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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173440
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】監視装置および監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20241205BHJP
   G01R 31/14 20060101ALI20241205BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/14
H02H7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091861
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
【テーマコード(参考)】
2G015
5G053
【Fターム(参考)】
2G015AA08
2G015AA10
2G015AA13
2G015AA14
2G015AA16
2G015AA18
2G015BA05
2G015CA01
2G015CA20
5G053AA09
5G053BA04
5G053CA05
5G053EC02
(57)【要約】
【課題】サージ電圧によるセンサの故障を防ぎながら、サージ電圧に係るエネルギーを計測することができる監視装置および監視方法を提供することである。
【解決手段】電極は、対象電力機器から電気信号を引き込む。電圧センサは、電気信号の電圧を計測する。過電圧保護回路は、電極と電圧センサとの間に接続され、電気信号の電圧が閾値を超えるときに電気信号を吸収する。検出部は、電圧センサが計測した電圧の値に基づいて、対象電力機器へのサージ電圧を検出する。エネルギー特定部は、検出されたサージ電圧に係る電圧の値に基づいて、サージ電圧のエネルギーに関する値を特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象電力機器から電気信号を引き込む電極と、
電気信号の電圧を計測する電圧センサと、
前記電極と前記電圧センサとの間に接続され、前記電気信号の電圧が閾値を超えるときに前記電気信号を吸収する過電圧保護回路と、
前記電圧センサが計測した電圧の値に基づいて、前記対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出する検出部と、
検出された前記サージ電圧に係る電圧の値に基づいて、前記サージ電圧のエネルギーに関する値を特定するエネルギー特定部と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記電圧センサが計測した電圧の波形からパルス信号を含む部分波形を抽出する抽出部を備え、
前記検出部は、抽出された前記部分波形の波高値が所定レベルを超える場合に、前記部分波形がサージ電圧に起因する部分波形であると判定し、
前記エネルギー特定部は、前記サージ電圧に起因する部分波形に基づいて、前記サージ電圧のエネルギーに関する値を特定する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記検出部は、
抽出された前記部分波形の波高値が前記所定レベルを超えない場合に、前記部分波形が部分放電に起因する部分波形であると判定し、
前記エネルギー特定部は、前記部分放電に起因する部分波形に基づいて、前記部分放電のエネルギーに関する値を特定する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記エネルギーに関する値に基づいて前記対象電力機器の劣化状態を推定する劣化推定部、
を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記劣化推定部は、前記サージ電圧に起因する部分波形から推定されるサージ電圧の値とパルス幅の積に基づいて、前記対象電力機器の劣化状態を推定する
請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記過電圧保護回路は、高速ダイオードである
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
対象電力機器から電気信号を引き込む電極と、電気信号の電圧を計測する電圧センサと、前記電極と前記電圧センサとの間に接続され、前記電気信号の電圧が閾値を超えるときに前記電気信号を吸収する過電圧保護回路とを有する監視装置を用いた監視方法であって、
前記監視装置が、前記電圧センサが計測した電圧の値に基づいて、前記対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出するステップと、
前記監視装置が、検出された前記サージ電圧に係る電圧の値に基づいて、前記サージ電圧のエネルギーに関する値を特定するステップと、
を有する監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は監視装置および監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力機器の経年劣化によって、電力機器の表面や内部の絶縁体の絶縁性能が低下する。絶縁性能の低下が生じた箇所からは、部分放電が発生する。絶縁性能の低下が進行すると、電力機器に絶縁破壊が起こる可能性がある。また、電力機器に突発的に侵入するサージ電圧によっても、絶縁性能の低下が生じることがある。
