(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173408
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料及び固形粉末化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20241205BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20241205BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241205BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/89
A61Q1/00
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091810
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】坂田 裕香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB11
4C083BB21
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC11
4C083CC14
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】先端が細い塗布具であっても付き量が調整しやすく、ムラ付きしにくく、自然な仕上がりを得ることができ、化粧もちも十分な固形粉末化粧料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】固形粉末化粧料は、油性成分及び粉体成分を含有し、油性成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、5~30質量%であり、粉体成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、70~95質量%であり、油性成分が、(A)モクロウ及び(B)25℃での粘度が5~1000mPa・sである不揮発性シリコーン油を含有し、油性成分における25℃で液状である液状油の含有割合が60質量%以上であり、液状油における25℃での粘度が1000mPa・sを超える高粘度液状油の含有割合が30質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分及び粉体成分を含有する固形粉末化粧料であって、
前記油性成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、5~30質量%であり、
前記粉体成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、70~95質量%であり、
前記油性成分が、(A)モクロウ及び(B)25℃での粘度が5~1000mPa・sである不揮発性シリコーン油を含有し、
前記油性成分における25℃で液状である液状油の含有割合が60質量%以上であり、
前記液状油における25℃での粘度が1000mPa・sを超える高粘度液状油の含有割合が30質量%以下である、固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、0.1~5質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、3~20質量%である、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記液状油における前記(B)成分の含有割合が25質量%以上である、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比[(A)成分]/[(B)成分]が、0.01~0.6である、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記粉体成分が、(C)金属石鹸処理粉体を含有する、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
前記粉体成分における前記(C)成分の含有割合が10質量%以上である、請求項5に記載の固形粉末化粧料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料を製造する方法であって、
前記油性成分及び前記粉体成分を含有する化粧料基材と、揮発性溶媒と、を含有するスラリーを調製する工程と、
容器に充填された前記スラリーを圧縮及び乾燥することにより成型する工程と、
を備える、固形粉末化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料及び固形粉末化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、チーク、アイシャドウ、ファンデーション、パウダーアイブロウ、ノーズシャドウ等のメイクアップ化粧料として利用されている。固形粉末化粧料は色材などの粉体成分と、粉体を結合するための固形油や液状油等の油性成分とを含んで構成されており、金皿などの容器内に圧縮成型された形態のものが一般的である(例えば、下記特許文献1を参照)。固形粉末化粧料の利用者は、化粧部位に適した形状の塗布具を用いて化粧料を肌や眉などに転移させることで化粧効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固形粉末化粧料は着色等の化粧効果を高めるために色材などの粉体が高配合されている。しかし、化粧料における粉体成分の割合が高いと粉体が肌などから脱落しやすくなり化粧もちが悪くなる傾向にある。また、化粧料の伸び広がりが悪くなることで、ムラ付きしやすくなる。
