を更新し、判定結果の更新に応じて医用画像上の該当するレイヤーを更新する。例えば、処理回路15は、更新された判定結果を用いて医用画像から特定の臓器に関する臓器領域を再抽出し、抽出結果を用いてマスク画像を再生成し、再生成したマスク画像を該当するレイヤーに挿入し、医用画像を描画することにより重畳画像を更新する。
【0031】
また、処理回路15は、重複情報表示機能155により、調整対象の組織の閾値を変化させた場合に重複が発生する重複領域と、閾値を変化させた場合に重複領域が生じる値の範囲(以下、重複発生範囲と呼ぶ)を特定する。重複領域は、調整対象の組織と他の組織の両方に該当すると判定された領域である。調整対象の組織が複数設定されている場合、処理回路15は、調整対象の各組織について、重複発生範囲を特定する。重複情報表示機能155を実現する処理回路15は、重複情報表示部の一例である。
【0032】
例えば、「骨」と「血管」の現在の閾値が0.5であり、「骨」の閾値を調整する場合、「血管」の存在確率が0.5以上である領域では、「骨」の閾値が「骨」の存在確率よりも小さくなった場合、「血管」及び「骨」の両方に該当する重複領域となる。このため、「血管」の存在確率が現在の閾値である0.5以上である領域の中で「骨」の存在確率が最も大きい値よりも、「骨」の閾値が小さくなった場合、重複領域が発生する。すなわち、「血管」の存在確率が現在の閾値以上である領域の中で「骨」の存在確率の最大値よりも小さい値が、「骨」に関する重複発生範囲となる。
【0033】
また、処理回路15は、重複情報表示機能155により、重複領域に関する情報をディスプレイ13に表示させる。例えば、処理回路15は、調整バーにおける重複発生範囲に対応する位置の背景色を変更することにより、調整部に重複発生範囲を表示させる。
【0034】
次に、医用情報処理装置10により実行されるセグメンテーション支援処理の動作について説明する。
図2は、セグメンテーション支援処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、推論器111として、入力されたCT画像における「骨」に該当する存在確率を画素ごとに出力する第1推論器と、入力されたCT画像における「血管」に該当する存在確率を画素ごとに出力する第2推論器との2つの推論器が用いられ、CT画像における「骨」と「血管」をセグメンテーションする場合を例に説明する。医用情報処理装置10は、第1推論器と第2推論器から出力された存在確率をそれぞれの閾値と比較することにより、骨のマスク画像と血管のマスク画像を生成し、1つのCT画像上に骨のマスク画像と血管のマスク画像を重ねて表示する。CT画像は医用画像の一例であり、各画素は医用画像における各領域の一例であり、「骨」及び「血管」は組織の種類の一例である。また、調整対象の組織として、「骨」及び「血管」の両方が設定されている。
【0035】
なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0036】
(ステップS101)
セグメンテーション支援処理において、処理回路15は、まず、算出機能151により、セグメンテーションを行うCT画像を取得する。CT画像は、予めメモリ11に記憶されていてもよく、外部システムから取得してもよく、ユーザにより入力されてもよい。
【0037】
(ステップS102)
次に、処理回路15は、算出機能151により、第1推論器と第2推論器のそれぞれに取得したCT画像を入力する。第1推論器は、CT画像の入力を受け付け、各画素における「骨」の存在確率を出力する。第2推論器は、CT画像の入力を受け付け、各画素における「血管」の存在確率を出力する。
【0038】
(ステップS103)
次に、処理回路15は、判定機能152により、第1推論器から出力された「骨」の存在確率と「骨」の閾値とを比較して、「骨」に該当するか否かを画素ごとに判定し、第2推論器から出力された「血管」の存在確率と「血管」の閾値とを比較して、「血管」に該当するか否かを画素ごとに判定する。「骨」の閾値及び「血管」の閾値は、所定の初期値に自動的に設定される。ここでは、所定の初期値として、「0.5」の値が用いられている。処理回路15は、「骨」の存在確率が0.5以上である画素について、「骨」に該当すると判定し、「血管」の存在確率が0.5以上である画素について、「血管」に該当すると判定する。その後、処理回路15は、判定結果に基づいて、「骨」に該当する画素をマスクする第1マスク画像と、「血管」に該当する画素をマスクする第2マスク画像を生成する。
【0039】