【0003】
部分放電を計測するために、電力機器に電極を取り付け、監視装置が電極を介して流れる電気信号をセンサで検出する方法がある。このとき、過大なサージ電圧によってセンサが壊れないよう、電極とセンサの間に保護回路が設けられる。この場合、部分放電信号は波形を保って計測されるが、サージ電圧信号は保護回路によって吸収され、抑制された波形が計測されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4342993号公報
【特許文献2】特開2003-217955号公報
【特許文献3】特許第5493909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、サージ電圧によるセンサの故障を防ぎながら、サージ電圧に係るエネルギーを計測することができる監視装置および監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の監視装置は、電極と、電圧センサと、過電圧保護回路と、検出部と、エネルギー特定部とを持つ。電極は、対象電力機器から電気信号を引き込む。電圧センサは、電気信号の電圧を計測する。過電圧保護回路は、電極と電圧センサとの間に接続され、電気信号の電圧が閾値を超えるときに電気信号を吸収する。検出部は、電圧センサが計測した電圧の値に基づいて、対象電力機器へのサージ電圧を検出する。エネルギー特定部は、検出されたサージ電圧に係る電圧の値に基づいて、サージ電圧のエネルギーに関する値を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る監視システムの構成を示す図。
図2】第1の実施形態に係る監視装置の構成を示す概略図。
図3】第1の実施形態に係るサージ電圧の波形と抑制サージ波形の例を示す図。
図4】第1の実施形態に係る試験における入力電圧と抑制電圧の関係を示す図。
図5】第1の実施形態に係る放電エネルギーの計算例を示す図。
図6】第1の実施形態に係る演算装置の動作を示すフローチャート。
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の監視装置および監視方法を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る監視システム10の構成を示す図である。
監視システム10は、監視装置100と1または複数の対象電力機器200とを備える。第1の実施形態の監視装置100は、単一の装置で構成される。
【0009】
対象電力機器200は、箱体210と機器本体220とを備える。機器本体220は、接地された箱体210に収容されている。機器本体220は、電力用変圧器、ガス絶縁開閉器、発電機、電動機又はリアクトル等のように、部分放電を発生する可能性がある機器である。機器本体220は、遮断機、断路器、変流器又は変圧器等の機器によって構成される。機器本体220は、外部から電源ケーブルを介して、高電圧及び大電流を通電する。機器本体220は、異常時には通電を遮断する機能を有する。
【0010】
図2は、第1の実施形態に係る監視装置100の構成を示す概略図である。監視装置100は、対象電力機器200の部分放電およびサージ電圧の発生を検出し、対象電力機器200の劣化状態を推定する。
【0011】
監視装置100は、計測器110と演算装置120とを備える。計測器110は、対象電力機器200の箱体210に取り付けられた電極111の電圧を計測することで、箱体210に収容されている機器本体220との間の浮遊容量を介して箱体210の表面に形成される電位を計測する。つまり、第1の実施形態に係る電極111は、TEV(Transient Earth Voltage)センサである。他方、他の実施形態に係る電極111は、CT(Current Transformer)センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、アンテナ等の電気機器の運転に由来する電気信号を計測する他の電極111であってよい。また、監視装置100は、電気信号に変えて電気機器の運転に由来する音波や振動を電気信号に変換して検出するセンサを備えてもよい。センサ部と監視装置100とは信号線を介して接続される。この信号線がアンテナとして機能し、サージ電圧発生に伴う電気ノイズが信号線を伝って監視装置100に入力される。演算装置120は、計測器110の計測値に基づいて、部分放電およびサージ電圧の検出、記録を行う。
【0012】
計測器110は、1または複数の電極111、過電圧保護回路112、電圧センサ113を備える。計測器110の本体と電極111とは測定ケーブル114によって接続される。電極111の一次側は、対応する対象電力機器200の箱体210に接続される。これにより、電極111は、箱体210の表面に形成される電気信号を計測器110に引き込む。電極111の二次側には、過電圧保護回路112の一次側が接続される。過電圧保護回路112の二次側には、電圧センサ113の一次側が接続される。
【0013】