【0005】
化粧料の化粧もちを高める方法として密着性を付与できる油性成分を配合することが考えられるが、この場合、化粧料のベタつきが強くなることによって、濃く付きすぎる、或いはアイブロウなどのアイテムでは眉毛が寝やすくなる(ふんわりしなくなる)など、自然な仕上がりが得られにくくなる。また、化粧料の密着性が強くなりすぎると、塗布具へのとれが悪化する傾向にある。特にアイシャドウ、パウダーアイブロウ、及びノーズシャドウ等のアイテムでは、化粧料を狭い範囲に塗布するためにアイブロウブラシやアイシャドウチップ等の先端が細い塗布具を用いることが多く、塗布具への付き量を調整することがさらに難しくなることに加えて、ムラ付きも発生しやすくなる。
【0006】
上記特許文献1に記載の化粧料は、塗布具へのとれ、肌に塗布したときのほぐれやすさ及び付着性の検討がなされているが、上述した問題をすべて解消し得るものではない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、先端が細い塗布具であっても付き量が調整しやすく、ムラ付きしにくく、自然な仕上がりを得ることができ、化粧もちも十分な固形粉末化粧料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、油性成分及び粉体成分を特定量含有する固形粉末化粧料において、油性成分として特定の固形油と特定の粘度を有する不揮発性シリコーン油とを併用し、油性成分における液状油の含有割合及び液状油における高粘度液状油の含有割合を調整することにより、ブラシへの付き量が調整しやすく、ムラ付きを抑制することができ、自然な仕上がりで化粧もちがよい化粧効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[6]の固形粉末化粧料を提供する。
【0010】
[1] 油性成分及び粉体成分を含有する固形粉末化粧料であって、前記油性成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、5~30質量%であり、前記粉体成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、70~95質量%であり、前記油性成分が、(A)モクロウ及び(B)25℃での粘度が5~1000mPa・sである不揮発性シリコーン油を含有し、前記油性成分における25℃で液状である液状油の含有割合が60質量%以上であり、前記液状油における25℃での粘度が1000mPa・sを超える高粘度液状油の含有割合が30質量%以下である、固形粉末化粧料。
[2] 前記(A)成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、0.1~5質量%であり、前記(B)成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、3~20質量%である、[1]に記載の固形粉末化粧料。
[3] 前記液状油における前記(B)成分の含有割合が25質量%以上である、[1]又は[2]に記載の固形粉末化粧料。
[4] 前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比[(A)成分]/[(B)成分]が、0.01~0.6である、[1]~[3]のいずれかに記載の固形粉末化粧料。
[5] 前記粉体成分が、(C)金属石鹸処理粉体を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の固形粉末化粧料。
[6] 前記粉体成分における前記(C)成分の含有割合が10質量%以上である、[5]に記載の固形粉末化粧料。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料を製造する方法であって、前記油性成分及び前記粉体成分を含有する化粧料基材と、揮発性溶媒と、を含有するスラリーを調製する工程と、容器に充填された前記スラリーを圧縮及び乾燥することにより成型する工程と、を備える、固形粉末化粧料の製造方法。
【0011】
上記[1]に係る固形粉末化粧料は、上記構成を有することにより、先端が細い塗布具であっても付き量が調整しやすく、ムラ付きしにくく、自然な仕上がりを得ることができ、化粧もちも十分なものになり得る。このような効果が奏される理由としては、粉体成分が高配合された化粧料において、(i)油性成分における液状油の含有割合を上記範囲に高めるとともに液状油における高粘度液状油の含有割合を上記範囲に制限することで、化粧料の密着性が強くなりすぎることによって生じる不具合(例えば、塗布具への付き量の調整が難しくなること、自然な仕上がりが得られにくくなること、ムラ付きしやすくなることなど)を抑制できたことに加えて、(ii)モクロウと上記の粘度を有する不揮発性シリコーン油とを併用することで、上記の不具合が発生することを避けつつ化粧料の伸び広がりや化粧もちを十分確保することができたためと考えられる。
【0012】
ところで、湿式製法により得られる固形粉末化粧料は、塗布時ののびのよさや密着性などの使用感に優れる傾向にあるが、成型された化粧料の表面の明度が高くなり、結果として白みを帯びてしまい、外観上の色からは塗布色が購買者に伝わりにくく、使用時においては未使用部分の表面色と使用部分の表面色との色差が大きくなることがあった。これに対し、上記[1]に係る固形粉末化粧料は、湿式製法により製造される場合であっても、プレス表面が白みを帯びること(白っぽく見えること)が十分抑制された成型体にすることができる。また、当該成型体においては未使用部分の表面色と使用部分の表面色との色差を十分小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、先端が細い塗布具であっても付き量が調整しやすく、ムラ付きしにくく、自然な仕上がりを得ることができ、化粧もちも十分な固形粉末化粧料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[固形粉末化粧料]
