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  • 特開-半導体パッケージ製造用粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173444
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体パッケージ製造用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241205BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20241205BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J4/02
C09J11/06
C09J7/20
C09J7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091867
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 周作
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直輝
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC03
4J004DB02
4J004FA05
4J040DF001
4J040EC002
4J040EF282
4J040FA131
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
(57)【要約】
【課題】高温化での使用に好適な半導体パッケージ製造用粘着シートを提供すること。
【解決手段】[1]本発明の実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートは、基板上に配置して使用される半導体パッケージ製造用粘着シートであって、アクリル系樹脂から構成された樹脂層を備え、該樹脂層の少なくとも一方の面の表面粗さRaが、600nm以下である。
[2]上記[1]の半導体パッケージ製造用粘着シートは、230℃~240℃における線膨張係数が、-50×10-5/K~50×10-5/Kであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置して使用される半導体パッケージ製造用粘着シートであって、
アクリル系樹脂から構成された樹脂層を備え、
該樹脂層の少なくとも一方の面の表面粗さRaが、600nm以下である、
半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項2】
前記半導体パッケージ製造用粘着シートの230℃~240℃における線膨張係数が、-50×10-5/K~50×10-5/Kである、請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項3】
前記樹脂層が、アクリル系ポリマーとペンタエリスリトール系多官能アクリレートと光重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される、請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項4】
前記樹脂層の25℃における紫外線照射後ナノインデンター弾性率が、10MPa以上である、請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項5】
前記樹脂層に極性溶媒を滴下して25℃で15分経過させたときの該樹脂層の厚みが、滴下前の厚みに対して、130%以下となる、請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項6】
基材をさらに備え、
前記樹脂層が、該基材の片面に配置され、
該基材が、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエーテルエーテルケトン系樹脂から構成される、
請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートの前記樹脂層をポリイミド板に貼着し、230℃で2時間経過させた後の粘着力が、5N/20mm以下である、請求項1または6に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項8】
ガス発生層をさらに備え、
樹脂層と基材とガス発生層とがこの順に配置される、
請求項6に記載の半導体パッケージ製造用粘着シート。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シートを支持基板上に配置すること、
該半導体パッケージ製造用粘着シートの樹脂層上で配線を形成すること、その後、
該半導体パッケージ製造用粘着シートに外部刺激を加えることにより、該半導体パッケージ製造用粘着シートを該支持基板から分離することを含む、
半導体パッケージ製造用粘着シートの使用方法。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体パッケージ製造用粘着シートを支持基板上に配置すること、
該半導体パッケージ製造用粘着シートの樹脂層上で銅ピラーを形成すること、その後、
該半導体パッケージ製造用粘着シートに外部刺激を加えることにより、該半導体パッケージ製造用粘着シートを該支持基板から分離することを含む、
半導体パッケージ製造用粘着シートの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ製造用粘着シート
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの特性向上の為、半導体パッケージングなどの領域を中心に半導体チップや封止後の樹脂基板を硬質な支持基板に固定して、高温プロセスを実施するトレンドが加速している。例えば、粘着シート上に、複数個の電子部品を所定の間隔で配列して樹脂封止する工程や、再配線層を形成する工程、半導体パッケージを三次元化する為の銅ピラー構造を形成する工程などは、その代表例である。このような耐熱工程に用いられる粘着シートには、配列された電子部品を平滑な面で保持する平坦度や、電子部品の位置関係を保つための寸法安定性などが求められる。また、銅メッキ工程などで配線やピラー構造を形成する場合に、粘着シート上にスパッタリングや真空蒸着などで数nmオーダーの厚みを有する金属薄膜(シード層)を形成することがあり、当該金属薄膜を良好に形成し得るような粘着シートが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5588950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高温化での使用に好適な半導体パッケージ製造用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートは、基板上に配置して使用される半導体パッケージ製造用粘着シートであって、アクリル系樹脂から構成された樹脂層を備え、該樹脂層の少なくとも一方の面の表面粗さRaが、600nm以下である。