過電圧保護回路112は、一次側に入力される電気信号の電圧が、閾値を超えるときに電気信号を吸収する(グラウンドに流す)ように設計される。過電圧保護回路112としては、閾値が電圧センサ113の定格電圧より低く、かつ部分放電に起因する電気信号のピーク値より高いものが選定される。第1の実施形態に係る過電圧保護回路112は、電圧センサ113と並列に設けられ、グラウンドに接続された高速ダイオード(ファストリカバリダイオード)を有する回路である。なお、他の実施形態に係る過電圧保護回路112は、例えばサージアレスタ、サージバリスタ、絶縁トランス、ツェナーダイオード、ショットキーバリアダイオードなどであってもよい。計測器110が高速ダイオードを設けることで、バーストイミュニティなどの高周波帯(数GHz程度)のサージ電圧から監視装置100を保護することができる。
【0014】
部分放電に係る電気信号の大きさは過電圧保護回路112の閾値より小さい。そのため、部分放電が対象電力機器200に発生した場合、電圧センサ113は、部分放電に係る電気信号の波形をほぼ劣化無しに得ることができる。
他方、サージ電圧の大きさは過電圧保護回路112の閾値より大きい。そのため、サージ電圧が対象電力機器200に発生した場合、電圧センサ113は、サージ電圧に係る電気信号が抑制された波形(以下、抑制サージ波形と呼ぶ)を得ることとなる。
【0015】
これについて、発明者は、電圧センサ113によって計測された抑制サージ波形の大きさは、もとのサージ電圧の波形と相関を有することを発見した。図3は、第1の実施形態に係るサージ電圧の波形と抑制サージ波形の例を示す図である。図3に示す例では、過電圧保護回路112として閾値が0.5Vの高速ダイオードを用いた。この場合に、対象電力機器本体220の箱体210にバーストイミュニティ試験として、サージ電圧を想定したピーク電圧1000Vの電気信号を発生させたところ、電圧センサ113に入力される電気信号のピーク電圧は5V程度まで抑制された。ここで、電圧センサ113に入力される電気信号の電圧は、過電圧保護回路112の閾値によって一律にカットされるのではなく、サージ電圧に係るピークの大きさに応じて変化することが分かった。
発明者は、想定される過電圧信号として、方形波インパルス、減衰振動波、バースト、雷インパルスを想定し、過電圧保護回路112によってこれらの過電圧信号を抑制できるか確認するため、方形波インパルスイミュニティ試験、バーストイミュニティ試験、減衰振動波イミュニティ試験、サージイミュニティ試験のそれぞれを行った。図4は、第1の実施形態に係る試験における入力電圧と抑制電圧の関係を示す図である。各試験において、それぞれ500V、1000V、2000Vの電圧を過電圧保護回路112に入力し、過電圧保護回路112からの出力電圧(抑制電圧)を確認した。その結果、図4に示すように、いずれの試験においても、抑制電圧の大きさは高速ダイオードの閾値を超え、また抑制電圧の大きさが入力電圧に対して単調増加することがわかった。また、図3に示すように、測定ケーブル114の長さによってサージ電圧のピークと電気信号のピークの関係は変化する。
【0016】
図2に示すように、演算装置120は、入力部121、バッファ部122、抽出部123、検出部124、エネルギー特定部125、記録部126、記憶部127、劣化推定部128を備える。
【0017】
入力部121は、電圧センサ113の計測値の入力を受け付ける。計測値は、電圧センサ113のサンプリングレートに従って入力される。したがって、入力部121に入力される計測値は電圧波形を表す時系列を構成する。
【0018】
バッファ部122は、電圧センサ113の計測値からなる電圧波形を一時的に記憶する。例えば、バッファ部122は、対象電力機器200が扱う電気信号の最新の10サイクル分の電圧波形を記憶する。
【0019】
抽出部123は、バッファ部122に記録された電圧波形から、部分放電またはサージ電圧に起因するパルス信号を含む部分波形を抽出する。具体的には、抽出部は以下の手順で部分波形を抽出する。抽出部123は、バッファ部122に記録された電圧波形のうち、第1レベルを超えるピークを特定する。第1レベルは、部分放電に係るピークを検出可能なレベルである。例えば、第1レベルは、予め実験等によって特定された部分放電に係るピークの集合のμ-2σ(μは平均値、σは標準偏差)に係るレベルであってよい。抽出部123は、特定したピークの立ち上がり(ゼロクロスポイント)から、5マイクロ秒の範囲の部分波形を抽出する。
【0020】
検出部124は、部分波形のパラメータとして、ピークの大きさ(波高値)、パルス幅、周波数スペクトルを特定する。パルス幅は、例えばピークの直前のゼロクロスポイントから、1周期後のゼロクロスポイント(ピークの2つ後のゼロクロスポイント)までの幅であってよい。
検出部124は、抽出された部分波形が、サージ電圧に起因する部分波形であるか、部分放電に起因する部分波形であるかを判定する。つまり、検出部124は、サージ電圧の発生および部分放電の発生を検出する。具体的には、検出部124は、部分波形のピークの大きさ(波高値)が第2レベル以上である場合に、当該部分波形がサージ電圧に起因すると判定する。また検出部124は、波高値が第2レベル未満であり、かつ1-20MHz帯と100MHz帯の両方にピークが存在する場合に当該部分波形が部分放電に起因すると判定する。なお、検出部124は、波高値が第2レベル未満であり、かつ1-20MHz帯と100MHz帯の一方にピークが存在しない場合に、当該部分波形がサージ電圧および部分放電の何れにも起因しないと判定する。