本実施形態の固形粉末化粧料は油性成分及び粉体成分を含有する。
【0015】
本実施形態の固形粉末化粧料は、油性成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、5~30質量%であり、粉体成分の含有量が、固形粉末化粧料全量を基準として、70~95質量%であり、油性成分における25℃で液状である液状油の含有割合が60質量%以上(すなわち、液状油の含有量が油性成分全量を基準として60質量%以上であり)であり、液状油における25℃での粘度が1000mPa・sを超える高粘度液状油の含有割合が30質量%以下(すなわち、高粘度液状油の含有量が液状油全量を基準として30質量%以下)である。
【0016】
なお、本明細書において、液状油とは、25℃において液状の油を指す。また、液状油の25℃における粘度は、25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)又はブルックフィールド型粘度計(BH型)を用いて、下記の条件で測定した値を意味する。
5~50mPa・s:BM型、BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:BM型、ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:BM型、ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:BM型、ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:BM型、ローターNo.4、回転数12rpm
50000mPa・s超:BH型、ローターNo.7、回転数10rpm
【0017】
<油性成分>
本実施形態において、油性成分は、(A)モクロウ((A)成分という場合もある)と、(B)25℃での粘度が50~1000mPa・sである不揮発性シリコーン油((B)成分という場合もある)とを含む。
【0018】
(A)成分としては、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、天然モクロウ、合成モクロウ等が挙げられる。
【0019】
(A)成分の融点は、付き量の調整のしやすさと、化粧もちの観点から、40℃~60℃であってもよく、50℃~55℃であってもよい。なお、本明細書において固形油の融点は以下の方法によって測定される値を意味する。
【0020】
(融点の測定方法)
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れる。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置する。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~35mL/minのもと、試料及び基準試料を-10℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から-10℃まで降温させ、-10℃で5分間保持した後に再び昇温速度10℃/minで-10℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得る。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とする。なお、ピーク温度が複数ある場合、融解温度が最も高いピーク温度を融点とする。
【0021】
(A)成分は、モクロウ-100(株式会社セラリカ野田)、VISCOSITY WAX C-1 (横関油脂工業株式会社)VISCOSITY WAX U-1(横関油脂工業株式会社)等の市販品を用いてもよい。
【0022】
(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本実施形態の固形粉末化粧料における(A)成分の含有量は、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、固形粉末化粧料全量を基準として、0.1~5質量%であってもよく、0.2~4質量%であってもよく、0.4~3質量%であってもよく、0.5~2.5質量%であってもよく、0.7~2質量%であってもよく、1~1.5質量%であってもよく、0.3~2質量%であってもよく、0.5~1.5質量%であってもよく、1.2~1.5質量%であってもよい。
【0024】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、油性成分全量に対する(A)成分の質量比[(A)成分]/[油性成分]は、0.01~0.35であってもよく、0.02~0.25であってもよく、0.03~0.2であってもよく、0.05~0.15であってもよい。
【0025】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、化粧料に含まれる固形油の総質量((A)成分も含む)に対する(A)成分の質量比[(A)成分]/[固形油]は、0.4~1であってもよく、0.5~1であってもよく、0.9~1であってもよく、0.95~1であってもよい。
【0026】
なお、本明細書において、固形油とは、40℃で傾けた際に流動しない油を指す。
