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特開2024-173420画像処理装置、その制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173420
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、その制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B41J2/01 203
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091832
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 靖二郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA24
2C056EB59
2C056EC77
2C056EC78
2C056EC79
2C056EE02
2C056FA13
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】保持手段の印字データの保持量の増大を抑制し、保持手段を形成する回路規模を低減し、コストアップを抑制すること。
【解決手段】画像処理装置は、記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持可能な保持手段と、前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持可能な保持手段と、
前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正する補正手段と、
を備え、
前記補正手段は、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、
記録媒体の搬送方向と交差する配列方向に配列された複数のノズルを有する記録ヘッドを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
印字データに基づいて第1解像度の印刷を行う第1印刷モードと、印字データに基づいて前記第1解像度のN(Nは2以上の自然数)倍の第2解像度の印刷を行う第2印刷モードとを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記第2解像度の印刷において、
前記位置ずれ量に応じたライン数と前記ノズルのそれぞれとを関連付けた第1データの前記位置ずれ量に応じたライン数の2分の1の値の小数点以下を切り捨てた値を新たな位置ずれ量に応じたライン数として前記ノズルのそれぞれと関連付けた第2データに基づいて前記印字データを補正した仮補正データを生成し、
前記第1データの前記位置ずれ量に応じたライン数と前記第2データの前記位置ずれ量に応じたライン数との差分と前記ノズルのそれぞれとを関連付けた第3データに基づいて、前記仮補正データを補正することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持手段に保持し、
前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正し、
前記補正では、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータが読み込み実行することで、前記コンピュータに、請求項5に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、その制御方法、およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットによる記録装置において、記録速度の向上に有利な記録方式の一つとして、フルラインタイプの記録ヘッド用いて記録を行う方式がある。フルラインタイプの記録ヘッドは、多数のノズルが配列されて構成され、該配列の方向が紙幅方向と一致するように記録装置本体に固定される。記録ヘッドを固定したまま記録媒体を搬送して記録を行うことができるので、記録ヘッドが移動するタイプの記録装置と比べ、高速記録が可能である。このようなフルラインタイプの記録ヘッドにおいて、記録ヘッドの形状や組付け精度に起因する色ずれや傾きのない高品質の記録を行うために様々な対処方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の記録ヘッドを配置してフルラインタイプの記録ヘッドを構成し、個々の記録ヘッドを回転させる機構が開示されている。さらに、特許文献2には、電子写真方式の画像形成装置において、印字データを処理することで、電気的に補正を行っているために、機械的な調整や組み立て時の調整工程が不用となる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-125806号公報
【特許文献2】特開2004-170755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載された方法では、記録ヘッドの保持部に回転可能な機構が必要であり、機械的な調整が必要であり、部品点数も増え、部品のコストアップをまねくことになる。また特許文献2に記載された方法においては、補正に必要な分だけのラインバッファが必要となる。このラインバッファの量は、補正する幅と、処理する印字データの解像度に依存する。
【0006】