[2]上記[1]の半導体パッケージ製造用粘着シートは、230℃~240℃における線膨張係数が、-50×10-5/K~50×10-5/Kであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の半導体パッケージ製造用粘着シートにおいて、上記樹脂層が、アクリル系ポリマーとペンタエリスリトール系多官能アクリレートと光重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成されてもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートにおいて、上記樹脂層の25℃における紫外線照射後ナノインデンター弾性率が、10MPa以上であってもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートにおいて、上記樹脂層に極性溶媒を滴下して25℃で15分経過させたときの該樹脂層の厚みが、滴下前の厚みに対して、130%以下となってもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートは、基材をさらに備え、上記樹脂層が、該基材の片面に配置され、該基材が、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエーテルエーテルケトン系樹脂から構成されていてもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートにおいて、上記粘着シートの上記樹脂層をポリイミド板に貼着し、230℃で2時間経過させた後の粘着力が、5N/20mm以下であってもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートは、ガス発生層をさらに備え、樹脂層と基材とガス発生層とがこの順に配置されていてもよい。
[9]本発明の実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートの使用方法は、上記[1]から[8]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートを支持基板上に配置すること、該半導体パッケージ製造用粘着シートの樹脂層上で配線を形成すること、その後、該半導体パッケージ製造用粘着シートに外部刺激を加えることにより、該半導体パッケージ製造用粘着シートを該支持基板から分離することを含む。
[10]本発明の実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートの使用方法は、上記[1]から[8]のいずれかに記載の半導体パッケージ製造用粘着シートを支持基板上に配置すること、該半導体パッケージ製造用粘着シートの樹脂層上で銅ピラーを形成すること、その後、該半導体パッケージ製造用粘着シートに外部刺激を加えることにより、該半導体パッケージ製造用粘着シートを該支持基板から分離することを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温化での使用に好適な半導体パッケージ製造用粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)~(d)は、本発明の1つの実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.半導体パッケージ製造用粘着シートの概要
図1は、本発明の1つの実施形態による半導体パッケージ製造用粘着シートの概略断面図である。半導体パッケージ製造用粘着シート100は、樹脂層10を備える。樹脂層は、アクリル系樹脂から構成される。半導体パッケージ製造用粘着シート100は、図1(a)に示すように樹脂層10のみから構成されていてもよく、樹脂層10とその他の層とを備えていてもよい。例えば、半導体パッケージ製造用粘着シート100は、図1(b)、図1(c)および図1(d)に示すように、基材20をさらに備えていてもよい。この場合は、半導体パッケージ製造用粘着シート100は、基材20と基材20の少なくとも片面に配置された樹脂層10とを備え得る。また、図1(c)および図1(d)に示すように、粘着剤層30またはガス発生層40を備えていてもよい。1つの実施形態においては、樹脂層10と基材20と粘着剤層30とをこの順に備える半導体パッケージ製造用粘着シート100が提供される。1つの実施形態においては、樹脂層10と基材20とガス発生層40とをこの順に備える半導体パッケージ製造用粘着シート100が提供される。また、図1(c)および図1(d)に示す形態において、基材20が省略されていてもよい。また、以下、本明細書において、「半導体パッケージ製造用粘着シート」を単に「粘着シート」ということもある。
【0009】
1つの実施形態において、上記半導体パッケージ製造用粘着シートは、基板上に配置して使用される。当該基板は、半導体パッケージ製造時の支持基板であり得る。半導体パッケージ製造用粘着シートは、基板上に仮固定された後、上記樹脂層上で半導体パッケージの製造工程を行うようにして用いられ得る。1つの実施形態においては、上記樹脂層上に半導体チップが配置され、さらに、半導体チップの樹脂封止、再配線工程等が行われる。また、別の実施形態においては、配線を設けたり、ピラーを設けたりするために、上記樹脂層表面にメッキ処理のためのシード層を直接形成することが行われる。
【0010】
1つの実施形態においては、上記粘着シートは、再剥離可能なように構成される。例えば、図1(c)および図1(d)に示すように、粘着剤層30またはガス発生層40を設け、当該層に剥離性が付与される。再剥離可能な粘着シートは、半導体パッケージ製造時に所定の工程において、基板(例えば、支持基板)上における仮固定材として用いられ得る。所定の工程の後、半導体パッケージ製品または半導体パッケージ中間製品を、基板から分離する際には、粘着シートの剥離性が好ましく機能する。
【0011】
上記樹脂層の一方の面の表面粗さRaは、600nm以下である。表面粗さRaが600nm以下の樹脂層面は、樹脂層の上記基板とは反対側の面とされ得る。本発明の実施形態においては、上記のように表面粗さRaが小さい面を有することにより、当該面に、メッキ処理のためのシード層を好ましく形成し得る粘着シートを提供することができる。このような粘着シート上においては、良質な連続膜としてシード層を形成することができる。上記粘着シートを用いれば、シード層を薄膜に形成しても、連続性が維持できる点で、特に有効である。シード層を薄膜に形成すれば、高温下においても、シード層と樹脂層の寸法変化の差が小さくなり、その結果、シード層に生じるクラックを防止することができる。上記樹脂層の一方の面の表面粗さRaは、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは300nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下であり、特に好ましくは100nm以下である。樹脂層の一方の面の表面粗さRaの下限は、例えば、50nm(好ましくは20nm)である。
【0012】
1つの実施形態においては、上記粘着シートの樹脂層をステンレス板(SUS304)に貼着した際の23℃における粘着力は、好ましくは0.1N/20mm~10N/20mmであり、より好ましくは0.15N/20mm~8N/20mmである。このような範囲であれば、良好に電子部品を保持し得る粘着シートを得ることができる。粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じて測定される。具体的には、2kgのローラーを1往復により粘着シートを被着体(例えば、ステンレス板(算術平均表面粗さRa:50±25nm)、ポリイミドフィルム)に貼着し、23℃下で30分間放置した後、剥離角度180°、引張速度300mm/minの条件で、粘着シートを引きはがして測定される。
【0013】
別の実施形態においては、上記粘着シートの樹脂層をステンレス板(SUS304)に貼着した際の23℃における粘着力は、好ましくは0N/20mm~1.0N/20mmであり、より好ましくは0.01N/20mm~0.5N/20mmである。
【0014】
粘着シートの樹脂層をポリイミドフィルムに貼着し、200℃で2時間経過させた後の粘着力aは、好ましくは5N/20mm以下であり、より好ましくは2N/20mm以下であり、さらに好ましくは1N/20mm以下である。このような範囲であれば、加熱工程後に被着体を分離する場合に、被着体に残渣として付着する樹脂層を容易に剥離除去させることができる。このような樹脂層は高温下で分解し難い樹脂層であり得、例えば、後述の光反応性のモノマーまたはオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたり、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いることにより形成することができる。粘着力aの下限は、例えば、0.005N/20mmである。
