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特開2024-173446情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173446
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20241205BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241205BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20241205BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N23/60 300
G06T7/00 350B
G06V10/70
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091872
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 大輔
【テーマコード(参考)】
5C122
5L049
5L050
5L096
【Fターム(参考)】
5C122DA03
5C122DA12
5C122EA55
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK38
5C122FK40
5C122GC14
5C122GC52
5C122HA01
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB01
5C122HB09
5L049CC11
5L050CC11
5L096CA02
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】機械学習を利用した鑑定を効率よく行う。
【解決手段】鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段と、を有することを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記鑑定対象に関連する複数の項目を取得する項目取得手段と、
前記情報処理装置を利用する利用者の信頼度に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目のうち、前記鑑定に用いる項目の項目数を決定する項目数決定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記優先度に基づいて、前記鑑定対象に関連する複数の項目の中から、前記鑑定に用いる項目を選択する項目選択手段、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記優先度に基づいて、前記鑑定対象に関連する複数の項目の、前記鑑定の実行順序を決定する実行順序決定手段、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記優先度と前記項目数に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目の中から、前記鑑定に用いる項目を選択する項目選択手段、
を更に有することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記優先度決定手段は、前記撮像条件の値に応じて予測される、前記鑑定の結果の正しさを表す予測値に基づいて、前記優先度を決定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記優先度決定手段は、前記撮像条件の値に応じて予測される、前記鑑定に掛かる予測時間に基づいて、前記優先度を決定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記優先度決定手段は、項目ごとの前記撮像画像に付与されメタデータから、項目ごとの前記撮像条件を取得する特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記撮像条件は、解像度、ISO感度、及び画像サイズのうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記項目選択手段で選択された項目を、前記優先度の順に表示するよう制御する表示制御手段を、
更に有することを特徴とする請求項3又は5に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記鑑定対象に関連する複数の項目ごとに機械学習された学習モデルに、項目ごとの前記撮像画像が入力されると、前記鑑定対象の本物らしさを表す指標値を項目ごとに出力する鑑定手段に対し、前記項目選択手段で選択された項目の前記鑑定を実行させるよう制御する実行制御手段と、
を更に有することを特徴とする請求項3又は5に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記優先度に基づいて、前記鑑定手段に対し、前記項目選択手段で選択された項目の前記鑑定を実行させる順序を決定する実行順序決定手段、
を更に有することを特徴とする請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記実行順序決定手段は、前記項目選択手段で選択された項目の中で、前記優先度が低い項目を、前記鑑定を実行させる対象から除外することを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記鑑定対象の形状又は材質に関連する複数の項目を取得する項目取得手段、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目を取得する項目取得手段と、
前記情報処理装置を利用する利用者の信頼度に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目のうち、前記鑑定に用いる項目の項目数を決定する項目数決定手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項16】