第2レベルは、抑制サージ波形に係るピークより小さく、部分放電に係るピークより大きいレベルである。例えば、第2レベルは、予め実験等によって特定された部分放電に係るピークの集合(部分放電集合)の平均値と抑制サージ波形に係るピークの集合(サージ集合)の平均値の間のレベルであって、部分放電集合とサージ集合の確率密度の和が最小となるレベルであってよい。抽出部123例えば、第2レベルは1Vであってよい。
【0021】
エネルギー特定部125は、部分波形ごとに、対象電力機器200に掛かる放電エネルギーを特定する。
具体的には、エネルギー特定部125は、サージ電圧に係る部分波形について、部分波形の波高値からサージ電圧の波高値を推定する。エネルギー特定部125は、予め実験によって特定された部分波形の波高値からサージ電圧の波高値への変換テーブルを用いて、サージ電圧の波高値を推定する。エネルギー特定部125は、サージ電圧の波高値にパルス幅に応じた係数を乗算することで、サージ電圧に係る放電エネルギーを特定する。
エネルギー特定部125は、部分放電に係る部分波形について、ΦQNパターン(Φは位相、Qは電荷量、Nは頻度)を計算する。エネルギー特定部125は、ΦQNパターンに基づいて、Σ(Q×N)を計算することで、部分放電に係る放電エネルギーを特定する。
【0022】
記録部126は、サージ電圧に起因する部分波形および部分放電に起因する部分波形のログデータを記憶部127に記録する。部分波形のログデータとしては、発生時刻、波形、発生原因(部分放電またはサージ電圧)、検出部124が検出したパラメータ、およびエネルギー特定部125が特定した放電エネルギーを、関連付けて記録する。
【0023】
劣化推定部128は、記憶部127に記録された部分波形のログデータに基づいて、対象電力機器200に発生した放電エネルギーを積算することで、対象電力機器200の劣化状態を推定する。具体的には、劣化推定部128は、放電エネルギーの積算値を記憶部127に記録しておき、当該積算値に最後に計算された放電エネルギーを加算することで積算値を更新する。放電エネルギーの積算値は劣化状態の一例である。図5は、第1の実施形態に係る放電エネルギーの計算例を示す図である。劣化推定部128は、放電エネルギーの積算値が予め定めた警告水準を超える場合に、対象電力機器200の停止を推奨する通知を発する。警告水準は、対象電力機器200が故障する可能性が高い故障水準より低い値である。通知は、対象電力機器200の図示しないディスプレイに表示されてもよいし、管理者のPCなどに電文として送信されてもよいし、音声として出力されてもよい。
【0024】
図6は、第1の実施形態に係る演算装置120の動作を示すフローチャートである。
入力部121は、電圧センサ113の計測値の入力を受け付ける(ステップS1)。入力された計測値は、バッファ部122に記録される。バッファ部122には、電力信号の10サイクル分の時間における計測値によって構成される波形が記憶される。
【0025】
抽出部123は、バッファ部122に記録された電圧波形に第1レベルを超えるピークが含まれるか否かを特定する(ステップS2)。第1レベルを超えるピークが含まれない場合(ステップS2:NO)、処理を終了する。
【0026】
第1レベルを超えるピークが含まれる場合(ステップS2:YES)、抽出部123は、当該ピークの立ち上がりから、所定期間の長さの部分波形を抽出する(ステップS3)。検出部124は、当該部分波形の波高値、パルス幅、周波数スペクトルを特定する(ステップS4)。検出部124は、抽出された部分波形の波高値が第2レベルを超えるか否かを判定する(ステップS5)。
【0027】
部分波形の波高値が第2レベルを超える場合(ステップS5:YES)、検出部124は当該部分波形がサージ電圧に起因すると判定する(ステップS6)。エネルギー特定部125は、変換テーブルを用いて、部分波形の波高値からサージ電圧の波高値を推定する(ステップS7)。エネルギー特定部125は、サージ電圧の波高値にパルス幅に応じた係数を乗算することで、サージ電圧に係る放電エネルギーを特定する(ステップS8)。
【0028】
部分波形の波高値が第2レベルを超えない場合(ステップS5:YES)、検出部124は部分波形の1-20MHz帯と100MHz帯の両方にピークが存在するか否かを判定する(ステップS9)。1-20MHz帯と100MHz帯の両方にピークが存在する場合(ステップS9:YES)、検出部124は当該部分波形が部分放電に起因すると判定する(ステップS10)。エネルギー特定部125は、部分波形についてΦQNパターンを計算する(ステップS11)。エネルギー特定部125は、ΦQNパターンに基づいて部分放電に係る放電エネルギーを特定する(ステップS12)。
【0029】
他方、1-20MHz帯と100MHz帯の両方にピークが存在しない場合(ステップS9:NO)、検出部124は当該部分波形がサージ電圧にも部分放電にも起因しないものであると判定し、処理を終了する。
【0030】
記録部126は、ステップS6でサージ電圧に起因すると判定された部分波形、およびステップS10で部分放電に起因すると判定された部分波形のログデータを記憶部127に記録する(ステップS13)。
【0031】
劣化推定部128は、記憶部127に記録された放電エネルギーの積算値に、ステップS8またはステップS12で特定された放電エネルギーを加算し、記憶部127に記録された積算値を更新する(ステップS14)。劣化推定部128は、更新された積算値が警告水準を超えるか否かを判定する(ステップS15)。放電エネルギーの積算値が警告水準を超える場合(ステップS15:YES)、劣化推定部128は対象電力機器200の停止を推奨する通知を発する(ステップS16)。