【0015】
粘着シートの樹脂層をポリイミド板に貼着し、230℃で2時間経過させた後の粘着力bは、好ましくは5N/20mm以下であり、より好ましくは2N/20mm以下であり、さらに好ましくは1N/20mm以下である。このような範囲であれば、加熱工程後に被着体を分離する場合に、被着体に残渣として付着する樹脂層を容易に剥離除去させることができる。このような樹脂層は高温下で分解し難い樹脂層であり得、例えば、後述の光反応性のモノマーまたはオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたり、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いることにより形成することができる。粘着力bの下限は、例えば、0.01N/20mmである。
【0016】
上記粘着シートの230℃~240℃における線膨張係数は、好ましくは-500×10-5/K~100×10-5/Kであり、より好ましくは-50×10-5/K~50×10-5/Kであり、さらに好ましくは-30×10-5/K~30×10-5/Kであり、特に好ましくは-15×10-5/K~15×10-5/Kである。このような範囲であれば、薄膜にかつ安定してシード層の形成が可能な粘着シートを提供することができる。また、粘着シート上に半導体チップを配置する際には、位置精度のよい配置が可能となる。特に、230℃~240℃における線膨張係数が-50×10-5/K~50×10-5/Kであれば、上記効果は顕著となる。線膨張係数は、JIS K 7197に準じたTMA測定により決定され得る。
【0017】
1つの実施形態においては、粘着シートの230℃~240℃における線膨張係数は、20×10-5/K~50×10-5/Kとされる。
【0018】
上記粘着シートの200℃~210℃における線膨張係数は、好ましくは-100×10-5/K~100×10-5/Kであり、より好ましくは-50×10-5/K~50×10-5/Kであり、より好ましくは-30×10-5/K~30×10-5/Kであり、さらに好ましくは-15×10-5/K~15×10-5/Kである。このような範囲であれば、薄膜にかつ安定してシード層の形成が可能な粘着シートを提供することができる。また、粘着シート上に半導体チップを配置する際には、位置精度のよい配置が可能となる。特に、200℃~210℃における線膨張係数が-50×10-5/K~50×10-5/Kあれば、上記効果は顕著となる。
【0019】
粘着シートの厚みは、好ましくは1μm~300μmであり、より好ましくは3μm~200μmである。
【0020】
B.樹脂層
上記樹脂層の25℃における紫外線照射後ナノインデンター弾性率は、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは1000MPa以上であり、さらに好ましくは5000MPa以上である。このような範囲であれば、極性溶媒に対して膨潤しにくい樹脂層を形成することができ、本発明の効果が顕著となる。樹脂層の25℃における紫外線照射後ナノインデンター弾性率の上限は、例えば、20000MPaである。紫外線照射後ナノインデンター弾性率の測定方法は、後述する。
【0021】
上記樹脂層の25℃における引張弾性率は、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは300MPa以上であり、特に好ましくは600MPa以上である。このような範囲であれば、極性溶媒に対して膨潤しにくい樹脂層を形成することができる。このような樹脂層を有していれば、配線形成のためにレジスト工程に供される場合に、当該樹脂層が膨潤することで引き起こされる、粘着シートのデラミネーションを防止することができる。樹脂層の25℃における引張弾性率の上限は、例えば、2GPaである。引張弾性の測定方法は、後述する。
【0022】
上記樹脂層の200℃における引張弾性率は、好ましくは3MPa以上であり、より好ましくは10MPa以上であり、さらに好ましくは100MPa以上であり、特に好ましくは500MPa以上である。このような範囲であれば、寸法変化が小さい樹脂層を形成することができる。特に、高温下においても寸法変化し難い樹脂層を形成することができる点で有利である。このような樹脂層を有していれば、メッキ処理のためのシード層を形成した際に、当該シード層のクラックを防止することができる。このような効果は、上記のとおり、薄膜のシード層を形成し得る点と相まって顕著となる。樹脂層の200℃における引張弾性率の上限は、例えば、2GPaである。引張弾性の測定方法は、後述する。
【0023】
上記樹脂層の230℃における引張弾性率は、好ましくは3MPa以上であり、より好ましくは10MPa以上であり、さらに好ましくは100MPa以上であり、特に好ましくは500MPa以上である。このような範囲であれば、寸法変化が小さい樹脂層を形成することができる。特に、高温下においても寸法変化し難い樹脂層を形成することができる点で有利である。このような樹脂層を有していれば、メッキ処理のためのシード層を形成した際に、当該シード層のクラックを防止することができる。このような効果は、上記のとおり、薄膜のシード層を形成し得る点と相まって顕著となる。樹脂層の230℃における引張弾性率の上限は、例えば、2GPaである。
【0024】
上記樹脂層の230℃~240℃における線膨張係数は、好ましくは-50×10-5/K~50×10-5/Kであり、より好ましくは-30×10-5/K~30×10-5/Kであり、さらに好ましくは-15×10-5/K~15×10-5/Kである。
【0025】
1つの実施形態においては、樹脂層の230℃~240℃における線膨張係数は、20×10-5/K~50×10-5/Kとされる。このような範囲であれば、好ましく粘着性を有する樹脂層が形成され、例えば、樹脂層上にチップを配置する等の用途に好適な粘着シートを得ることができる。
【0026】
上記樹脂層の200℃~210℃における線膨張係数は、好ましくは10×10-5/K~150×10-5/Kであり、より好ましくは15×10-5/K~100×10-5/Kであり、さらに好ましくは20×10-5/K~50×10-5/Kである。
【0027】
上記樹脂層の厚みは、好ましくは1μm~50μmであり、より好ましくは2μm~25μmであり、さらに好ましくは3μm~20μmである。
【0028】
上記樹脂層に極性溶媒を滴下して25℃で15分経過させたときの当該樹脂層の厚みは、滴下前の厚みに対して、好ましくは130%以下であり、より好ましくは120%以下であり、さらに好ましくは110%以下である。このような範囲であれば、耐薬品性に優れる粘着シートを得ることができる。例えば、レジスト工程に供される場合に、レジスト除去液に対する耐久性に優れる粘着シートが得られ得る。1つの実施形態においては、弾性率が高くなるように樹脂層を形成することにより、上記のように耐薬品性に優れる粘着シートを得ることができる。また、樹脂層に極性溶媒を滴下したときの当該樹脂層の厚みは、滴下前の厚みに対して、100%以上であることが好ましい。上記極性溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドンである。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはジメチルスルホキシドであってもよい。上記のように厚み変化が小さい樹脂層は、極性溶媒による膨潤が生じ難い樹脂層である。例えば、弾性率または線膨張係数が上記範囲となるように構成することにより、膨潤し難い樹脂層を得ることができる。
【0029】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)
