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特開2024-173445基礎構造物および基礎構造物の設置方法
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  • 特開-基礎構造物および基礎構造物の設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173445
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基礎構造物および基礎構造物の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241205BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20241205BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20241205BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20241205BHJP
   F03D 13/20 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/01 D
E02D27/52 Z
E04H12/00 A
F03D13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091869
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝村 裕人
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】望月 修
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晋一郎
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046BA12
2D046DA63
2D046DA64
3H178AA20
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB77
3H178BB79
3H178CC22
3H178DD67Z
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】運搬船への積み込み作業や運搬船上での揚重作業を容易に行うことができる基礎構造物を提供する。
【解決手段】基礎構造物1であって、ベース部材10と、ベース部材10上に積層された重量物20と、を備え、ベース部材10には、下部構造物110(被支持部材)の基部が連結される連結部14が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎構造物であって、
ベース部材と、
前記ベース部材上に積層された重量物と、を備え、
前記ベース部材には、被支持部材の基部が連結される連結部が設けられていることを特徴とする基礎構造物。
【請求項2】
前記ベース部材の上面には、前記重量物が収容された凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造物。
【請求項3】
前記ベース部材には中空な型枠部が形成され、前記型枠部内に充填材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造物。
【請求項4】
基礎構造物の設置方法であって、
ベース部材を運搬船に積載して水上輸送するベース部材輸送工程と、
前記ベース部材を水中に沈めて、水底の設置領域に前記ベース部材を載置するベース部材設置工程と、
重量物を水中に沈めて、前記重量物を前記ベース部材上に積層する重量物積層工程と、を備えていることを特徴とする基礎構造物の設置方法。
【請求項5】
前記運搬船上において、前記ベース部材に形成された中空な型枠部に充填材を充填した後に、前記ベース部材設置工程において、前記ベース部材を水中に沈めることを特徴とする請求項4に記載の基礎構造物の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造物および基礎構造物の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電装置の基礎構造物としては、水底に設置されるコンクリート製のベース部材に、支柱の基端部を連結しているものがある(例えば、特許文献1参照)。このような基礎構造物は、地上で構築した後に運搬船に積載して水上輸送し、設置領域の上方で基礎構造物を水中に沈めて水底に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7093203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の基礎構造物は、風力発電装置の大型化に伴って総重量が増加すると、運搬船への積み込みが困難になるとともに、地上および運搬船上での揚重作業が難しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、運搬船への積み込み作業や地上および運搬船上での揚重作業を容易に行うことができる基礎構造物および基礎構造物の設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第一の発明は、基礎構造物であって、ベース部材と、前記ベース部材上に積層された重量物と、を備え、前記ベース部材には、被支持部材の基部が連結される連結部が設けられている。
本発明では、設置領域にベース部材を設置した後に、ベース部材上に重量物を積層することで、基礎構造物を構築できる。これにより、ベース部材と重量物とを別々に輸送することが可能になるので、基礎構造物の総重量が揚重設備の揚重能力を超える場合であっても、地上から運搬船への積み込みや運搬船から水底への設置作業が可能になる。
