IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械搬送システム株式会社の特許一覧

特開2024-173425クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法
<>
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図1
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図2
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図3
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図4
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図5
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図6
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図7
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図8
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図9
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図10
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図11
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図12
  • 特開-クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173425
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B66C13/46 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091837
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】青野 洋己
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA07
3F204DA08
3F204GA04
(57)【要約】
【課題】クレーンの作業内容を容易且つ正確に判定することができるクレーンの作業管理システム、及び作業管理方法を提供する。
【解決手段】作業管理システム100は、荷役動作情報に基づくクレーン20における作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定部12を備える。また、このようなパラメータを事前に登録しておくことができる。これにより、パラメータを用いて、クレーンの作業内容を荷役動作情報に基づいて自動的に判定することが可能となる。また、作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして事前に登録しておくことで、現場に合わせた自動判定が可能となる。以上より、クレーン20の作業内容を容易且つ正確に判定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場に配置されたクレーンの作業の管理を行うクレーンの作業管理システムであって、
前記クレーンにおける荷重データを少なくとも含む荷役動作情報を取得する荷役動作情報取得部と、
前記荷役動作情報に基づく前記クレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定部と、を備え、
前記パラメータは、事前に登録可能である、クレーンの作業管理システム。
【請求項2】
前記パラメータは、
前記荷重データを平滑化するための前記荷重データを間引くピッチを示す荷重検出サンプリングピッチと、
前記荷重データを平滑化するための中央値の演算を行う区間を示す平滑区間と、を含む、請求項1に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項3】
前記パラメータは、前記クレーンが吊っている吊荷の存在を認識するための前記荷重データに対する下限値を示す、吊荷検知下限値を含む、請求項1に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項4】
前記パラメータは、前記クレーンによる搬送作業の開始時刻を認識するため、前記荷重データが前記吊荷検知下限値を超えた時間を監視するためのタスク監視時間に対する下限値を示すタスク監視時間の下限値を含む、請求項3に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項5】
前記パラメータは、前記クレーンによる移送を認識するための水平移動の下限値を示す、移動検知下限値を含む、請求項1に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項6】
前記パラメータは、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認するための観測時間を示す、タスク間隔時間に対する下限値を示すタスク間隔時間の下限値を含む、請求項1に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項7】
前記設定部で設定された前記パラメータを用いて、前記荷役動作情報の判定を行うことで、搬送作業の実績を示す搬送作業実績情報を取得する、搬送作業実績情報取得部を更に備える、請求項1に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項8】
