IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
  • 特開-自律神経変動方法、及び装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173407
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自律神経変動方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/02 20060101AFI20241205BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
A61N5/02
A61P25/00
A61K41/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091808
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】今村 周平
(72)【発明者】
【氏名】東條 も絵
【テーマコード(参考)】
4C082
4C084
【Fターム(参考)】
4C082MA04
4C082MC03
4C082MG01
4C082MG10
4C082MJ10
4C084AA11
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA241
4C084ZA242
4C084ZA271
4C084ZA272
(57)【要約】
【課題】特定の周波数のテラヘルツ波を照射する自律神経変動方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る自律神経変動方法の一態様は、対象に、150GHz以上205GHzの周波数のテラヘルツ波を照射する照射工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する照射工程を含むことを特徴とする自律神経変動方法。
【請求項2】
前記自律神経変動が、副交感神経活性化である、請求項1に記載の自律神経変動方法。
【請求項3】
前記照射工程において、100μW以下の出力で前記テラヘルツ波を照射する、請求項1に記載の自律神経変動方法。
【請求項4】
前記照射工程において、前記テラヘルツ波を1分間以上30分間以下照射する、請求項1に記載の自律神経変動方法。
【請求項5】
前記対象の自律神経変動を検出する検出工程を更に含む、請求項1に記載の自律神経変動方法。
【請求項6】
前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する制御工程を更に含む、請求項5に記載の自律神経変動方法。
【請求項7】
対象に、150GHz以上205GHzの周波数のテラヘルツ波を照射する照射部、及び前記対象の自律神経変動を検出する検出部を備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する制御部を更に備える、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律神経変動方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
100GHzから100THz程度の周波数を有するテラヘルツ波は、電波と光の特徴を併せ持つことが知られており、近年注目されている。
【0003】
テラヘルツ波を照射するための装置として、ケイ素からなるテラヘルツ鉱石やケイ酸塩鉱物である、テラヘルツ波放出成分を粘土に混錬して焼結してなる電磁波放出体を含む身体装着具(特許文献1)、テラヘルツ周波数振動で遠赤外線を放出するエネルギー放出プレートを有する治療装置(特許文献2)、及びテラヘルツ波を放出するテラヘルツ層を有する数珠(特許文献3)などが知られている。
【0004】
また、非特許文献1には、実験動物にテラヘルツ波を照射する場合は、照射するテラヘルツ波の周波数に依存して様々な行動が観察されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-137420号公報
【特許文献2】特開2019-528979号公報
【特許文献3】実用新案登録第3225003号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】iScience 2021 24:103548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1から3に記載されている装置において、テラヘルツ波放出成分が放出するテラヘルツ波の周波数は特定されておらず、特定の周波数のテラヘルツ波による自律神経変動方法は提供されていない。
【0008】
また、非特許文献1においても、特定の周波数のテラヘルツ波による自律神経変動方法は記載されていない。
【0009】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、特定の周波数のテラヘルツ波を照射する自律神経変動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する照射工程を含むことを特徴とする自律神経変動方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、特定の周波数のテラヘルツ波を照射する自律神経変動方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係る装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき詳説するが、本発明は、下記の実施形態及び実施例に限定されることはない。