例えば、補正する幅が1mmで、印字データの解像度が1200dpiであれば、(1mm÷25.4mm/inch)×1200dpi≒95となり、95ライン程度のラインバッファが必要であり、印字データの解像度が2400dpiとなると、この倍の量のラインバッファが必要である。印字データの解像度が高くなればなるほど、その分ラインバッファが使用するメモリ量が増大し、メモリを形成する回路規模が増え、コストアップを招く原因となる。
【0007】
本開示は、保持手段の印字データの保持量の増大を抑制し、保持手段を形成する回路規模を低減し、コストアップを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態は、記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持可能な保持手段と、
前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正する補正手段と、
を備え、
前記補正手段は、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行する。これにより、本開示は、Nライン分の保持手段を有すれば、Nライン以上の印字データに対しても補正することができるので、保持手段の印字データの保持量の増大を抑制し、保持手段を形成する回路規模を低減し、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る記録装置の印字制御部の構成図。
図2】第1実施形態に係る記録ヘッドの構成図。
図3】第1実施形態に係る記録ヘッドの傾きを示す図。
図4】第1実施形態に係る補正方法の原理を説明する図。
図5】第1実施形態に係る吐出間隔を説明する図。
図6】第1実施形態に係る印字データ補正部の詳細構成図。
図7】第1実施形態に係る印字データ補正処理のフローチャート。
図8】第1実施形態に係る画像メモリに格納される印字データの説明図。
図9】第2実施形態に係る印字データ補正処理のフローチャート。
図10】第2実施形態に係る画像メモリに格納される印字データの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して第1実施形態を具体的に説明する。本実施形態におけるインクジェットの記録装置のデータフロー処理を行なう印字制御部100について図1を用いて説明する。インクジェットの記録装置および印字制御部100は、画像処理装置の一例である。記録装置への操作者の指示は、操作部I/F部105に接続された操作部120から行われ、該指示は、操作部I/F部105を介してCPU101に入力される。操作部120は、タッチパネル画面やボタンなどのユーザインターフェースであり、操作者が操作することで各種の指示や情報を印字制御部100に対して入力することができる。操作部I/F部105は、操作部120とCPU101との間のインターフェースとして機能する。
【0013】
CPU101は、操作部120やネットワーク121からの指示に応じて、印字制御部100における各部に対する制御を行う。ネットワーク121は、インターネットやLANなどのネットワークであり、有線のネットワークであっても良いし、無線のネットワークであっても良い。CPU101は、例えばROM102に格納されている制御プログラムに基づいて各部に対する制御を実行する。このROM102に格納されている制御プログラムは、システムクロックによってタスクと称されるロードモジュール単位に時分割制御を行なうためのOSを含んでいる。CPU101は、処理の作業領域としてRAM103を使用する。印字制御部100においてCPU101を含む各部は、システムバス111に接続されている。また、画像メモリ104は、印字制御に必要な容量のDRAMを含むことができる。
【0014】
印字制御部100は、ホストI/F部106を有する。画像データ発生部107は、ホストI/F部106を介してネットワーク121から入力された印刷データをレンダリングして多値ビットマップデータに変換する。ここで入力される印刷データは、例えばPDL(ページ記述言語)で記述されたデータである。印字データ生成部108は、多値ビットマップデータに対してインク色変換、量子化処理などの処理を施し、インク色のハーフトーンデータに変換する。さらに、印字データ生成部108は、ハーフトーンデータをインク色毎に各ノズルに割り当て、ライン毎にノズル数の印字データ(2値データ)とする。なお、印字データは、字以外の画像のデータも含む。印字データ生成部108は、このようにして生成した印字データを画像メモリ104に格納する。
【0015】
CPU101は、画像メモリ104に格納した印字データを、後述する印字データ補正処理を行う印字データ補正部109に転送する。印字データ補正部109は、印字データ補正処理を施した印字データを、エンジンI/F部110を介して印字部122に転送する。印字部122は、記録媒体の幅方向である主走査方向に沿って1列に配列されたノズルを有する記録ヘッドを含み、転送される印字データに基づいて該ノズルによるインクの吐出制御を行って、記録装置が搬送する紙などの記録媒体に、順次インクを吐出させる。
【0016】
図2は、記録ヘッド200におけるノズル配置の構成図である。図2(a)は、記録媒体の幅方向である主走査方向に沿って1列に配列された16384個のノズル201を有する記録ヘッド200を示している。主走査方向は、記録媒体の搬送方向と直交する。ノズル201が配列された方向(ノズル列方向)が配列方向の一例である。理想的には、配列方向は、主走査方向と平行である。本実施形態では、ノズル201が1200dpi(ノズル間の間隔は1/1200インチ)に従って配置されており、約346mmの記録幅を持つ。記録ヘッド200は、ノズル201から、印字データに基づきインクを吐出することができる。