【0027】
(B)25℃での粘度が5~1000mPa・sである不揮発性シリコーン油としては、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0028】
(B)成分としては、例えば、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルメトキシポリシロキサン等が挙げられる。これらのうち、仕上がりの自然さ、ムラ付きのしにくさの観点から、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン等の側鎖にメチル基又はフェニル基を有するシリコーン油を用いてもよい。
【0029】
(B)成分は、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、25℃における粘度が5~1000mPa・sであってもよく、10~800mPa・sであってもよく、20~500mPa・sであってもよく、50~500mPa・sであってもよく、80~400mPa・sであってもよい。また、(B)成分が上記の粘度を有している場合、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0030】
(B)成分は、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくする観点から、IOB値が0.5以下であってもよく、0.3以下であってもよく、0であってもよい。
【0031】
なお、本明細書において、IOB値とは有機概念図に基づき求められる無機性値及び有機性値の比を表わすものとして周知のものであり、油性基剤の極性の度合いを表し、下記の式(I)で表される。
IOB=無機性値(IV)/有機性値(OV) …(I)
具体的には、「有機化合物の予測と有機概念図」、藤田(化学の領域11-10)、1957年、p.719~725、「有機概念図による乳化処方設計」日本エマルジョン株式会社、矢口、1985年、p.98に従って、上記(I)式によりIOBを求めることができる。
【0032】
(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本実施形態の固形粉末化粧料における(B)成分の含有量は、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、固形粉末化粧料全量を基準として、3~20質量%であってもよく、3.5~16質量%であってもよく、5~15質量%であってもよく、6.5~12質量%であってもよく、8~12質量%であってもよく、10~12質量%であってもよい。また、(B)成分の含有量が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0034】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、油性成分全量に対する(B)成分の質量比[(B)成分]/[油性成分]は、0.2~0.95であってもよく、0.27~0.87であってもよく、0.4~0.87であってもよく、0.5~0.85であってもよく、0.7~0.85であってもよく、0.7~0.81であってもよく、0.75~0.85であってもよい。また、質量比[(B)成分]/[油性成分]が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0035】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、化粧料に含まれる液状油の総質量((B)成分も含む)に対する(B)成分の質量比[(B)成分]/[液状油]は、0.25以上(すなわち、液状油における(B)成分の含有割合が25質量%以上)であってもよく、0.25~1であってもよく、0.3~1であってもよく、0.5~0.95であってもよく0.65~0.9であってもよく、0.75~0.95であってもよく、0.85~0.95であってもよい。また、質量比[(B)成分]/[液状油]が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0036】
本実施形態の固形粉末化粧料における(A)成分及び(B)成分の総含有量は、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、固形粉末化粧料全量を基準として、3~25質量%であってもよく、4~20質量%であってもよく、4.5~18質量%であってもよく、7~15質量%であってもよく、8~13.5質量%であってもよく、10.5~13.5質量%であってもよく、11.5~13.5質量%であってもよく、9.5~12.5質量%であってもよく、10.5~11.5質量%であってもよい。また、(A)成分及び(B)成分の総含有量が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0037】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、油性成分全量に対する(A)成分及び(B)成分の総含有量の質量比[(A)成分+(B)成分]/[油性成分]が、0.3~1であってもよく、0.38~1であってもよく、0.5~1であってもよく、0.62~0.92であってもよく、0.8~0.92であってもよく、0.88~0.92であってもよく、0.8~0.95であってもよく、0.84~0.92であってもよく、0.88~0.92であってもよい。また、質量比[(A)成分+(B)成分]/[油性成分]が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0038】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、(B)成分に対する(A)成分の質量比[(A)成分]/[(B)成分]が、0.01~0.6であってもよく、0.02~0.53であってもよく、0.03~0.35であってもよく、0.05~0.28であってもよく、0.07~0.2であってもよく、0.1~0.15であってもよく、0.03~0.2であってもよく、0.05~0.15であってもよく、0.12~0.15であってもよい。また、質量比[(A)成分]/[(B)成分]が上記の範囲であると、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくすることが容易となる。
