(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173417
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】炉心解析方法、炉心解析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20241205BHJP
G21C 17/032 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G21C17/00 200
G21C17/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091828
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 智明
(72)【発明者】
【氏名】加内 雅之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA05
2G075BA03
2G075CA08
2G075CA40
2G075DA03
2G075DA05
2G075FB09
2G075GA21
(57)【要約】
【課題】精度よく自然循環型原子炉の炉心解析を実行する方法を提供する。
【解決手段】炉心解析方法は、自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析方法であって、炉心解析と、炉心を出てから再び炉心に戻るまでの冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、炉心解析の解析結果に基づいて、一次系循環ループ解析を行い、一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、炉心解析を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより前記炉心を冷却する、自然循環型原子炉の炉心解析方法であって、
炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、
前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、
前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う、
炉心解析方法。
【請求項2】
前記一次系循環ループ解析では、前記炉心解析によって解析された前記冷却材のボイド流量に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、
前記炉心解析では、前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記冷却材の流量および温度に基づいて、前記炉心解析を行う、
請求項1に記載の炉心解析方法。
【請求項3】
前記一次系循環ループ解析と前記炉心解析とを、解析結果が収束するまで繰り返し実行する、
請求項1又は請求項2に記載の炉心解析方法。
【請求項4】
前記炉心解析では、前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記冷却材の流量および/または温度の変化分に緩和係数を乗じた値に基づいて、前記炉心解析を行う、
請求項3に記載の炉心解析方法。
【請求項5】
前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記冷却材の流量の変化量が所定の閾値以下となると解析結果が収束したと判定する、
請求項3に記載の炉心解析方法。
【請求項6】
炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより前記炉心を冷却する、自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析装置であって、
前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、
前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、
前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う手段、
を備える炉心解析装置。
【請求項7】
コンピュータに、
炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより前記炉心を冷却する、自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析処理であって、
前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、
前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、
前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う、
炉心解析処理、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炉心解析方法、炉心解析装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)では、一次冷却材が循環する一次系に設けられたポンプの駆動により一次冷却材を炉心に供給し、炉心を冷却する。これに対し、特許文献1等に開示された自然循環型原子炉では、炉心で沸騰したボイド状の冷却材(水蒸気)は軽量のため上昇し、水に戻した冷却材はその重みによって下降する、という性質を利用した自然な冷却材の循環により炉心の冷却を行っている。
【0003】