【0017】
また、図2(b)は、記録ヘッド200に、図2(a)に示したノズル列と同じノズル列を副走査方向に1つ追加した記録ヘッド210の構成を示している。副走査方向は、記録媒体の搬送方向と平行である。印字部122は、複数のノズル列の印字タイミングを制御することにより、より高速な印字を可能とし、一部のノズルが故障し吐出できなくなったときにほかの列のノズルによりインクの吐出を補完させることが可能となる。
【0018】
一方、図2(c)は、前述した記録ヘッドに比べてノズル列方向に短い幅の記録ヘッド220(ノズル列方向に沿って1列に配列された1024個のノズルを有する記録ヘッド220)の構成を示している。記録ヘッドのように精密な部品を大きく作ると歩留まりが悪くなり、コストが上がることがある。記録ヘッド220のように、小型の記録ヘッドを組み合わせて使うことで、部品コストを低減することができる。
【0019】
図3は、記録装置への記録ヘッドの取り付けと、記録ヘッドと記録媒体との位置関係について説明する図である。図3(a)では記録ヘッド200が、記録ヘッド200におけるノズル列方向が主走査方向と平行であり、かつ該ノズル列方向が、搬送方向である副走査方向と直交するように設置されている。すなわち、図3(a)は、記録ヘッド200の理想的な設置を示す。図3(b)は、記録ヘッド200が、主走査方向からPmaxライン分傾いて設置されている。つまり、記録ヘッド200の右端のノズルに対応するラインが、該記録ヘッド200の左端のノズルに対応するラインからPmaxライン上側のラインとなっている。このように、記録ヘッド200が、主走査方向に対して傾いて設置されている状態で、印字データに基づくインクの吐出が行われると、記録媒体上に形成される像が傾く。
【0020】
また、図3(c)は、図2(c)で示した記録ヘッド220が、主走査方向に対して意図的に傾けて設置されていることを示す図である。1200dpiでノズルが配列された記録ヘッド220が、主走査方向に沿って一直線上に配列された場合、記録ヘッド220の筐体の外周部によって、記録ヘッド220の端にあるノズルと、次の記録ヘッド220の端にあるノズルと、の間隔が、記録ヘッド220の中央の部分の間隔と同じにならない。そこで、記録ヘッド220を傾け、主走査方向に一部記録ヘッドの部材が重なるように設置することで、主走査方向のノズル間隔が一定になるように、記録ヘッド220が設置される。
【0021】
図3(d)では、インク色ごとに、複数の記録ヘッド200が主走査方向に対して傾いて設置されている。この状態で、以下に説明する補正処理で補正されていない印字データによってインクの吐出を行うと、記録媒体上に形成される像がインク色ごとに異なる位置に形成されてしまい、図3(b)の場合にくらべ、記録媒体上に形成された像は色ずれしてしまう。
【0022】
次に、本実施形態の印字データ補正部109が行う、補正処理の原理について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る印字データの補正処理の原理を説明するための図である。
【0023】
図4(a)は、図3(b)のように記録ヘッド200が傾いて設置されたときの、各ノズルにおけるインクの吐出位置(つまりノズルの位置)が、理想的な位置(記録ヘッド200が傾いていないときの各ノズルにおけるインクの吐出位置(つまりノズルの位置))からどの程度ずれているかを示す図である。図4(a)において、横軸は主走査方向を示し、縦軸は副走査方向を示している。図4(a)では、記録ヘッド200が傾いて、すなわち、主走査方向と交差する配列方向に配列されたときの各ノズルにおけるインクの吐出位置を繋ぐ関数が一次式で表せるような例について説明するが、図3(c)のようなずれであっても、あるいは湾曲したずれであっても構わない。また、図3(d)のように複数の記録ヘッドを有する記録装置の場合、理想的な位置からのずれではなく、基準となるインク色、たとえばK(黒)に対応する記録ヘッドによるインクの吐出位置を基準としたずれ量として定義しても良い。
【0024】
図4(b)は、図4(a)で示すノズル位置毎の副走査方向のずれ量を、印字データの副走査方向の解像度で表した数値が登録されたテーブルREG_SEG_POS[i]の一例を示す図である。例えば、図3(b)に示す如く、記録ヘッド200(主走査幅が約364mm)が、主走査方向に対して2mm分傾いているとする。ここで、ノズル列は1200dpi間隔、かつ、印字データが副走査方向に1200dpiのデータである場合を想定する。この場合、約174ノズルごとに、印字データが副走査方向に1ラインずつずれていく計算になる。記録ヘッド200におけるノズル列において左端のノズルから順に右端のノズルまで、0番目、1番目、…、16383番目と順番を付ける。このとき、REG_SEG_POS[i](i=0,1,2,…,16383)には、記録ヘッド200においてi番目のノズルに対応する副走査方向の位置ずれ量が登録されている。またこのとき、位置ずれ量をライン数に換算したPmaxは約94ラインとなる。CPU101が、Pmaxのライン数を印字データ補正部109に設定することで、印字データ補正部109は後述する補正処理を行う。
【0025】