【0014】
(自律神経変動方法)
一実施形態に係る自律神経変動方法は、照射工程を含み、更に、その他の工程を含むことができる。
【0015】
前記自律神経変動としては、交感神経活性化又は副交感神経活性化が挙げられるが、副交感神経活性化が好ましい。
【0016】
<照射工程>
前記照射工程は、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する工程である。
【0017】
前記対象としては、自律神経を有する生物であれば特に限定されず、脊椎動物などが挙げられる。
【0018】
前記脊椎動物としては、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、魚類などが挙げられるが、これらの中でもヒトを含む哺乳類が好ましく、ヒトがより好ましい。
【0019】
前記テラヘルツ波の周波数としては、150GHz以上205GHz以下であれば特に限定されないが、自律神経を効率的に変動させる点から、155GHz以上200GHz以下が好ましく、170GHz以上185GHz以下がより好ましく、176GHzが更に好ましい。
【0020】
前記テラヘルツ波の出力としては、特に限定されないが、自律神経を効率的に変動させる点から、100μW以下が好ましく、50μW以下がより好ましく、25μW以下が更に好ましく、12.5μW以下が特に好ましく、10μW以下が最も好ましい。
【0021】
前記テラヘルツ波を照射する時間としては、特に限定されないが、自律神経を効率的に変動させる点から、1分間以上30分間以下が好ましく、1分間以上20分間以下がより好ましく、1分間以上15分間以下が更に好ましく、1分間以上10分間以下が特に好ましく、1分間以上5分間以下が最も好ましい。
【0022】
前記テラヘルツ波の光源(発振源)としては、特に限定されないが、自律神経を効率的に変動させる点から、ジャイロトロン、後進波管、遠赤外線レーザー、量子カスケードレーザー、自由電子レーザー、シンクロトロン放射、フォトミキシングソース、タンネット/ガン・ダイオード、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)/高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ジョセフソン素子、窒化ガリウム半導体素子、共鳴トンネルダイオード、有機非線形光学結晶(DAST:4-N,N-Dimethylamino-4'-N'-methylstilbazolium tosylate)、シングルサイクルソースから選択されるいずれかがより好ましく、フォトミキシングソースが更に好ましい。前記テラヘルツ波の光源(発振源)は、自律神経を効率的に変動させる点から、鉱石を含まないものが好ましく、鉱石のみからなるものは好ましくない。
【0023】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、例えば、検出工程、制御工程などが挙げられる。
【0024】
<<検出工程>>
前記検出工程は、前記対象の自律神経変動を検出する工程である。
【0025】
前記検出工程は、前記照射工程を行う前の対象、及び前記照射工程の後の対象に対して行うことが、自律神経の変動を検出できる点で好ましいが、前記照射工程後にのみ行ってもよい。
【0026】
前記自律神経変動の検出方法としては、特に限定されないが、心電計を用いた方法が好ましい。前記心電計を用いて、呼吸数、心拍数、RR間隔、VLF(超低周波)、LF(低周波)、HF(高周波)、LF/HF、トータルパワー(TP)、RMSSDなどを計測して自律神経変動を算出することができる。変換及び解析はKubios HRV Premium(Kubios社製)を使用して実施することができる。
【0027】
ここで、RR間隔とは、QRS波から次のQRS波までの間隔であり、心室興奮から次の心室興奮までの時間を意味する。
【0028】
VLF(Very Low Frequency)とは、0.0033Hz~0.04Hzの周波数帯のパワースペクトルである。一般的に、このVLFは交感神経機能の非常にゆっくりとしたメカニズムの全体的活動を示すものとして知られている。
【0029】
LF(Low Frequency)とは、0.05Hz~0.15Hzの、低周波帯のパワースペクトルである。LFは、血圧変化に基づく交感神経と副交感神経の両方の活動を反映している。LFは、リラックスした状態でゆっくりと規則正しい呼吸をしている時に高くなる。これは副交感神経の活性化を意味する。
【0030】
HF(Hi Frequency)とは、0.15Hz~0.4Hzの周波帯のパワースペクトルである。HFは、副交感神経の活動を反映しており、呼吸によるRR間隔の変動を示す。ゆっくりとした規則正しい呼吸は、パワースペクトルのHFピークの振幅を増大させる。
【0031】
トータルパワー(TP)とは、5分間の測定における周波数0Hz~0.4Hz(即ち、VLF、LF、及びHF)のパワースペクトルの合計である。TPは、自律神経系活動全体を反映している。