(ステップS104)
次に、処理回路15は、重複情報表示機能155により、調整対象の組織である「骨」及び「血管」のそれぞれについて、重複発生範囲を特定する。この際、処理回路15は、「骨」について、「血管」との重複領域が発生する重複発生範囲を特定し、「血管」について、「骨」との重複領域が発生する重複発生範囲を特定する。
【0040】
(ステップS105)
次に、処理回路15は、表示制御機能153及び重複情報表示機能155により、CT画像上に第1マスク画像と第2マスク画像とを重畳した重畳画像と、調整対象の組織の閾値を調整するための調整部をディスプレイ13に表示させる。
【0041】
図3は、ディスプレイ13に表示される表示画面100の一例を示す図である。
図3の一例では、表示画面100には、画像表示部110と、調整部120が表示されている。画像表示部110には、CT画像が表示され、CT画像上には、第1マスク画像と第2マスク画像が重畳表示されている。
図3では、CT画像上に第2マスク画像が重畳され、その上に第1マスク画像が重畳されている。第1マスク画像のマスク領域Aと第2マスク画像のマスク領域Bは異なる色で表示される。例えば、マスク領域Aは緑色で表示され、マスク領域Bは青色で表示される。
【0042】
調整部120には、各組織の閾値を調整するための調整バーが表示されている。調整部120は、組織名表示部121と、表示選択部122と、表示色選択部123と、スライダーバー125と、重複範囲表示部126とを備えている。
【0043】
組織名表示部121には、セグメンテーションを行う組織の種類名が表示される。表示選択部122では、CT画像上に各マスク画像を表示するか否かを、組織の種類ごとに選択することができる。例えば、マスク画像を表示する組織のチェックボックスにチェックマークが表示される。表示選択部122においてチェックボックスが選択されると、画像表示部110に表示されたCT画像上に該当する組織のマスク画像が重畳表示される。表示色選択部123では、画像表示部110に表示されるマスク画像の色を組織の種類ごとに選択することができる。
【0044】
スライダーバー125は、閾値を調整するために組織の種類ごとに設けられ、閾値を表す目盛124上に表示されている。スライダーバー125は、現在の閾値に対応する位置に表示され、0から1までの範囲の間を移動可能である。スライダーバー125の移動範囲は、0から1までの範囲に限られず、各種条件に応じて適宜調整されることが好ましい。
【0045】
重複範囲表示部126は、組織の種類ごとに設けられ、他の組織との重複領域が生じることを示している。重複範囲表示部126は、目盛124上の重複発生範囲に対応する位置に表示されている。例えば、目盛124上の「骨」に対応する位置には、「血管」との重複領域が発生する範囲に、「血管」に対応する色で重複範囲表示部126が表示されている。目盛124上の「血管」に対応する位置には、「骨」との重複領域が発生する範囲に、「血管」に対応する色で重複範囲表示部126が表示されている。ユーザは、重複範囲表示部126を確認することにより、他の組織との重複領域が発生する範囲を簡単に把握し、調整対象の組織の閾値を、重複領域が発生しない閾値に調整することができる。
【0046】
(ステップS106)
次に、処理回路15は、調整機能154により、スライダーバー125の操作による閾値の変更を検知する。
【0047】
(ステップS107)
ユーザによりスライダーバー125が操作され、「骨」または「血管」の閾値が変更されると(ステップS106-Yes)、処理回路15は、調整機能154により、閾値が変更された組織について、変更後の閾値と存在確率を用いて当該組織に該当するか否かを再判定し、再判定結果を用いてマスク画像を再生成することにより、閾値が変更された組織のマスク画像を更新する。
【0048】
(ステップS108)
次に、処理回路15は、調整機能154により、更新されたマスク画像をCT画像上に重畳表示させることにより、重畳画像を更新する。
【0049】
例えば、「骨」の閾値が現在の値よりも大きい値に変更された場合、当該組織に該当すると判定される画素が減少し、第1マスク画像においてマスクされる部分が減少する。一方、「骨」の閾値が現在の値よりも小さい値に変更された場合、当該組織に該当すると判定される画素が増加し、第1マスク画像においてマスクされる部分が増加する。
【0050】
(ステップS109)