予め登録された搬送作業計画タスクに対して、前記搬送作業実績情報を引き当てる引当部を更に備える、請求項7に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項9】
前記引当部は、前記搬送作業実績情報取得部で取得された前記搬送作業実績情報を、計画の順番で前記搬送運搬作業計画タスクに自動的に引き当てる、請求項8に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項10】
前記引当部は、前記搬送作業計画タスクが指定された場合、取得された前記搬送作業実績情報を、指定された前記搬送作業計画タスクに引き当てる、請求項8に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項11】
前記引当部は、予定外の搬送作業であることを宣言された場合、取得された前記搬送作業実績情報を、搬送計画以外の搬送作業タスクとして引き当てる、クレーンの請求項8に記載の作業管理システム。
【請求項12】
前記引当部は、前記搬送作業計画タスクが指定され、搬送作業開始の宣言、及び搬送作業終了の宣言を入力された場合、前記搬送作業開始及び前記搬送作業終了の間に行われた搬送作業を指定された前記搬送作業計画タスクに引き当てる、クレーンの請求項8に記載の作業管理システム。
【請求項13】
前記荷役動作情報と、前記パラメータと、前記搬送作業実績情報取得部によって取得された前記搬送作業実績情報と、を同時に表示する表示部を更に備える、請求項7に記載のクレーンの作業管理システム。
【請求項14】
作業現場に配置されたクレーンの作業の管理を行うクレーンの作業管理方法であって、
前記クレーンにおける荷重データを少なくとも含む荷役動作情報を取得する荷役動作情報取得ステップと、
前記荷役動作情報に基づいて前記クレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定ステップと、を備え、
前記パラメータは、事前に登録可能である、クレーンの作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの作業管理システム、及びクレーンの作業管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンの作業管理システム、特許文献1に記載されたようなものが知られている。特許文献1に記載されたクレーンにはカメラが設けられており、当該カメラから得られる情報に基づいてクレーンの管理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-151920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
荷重データによる搬送実績判定においては、荷重の偶発的な変動(荷重計の測定誤差、風・機体振動などによる微小な荷重変動など)や吊具重量、寸動操作による瞬間的な荷重変動などを配慮し明確に吊荷が持ち上げられたかどうかの判断と、移送の事実を把握するための水平移動の認識、さらには一旦搬送物を地上などに預けることによる一時的荷重の抜けなどを識別した上で、搬送実績作業として認識する必要がある。このような要素を考慮した上でクレーンの作業内容を正確に判定する仕組みが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、クレーンの作業内容を容易且つ正確に判定することができるクレーンの作業管理システム、及び管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のクレーンの作業管理システムは、作業現場に配置されたクレーンの作業の管理を行うクレーンの作業管理システムであって、クレーンにおける荷重データを少なくとも含む荷役動作情報を取得する荷役動作情報取得部と、荷役動作情報に基づくクレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定部と、を備え、パラメータは、事前に登録可能である。
【0007】
本発明のクレーンの作業管理システムは、荷役動作情報に基づくクレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定部を備える。また、このようなパラメータを事前に登録しておくことができる。これにより、パラメータを用いて、クレーンの作業内容を荷役動作情報に基づいて自動的に判定することが可能となる。また、作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして事前に登録しておくことで、現場に合わせた自動判定が可能となる。以上より、クレーンの作業内容を容易且つ正確に判定することができる。
【0008】
パラメータは、荷重データを平滑化するための荷重データを間引くピッチを示す荷重検出サンプリングピッチと、荷重データを平滑化するための中央値の演算を行う区間を示す平滑区間と、を含んでよい。この場合、荷重データを平滑化し、荷重データの振動等の影響を低減した状態で、クレーンの作業内容を判定することが可能となる。
【0009】
パラメータは、クレーンが吊っている吊荷の存在を認識するための荷重データに対する下限値を示してよい。この場合、荷重の必然・偶然誤差を回避し、クレーンが吊荷を吊っていない状態を、搬送作業として誤検知することを抑制できる。
【0010】
前記パラメータは、前記クレーンによる搬送作業の開始時刻を認識するため、前記荷重データが前記吊荷検知下限値を超えた時間を監視するためのタスク監視時間に対する下限値を示すタスク監視時間の下限値を含む。この場合、吊直しや寸動動作を搬送開始として誤検知することを抑制できる。
【0011】
