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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173427
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08J9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091839
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】山中 諒
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AA24A
4F074AB03
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA32
4F074DA33
(57)【要約】

【課題】 本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形における従来の成形時間のさらなる短縮化が可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とし、独立気泡率が85%以上であり、見掛け密度が10kg/m以上250kg/m以下であり、該基材樹脂はセルロース繊維を含有し、該基材樹脂中の該ポリプロピレン系樹脂100質量部に対するセルロース繊維の含有量が1質量部以上20質量部以下である。
【選択図】 なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
該発泡粒子の独立気泡率が85%以上であり、
該発泡粒子の見掛け密度が10kg/m以上250kg/m以下であり、
該基材樹脂はセルロース繊維を含有し、
該基材樹脂中の該セルロース繊維の含有量が該ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記セルロース繊維がセルロースナノファイバー又はセルロースマイクロファイバーである、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記基材樹脂の融点(Tm)が135℃以上165℃以下であり、
該融点(Tm)と該基材樹脂の結晶化温度(Tc)とが、下式(1)を満足する、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

30℃≦Tm―Tc≦40℃ ・・・(1)
【請求項4】
前記発泡粒子の平均気泡径が50μm以上150μm未満である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、柔軟性、緩衝性、断熱性、保温性、軽量性、機械的物性等の諸物性に優れ、しかも複雑な形状が比較的容易に賦形可能であるので、断熱材や緩衝材、包装材等として広く利用されている。
【0003】
該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、ポリプロピレン系樹脂の樹脂粒子を発泡させてポリプロピレン系樹脂発泡粒子とし、得られた発泡粒子を成形型内に充填し、スチームなどを成形型内に導入して発泡粒子を二次発泡させ、更に発泡粒子同士を融着させることにより、型内成型を行って製造されるものである。しかし、発泡粒子成形体を成形型内から取り出す際には、長時間の冷却が必要となっていた。
【0004】
例えば、先行技術としては特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-198872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の環境意識の高まりから、成形時間の短縮化が望まれている。
【0007】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形における成形時間の短縮が可能な、成形性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子が提供される。
[1]ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
該発泡粒子の独立気泡率が85%以上であり、
該発泡粒子の見掛け密度が10kg/m以上250kg/m以下であり、
該基材樹脂はセルロース繊維を含有し、
該基材樹脂中の該セルロース繊維の含有量が該ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[2]前記セルロース繊維がセルロースナノファイバー又はセルロースマイクロファイバーである、前記1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3]前記基材樹脂の融点(Tm)が135℃以上165℃以下であり、
該融点(Tm)と該基材樹脂の結晶化温度(Tc)とが、下式(1)を満足する、前記1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

30℃≦Tm―Tc≦40℃ ・・・(1)