処理回路15は、セグメンテーション支援処理を終了する操作を検知し、当該操作が行われるまで(ステップS109-No)、ステップS106-ステップS108の処理を繰り返し実行し、閾値が変更される度に表示画像を更新する。セグメンテーション支援処理を終了する操作が行われた場合(ステップS109-Yes)、処理回路15は、セグメンテーション支援処理を終了する。
【0051】
以下、本実施形態に係る医用情報処理装置10の効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る医用情報処理装置10は、医用画像上の各領域が特定の組織に該当する確率を組織の種類ごとに算出し、組織の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、閾値と存在確率とに基づいて、医用画像上の領域ごと、かつ、組織の種類ごとに、当該領域が当該組織に該当するか否かを判定することができる。また、医用情報処理装置10は、閾値の入力に応じて組織の閾値を調整することができる。
【0053】
医用画像は、例えば、CT画像、X線画像、超音波画像等の医用画像診断装置で生成された医用画像である。医用画像上の各領域は、例えば、1画素ごとの領域であってもよく、複数画素ごとの領域であってもよく、事前に任意の条件により分割された領域であってもよい。組織の種類は、例えば、臓器の種類である。臓器の種類は、例えば、「骨」、「血管」、「肺」、「肝臓」等である。特定の組織に該当する確率は、例えば、存在確率である。医用画像上の各領域における存在確率を含むデータは、確率マップと呼ばれてもよい。
【0054】
上記構成により、本実施形態の医用情報処理装置10によれば、ユーザは、組織ごとに設定された閾値を任意の値に調整することにより、セグメンテーションにおける判定条件を調整し、所望の判定条件を用いてセグメンテーションを行うことで、組織の重複(オーバーラップ)を考慮して正確なセグメンテーションを行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る医用情報処理装置10は、医用画像の各領域の判定結果に基づいて、医用画像上に組織の領域を表すマスク画像をレイヤーとして重ねた重畳画像をディスプレイに表示させ、閾値の入力を受け付ける入力部をディスプレイ13に表示させ、入力部の操作による閾値の調整に応じて判定結果を更新し、判定結果の更新に応じてレイヤーの表示を更新することができる。例えば、組織の種類ごとに判定結果に基づいてマスク画像が生成され、医用画像上に各組織のマスク画像が重畳表示される。また、調整部として、
図3に示す目盛124とスライダーバー125が表示される。ユーザは、スライダーバー125を移動させることにより、組織の閾値を任意の値に調整することができる。ユーザにより組織の閾値が変更される度に、閾値が変更された組織の判定結果とマスク画像が更新され、更新されたマスク画像が医用画像上に表示される。このため、医用画像上では、マスク画像によりマスクされた部分が、閾値の変化に応じて更新される。例えば、「骨」の閾値が現在の値よりも大きい値に変更された場合、当該組織に該当すると判定される画素が減少し、「骨」としてマスクされる部分が減少する。一方、「骨」の閾値が現在の値よりも小さい値に変更された場合、当該組織に該当すると判定される画素が増加し、「骨」としてマスクされる部分が増加する。ユーザは、閾値を変更しながら、セグメンテーション画像の変化を確認することで、セグメンテーションに用いられる判定条件を、任意のセグメンテーション結果を得られるように容易に調整することができる。
【0056】
例えば、「骨」の存在確率が現在の閾値よりも大きく、かつ、「血管」の存在確率が現在の閾値よりも大きい画素が存在する場合、その画素は、「骨」及び「血管」の両方に該当する重複領域となる。ユーザは、重複領域の変化を確認しながら閾値の調整を行い、重複領域が発生しないように閾値を調整することにより、重複領域が発生しない条件で実行されたセグメンテーション結果を得ることができる。例えば、「骨」の閾値を、全ての重複領域における「骨」の存在確率の最大値よりも大きい値に変更することで、「骨」の閾値が全ての重複領域における「骨」の存在確率よりも大きい値になり、全重複領域において、「骨」に該当すると判定されなくなり、重複領域が発生しなくなる。
【0057】
また、本実施形態に係る医用情報処理装置10は、医用画像の入力を受け付け、入力された医用画像中の各領域について特定の組織に該当する存在確率を、学習済みモデルに従って算出することができる。具体的には、入力した医用画像の各画素における「骨」の存在確率を出力するDL推論器と、入力した医用画像の各画素における「血管」の存在確率を出力するDL推論器が用いている。特定の組織のマスク画像ではなく、存在確率を出力するDL推論器を用いることにより、各組織の判定条件である閾値を調整することができ、精度が高いセグメンテーションを行うことができる。