図4(c)は、この副走査方向のずれを相殺するように、各ラインの印字データ(図4(c)上側)を切り替えながら印字データ補正部109が印字データを出力する様子(図4(c)下側)を示している。ここで、nラインが、本来印字すべきラインを示している。図4(c)における黒い部分がnラインの印字時に、印字部122に転送される印字データであることを示している。このように、副走査方向のずれが相殺されるように、印字データのラインが切り替えて出力されると、記録媒体に形成される像が傾きのないようにすることができる。
【0026】
図5は、主走査方向のある1ノズルの副走査方向に対する吐出間隔について説明する図である。記録ヘッド200およびノズル201の位置は固定であり、記録装置が搬送する記録媒体が、記録ヘッド200の下方を副走査方向に通過する。図5(a)は、通常の解像度の印刷モードの時に、記録ヘッド200のノズル201がインクを吐出する様子を示している。記録ヘッド200は、転送された印字データに基づきノズル201を用いて、インク510、511、512を吐出し、吐出したインクは記録媒体上に着弾する。インクの吐出時間間隔Tdと、吐出間隔長Ldは、副走査方向の記録媒体の搬送速度に応じて、一定の間隔になるように記録装置が制御する。例えば、記録装置の副走査方向の解像度が1200dpiで、200mm/secの搬送速度の場合、Ldは約21umであり、Tdは約9.5msecとなる。
【0027】
図5(b)は、図5(a)と同じ吐出時間間隔のまま、記録媒体の搬送速度を半分、例えば100mm/secにした印刷モードの時に、記録ヘッド200のノズル201がインクを吐出する様子を示している。図5(a)では吐出できなかったインク530、531、532を吐出することで、記録ヘッドは、記録媒体へのインク吐出量を増やすことができる。すなわち、図5(b)は、高解像度を印刷する印刷モードを示している。
【0028】
記録ヘッドのインクの吐出時間間隔は、インクの充填時間等の制約により、限界がある。そのため、吐出量を増やすために、あるいは画像の副走査方向の解像度を上げるために、記録装置はこのような制御を行う場合がある。このとき、記録ヘッド200には、通常時に比べ、副走査方向に単位印字面積当たり倍の量の印字データを転送する必要がある。また、図4を用いて説明した補正処理により補正するラインは、通常時に比べ副走査方向に倍の量の補正を行う必要がある。例えば、吐出位置のずれ量2mmを1200dpiで換算したときは約94ラインとなるが、2400dpiで換算すると約189ラインになり、物理的には同じ2mmのずれ量でも、副走査方向における解像度が高くなるとずれ量が増える。
【0029】
次に、印字データ補正部109の構成について図6を用いて説明する。図6は、第1実施形態にかかる印字制御部100の印字データ補正部109の詳細構成を示すブロック図である。
【0030】
レジスタ部605は、複数のレジスタを有する。印字データ補正部109に対するCPU101からの指示は、CPU101がレジスタ部605に適切な値を書き込むことで行われる。CPU101が書き込む値には、前述した図4(b)に示したテーブルREG_SEG_POSが含まれる。
【0031】
制御部604は、レジスタ部605に格納されている値に基づき、後述する画像読出部601、補正処理部602、画像書出部603の動作の制御を行う。
【0032】
画像読出部601は、レジスタ部605の各レジスタおよび制御部604の制御に基づき、画像メモリ104の所定の領域に格納されている印字データを1ラインずつ読み出して、補正処理部602に出力する。
【0033】
補正処理部602は、レジスタ部605に書き込まれたテーブルREG_SEG_POSに基づいて、画像読出部601から受け取った1ライン分の印字データに対して補正処理を行い、補正処理後の印字データを画像書出部603に出力する。補正処理部602は、主走査方向の印字データを複数ライン分格納可能なラインバッファを有する。ラインバッファは、ノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持可能に構成されている。本実施形態では、ラインバッファは高速アクセスが可能なSRAMであるものとするが、他のタイプのメモリであっても良い。本実施形態の記録装置は、例えば副走査方向の解像度1200dpiにおいて2mmの吐出位置のずれを補正できる、96ライン分の印字データを格納可能なラインバッファを有する。ラインバッファに96ライン分の印字データが格納されている状態において、補正処理部602は、1ライン分の印字データが入力されるごとに、ラインバッファに格納されている印字データにおいて最も過去に格納された印字データを削除し、その後、該入力された印字データをラインバッファに格納する。
【0034】
このような動作を行うことにより、補正処理部602は、補正処理に必要なライン数の印字データをラインバッファに確保することができる。補正処理部602は、レジスタ部605の各レジスタに格納されている値と、処理しているラインにおけるそれぞれの位置(主走査方向における位置)と、に基づき、ラインバッファに格納されている複数ラインの印字データから1つのラインの印字データを選択し、該選択した印字データにおいて該位置に対応するデータを出力する。
【0035】
例えば、補正処理部602は、REG_SEG_POS[i]の値がより小さな値のときは、より過去にラインバッファに格納された印字データを選択し、REG_SEG_POS[i]の値がより大きな値のときは、現在により近いタイミングでラインバッファに格納された印字データを選択する。補正処理部602は、処理しているラインにおけるそれぞれの位置について出力したデータの集合を、該ラインについての補正済みの印字データとして出力することになる。このように、補正処理部602は、主走査方向における位置毎に副走査方向のずれ量に応じて、印字データのラインを切り替えて出力することにより、補正処理を行う。