パラメータは、クレーンによる移送を認識するための水平移動の下限値を示す移動検知下限値を含んでよい。この場合、クレーンによる移送が行われていることを正確に確認することができる。
【0012】
パラメータは、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認するための観測時間を示す、タスク間隔時間に対する下限値を示すタスク間隔時間の下限値を含んでよい。この場合、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認することができる。
【0013】
クレーンの作業管理システムは、設定部で設定されたパラメータを用いて、荷役動作情報の判定を行うことで、搬送作業の実績を示す搬送作業実績情報を取得する、搬送作業実績情報取得部を更に備えてよい。この場合、搬送作業実績情報取得部は、上述のパラメータを用いて、搬送作業の実績を正確に把握することができる。
【0014】
クレーンの作業管理システムは、予め登録された搬送作業計画タスクに対して、搬送作業実績情報を引き当てる引当部を更に備えてよい。この場合、計画と実際の作業とを容易に照らし合わせることができる。
【0015】
引当部は、搬送作業実績情報取得部で取得された搬送作業実績情報を、計画の順番で搬送運搬作業計画タスクに自動的に引き当ててよい。この場合、計画と実際の作業を自動的に照らし合わせることができる。
【0016】
引当部は、搬送作業計画タスクが指定された場合、取得された搬送作業実績情報を、指定された搬送作業計画タスクに引き当ててよい。この場合、搬送作業の順序が計画から変更された場合に、容易に対応することができる。
【0017】
引当部は、予定外の搬送作業であることを宣言された場合、取得された搬送作業実績情報を、搬送計画以外の搬送作業タスクとして引き当ててよい。この場合、予定外の搬送作業が発生した場合に、容易に対応することができる。
【0018】
引当部は、搬送作業計画タスクが指定され、搬送作業開始の宣言、及び搬送作業終了の宣言を入力された場合、搬送作業開始及び搬送作業終了の間に行われた搬送作業を指定された搬送作業計画タスクに引き当ててよい。この場合、吊荷に対する荷重が軽い場合であって自動的に搬送作業が判定されない場合であっても、手動で搬送作業計画タスクに引き当てることができる。
【0019】
クレーンの作業管理システムは、荷役動作情報と、パラメータと、搬送作業実績情報取得部によって取得された搬送作業実績情報と、を同時に表示する表示部を更に備えてよい。この場合、表示部に表示された内容を参照することで、クレーンの作業状態を容易に把握することができる。
【0020】
本発明に係るクレーンの作業管理方法は、作業現場に配置されたクレーンの作業の管理を行うクレーンの作業管理方法であって、クレーンにおける荷重データを少なくとも含む荷役動作情報を取得する荷役動作情報取得ステップと、荷役動作情報に基づいてクレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定ステップと、を備え、パラメータは、事前に登録可能である。
【0021】
本発明の作業管理方法によれば、上述のクレーンの作業管理システムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クレーンの作業内容を容易且つ正確に判定することができるクレーンの作業管理システム、及び作業管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るクレーンの作業管理システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
図2】クレーンの構成の一例を示す図である。
図3】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図4】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図5】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図6】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図7】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図8】管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図9】表示部の画面の一例を示す図である。
図10】表示部の画面の一例を示す図である。
図11】表示部の画面の一例を示す図である。
図12】表示部の画面の一例を示す図である。
図13】表示部の画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のクレーンの作業管理システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンの作業管理システム100のブロック構成を示すブロック構成図である。図2は、クレーン20を示す概略図である。作業管理システム100は、作業現場に配置された複数のクレーン20の管理を行うためのシステムである。図1に示すように、作業管理システム100は、管理装置10と、クレーン20と、表示部15と、を備えている。
【0026】
まず、図2を参照して、クレーン20の構成の一例について説明する。本実施形態では、クレーン20としてジブクレーンを例示する。クレーン20は、地面に設けられたレール36に沿って走行可能である。クレーン20は、吊荷を吊るジブ31と、ジブ31を支持する本体部32と、本体部32を旋回可能に支持する支柱34と、支柱34を支持してレール36に沿って走行可能な走行部33と、を備える。ジブ31から延びるワイヤの先端には吊具37が設けられ、当該吊具37で吊荷38を吊る。従って、吊荷38の位置は吊具37の位置と一致する。
【0027】