【0058】
なお、各領域の存在確率を示す確率マップは、ルールベースのアルゴリズムを用いて算出してもよい。例えば、処理回路15は、算出機能151により、医用画像の輝度値に基づいて、医用画像中の各領域について特定の組織に該当する確率を算出してもよい。この場合、CT画像における各組織のCT値の範囲は既知であるので、CT画像のCT値に基づいて各組織の存在確率を画素ごとに算出してもよい。あるいは、CT値と周辺のCT値とのコントラストを利用して、各組織の存在確率を算出してもよい。なお、医用画像における各領域について組織の存在確率を算出するアルゴリズムであれば、他の手法を用いることもできる。
【0059】
また、調整対象の組織の閾値がユーザにより大幅に変更されると、その組織に該当する可能性が低いことが輝度値から明らかな領域においても、当該組織に該当するとして判定されることがある。このため、当該組織に該当すると判定された領域において、その領域の輝度値が一般的な範囲から大きく離れた場合には、ユーザに警告してもよい。この場合、処理回路15は、調整機能154により、その組織における一般的な輝度値の範囲を基準値として取得し、調整対象の組織に該当すると判定された領域の輝度値と基準値との差が所定の値以上である場合、ディスプレイ13への表示や音声を用いてユーザに警告する。
【0060】
また、「骨」のCT値の範囲は既知であるため、「血管」の閾値を調整した結果、CT値では明らかに「骨」だと思われる領域が「血管」として判定された場合には、警告してもよい。
【0061】
また、本実施形態に係る医用情報処理装置10は、複数の組織に該当する重複領域を特定し、重複領域に関する情報をディスプレイ13に表示させることができる。具体的には、調整対象の組織の閾値を変化させながら重複領域を特定することにより、調整対象の組織の閾値を仮に変化させた場合に重複領域が発生する重複発生範囲を特定し、調整バーにおいて重複発生範囲に対応する位置の背景色を
図3に示すように変更する。ユーザは、重複領域を考慮しながら各組織の閾値を調整することで、複数組織のセグメンテーション領域を正確に調整することができる。
【0062】
なお、各組織の閾値を初期値に設定した際に重複領域が発生する場合には、重複領域が生じないように組織の閾値を自動的に調整してもよい。この場合、処理回路15は、調整機能154により、初期値を閾値として設定した際に重複領域が特定された場合、重複領域が生じないように閾値を初期値から変更する。具体的には、処理回路15は、重複情報表示機能155により特定された重複発生範囲が閾値の初期値を含む場合、調整機能154により、その閾値を重複領域に含まれない値に変更する。例えば、「骨」の閾値の初期値が0.5であり、「骨」の閾値が0.6以下の場合に「血管」との重複領域が発生することが特定された場合、「骨」の閾値が0.6よりも僅かに大きい値に自動的に変更される。重複領域が生じていない状態で医用画像が提示されることにより、ユーザの操作の負担が軽減される。
【0063】
また、本実施形態では、各組織の存在確率の情報を利用することができるため、重複領域に対し、存在確率が高い臓器を採用することができる。この場合、重複領域では、該当する複数の組織のうち存在確率が最も大きい組織のマスク画像のみが表示される。また、重複領域に表示する組織は、予め設定された優先度に基づいて決定されてもよい。この場合、重複領域に該当する複数の組織のうち、予め設定された優先度が最も大きい組織のマスク画像が重複領域に表示される。これにより、異なるレイヤーに属するマスクがオーバーラップした時、上位のレイヤーほど優先して表示することができる。また、
図3の調整部120には、予め設定された優先度が高い順に調整バーが表示されるとよい。また、優先度の設定は、ユーザが手動で変更できるようにしてもよい。例えば、
図3の調整部120に表示する組織の順番を、ユーザが任意に変更できるようにするとよい。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。第1の実施形態では、1つの医用画像に対し「骨」及び「血管」の2つの臓器のセグメンテーションを行う場合について説明したが、本実施形態では、1つの医用画像に対し「肝臓」、「肺」及び「大腸」の3つの臓器のセグメンテーションを行う。また、調整対象の組織として、「肝臓」、「肺」及び「大腸」が設定されている。