【0036】
画像書出部603は、レジスタ部605の各レジスタに格納されている値および制御部604の制御に基づき、補正処理部602から出力された補正済の印字データを、画像メモリ104に書き出す。
【0037】
次に図7図8を用いて、本実施形態の印字データ補正部109が行う補正処理と、補正処理前後の印字データを説明する。図7は、印字データ補正部109の制御部604の動作を示すフローチャートである。図8は、テーブルREG_SEG_POSと画像メモリ106に格納される印字データとを示している。
【0038】
ここで、CPU101が、レジスタ部605に書き込む値には、前述したテーブルREG_SEG_POSのほかに、図8に示すような、画像メモリ104において補正前の印字データが格納されているメモリ領域において読み出しを開始するアドレス(読み出し開始アドレス)REG_SA_RD、画像メモリ104において補正後の印字データを格納するメモリ領域において書き込みを開始するアドレス(書き出し開始アドレス)REG_SA_WR、処理する印字データの主走査方向の幅REG_LINE_WIDTHおよび副走査方向の幅REG_LINES、着目ラインの印字データの開始アドレスから次のラインの印字データの開始アドレスへのアドレスの変化量REG_LOFST、などが含まれる。
【0039】
CPU101の指示により印字データ補正処理が開始されると、制御部604は、まずステップS101からステップS107の処理(初期化ステップ)を行う。ステップS101で、制御部604は、CPU101からの指示が高解像度処理の実行指示か否かを判断する。本実施形態では、制御部604は、吐出時の副走査方向の解像度として1200dpiがCPU101により指示された場合は“No”と判断し、ステップS102、S103、S104の通常解像度の処理ステップを行う。一方、制御部604は、副走査方向の解像度として2400dpiがCPU101により指示された場合は “Yes”と判断し、ステップS105、S106、S107の高解像度の処理ステップを行う。
【0040】
図8(a)および図8(c)は、画像メモリ106に格納される補正前の印字データ(input image)を示している。図8(a)は、ステップS101において、制御部604が、高解像度処理でないと判断したときに処理する印字データ(input image)を示す。図8(c)は、ステップS101において、制御部604が、高解像度処理であると判断したときに処理する印字データを示す。
【0041】
ステップS102では、制御部604は、処理回数の設定を行う。ここでは、制御部604は、処理対象である全ラインの印字データを1回の処理フローで行うように設定する(処理回数を1回に設定する)。次にステップS103では、制御部604は、1ラインを処理した後に次に処理を開始する画像メモリ104上のアドレスを更新するための加算値に、REG_LOFSTの値を設定する。この処理は、制御部604が、1ラインを処理した後に連続して次のラインの処理を行うよう設定する処理である。ステップS104では、制御部604は、1回の処理で処理するライン数にREG_LINESの値を設定する。
【0042】
一方、ステップS105では、制御部604は、処理対象の全ラインの印字データを2回の処理フローで行うように設定する(処理回数を2回に設定する)。なお、制御部604は、通常の解像度のN倍の高解像度の画像を処理する場合、処理回数をN回に設定する。Nは2以上の自然数である。次にステップS106では、制御部604は、1ラインを処理した後に次に処理を開始する画像メモリ104上のアドレスを更新するための加算値に、REG_LOFSTの値の2倍の値を設定する。この処理は、制御部604が、1ラインを処理した後に、1ラインスキップしたラインの処理を行うよう設定する処理である。換言すれば、制御部604は、、2ラインごとにラインの処理を行う。なお、制御部604は、通常の解像度のN倍の高解像度の画像を処理する場合、Nラインごとにラインの処理を行う。
【0043】
ステップS107では、制御部604は、1回の処理で処理するライン数にREG_LINESの値の2分の1の値を設定する。なお、本実施形態では、通常解像度の2倍の解像度を持つ印字データを対象とした。しかし、Nを整数とし、通常解像度のN倍の解像度を持つ印字データを処理する場合、制御部604は、ステップS105において処理回数をN回、ステップS106においてアドレスの加算値をREG_LOFSTの値のN倍、ステップS107において処理ライン数をREG_LINESの値のN分の1に設定する。
【0044】
次にステップS108では、制御部604は、ステップS108の処理が実行された回数に応じて、読み出し開始アドレスおよび書き出し開始アドレスを設定する。1回目のステップS108では、制御部604は、読み出し開始アドレスにREG_SA_RDの値を設定し、書き出し開始アドレスにREG_SA_WRの値を設定する。2回目のステップS108では、制御部604は、読み出し開始アドレスにREG_SA_RDの値にREG_LOFSTの値を加算した値を設定し、書き出し開始アドレスREG_SA_WRの値にREG_LOFSTの値を加算した値を設定する。
【0045】
ステップS101からステップS108で説明したように、制御部604は、ステップS101において高解像度処理ではないと判断した場合、1ラインずつ順に処理するように設定し、高解像度処理であると判断した場合、1回目に奇数ライン、2回目に偶数ラインのそれぞれを印字データの搬送方向における全長にわたって処理するように設定する。
