(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173395
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理プログラム及びX線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241205BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B6/00 370
A61B6/00 360B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091780
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和代
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広治
(72)【発明者】
【氏名】小倉 伸夫
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093CA21
4C093EE30
4C093FA35
4C093FA53
4C093FA55
4C093FF35
(57)【要約】
【課題】カテーテル治療を支援すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、変位量算出部と、回転量算出部と、表示制御部とを具備する。取得部は、直線状の基部と、前記基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、前記基部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す基部回転量と、前記挿入デバイスのX線画像とを取得する。変位量算出部は、前記基部回転量ごとに、前記X線画像における前記基部に対する前記先端部の位置を示す先端部変位量を算出する。回転量算出部は、前記先端部変位量に基づいて、前記先端部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量を算出する。表示制御部は、前記先端部回転量に基づいて、前記X線画像における前記先端部の向きを表示部に表示する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の基部と、前記基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、前記基部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す基部回転量と、前記挿入デバイスのX線画像とを取得する取得部と、
前記基部回転量ごとに、前記X線画像における前記基部に対する前記先端部の位置を示す先端部変位量を算出する変位量算出部と、
前記先端部変位量に基づいて、前記先端部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量を算出する回転量算出部と、
前記先端部回転量に基づいて、前記X線画像における前記先端部の向きを表示部に表示する表示制御部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記基部回転量及び前記先端部回転量を所定の関係式により対応付ける対応付け部と、
前記所定の関係式を用いて、前記基部回転量から前記先端部回転量を推定する推定部と、
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記推定された先端部回転量を用いて、前記X線画像における前記先端部の向きを前記表示部に表示する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記X線画像が間欠的に取得される場合、前記所定の関係式を用いて、前記基部回転量から前記先端部回転量をリアルタイムに推定し、
前記表示制御部は、リアルタイムに推定された前記先端部回転量を用いて、前記X線画像が取得されない期間にわたり、前記期間の直前に取得された前記X線画像において前記先端部の向きをリアルタイムに表示する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記X線画像に前記挿入デバイスの三次元モデルを重畳し、前記推定された先端部回転量を用いて前記三次元モデルを回転させることで、前記X線画像における前記先端部の向きを表示する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記X線画像に対応するレンダリング画像に前記挿入デバイスの三次元モデルを重畳し、前記推定された先端部回転量を用いて前記三次元モデル又は前記レンダリング画像を回転させることで、前記レンダリング画像における前記先端部の向きを表示する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記基部回転量は、前記基部に取り付けられた回転センサの出力値と、前記基部を回転させるロボットの出力値と、前記基部に取り付けられた操作ハンドルの動き量とのうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記先端部変位量は、前記基部の軸から前記先端部の先端までの距離と、前記基部の軸に対する前記先端部の角度と、前記基部及び前記先端部が成す曲線の曲率半径又は曲率とのうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記挿入デバイスを操作する操作者からのキャリブレーション指示に応じて、前記基部回転量と、前記X線画像とを取得する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