【0039】
本実施形態の固形粉末化粧料は(A)成分及び(B)成分以外の油性成分を含んでいてもよい。(A)成分及び(B)成分以外の油性成分としては、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、固形油、半固形油、液体油を用いることができる。
【0040】
固形油としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン等の炭化水素類、硬化ヒマシ油(水添ヒマシ油)、水添ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キャンデリラロウ炭化水素、ヒマワリ種子ロウ、ライスワックス等の植物由来油脂、トリベヘン酸グリセリル等のエステル類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、アクリル変性シリコーン等のシリコーン類、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0041】
本実施形態の固形粉末化粧料が(A)成分以外の固形油を含む場合、付き量の調整や落下強度の観点から、(A)成分以外の固形油はキャンデリラロウ、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ及びライスワックスのうちの1種又は2種以上であってもよい。
【0042】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、油性成分における固形油((A)成分も含む)の含有割合は、1~35質量%であってもよく、2~31質量%であってもよく、2~25質量%であってもよく、4~19質量%であってもよく、6~15質量%であってもよく、8~12質量%であってもよく2~15質量%であってもよく、4~12質量%であってもよく、10~12質量%であってもよい。
【0043】
本明細書において、半固形油とは、25℃においてペースト状の油を指す。半固形油としては、例えば、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(オレイン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)スクロース、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、シア脂等が挙げられる。
【0044】
本実施形態の固形粉末化粧料において、仕上がりの自然さ、付き量の調整の観点から、固形粉末化粧料全量を基準として半固形油の含有割合は、3質量%以下であってもよく、1.5質量%以下であってもよく、半固形油が含まれていなくてもよい。
【0045】
液状油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油;オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;(B)成分以外のシリコーン油;ヒマワリ種子油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヒマシ油等の植物油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の固形粉末化粧料において、油性成分における液状油((B)成分も含む)の含有割合は60質量%以上であるが、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、60~100質量%であってもよく、75~100質量%であってもよく、80~95質量%であってもよく、85~90質量%であってもよい。
【0047】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、油性成分全量に対する固形油((A)成分も含む)と液状油((B)成分も含む)の合計の質量比[固形油+液状油]/[油性成分]は、0.8~1であってもよく、0.9~1であってもよく、0.95~1であってもよい。
【0048】
本実施形態の固形粉末化粧料において、液状油における25℃での粘度が1000mPa・sを超える高粘度液状油の含有割合は30質量%以下であるが、仕上がりの自然さ、付き量の調整の観点から、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0049】
本実施形態の固形粉末化粧料において、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、液状油における25℃での粘度が50~1000mPa・sの中粘度液状油((B)成分も含む)の含有割合は、25~100質量%であってもよく、30~100質量%であってもよく、45~95質量%であってもよく、55~93質量%であってもよく、70~91質量%であってもよく、87~91質量%であってもよく、70~95質量%であってもよく、85~91質量%であってもよい。