【0046】
ステップS109では、制御部604は、画像読出部601を用いて、画像メモリ104における読み出し開始アドレスから、1ライン分の印字データを読み出す処理を行う。ステップS110では、制御部604は、読み出し開始アドレスに、ステップS103もしくはステップS106で設定した加算値を加算することで該読み出し開始アドレスを更新する。ステップS111では、制御部604は、画像読出部601を用いて、ステップS109で読み出した印字データ1ラインを、補正処理部602のラインバッファに格納する。
【0047】
次にステップS112において、制御部604は、画像読出部601が処理補正に必要な分の印字データを画像メモリ104から読み出してラインバッファに格納したか否かを判断する。本実施形態では、制御部604は、1ライン分の印字データを読み出してラインバッファに格納した時点で、処理補正に必要な分の印字データを格納したと判断する。なお、制御部604は、画像読出部601がテーブルREG_SEG_POSに登録されている値の最大値に相当するライン数分の印字データを画像メモリ104から読み出してラインバッファに格納した時点で、処理補正に必要な分の印字データを格納したと判断するようにしても良い。制御部604が、処理補正に必要な分の印字データをラインバッファに格納したと判断した場合には、処理はステップS113に進む。一方、制御部604が、補正に必要な分の印字データをラインバッファに格納していないと判断した場合には、処理はステップS109に戻る。
【0048】
ステップS113では、制御部604は、補正処理部602を制御して、ラインバッファに格納されている複数ラインの印字データのうち未だ選択していない1つの印字データを選択印字データとして選択して取得する。ステップS114では、制御部604は、補正処理部602を制御して、選択印字データを補正した補正済み印字データを取得するための補正処理を行う。ここでは、制御部604は、補正処理部602を制御して、副走査方向のずれ量を示すテーブルREG_SEG_POSに基づいて選択したラインの印字データに基づいて補正済み印字データを取得する処理である補正処理を行う。より具体的には、補正処理部602は、選択ラインにおけるi番目のノズルについては、REG_SEG_POS[i]の値を取得する。
【0049】
そして補正処理部602は、REG_SEG_POS[i]の値がより小さな値のときは、より過去にラインバッファに格納された印字データを選択し、REG_SEG_POS[i]の値がより大きな値のときは、現在により近いタイミングでラインバッファに格納された印字データを選択する。たとえば、補正処理部602は、REG_SEG_POS[i]=0の場合には、選択ラインよりも40ライン前の印字データを選択し、REG_SEG_POS[i]=10の場合には、選択ラインよりも20ライン前の印字データを選択する。なお、REG_SEG_POS[i]の値に応じて選択する印字データが、まだラインバッファに格納されていない場合には、たとえば、制御部604は、印字データの代わりに、インクの非吐出を示す所定の値をパディングして出力する。
【0050】
そして補正処理部602は、該選択した印字データにおいて、i番目のノズルに対応するデータを、i番目のノズルに対応する印字データとして出力する。補正処理部602は、このような処理を全てのiについて行うことで、全てのiに対応する印字データ(もしくはパディングした値)を取得することができる。そして補正処理部602は、i=0に対応する印字データ、i=1に対応する印字データ、…というように全てのiに対応する印字データを連結した連結データを、選択ラインの補正済みの印字データとして生成して出力する。
【0051】
ステップS115では、制御部604は、画像書出部603を制御し、書き出し開始アドレスから順に、補正処理部602から出力された選択ラインの補正済の印字データを書き出す。ステップS116では、制御部604は、書き出し開始アドレスに、ステップS103もしくはステップS106で設定した加算値を加算することで該書き出し開始アドレスを更新する。
【0052】
ステップS117では、制御部604は、処理したライン数が、ステップS104もしくはステップS107で設定したライン数に達したか否かを判断する。この判断の結果、処理したライン数が、ステップS104もしくはステップS107で設定したライン数に達した場合には、処理はステップS119に進む。一方、処理したライン数が、ステップS104もしくはステップS107で設定したライン数に未だ達していない場合には、処理はステップS118に進む。
【0053】
ステップS118では、制御部604は、画像メモリ104から読み出す印字データが未だ残っているか否かを判断する。この判断の結果、画像メモリ104から読み出す印字データが残っている場合は、処理はステップS109に進む。一方、画像メモリ104から読み出す印字データが残っていない場合は、処理はステップS113に進む。
【0054】
図8(b)は、この時点における、ステップS101において制御部604が高解像度処理ではないと判断した場合に画像メモリ106に格納される補正済みの印字データを示す。図8(b)では、副走査方向のずれ量を相殺するように印字データが補正された状態になっている。ステップS113で説明したように、パディングした値が斜線で示す領域に格納されている。
【0055】
一方、図8(d)は、ステップS101において制御部604が高解像度処理であると判断した場合に画像メモリ106に格納される補正済みの印字データを示す。印字データを1ラインおきに処理しているため、まだ印字データが格納されていない領域が存在し、該領域を黒で示している。