直線状の基部と、前記基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、前記基部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す基部回転量と、前記挿入デバイスのX線画像とを取得する取得機能と、
前記基部回転量ごとに、前記X線画像における前記基部に対する前記先端部の位置を示す先端部変位量を算出する変位量算出機能と、
前記先端部変位量に基づいて、前記先端部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量を算出する回転量算出機能と、
前記先端部回転量に基づいて、前記X線画像における前記先端部の向きを表示部に表示する表示制御機能と、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【請求項10】
直線状の基部と、前記基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、前記基部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す基部回転量と、前記挿入デバイスのX線画像とを取得する取得部と、
前記基部回転量ごとに、前記X線画像における前記基部に対する前記先端部の位置を示す先端部変位量を算出する変位量算出部と、
前記先端部変位量に基づいて、前記先端部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量を算出する回転量算出部と、
前記先端部回転量に基づいて、前記X線画像における前記先端部の向きを表示部に表示する表示制御部と、
を具備するX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理プログラム及びX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療は、被検体の管腔臓器(例:消化管、胆管、血管)の狭窄又は閉塞に対する治療法である。医師等の操作者は、被検体のX線透視画像上で挿入デバイス(例:ガイドワイヤ、カテーテル)の先端部の位置を確認しながら、目的の管腔臓器に挿入デバイスを誘導するといった手技を進める。
【0003】
しかしながら、操作者は、奥行き情報がない二次元のX線透視画像を見ながら手技を進めるため、当該画像上で挿入デバイスの先端部の向き(特に、奥行き方向の向き)を認識しがたい。一方、X線透視画像を表示するシステムは、当該画像を表示するのみでは、挿入デバイスの先端部の向きを認識できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、カテーテル治療を支援することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、変位量算出部と、回転量算出部と、表示制御部とを具備する。取得部は、直線状の基部と、前記基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、前記基部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す基部回転量と、前記挿入デバイスのX線画像とを取得する。変位量算出部は、前記基部回転量ごとに、前記X線画像における前記基部に対する前記先端部の位置を示す先端部変位量を算出する。回転量算出部は、前記先端部変位量に基づいて、前記先端部に係る前記基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量を算出する。表示制御部は、前記先端部回転量に基づいて、前記X線画像における前記先端部の向きを表示部に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示すブロック図。
【
図2】本実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】本実施形態に係る医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート。
【
図4】本実施形態に係る先端部変位量の算出例を示す図。
【
図5】本実施形態に係る複数の時刻における先端部変位量の算出例を示す図。
【
図6】本実施形態に係る対応付けの第1過程の例を示す図。
【
図7】本実施形態に係る対応付けの第2過程の例を示す図。
【
図8】本実施形態に係る対応付けの第2過程の例を示す図。
【
図9】本実施形態に係る対応付けの第3過程の例を示す図。
【
図10】本実施形態に係る挿入デバイスの先端部の向きの第1表示例を示す図。
【
図11】本実施形態に係る挿入デバイスの先端部の向きの第2表示例を示す図。
【
図12】本実施形態に係る挿入デバイスの先端部の向きの第3表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うとして、重複する説明を適宜、省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用画像処理システム100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理システム100は、カテーテル治療を支援するシステムである。医用画像処理システム100は、各構成として、医用画像処理装置1、入力装置2、表示装置3、透視画像生成装置4及び透視画像記憶装置5を含む。各構成は、共通の信号通信路であるバス(BUS)を介して、互いに通信可能に接続される。
【0010】