【0032】
LF/HFとは、HFと、LFとの比率である。したがって、LF/HFは交感神経と副交感神経の全体のバランスを表し、交感神経が活性化されたときは、LF/HFが増加し、副交感神経が活性化されたときは、LF/HFが減少する。
【0033】
RMSSDとは、連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根であり、副交感神経の活動の指標である。副交感神経が活性化されたときは、RMSSDが増大する。
【0034】
<<制御工程>>
前記制御工程は、前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する工程である。前記制御工程は、前記照射工程後の対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する。
【0035】
前記テラヘルツ波の照射を制御する方法としては、特に限定されないが、自動計算機を用いた方法が好ましい。具体的には、前記制御工程は、前記自動計算機を用いて、自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波を照射する周波数の調整、前記テラヘルツ波を照射する出力の調整、前記テラヘルツ波を照射する照射時間の調整、前記テラヘルツ波の照射を停止する時間の調整などを行うことができる。
【0036】
前記自律神経変動方法を実行する方法としては、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する照射工程を実行することができれば、特に制限はないが、後述する本実施形態の装置により好適に実行することができる。
【0037】
(装置)
一実施形態に係る装置は、照射部及び検出部を備え、更に、その他の部を備えることができる。前記装置は、本実施形態の自律神経変動方法を好適に実行することができる。
【0038】
前記自律神経変動としては、交感神経活性化又は副交感神経活性化が挙げられるが、副交感神経活性化が好ましい。
【0039】
前記装置は、自律神経変動用テラヘルツ照射装置や副交感神経活性化用テラヘルツ照射装置であってもよい。
【0040】
<照射部>
前記照射部は、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する部である。前記照射部は、一実施形態に係る自律神経変動方法の前記照射工程を好適に実行することができる。
【0041】
前記対象、前記テラヘルツ波の周波数、前記テラヘルツ波の出力、前記テラヘルツ波を照射する時間、前記テラヘルツ波の光源(発振源)は、上述の<照射工程>に記載したとおりである。
【0042】
<検出部>
前記検出部は、前記対象の自律神経変動を検出する部である。前記検出部は、一実施形態に係る自律神経変動方法の前記検出工程を好適に実行することができる。前記検出部は、前記照射工程後の対象の自律神経変動を検出する部である。
【0043】
前記自律神経変動を検出する検出部としては、特に限定されないが、心電計を有するものが好ましい。前記心電計を用いて、呼吸数、心拍数、RR間隔、VLF(超低周波)、LF(低周波)、HF(高周波)、LF/HF、トータルパワー(TP)、RMSSDなどを計測して自律神経変動を算出することができる。これらのパラメータについては、前記<自律神経変動方法>の項目に記載の通りである。変換及び解析はKubios HRV Premium(Kubios社製)を使用して実施することができる。
【0044】
<その他の部>
前記その他の部としては、特に制限はなく、例えば、制御部などが挙げられる。
【0045】
<<制御部>>
前記制御部は、前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する部である。前記制御部は、一実施形態に係る自律神経変動方法の前記制御工程を好適に実行することができる。前記制御部は、前記照射工程後の対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する制御部である。
【0046】
前記制御部としては、特に限定されないが、コンピュータ(電子計算機)を有するものが好ましい。前記コンピュータを用いて、前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波を照射する際の周波数の調整、前記テラヘルツ波を照射する出力の調整、前記テラヘルツ波を照射する時間の調整、前記テラヘルツ波照射を停止する時間の調整などを実行する。
【0047】
図1に、本発明の一態様に係る装置の概略図を示す。装置(2)は、照射部(3)、検出部(4)、及び制御部(5)を備えており、照射部(3)、検出部(4)、及び制御部(5)は、それぞれ電気的に接続されている。照射部(3)によりテラヘルツ波(T)が対象(1)に照射されると、対象の自律神経変動が検出部(4)により検出される。検出された、対象の自律神経変動に応じて、制御部(5)により、テラヘルツ波(T)の照射が調整される。
【0048】
<用途>