【0050】
本実施形態の固形粉末化粧料において、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がりの観点から、液状油における25℃での粘度が50mPa・s未満の低粘度液状油の含有割合は、90質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
【0051】
本実施形態の固形粉末化粧料において、液状油におけるIOB値が0.1~0.5である高極性液状油の含有割合は、湿式製法により成型した場合に外観と中の色差を小さくする観点から、40質量%以下であってもよく、0~30質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0052】
本実施形態の固形粉末化粧料における、油性成分の含有量は、固形粉末化粧料の全量を基準として、5~30質量%であるが、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちをバランスよく向上させる観点から、5~20質量%であってもよく、10~18質量%であってもよく、10~15質量%であってもよい。
【0053】
<粉体成分>
粉体成分としては、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、体質粉体、白色顔料、着色顔料等が挙げられる。粉体の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。
【0054】
具体的には、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウムマグネシウム等の体質顔料類、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、セルロースパウダー、N-アシルリジンパウダー等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化チタン被覆ナイロン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類等が挙げられる。
【0055】
着色顔料としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムフレーク等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素等が挙げられる。
【0056】
粉体成分の平均粒子径は、1~200μmであってもよく、5~150μmであってもよい。
【0057】
粉体成分は、表面処理が施されたものであってもよい。表面処理としては、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、金属石鹸、高級脂肪酸、油脂、ロウ、シリコーン化合物、フッ素化合物、界面活性剤、デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0058】
本実施形態の固形粉末化粧料は、粉体成分として(C)金属石鹸処理粉体((C)成分という場合もある)を含有してもよい。金属石鹸処理粉体とは、金属石鹸で表面処理された粉体を意味する。
【0059】
金属石鹸としては、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。金属石鹸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(C)成分における粉体としては、上述した粉体成分を用いることができる。粉体は、体質粉体の場合、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がりの観点から、タルク、マイカ、合成マイカ、セリサイト、シリカであってもよく、着色顔料の場合、自然な仕上がりの観点から、酸化鉄、酸化チタン、群青であってもよい。粉体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
金属石鹸の処理量(金属石鹸処理粉体における金属石鹸含有量)は、金属石鹸処理粉体全量を基準として、0.1~15質量%であってもよく、0.2~10質量%であってもよい。
【0062】
(C)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0063】
本実施形態の固形粉末化粧料において、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちの観点から、粉体成分における(C)成分の含有割合は、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、35質量%以上であってもよく、成形性の観点から、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
【0064】
本実施形態の固形粉末化粧料における、粉体成分の含有量は、固形粉末化粧料の全量を基準として、70~95質量%であるが、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がりの観点から、75~95質量%であってもよく、80~92質量%であってもよく、85~90質量%であってもよい。
【0065】
本実施形態の固形粉末化粧料は、上記成分の他に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、キレート剤、消炎剤、保湿剤等を含有してもよい。
【0066】
本実施形態の固形粉末化粧料は、チーク、アイシャドウ、ファンデーション、パウダーアイブロウ、ノーズシャドウ等のメイクアップ化粧料として用いることができる。