医用画像処理装置1は、カテーテル治療を支援する装置である。医用画像処理装置1は、デスクトップPC、ノートPC、スマートフォン、タブレット端末又はウェアラブル端末でもよいし、高速な情報処理を実行可能なワークステーションでもよい。
【0011】
入力装置2は、操作者から各種の操作を受け付ける装置である。入力装置2は、操作者から受け付けた各種の操作を電気信号に変換し、電気信号を医用画像処理装置1に送信する。入力装置2は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、操作パネル又はタッチパネルでもよい。入力装置2は、入力部の一例である。
【0012】
表示装置3は、各種のデータ又は情報を表示する装置である。表示装置3は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ又はLEDディスプレイでもよい。表示装置3は、入力装置2としての機能を兼ねるタッチパネル式ディスプレイでもよい。表示装置3は、表示部の一例である。
【0013】
透視画像生成装置4は、被検体のX線透視画像(以下、単に「透視画像」という。)を生成する装置である。例えば、透視画像生成装置4は、被検体をX線透視撮影するための
各構成(例:X線管球、X線検出器、寝台、コンソール装置)を有する。透視画像生成装置4は、「X線診断装置」とも換言される。透視画像生成装置4は、生成した透視画像を透視画像記憶装置5に送信する。透視画像生成装置4は、画像生成部の一例である。
【0014】
透視画像記憶装置5は、被検体の透視画像を記憶する装置である。透視画像記憶装置5は、記憶媒体(例:磁気的記憶媒体、電磁的記憶媒体、光学的記憶媒体、半導体メモリ)でもよいし、記憶媒体との間で情報を読み書きする駆動装置でもよい。透視画像記憶装置5は、透視画像生成装置4から送信された透視画像を記憶する。透視画像記憶装置5は、画像記憶部の一例である。
【0015】
本例によれば、医用画像処理装置1は、透視画像生成装置4とは別体として存在する。本例に限らず、医用画像処理装置1は、透視画像生成装置4に組み込まれてもよい。この場合、透視画像生成装置4は、医用画像処理装置1と同様な動作を実行してもよい。
【0016】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理装置1の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置1は、各構成として、処理回路11、メモリ12及び通信IF13を含む。各構成は、共通の信号通信路であるバス(BUS)を介して、互いに通信可能に接続される。
【0017】
処理回路11は、医用画像処理装置1の全体の動作を制御する回路である。処理回路11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例:単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array))などの回路を意味する。プロセッサがCPUである場合、CPUはメモリ12に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各機能を実現する。プロセッサがASICである場合、各機能がASICの回路内に論理回路として直接、組み込まれる。プロセッサは、単一の回路として構成されてもよいし、独立した複数の回路を互いに組み合わせて構成されてもよい。処理回路11は、各機能(取得機能111、変位量算出機能112、回転量算出機能113、対応付け機能114、推定機能115、表示制御機能116、システム制御機能117)を実現する。
【0018】
取得機能111は、各種のデータ又は情報を取得する機能である。例えば、取得機能111は、直線状の基部と、基部に対して湾曲した先端部とを含む挿入デバイスについて、基部に係る基部の軸周りの回転量を示す基部回転量θ(t)と、挿入デバイスの透視画像X(t)とを取得する。取得機能111は、挿入デバイスを操作する操作者からのキャリブレーション指示に応じて、基部回転量θ(t)と、透視画像X(t)とを取得してもよい。取得機能111は、取得部の一例である。
【0019】
変位量算出機能112は、各種の変位量を算出する機能である。例えば、変位量算出機能112は、基部回転量θ(t)ごとに、透視画像X(t)における挿入デバイスの基部に対する先端部の位置を示す先端部変位量R(θ)を算出する。変位量算出機能112は、変位量算出部の一例である。
【0020】
回転量算出機能113は、各種の回転量を算出する機能である。例えば、回転量算出機能113は、先端部変位量R(θ)に基づいて、挿入デバイスの先端部に係る基部の軸周りの回転量を示す先端部回転量Φ(θ)を算出する。回転量算出機能113は、回転量算出部の一例である。
【0021】
対応付け機能114は、各種の対応付けを行う機能である。例えば、対応付け機能114は、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)を所定の関係式により対応付ける。対応付け機能114は、この関係式を外部装置に送信してもよい。対応付け機能114は、対応付け部の一例である。
【0022】
推定機能115は、各種の推定を行う機能である。例えば、推定機能115は、所定の関係式を用いて、基部回転量θ(t)から先端部回転量Φ(θ)を推定する。代わりに、外部装置は、対応付け機能114により送信された所定の関係式を用いて、上記の推定を行ってもよい。推定機能115は、推定部の一例である。
【0023】