【0032】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、監視装置100は、電極111と、電圧センサ113と、過電圧保護回路112と、検出部124と、エネルギー特定部125とを持つ。電極111は、対象電力機器200から電気信号を引き込む。電圧センサ113は、電気信号の電圧を計測する。過電圧保護回路112は、電極111と電圧センサ113との間に接続され、電気信号の電圧が閾値を超えるときに電気信号を吸収する。検出部124は、電圧センサが計測した電圧の値に基づいて、対象電力機器200へのサージ電圧を検出する。エネルギー特定部125は、検出されたサージ電圧に係る電圧の値に基づいて、サージ電圧のエネルギーに関する値を特定することができる。このことは、サージ電圧のピークと抑制サージ波形のピークとが相関を有するという発明者の知見から明らかである。これにより、監視装置100は、サージ電圧によるセンサの故障を防ぎながらサージ電圧を監視することができる。なお、上述の実施形態によれば、過電圧保護回路112は高速ダイオードを有する回路である。過電圧保護回路112が高速ダイオードを有することで、バーストイミュニティなどの高周波帯のサージ電圧から監視装置100を保護することができる。また、発明者による実験により、高速ダイオードを有する過電圧保護回路112の波形の再現性が良好であることがわかった。
【0033】
また、監視装置100の検出部124は、電圧センサ113が検出した電圧に基づいて部分放電を検出する。つまり、監視装置100は、同一の電圧センサ113を用いて、部分放電とサージ電圧とを検出し、そのエネルギーを特定することができる。
【0034】
なお、第1の実施形態に係る監視装置100は、放電エネルギーから対象電力機器200の劣化状態を推定するが、これに限られない。例えば他の実施形態に係る監視装置100は、管理者に記憶部127に記録された部分放電およびサージ電圧のログデータや放電エネルギーを提示するものであってもよい。管理者は、ログデータに基づいて対象電力機器200の劣化状態を推定することができる。
【0035】
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ500は、プロセッサ510、メインメモリ530、ストレージ550、インタフェース570を備える。
上述の演算装置120は、コンピュータ500に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ550に記憶されている。プロセッサ510は、プログラムをストレージ550から読み出してメインメモリ530に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ510は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ530に確保する。プロセッサ510の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0036】
プログラムは、コンピュータ500に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ500は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ510によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0037】
ストレージ550の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ550は、コンピュータ500のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース570または通信回線を介してコンピュータ500に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ500に配信される場合、配信を受けたコンピュータ500が当該プログラムをメインメモリ530に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ550は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0038】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ550に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10…監視システム 100…監視装置 102…信号線 110…計測器 111…電極 112…過電圧保護回路 113…電圧センサ 114…測定ケーブル 120…演算装置 121…入力部 122…バッファ部 123…抽出部 124…検出部 125…エネルギー特定部 126…記録部 127…記憶部 128…劣化推定部 200…対象電力機器 210…箱体 220…機器本体 500…コンピュータ 510…プロセッサ 530…メインメモリ 550…ストレージ 570…インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7