PWR等の炉心解析を行う場合には、炉心へ供給される一次冷却材の流量等をポンプの能力から計算することができるので、この計算値を炉心の入口における一次冷却材の条件(炉心入口冷却材条件と称する。)に設定して炉心解析を行うことができる。しかし、自然循環型原子炉の場合、ポンプによって一次冷却材が循環するのではなく、一次冷却材の密度差によって循環が生じるため、一次冷却材の流量や温度と、炉心の状態とが互いに影響を及ぼし合う。例えば、炉心を出てから炉心に戻るまでの一次冷却材の流量等は、炉心でどの程度のボイドが発生するかに依存し、炉心の状態は、一次系から供給される一次冷却材の流量等に依存する。つまり、炉心が一次冷却材に与えた影響が、一次冷却材の循環とともに巡って、後の炉心状態に反映されるような関係にある。従って、自然循環型原子炉の炉心解析を行う場合、炉心解析の結果を、炉心入口冷却材条件に反映させながら解析を行わなければ、精度の良い解析結果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炉心解析の結果を炉心入口冷却材条件に反映させる方法として、例えば、炉心解析と、炉心を出てから再び炉心に戻るまでの一次冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析とを連成させて、炉心解析を行う方法が考えられる。自然循環型原子炉の炉心解析と一次系循環ループ解析とを連成させて炉心解析を行う方法が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる炉心解析方法、炉心解析装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る炉心解析方法は、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析方法であって、炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う、炉心解析方法である。
【0008】
本開示に係る炉心解析装置は、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析装置であって、前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う手段、を備える。
【0009】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析処理であって、前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う、炉心解析処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の炉心解析方法、炉心解析装置及びプログラムによれば、自然循環型原子炉の炉心解析を精度よく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る自然循環型原子炉の一例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る炉心解析装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る炉心解析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の炉心解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本開示の自然循環型原子炉の解析方法について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る自然循環型原子炉の一例を示す概略図である。
自然循環型原子炉1は、内部に円筒状のシュラウド9を備えている。シュラウド9の内側には、一次冷却材が上昇する領域であるライザー3と炉心2が設けられ、シュラウド9の外側には冷却材が下降する領域であるダウンカマ6が設けられている。自然循環型原子炉1内の上部と下部では、シュラウド9の内側と外側が連通し、シュラウド9の内側では、ライザー3と炉心2が連通し、一次冷却材は、シュラウド9の内外を循環することができる。炉心2は、シュラウド9内のライザー3よりも下方に配置され、炉心2には燃料7と制御棒8が設けられている。ライザー3の上部には制御棒8の駆動装置5が設けられている。ダウンカマ6には、蒸気発生器6Aが設けられている。
図1の矢印は一次冷却材の流れを表している。例えば、一次冷却材は、炉心2の底部などから炉心2へ流入し、炉心2を冷却する。一次冷却材は、炉心2で加熱されて沸騰し、例えば、制御棒8が挿入されている高さ方向の位置あたりよりも上方においてボイドを含んだ状態となる。ボイドを含んだ一次冷却材は、軽量なためライザー3を上昇し、開口部3Aからダウンカマ6の蒸気発生器6Aへ流出する。蒸気発生器6Aでは、ライザー3から流入した一次冷却材が、タービン等を含む不図示の二次側設備から供給された二次冷却材と熱交換して冷却され、凝縮して液化し、下降する。二次側設備からの二次冷却材は、ダウンカマ6の下部に設けられた開口部6Bから供給され、蒸気発生器6Aにて一次冷却材との熱交換により気化し、ダウンカマ6の上部に設けられた開口部6Cから二次側設備に戻される。蒸気発生器6Aで冷却され液化した一次冷却材は、ダウンカマ6を通じて自然循環型原子炉1の下部へ導かれる。自然循環型原子炉1の下部へ導かれた一次冷却材は、シュラウド9の外側から内側へ流れ、炉心2の底部を通じて再び炉心2内へ供給される。以降、一次冷却材は、ライザー3とダウンカマ6の水頭圧の差によって、同様の自然循環を繰り返す。
【0013】
このような構成のため、どの程度の流量の一次冷却材が炉心2へ供給されるかによって、どの程度のボイドが発生するかが変化し、ボイドの発生量に応じて、自然循環型原子炉1内を循環する一次冷却材の流量や温度が変化する。例えば、ボイドが多く発生すれば、それだけ多くのボイドを含む一次冷却材が上昇するため、炉心2底部からはより多くの一次冷却材が炉心2へ流入する。反対に、ボイドの発生量が少なければ、炉心2~ライザー3に存在する一次冷却材は比較的重くなるため、その重みによって、炉心2底部からの一次冷却材の流入が阻害される。一次冷却材の流量が変われば、炉心で生じる反応も変化するため、例えば、炉心2の出力分布などにも影響する。そこで、本実施形態では、一次系(炉心2より上方のライザー3~ダウンカマ6)における一次冷却材の熱流動解析(上述した、一次系循環ループ解析)と、炉心2における炉心解析とを連成させ、
図1の矢印によって示される一次冷却材の流れに沿って、それぞれの解析結果の受け渡しを行うことで、自然循環型原子炉1の炉心解析を行う。これにより、炉心解析の結果を炉心入口冷却材条件に反映させつつ、炉心解析を行うことができるようになる。
【0014】
図2は、実施形態に係る炉心解析装置の一例を示すブロック図である。
図示するように、炉心解析装置10は、入力受付部11と、解析制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0015】