表示制御機能116は、各種の表示を制御する機能である。例えば、表示制御機能116は、回転量算出機能113により算出された先端部回転量Φ(θ)に基づいて、透視画像X(t)における挿入デバイスの先端部の向きを表示装置3に表示する。例えば、表示制御機能116は、推定機能115により推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、透視画像X(t)における挿入デバイスの先端部の向きを表示装置3に表示する。代わりに、外部装置は、所定の関係式により推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、上記の表示を行ってもよい。表示制御機能116は、表示制御部の一例である。
【0024】
システム制御機能117は、処理回路11が行う各種の動作を制御する機能である。例えば、システム制御機能117は、処理回路11が各機能(取得機能111、変位量算出機能112、回転量算出機能113、対応付け機能114、推定機能115、表示制御機能116)を実現するためのオペレーティングシステム(OS)を提供する。システム制御機能117は、システム制御部の一例である。
【0025】
メモリ12は、各種のデータ又は情報を記憶する装置である。メモリ12は、プロセッサにより読取可能な記憶媒体(例:磁気的記憶媒体、電磁的記憶媒体、光学的記憶媒体、半導体メモリ)でもよいし、記憶媒体との間でデータ又は情報を読み書きする駆動装置でもよい。メモリ12は、処理回路11に各機能(取得機能111、変位量算出機能112、回転量算出機能113、対応付け機能114、推定機能115、表示制御機能116、システム制御機能117)を実現させる各プログラムを記憶する。メモリ12は、記憶部の一例である。
【0026】
通信IF13は、各種のデータ又は情報を通信するインタフェースである。例えば、通信IF13は、入力装置2、表示装置3、透視画像生成装置4又は透視画像記憶装置5との間で、各種のデータ又は情報を通信する。通信IF13は、通信部の一例である。
【0027】
図3は、本実施形態に係る医用画像処理装置1の動作例を示すフローチャートである。本動作例に係る前提として、操作者は、被検体の血管に挿入デバイスを挿入している。すなわち、被検体は、カテーテル治療を受けている最中である。このとき、透視画像生成装置4は、挿入デバイスの透視画像X(t)をリアルタイムに生成し、生成した透視画像X(t)を透視画像記憶装置5に順次、記憶する。
【0028】
(ステップS1)まず、医用画像処理装置1は、時刻tを「1」に設定する(t=1)。具体的には、医用画像処理装置1は取得機能111により、現在の時刻を「1」とみなし、時刻tを「1」に設定する。
【0029】
(ステップS2)次に、医用画像処理装置1は、基部回転量θ(t)を取得する。具体的には、医用画像処理装置1は取得機能111により、時刻tにおける基部回転量θ(t)を取得する。基部回転量θ(t)は、挿入デバイスの基部に取り付けられた回転センサの出力値でもよいし、挿入デバイスの基部を回転させるロボットの出力値(例:トルク値)でもよい。回転センサの出力値は、操作者が挿入デバイスの基部を手で直接的に回転させる場合に使用され得る。ロボットの出力値は、操作者が経皮的冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)用の支援ロボットを用いて、挿入デバイスの基部を間接的に回転させる場合に使用され得る。さらに、基部回転量θ(t)は、光学カメラ等により撮影された画像に基づく、挿入デバイスの基部に取り付けられた操作ハンドルの動き量でもよい。
【0030】
(ステップS3)続いて、医用画像処理装置1は、透視画像X(t)を取得する。具体的には、医用画像処理装置1は取得機能111により、時刻tにおける挿入デバイスの透視画像X(t)を取得する。このとき、取得機能111は、透視画像記憶装置5にアクセスすることで、透視画像X(t)を取得する。
【0031】
(ステップS4)続いて、医用画像処理装置1は、先端部変位量R(θ)を算出数する。具体的には、医用画像処理装置1は変位量算出機能112により、ステップS2で取得された基部回転量θ(t)における先端部変位量R(θ)を算出する。このとき、変位量算出機能112は、ステップS3で取得された透視画像X(t)を画像処理することで、先端部変位量R(θ)を算出する(
図4参照)。
【0032】
(ステップS5)ここで、医用画像処理装置1は、対応付けを行うか否かを判定する。具体的には、医用画像処理装置1は回転量算出機能113により、ステップS2で取得された基部回転量θ(t)と、先端部回転量Φ(θ)との間の対応付けを行うか否かを判定する。対応付けが行われる場合(ステップS5-YES)、処理はステップS6Bに進む。対応付けが行われない場合(ステップS5-NO)、処理はステップS6Aに進む。
【0033】
(ステップS6A)この場合、医用画像処理装置1は、時刻tを「t+1」に設定する(t=t+1)。具体的には、医用画像処理装置1は取得機能111により、次の時刻を「t+1」とみなし、時刻tを「t+1」に設定する。ステップS6Aの後、処理はステップS2に戻る。これにより、各時刻tにおいて、ステップS2、S3及びS4に係る一連の処理が繰り返される(
図5参照)。
【0034】
(ステップS6B)この場合、医用画像処理装置1は、先端部回転量Φ(θ)を算出する。具体的には、医用画像処理装置1は回転量算出機能113により、ステップS4で算出された先端部変位量R(θ)に基づいて、先端部回転量Φ(θ)を算出する(
図6、
図7、
図8及び
図9参照)。
【0035】
(ステップS7)続いて、医用画像処理装置1は、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)を対応付ける。具体的には、医用画像処理装置1は対応付け機能114により、ステップS2で取得された基部回転量θ(t)と、ステップS6Bで算出された先端部回転量Φ(θ)とを所定の関係式により対応付ける。所定の関係式は、基部回転量θ(t)を先端部回転量Φ(θ)に対応付けるための任意の関数(例:線形関数、非線形関数)でもよい。なお、ステップS1からS7に係る一連の処理は、一度実行されれば、繰り返し実行されなくともよい(