[4]前記発泡粒子の平均気泡径が50μm以上150μm未満である、前記1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記基材樹脂にセルロース繊維を含有させることにより、成形工程における冷却時間が短縮化され、成形時間が短縮される。また得られた発泡粒子は成形性にも優れるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするものである。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするとは、発泡粒子を構成する基材樹脂の主成分がポリプロピレン系樹脂であることを意味する。具体的には、基材樹脂中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、基材樹脂の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0011】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構成単位を主たる構成単位として有する樹脂をいう。ここで、主たる構成単位とは、重合体中のプロピレン成分単位の含有割合が50重量%を超えることを意味し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0012】
該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンに由来する構成単位と他の構成単位とを含むプロピレン系共重合体であってもよい。
該プロピレン系共重合体としては、プロピレンとエチレン又は/及び炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体が挙げられ、具体的には、プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体が例示される。さらに、該プロピレン系共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体等の2元共重合体であっても、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等の3元共重合体であってもよい。これらの中でも、エチレン-プロピレンランダム共重合体が好ましい。
【0013】
該基材樹脂には、他の樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等のポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が含まれていてもよい。
該基材樹脂中におけるその他の樹脂の配合割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがよりさらに好ましく、0質量%、即ち、ポリプロピレン系樹脂のみを含むことが最も好ましい。
【0014】
本発明においては、該基材樹脂はセルロース繊維を含有している。セルロース繊維とは、セルロースもしくはその誘導体を含む、1本の繊維または複数の繊維からなる集合体のことを意味し、植物由来のセルロース原料(パルプ繊維など)を機械的解繊などで処理した微細繊維が好ましく用いられる。なお、微細繊維は、マイクロメートルレベル以下の平均繊維径を有するものが好ましい。具体的には、セルロースナノファイバー、セルロースマイクロファイバーが好ましい。
前記のようなセルロース繊維を用いることで、セルロース繊維はバイオマス資源でもあることから、発泡粒子の植物度を上げることも可能となる。ここで、植物度とは、ASTM D6866により測定された植物度をいう。
【0015】
本発明において、セルロースナノファイバー(以下、CNFということがある)は、セルロース原料がナノメートルレベルの繊維径まで微細化されたものである。CNFの繊維径(平均繊維径)は、3nm以上1000nm未満であることが好ましく、より好ましくは10nm以上500nm以下、さらに好ましくは20nm以上100nm以下である。また、アスペクト比(繊維長さ/平均繊維径)は、1nm以上500以下であることが好ましく、より好ましくは5以上100以下、さらに好ましくは10nm以上50以下である。
【0016】
本発明において、セルロースマイクロファイバー(以下、CMFということがある)は、セルロース原料が機械処理にてマイクロメートルレベルの繊維径まで微細化されたものである。CMFの平均繊維径は1μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。アスペクト比(繊維長さ/平均繊維径)は、1以上500以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましく、10以上50以下であることがさらに好ましい。
【0017】
前記のセルロースナノファイバー、及びセルロースマイクロファイバーは、市販のものを使用することができる。例えば、中越パルプ工業株式会社製セルロースナノファイバー(商品名nanoforest-PDP-01)、ニッポン高度紙工業社製セルロースマイクロファイバーなどが挙げられる。
また、これら市販のセルロース繊維などをあらかじめマスターバッチ化して販売されているものを用いることもできる。例えば以下のものが挙げられる。
GSアライアンス(株)が製造した、セルロースナノファイバー(CNF)のマスターバッチが市販されている。
ニッポン高度紙工業が製造した、セルロースマイクロファイバー(CMF)のマスターバッチが市販されている。
【0018】