ジブ31は、吊具37とともに旋回中心CL周りに旋回角度θにて旋回し、本体部32に対する引込半径R1の大きさにより、吊具37の径方向の位置を変更できる。従って、吊具37は、図2(b)で一点鎖線で示される円の範囲内で移動可能である。また、吊具37の位置は、レール36に沿ってクレーン20が走行速度Vにて走行することで変更できる。
【0028】
図1に示すように、クレーン20は、荷重検出部21と、位置検出部22と、情報送受信部23と、を備える。
【0029】
荷重検出部21及び位置検出部22は、クレーン20の各々の荷役動作に関する荷役動作情報を取得する機能を有する。なお、クレーン20に設けられた検出部は、荷重検出部21及び位置検出部22に限定されず、カメラなど、他の検出部を備えていてもよい。荷重検出部21は、吊具37に作用する荷重の荷重データを検出する。荷重検出部21として、荷重計などが採用されてよい。
【0030】
位置検出部22は、吊荷38の位置を検出可能な情報を取得することができる機器である。例えば、位置検出部22は、クレーン20の走行位置、ジブ31の旋回位置、及びジブ31の引込位置を検出する位置検出機器などによって構成される。すなわち、クレーン20の走行位置、ジブ31の旋回位置、及びジブ31の引込位置が定まれば、吊具37及び吊荷38の位置を特定することができる。従って、クレーン20の走行位置、ジブ31の旋回位置、及びジブ31の引込位置は、吊荷38の位置を検出することを可能とする情報である。なお、位置検出部22は、吊荷38の位置を検出することを可能とする情報を取得できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、位置検出部22として、吊具37に設けられたGPS等の位置計測器を採用してもよく、その他、レーザー距離計等で測定したレール端からの距離などが採用されてよい。
【0031】
情報送受信部23は、取得した情報を管理装置10へ送信する。また、情報送受信部23は、管理装置10からの情報を受信する。情報送受信部23は、無線通信によって情報を送受信する。
【0032】
管理装置10は、荷重検出部21及び位置検出部22で取得された複数のクレーン20の各々の荷役動作情報を収集して統合する装置である。また、管理装置10は、統合された状態の荷役動作情報を出力する。管理装置10は、統合された状態の荷役動作情報を表示部15へ送信して、当該表示部15を介して表示する。なお、統合された状態の荷役動作情報とは、どのクレーン20が、どのような荷役動作を行ったかを、互いに紐付けした状態で示した情報である。管理装置10は、各クレーン20における実績荷重データの推移、水平移動(旋回・起伏・走行など含む全移動データ)の挙動、及び搬送間隔時間による搬送作業の独立性から運搬物の搬送が行われたことを自動認識し、搬送作業実績としてその荷重値及び搬送時間帯・搬送履歴を蓄積・表示・記録する。
【0033】
次に、管理装置10の具体的な構成について説明する。管理装置10は、荷役動作情報取得部11と、設定部12と、搬送作業実績情報取得部13と、計画取得部14と、引当部16と、情報送受信部17と、記憶部18と、を備える。
【0034】
荷役動作情報取得部11は、クレーン20の荷役動作情報を取得する。荷役動作情報は、荷重データを少なくとも含み、本実施形態では、荷重検出部21によって検出された荷重データ、及び位置検出部22によって検出された吊具37の位置データを含む。
【0035】
設定部12は、荷役動作情報に基づいてクレーン20における作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する。パラメータは、事前に登録可能であり、記憶部18に記憶される。後述の搬送作業実績情報取得部13による自動判定の際に、パラメータを事前登録し、設定部12は、これらを現場に合わせ適切にチューニングすることで、判定の精度向上を図る。各々のパラメータは、設定範囲(最小値~最大値)と初期値を有する。なお、パラメータの内容については、後述のフローチャートと共に詳細に説明する。
【0036】
搬送作業実績情報取得部13は、設定部12で設定されたパラメータを用いて、荷役動作情報の判定を行うことで、搬送作業の実績を示す搬送作業実績情報を取得する。搬送作業実績情報は、クレーン20が実際に行った搬送作業の搬送開始時刻、搬送終了時刻、及び搬送中の荷重(例えば最大荷重など)の情報を含む。搬送作業実績情報取得部13は、取得された荷役動作情報の中から、クレーン20による吊荷38の搬送作業に該当する箇所を自動的に判定を行うことで取得する。
【0037】
計画取得部14は、クレーン20による搬送作業の計画を取得する。計画取得部14は、予め登録された搬送作業計画タスクを取得する。なお、登録された搬送作業計画タスクは、記憶部18に記憶されてよい。搬送作業計画タスクは、例えば、搬送される吊荷38の内容、及びどこからどこの位置まで搬送を行うかなどの情報を含む。計画取得部14は、例えば1日のはじめ、または前日に、作業日全体の中で行う予定の複数の搬送作業計画タスクを取得する。
【0038】
引当部16は、予め登録された搬送作業計画タスクに対して、搬送作業実績情報を引き当てる。引当部16は、複数の方法によって、引き当てを行うが、具体的な例については後述する。
【0039】
情報送受信部17は、取得した情報を表示部15へ送信する。また、情報送受信部17は、各クレーン20からの情報を受信する。情報送受信部17は、無線通信によって情報を送受信する。
【0040】
次に、図3を参照して、管理装置10が行う処理内容について説明する。図3に示すように、管理装置10の計画取得部14は、対象となるクレーン20について、作業日における一日分の搬送作業計画タスクを取得する(ステップS10)。
【0041】