【0067】
本実施形態の固形粉末化粧料は、塗布具を用いて肌や眉に塗布することができる。塗布具としては、筆状、チップ状、パフ状、ブラシ状のもの等が挙げられる。本実施形態の固形粉末化粧料は、先端が細い塗布具であっても付き量を調整することが容易であることから、化粧料を狭い範囲に塗布するためのブラシやチップを用いてもよい。筆及びブラシの素材としては、馬毛、バジャー、ウォーターバジャー、合成繊維等が挙げられる。チップの素材としては、ウレタン、シリコン、エラストマー等が挙げられる。肌へ接触する部分である塗布部の形状としては幅が1~10mmであってもよく、平筆状であってもよく、ブラシ状であってもよく、先端部が傾斜していてもよく、ラウンド型であってもよい。
【0068】
[固形粉末化粧料の製造方法]
次に、本実施形態の固形粉末化粧料の製造方法について説明する。
【0069】
本実施形態の固形粉末化粧料の製造方法は特に制限されず、例えば乾式製法により製造してもよく、湿式製法により製造してもよい。
【0070】
本実施形態の固形粉末化粧料を湿式製法により製造する場合、当該方法は、油性成分及び粉体成分を含有する化粧料基材と、揮発性溶媒と、を含有するスラリーを調製する工程と、容器に充填されたスラリーを圧縮及び乾燥することにより成型する工程と、を備えることができる。
【0071】
油性成分及び粉体成分としては、上述したものが挙げられ、化粧料基材における配合量も上述した固形粉末化粧料と同様にすることができる。また、化粧料基材の油性成分及び粉体成分以外の組成についても、上述した固形粉末化粧料と同様にすることができる。
【0072】
本実施形態に係る化粧料基材は、例えば、粉体成分を混合した第1の混合物を得るステップと、油性成分を混合した第2の混合物を得るステップと、第1の混合物及び第2の混合物を混合するステップとを備える方法により調製することができる。
【0073】
第1の混合物を得るステップは、例えば、スーパーミキサー又はヘンシェルミキサーなどを用いて行うことができ、必要に応じてアトマイザーなどを用いて粉砕が行われてもよい。
【0074】
第2の混合物を得るステップは、例えば、ディスパー、ホモミキサーなどを用いて行うことができ、60~80℃、好ましくは60~70℃で加熱しながら油性成分を混合することができる。
【0075】
第1の混合物及び第2の混合物を混合するステップは、例えば、スーパーミキサーやヘンシェルミキサーなどを用いて行うことができ、必要に応じてアトマイザーなどを用いて粉砕が行われてもよい。
【0076】
スラリーの調製は、上記で得られる化粧料基材に、揮発性溶媒を加え、これらを混合する方法が挙げられる。
【0077】
揮発性溶媒としては、軽質流動イソパラフィン、エチルアルコール、アセトン、イソプロピルアルコール、水等が挙げられる。
【0078】
化粧料基材と揮発性溶媒との配合割合は、質量比で化粧料基材:揮発性溶媒=100:60~100:10であってもよく、100:40~100:20であってもよい。
【0079】
化粧料基材と揮発性溶媒との混合は、例えば、ニーダー、万能撹拌機などを用いて混練する方法が挙げられる。また、必要に応じて、加熱しながら混合してもよい。
【0080】
容器に充填されたスラリーを、圧縮及び乾燥する工程では、上記で得られたスラリーを必要に応じて脱泡し、所定の容器に充填した後、これを吸引圧縮成型等で圧縮成型した後、適宜乾燥機によって乾燥してもよい。
【0081】
所定の容器としては、金皿、樹脂皿などの中皿等が挙げられる。
【0082】
上記の工程を経て、本実施形態に係る固形粉末化粧料が得られる。
【実施例0083】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、表中の数値は、化粧料基材全量(揮発性溶媒以外の成分の合計)を基準とする含有量(質量%)を示す。
【0084】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0085】
(1)官能評価
化粧品評価専門パネル10名に、実施例及び比較例の固形粉末化粧料を、塗布具としてパウダーアイブロウブラシ(馬毛、幅6mm、先端部が傾斜)又はアイシャドウチップ(ウレタンチップ、幅10mm及び長さ12mmのラウンド型のチップ)を用いて眉又は肌に塗布してもらい、塗布具への付き量の調整のしやすさ、仕上がりの自然さ、ムラ付きのしにくさ、化粧もちのよさについて、各自が以下の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の基準に従って判定した。なお、仕上がりの自然さについては、パウダーアイブロウの場合、眉毛が寝にくい(ふんわりさせやすい)という観点から評価し、アイシャドウの場合、ベタっとつきにくいという観点から評価してもらった。
[評点:評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準(評点の平均点)]
◎:4以上
○:3以上~4未満
△:2以上~3未満
×:2未満
【0086】
(2)色差
化粧用チップにて、実施例及び比較例の固形粉末化粧料表面を30回繰り返し擦り取り、使用部分の表面色と未使用部分の表面色との色差ΔE*を色彩色差計CR-400(コニカミノルタ製)を用いて測定し、以下の評価基準に従って判定した。
[評価基準]
◎:ΔE*<1.5
○:1.5≦ΔE*<2
△:2≦ΔE*<2.5
×:2.5≦ΔE*
【0087】
(実施例1~29、比較例1~6)
表1~5に示す組成のパウダーアイブロウを以下の製法により調製し、上記の評価を行った。その結果を併せて表1~5に示す。
【0088】
<製法>