前記セルロース繊維の繊維径(D)の測定は、走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測することにより求めることができる。具体的には、少なくとも100本の繊維状物質が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本の繊維状物質の径(D)を計測することにより求めることができる。同時に、セルロースナノファイバーの長さ(L)を測定すれば、アスペクト比(L/D)を算出することができる。
【0019】
本発明において、前記基材樹脂は前記セルロース繊維を含有し、該セルロース繊維の含有量は前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
該含有量が、少なすぎると冷却時間の短縮効果が得られないおそれがある。一方、該含有量が多すぎると、型内成形時の成形性が低下するおそれがある。前記観点から、該含有量は、2質量部以上18質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量部以上16質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
【0020】
本発明においては、前記セルロース繊維を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることで、発泡粒子の型内成形時の冷却時間が短縮される。ここで、冷却時間とは、型内成形時の加熱終了後(スチーム加熱終了後)、成形型から成形体を取り出し可能な温度まで冷却する時間のことを言う。なお、成形体を取り出し可能な温度まで冷却するとは、実質的に成形型から成形体を取り出した際に、急激な温度変化により成形体にヒケや収縮が発生しない温度にまで冷却することをいう。
また、結果として、冷却時間が短縮化されれば、成形サイクル(型締めから離型までの合計時間)も短縮される。
【0021】
セルロース繊維を含む発泡粒子を用いることにより冷却時間が短くなる理由は次のように考えられる。
基材樹脂がセルロース繊維を含有することにより基材樹脂の結晶化温度が上昇する。これにより成形工程において、成形温度から水冷により温度が降下する際に、より高い温度でポリプロピレン系樹脂の結晶化が進行し、高い温度であっても結晶化が進んでいるので、金型温度が高い状態で成形体を取りだしても、成形体の収縮などによる変形が防止されると考えられ、その結果、冷却時間が短縮されると考えられる。
さらに、基材樹脂がセルロース繊維を含有している場合、セルロース繊維が気泡膜中に存在していても、気泡膜の強度が低下することがなく、気泡膜の破泡が生じにくくなり、その結果として、独立気泡率の低下が抑制される。これに対し、従来の無機繊維などを含有する基材樹脂は、このような効果は発現することがなく、気泡膜の強度が低下する傾向があったので、本発明によれば、従来の発泡粒子に比べて成形性に優れる発泡粒子が得られると考えられる。特に、本発明においては、より発泡倍率が高く、気泡膜強度が低下しやすい場合であっても、水冷時間の短縮と成形性に優れる発泡粒子が得られる。
【0022】
本発明においては、前記セルロース繊維を含む基材樹脂の融点(Tm)が135℃以上165℃以下であることが好ましい。該融点がこの範囲内であれば、型内成形性に優れ、冷却時間を短縮しやすくなる。前記観点から、Tmは、140℃以上160℃以下であることが好ましく、145℃以上158℃で以下あることがさらに好ましい。
【0023】
更に、前記基材樹脂の融点(Tm)と前記セルロース繊維を含む基材樹脂の結晶化温度(Tc)とが、下式(1)を満足することが好ましい。
30℃≦Tm―Tc≦40℃ ・・・(1)
融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差が前記範囲内であれば、加熱成形時の温度が成形後のポリプロピレン系樹脂の結晶化状態の形成に適するものとなり、冷却時間の短縮化効果がより発揮される発泡粒子となる。なお、本発明において、基材樹脂の融点及び結晶化温度は、例えば、セルロース繊維を含む基材樹脂を別途作製して測定してもよく、発泡粒子の作製の際に得られる樹脂粒子を用いて測定してもよい。また、樹脂粒子から発泡粒子、発泡粒子成形体を作製した場合でも、樹脂の組成自体に変化はないと考えられることから、発泡粒子を脱泡したサンプルや、発泡粒子成形体を脱泡して得られるサンプルを用いて融点及び結晶化温度を測定して、基材樹脂の融点及び結晶化温度の測定に替えることもできる。
【0024】
本明細書において、前記セルロースを含む基材樹脂の前記融点(Tm)は、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる融解ピーク温度を意味する。試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、このときの冷却速度として毎分10℃を採用する。融解温度を測定する際の加熱速度として毎分10℃を採用する。なお、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点(Tm)とする。
なお、発泡粒子についても、前記と同様の方法で融点(Tmf)を測定することができる。
【0025】