【0056】
ステップS119では、ステップ102若しくはステップS105で設定した処理回数分の処理(ステップS108~S118の処理)が完了したかを判断する。処理回数が1回の場合は、ステップS108~S118の処理を1回実行した場合には、図7のフローチャートに従った処理は終了する。また、処理回数が2回の場合において、ステップS108~S118の処理を1回実行した場合には、処理はステップS108に進み、ステップS108~S118の処理を2回実行した場合には、図7のフローチャートに従った処理は終了する。処理回数がN回の場合、ステップS108~S118の処理をN回実行するまでは、処理はステップS108に進み、ステップS108~S118の処理をN回実行した場合には、図7のフローチャートに従った処理は終了する。図8(e)は、ステップS101において制御部604が高解像度処理であると判断した場合、すべての処理回数が完了した後に、画像メモリ106に格納される補正済みの印字データを示す。高解像度の印字データに対しても、副走査方向の位置ずれ量を相殺するように印字データが補正された状態になっている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、記録ヘッドの各ノズルの吐出位置が副走査方向にずれている場合において、副走査方向における位置ずれ量に応じた通常の解像度のライン数分のラインバッファで補正できるので、メモリ量を増やすことなく、回路規模を増大することなく、所定の副走査解像度の整数倍の印字データに対する補正処理を行うことができる。これにより、本実施形態の記録装置は、メモリの部品コストをアップさせることなく、吐出位置の位置ずれ量を相殺して印字することができる。
【0058】
(第2実施形態)
第1実施形態の印字データ補正部109は、高解像度の印字データに対して補正処理するが、補正の精度は通常解像度相当になる。そこで、印字データ補正部109が、処理時間は多くなるが、補正済みのラインの印字データを更に補正することで、補正精度を処理解像度相当にすることも考えられる。以下では、第1実施形態との差分について説明し、以下で特に触れない限りは、第1実施形態と同様であるものとする。
【0059】
図9図10を用いて、第2実施形態の制御部604が行う補正処理と、補正処理前後の印字データを説明する。図9は、第2実施形態にかかる制御部604の動作を示すフローチャートである。図10は、レジスタREG_SEG_POSと画像メモリ106に格納される印字データを示している。
【0060】
CPU101の指示により印字データ補正部109が、印字データ補正処理を開始して、図9に示す処理ステップを行う。まずステップS101、S102、S105は、図7で説明した処理フローと同様であるため説明を省略する。
【0061】
ステップS201では、印字データ補正部109の制御部604は、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うか否かを判断する。本実施形態にかかる記録装置においては、高解像度の印字データに対して、印字速度を犠牲にしても補正精度を高めて印字する高精細モードが操作部120などから指示されているときに、CPU101は、高精細処理を使用するよう、補正処理部602に対して指示する。このような判断の結果、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うようCPU101から指示されている場合には、処理はステップS103に進み、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うよう指示されていない場合には、処理はステップS106に進む。なお、本実施形態では、CPU101は、高精細モードが指示されている場合には、テーブルREG_SEG_POSに登録されている値を、高解像度に換算した値に更新する。
【0062】
ステップS108では、制御部604は、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うようCPU101から指示されており、かつ2回目以降のステップS108の場合、読み出し開始アドレスには、前回の処理において補正済みの印字データを格納した領域のアドレスを設定する。
【0063】
ステップS114では、制御部604は、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うようCPU101から指示されている。これにより、制御部604は、1回目のステップS114の場合、位置ずれ量に応じたライン数とノズルのそれぞれとを関連付けたテーブルREG_SEG_POSの値を2分の1にして小数点以下を切り捨てた値(すなわち、1ビット右シフトさせた値)を、新たな「テーブルREG_SEG_POSの値」として生成しノズルのそれぞれと関連付ける。制御部604は、新たな「テーブルREG_SEG_POSの値」を第1実施形態と同様の補正処理を印字データに対して行い仮補正データを生成する。元のテーブルREG_SEG_POSの値を含むテーブルのデータが、第1データの一例である。新たな「テーブルREG_SEG_POSの値」が、新たな位置ずれ量に応じたライン数の一例であり、新たな「テーブルREG_SEG_POSの値」を含むテーブルのデータが、第2データの一例である。
【0064】