図6、
図7、
図8及び
図9参照)。
【0036】
(ステップS8)続いて、医用画像処理装置1は、先端部回転量Φ(θ)を推定する。具体的には、医用画像処理装置1は推定機能115により、ステップS7で適用された所定の関係式を用いて、現在の基部回転量θ(t)から現在の先端部回転量Φ(θ)を推定する。例えば、推定機能115は、所定の関係式に基部回転量θ(t)を代入することで、先端部回転量Φ(θ)を推定する。
【0037】
(ステップS9)続いて、医用画像処理装置1は、挿入デバイスの先端部の向きを表示する。具体的には、医用画像処理装置1は表示制御機能116により、ステップS8で推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、現在の透視画像X(t)における挿入デバイスの先端部の向きを表示装置3に表示する(
図10、
図11及び
図12参照)。
【0038】
(ステップS10)ここで、医用画像処理装置1は、表示を終了するか否かを判定する。具体的には、医用画像処理装置1は表示制御機能116により、ステップS9に係る挿入デバイスの先端部の向きの表示を終了するか否かを判定する。表示が終了される場合(ステップS10-YES)、医用画像処理装置1は一連の処理を終了する。表示が終了されない場合(ステップS10-NO)、処理はステップS8に戻る。これにより、ステップS8及びS9に係る処理が繰り返し実行され、挿入デバイスの先端部の向きがリアルタイムに推定されて表示される。なお、表示制御機能116は、操作者から表示の終了指示を受けた場合に、表示を終了してもよい。
【0039】
図4は、本実施形態に係る先端部変位量R(θ)の算出例を示す図である。本例によれば、透視画像200には、挿入デバイス300の先端領域が写る。挿入デバイス300は、直線状の基部310と、基部310に対して湾曲した先端部320とを含む。基部310及び先端部320は、略Y字状を成す。先端部320に係る先端部変位量R(θ)は、
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に示す3種類の方法により算出され得る。
【0040】
図4(A)に示すように、先端部変位量R(θ)は、透視画像200における基部310の軸410から先端部320の先端420までの距離でもよい。
図4(B)に示すように、先端部変位量R(θ)は、透視画像200における基部310の軸410に対する先端部320の角度でもよい。
図4(C)に示すように、先端部変位量R(θ)は、透視画像200における基部310及び先端部320が成す曲線の曲率半径又は曲率でもよい。この曲率半径は、この曲線に接する曲率円430の半径に相当する。曲率半径の逆数は、曲率に相当する。
【0041】
特に、先端部変位量R(θ)は、透視画像200において先端部320が左又は右を向く場合には、その絶対値|R(θ)|が最大となるように定義される。一方、先端部変位量R(θ)は、透視画像200において先端部320が正面又は奥を向く場合には、その絶対値|R(θ)|が「0」となるように定義される。後者の場合は、透視画像200において基部310及び先端部320が同一の直線上に位置する場合に相当する。先端部320の各向き(左、右、正面、奥)は、透視画像200における基部310の延長方向(
図4では、上下方向)を基準として定義されるとよい。
【0042】
さらに、先端部変位量R(θ)は、透視画像200において先端部320が「左」を向く場合には、負の値をとるように定義される。一方、先端部変位量R(θ)は、透視画像200において先端部320が「右」を向く場合には、正の値をとるように定義される。もちろん、先端部変位量R(θ)は、先端部320が「右」を向く場合には負の値をとるように定義され、先端部320が「左」を向く場合には正の値を取るように定義されてもよい。上記のように先端変位量R(θ)が定義されることで、先端部変位量R(θ)は、透視画像200における先端部320の立体的な向きを定量的に示す。
【0043】
図5は、本実施形態に係る複数の時刻tにおける先端部変位量R(θ)の算出例を示す図である。本例によれば、テーブル500は、複数の時刻tにおける基部回転量θ(t)、透視画像X(t)及び先端部変位量R(θ)を互いに対応付ける。テーブル500は、メモリ12に記憶されてもよい。以下では、先端部変位量R(θ)は、
図4(A)に示す方法により算出された指標値(すなわち、画素間距離)である。
【0044】
時刻t=1について、取得機能111は、基部回転量θ(1)を取得し、透視画像X(1)として透視画像210を取得する。変位量算出機能112は、透視画像210を画像処理することで、基部310の軸410から先端部320の先端420までの距離を、先端部変位量R(θ(1))として算出する。
【0045】
時刻t=2、3、4、5、6、7…について、取得機能111及び変位量算出機能112は、上記と同様な処理を繰り返す。すなわち、取得機能111は、基部回転量θ(2)、θ(3)、θ(4)、θ(5)、θ(6)、θ(7)…を取得する。さらに、取得機能111は、透視画像X(2)、X(3)、X(4)、X(5)、X(6)、X(7)…として透視画像220、230、240、250、260、270…を取得する。変位量算出機能112は、透視画像220、230、240、250、260、270…を画像処理することで、基部310の軸410から先端部320の先端420までの距離を、先端部変位量R(θ(2))、R(θ(3))、R(θ(4))、R(θ(5))、R(θ(6))、R(θ(7))…として算出する。
【0046】