本明細書において、前記結晶化温度(Tc)は、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる結晶化ピーク温度を意味する。試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、冷却速度として毎分10℃を採用する。なお、結晶化発熱ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度(Tc)とする。
なお、発泡粒子についても、前記と同様の方法で結晶化温度(Tcf)を測定することができる。
【0026】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の各種物性について説明する。
本発明の発泡粒子の見掛け密度は10kg/m以上250kg/m以下である。該見掛け密度が、この範囲内であれば、型内成型により得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体、又は成形体ともいう。)は、軽量性と機械的強度のバランスがとれたものとなる。前記観点から、発泡粒子の見掛け密度は、20kg/m以上200kg/m以下が好ましく、より好ましくは30k/m以上150kg/m以下、更に好ましくは50kg/m以上100kg/m以下である。
【0027】
発泡粒子の見掛け密度は、水没法により測定される。具体的には、水を入れたメスシリンダー内に重量W(g)の発泡粒子群を投入して水位の上昇から発泡粒子群の体積Vを求め、該発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群の体積Vで除し(W/V)、単位換算して求められる。
【0028】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は50μm以上150μm未満であることが好ましい。該平均気泡径が前記範囲内であれば、発泡粒子の気泡が型内成形時の二次発泡に耐えることができ、融着性に優れる発泡粒子成形体が得られる。また、得られた発泡粒子成形体は、機械的強度が高く、耐久性に優れるものとなる。前記観点から、発泡粒子の平均気泡径は、60μm以上140μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは70μm以上135μm以下である。
【0029】
本発明において、前記の発泡粒子の平均気泡径は、次のように測定される。
発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその切断面の写真を撮影する。得られた断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引く。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除した値を1つの発泡粒子の平均気泡径とする。この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均した値を、本明細書における発泡粒子の平均気泡径とする。
【0030】
本発明の発泡粒子の独立気泡率は、85%以上である。独立気泡率が前記範囲であれば、型内成形時の二次発泡性に優れ、得られる発泡粒子成形体の強度の低下が起きにくいものとなる。特に、基材樹脂にセルロース繊維が含まれる場合には、独立気泡率が低下し難く、成形性に優れる発泡粒子が得られやすい。前記観点から、発泡粒子の独立気泡率は、90%以上であることが好ましい。なお、発泡粒子の独立気泡率の上限は100%である。
【0031】
発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、10日間放置した嵩体積約20cmの発泡粒子を測定用サンプルとし前記した水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定する。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記の(4)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(2)
ただし、
Vx:前記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/c)
【0032】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる製造法について説明する。
本発明の発泡粒子の製造方法は特に限定されるものではない。一の例として、従来公知の方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂の粒子を密閉容器内で分散媒中に分散させるとともに、加圧下、好ましくはさらに加熱下で前記ポリプロピレン系樹脂の粒子に発泡剤を含浸させ、発泡に適した温度条件にて、前記発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂の粒子を前記密閉容器から密閉容器内の圧力よりも低圧下(通常は大気圧下)に放出して発泡させ、発泡粒子を得ることができる。以下、該発泡方法を分散媒放出発泡法ともいう。
また、他の例として、密閉容器内でポリプロピレン系樹脂の粒子に発泡剤を含浸させて、発泡させずに密閉容器から取り出して発泡性粒子とし、もしくは、押出機内でポリプロピレン系樹脂の粒子と発泡剤とを混練し、該混練物を押出機に付設されたダイから水中などに発泡させずに押し出し、粒状にカットして発泡性粒子とし、得られた発泡性粒子を加熱して発泡させて、発泡粒子を得ることもできる。また、従来公知の、押出発泡粒子の製造方法により発泡粒子を得ることもできる。