次に、管理装置10の荷役動作情報取得部11は、対象となるクレーン20から荷役動作情報を取得する(ステップS20)。管理装置10の搬送作業実績情報取得部13は、ステップS20で取得した荷役動作情報に基づいて、搬送作業実績情報を取得する(ステップS30)。なお、ステップS30では、各種判定を行うために、設定部12が事前にパラメータの設定を行う。
【0042】
管理装置10の引当部16は、ステップS10で取得した搬送作業計画タスクに対して、ステップS30で取得した搬送作業実績情報を引き当てる。管理装置10は、ステップS10で取得された搬送作業計画タスクを参照し、一日分の作業計画が終了したか否かを判定する(ステップS50)。ステップS50において、終了していないと判定した場合、ステップS20から再び処理を繰り返す。なお、管理装置10は、荷役動作情報をリアルタイムで取得し、リアルタイムで引き当てを行ってもよい。ただし、管理装置10は、一日分の作業が終わった後に、一日分の荷役動作情報をまとめて取得し、まとめて引き当てを行ってもよい。
【0043】
次に、図4図8を参照して、搬送作業実績情報の取得の処理(図3のステップS30)の具体的な内容について説明する。管理装置10は、自動的に判定を行って搬送作業実績情報を取得することができる。図4に示すように、管理装置10は、大きく分けて七段階の手順を踏むことで、搬送作業実績を取得する。
【0044】
管理装置10は、荷重値変動平滑化操作を行う(ステップS110)。荷重データは、細かい変動の影響を受けるため、微細な震動成分を有している(例えば、図10の実荷重のグラフG2を参照)。従って、ステップS110では、管理装置10は、荷重変動の影響を受けにくくするため、取得した荷重データから微細な振動成分を除去する。
【0045】
次に、管理装置10は、クレーン20の吊具37における吊荷38の存在の認識を行う(ステップS120)。吊具37が吊荷38を吊っていない場合であっても、様々な偶発変動や吊具の影響などの誤差によって、荷重を検出することがある。従って、ステップS120では、管理装置10は、そのような誤差を超える荷重の存在を認識する。
【0046】
次に、管理装置10は、搬送作業開始の認識を行う(ステップS130)。搬送作業が開始されたことの誤検知を抑制するために、ステップS130では、管理装置10は、上述のステップS130の状態が一定時間継続したことにより搬送作業の開始時刻を認識する。
【0047】
次に、管理装置10は、移送の判定を行う(ステップS140)。ステップS140では、管理装置10は、上述のステップS130の状態において、クレーン20による「搬送」を確定するために、吊荷38が移送されたことの事実を認識する。
【0048】
管理装置10は、搬送作業終了の認識を行う(ステップS150)。ステップS150では、管理装置10は、上述のステップS140の状態から荷重が抜けたことを確認し、搬送作業の終了時刻を把握する。
【0049】
管理装置10は、タスク間隔時間の判定を行う(ステップS160)。同じ搬送作業タスクの中でも、一度吊荷38を地面に置いて、再び搬送を再開するような場面がある。このような場合は、一度荷重が抜けたとしても、同一の搬送作業タスクとみなす必要がある。例えば、図11のP3に示すバーチャートに対応する実荷重のグラフG2を参照すると、一時的に荷重が低下している箇所が存在するが、間隔が短いため、同一の搬送作業とみなされている。独立したタスクの間には、一定の時間が設けられる。従って、ステップS150では、管理装置10は、上述のステップS150での搬送作業終了の観測後、新たなタスク(搬送作業)が開始されるまでのタスク間隔時間を観測し、タスクの独立性を判定する。
【0050】
管理装置10は、搬送実績の把握を行う(ステップS170)。管理装置10は、ステップS160の判定にて独立した搬送作業であることを確認した後、ステップS130~S150の一連の搬送作業の間の実績荷重値と搬送開始時刻及び搬送終了時刻を抽出し記録する。
【0051】
次に、上述の処理を行うために用いられるパラメータについて説明する。
【0052】
ステップS110で設定されるパラメータは、荷重検出サンプリングピッチSpと、平滑区間Tsと、を含む。荷重検出サンプリングピッチSpは、荷重データを平滑化するための荷重データを間引くピッチを示すパラメータである。平滑区間Tsは、荷重データを平滑化するための中央値の演算を行う区間を示すパラメータである。中央値演算は、荷重の誤差変動を抑制するために行われる。
【0053】
ステップS120で設定されるパラメータは、吊荷検知下限値Waを含む。吊荷検知下限値Waは、荷重の必然・偶然誤差を回避するための前記クレーンが吊っている吊荷の存在を認識するための前記荷重データに対する下限値を示すパラメータである。なお、吊荷検知下限値Waは、下記の要素パラメータに分解され、各要素パラメータの和「Wa=Le+Wt+We」で示される。
「Le:荷重計測定誤差…測定システムのヒステリシスに起因する誤差」
「Wt:吊具重量…フック下の荷物を吊るための道具の重量」
「We:荷重の偶発的変動…機体の固有振動数に起因する地切時の揺れ、風による荷ぶれ振動など」
【0054】
ステップS130で設定されるパラメータは、吊荷検知下限値超え監視時間Tcを含む。吊荷検知下限値超え監視時間Tcは、吊直しや寸動動作をの誤検知を回避し、クレーン20による搬送作業の開始時刻を正確に認識するため、荷重データが吊荷検知下限値を超えた時間を監視するためのパラメータである。
【0055】
ステップS140で設定されるパラメータは、移動検知下限値Laを含む。移動検知下限値Laは、クレーン20による移送を認識するための水平移動の下限値を示すパラメータである。なお、検知されるべき移動距離(ΣL)は、「ΣL=Lt+Ls+Lk」で示される。各要素パラメータは以下で示される。
「Lt:走行移動距離=走行速度×継続時間」
「Ls:旋回移動距離=旋回半径×旋回角度変量」
「Lk:起伏移動距離=旋回半径の変化量」
【0056】