一実施形態に係る自律神経変動方法及び一実施形態に係る装置は、自律神経を変動させることにより、特に、副交感神経を活性化(副交感神経の状態(活動)を制御)させることにより、アセチルコリンの分泌を促進させる。アセチルコリンは、コリン作動性受容体に結合する。このコリン作動性受容体には、M、M、及びMのサブタイプを有するムスカリン受容体(M)と、N及びNのサブタイプを有するニコチン受容体(N)がある。アセチルコリンがこれらの受容体に結合した場合、以下のような作用が知られている。例えば、アセチルコリンがムスカリン受容体Mに結合すると、中枢や神経節の脱分極が起こる。アセチルコリンがムスカリン受容体Mに結合すると、心拍数の減少、心筋収縮力の低下などが起こる。アセチルコリンがムスカリン受容体Mに結合すると、気管支の収縮、胃腸管の収縮、外分泌の促進、血管の弛緩などが起こる。アセチルコリンがニコチン受容体Nに結合すると、筋骨格の収縮が起こる。アセチルコリンがニコチン受容体Nに結合すると、興奮の伝導促進が起こる。
【0049】
したがって、一実施形態に係る自律神経変動方法及び一実施形態に係る装置は、対象をリラックスさせる方法などに対して有用であり、効率よく自律神経を切り替えることにより、自律神経のバランスを整える方法としても有用である。また、良質な睡眠のためには、副交感神経の活性化が重要であり、一実施形態に係る自律神経変動方法及び一実施形態に係る装置は、睡眠改善方法及び睡眠改善用装置としても有用である。また、一実施形態に係る前記自律神経変動方法は、美容方法としても有用である。
【実施例0050】
以下に、試験例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの試験例により限定されるものではない。
【0051】
(試験例1)
対象1名におけるテラヘルツ波の自律神経への影響について、以下の方法で試験した。
【0052】
<装置>
照射部(テラヘルツ照射機器)として、UTC-PD(NTT Electronics社製、UTCフォトミキサモジュール)を使用した。前記UTC-PDは、10μW以下の出力でテラヘルツ波を照射する装置であるため、前記UTC-PDによるテラヘルツ波の照射において、熱の影響はほぼ排除して考えることができる。
【0053】
検出部(自律神経測定機器)として、ポータブル心電計(eMotion Faros 360、Mega Electronics/Bittium社製、Finland)を使用し、電極は右側胸骨柄に負極、左側第十肋骨に陽極、左側胸骨柄にアースを装着した。ゲル電極(ブルーセンサー SP-00-S/50、株式会社メッツ製)を使用して装着した。
【0054】
<自律神経変動の算出方法>
心拍数及びRR間隔を計測し、得られたRR間隔から自律神経変動を求めた。変換及び解析はKubios HRV Premium(Kubios)を使用して実施した。
【0055】
<試験環境>
23℃~26℃の温度調整のされた部屋で実施した。部屋には騒音が入らない様、静かな環境下で実施した。
【0056】
<試験条件>
対象としての28歳の男性1名について、以下の方法で試験を行った。
自律神経への影響を除去するために、対象は、試験前日から飲酒を禁止し、試験当日は、緑茶、コーヒー等のカフェイン含有飲料の摂取、ヘアフレグランス、香水等のフレグランス製品の使用、及び激しい運動を禁止し、試験2時間前から絶食し(水の摂取は除く)、試験は自律神経の変動が緩やかな12:00~16:30の間に実施した。
【0057】
<準備>
対象に、ポータブル心電計(eMotion Faros 360、Mega Electronics/Bittium社製、Finland)を装着した。前記ポータブル心電計を起動し、その後、対象をベッド上にて仰臥位とし、閉眼安静状態にした。この時、前記対象の頭頂部がUTC-PD(NTT Electronics社製)のテラヘルツ発射口から30cmほどの距離になるように調整した。
【0058】
<照射>
-周波数156GHzのテラヘルツ波の照射-
前記対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数156GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)及びRMSSDを測定した。
【0059】
-周波数175GHzのテラヘルツ波の照射-
前記周波数156GHzのテラヘルツ波の照射の同じ対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数175GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)及びRMSSDを測定した。
【0060】
-周波数200GHzのテラヘルツ波の照射-
前記周波数156GHzのテラヘルツ波の照射の同じ対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数200GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)及びRMSSDを測定した。
【0061】
<結果>
各周波数におけるテラヘルツ波照射前後の対象のトータルパワー(TP)の自然対数(Ln(TP)を算出した結果を下記表1に示した。また、各周波数におけるテラヘルツ波照射前後の対象のRMSSDの結果を下記表2に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1の結果より、対象にテラヘルツ波を照射することにより、自律神経が変動することが分かった。また、表2の結果より、対象に、テラヘルツ波を照射することにより、自律神経の中でも、副交感神経が活性化されることが分かった。