【0033】
次に、前記分散媒放出発泡法について詳しく説明する。該方法においては、樹脂粒子製造工程、発泡工程を経ることにより発泡粒子を得ることができる。更に、発泡粒子を得た後、別途行われる成形工程において、得られた発泡粒子を用いて型内成形を行うことにより発泡粒子成形体が得られる。
【0034】
樹脂粒子製造工程においては、前記ポリプロピレン系樹脂と前記セルロース繊維と必要に応じた気泡調節剤とを押出機に供給し、加熱、溶融、混練することで溶融樹脂混練物とし、得られた溶融樹脂混練物を押出機先端に取り付けたダイの細孔からストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで所望される重量となるように切断し、乾燥することでペレット状のポリプロピレン系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう。)が得られる。
なお、セルロース繊維は、ポリプロピレン系樹脂とよく混ざり合わせるために、セルロース繊維が樹脂中に分散されたマスターバッチとして供給することが好ましい。
【0035】
発泡粒子の気泡径を調節するために、発泡粒子を構成する基材樹脂に気泡調節剤を含有させることが好ましい。該気泡調節剤を含有させることにより、発泡粒子の気泡径を調節することができる。該気泡調節剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバン等の無機粉体や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの有機粉体が挙げられる。その添加量は、基材樹脂100重量部あたり、0.001~10重量部が好ましく、0.01~5重量部がより好ましい。
尚、基材樹脂に気泡調節剤を添加する場合、気泡調節剤をそのまま配合することもできるが、通常は分散性等を考慮して気泡調節剤のマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0036】
また、該基材樹脂には、帯電防止剤、触媒中和剤、滑剤、核剤、カーボンブラック等の着色剤、難燃剤等の添加剤を含有させることができる。該添加剤の添加量は、添加物の種類や使用目的にもよるが、基材樹脂100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以下である。
【0037】
該樹脂粒子の重量は、型内への発泡粒子の均一な充填性を確保できることから、0.02~20mgが好ましく、0.1~6mgがより好ましい。
【0038】
該分散媒放出発泡法においては、樹脂粒子を物理発泡剤等と共にオートクレーブ等の密閉容器内で水等の分散媒に分散させ、分散媒を樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し、樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、次に、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を水等の分散媒と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡させることによって、発泡粒子を得ることができる。また、物理発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器から取り出し、蒸気等の加熱媒体で加熱して発泡させても良い。
【0039】
分散媒放出発泡法においては、発泡が起こらない高圧下から発泡が起きる低圧下へ放出する際の高圧下と低圧下の差圧は400kPa以上、好ましくは500~15000kPaとすることが好ましい。
【0040】
分散媒放出発泡法で用いられる発泡剤としては、通常、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、ハイドロフルオロオレフィン等の有機物理発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機物理発泡剤が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく且つ安価な無機物理発泡剤が好ましく、特に窒素、空気、二酸化炭素が好ましい。また、これらの発泡剤を二種以上併用することもできる。
【0041】
発泡剤の使用量は、得ようとする発泡粒子の見掛け密度と発泡温度との関係に応じて適宜に選択される。具体的には、窒素、空気を除く前記発泡剤の場合、発泡剤の使用量は通常樹脂粒子100重量部当り2~50重量部である。また窒素、空気の場合は、密閉容器内の圧力が1~5MPa(G)の圧力範囲内となる量が使用され、好ましくは1~2MPa(G)である。
【0042】
密閉容器内において、樹脂粒子を分散させるための分散媒としては水が好ましいが、樹脂粒子を溶解しないものであれば使用することができ、このような分散媒としては例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0043】