透視画像210に示すように、先端部320が左を向く場合、先端部変位量R(θ(1))は負の最大値(例:-1)をとる。透視画像240に示すように、先端部320が正面を向く場合、先端部変位量R(θ(4))は「0」をとる。透視画像270に示すように、先端部320が右を向く場合、先端部変位量R(θ(7))は正の最大値(例:1)をとる。すなわち、先端部変位量R(θ)は、時刻t=1からt=7にかけて基部回転量θ(t)がθ(1)からθ(7)まで連続的に変化するとき、負の最大値から正の最大値まで連続的に変化する。
【0047】
図6は、本実施形態に係る対応付けの第1過程の例を示す図である。以下では、回転量算出機能113及び対応付け機能114は、一連の過程(第1過程、第2過程、第3過程)を経て、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)を互いに対応付ける。ここでは、回転量算出機能113は、
図5のテーブル500に格納された基部回転量θ(t)ごとの先端部変位量R(θ)を補外する。
【0048】
グラフ610は、テーブル500に格納された基部回転量θ(t)及び先端部変位量R(θ)の関係を示すグラフである。グラフ610の横軸は、基部回転量θ(t)を度数単位(°)で示す。グラフ610の縦軸は、先端部変位量R(θ)を示す。グラフ610における曲線611は、基部回転量θ(t)が「-180°」から「180°」の範囲の値を連続的にとる場合における、先端部変位量R(θ)の値の変化を示す。
【0049】
曲線611に示すように、基部回転量θ(t)が「-180°」から「180°」の範囲で変化するとき、挿入デバイス300の基部310は1回転する。回転量算出機能113は、基部310の1回転分の先端部変位量R(θ)を用いて、上記の範囲以外について先端部変位量R(θ)を補外する。このとき、回転量算出機能113は、先端部変位量R(θ)が基部310の1回転分の基部回転量θ(t)ごとに周期的に変化するとみなし、先端部変位量R(θ)を補外する。
【0050】
グラフ620は、グラフ610と同様に、基部回転量θ(t)及び先端部変位量R(θ)の関係を示すグラフである。グラフ620における曲線621は、基部回転量θ(t)が「-270°」から「720°」の範囲の値を連続的にとる場合における、先端部変位量R(θ)の値の変化を示す。曲線621の破線部分は、曲線611から補外された部分を示す。
【0051】
図7及び
図8は、本実施形態に係る対応付けの第2過程の例を示す図である。回転量算出機能113は、グラフ620の基部回転量θ(t)=0の付近において、先端部変位量R(θ)が負の最大値から正の最大値までの値をとる区間635Aを特定する。回転量算出機能113は、区間635Aにおける先端部変位量R(θ)に基づいて、先端部回転量Φ(θ)を算出する。例えば、回転量算出機能113は、先端部回転量Φ(θ)及び先端部変位量R(θ)の間に式(1)に示す関係が成り立つとみなし、先端部回転量Φ(θ)を定義する。
【0052】
【数1】
式(1)の右辺は、先端部変位量R(θ)をその絶対値|R(θ)|の最大値max(|R(θ)|)で除算することで、先端部変位量R(θ)を正規化することを含む。なお、Aは係数である。
【0053】
グラフ650は、先端部変位量R(θ)及び先端部回転量Φ(θ)の関係を示すグラフである。グラフ650の横軸は、先端部変位量R(θ)を示す。グラフ650の縦軸は、先端部回転量Φ(θ)を示す。グラフ650における曲線651は、式(1)により定義された先端部回転量Φ(θ)を示す。回転量算出機能113は、曲線651に示す対応関係を用いて、区間635Aにおける先端部変位量R(θ)を先端部回転量Φ(θ)に変換する。その後、対応付け機能114は、区間635Aにおいて基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)を所定の関係式により対応付ける。
【0054】
グラフ640は、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)の関係を示すグラフである。グラフ640の横軸は、基部回転量θ(t)を示す。グラフ640の縦軸は、先端部回転量Φ(θ)を示す。グラフ640における直線641は、区間635Aにおいて先端部回転量Φ(θ)が線形に増加することを示す。
【0055】
図9は、本実施形態に係る対応付けの第3過程の例を示す図である。回転量算出機能113は、グラフ620の基部回転量θ(t)=180の付近において、先端部変位量R(θ)が正の最大値から負の最大値までの値をとる区間635Bを特定する。回転量算出機能113は、区間635Bにおける先端部変位量R(θ)に基づいて、先端部回転量Φ(θ)を定義する。
【0056】
このとき、回転量算出機能113は、区間635Aについて適用した上記の手法と同様に、区間635Bにおける先端部回転量Φ(θ)を定義すればよい。例えば、回転量算出機能113は、先端部回転量Φ(θ)及び先端部変位量R(θ)の間に式(2)に示す関係が成り立つとみなし、先端部回転量Φ(θ)を定義する。
【数2】
【0057】
グラフ660は、グラフ640と同様に、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)の関係を示すグラフである。グラフ660における直線661は、区間635Bにおいて先端部回転量Φ(θ)が線形に増加することを示す。なお、グラフ640の直線641と、グラフ660の直線661は、同一の直線でもよい。
【0058】
以下、回転量算出機能113及び対応付け機能114は、区間635A及び635B以外の各区間について、上記と同様な処理を繰り返す。これにより、グラフ620の基部回転量θ(t)が「-270°」から「720°」まで変化する場合において、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)が対応付けられる。