油性成分を60~80℃に加温・混合し、混合物Iを得た。粉体成分をヘンシェルミキサーで均一分散し、混合物IIを得た。IIにIを加えてヘンシェルミキサーで均一分散し、化粧料基材を得た。この化粧料基材100質量部に、揮発性溶媒として軽質流動イソパラフィンを30質量部加え、混練することでスラリー化した後、中皿(金皿)に充填、圧縮成型後、乾燥により溶剤を除去することでパウダーアイブロウを作製した。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
表1~表5中、各成分の詳細は以下のとおりである。
【0095】
[油性成分]
モクロウ:モクロウ-100(株式会社セラリカ野田社製、製品名、融点:52℃)
ジメチコンA:KF-96A-100CS(信越シリコーン社製、製品名、粘度:100mPa・s、IOB=0)
ジメチコンB:KF-96-300CS(信越シリコーン社製、製品名、粘度:300mPa・s、IOB=0)
リンゴ酸ジイソステアリル:粘度1900mPa・s、IOB=0.33
スクワラン:粘度30mPa・s、IOB=0
ステアリン酸エチルヘキシル:粘度15mPa・s、IOB=0.12
パルミチン酸エチルヘキシル:粘度13mPa・s、IOB=0.13
ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール:粘度12mPa・s、IOB=0.47
【0096】
固形油の融点は、以下の測定方法にしたがって測定した。
(融点の測定方法)
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れる。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置する。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~35mL/minのもと、試料及び基準試料を-10℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から-10℃まで降温させ、-10℃で5分間保持した後に再び昇温速度10℃/minで-10℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得る。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とする。なお、ピーク温度が複数ある場合、融解温度が最も高いピーク温度を融点とする。
【0097】
液状油の粘度は、以下の測定方法にしたがって測定した。
(粘度の測定方法)
25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)又はブルックフィールド型粘度計(BH型)を用いて、下記の条件で測定した。
5~50mPa・s:BM型、BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:BM型、ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:BM型、ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:BM型、ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:BM型、ローターNo.4、回転数12rpm
50000mPa・s超:BH型、ローターNo.7、回転数10rpm
【0098】
[粉体成分]
タルクA:ステアリン酸Mg処理タルク(平均粒径:13μm、表面処理剤1質量%)
タルクB:タルク(平均粒径:25μm)
タルクC:タルク(平均粒径:13μm)
タルクD:シリコーン処理タルク(平均粒径:13μm、表面処理剤1質量%)
タルクE:フッ素処理タルク(平均粒径:13μm、表面処理剤1質量%)
マイカA:マイカ(平均粒径:25μm)
マイカB:マイカ(平均粒径:9μm)
酸化鉄A:ステアリン酸Mg処理酸化鉄(表面処理剤1質量%)
【0099】
[添加剤]
酸化防止剤:トコフェロール
防腐剤:フェノキシエタノール
【0100】
表1~5に示されるように、実施例1~29で得られる固形粉末化粧料は、全ての項目について「×」の評価がなく、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちのすべてが十分であること、並びに、外観と中の色差が十分小さいことが確認された。
【0101】
(実施例30~34)
表6に示す組成のアイシャドウを以下の製法により調製し、上記の評価を行った。その結果を併せて表6に示す。
【0102】
<製法>
油性成分を60~80℃に加温・混合し、混合物Iを得た。粉体成分をヘンシェルミキサーで均一分散し、混合物IIを得た。IIにIを加えてヘンシェルミキサーで均一分散し、化粧料基材を得た。この化粧料基材100質量部に、揮発性溶媒として軽質流動イソパラフィンを30質量部加え、混練することでスラリー化した後、中皿(金皿)に充填、圧縮成型後、乾燥により溶剤を除去することでアイシャドウを作製した。
【0103】
【0104】
上記成分の詳細は、以下に示す成分以外はすでに上述したものと同様である。
[粉体成分]
マイカC:マイカ(平均粒径:20μm)
マイカD:焼成マイカ(平均粒径:11μm)
マイカE:合成マイカ(平均粒径:12μm)
PMMA:ポリメタクリル酸メチルクロスポリマー(平均粒径:8μm)
パール剤:雲母チタン(平均粒径:21.5μm)
【0105】
表6に示されるように、実施例30~34で得られる固形粉末化粧料は、全ての項目について「×」の評価がなく、塗布具への付き量の調整しやすさ、ムラ付きのしにくさ、自然な仕上がり、及び化粧もちのすべてが十分であること、並びに、外観と中の色差が十分小さいことが確認された。