発泡粒子の平均気泡径の大きさは、発泡剤の種類と量、発泡温度と気泡調節剤の添加量で調節される。また、見掛け密度は、発泡剤の添加量と発泡温度と、発泡時の前記差圧により調節される。適正な範囲内においては、一般的に、発泡剤の添加量が多いほど、発泡温度が高いほど、前記差圧が大きいほど、得られる発泡粒子の見掛け密度は小さくなる。
【0044】
密閉容器内において、樹脂粒子を分散媒に分散せしめて発泡温度に加熱するに際し、樹脂粒子相互の融着を防止するために融着防止剤を用いることができる。融着防止剤としては水等に溶解せず、加熱によっても溶融しないものであれば、無機系、有機系を問わずいずれも使用可能であるが、一般的には無機系のものが好ましい。
【0045】
無機系の融着防止剤としては、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が好適である。該融着防止剤としては平均粒径0.001~100μm、特に0.001~30μmのものが好ましい。また融着防止剤の添加量は樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.01~10重量部が好ましい。
【0046】
また分散助剤としてドデシルベンゼンスルホンン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や硫酸アルミニウムが好適に使用される。該分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、通常0.001~5重量部添加することが好ましい。
【0047】
見掛け密度の小さい発泡粒子を製造する場合、前記分散媒放出発泡方法等により発泡粒子を製造し、得られた発泡粒子をさらに発泡させる、所謂二段発泡を行うことが好ましい。二段発泡においては、発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの気体により加圧処理して発泡粒子の内圧を0.01~0.6MPa(G)に高める操作を行った後、該発泡粒子を該容器内から取り出し、蒸気等の加熱媒体を用いて加熱することにより、見掛け密度の小さい発泡粒子を容易に得ることができる。
【0048】
発泡粒子成形体は、従来公知の方法により、前記発泡粒子を成形型内に充填し、蒸気等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより得ることができる。具体的には、該発泡粒子を成形型内に充填した後、該成形型内に蒸気を導入することにより、発泡粒子を加熱し発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。
また、低い成形体密度(高発泡倍率)の発泡粒子成形体を得る方法として、必要に応じて上述した二段発泡における操作と同様の発泡粒子内の圧力を高める加圧処理操作を行なって発泡粒子内の内圧を0.01~0.2MPa(G)に調整してから、型内成形する方法がある。
【0049】
本発明の発泡粒子を用いて、型内成形を行う場合、成形蒸気圧(成形スチーム圧)は、0.05~0.5MPa(G)とすることが好ましく、より好ましくは0.1~0.46MPa(G)であり、さらに好ましくは0.2~0.45MPa(G)である。
【0050】
本発明においては、発泡粒子を、成形型内に圧縮率が4~25体積%となるように、好ましくは5~20体積%となるように充填した後、蒸気により型内成形する方法を採用することによっても目的とする成形体を得ることができる。
【0051】
圧縮率の調整は、発泡粒子を成形型内(キャビティー)に充填する際に、キャビティー体積を超える発泡粒子の量をクラッキング充填することにより行なわれる。クラッキング充填は、発泡粒子を成形型に充填する際に成形型内の空気を金型内から排気したり、発泡粒子の成形型内への充填を効率良く行うために、発泡粒子の充填時に成形型を完全に閉鎖させないで行なわれる充填方法である。なお、クラッキングとは成形型の開き部分をいい、クラッキングは成形型内に発泡粒子を充填後、蒸気を導入する際には最終的に閉じられ、その結果充填された発泡粒子は圧縮される。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0053】
実施例、比較例で原料として用いた、ポリプロピレン系樹脂、セルロース繊維等の繊維は次の通りである。
【0054】
(ポリプロピレン系樹脂)
(1)略称「PP1」:(株)プライムポリマー製「エチレン-プロピレンランダムコポリマー」(融点;153℃、エチレン成分量 1.2質量%、結晶化温度110℃、メルトフローレイト;7 g/10min)
(2)略称「PP2」:(株)プライムポリマー製「エチレン-プロピレンランダムコポリマー」(融点;143℃、エチレン成分量 3.2質量%、結晶化温度101℃、メルトフローレイト;8g/min)
【0055】
(繊維)
(1―1)略称「CNF1」:GSアライアンス(株)製CNF含有マスターバッチ(樹脂;PP1、セルロース繊維(CNF;繊維径50nm、繊維長1μm、アスペクト比20、含有割合4質量%)
(1―2)略称「CNF2」:GSアライアンス(株)製CNF含有マスターバッチ(樹脂;PP1、セルロース繊維(CNF;繊維径50nm、繊維長1μm、アスペクト比20、繊維含有割合10質量%)
(1―3)略称「CNF3」:GSアライアンス(株)製CNF含有マスターバッチ(樹脂;PP2、セルロース繊維(CNF;繊維径50nm、繊維長1μm、アスペクト比20、繊維含有割合10質量%)
(1―4)略称「CNF4」:CNF;繊維径50nm、繊維長1μm、アスペクト比20(繊維含有割合100質量%)