【0007】
前記した基礎構造物において、前記ベース部材の上面に前記重量物を収容する凹部が形成されている場合には、ベース部材上の重量物を安定させることができる。
前記した基礎構造物において、前記ベース部材に中空な型枠部を形成し、前記型枠部内に充填材を充填することが好ましい。この構成では、型枠部に充填材を充填する前の状態でベース部材を輸送できるので、地上から運搬船への積み込み作業が容易になる。
【0008】
本発明では、ベース部材を地上から運搬船に容易に積載できる。そして、ベース部材と重量物とを別々に水上で搬送し、設置領域にベース部材を設置した後に、ベース部材上に重量物を積層することで、水底に基礎構造物を構築できる。これにより、ベース部材および重量物をそれぞれ容易に搬送して、基礎構造物を設置できる。
【0009】
前記課題を解決するため、第二の発明は、基礎構造物の設置方法であって、ベース部材を運搬船に積載して水上輸送するベース部材輸送工程と、前記ベース部材を水中に沈めて、水底の設置領域に前記ベース部材を載置するベース部材設置工程と、重量物を水中に沈めて、前記重量物を前記ベース部材上に積層する重量物積層工程と、を備えている。
本発明では、ベース部材を地上から運搬船に容易に積載できる。そして、ベース部材と重量物とを別々に水上輸送し、設置領域にベース部材を設置した後に、ベース部材上に重量物を積層することで、水底に基礎構造物を構築できる。これにより、ベース部材および重量物をそれぞれ容易に水上搬送して、水底に基礎構造物を設置できる。
本発明では、ベース部材を気中で製作するため、ベース部材を高品質に製作できる。また、揚重設備の能力に応じてベース部材を分割して陸上で製作し、水中で組み立てる必要がなくなるため、ベース部材は構造的に弱い部位が少なくなる。
【0010】
前記運搬船上において、前記ベース部材に形成された中空な型枠部に充填材を充填した後に、前記したベース部材設置工程において、前記ベース部材を水中に沈めることが好ましい。この構成では、型枠部に充填材が充填されていない分、ベース部材が軽量になるので、運搬船への積み込み作業が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基礎構造物および基礎構造物の設置方法では、設置領域にベース部材を設置した後に、ベース部材上に重量物を積層できるため、基礎構造物の総重量が揚重設備の揚重能力を超える場合であっても、輸送手段への積み込み作業や輸送手段上での揚重作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した図で、図2のIII-III断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材輸送工程を示した側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法における充填材充填工程を示した側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材設置工程においてベース部材を入水させた状態を示した側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材設置工程においてベース部材を沈めている状態を示した側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法における重量物積層工程を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、洋上風力発電装置を支持する基礎構造物に本発明を適用した場合について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した側面図である。
本実施形態の基礎構造物1は、図1に示すように、ベース部材10と、ベース部材10上に積層された重量物20と、を備えている。基礎構造物1は、水底に載置され、被支持部材である下部構造物110(例えば、ジャケット)と連結することで、洋上風力発電装置100を支持するものである。下部構造物110の上部は水上に突出しており、下部構造物110の上部にブレード(図示せず)およびタワー120が取り付けられている。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した平面図である。図3は、本発明の実施形態に係る基礎構造物を示した側断面図である。
ベース部材10は、図2に示すように、プレート部材11と、プレート部材11の外周縁部に沿って形成された型枠部12と、を備えている。
プレート部材11は、円板状の部材(例えば、コンクリート製の部材)である。プレート部材11の外周部は中央部よりも高く形成されている(図3参照)。これにより、プレート部材11の上面には円形の凹部13が形成されている。
また、プレート部材11の外周部には、三つの連結部14が形成されている。連結部14は、下部構造物110が連結される部位であり、例えば、円柱状に形成されている。連結部14の中央部には、下部構造物110の基部が差し込まれる連結穴14aが形成されている(図3参照)。本実施形態では、三つの連結部14がプレート部材11の周方向に等間隔に形成されている。
【0016】
型枠部12は、プレート部材11の外周縁に沿って形成された環状の部位である。型枠部12は、図3に示すように、中空な鋼製の型枠であり、軸直交断面が四角形に形成されている。
型枠部12の内周面(プレート部材11に対向する側面)の下部には、プレート部材11の外周面が接合されている。型枠部12の内周面の下部には、複数のずれ止め材12a(例えば、頭付きスタッドやリブプレート等を想定)であるが設けられており、各ずれ止め材12aがプレート部材11の外周部に埋め込まれることで、プレート部材11と型枠部12とが一体化されている。
型枠部12内には、充填材15が充填されている。本実施形態の充填材15はコンクリートである。型枠部12の内周面の上部には、型枠部12内に充填材15を充填するための注入口が複数開口している。