入力受付部11は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて入力された情報や指示などを受け付ける。例えば、入力受付部11は、自然循環型原子炉1の炉心解析に必要なパラメータの入力を受け付ける。入力受付部11は、受け付けた情報を記憶部13に記録したり、解析制御部12へ出力したりする。
【0016】
解析制御部12は、一次系循環ループ解析を行う計算コード(プログラム)である一次系循環ループ解析コード131と、炉心計算を行う計算コードである炉心解析コード132とを連成させた炉心解析の実行制御を行う。具体的には、解析制御部12は、一次系循環ループ解析コード131を実行する一次系循環ループ解析部121と、炉心解析コード132による炉心計算を実行する炉心解析部122と、を備え、炉心解析部122による解析結果を一次系循環ループ解析コード131に与えて一次系循環ループ解析を実行させ、今度は、一次系循環ループ解析部121による解析結果を炉心解析コード132に与えて炉心解析を実行させるという処理を計算結果が収束するまで繰り返す、反復計算を実行する。
【0017】
一次系循環ループ解析部121は、一次系循環ループ解析コード131を実行する。一次系循環ループ解析コード131は、炉心解析部122によって解析された、炉心2で発生したボイドの量(以下、ボイド流量と称する。)を受け取って、ボイド流量を、計算条件として設定し、炉心2を出てからライザー3、ダウンカマ6を経由し、炉心2へ戻るまでの一次冷却材の熱流動を解析する。例えば、一次系循環ループ解析コード131は、ボイド流量に基づいて、ライザー3の水頭圧とダウンカマ6の水頭圧の差を計算し、さらに一次冷却材が循環することによって生じる圧力損失を計算する。そして、ライザー3とダウンカマ6の水頭圧の差と圧力損失とがバランスするような流量を、炉心2入口における一次冷却材の流量として算出する。また、一次系循環ループ解析コード131は、例えば、蒸気発生器6Aにおける熱交換を模擬し、炉心2入口における一次冷却材の温度を算出する。一次系循環ループ解析コード131によって解析された炉心2入口における一次冷却材の流量および温度は炉心解析コード132に受け渡される。
【0018】
炉心解析部122は、例えば、PWR等で使用される一般的な炉心解析コード132を実行する。炉心解析コード132には、例えば、炉内における一次冷却材の温度上昇などの熱流動を計算する計算コードと、中性子の動特性などを計算する核計算コードが含まれる。炉心解析部122は、一次系循環ループ解析部121によって解析された一次冷却材の流量および温度を炉心2の入口における炉心入口冷却材条件として設定し、炉心解析コード132を実行する。炉心解析コード132は、炉心2の出力分布や、当該出力分布に基づいて計算される炉心2にて発生するボイドの量(ボイド流量)などを解析する。炉心解析コード132による解析結果のうち、ボイド流量は、一次系循環ループ解析コード131に受け渡される。
【0019】
記憶部13は、炉心解析に必要な初期値(例えば、燃料7の燃焼度分布など)、一次系循環ループ解析コード131、炉心解析コード132、計算中のデータ、解析結果などを記憶する。
【0020】
(動作)
次に
図3を用いて、本実施形態の炉心解析の流れを説明する。
図3は、実施形態に係る炉心解析処理の一例を示すフローチャートである。
まず、オペレータが炉心解析に必要な各種のパラメータを炉心解析装置10に入力し、炉心解析の開始を指示する。入力受付部11は、入力されたパラメータを取得して、記憶部13に記録するとともに、解析制御部12へ炉心解析の開始を指示する。解析制御部12は、一次系循環ループ解析部121に一次系循環ループ解析の実行を指示する。一次系循環ループ解析部121は、記憶部13から一次系循環ループ解析コード131を読み出して実行する(ステップS1)。一次系循環ループ解析が完了すると、一次系循環ループ解析部121は、炉心2入口における一次冷却材の流量および温度などの解析結果を記憶部13に記録する。
【0021】
次に解析制御部12は、記憶部13に記録された炉心2の入口における一次冷却材の流量および温度を読み出して、これらの値を入口冷却材条件として炉心解析コード132に設定する(ステップS2)。
【0022】
次に解析制御部12は、炉心解析部122に炉心解析の実行を指示する。炉心解析部122は、記憶部13から炉心解析コード132を読み出して実行する(ステップS3)。炉心解析が完了すると、炉心解析部122は、炉心2の出力分布や、炉心2からライザー3へ流出する一次冷却材に含まれるボイド流量などの解析結果を記憶部13に記録する。
【0023】
次に解析制御部12は、記憶部13に記録されたボイド流量を読み出して、この値を一次系循環ループ解析コード131に設定する(ステップS4)。
【0024】
次に解析制御部12は、反復計算が収束したかどうかを判定する(ステップS5)。1回目のループではこの判定はNoとなる。2回目のループ以降は、例えば、解析制御部12は、今回のループのステップS1で計算された一次冷却材の流量と前回のループのステップS1で計算された一次冷却材の流量との差が所定値以内であれば、反復計算が収束したと判定し、そうでない場合、反復計算は収束していないと判定する。なお、収束の判定については一次冷却材の流量に限らず、他の解析値(例えば、実効増倍率)の変化量に基づいて判定を行ってもよい。収束していないと判定した場合(ステップS5;No)、ステップS1以降の処理が繰り返し行われる。収束したと判定した場合(ステップS5;Yes)、解析制御部12は、炉心解析処理を終了し、記憶部13に記録された炉心解析処理の結果(例えば、出力分布など)を表示装置や電子ファイル等に出力する(ステップS6)。
【0025】
収束していないと判定された場合(ステップS5;No)、再びステップS1~S4の処理を行うが、このとき、反復計算を発散させること無く確実に収束させるために、炉心入口冷却材条件の変化分に緩和係数を乗じてもよい。例えば、前回のループにおける炉心入口冷却材条件のうち、一次冷却材の流量が70であるとする。また、今回のループで計算された炉心入口冷却材条件の一次冷却材の流量が100であり、緩和係数が0.7であるとする。解析制御部12は、前回と今回の変化分30(=100-70)に緩和係数0.7を乗じて21を算出し、この値を前回の一次冷却材の流量に加算し、91(70+21)を算出する。解析制御部12は、今回計算された一次冷却材の流量100を炉心解析コード132に設定するのではなく、緩和係数を使って計算した91を炉心解析コード132に設定する(ステップS2)。これにより、反復計算を発散させること無く、徐々に解へと収束させることができる。なお、ここで例示した緩和係数の値は一例であって、0.7に限定されない。また、炉心入口冷却材条件のうちの一次冷却材の温度についても変化分に緩和係数を乗じて、1つ前のループで得られた温度に加算した値を炉心解析コード132に設定するようにしてもよい。