【0059】
図10は、本実施形態に係る挿入デバイス300の先端部320の向きの第1表示例を示す図である。本例によれば、透視画像710には、被検体の背骨領域と、挿入デバイス300の一例としてガイドワイヤ810とが写る。ガイドワイヤ810の先端領域には、ガイドワイヤ810の基部及び先端部に対応する三次元モデル820が重畳される。三次元モデル820は、透視画像710におけるガイドワイヤ810の先端部の向きを立体的に表示する。透視画像710において、三次元モデル820は、ガイドワイヤ810の先端部がガイドワイヤ810の延長方向(
図10では、左右方向)に対して「右」を向くことを示す。
【0060】
ある時刻tにおける透視画像710は、次の時刻t+1における透視画像720により更新される。更新の際、表示制御機能116は、推定機能115により推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、透視画像710における三次元モデル820を回転し、回転後の三次元モデル820を透視画像720に表示する。透視画像720において、三次元モデル820は、ガイドワイヤ810の先端部がガイドワイヤ810の延長方向に対して「左手前」を向くことを示す。これにより、透視画像720は、現在のガイドワイヤ810の先端部の向き(特に、奥行き方向の向き)をリアルタイムに表示できる。
【0061】
図11は、本実施形態に係る挿入デバイス300の先端部320の向きの第2表示例を示す図である。本例によれば、表示画面800には、透視画像710及び750と、レンダリング画像910とが表示される。概略的には、表示画面800の右半分の領域には透視画像710が配置される。一方、表示画面800の左半分の領域は上下方向に分割され、上半分の領域には透視画像750が配置され、下半分の領域にはレンダリング画像910が配置される。各領域には、透視画像710及び750と、レンダリング画像910とが任意の順序で配置され得る。なお、透視画像710及び750と、レンダリング画像910とは、透視画像生成装置4が取得した同一のボリュームデータから生成され得る。レンダリング画像910は、三次元(3D)ボリュームデータからレンダリングされた画像でもよい。
【0062】
図10と同様に、
図11の透視画像710には、ガイドワイヤ810及び三次元モデル820が写る。ただし、
図11の透視画像710には、カテーテル830が更に写る。すなわち、
図10の透視画像710をズームアウトする(画角を広げる)ことで、
図11の透視画像710が得られる。
図11の透視画像710において、ガイドワイヤ810及びカテーテル830は、後述する血管850の形状に合わせて、逆S字状に湾曲する。
【0063】
透視画像750は、透視画像710に含まれる血管群を造影剤により強調した画像(造影画像)である。透視画像750は、透視画像710に先立って取得されていてもよい。透視画像750には、逆S字状に湾曲する太い血管850と、血管850から分岐する2本の細い血管851及び852とが写る。血管850及び851の分岐点860の位置は、透視画像710における三次元モデル820の位置に相当し、レンダリング画像910の描画位置に相当する。
【0064】
レンダリング画像910は、ガイドワイヤ810又は三次元モデル820の基部から見た、分岐点860における血管850及び851の内部の外観を立体的に示す画像である。レンダリング画像910には、左側に血管850の経路と、右側に血管851の経路とが写る。レンダリング画像910に重畳された三次元モデル820は、血管851の経路を向いている。なお、実際のレンダリング画像910は、血管850及び851と、三次元モデル820との奥行き方向が容易に感知され得るように、各種の陰影表現等が施されてレンダリングされる。レンダリング画像910は、既知の3Dロードマップ機能により、透視画像710及び750に位置合わせされ得る。レンダリング画像910の枠線の形状は、矩形又は円形でもよい。
【0065】
図12は、本実施形態に係る挿入デバイス300の先端部320の向きの第3表示例を示す図である。
図12(A)又は
図12(B)のいずれの態様でレンダリング画像910又は950が更新されるかは、操作者により選択され得る。
【0066】
図12(A)に示すように、ある時刻tにおけるレンダリング画像910は、次の時刻t+1におけるレンダリング画像920により更新される。更新の際、表示制御機能116は、推定機能115により推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、レンダリング画像910における三次元モデル820を矢印925の方向に回転し、回転後の三次元モデル820をレンダリング画像920に表示する。レンダリング画像920において、三次元モデル820は、血管850の経路を向く。
【0067】
図12(B)に示すように、ある時刻tにおけるレンダリング画像950は、次の時刻t+1におけるレンダリング画像960により更新される。更新の際、表示制御機能116は、推定機能115により推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、レンダリング画像950を矢印965の方向に回転し、回転後のレンダリング画像960を表示する。レンダリング画像960において、三次元モデル820は、血管850の経路と、血管851の経路との間の方向を向く。
【0068】
なお、
図10、
図11及び