(2)略称「CMF1」:ニッポン高度紙工業(株)製CMF含有マスターバッチ(樹脂;PP1、セルロース繊維(CMF;繊維径3μm、繊維長1000μm、アスペクト比330、繊維含有割合20質量%)
(3)略称「GF」:ガラス繊維含有マスターバッチ(樹脂;ホモポリプロピレン、ガラス繊維(繊維径13μm、繊維長300μm、アスペクト比23、繊維含有割合30質量%)
(4)略称「MgSOF」:宇部マテリアルズ(株)製MgSOファイバー単独品(繊維径0.8μm、繊維長200μm、アスペクト比25~60、繊維含有割合100質量%)
【0056】
実施例1~9、比較例1~6
(樹脂粒子製造工程)
実施例1~4、実施例9においては、前記のマスターバッチを、表1又は2に記載されている基材樹脂の繊維質量%の含有量となるように押出機に供給した。
実施例5~8、比較例3、比較例4においては、前記のマスターバッチと、表1又は2に記載されたポリプロピレン系樹脂とを、表1、表2に記載されている基材樹脂の繊維質量%の含有量となるように押出機に供給した。
比較例1、比較例2においては、表1又は表2に記載されたポリプロピレン系樹脂を押出機に供給した。
比較例5においては、表2に記載されたポリプロピレン系樹脂と表2に記載された無機繊維とを押出機に供給した。
次に、押出機内でこれらを溶融混練することで、溶融混練物を形成した。
なお、基材樹脂には、気泡調節剤としてホウ酸亜鉛(富田製薬社製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径6μm)を含有量1000ppmとなるように添加した。溶融混練物は、押出機先端に取り付けたダイの細孔から断面円形状のストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで1個当たりの平均重量が1mgとなるように切断し、乾燥することでペレット状の樹脂粒子を得た。
【0057】
(発泡工程)
前記樹脂粒子500gと分散媒としての水3.5Lとを、撹拌機を備えた5Lのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、分散剤としてカオリン0.3質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02重量部と硫酸アルミニウム0.01質量部を分散媒に添加した。オートクレーブ内の内容物を攪拌しながら室温(23℃)から昇温し、表1に示す発泡温度に到達するまでの間に、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が2.0MP(G)(発泡剤含浸圧力)となるまで圧入した。その後、容器内温度を15分保持することにより、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。
次に、発泡剤が含浸されたポリプロピレン系樹脂粒子を分散媒とともに、発泡温度で大気圧雰囲気下に放出し、得られた発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間乾燥させることで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。
【0058】
(成型工程)
発泡粒子を耐圧容器に入れ、耐圧容器内を空気や二酸化炭素等の無機ガスで加圧処理することで、発泡粒子に空気を含浸させ、0.09~0.11MPa(G)の内圧を付与した。内圧を付与した発泡粒子を縦200mm×横65mm×厚さ40mmの平型金型内に充填した。次に金型内にスチームを供給することで、型内成型を行った。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、本加熱圧力より0.08MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表1に示す成型スチーム圧で本加熱を行った。加熱終了後、水冷を開始し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷したのち、金型を開放し成形体を型から取り出した。このとき、水冷開始から表面面圧が0.04MPa(G)になるまでの時間を水冷時間とした。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生後、室温まで徐冷してポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0059】
得られた発泡粒子について諸物性を測定した結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】
【0062】
実施例2~9は、表に記載の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡粒子成形体を得た。
【0063】
比較例1は、実施例1に対し、セルロース繊維を含有させなかった例である。実施例に対し、水冷時間が長くなった。
比較例2は、比較例1に対し、発泡粒子の見掛け密度を変更した例である。実施例に対し、水冷時間が長くなった。
比較例3は、実施例1に対し、セルロース繊維を過剰に含有量させた例である。成形可能な発泡粒子を得ることができなかった。