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理方法であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置のコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブランド品や骨董品などの高価な物品を専門に扱うリユース業者や個人での売買が可能なフリマアプリにおいて、取引される物品のAI(Artificial Intelligence)による真贋判定が適用され始めている。また実際にAIによる機械学習を用いた真贋判定がリユース業者を中心に導入され始めている。機械学習を用いた真贋判定の分野では、バッグや時計、骨董品等の鑑定品の画像から得られる形状や材質などの特徴量や、鑑定品に付随する情報を用いて、鑑定品を鑑定する技術が提案されている。特許文献1では、鑑定対象の商品カテゴリや商品名等を入力し、撮影画像やX線画像等で実際の鑑定対象から必要な特徴を抽出し、真贋判定や価格判定を行うことが記載されている。特許文献2では、顕微鏡画像をチャンクに分割してモデルを学習し、判定時には学習されたモデルを基に分割したチャンクを真正品もしくは偽造品の情報を含むクラスに分類することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/044826号
【特許文献2】特表2017-520864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような機械学習による真贋判定では、一つの鑑定品を判定するために、複数の判定項目に応じた複数の画像を入力し、それぞれの画像を用いた判定を行う。従来では、すべての判定項目に対する判定が終了するまでは、鑑定の結果が得られないため、鑑定の効率化が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、機械学習を利用した鑑定を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械学習を利用した鑑定を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鑑定システムのシステム構成例を示す図である。
図2】ホスト端末のハードウェア構成例を示す図である。
図3】ホスト端末の機能構成例を示す図である。
図4】AI鑑定に係る全体処理を示すフローチャートである。
図5】判定項目の例を示す図である。
図6】利用者情報の例を示す図である。
図7】撮影条件の例を示す図である。
図8】項目数を決定する方法を説明する図である。
図9】解像度に関する関係性テーブルの例を示す図である。
図10】ISO感度に関する関係性テーブルの例を示す図である。
図11】優先度を決定する方法を説明する図である。
図12】判定項目の実行順序を説明する図である。
図13】AI鑑定に係る全体処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態では、鑑定対象の鑑定品を撮影した動画像に対して、機械学習を利用して鑑定品が本物か偽物か判定する真贋判定を行う鑑定システムについて記載する。鑑定システムの利用者としては、鑑定士を想定している。図1は、鑑定システムのシステム構成例を示す。図1の鑑定システムは、リユース業者が展開するオンライン鑑定サービスに適用された場合の構成例を示す。
【0011】
図1に示す鑑定システム100は、クライアント端末130、ホスト端末140、ゲートウェイ120、インターネット150、及びクラウドサーバ110を有して構成されている。クライアント端末130とホスト端末140とクラウドサーバ110は、ゲートウェイ120とインターネット150を介して相互に接続されている。なお、インターネット150に代えて、専用回線を用いても構わない。
【0012】
ホスト端末140は、PC(Personal Computer)やモバイル端末などの端末装置であり、鑑定士が利用する。クライアント端末130は、PCやモバイル端末などの端末装置であり、物品(鑑定品)の買取を希望する買取客が利用する。クライアント端末130及びホスト端末140は、何れも撮影機能を有している。また、クライアント端末130及びホスト端末140は、ゲートウェイ120を介してインターネット150に接続されており相互にビデオ通話が可能である。ゲートウェイ120は、クライアント端末130及びホスト端末140が、インターネット150を介して相互に通信するためのプロトコル変換やルーティング処理を行う。また、クライアント端末130及びホスト端末140は、インターネット150に接続されるクラウドサーバ110と通信可能である。
【0013】
図1において、クラウドサーバ110は、機械学習を利用した真贋判定を実行可能なAI(Artificial Intelligence:人工知能)を具備している。AIによる真贋判定(以下、AI鑑定と呼ぶ)では、本物の鑑定品の画像(本物データ)と偽物と鑑定品の画像(偽物データ)とを学習用データとして機械学習された学習モデルを用いる。この学習モデルは、判定項目ごとに準備されている。鑑定品がハンドバックであれば、判定項目は、ブランドのロゴ、シリアルナンバー、ファスナー等の形状、素材などである。したがってAI鑑定では、一つの鑑定品に対して、複数の判定項目ごとに、本物らしさを表す指標値が出力される。ホスト端末140は、複数の判定項目に対応する動画像をクラウドサーバ110にアップロードして、AI鑑定を実行させる。ホスト端末140は、クライアント端末130で撮影された鑑定品の動画像をクライアント端末130から受信して、クラウドサーバ110にアップロードしてもよい。クラウドサーバ110は、鑑定システム100で利用される各種のデータの格納先としても機能する。
【0014】
続いて、鑑定システム100において、オンライン鑑定サービスが提供される流れについて説明する。
まず、鑑定士の利用するホスト端末140と、買取客の利用するクライアント端末130との間でビデオ通話が行われる。鑑定士は、ビデオ通話により鑑定対象の鑑定品を特定する。ホスト端末140は、鑑定士の入力操作等により、鑑定品の品種などの情報(鑑定品情報)を取得する。ここでホスト端末140は、クライアント端末130で撮影された鑑定品の画像をクラウドサーバ110に送信することで、鑑定品の特定をAIに依頼してもよい。この場合、ホスト端末140は、クラウドサーバ110からの応答結果に基づき、鑑定品情報を登録してもよい。
【0015】
次に、ホスト端末140は、取得した鑑定品情報に関連する判定項目を取得し、鑑定士に提示する。鑑定士はビデオ通話により買取客に判定項目に応じた撮影の指示を行う。ホスト端末140は、クライアント端末130から判定項目に応じた動画像を取得する。ホスト端末140は、取得した動画像をクラウドサーバ110にアップロードして、AI鑑定を依頼し、その応答結果に基づき鑑定結果を取得する。なお、ホスト端末140は、鑑定品を様々な角度、又はその一部を拡大して撮影した鑑定品の動画像を予め取得して保存しておき、保存された動画像から判定項目に応じた画像を抽出してもよい。また、ホスト端末140は、鑑定品を様々な角度、又はその一部を拡大して撮影した鑑定品の動画像をクラウドサーバ110にアップロードしてもよい。この場合、クラウドサーバ110は、アップロードされた動画像から判定項目に応じた画像を抽出してもよい。
【0016】
本実施形態では、鑑定システム100は、鑑定システム100を利用する鑑定士の情報や鑑定品の動画像の撮影条件に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数と実行順序を決定する。以下では、AI鑑定を行う判定項目の項目数と実行順序を決定する方法について説明を行う。
【0017】
なお上記の説明では、図1に示す鑑定システム100が、クラウドサーバ110上のAIを利用して、真贋判定を行うことを前提としたが、この限りではない。鑑定システム100は、ホスト端末140やローカルネットワークを介して接続される他のPCやサーバなどの装置に搭載されるAIモジュールを利用して、AI鑑定を行っても構わない。即ち、AIは、クラウド上に存在してもよく、物理的な装置内に存在してもよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係るホスト端末140を構成するハードウェア構成例を示す。以下では、AIモジュール204がホスト端末140に搭載されているものとして説明する。なお、ホスト端末140のハードウェア構成の一部がクラウドサーバ110に配置されているとしてもよい。また、クラウドサーバ110は、仮想的なサーバ装置であっても、物理的なサーバ装置であっても構わない。クラウドサーバ110は、ホスト端末140と同様のハードウェア構成で実現可能である。なお、クラウドサーバ110は、複数のサーバ装置が協働することにより実現されても構わない。また、クライアント端末130は、AIモジュール204を除いたホスト端末140と同様のハードウェア構成で実現可能である。ホスト端末140は、情報処理装置の例である。
【0019】
ホスト端末140は、制御部200、記憶部201、撮影部202、入出力装置203、AIモジュール204、及び通信部205を有して構成されている。これらの構成部は、システムバス206を介して相互に接続されている。
【0020】
制御部200は、ホスト端末140の全体を制御する。制御部200は、CPUやGPUなどにより構成される。
記憶部201は、ROMやRAM、HDDなどにより構成され、OS(Operating System)、オンライン鑑定サービス用のプログラムであるオンライン鑑定プログラムなどの各種のプログラムを記憶する。また、記憶部201には、鑑定システム100に登録されている鑑定士の利用者情報(図6参照)、及び鑑定品の動画像などが格納されている。また、記憶部201には、動画像の撮影条件の値と、その動画像のAI鑑定に掛かる予測時間(判定時間)やAI鑑定の結果の正しさを表す予測値(期待度)と、の関係性を表す関係性テーブル(図9図10参照)などが格納されている。
撮影部202は、カメラにより構成され、鑑定士と買取客とのビデオ通話を行うために利用される。また、クライアント端末130の撮影部202は、鑑定品の動画像を撮影するために利用される。
【0021】
入出力装置203は、マウス、キーボードなどの入力装置と、モニタなどの出力装置から構成される。制御部200は、入力装置から入力情報を受け付けると共に、出力装置に表示情報を出力する。
【0022】
AIモジュール204は、複数の判定項目ごとに、鑑定品の動画像から抽出される特徴量を学習モデルに入力して得られる、本物データとの一致度に基づき、本物らしさを表す指標値を判定結果として出力する。学習モデルとしては、畳み込みニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)等のアルゴリズムが用いられる。制御部200は、通信部205を介して受信した鑑定品の動画像をAIモジュール204に入力することで、AIモジュール204にAI鑑定を実行させる。AIモジュール204は、鑑定手段の例である。
【0023】
通信部205は、ネットワークに接続し、インターネット150を介して外部装置との間でデータの送受信を行う。オンライン鑑定サービスでは、通信部205は、ビデオ通話に必要なデータの送受信を行う。また、制御部200は、通信部205を介して、クライアント端末130の撮影部202で撮影された鑑定品の動画像をクライアント端末130から受信する。
【0024】
なお、図1図2の構成は一例であり、鑑定システム100のシステム構成を限定するものではない。一例として、ホスト端末140の構成要素が、ネットワーク上に分散して配置されてもよい。また、ホスト端末140がスタンドアロンの装置として実現されてもよい。この場合では、制御部200は、自身の撮影部202から鑑定品の動画像を取得する。そして制御部200は、取得した鑑定品の動画像をAIモジュール204に入力してAI鑑定を実行させる。
【0025】
また、AIを具備するクラウドサーバ110が、ブラウザを介してクライアント端末130とホスト端末140との間のデータの送受信を制御しても構わない。この場合、クラウドサーバ110が、クライアント端末130から鑑定品の動画像を受信する。クラウドサーバ110は、ホスト端末140から鑑定士の情報を受信し、受信した鑑定士の情報と、クライアント端末130から受信した鑑定品の動画像に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数と実行順序を決定する。そして、クラウドサーバ110は、決定した項目数と実行順序に従って、AI鑑定を行う。そして、クラウドサーバ110は、AI鑑定により得られた判定結果をホスト端末140に送信する。
【0026】
図3は、ホスト端末140の機能構成例を示す。ホスト端末140は、利用者情報取得部301、鑑定品情報取得部302、判定項目数決定部303、判定時間決定部304、期待度決定部305、スケジューリング部306、及び鑑定AI制御部307としての機能を有する。ホスト端末140は、制御部200が記憶部201に格納されるオンライン鑑定用プログラムを実行することで、これら各機能部として機能する。
【0027】
利用者情報取得部301は、入出力装置203(モニタ)に表示されるGUI(不図示)を介して入力された鑑定士の情報を、利用者情報として取得する。なお、利用者情報取得部301は、ログイン情報や鑑定士の顔を撮影した画像などから識別した情報を用いて、クラウドサーバ110や記憶部201に予め格納されている利用者情報から、該当する利用者情報を取得しても構わない。
【0028】
鑑定品情報取得部302は、鑑定品自体に関する情報である、鑑定品情報を取得する。鑑定品情報は、鑑定品の品種などの情報を含む。例えば、鑑定品情報取得部302は、入出力装置203(モニタ)に表示されるGUI(不図示)を介して入力された情報を、鑑定品情報として取得する。また、鑑定品情報取得部302は、クライアント端末130で撮影された鑑定品の画像を、AIモジュール204に入力して得られる出力結果に基づき、鑑定品情報を取得してもよい。また、鑑定品情報取得部302は、サンプルの画像と鑑定品情報が紐づけられた鑑定品情報データテーブル(不図示)を用い、クライアント端末130で撮影された鑑定品の画像とサンプルの画像とを照合することで、該当する鑑定品情報を取得してもよい。
【0029】
また、鑑定品情報取得部302は、鑑定品情報に関連する判定項目を取得する。例えば、記憶部201には鑑定品情報の品種とAI鑑定に利用可能な判定項目とが関連付けられたデータベース(不図示)が格納されており、制御部200は、取得した鑑定品情報の品種に関連付く判定項目を当該データベースから読み出す。
【0030】
また、鑑定品情報取得部302は、鑑定品の動画像を取得する。オンライン鑑定サービスでは、鑑定品情報取得部302は、買取客とのビデオ通話中に鑑定士が指示した判定項目に応じた撮影方向やズーム率で鑑定品を撮影した動画像を、通信部205を介してクライアント端末130から受信する。
【0031】
判定項目数決定部303は、利用者情報取得部301で取得した利用者情報から、対象の鑑定士の信頼度を算出し、算出した信頼度に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数を決定する。
判定時間決定部304は、鑑定品情報取得部302で取得した動画像の判定項目ごとの撮影条件の値に基づいて、各判定項目に対する判定時間を決定する。
期待度決定部305は、鑑定品情報取得部302で取得した動画像の判定項目ごとの撮影条件の値に基づいて、各判定項目に対する期待度を決定する。
【0032】
スケジューリング部306は、判定時間決定部304及び期待度決定部305で決定した判定時間及び期待度と、判定項目数決定部303で決定した項目数とに基づいて、AI鑑定を行う判定項目を選択すると共に、選択された判定項目の実行順序を決定する。また、スケジューリング部306は、選択された判定項目とその実行順序を、ホスト端末140の入出力装置203(モニタ)に表示する。
【0033】
鑑定AI制御部307は、AIモジュール204を制御して、鑑定品情報取得部302で取得した動画像の内の、スケジューリング部306で選択された判定項目に対応する動画像の真贋判定を、スケジューリング部306で決定された実行順序で実行させる。また、鑑定AI制御部307は、判定項目ごとの判定結果を集計して、ホスト端末140の入出力装置203(モニタ)に表示する。ここで集計の方法としては、単純に各判定項目の判定結果を平均してもよいし、期待度を加味して平均化しても構わない。
【0034】
図4は、本実施形態のAI鑑定に係る全体処理を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、制御部200が記憶部201に格納されるオンライン鑑定用プログラムを実行することで実現する。以下では、鑑定品がハンドバックである場合を例にして、説明する。以下のフローチャートの説明では、各工程(ステップ)について先頭にSを付けて表記することで、工程(ステップ)の表記を省略する。
【0035】
S400において、制御部200は、入出力装置203などから鑑定品情報を取得する。ここでは、鑑定品情報としてハンドバックが取得されたとする。次に制御部200は、取得した鑑定品情報に関連する判定項目を取得する。取得した鑑定品情報に関連する判定項目を取得する処理は、項目取得処理の例である。ここで取得される判定項目は、鑑定対象の形状及び素材に関連する項目であり、鑑定対象に対するAI鑑定に利用可能な全判定項目である。例えば、制御部200は、鑑定品情報の品種とAI鑑定に利用可能な判定項目とが関連付けられたデータベース(不図示)から、取得した鑑定品情報の品種に関連付く判定項目を読み出してもよい。また例えば、制御部200は、AIモジュール204に対して、取得した鑑定品情報の鑑定品に対して適用可能な判定項目を問い合わせてもよい。
【0036】
続いて制御部200は、鑑定品を判定項目ごとに撮影した鑑定品の動画像をクライアント端末130から取得する。鑑定品を判定項目ごとに撮影した鑑定品の動画像は、鑑定対象の撮像画像の例である。制御部200は、取得した動画像を記憶部201に保存する。鑑定品を判定項目ごとに撮影した鑑定品の動画像を取得する処理は、画像取得処理の例である。本実施形態では、動画像を取得するが、取得するのは静止画でもよく、静止画群でもよい。
【0037】
図5は、ハンドバックに関連する判定項目の例を示す。図5の判定項目テーブル500は、ハンドバックのAI鑑定に利用可能な判定項目の一覧を示す。ID501は、判定項目を識別する情報であり、判定項目502は、撮影個所を指定する情報である。判定項目502には、ブランドのロゴ、製造年月などを識別可能なシリアル番号、ファスナー等の金具、縫製、革やナイロンなどの素材などがある。図5では、20個の判定項目が取得されている。以下、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数は、20個であるとする。鑑定士はビデオ通話を用いて買取客に対して、判定項目に応じた鑑定品の撮影を指示する。買取客は、指示された判定項目ごとに、撮影方向、ズーム率、及び明るさなどを調整して鑑定品を撮影する。
【0038】
S401において、制御部200は、鑑定システム100を利用する鑑定士(対象の鑑定士)の利用者情報を取得する。
図6は、利用者情報の例を示す。図6の利用者情報テーブル600は、鑑定システム100に登録されている鑑定士の利用者情報の一覧を示す。利用者情報は、鑑定士601、専門性602、鑑定士歴603、及び資格604の情報を含む。資格604は、古物アプレイザーなどの資格の有無を表す情報である。以下、利用者情報テーブル600の1行目に格納されている、鑑定士Aの利用者情報が取得されたとする。鑑定士Aの利用者情報は、バッグ、革小物及び時計が専門であり、鑑定歴は3年、資格を保有しているという情報を示す。
【0039】
S402において、制御部200は、S401で取得した利用者情報に基づき、対象の鑑定士が、S400で取得した鑑定品情報の鑑定品について、専門の鑑定士であるか否かを判定する。制御部200は、専門であると判定した場合、処理をS404に進め、専門外であると判定した場合、処理をS403に進める。ここでは、鑑定品がハンドバックであり、鑑定士Aの専門にバックが含まれるため、制御部200は、処理をS404に進める。
【0040】
S403において、制御部200は、S400で取得した、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数を、AI鑑定を行う判定項目の項目数として決定する。ここでは、AI鑑定を行う項目数が20個に決定される。なお、制御部200は、本ステップ以降に実行されるS405~S415の処理をスキップして、処理をS416に進め、S400で取得したすべての判定項目に対して、AI鑑定を行っても構わない。但し、本ステップ以降に実行される処理で、S400で取得した判定項目の中に、優先度が著しく低い判定項目が含まれていることが判明する場合もある。そのような判定項目を、AI鑑定の対象から除外するために、S403の後、制御部200は、処理をS405に進める。
【0041】
S404において、制御部200は、S401で取得した利用者情報に基づき、対象の鑑定士の信頼度を算出し、算出した信頼度に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数を決定する。
図8は、図6に示す鑑定士に対して決定された項目数の例を示す。図8の項目数テーブル800の鑑定士801は、図6の利用者情報テーブル600の鑑定士601にそれぞれ対応している。
【0042】
鑑定士B及びDは、バックは専門外であるため、信頼度802が算出されず、判定項目数803がAI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数(ここでは、20個)としてそのまま決定される。
また、鑑定士A及びCは、バックは専門であるため、信頼度802が算出されている。制御部200は、鑑定士歴603と資格604の情報に基づき、信頼度802を算出する。ここでは、鑑定士歴603の値(年数)に、資格604の値(有資格の場合「1」、無資格の場合「0」)を加算することで信頼度を算出しているが、信頼度を算出する方法はこれに限られない。例えば、鑑定士のスキルに応じて鑑定システム100の導入先の基準により定められる設定値を、鑑定士の信頼度として取得してもよい。制御部200は、信頼度802に基づき、判定項目数803を決定する。ここでは、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数を、信頼度802で除算することで、判定項目数803を算出している。鑑定士Aの場合、信頼度が「4」であるから、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数「20」を、信頼度「4」で除算することで、項目数が「5」となる。なお、項目数を決定する方法は、この方法に限られない。
【0043】
即ち、制御部200は、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数を、対象の鑑定士の信頼度に基づき削減することで、AI鑑定を行う項目数を決定する。対象の鑑定士の信頼度に基づいて項目数を決定する処理は、項目数決定処理の例である。鑑定士の鑑定の信頼度が高い場合には、AI鑑定の結果を補助的に利用するとしても、鑑定品の最終的な真贋の結果を担保できると考えられる。そこで、鑑定士の鑑定の信頼度が高い場合には、AI鑑定を行う判定項目の項目数を削減する。これにより、処理コストや処理時間の低減を図ることができる。
【0044】
S405において、制御部200は、AI鑑定に利用可能な全判定項目の内の1つを対象にして、対象の判定項目に対応する動画像を、記憶部201から読み出す。制御部200は、AI鑑定に利用可能な全判定項目に対して、S406~S411の処理を繰り返し実行する。AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数が20個の場合は20回繰り返し実行される。
【0045】
S406において、制御部200は、対象の判定項目に対応する動画像の撮影条件を取得する。
図7は、撮影条件の例を示す。図7の撮影条件テーブル700は、クライアント端末130で撮影された鑑定品の動画像に付与されるメタデータを参照して生成される。動画像に付与されるメタデータとしては、Exif(Exchangeable image file format)情報がある。
【0046】
図7の撮影条件テーブル700は、ID501が「1」の判定項目に対応する動画像の撮影条件を示す。撮影条件701は、解像度とISO(International Organization for Standardization)感度を含む。値702は、撮影条件のそれぞれに対応する値である。なお、撮影条件701は、解像度とISO感度に限らず、これらと共に、あるいは、これらの一部又は全部に代えて、画像サイズなど、その他の撮影条件を含んでもよい。また、動画像に付与されるメタデータから他の情報を取得してもよい。また、動画像の撮影時のセンサデータなどを取得してもよい。撮影条件テーブル700は、AI鑑定に利用可能な全判定項目のそれぞれに対して生成される。即ち、AI鑑定に利用可能な全判定項目の項目数が20個の場合は、撮影条件テーブル700と同様のテーブルが20個生成される。
【0047】
制御部200は、対象の判定項目に対応する撮影条件テーブル700の撮影条件701の内の1つを対象にする。制御部200は、撮影条件ごとに、S407~S409の処理を繰り返し実行する。撮影条件として解像度、ISO感度が取得された場合は、解像度、ISO感度の2回繰り返し実行される。
【0048】
S407において、制御部200は、対象の撮影条件701に対応する値702を、既定の閾値と比較することで、対象の撮影条件が良好であるか否かを判定する。制御部200は、比較の結果、既定の閾値以上であると判定した場合、対象の撮影条件が良好であるとして、処理をS408に進め、既定の閾値未満であると判定した場合、対象の撮影条件が不良であるとして、処理をS409に進める。
【0049】
S408において、制御部200は、対象の判定項目について、期待度は高く、判定時間は長いと予測する。その後処理は、S410を経由して、S411に進む。
S409において、制御部200は、対象の判定項目について、期待度は低く、判定時間は短いと予測する。その後処理は、S410を経由して、S411に進む。
【0050】
S407~S409では、撮影条件の値と既定の閾値と比較することで撮影条件が良好か否かを判定し、判定の結果に応じて、期待度と判定時間を決定した。ここで、以下に示すように、制御部200は、撮影条件の値と判定時間や期待度との関係性を表す関係性テーブルを用いて、撮影条件の値に対応する期待度と判定時間を決定してもよい。
【0051】
図9は、解像度に関する関係性テーブルの例を示す。
図9の関係性テーブル900では、解像度901の値に対する、期待度902の値と、判定時間903の値が設定されている。
ここでの期待度902は、その解像度の画像に対するAI鑑定の結果が正しいと予測できれば「1」、誤っていると予測できれば「0」と定義されている。期待度902は、0から1の間の値を取り得る。
また、ここでの判定時間903は、その解像度の画像に対するAI鑑定に通常の演算時間が掛かると予測できれば「1」、演算時間がまったく掛からないと予測できれば「0」と定義されている。判定時間903は、0から1の間の値を取り得る。
【0052】
図7の撮影条件テーブル700の場合、鑑定品の画像の解像度901の値が「200×200」であるから、その判定項目の期待度902の値は、「0.9」となり、その判定項目の判定時間903の値は、「0.8」となる。なお制御部200は、期待度と判定時間を静的に決定する方法に代えて、鑑定品の動画像の解像度の値が大きい程、その判定項目の期待値を大きく、判定時間を長くするように、動的に決定する方法を採用しても構わない。
【0053】
図10は、ISO感度に関する関係性テーブルの例を示す。
図10の関係性テーブル1000では、ISO感度1001の値に対する、期待度1002の値が設定されている。ここで、ISO感度1001の値に依らず、AI鑑定に掛かる演算時間は変わらない。そのため図10の関係性テーブル1000では、ISO感度と判定時間の関係性のみが設定されている。
図7の撮影条件テーブル700の場合、鑑定品の画像のISO感度1001の値が「800」であるから、その判定項目の期待度1002の値は、「0.8」となる。
【0054】
S411において、制御部200は、次の撮影条件を対象にする。その後制御部200は、S407~S409の処理を繰り返し実行する。すべての撮影条件について、S407~S409の処理が完了した場合、制御部200は、S412を経由して、処理をS413に進める。
S413において、制御部200は、次の判定項目を対象にする。その後制御部200は、S406~S411の処理を繰り返し実行する。すべての判定項目について、S406~S411の処理が完了した場合、制御部200は、処理をS414に進める。
【0055】
S414において、制御部200は、判定項目ごとに、各撮影条件について決定された期待度及び判定時間の平均値を算出する。ここで、平均ではなくRMS(二乗平均平方根)を用いてもよいし、期待度の最低値、判定時間の最大値を選択してもよいものとする。
【0056】
図11は、図5に示す判定項目に対して算出された期待度と判定時間の例を示す。図11の判定項目テーブル1100は、図5の判定項目テーブル500に対して、期待度1101と判定時間1102の項目が付加されている。期待度1101の値は、その判定項目の動画像の各撮影条件に基づき決定された期待度の平均値を表す。また、判定時間1102の値は、その判定項目の動画像の各撮影条件に基づき決定された判定時間の平均値を表す。
【0057】
例えば、図7の撮影条件テーブル700が、ID501が「1」の判定項目に対応する動画像の各撮影条件の値を表すとする。この場合、解像度から決定される期待度902の値が「0.9」で、ISO感度から決定される期待度1002の値が「0.8」であるから、期待度1101の値はこれらの平均値である「0.85」となる。また、判定時間については解像度のみから決定されるため、判定時間1102の値はそのまま「0.8」となる。なお、判定時間についても、複数の撮影条件から決定される場合には、それらの平均を取ってもよい。同様に制御部200は、AI鑑定が利用可能な全判定項目(ID501:1~20)につき、各判定項目に対応する動画像の各撮影条件から決定される期待度の平均値を期待度1101とし、各撮影条件から決定される判定時間の平均値を判定時間1102とする。
【0058】
S415において、制御部200は、S414で算出された期待度と判定時間とに基づいて、判定項目ごとの優先度を決定する。撮影条件の値に応じて決定された期待度と判定時間とに基づいて、判定項目ごとの優先度を決定する処理は、優先度決定処理の例である。そして制御部200は、全判定項目のうち、優先度の高い上位の判定項目を、AI鑑定を行う判定項目として選択する。優先度の高い上位の判定項目を、AI鑑定を行う判定項目として選択する処理は、項目選択処理の例である。そして制御部200は、選択された判定項目に対するAI鑑定の実行順序を、優先度の高い順に決定する。決定した判定項目に対するAI鑑定の実行順序を、優先度の高い順に決定する処理は、実行順序決定処理の例である。
【0059】
図12は、判定項目の実行順序を説明する図である。
図12は、図5に示す判定項目に対して算出された期待度と判定時間の例を示す。図12の判定項目テーブル1200は、図5の判定項目テーブル500に対して、優先度1202の項目が付加されている。優先度1202は、期待度1101の値を判定時間1102の値で除算した値であり、AIによる真贋判定の判定効率を表す。なお、判定効率は優先度の例である。優先度1202は、期待度1101の値を判定時間1102の値で除算した値に限らず、期待度1101又は判定時間1102の値そのものでもよい。
【0060】
以上のように制御部200は、AI鑑定に利用可能な全判定項目のそれぞれに対応する動画像の各撮像条件から、各判定項目の優先度を決定する。本実施形態では、解像度とISO感度から期待値と判定時間を決定し、決定した期待値と判定時間から算出される判定効率を、その判定項目の優先度として決定しているが、この構成に限られない。解像度とISO感度に代えて、他の撮像条件を用いて、優先度を決定してもよい。また、期待値と判定時間を決定することなく、解像度とISO感度から、そのまま優先度を決定しても構わない。
【0061】
続いて制御部200は、優先度1202の高い順に判定項目502をソートし、所定の項目数分を上位から選択し、選択された判定項目502に対するAI鑑定の実行順序を、ソートされた順序に決定する。本実施形態では、S404又はS404で決定した項目数分の判定項目を選択する。ここでは、鑑定士Aの判定項目数803は「5」であるから、上位5項目が選択されている。また、制御部200は、判定項目502のうち、優先度1202が著しく低い判定項目を、AI鑑定の実行対象から除外してもよい。同様に、制御部200は、判定項目502のうち、期待度1101の値が著しく低い判定項目、又は判定時間1102の値が著しく長い判定項目を、AI鑑定の実行対象から除外してもよい。
【0062】
次に制御部200は、AI鑑定を行う判定項目として選択された判定項目を、その実行順序に従って、ホスト端末140の入出力装置203(モニタ)に表示する。AI鑑定を行う判定項目を、その実行順序(優先度)に従って表示する処理は、表示制御処理の例である。これにより、対象の鑑定品に対するAI鑑定を実行する前に、どの判定項目をどの順序で実行するのが適切であるかを示す情報が鑑定士に対して提示される。なお、制御部200は、AI鑑定を行う判定項目の中に、優先度が著しく低い判定項目が含まれる場合には、当該判定項目のAI鑑定を実行するか否かを選択させるUIを、画面に表示してもよい。また、制御部200は、AI鑑定を行う判定項目の中に、優先度が著しく低い判定項目が含まれる場合には、当該判定項目の動画像の撮影条件の変更を促す通知を、画面に表示してもよい。
【0063】
S416において、制御部200は、AI鑑定を行う判定項目として選択された判定項目に対応する動画像を、S415で決定された実行順序で、AIモジュール204に入力して、判定項目ごとにAI鑑定を実行させる。AIモジュール204に対し、選択された判定項目のAI鑑定を決定された実行順序で実行させる処理は、実行制御処理の例である。
以上で図4のフローチャートに示す一連の処理が終了する。
【0064】
次に、図13を参照して、オンライン鑑定サービスによるAI鑑定に係る全体処理について説明する。ここでは、ホスト端末140を構成する各ハードウェア構成のブロック単位の処理シーケンスについて説明する。
【0065】
S1300において、制御部200は、記憶部201に格納されるオンライン鑑定プログラムを起動し、ビデオ通話の制御を開始する。
S1301において、制御部200は、撮影部202を用いてホスト端末140を利用する鑑定士を撮影し、ビデオ通話時の動画データとして生成する。
S1302において、制御部200は、通信部205を用いてクライアント端末130との接続を確立し、撮影部202で生成された動画データを転送して、クライアント端末130を利用する買取客とのビデオ通話を開始する。
S1303において、制御部200は、入出力装置203(モニタ)のビデオ通話画面に、クライアント端末130から受信したビデオ通話時の動画データを表示する。鑑定士は、ビデオ通話画面に表示される動画データにより鑑定品を特定する。
【0066】
S1304において、制御部200は、入出力装置203(モニタ)に鑑定品情報を入力するGUI(不図示)を表示して、入出力装置203(マウス、キーボード)から入力された鑑定品情報を受け付ける。
S1305において、制御部200は、前ステップで受け付けた鑑定品情報を記憶部201に格納する。
S1306において、制御部200は、記憶部201から鑑定品情報を読み出す。
S1307において、制御部200は、前ステップで読み出した鑑定品情報に関連する判定項目を取得し、各判定項目に応じた撮影個所を入出力装置203(モニタ)に表示する。ここで制御部200は、AIモジュール204を用いて判定項目を取得してもよく、記憶部201に格納されたデータベースを用いて判定項目を取得してもよい。鑑定士はビデオ通話を用いて買取客に対して、各判定項目に応じた撮影個所の撮影を指示する。
【0067】
S1308及びS1309において、制御部200は、通信部205を用いてクライアント端末130から、クライアント端末130の撮影部202で撮影された動画像(撮影動画)を受信する。
S1310において、制御部200は、前ステップで受信した撮影動画を記憶部201に格納する。制御部200は、クライアント端末130からファイル転送で動画像データを受信し、判定項目ごとの撮影動画として格納してもよく、ビデオ通話画面を利用して鑑定士が指定した撮影箇所を画面キャプチャし、判定項目ごとの撮影動画として格納してもよい。
S1311及びS1312において、制御部200は、対象の鑑定士の利用者情報を読み出す。また制御部200は、前ステップで格納した撮影動画のメタデータから、判定項目ごとの撮影条件を読み出す。
S1313において、制御部200は、S1307で取得された判定項目の全項目数から、前ステップで読み出した利用者情報を用いて、AI鑑定を行う判定項目の項目数を決定する。
【0068】
S1314において、制御部200は、判定項目ごとの撮影動画の撮影条件から、判定時間及び期待度を決定する。
S1315において、制御部200は、S1313で決定した項目数分の判定項目を、前ステップで決定した判定時間及び期待度に応じてスケジューリングする。また、制御部200は、スケジューリングした判定項目を、入出力装置203(モニタ)に表示する。
【0069】
鑑定士からAI鑑定の実行許可の指示が入力されると、S1316及びS1317において、制御部200は、AIモジュール204に対して、前ステップでスケジューリングした判定項目ごとに撮影画像を提供して、真贋判定を実行させる。
S1318において、制御部200は、AIモジュール204から判定項目ごとの判定結果を取得して、記憶部201に格納する。
スケジューリングされたすべての判定項目に対する真贋判定が完了すると、S1319において、制御部200は、AIモジュール204から判定完了通知を受け取る。
S1320において、制御部200は、AIモジュール204から取得した、判定項目ごとの判定結果を、入出力装置203(モニタ)に表示する。表示された判定結果の集計結果を用いて、鑑定士が最終的な真贋を決定、鑑定品の査定を完了する。
【0070】
S1321において、制御部200が、撮影部202での撮影を停止し、入出力装置203でのビデオ通話画面の表示を停止して、クライアント端末130を利用する買取客とのビデオ通話を終了する。
以上で図13のシーケンス図に示す一連の処理が終了する。
【0071】
本実施形態によれば、機械学習を利用したAI鑑定において、判定項目ごとの優先度に従った順序で、判定項目ごとのAI鑑定を行うことが可能となる。これにより、AI鑑定を効率よく行うことが可能となり、AI鑑定を利用する鑑定士の業務支援を図ることができる。また、オンライン鑑定サービスでは、オンライン鑑定時間が短縮される他、オンライン鑑定時間内にAI鑑定を行う計画が立てやすくなる。また、不安定な撮影条件に応じたAIの判定確度が考慮されるため、鑑定精度を担保することが可能となる。また、オンライン鑑定サービスを提供するリユース業者においては、撮影条件の違いによるAIの判定確度の誤差の平準化、鑑定士に応じた判定確度の平準化を行うことが可能となるなどの利点が想定される。
【0072】
[その他の実施形態]
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0073】
上述の実施形態において、S404では、鑑定士の信頼度に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数を決定したが、鑑定システム100を利用する買取客の信頼度に基づいて、AI鑑定を行う判定項目の項目数を決定しても構わない。この場合制御部200は、オンライン鑑定サービスにおける売買実績や、フリマアプリの出品履歴に基づき、買取客の信頼度を算出する。ここで買取客の信頼度は、鑑定士の信頼度と同様に、AI鑑定を行う項目数を決定するのに利用される。
また、上述の実施形態において、S406では、鑑定品の動画像に付与されるメタデータから撮影条件を取得するとしたが、クライアント端末130で予めテスト撮影して得られた撮影データから撮影条件を取得するとしても構わない。
また、上述の実施形態において、鑑定AI制御部307の説明では、判定項目ごとの判定結果を集計して、ホスト端末140の入出力装置203(モニタ)に表示するとした。この集計値(本物らしさを表す指標値の集計値)が50%付近であった場合に、制御部200は、優先度が次に高い項目について、AIモジュール204に対し、AI鑑定を実行させるよう制御してもよい。これにより、鑑定精度の向上を図ることができる。
【0074】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0075】
上述の各実施形態の開示は、以下の構成、方法及びプログラムを含む。
(構成1)
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
(構成2)
前記鑑定対象に関連する複数の項目を取得する項目取得手段と、
前記情報処理装置を利用する利用者の信頼度に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目のうち、前記鑑定に用いる項目の項目数を決定する項目数決定手段と、
を更に有することを特徴とする構成1に記載の情報処理装置。
(構成3)
前記優先度に基づいて、前記鑑定対象に関連する複数の項目の中から、前記鑑定に用いる項目を選択する項目選択手段、
を更に有することを特徴とする構成1又は2に記載の情報処理装置。
(構成4)
前記優先度に基づいて、前記鑑定対象に関連する複数の項目の、前記鑑定の実行順序を決定する実行順序決定手段、
を更に有することを特徴とする構成1~3の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成5)
前記優先度と前記項目数に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目の中から、前記鑑定に用いる項目を選択する項目選択手段、
を更に有することを特徴とする構成2に記載の情報処理装置。
(構成6)
前記優先度決定手段は、前記撮像条件の値に応じて予測される、前記鑑定の結果の正しさを表す予測値に基づいて、前記優先度を決定することを特徴とする構成1~5の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成7)
前記優先度決定手段は、前記撮像条件の値に応じて予測される、前記鑑定に掛かる予測時間に基づいて、前記優先度を決定することを特徴とする構成1~6の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成8)
前記優先度決定手段は、項目ごとの前記撮像画像に付与されメタデータから、項目ごとの前記撮像条件を取得する特徴とする構成1~7の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成9)
前記撮像条件は、解像度、ISO感度、及び画像サイズのうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする構成1~8の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成10)
前記項目選択手段で選択された項目を、前記優先度の順に表示するよう制御する表示制御手段を、
更に有することを特徴とする構成3又は5に記載の情報処理装置。
(構成11)
前記鑑定対象に関連する複数の項目ごとに機械学習された学習モデルに、項目ごとの前記撮像画像が入力されると、前記鑑定対象の本物らしさを表す指標値を項目ごとに出力する鑑定手段に対し、前記項目選択手段で選択された項目の前記鑑定を実行させるよう制御する実行制御手段と、
を更に有することを特徴とする構成3又は5に記載の情報処理装置。
(構成12)
前記優先度に基づいて、前記鑑定手段に対し、前記項目選択手段で選択された項目の前記鑑定を実行させる順序を決定する実行順序決定手段、
を更に有することを特徴とする構成11に記載の情報処理装置。
(構成13)
前記実行順序決定手段は、前記項目選択手段で選択された項目の中で、前記優先度が低い項目を、前記鑑定を実行させる対象から除外することを特徴とする構成12に記載の情報処理装置。
(構成14)
前記鑑定対象の形状又は材質に関連する複数の項目を取得する項目取得手段、
を更に有することを特徴とする構成1~13の何れか1つに記載の情報処理装置。
(構成15)
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目を取得する項目取得手段と、
前記情報処理装置を利用する利用者の信頼度に基づいて、前記項目取得手段で取得された項目のうち、前記鑑定に用いる項目の項目数を決定する項目数決定手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
(方法)
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理方法であって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
(プログラム)
鑑定対象に対して機械学習を利用した鑑定を行う際に用いる情報処理装置のコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記鑑定は、前記鑑定対象の項目ごとに実行され、
前記鑑定対象に関連する複数の項目のそれぞれに対応する、前記鑑定対象の撮像画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像画像の撮像条件に基づいて、項目ごとの優先度を決定する優先度決定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0076】
100:鑑定システム、110:クラウドサーバ、130:クライアント端末、140:ホスト端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13