図12に示す表示例において、表示制御機能116は、以下に示す各種の表示制御を行ってもよい。第一に、表示制御機能116は、透視画像又はレンダリング画像に、挿入デバイス300の先端部320の向きを「数値」により定量的に表示してもよい。すなわち、表示制御機能116は、先端部回転量Φ(θ)の数値を画像中の任意の箇所に表示してもよい。第二に、表示制御機能116は、挿入デバイス300の先端部320の向きが見やすいX線の投影方向を「数値」により定量的に表示してもよい。特に、表示制御機能116は、透視画像生成装置4を制御することで、この投影方向に合わせてX線管球の位置を自動的に調整してもよい。第三に、表示制御機能116は、レンダリング画像にプラーク又は石灰化領域に関する情報を表示してもよい。
【0069】
以上、本実施形態に係る医用画像処理システム100及び医用画像処理装置1について説明した。本実施形態によれば、医用画像処理装置1は、操作者が操作している挿入デバイス300の先端部320の向きを表示できる。これにより、操作者は、挿入デバイス300及び管腔臓器の間の位置関係を認識しやすくなるため、効率良く手技を進めることができる。さらに、医用画像処理装置1は、操作者が操作している挿入デバイス300の先端部320の向きを認識できるため、この向きに応じた表示の制御を行うことができる。
【0070】
加えて、医用画像処理装置1は、挿入デバイス300の基部回転量θ(t)と、一方向から投影された透視画像200とに基づいて、挿入デバイス300の先端部320の向きを表示する。これにより、透視画像200を生成する透視画像生成装置4は、X線管球を移動させる必要がなく、2つのX線管球を使用する必要もない。すなわち、医用画像処理装置1は、1つのX線管球を定位置で使用する各種の透視画像生成装置4に適用できる。
【0071】
(変形例)
第一に、医用画像処理装置1は、操作者が入力装置2を用いて入力したキャリブレーション指示に応じて、基部回転量θ(t)及び透視画像X(t)を取得してもよい(
図5のステップS2及びS3に関連)。例えば、操作者が入力装置2としてキャリブレーション開始ボタンを押下した場合、医用画像処理装置1は、基部回転量θ(t)及び透視画像X(t)を取得し始める。その後、医用画像処理装置1は、取得された基部回転量θ(t)及び透視画像X(t)を用いて、基部回転量θ(t)及び先端部回転量Φ(θ)を対応付けてもよい。
【0072】
第二に、医用画像処理装置1は、透視画像生成装置4が被検体の心臓を間欠的に撮影する場合(心電図同期撮影)にも適用され得る。具体的には、透視画像生成装置4は、被検体の心臓の拍動に同期して、特定の心位相(例:収縮期、拡張期)において心臓を間欠的に撮影する。これにより、撮影された透視画像200における心臓の拍動の影響が低減されるため、操作者は、カテーテル治療に係る手技を進めやすくなる。
【0073】
しかしながら、上記の撮影手法では、撮影される透視画像200のフレームレートが低下するため、操作者は、透視画像200が取得されない期間(ギャップ期間)においては、挿入デバイス300の先端部320の向きに注意する必要がある。
【0074】
そこで、医用画像処理装置1は、事前に、挿入デバイス300の基部310に係る基部回転量θ(t)と、挿入デバイス300の先端部320に係る先端部回転量Φ(θ)とを所定の関係式により対応付ける。これにより、医用画像処理装置1は、透視画像200が取得されない期間においても、この関係式を用いて基部回転量θ(t)から先端部回転量Φ(θ)をリアルタイムに推定できる。さらに、医用画像処理装置1は、リアルタイムに推定された先端部回転量Φ(θ)を用いて、上記の期間にわたり、この期間の直前に取得された透視画像200において三次元モデル820を回転させる。したがって、医用画像処理装置1は、上記の期間においても、挿入デバイス300の先端部320の向きをリアルタイムに表示し、操作者による手技を支援できる。
【0075】
第三に、医用画像処理装置1は、操作者が挿入デバイス300の基部310を「時計回りに」回転した場合における基部回転量θ(t)と、基部310を「反時計回りに」回転した場合における基部回転量θ(t)とを取得してもよい。さらに、医用画像処理装置1は、取得された両方向の基部回転量θ(t)に対応する先端部変位量R(θ)の変化に基づいて、どの基部回転量θ(t)の区間において挿入デバイス300の先端部320が血管壁等に引っ掛かるかを推定してもよい。例えば、医用画像処理装置1は、先端部変位量R(θ)が不規則的に変化する基部回転量θ(t)の区間を特定する。医用画像処理装置1が特定された区間を表示することで、操作者は、この区間において先端部320が血管壁等に引っ掛かることを認識できる。
【0076】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、カテーテル治療を支援することができる。
【0077】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 医用画像処理装置
2 入力装置
3 表示装置
4 透視画像生成装置
5 透視画像記憶装置
11 処理回路
12 メモリ
13 通信IF
100 医用画像処理システム
111 取得機能
112 変位量算出機能
113 回転量算出機能
114 対応付け機能
115 推定機能
116 表示制御機能
117 システム制御機能
200,210,220,230,240,250,260,270,710,720,750 透視画像
300 挿入デバイス
310 基部
320 先端部
410 軸
420 先端
430 曲率円
500 テーブル
610,620,640,650,660 グラフ
611,621,651 曲線
635A,635B 区間
641,661 直線
800 表示画面
810 ガイドワイヤ
820 三次元モデル
830 カテーテル
850,851,852 血管
860 分岐点
910,920,950,960 レンダリング画像
925,965 矢印