【0065】
(試験例2)
次に、対象の人数を11名に増やし、テラヘルツ波の自律神経への影響について、以下の方法でより詳細に試験した。
【0066】
試験例2では、試験例1において、対象を20歳~45歳の男性5名及び女性11名に変更し、照射を以下の方法に変更したこと以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
【0067】
<照射>
-周波数176GHzのテラヘルツ波の照射-
各対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数176GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)、RMSSD、及び交感神経成分(LF/HF)を測定した。
【0068】
-周波数214GHzのテラヘルツ波の照射-
各対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数214GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)、RMSSD、及び交感神経成分(LF/HF)を測定した。
【0069】
-周波数500GHzのテラヘルツ波の照射-
各対象を閉眼安静状態にし、約5分間後に時間の記録を開始した。更に、5分間閉眼安静状態にして、その後、周波数500GHzのテラヘルツ波を、出力10μW以下で5分間照射した。更に、5分間閉眼安静状態にした。閉眼安静状態と照射の切り替えの時刻を記録した。照射のタイミングは、対象には伝えなかった。最後の安静の終了後、対象に声をかけて、試験を終了した。この際、照射前の5分間の閉眼安静時と、その後の5分間のテラヘルツ波の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)、RMSSD、及び交感神経成分(LF/HF)を測定した。
【0070】
<解析>
試験例2において、統計解析はR Core Team (2020). (R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL https://www.R-project.org/.)を用いて実施した。照射前の5分間の閉眼安静時と5分間の照射時の自律神経のトータルパワー(TP)値の自然対数(Ln(TP))の平均値、RMSSDの平均値、及びLF/HFの平均値を算出し、ウィルコクソンの符号検定を実施し有意差検定(p<0.05)を行った。Ln(TP)の平均値の結果を下記表3に示し、RMSSDの平均値の結果を下記表4に示し、LF/HFの平均値の結果を下記表5に示した。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
表1及び表3の結果より、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射することにより、自律神経が有意に変動することが分かった。また、表2、表4、及び表5の結果より、対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射することにより、自律神経の中でも、副交感神経が活性化されることが分かった。
【0075】
以上、本発明を具体的な実施形態及び実施例に基づいて説明したが、これらの実施形態及び実施例は例として提示したものにすぎず、本発明は上記実施形態及び実施例によって限定されるものではない。本発明の開示の範囲内において、様々な変更、修正、置換、削除、付加、及び組合せ等が可能である。
【0076】
本発明の実施形態としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 対象に、150GHz以上205GHz以下の周波数のテラヘルツ波を照射する照射工程を含む、自律神経変動方法である。
<2> 前記自律神経変動が、副交感神経活性化である、前記<1>に記載の自律神経変動方法である。
<3> 前記照射工程において、100μW以下の前記出力でテラヘルツ波を照射する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の自律神経変動方法である。
<4> 前記照射工程において、前記テラヘルツ波を1分間以上30分間以下照射する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の自律神経変動方法である。
<5> 前記対象の自律神経変動を検出する検出工程を更に含む、前記<1>に記載の自律神経変動方法である。
<6> 前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する制御工程を更に含む、前記<5>に記載の自律神経変動方法である。
<7> 対象に、150GHz以上205GHzの周波数のテラヘルツ波を照射する照射部、及び前記対象の自律神経変動を検出する検出部を備えることを特徴とする装置である。
<8> 前記対象の自律神経変動に応じて、前記テラヘルツ波の照射を制御する制御部を更に備える、前記<7>に記載の装置である。
【符号の説明】
【0077】
1 対象
2 装置
3 照射部
4 検出部
5 制御部
T テラヘルツ波
図1