ステップS160で設定されるパラメータは、タスク間隔時間Teを含む。タスク間隔時間Teは、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認するための観測時間を示すパラメータである。
【0057】
次に、図5図8を参照して、搬送作業実績情報の取得の処理の具体的な内容について説明する。設定部12は、事前に各種パラメータを設定する。設定部12は、荷重検出サンプリングピッチSp、吊荷検知下限値Wa、吊荷検知下限値超え監視時間の下限値Tc、移動検知下限値La、タスク間隔時間の下限値Teの少なくとも1つのパラメータを搬送作業開始前に設定する(ステップS200)。なお、搬送作業に大きな変更がなく、既に設定済のパラメータから変更が不要な場合には、ステップS200の各種パラメータの少なくとも1つの設定またはステップS200全体を省略してもよい。図5に示すように、搬送作業実績情報取得部13は、取得された荷重データに基づいて、吊荷38の荷重の検知を開始する(ステップS210)。設定部12は、ステップS200で設定された荷重検出サンプリングピッチSpを取得し、展開する(ステップS220)。搬送作業実績情報取得部13は、ステップS220で設定された荷重検出サンプリングピッチSpにて、荷重検出のサンプリングを行いサンプリング値Wsの取得を開始する(ステップS230)。設定部12は、平滑区間Tsを設定する(ステップS240)。搬送作業実績情報取得部13は、ステップS240で設定した平滑区間Tsにおけるサンプリング値Wsの中央値Wmを算出する(ステップS250)。図5のステップS210~S250が、図4のステップS110に該当する。
【0058】
次に、図6に示すように、設定部12は、ステップS200で設定された吊荷検知下限値Waを取得し、展開する(ステップS260)。例えば、図10において、グラフG2に対して、吊荷検知下限値WaのグラフG1が設定される。搬送作業実績情報取得部13は、荷重検出の中央値Wmが、吊荷検知下限値Waを超えたか否かを判定する(ステップS270)。ステップS270において「NO」の場合、図5のステップS230へ戻る。ステップS270において「YES」の場合、設定部12は、ステップS200で設定された吊荷検知下限値超え監視時間の下限値Tcを取得し、展開する(ステップS280)。搬送作業実績情報取得部13は、荷重検出の中央値Wmが吊荷検知下限値Waを超えている状態の継続時間が、吊荷検知下限値超え監視時間の下限値Tcを超えたか否かを判定する(ステップS290)。ステップS290において「NO」の場合、図5のステップS230へ戻る。ステップS290において「YES」の場合、搬送作業実績情報取得部13は、搬送作業開始を確定させ、搬送開始時間Tfの記憶を行う(ステップS300)。図10では、グラフG3が立ち上がった箇所が搬送開始が確定された箇所である。図6のステップS260~S270が、図4のステップS120に該当する。図6のステップS280~S300が、図4のステップS130に該当する。
【0059】
次に、図7に示すように、設定部12は、ステップS200で設定された移動検知下限値Laを取得し、展開する(ステップS310)。搬送作業実績情報取得部13は、水平移動距離の計算を行う(ステップS320)。水平移動距離の計算は、上述のように「ΣL=Lt+Ls+Lk」によって行われる。搬送作業実績情報取得部13は、水平移動距離ΣLが移動検知下限値Laを超えたか否かを判定する(ステップS330)。ステップS330において「NO」の場合、ステップS320へ戻る。ステップS330において「YES」の場合、搬送作業実績情報取得部13は、クレーン20が搬送作業中であることを確定する。図10では、グラフG3が高い位置にて水平に推移している箇所が、搬送作業中であることが確定された箇所である。搬送作業実績情報取得部13は、荷重検出の中央値Wmが吊荷検知下限値Wa以下となったか否かを判定することで搬送終了の判定を行う(ステップS350)。ステップS350において「NO」の場合、ステップS340へ戻る。ステップS350において「YES」の場合、搬送作業実績情報取得部13は、搬送作業終了の仮決定を行い、搬送終了時刻Ttを把握する(ステップS360)。図7のステップS310~S340が、図4のステップS140に該当する。図7のステップS350~S360が、図4のステップS150に該当する。
【0060】
次に、図8に示すように、設定部12は、ステップS200で設定されたタスク間隔時間の下限値Teを取得し、展開する(ステップS370)。搬送作業実績情報取得部13は、搬送作業終了時刻から引き続く搬送作業開始時刻までのタスク間隔時間(Tt2-Tt1)が、タスク間隔時間の下限値Teを超えたか否かを判定する(ステップS380)。ステップS380において「NO」の場合、図6のステップS300へ戻る。ステップS380において「YES」の場合、搬送作業実績情報取得部13は、搬送作業終了を確定させ、搬送終了時刻の記憶を行う(ステップS390)。図10では、グラフG3が立ち下がった箇所が搬送終了が確定された箇所である。搬送作業実績情報取得部13は、搬送実績の把握を行う(ステップS400)。ステップS400では、搬送作業実績情報取得部13は、搬送開始時刻、搬送終了時刻、搬送開始から終了時刻の間の最大荷重などを把握する。搬送作業実績情報取得部13は、搬送実績値の蓄積、表示、記録を行う(ステップS410)。図8のステップS370~S390が、図4のステップS160に該当する。図8のステップS400~S410が、図4のステップS170に該当する。以上により、図5図8の処理が終了する。
【0061】
次に、図9及び図10を参照し、図3のステップS40に示す、搬送作業実績データの搬送作業計画タスクへの引き当てについて具体的に説明する。
【0062】