【0065】
本実施形態では、推論器111として、入力されたCT画像における「肝臓」に該当する存在確率を画素ごとに出力する第1推論器と、入力されたCT画像における「肺」に該当する存在確率を画素ごとに出力する第2推論器と、入力されたCT画像における「大腸」に該当する存在確率を画素ごとに出力する第3推論器との3つの推論器が用いられる。
【0066】
図4は、本実施形態の医用情報処理装置10により実行されるセグメンテーション支援処理のステップS105の処理において、ディスプレイ13に表示される表示画面100の一例を示す図である。本実施形態では、画像表示部110には、「肝臓」に該当する画素をマスクする第1マスク画像、「肺」に該当する画素をマスクする第2マスク画像、及び、「肺」に該当する画素をマスクする第3マスク画像がCT画像上に重畳表示されている。第1マスク画像のマスク領域A、第2マスク画像のマスク領域B、及び第3マスク画像のマスク領域Cは異なる色で表示される。例えば、マスク領域Aは緑色で表示され、マスク領域Bは青色で表示され、マスク領域Cは赤色で表示される。
【0067】
図4では、「肝臓」の目盛124上には、「肺」及び「大腸」との重複領域が発生する範囲に、対応する色の重複範囲表示部126が重ねて表示されている。同様に、「肺」及び「大腸」の目盛124上にも、他の組織との重複領域が発生する範囲に、重複する組織に対応する色の重複範囲表示部126が重ねて表示されている。ユーザは、重複範囲表示部126を確認することにより、他の組織との重複領域が発生する範囲を簡単に把握し、調整対象の組織の閾値を、重複領域が発生しない閾値に調整することができる。
【0068】
(第2の実施形態の第1の変形例)
第2の実施形態の第1の変形例について説明する。本変形例は、第2の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第2の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0069】
本変形例では、処理回路15は、重複情報表示機能155により、調整対象の組織の閾値が変化する度に、重複領域を再特定し、重複領域に関する情報の表示を更新する。
【0070】
図5は、「肺」の閾値が0.5に設定されている
図4に示す状態から、「肺」に対応するスライダーバー125がユーザにより移動され、「肺」の閾値が調整された場合の表示画面100の一例を示す図である。
【0071】
スライダーバー125が操作され、「肺」の閾値が変更されると、処理回路15は、重複情報表示機能155により、変更後の「肺」の閾値を用いて、重複領域を再び特定する。例えば、
図4及び
図5に示すように、「肺」の閾値が小さい値に変更されると、「肺」に該当すると判定される値の範囲が大きくなり、他の組織の閾値を仮に変化させた場合に「肺」との重複領域が生じる範囲が大きくなるため、「肝臓」及び「大腸」の重複範囲表示部126が表示される範囲が大きくなる。一方、「肺」の閾値が大きい値に変更されると、「肺」に該当すると判定される値の範囲が小さくなり、他の組織の閾値を仮に変化させた場合に「肺」との重複領域が生じる範囲が小さくなるため、「肝臓」及び「大腸」の重複範囲表示部126が表示される範囲が小さくなる。ユーザは、特定の臓器の閾値を調整することによる重複領域が発生する範囲への影響を確認しながら、複数の臓器の閾値を調整することができる。
【0072】
(第2の実施形態の第2の変形例)
第2の実施形態の第2の変形例について説明する。本変形例は、第2の実施形態の第1の変形例の構成を以下の通りに変形したものである。第2の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0073】
本変形例では、処理回路15は、重複情報表示機能155により、重複領域が発生している場合、重複領域に関する情報として、重複領域が発生していることをディスプレイ13に表示させる。
【0074】
図6は、重複領域が発生している場合に表示される表示画面100の一例を示す図である。
図6では、
図4に示す状態から「肺」の閾値が変更されることにより、「肺」と「肝臓」との重複領域が生じたため、「肺」の目盛124上に、「肝臓」との重複領域が含まれることを示す文章が表示されている。特定の臓器の閾値を調整することにより他の組織との重複が発生したことをユーザに通知し、重複が発生しないように閾値を調整することをユーザに促すことができる。
【0075】
(第2の実施形態の第3の変形例)