比較例4は、実施例1に対し、繊維としてガラス繊維を用いた例である。独立気泡率が低下し、気泡形状も不均一な発泡粒子となった。この発泡粒子を成形しても、所望の形状を有する良好な成形体を得ることができる成形条件を設定することができなかった。なお、得られた成形体の物性値などは参考値として記載した。
比較例5は、実施例1に対し、繊維としてMgSOファイバーを用いた例である。独立気泡率が低下した発泡粒子となった。この発泡粒子を成形しても、所望の形状を有する良好な成形体を得る成形条件を設定することができなかった。なお、得られた成形体の物性値などは参考値として記載した。
比較例6は、実施例1に対し、発泡粒子の基材樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂を実施例9と同じポリプロピレン系樹脂に変えると共に、セルロース繊維を用いなかった例である。実施例9に対し、水冷時間が大幅に長くなった。
【0064】
表中、各種物性の測定は次のように行った。
発泡粒子の融点、融解熱量、結晶化温度、見掛け密度、平均気泡径、独立気泡率については前記方法により行った。
【0065】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(即ち、MFR)は、JIS K7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0066】
発泡粒子の固有ピーク温度、固有ピーク融解熱量、高温ピーク温度、高温ピーク融解熱量は次のように測定した。
発泡粒子約3mgを採取し、示差熱走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC .Q1000)によって23℃から200℃まで10℃/分で昇温測定を行い、1つ以上の融解ピークを有するDSC曲線を得た。次の説明における固有ピークをA、それより高温側に現れる高温ピークをBとした。固有ピークAの頂点の温度を固有ピーク温度とし、高温ピークBの頂点の温度を高温ピーク温度とした。
該DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α-β)を引いた。なお、前記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。次に前記の樹脂固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をδとした。固有ピークAの面積は、DSC曲線の樹脂固有ピークA部分の曲線と、線分(α-δ)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを樹脂固有ピークの融解熱量とした。
高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを高温ピーク熱量とした。
【0067】
(成形体密度)
発泡粒子成形体の外形寸法に基づいて発泡粒子成形体の体積を算出した。発泡粒子成形体の質量を前記体積で除した値を成形体密度[g/cm]とした。
【0068】
(成形体の収縮率)
金型の縱(a)、横(b)、厚(c)の寸法を測定し、一方で、金型に対応する箇所の成形体の縱(a’)、横(b’)、厚(c’)の寸法を測定した。次に、成型金型の寸法(a)、(b)、(c)と成形体の寸法(a’)、(b’)、(c’)を下記(3)式に代入して一の成形体の収縮率を求め、10個の成形体について求めた収縮率の平均値を収縮率とした。
成形性に優れるという観点から、該収縮率は、4%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下である。
【数1】
【0069】
(成形性)
低い蒸気圧から高い蒸気圧まで、0.02MPaで型内成形を行い、各蒸気圧ごとに得られた成形体につき、(i)二次発泡性、(ii)融着性、(iii)回復性のそれぞれを、次の点に着目して観察し評価した。
(i)二次発泡性:成型時に発泡粒子が十分に膨らみ、成形体表面にボイド等が形成されていないかを観察し、1(最低)~5(最高)の五段階で評価した。
(ii)融着性:発泡粒子同士が相互に融着しているかいないかを観察し、1(最低)~5(最高)の五段階で評価した。
(iii)回復性:成形体に反りや引けがないかを観察し、1(最低)~5(最高)の五段階で評価した。
3項目の観察結果に基づいて、次の基準で成形性を評価した。
(i)二次発泡性、(ii)融着性、(iii)回復性のすべてが5の成形体を合格とし、この合格品を得ることができる成型圧が2点以上ある場合を◎、1点で〇、成型可能な蒸気圧がない場合を×と評価した。
【0070】
(50%歪時圧縮応力)
得られた成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mm、の試験片を切出した。次に、該試験片について、JIS Z 0234-1976 A法に従って試験片温度23℃、荷重速度10mm/分の条件で歪が55%に至るまで圧縮試験を行い、得られた応力-歪線図より50%歪時の応力を読みとり、これを50%歪時圧縮応力とした。
【0071】
(水冷時間)
型内成形時、型内に充填された発泡粒子に蒸気が導入されて、発泡粒子は加熱により膨張し、互に融着して成形体となり、さらに成形体は膨張し、面圧計は力がかかって押された状態になる。水冷が始まると、成形体は冷やされて収縮し、面圧計にかかる力は小さくなり、離型しても成形体が変形しなくなる。加熱が終了し、水冷を開始してから面圧が0.04MPa(G)となるまでの時間を水冷時間とした。