図9は、作業開始前における表示部15での表示内容を示す図である。ここでは、表示部15の表示内容は、クレーン20の運転者、及び管理者に共有されているものとする。 図10は、作業開始後における表示部15での表示内容を示す図である。表示部15の画面は、作業者が操作を行う操作エリアE1と、グラフを示すグラフエリアE2と、搬送作業計画タスクの内容を示す一覧表エリアE3と、搬送作業計画タスクと搬送作業実績データとの紐付けを行うバーチャートエリアE4と、を有する。
【0063】
操作エリアE1は、運転手が必要に応じタスク指定や搬送作業の開始・終了などを指示するエリアである。グラフエリアE2は、搬送自動判定結果のグラフを表示するエリアである。グラフエリアE2の横軸は、時刻を示しており、下側のバーチャートエリアE4の時刻と一致している。グラフエリアE2の縦軸は荷重を示す。グラフエリアE2には、吊荷検知下限値を示すグラフG1と、吊具37に作用する実荷重を示すグラフG2と、搬送作業判定結果を示すグラフG3と、クレーン20の走行位置(固定装置位置からのプラスマイナス距離)を示すグラフG4と、が示される。このように、表示部15は、荷役動作情報(実荷重)と、パラメータ(吊荷検知下限値)と、搬送作業実績情報取得部13によって取得された搬送作業実績情報(搬送作業判定結果)と、を同時に表示する。
【0064】
一覧表エリアE3では、当日の搬送作業計画が、タスク作業内容(対象製品・ブロック名・From・To・作業内容)とその作業開始・終了予定時刻及び予定重量が作業開始予定時刻の早い順に明示されている。これは、前日夕方又は当日作業開始前に事前登録される。図9に示すように、作業開始の前段階から、その日に行う搬送作業計画タスクが予め計画されている。図9の例では、「水切」「組立」「搭載」「小物」という作業名の四つの搬送作業計画タスクが計画されている。当日に搬送作業計画タスクが追加された場合は、一覧表エリアE3に「予定外」の作業として追加される。
【0065】
搬送作業実績データの搬送作業計画タスクへの引き当てでは、引当部16は、「自動引き当て」「タスク指定自動引き当て」「予定外作業の自動引き当て」「軽荷重作業の強制判定引き当て」の四通りの方法を実行する。
【0066】
[自動引き当て]
引当部16は、搬送作業実績情報取得部13で取得された搬送作業実績情報を、計画の順番で搬送作業計画タスクに自動的に引き当てる。実際の搬送作業がその順番で実施される場合は、引当部16は、自動判定された搬送作業実績情報を搬送作業計画の上から順に自動的に引き当てる。例えば、引当部16は、図10において一番はじめに自動判定された搬送作業W1を、一番目の搬送作業計画タスクに引き当てる。これにより、一番目の搬送作業計画タスクにおける搬送作業W1に対応する時刻に対して、「P1」のバーチャートが表示される。
【0067】
[タスク指定自動引き当て]
引当部16は、搬送作業計画タスクが指定された場合、取得された搬送作業実績情報を、指定された搬送作業計画タスクに引き当てる。当日の現場の状況で搬送作業計画の順番が変わった場合は、これから行う搬送作業タスクをタッチパネル操作などにて指定する。例えば、図11に示すように、上から二番目の搬送作業計画タスクよりも、上から三番目の作業計画タスクを先に行う必要が出た場合、作業者は、上から三番目の搬送作業計画タスクの位置をタッチする。これにより、二番目に自動判定された搬送作業W2は、指定された三番目の搬送作業計画タスクに引き当てられる(「P2」参照)。また、三番目に自動判定された搬送作業W3は、前述の「自動引き当て」の方法に従い、割り込みによって順序が後になった上から二番目の搬送作業計画タスクに引き当てられる(「P3」参照)。
【0068】
[予定外作業の自動引き当て]
引当部16は、予定外の搬送作業であることを宣言された場合、取得された搬送作業実績情報を、搬送計画以外の搬送作業タスクとして引き当てる。これから行う搬送作業内容が、あらかじめ登録された搬送作業計画タスクにない場合、作業者は、タッチパネルの操作などにより「予定外作業」であることを宣言する。例えば、図12に示すように、作業者は、操作エリアE1の「予定外作業」のボタンを押す。この場合、そのタイミングで自動判定された搬送作業W5は、上から五番目の欄にあたらに設定された「予定外作業」に引き当てられる(「P5」参照)。
【0069】
[軽荷重作業の強制判定引き当て]
引当部16は、搬送作業タスクが指定され、搬送作業開始の宣言、及び搬送作業終了の宣言を入力された場合、搬送作業開始及び搬送作業終了の間に行われた搬送作業を指定された搬送作業計画タスクに引き当てる。搬送作業内容が明らかに吊荷検知下限値Wa未満の軽荷重であることが予測される場合は、作業者のタッチパネルの操作などにより指示によって、搬送作業計画タスクを指定した上で、タッチパネル操作などにより搬送作業開始宣言と搬送作業終了宣言を行うことで、当該搬送作業開始時刻・搬送作業終了時刻及びその間の実績最大荷重値を強制的に獲得し、収集・表示・記録することができる。図13に示す例では、作業者が操作エリアE1の「搬送開始」ボタンを押し、搬送作業が終わったら「搬送終了」ボタンを押す。このとき、搬送作業としては自動判定されておらず、グラフG3は立ち上がっていないが、「搬送開始」「搬送終了」ボタンが押されたタイミングで、上から四番目の「小物」の搬送作業計画タスクの欄にバーチャートが描画される(「P4」参照)。なお、この場合の実績荷重値は荷重計の誤差や機体振動による変動が含まれていることを認識し、取り扱いには留意が必要となる。搬送作業があったことは記録として残され、その目的においては有効である。
【0070】
次に、本実施形態に係るクレーン20の作業管理システム100の作用・効果について説明する。
【0071】
本実施形態のクレーンの作業管理システム100は、荷役動作情報に基づくクレーン20における作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定部12を備える。また、このようなパラメータを事前に登録しておくことができる。これにより、パラメータを用いて、クレーンの作業内容を荷役動作情報に基づいて自動的に判定することが可能となる。また、作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして事前に登録しておくことで、現場に合わせた自動判定が可能となる。以上より、クレーン20の作業内容を容易且つ正確に判定することができる。