第2の実施形態の第3の変形例について説明する。本変形例は、第2の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第2の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0076】
本変形例では、処理回路15は、重複情報表示機能155により、重複領域に表示させる組織の選択を受け付けるための選択画面をディスプレイ13に表示させる。この際、処理回路15は、重複領域を複数のセグメントに分割し、セグメントごとに表示させる組織の選択を受け付ける。
【0077】
図7は、
図5に示すように「肺」と「肝臓」との重複領域が生じた場合に表示される表示画面100の一例を示す図である。例えば、
図5の表示画面において、重複領域に表示する組織を選択する選択画面を表示させる操作がユーザにより行われたことに応じて、
図7に示す表示画面100が表示される。画像表示部110内の重複領域は複数のセグメントに分割され、分割されたセグメントごとにマスク画像を表示する組織を選択することができる。
【0078】
図7の一例では、表示画面100には、調整部120の代わりに、操作入力部130と条件入力部140が表示されている。操作入力部130には、各セグメントについてマスク画像を表示するか否かを選択するチェックボックス131と、表示する組織を選択するチェックボックス132が、セグメントごとに表示されている。
図7の「領域1」、「領域2」、「領域3」及び「領域4」は、セグメント名の一例である。ユーザによりセグメントのいずれかが選択されると、画像表示部110上の選択されたセグメントに対応する領域が強調して表示される。
図7では、セグメントとして「領域2」が選択された場合を示している。
【0079】
ユーザは、チェックボックス131のチェックの有無を操作することで、重複領域における各セグメントについてマスク画像を表示するか否かを選択することができる。また、ユーザは、チェックボックス132において表示させる組織を選択することで、各セグメントがどの組織に属するかを自らの判断で選択し、正確なセグメンテーションを行うことができる。
【0080】
図8は、チェックボックス132において組織が選択された際の画像表示部110の変化の一例を示す図である。
図8は、「領域2」のチェックボックス132において「肝臓」が選択された場合の、画像表示部110の領域Dにおける変化を示している。領域Dは、重複領域における「領域2」のセグメントを含んでいる。
図8の領域Eは、「領域2」に対応する。
【0081】
図8の左図は、
図7のチェックボックス132において「肝臓」が選択される前の領域Dの様子を示す図である。
図8に示すように、「領域2」に対応する領域Eでは、「肺」のマスク画像と「肝臓」のマスク画像の両方が重畳されている。
【0082】
図8の右図は、
図7のチェックボックス132において「肝臓」が選択された後の領域Dの様子を示す図である。
図8に示すように、「領域2」において「肝臓」が選択されると、「領域2」に対応する領域Eには、「肝臓」のマスク画像のみが表示され、マスク画像の重複が解消される。
【0083】
また、条件入力部140には、表示する組織の選択を受け付けるセグメントの条件として、最小体積を入力することができる。最小体積は、ユーザが表示する組織を選択できるセグメントを決定するための設定値である。体積は、セグメントに含まれる組織の体積である。最小体積は、表示するセグメントに含まれる組織の体積の最小値である。最小体積は、例えば、「ボクセル(voxel)」単位で入力することができる。操作入力部130には、複数のセグメントのうち、条件入力部140に入力された最小体積以上の体積の組織を含むセグメントのみが表示される。複数のセグメントのうち、最小体積よりも小さい体積の組織を含むセグメントでは、表示する組織が自動で決定される。例えば、存在確率が大きい組織を表示する組織として自動的に決定するとよい。この場合、処理回路15は、重複情報表示機能155により、設定値以上の体積の組織を含むセグメントでは、ユーザによる表示する組織の選択を受け付け、設定値より小さい体積の組織を含むセグメントでは、存在確率が大きい組織を表示させる。あるいは、予め設定された優先度が高い組織を、重複領域の組織として自動的に決定してもよい。この場合、処理回路15は、重複情報表示機能155により、設定値以上の体積の組織を含むセグメントでは、ユーザによる表示する組織の選択を受け付け、設定値より小さい体積の組織を含むセグメントでは、予め設定された優先度が高い組織を重複領域に表示させる。ユーザは、含まれる組織の体積が大きく重要な領域についてのみ自分で組織の判別を行い、含まれる組織の体積が小さく重要でない領域についての組織の判別を省略することができるため、正確に、かつ、効率的にセグメンテーションを行うことができる。
【0084】
(他の変形例)
上記実施形態では、重複範囲表示部126として、目盛124上の重複発生範囲に、重複する組織に対応する色を表示させる例について説明したが、他の方法で重複発生範囲を表示してもよい。例えば、
図9及び
図10に示すように、
図4の重複範囲表示部126の代わりに、「肺」との重複が発生する値を示すマーク128Aと、「大腸」との重複が発生する値を示すマーク128Bを「肝臓」の目盛124上に表示させてもよい。ユーザは、「肝臓」のスライダーバー125をマーク128Aの値より小さい位置まで移動させると「肺」組織との重複領域が発生し、「肝臓」のスライダーバー125をマーク128Bの値より小さい位置まで移動させると「肺」との重複領域に加えて、「大腸」との重複領域が発生することを把握することができる。また、マーク128A、128Bの色を重複する組織のマスク画像の色と対応させることで、どの組織と重複するのかを容易に把握できるようにしてもよい。
【0085】
また、重複する組織の種類ではなく、
図11及び
図12のように、重複する組織の数に応じて重複範囲表示部126の表示方法を変更してもよい。
図11及び
図12では、重複範囲表示部126は、重複する組織の数が多いほど濃い色で表示されている。
図11では、重複する組織の数に応じて段階的に背景色の濃さが変化しており、
図12では、グラデーションを用いて背景色の濃さが変化している。
【0086】
また、
図4では、複数の組織に対して重複領域が発生する場合、各組織に対する重複範囲表示部126を重ねて表示しているが、別々に表示してもよい。例えば、
図13のように、「肝臓」に対して、「肺」との重複発生範囲の背景を「肺」に対応する色で表示した重複範囲表示部126Aと、「大腸」との重複発生範囲を示す重複範囲表示部126Bを別々に表示してもよい。
【0087】
また、患者の疾患の有無や疾患の種類に応じて、各組織の閾値を自動的に調整してもよい。例えば、血管の狭窄が生じている領域では通常の血管よりも画素値が小さくなり、通常の血管よりも血管の存在確率が小さくなる。また、患者が、がんを患っている場合、血管が通常とは異なる構造に変形することがある。このような領域では、血管の存在確率が小さくなるため、初期値の閾値を用いた判定では「血管」と判定され難い。このため、狭窄やがんを有する患者の医用画像に対しては、血管の閾値を小さい値に調整することにより、疾患により生じた異常な血管も血管として判定されやすくなり、セグメンテーションの精度を向上させることができる。
【0088】
また、医用画像内の臓器などの組織を抽出する場合に限らず、医用画像に映った寝台や医療器具を抽出して医用画像上に重畳表示する場合に本実施形態の構成を適用してもよい。この場合、処理回路15は、算出機能151により、医用画像上の各領域について特定の
抽出対象物に該当する存在確率を組織の種類ごとに算出し、判定機能152により、抽出対象物の種類ごとに設定された複数の閾値を取得し、閾値と存在確率とに基づいて、領域ごと、かつ、分類対象物の種類ごとに、当該領域が分類対象物に該当するか否かを判定し、調整機能154により、閾値の入力に応じて閾値を調整する。抽出対象物は、医用画像に映った臓器などの組織や、医用画像に映った手技に用いた医療器具や寝台等を含む。
【0089】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像に対するセグメンテーションを正確に行うことができる。
【0090】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…医用情報処理システム
10…医用情報処理装置
11…メモリ
12…通信インタフェース
13…ディスプレイ
14…入力インタフェース
15…処理回路
151…算出機能
152…判定機能
153…表示制御機能
154…調整機能
155…重複情報表示機能
100…表示画面
110…画像表示部
111…推論器
120…調整部
121…組織名表示部
122…表示選択部
123…表示色選択部
124…目盛
125…スライダーバー
126、126A、126B…重複範囲表示部
128A、128B…マーク
130…操作入力部
131、132…チェックボックス
140…条件入力部