1つの実施形態においては、上記樹脂層は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される。
【0030】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む。なお、「ベースポリマー」とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるポリマーの主成分をいう。この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0031】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーとを含むモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。主モノマーの含有割合は、モノマー原料中のモノマー全量100重量部に対して、好ましくは60重量部~100重量部であり、より好ましくは70重量部~99.5重量部である。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数が1~20の分岐状もしくは直鎖状のアルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある)である。Rは、好ましくは分岐状もしくは直鎖状のC1-14アルキル基であり、より好ましくは分岐状もしくは直鎖状のC6-14アルキル基であり、さらに好ましくは分岐状もしくは直鎖状のC8-12アルキル基である。
【0033】
上記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ラウリル(メタ)アクリレート(LA、LMA)が挙げられる。
【0034】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとしては、例えば以下のような官能基含有モノマー成分を、1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシ基含有モノマー:例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等);
水酸基含有モノマー:例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物;
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;
エポキシ基含有モノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル;
シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル;
ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート;
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン;
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン;
イソシアネート基含有モノマー:(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート。
【0035】
上記副モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部であり、より好ましくは2重量部~15重量部である。このような範囲であれば、好ましく架橋した樹脂層を得ることができ、本発明の効果が顕著となる。
【0036】
また、上述した副モノマー以外の他の共重合成分を用いることができる。かかる共重合成分としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート等、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これら副モノマー以外の他の共重合成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる他の共重合成分の量は、モノマー原料中のモノマー全量100重量部に対して、例えば、0.5重量部~20重量部である。
【0037】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは10×10~500×10であり、より好ましくは20×10~200×10であり、さらに好ましくは30×10~100×10である。このような範囲であれば、糊残りが少なく、かつ、密着性に優れる樹脂層を形成することができる。なお、本明細書においてMwとは、GPCにより得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
【0038】
上記アクリル系ポリマーは任意の適切な重合方法により得ることができる。例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0039】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、炭素-炭素多重結合を有する官能基を複数有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーをさらに含み得る。当該光反応性のモノマーまたはオリゴマーを添加することにより、高温下での特性に優れる樹脂層、例えば、200℃~240℃において、弾性率が高く、寸法変化率が低い樹脂層を得ることができる。炭素-炭素多重結合を有する官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和官能基を有する化合物が好ましく用いられ、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物がより好ましく用いられる。エチレン性不飽和官能基を有する化合物は、紫外線によりラジカルを容易に生成するため、当該化合物を用いれば、短時間で硬化し得る樹脂層を形成することができる。また、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物を用いれば、硬化後に適度な硬さを有する樹脂層を形成することができる。光反応性のモノマーまたはオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物等の(メタ)アクリロイル基含有化合物;該(メタ)アクリロイル基含有化合物の2~5量体;等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
1つの実施形態においては、光反応性のモノマーまたはオリゴマーとして、ペンタエリスリトール系多官能アクリレートが用いられる。ペンタエリスリトール系多官能アクリレートを用いれば、高温下においても寸法安定性に優れ、好ましくシード層を形成することができる樹脂層を形成することができる。ペンタエリスリトール系多官能アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
光反応性のモノマーまたはオリゴマーの含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは20重量部以上であり、より好ましくは50重量部以上であり、さらに好ましくは100重量部以上であり、特に好ましくは200重量部以上である。光反応性のモノマーまたはオリゴマーの含有割合の上限は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは400重量部であり、より好ましくは300重量部である。光反応性のモノマーまたはオリゴマーの含有割合により、樹脂層の弾性率(特に、200℃~240℃における弾性率)、線膨張係数(特に、200℃~240℃における線膨張係数)を調整することができる。また、樹脂層の弾性率(特に、200℃~240℃における弾性率)、線膨張係数(特に、200℃~240℃における線膨張係数)を光反応性のモノマーまたはオリゴマーの含有割合により、調整することにより、本発明の効果が顕著となる。