【0072】
パラメータは、荷重データを平滑化するための荷重データを間引くピッチを示す荷重検出サンプリングピッチと、荷重データを平滑化するための中央値の演算を行う区間を示す平滑区間と、を含んでよい。この場合、荷重データを平滑化し、荷重データの振動等の影響を低減した状態で、クレーン20の作業内容を判定することが可能となる。
【0073】
パラメータは、クレーン20が吊っている吊荷38の存在を認識するための荷重データに対する下限値を示してよい。この場合、荷重の必然・偶然誤差を回避し、クレーン20が吊荷38を吊っていない状態を、搬送作業として誤検知することを抑制できる。
【0074】
パラメータは、クレーン20による搬送作業の開始時刻を認識するため、荷重データが吊荷検知下限値を超えた時間を監視するためのタスク監視時間に対する下限値を示すタスク監視時間の下限値を含んでよい。この場合、吊直しや寸動動作を搬送開始として誤検知することを抑制できる。
【0075】
パラメータは、クレーン20による移送を認識するための水平移動の下限値を示す移動検知下限値を含んでよい。この場合、クレーン20による移送が行われていることを正確に確認することができる。
【0076】
パラメータは、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認するための観測時間を示す、タスク間隔時間に対する下限値を示すタスク間隔時間の下限値を含んでよい。この場合、連続する搬送作業タスク間の独立性を確認することができる。
【0077】
クレーンの作業管理システム100は、設定部12で設定されたパラメータを用いて、荷役動作情報の判定を行うことで、搬送作業の実績を示す搬送作業実績情報を取得する、搬送作業実績情報取得部13を更に備えてよい。この場合、搬送作業実績情報取得部13は、上述のパラメータを用いて、搬送作業の実績を正確に把握することができる。
【0078】
クレーン20の作業管理システム100は、予め登録された搬送作業計画タスクに対して、搬送作業実績情報を引き当てる引当部を更に備えてよい。この場合、計画と実際の作業とを容易に照らし合わせることができる。
【0079】
引当部16は、搬送作業実績情報取得部13で取得された搬送作業実績情報を、計画の順番で搬送運搬作業計画タスクに自動的に引き当ててよい。この場合、計画と実際の作業を自動的に照らし合わせることができる。
【0080】
引当部16は、搬送作業計画タスクが指定された場合、取得された搬送作業実績情報を、指定された搬送作業計画タスクに引き当ててよい。この場合、搬送作業の順序が計画から変更された場合に、容易に対応することができる。
【0081】
引当部16は、予定外の搬送作業であることを宣言された場合、取得された搬送作業実績情報を、搬送計画以外の搬送作業タスクとして引き当ててよい。この場合、予定外の搬送作業が発生した場合に、容易に対応することができる。
【0082】
引当部16は、搬送作業計画タスクが指定され、搬送作業開始の宣言、及び搬送作業終了の宣言を入力された場合、搬送作業開始及び搬送作業終了の間に行われた搬送作業を指定された搬送作業計画タスクに引き当ててよい。この場合、吊荷に対する荷重が軽い場合であって自動的に搬送作業が判定されない場合であっても、手動で搬送作業計画タスクに引き当てることができる。
【0083】
クレーン20の作業管理システム100は、荷役動作情報と、パラメータと、搬送作業実績情報取得部13によって取得された搬送作業実績情報と、を同時に表示する表示部15を更に備えてよい。この場合、表示部15に表示された内容を参照することで、クレーン20の作業状態を容易に把握することができる。
【0084】
また、作業管理システム100によれば、運転者が介入することなく搬送作業実績が蓄積・表示・記録される全体的な枠組みを構築することができる。また、運転者の指示(操作)によって自動判定困難な軽荷重搬送作業実績の収集も可能となる。運搬物荷役の計画と実績を紐付けて把握することができ、次期生産に際する生産性向上への貢献と客先の日報(当日の搬送作業項目及び作業項目ごとの作業開始時刻から終了時刻間の作業実績実働時間を計上)への自動展開を可能とする。
【0085】
本実施形態に係るクレーン20の作業管理方法は、作業現場に配置されたクレーン20の作業の管理を行うクレーン20の作業管理方法であって、クレーン20における荷重データを少なくとも含む荷役動作情報を取得する荷役動作情報取得ステップと、荷役動作情報に基づいてクレーンにおける作業内容の判定に必要な因子を、調整可能なパラメータとして設定する設定ステップと、を備え、パラメータは、事前に登録可能である。
【0086】
本実施形態の作業管理方法によれば、上述のクレーン20の作業管理システム100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0087】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0088】
クレーンとしてジブクレーンを例示したが、クレーンの種類は特に限定されず、門型クレーンなど他の種類のクレーンに対しても適用可能である。
【0089】
上述のシステムで得られた搬送作業計画と実績データ及び採用された各種パラメータの値を蓄積することで将来のAI化の学習データとして活用してよい。
【符号の説明】
【0090】
11…荷役動作情報取得部、12…設定部、13…搬送作業実績情報取得部、15…表示部、16…引当部、20…クレーン、100…作業管理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13