制御部604は、副走査方向に高解像度の印字データに対して高精細処理を行うようCPU101から指示されている場合、かつ2回目のステップS114の場合、1回目の補正処理で用いた新たなテーブルREG_SEG_POSの値と、テーブルREG_SEG_POSの値との差分値を「テーブルREG_SEG_POSの値」として生成しノズルのそれぞれと関連付ける。制御部604は、差分値による「テーブルREG_SEG_POSの値」に基づいて第1実施形態と同様の補正処理を1回目の補正処理で補正された仮補正データに対して行う。差分値による「テーブルREG_SEG_POSの値」を含むテーブルのデータが、第3データの一例である。
【0065】
図10(a)は、図8(c)で示した印字データに対して、ステップS201において高精細処理であると判断したときの、1回目の補正処理後の画像メモリ104に格納された印字データを示す。図10(a)の上段の「REG_SEG_POS」が第1データの一例である。図10(a)の下段の「REG_SEG_POS」が第2データの一例である。処理する印字データの解像度に対して、補正するずれ量が2分の1であるため、吐出位置の位置ずれ量の相殺度合いが足りていない。例えば、ずれ量が2mmの場合、図10(a)に示す補正後の印字データはずれ量が約1mmに相当するライン数しか補正されていない。
【0066】
図10(b)は、1回目の補正に用いたラインの印字データである仮補正データから1ラインずらした2ラインごとの印字データとともに、図10(a)で示した1回目の補正処理後の印字データを用いて、画像メモリ104に格納された2回目の補正処理を行った補正済の印字データを示す。
【0067】
一般化すると、制御部604は、通常の解像度のN倍の解像度における高精細処理の補正処理において、位置ずれ量に応じたライン数の1/Nのライン数がラインバッファに保存された状態で1回目の補正処理を実施する。したがって、制御部604は、1回目の補正処理ではノズルの位置ずれ量に応じたライン数の約1/Nのライン数に応じた補正しかできない。しかし、制御部604は、位置ずれ量のライン数とノズルとを関連付けたテーブルを更新して、補正処理をN回繰り返すことで、ノズルの位置ずれ量に応じたライン数分補正した印字データを生成する。これにより、制御部604は、ラインバッファの容量を増やすことなく、高解像度の印字データを解像度に応じて高精細に補正できる。
【0068】
以上説明したように本実施形態によれば、印字ヘッドの各ノズルの吐出位置が副走査方向にずれている場合において、所定の副走査方向の解像度のずれ量に応じた分のラインバッファを用いて、通常の解像度に対する所定の副走査方向の解像度の整数倍の印字データに対する補正処理を行うことができ、より高精度に吐出位置の位置ずれ量を相殺して印刷することができる。
【0069】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0070】
本明細書の開示は、以下の画像処理装置、その制御方法及びプログラムを含む。
(項目1)
記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持可能な保持手段と、
前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正する補正手段と、
を備え、
前記補正手段は、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする画像処理装置。
(項目2)
さらに、
記録媒体の搬送方向と交差する配列方向に配列された複数のノズルを有する記録ヘッドを備えることを特徴とする項目1に記載の画像処理装置。
(項目3)
印字データに基づいて第1解像度の印刷を行う第1印刷モードと、印字データに基づいて前記第1解像度のN(Nは2以上の自然数)倍の第2解像度の印刷を行う第2印刷モードとを有することを特徴とする項目1または2に記載の画像処理装置。
(項目4)
前記補正手段は、
前記第2解像度の印刷において、
前記位置ずれ量に応じたライン数と前記ノズルのそれぞれとを関連付けた第1データの前記位置ずれ量に応じたライン数の2分の1の値の小数点以下を切り捨てた値を新たな位置ずれ量に応じたライン数として前記ノズルのそれぞれと関連付けた第2データに基づいて前記印字データを補正した仮補正データを生成し、
前記第1データの前記位置ずれ量に応じたライン数と前記第2データの前記位置ずれ量に応じたライン数との差分と前記ノズルのそれぞれとを関連付けた第3データに基づいて、前記仮補正データを補正することを特徴とする項目3に記載の画像処理装置。
(項目5)
記録媒体の搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に応じたライン数の印字データを保持手段に保持し、
前記保持手段が、保持するラインごとの印字データを、前記搬送方向と直交する方向に対するノズルの位置ずれ量に基づいて補正し、
前記補正では、前記保持手段が保持するNラインごとの印字データを補正する処理を、1ラインずつずらしてN回実行することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
(項目6)
コンピュータが読み込み実行することで、前記コンピュータに、項目5に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【0071】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0072】
100…印刷制御部、101…CPU、104…画像メモリ、109…印字データ補正部、200…記録ヘッド、201…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10