型枠部12の内面には、複数のずれ止め材12b(例えば、頭付きスタッドやリブプレート等を想定)が設けられており、各ずれ止め材12bが充填材15に埋め込まれることで、充填材15と型枠部12とが一体化されている。
【0017】
重量物20は、プレート部材11の上面に形成された凹部13に収容される部材である。本実施形態の重量物20は、複数のコンクリートブロックや砕石等の部材を網状の袋に収容したものである。重量物20の構成は限定されるものではなく、例えば、一つのコンクリートブロックによって重量物20を構成してもよいし、複数のコンクリートブロックを連結して重量物20を構成してもよい。さらに、重量物20は、袋詰め材や石材のように塊状を形成しないもの(例えば、岩塊など)を収容して構成してもよい。
【0018】
次に、本実施形態の基礎構造物1を水底に設置する方法について説明する。
[ベース部材輸送工程]
図4は、本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材輸送工程を示した側面図である。図5は、本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法における充填材充填工程を示した側面図である。
まず、図4に示すベース部材10を地上の作業スペースで作成する。このとき、型枠部12は中空な状態である。
ベース部材10を港に搬送するとともに、水上に運搬船Sを配置する。そして、地上または水上に設置したクレーンC1によってベース部材10を吊り上げ、運搬船Sの荷台にベース部材10を直接載置または多軸台車等を使用して載置する。
そして、ベース部材10を積載した運搬船Sを設置領域の上方まで移動させる。このように、ベース部材10を水上輸送して設置領域の上方に配置する。
【0019】
[充填材充填工程]
図5に示すように、運搬船S上でベース部材10の型枠部12内に充填材15を充填する。このとき、図3に示すように、型枠部12の注入口から型枠部12内に充填材15を充填する。なお、充填材充填工程は、港に停泊した運搬船S上で行ってもよいし、港から設置領域に移動する間に行ってもよい。
[ベース部材設置工程]
図6は、本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材設置工程においてベース部材を入水させた状態を示した側面図である。図7は、本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法におけるベース部材設置工程においてベース部材を沈めている状態を示した側面図である。
型枠部12内の充填材15が硬化した後に、図6に示すように、クレーン船(図示せず)のクレーンC2のワイヤをベース部材10に取り付ける。さらに、ベース部材10が水中に入る位置まで運搬船Sを沈めて、クレーンC2によって水中のベース部材10を吊り下げる。このとき、ベース部材10には浮力が作用するため、クレーンC2の負荷を低減できる。
図7に示すように、クレーンC2によって水中のベース部材10を支持しながら、ベース部材10を水底に向けて沈めて、図8に示すように、水底の設置領域にベース部材10を載置する。
【0020】
[重量物積層工程]
図8は、本発明の実施形態に係る基礎構造物の設置方法における重量物積層工程を示した側面図である。
図8に示すように、水底にベース部材10を設置した後に、クレーン船(図示せず)を用いて、重量物20を水中に沈める。そして、重量物20をベース部材10の凹部13内に収容して、基礎構造物1を構築する。
基礎構造物1を水底に設置した後に、図1に示すように、クレーン船(図示せず)を用いて、下部構造物110の各基部を、基礎構造物1の三つの連結部14にそれぞれ形成された連結穴14aに差し込む。これにより、水底の基礎構造物1によって下部構造物110が支持される。
【0021】
以上のような基礎構造物1および基礎構造物1の設置方法では、図4および図8に示すように、ベース部材10と重量物20とを別々に水上輸送できる。また、ベース部材10の型枠部12が中空な状態で、軽量化されたベース部材10を運搬船Sに積み込むことができる。
これにより、基礎構造物1の総重量が揚重設備(クレーン)の揚重能力を超える場合であっても、運搬船Sへの積み込み作業や運搬船S上での揚重作業が可能になる。したがって、ベース部材10および重量物20をそれぞれ容易に水上搬送して、水底に基礎構造物1を設置できる。
【0022】
本実施形態の基礎構造物1では、図3に示すように、ベース部材10の上面に形成された凹部13に重量物20が収容されているため、ベース部材10上の重量物20を安定させることができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態の基礎構造物1は、図1に示すように、水底に設置されるものであるが、基礎構造物1の設置場所や被支持部材は限定されるものではない。例えば、基礎構造物1を地上に設置してもよく、この場合には、車両によってベース部材10と重量物20とを別々に輸送することになる。
本実施形態の基礎構造物1のベース部材10では、プレート部材11の外周部に型枠部12が設けられているが、型枠部12の位置や形状は限定されるものではない。更には、ベース部材10に型枠部12を設けることなく、プレート部材11のみによってベース部材10を構成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 基礎構造物
10 ベース部材
11 プレート部材
12 型枠部
12a ずれ止め部材
12b ずれ止め部材
13 凹部
14 連結部
14a 連結穴
15 充填材
20 重量物
100 洋上風力発電装置
110 下部構造物
120 タワー
C1 クレーン
C2 クレーン
S 運搬船
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8