【0042】
好ましくは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。これら架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記架橋剤の含有割合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.2重量部~8重量部である。このような範囲であれば、寸法変化が少ない樹脂層を形成することができ、本発明の効果が顕著となる。
【0044】
1つの実施形態においては、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられる。上記エポキシ系架橋剤はエポキシ基を有する化合物であり、その具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。樹脂層がエポキシ系架橋剤を含む場合、エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする特性に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.03重量部~5重量部である。
【0045】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。イソシアネート系架橋剤は、多種の官能基と反応し得る点で好ましい。上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。
【0046】
好ましくは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1―プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~15重量部であり、より好ましくは0.5重量部~12重量部であり、さらに好ましくは1重量部~12重量部である。
【0048】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。該添加剤としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、溶剤等が挙げられる。
【0049】
C.基材
上記基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。該樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0050】
1つの実施形態においては、上記基材として、ポリエステル系樹脂から構成される基材が用いられる。ポリエステル系樹脂から構成される基材は好ましく剛性を有し、当該基材を用いれば、電子部品を固定する際の位置ずれを防止することができる。
【0051】
1つの実施形態においては、上記基材は、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエーテルエーテルケトン系樹脂から構成される。
【0052】
上記基材の厚みは、好ましくは2μm~300μmであり、より好ましくは5μm~200μmであり、さらに好ましくは10μm~200μmである。
【0053】
D.粘着剤層・ガス発生層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤により構成され得る。当該粘着剤は、硬化型粘着剤であってもよく、感圧型粘着剤であってもよい。上記粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を含む。例えば、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を粘着剤として用いてもよい。
【0054】
上記粘着剤層の厚みは、例えば、1μm~100μmである。
【0055】
1つの実施形態においては、ガス発生層は外部刺激によりガスを発生し得る。ガス発生層は、当該発生ガスに起因して、剥離性を示す。例えば、赤外線または紫外線によりガス発生層成分を分解させることによりガスを発生させたり、所定温度で発泡する熱膨張性微小球を含有させて、加熱による発泡により、ガスを発生させたりすることができる。
【0056】
1つの実施形態においては、ガス発生層は、ガス発生用成分として、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤または熱膨張性微小球を含む。
【0057】
1つの実施形態においては、上記ガス発生層は、任意の適切な粘着剤とガス発生用成分を含む。すなわち、ガス発生層は、上記粘着剤層にガス発生用成分を含有して構成され得る。また、ガス発生層とその他の(例えば、粘着剤層)とを組み合わせて形成し、ガス発生層の形状変化(ひずみ等)によりその他の層の粘着力を低下させてもよい。
【0058】
上記赤外線吸収剤を含むガス発生層は、当該ガス発生層に赤外線レーザー光を照射することによりガス化し得る層である。赤外線吸収剤としては、例えば、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等が用いられる。
【0059】
赤外線吸収剤の含有割合は、ガス発生層100重量部に対して、好ましくは1重量部~100重量部であり、より好ましくは1重量部~50重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。
【0060】
上記紫外線吸収剤を含むガス発生層は、当該ガス発生層に紫外線レーザー光を照射することによりガス化し得る層である。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤を含むガス発生層の詳細は、例えば、特許第6890216号に記載されており、当該公報に記載は、本明細書に参考として援用される。
【0061】
上記紫外線吸収剤の含有割合は、ガス発生層100重量部に対して、好ましくは1重量部~100重量部であり、より好ましくは1重量部~50重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。
【0062】
上記熱膨張性微小球は所定温度で発泡し得る。このような熱膨張性微小球を含むガス発生層は、加熱によって熱膨張性微小球が発泡することにより、粘着面(すなわち粘着剤層表面)に凹凸が生じて、粘着力が低下または消失する。
【0063】
上記熱膨張性微小球としては、加熱により膨張または発泡し得る微小球である限りにおいて、任意の適切な熱膨張性微小球を用いることができる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱により容易に膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球が用いられ得る。このような熱膨張性微小球は、任意の適切な方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0064】
加熱により容易に膨張する物質としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシラン等の低沸点液体;熱分解によりガス化するアゾジカルボンアミド;等が挙げられる。
【0065】
上記殻を構成する物質としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボン酸単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体;等から構成されるポリマーが挙げられる。これらの単量体から構成されるポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。該コポリマーとしては、例えば、塩化ビニリデン‐メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-メタクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-メタクリロニトリル-イタコン酸共重合体等が挙げられる。
【0066】
上記熱膨張性微小球として、無機系発泡剤または有機系発泡剤を用いてもよい。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド;等のN-ニトロソ系化合物などが挙げられる。
【0067】
上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子径は、好ましくは0.5μm~80μmであり、より好ましくは5μm~45μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmであり、特に好ましくは10μm~15μmである。よって、上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子サイズを平均粒子径で言えば、好ましくは6μm~45μmであり、より好ましくは15μm~35μmである。上記の粒子径と平均粒子径はレーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる値である。
【0068】
上記熱膨張性微小球は、体積膨張率が好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有することが好ましい。このような熱膨張性微小球を用いる場合、加熱処理により粘着力を効率よく低下させることができる。
【0069】
上記熱膨張性微小球の発泡開始温度は、好ましくは80℃~250℃であり、より好ましくは80℃~230℃であり、さらに好ましくは80℃~200℃であり、さらに好ましくは80℃~150℃であり、特に好ましくは80℃~120℃であり、最も好ましくは80℃~100℃である。本明細書において、熱膨張性微小球の発泡開始温度とは、ガス発生層厚みが常温時から5%以上厚くなる最も低い温度を意味する。例えば、発泡開始温度は、粘着テープのガス発生層側粘着力が、1.0N/20mm以下となり、かつ、初期粘着力の50%以下となる温度に相当し得る。
【0070】
上記ガス発生層における熱膨張性微小球の含有割合は、所望とする粘着力の低下性等に応じて適切に設定し得る。熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤層100重量部に対して、例えば1重量部~150重量部であり、好ましくは10重量部~130重量部であり、さらに好ましくは25重量部~100重量部である。
【0071】
E.粘着シートの製造方法
上記粘着シートは、任意の適切な方法により製造され得る。粘着シートは、例えば、塗工用基材上に、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗工して得られ得る。塗工方法としては、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。塗工用基材は、そのまま、粘着シートの基材とされてもよく、塗工用基材から樹脂層を剥離して粘着シートを形成してもよい。
【0072】
好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗布層を活性エネルギー線により硬化して、樹脂層を形成する。活性エネルギー線としては、好ましくは紫外線が用いられる。上記塗布層は、例えば、積算光量50J/cm~1000J/cmの紫外線を照射することにより形成される。
【0073】
また、別途、剥離ライナーに樹脂層を形成した後、それを塗工用基材に貼り合せる方法等を採用してもよい。剥離ライナーの表面粗さRaにより、樹脂層表面の表面粗さRaを制御することができる。表面粗さRaの小さい剥離ライナー上で樹脂層を形成することにより、剥離ライナーと接する樹脂層面の平滑性を高めることができる。剥離ライナーの表面粗さRaは、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。剥離ライナーの表面粗さRaの下限は例えば、20nmである。
【0074】
F.粘着シートの使用方法
上記のとおり、粘着シートは、半導体パッケージ製造時に用いられ得、具体的には、半導体パッケージ製造時に所定の要素を仮固定する際に用いられ得る。
【0075】
1つの実施形態においては、上記粘着シートは、いわゆるFOWLP(Fan Out Wafer Level Package)プロセスにおける仮固定材として用いられる。
【0076】
1つの実施形態においては、上記粘着シートは、当該粘着シート上で配線を設ける際の仮固定材として用いられ得る。1つの実施形態においては、上記粘着シートを支持基板上に配置すること、該粘着シートの樹脂層上で配線を形成すること、その後、該粘着シートに外部刺激を加えることにより、該粘着シートを該支持基板から分離することを含む、上記粘着シートの使用方法が提供される。
【0077】
1つの実施形態では、上記粘着シートの使用方法において、配線を形成する前に、半導体チップの配置、当該半導体チップの樹脂封止が行われる。これらの工程を含む半導体パッケージ製造プロセスは、いわゆるチップファーストプロセス等として、当業者に知られているプロセスであるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
別の実施形態では、上記粘着シートの使用方法において、配線を形成する前に、シード層が形成される。シード層とは、配線、銅ピラー等の金属層をメッキ処理で形成する際の導体となる層である。シード層を構成する金属としては、例えば、銅および/またはチタンが挙げられる。シード層は、任意の適切な方法(例えば、スパッタ、真空蒸着)により形成され得る。これらの工程を含む半導体パッケージ製造プロセスは、いわゆるRDL(再配線)ファーストプロセス等として、当業者に知られているプロセスであるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
1つの実施形態においては、上記粘着シートは、当該粘着シート上で銅ピラーを設ける際の仮固定材として用いられ得る。1つの実施形態においては、上記粘着シートを支持基板上に配置すること、該粘着シートの樹脂層上で銅ピラーを形成すること、その後、該粘着シートに外部刺激を加えることにより、該粘着シートを該支持基板から分離することを含む、上記粘着シートの使用方法が提供される。銅ピラーの形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、銅ピラーを形成する前に、シード層が形成される。
【0080】
粘着シート分離時の外部刺激としては、加熱、赤外線照射、紫外線照射等が挙げられる。好ましくは、ガス発生層を備える粘着シートが用いられ、当該ガス発生層に外部刺激を加えることにより、分離性が発現される。
【0081】
赤外線照射および紫外線照射には、粘着シートの構成に応じて、任意の適切なレーザー光が用いられる。レーザー光照射の条件もまた、粘着シートの構成に応じて、任意の適切な条件とされ得る。1つの実施形態においては、上記レーザー光として、IRレーザー光が使用される。IRレーザー光の波長は、好ましくは800nm以上であり、より好ましくは800nm~10600nmであり、さらに好ましくは900nm~1200nmである。IRレーザー光の出力は、例えば、0.01W~20Wである。別の実施形態においては、上記レーザー光として、UVレーザー光が使用される。UVレーザー光の波長は、好ましくは380nm以下であり、より好ましくは150nm~380nmであり、さらに好ましくは240nm~360nmである。UVレーザー光の出力は、例えば、0.1W~4.0Wである。
【0082】
1つの実施形態においては、粘着シートを該支持基板から分離した後、樹脂層に配置された物(例えば、半導体チップ、シード層、シード層形成を経て得られた金属層(配線、銅ピラー)等)に残った樹脂層の除去が行われる。1つの実施形態においては、樹脂層はピール剥離により除去される。例えば、基材を備える粘着シートを用いる場合、樹脂層はピール剥離により除去され得る。別の実施形態においては、樹脂層は、研磨により除去される。また、樹脂層は、プラズマ処理等の表面処理技術を用いて、除去されてもよい。
【実施例0083】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における試験および評価方法は以下のとおりである。また、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0084】
(1)表面粗さRa
粘着シートの樹脂層表面の算術表面粗さRaを、JIS B0601に準じて測定した。測定機には、光学式表面粗さ計(Veeco Metrogy Group社製、商品名「Wyko NT9100」)を用いた。
【0085】
(2)樹脂層および粘着シートの引張弾性率
動的粘弾性測定装置(TA Instrument社製、商品名「RSA-3」)を用い、下記の条件にて、25℃、200℃、230℃における引張弾性率を測定した。
測定周波数:1Hz
歪み:0.05%
チャック間距離:20mm
サンプル幅:10mm
0℃から250℃まで5℃/minの昇温速度
【0086】
(3)樹脂層および粘着シートの線膨張係数
TMA Q400(TA-instrument社製)を用いて、引張モードにて窒素ガス流量:50.0ml/min.、印加荷重:0.0196Nの条件で、樹脂層および粘着シートの200~210℃と230~240℃における線膨張係数(CTE)を計測した。具体的には、実施例及び比較例で得られた粘着シートおよび樹脂層を作製し、治具を用いて4mmx30mmサイズに打抜き、TMA Q400のプローブに8mm間隔を空けてセットした。20℃から110℃まで10℃/min.の昇温速度で一旦昇温し、110℃から20℃まで10℃/min.の降温速度で降温することで含有する水分の影響を取り除き、再度20℃から300℃まで10℃/min.の昇温速度で昇温しながら粘着シートの寸法変化を測定した。得られたデータから、200~210℃と230~240℃における寸法変化の傾きを算出し、CTEの値を抽出した。
【0087】
(4)樹脂層のナノインデンター弾性率
500mJ/cmの紫外線を照射した樹脂層について、ナノインデンター(Hysitron Inc社製、商品名「Triboindenter TI-950」)を用いて、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約3000nmの測定条件で、樹脂層表面の弾性率を測定した。
【0088】
(5)極性溶媒滴下による樹脂層厚み変化
粘着シートの樹脂層を曝露させた状態で、N-メチル―2-ピロリドン(岸田化学社製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業社製)、ジメチルスルホキシド(東京化成工業社製)の3つの極性溶媒をそれぞれ0.1mL滴下し、その後、25℃で15分間放置した後に、各種極性溶媒を拭き取り、滴下前後の樹脂層の厚みを計測して変化率を算出した。
【0089】
(6)粘着力
粘着シートの樹脂層をポリイミドフィルム(東レ社製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm)に貼着して、200℃で2時間経過させた後、粘着シートのガス発生層側をステンレス板に貼り付け固定し、当該粘着シートのポリイミドフィルムに対する粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°、測定温度:23℃)により測定した。また、貼着後、230℃で2時間経過させた後の粘着力も、同様に測定した。なお、被着体として用いたポリイミドフィルムは、水分の影響を取り除いたものを使用した。具体的には、事前に200℃で30分間加熱乾燥させた後のポリイミドフィルムを用いた。
【0090】
(7)シード層の表面粗さRa
バッチ式スパッタ装置を用いて、粘着シートの樹脂層を曝露させた状態で、TiとCuをAr雰囲気下でDC放電で樹脂層上に製膜し、Ti/Cu=150nm/300nmのシード層を形成した。得られたシード層表面の算術表面粗さRaを、JIS B0601に準じて測定した。測定機には、光学式表面粗さ計(Veeco Metrogy Group社製、商品名「Wyko NT9100」)を用いた。
(8)シード層成型性
樹脂層上に形成したシード層を目視で観察した。表中、金属薄膜の鏡面が得られ、かつRaが200nm以下であった場合を合格(○)、金属薄膜の鏡面が得られるがRaが200nmより大きい水準であった場合を合格(△)、金属薄膜の鏡面が得られない場合を不合格(×)とした。
(9)シード層のクラック
樹脂層上に形成したシード層を目視で観察した。表中、クラックの発生が視認出来ない場合を合格(○)、クラックの発生が視認出来る場合を不合格(×)とした。
【0091】
[製造例1]アクリル系ポリマーAの調整
酢酸エチル中に、2-エチルヘキシルアクリレート30重量部と、メチルアクリレート70重量部と、アクリル酸10重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーA)の酢酸エチル溶液を得た。
【0092】
[製造例2]アクリル系ポリマーBの調整
トルエン中に、ブチルアクリレート50重量部と、エチルアクリレート50重量部と、アクリル酸5重量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーB)トルエン溶液を得た。
【0093】
[製造例3]樹脂層形成用組成物A
ポリマーAの酢酸エチル溶液(ポリマーA:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)0.3重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV-1700B」)100重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部とを混合して樹脂層形成用組成物Aを調製した。
【0094】
[製造例4]ガス発生層形成用組成物A
ポリマーAの酢酸エチル溶液(ポリマーA:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)0.3重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV-1700B」)50重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部、紫外線吸収剤(2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(C10-C16(主としてC12-C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、商品名「TINUVIN 400」、BASF社製)20重量部、赤外線吸収剤カーボンブラック顔料、商品名「SZ7740」、大日精化社製)30重量部とを混合してガス発生層形成用組成物Aを調製した。
【0095】
[実施例1]
製造例1で得た樹脂層形成用組成物Aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm、表面粗さRa:77.97nm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に樹脂前駆層を形成した。
製造例2で得たガス発生層形成用組成物Aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にガス発生前駆層を形成した。
次いで、上記樹脂前駆層と上記ガス発生前駆層とをロール間でラミネートして貼り合わせ、樹脂前駆層側から500mJ/cmの条件でUV照射して、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例2]
アクリル系ポリマーAに代えて、アクリル系ポリマーBを用い、エポキシ系架橋剤の含有割合を1重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
[製造例5]樹脂層形成用組成物B
ポリマーBのトルエン溶液(ポリマーB:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)1.0重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV-1700B」)20重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部とを混合して樹脂層形成用組成物Bを調製した。
【0099】
[製造例6]ガス発生層形成用組成物B
ポリマーAの酢酸エチル溶液(ポリマーA:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)0.3重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV-1700B」)50重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部、赤外線吸収剤カーボンブラック顔料、商品名「SZ7740」、大日精化社製)30重量部とを混合してガス発生層形成用組成物Bを調製した。
【0100】
[実施例3]
製造例5で得た樹脂層形成用組成物Bを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm、表面粗さRa:77.97nm)の片側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが5μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリイミドフィルム上に樹脂前駆層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」、厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせた。
次いで、製造例6で得たガス発生層形成用組成物Bを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、上記ポリイミドフィルムの樹脂層とは反対側に、ロール間でラミネートして貼り合わせ、樹脂前駆層側から500mJ/cmの条件でUV照射した。
このようにして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ポリイミドフィルム/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表2に示す。
【0101】
[実施例4~6]
樹脂層形成用組成物中のUVオリゴマーの配合量を表2に示すとおりとしたこと以外は、実施例3と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
[製造例7]ガス発生層形成用組成物C
ポリマーBのトルエン溶液(ポリマーB:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)1.0重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV-1700B」)20重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部と、熱膨張性微小球(積水化学社製、商品名「アドバンセルEMS-024」)とを混合してガス発生層形成用組成物Cを調製した。
【0104】
[実施例7]
ガス発生層形成用組成物Bに代えて、ガス発生層形成用組成物Cを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ポリイミドフィルム/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0105】
[実施例8]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)に代えて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:38μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ポリエチレンテレフタレートフィルム/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0106】
[実施例9~11]
樹脂層形成用組成物中のUVオリゴマーの配合量を表3および表4に示すとおりとしたこと以外は、実施例8と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3および表4に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
[実施例12]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)に代えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション社製、商品名「テオネックス(登録商標)フィルムQ51C-50」、厚み:50μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ポリエチレンナフタレートフィルム/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0110】
[製造例8]樹脂層形成用組成物C
ポリマーAの酢酸エチル溶液(ポリマーA:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)5.0重量部とを混合して樹脂層形成用組成物Cを調製した。
【0111】
[実施例13]
製造例8で得た樹脂層形成用組成物Cを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)の片側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが5μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリイミドフィルム上に樹脂層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせた。
次いで、製造例6で得たガス発生層形成用組成物Bを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、上記ポリイミドフィルムの樹脂層とは反対側に、ロール間でラミネートして貼り合わせた。このようにして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(樹脂層/ポリイミドフィルム/ガス発生層)を得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0112】
[実施例14]
架橋剤の配合量を1.0重量部としたこと以外は、実施例13と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0113】
[比較例1]
シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に代えて、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(きもと社製、商品名「Releasy MAG01」厚み:75μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表4に示す。
【0114】
[比較例2]
UVオリゴマーの配合量を表1に示すとおりとしたこと以外は、比較例1と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【符号の説明】
【0116】
10 樹脂層
20 基材
100 粘着シート
図1