【0026】
(効果)
自然循環型原子炉1の炉心解析を行う場合、従来は、一次系循環ループと炉心出力分布とを別々に解析することが多く、十分な精度の解析結果が得られないことがあった。これに対し、本実施形態によれば、一次系循環ループ解析コード131により得られた解析結果(炉心2の入口での一次冷却材の流量と温度)を炉心解析コード132の境界条件(炉心入口冷却材条件)として受け渡し、炉心解析コード132により得た炉心出力分布を基に計算されるボイド流量を一次系循環ループ解析の条件として受け渡す。これにより、炉心解析コード132により得られた炉心出力分布の解析結果を、炉心入口冷却材条件に反映させつつ炉心解析を行うことができ、精度よく、自然循環型原子炉1の炉心解析を行うことができる。
【0027】
また、一次系循環ループ解析コード131の解析結果を炉心入口冷却材条件に反映させつつ炉心解析を行うにあたり、解が収束せず発散してしまう可能性も存在するが、炉心入口冷却材条件の受け渡しにおいて、炉心入口冷却材条件の変化分に緩和係数を乗じることにより徐々に解へと収束させ、発散を防止することができる。
【0028】
図4は、炉心解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の炉心解析装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。炉心解析装置10は、複数のコンピュータ900によって構成されてもよい。例えば、一次系循環ループ解析部121と炉心解析部122を別々のコンピュータに実装してもよいし、一次系循環ループ解析部121及び/又は炉心解析部122を複数台のコンピュータに実装し、複数台で並行して炉心解析を行うように構成してもよい。
【0029】
炉心解析装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0030】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0031】
<付記>
実施形態に記載の炉心解析方法、炉心解析装置及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0032】
(1)第1の態様に係る炉心解析方法は、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析方法であって、炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う。
これにより、精度よく自然循環型原子炉の炉心解析を行うことができる。
【0033】
(2)第2の態様に係る炉心解析方法は、(1)の炉心解析方法であって、前記一次系循環ループ解析では、前記炉心解析によって解析された前記一次冷却材のボイド流量に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記炉心解析では、前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記一次冷却材の流量および温度に基づいて、前記炉心解析を行う。
これにより、炉心解析と一次系循環ループ解析とを連成させ、炉心解析により得られた炉心出力分布の解析結果を、炉心入口冷却材条件に反映させつつ炉心解析を行うことができる。
【0034】
(3)第3の態様に係る炉心解析方法は、(1)~(2)の炉心解析方法であって、前記一次系循環ループ解析と前記炉心解析とを、解析結果が収束するまで繰り返し実行する。
反復計算を行うことにより、精度のよい計算結果を得ることができる。
【0035】
(4)第4の態様に係る炉心解析方法は、(3)の炉心解析方法であって、前記炉心解析では、前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記一次冷却材の流量および/または温度の変化分に緩和係数を乗じた値に基づいて、前記炉心解析を行う。
これにより、反復計算の発散を防ぎ、徐々に収束させることができる。
【0036】
(5)第5の態様に係る炉心解析方法は、(3)~(4)の炉心解析方法であって、前記一次系循環ループ解析によって解析された前記炉心の入口における前記一次冷却材の流量の残差が所定の閾値以下となると解析結果が収束したと判定する。
これにより、反復計算の収束を判定することができる。
【0037】
(6)第6の態様に係る炉心解析装置は、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析装置であって、前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う手段、を備える。
【0038】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータに、炉心を冷却する冷却材が上昇する領域であるライザーと、前記ライザーよりも下方に配置された前記炉心と、前記冷却材が下降する領域であって蒸気発生器が設けられたダウンカマと、を備え、前記炉心にて前記冷却材を加熱することによって前記ライザーを通じて前記冷却材を上昇させ、上昇した前記冷却材を前記ダウンカマに流入させて前記蒸気発生器にて冷却することにより前記ダウンカマを通じて前記冷却材を下降させ、下降した前記冷却材を前記炉心へ流入させることにより、前記炉心を冷却する自然循環型原子炉の炉心解析を行う炉心解析処理であって、前記炉心の炉心解析と、前記炉心を出てから再び前記炉心に戻るまでの前記冷却材の挙動を解析する一次系循環ループ解析と、を連成させ、前記炉心解析の解析結果に基づいて、前記一次系循環ループ解析を行い、前記一次系循環ループ解析の解析結果に基づいて、前記炉心解析を行う、炉心解析処理、を実行させる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・炉心解析装置
11・・・入力受付部
12・・・解析制御部
121・・・一次系循環ループ解析部
122・・・炉心解析部
13・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース