(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173457
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20241205BHJP
B62J 11/19 20200101ALI20241205BHJP
B62K 19/30 20060101ALI20241205BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
B62J35/00 A
B62J35/00 D
B62J35/00 Z
B62J11/19
B62K19/30
B62J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091892
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】富松 正浩
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BH08
(57)【要約】
【課題】電気的要素が燃料タンクの上方に大きく突出することを抑制しつつ、電線部材に起因する燃料タンクの短寿命化を抑制することを可能にする。
【解決手段】鞍乗型車両の上部に燃料タンク10が設けられている。燃料タンク10は、上面の一部がフィラー部材12により凹状に形成されている。フィラー部材12の底面部12a上に燃料キャップ装置70が設けられている。燃料キャップ装置70には、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が接続されている。サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2は、フィラー部材12の前方に引き出されている。燃料タンク10は、金属材料により形成されている。燃料タンク10とサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2との間に保護部材80が設けられている。保護部材80を覆うように、燃料タンク10上にタンクカバー90が設けられている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された上面を有する金属製の燃料タンクと、
前記凹部に設けられる電気的要素と、
前記電気的要素に付随して設けられる電線部材と、
前記燃料タンクと前記電線部材との間に設けられる保護部材とを備える、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記電線部材は、前記電気的要素から車両前方に延びる、請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記燃料タンクの上面のうち前記凹部よりも後方の第1の部分の最大高さ位置は、前記燃料タンクの上面のうち前記凹部よりも前方の第2の部分の最大高さ位置よりも上方にあり、
前記保護部材は、前記燃料タンクの上面のうち前記第2の部分上に設けられる、請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記凹部に固定され、前記保護部材を取り付け可能に構成された取付片をさらに備える、請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記凹部は、
底面部と、
前記底面部の外縁から上方に延びる環状の周壁部とを含み、
前記底面部には、前記燃料タンクの給油口が形成され、
前記電気的要素は、
前記給油口を開閉可能な蓋部材と、
前記電線部材を通して与えられる電気信号に基づいて、前記蓋部材を、前記給油口を閉塞する状態で固定された施錠状態と前記給油口を開閉可能な解錠状態との間で移行させる施錠装置とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記保護部材は、樹脂またはゴムにより形成されたシート状部材を含み、
前記シート状部材は、前記燃料タンクの上面のうち前記凹部に隣り合う一部の領域上に接着剤を用いて貼り合わされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記保護部材は、樹脂またはゴムにより形成された、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記保護部材は、前記電線部材を当該保護部材における予め定められた通路内に導くガイド部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記燃料タンクに前記電気的要素が設けられた状態で当該電気的要素を車両前後方向に3等分した場合に、前記電線部材は、前記電気的要素の中央部分に接続され、当該中央部分から引き出される、請求項2または3記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記燃料タンクの上面上に設けられ、前記電線部材を上方から覆うタンクカバーをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両には、ECU(Electronic Control Unit)、表示灯、メータユニット、電源装置および盗難対策装置等の種々の電気的要素が搭載される。それらの電気的要素の各々は、当該電気的要素の用途または機能に応じて、鞍乗型車両の各部に設けられる。また、複数の電気的要素間には、適宜、電力供給用または信号伝送用の電線部材が設けられる。
【0003】
車両上部において、燃料タンクおよびシートがこの順で車両後方に向かって並ぶように配置された鞍乗型車両がある。このような鞍乗型車両においては、例えば燃料タンクの近傍に電気的要素を設けることにより、当該電気的要素に対するアクセスが容易になり、電気的要素のメンテナンス性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料タンク上に電気的要素を設けると、当該電気的要素が燃料タンクの上面から上方に突出する。電気的要素の上端部の高さ位置が過剰に高いと、鞍乗型車両の運転者の身体に意図せず接触する可能性がある。また、鞍乗型車両のデザイン性が低下する。
【0006】
特許文献1に記載の自動二輪車においては、ヘッドパイプの後方に設けられた燃料タンクの上面の一部に凹部が形成されている。その凹部内には、金属製の支持部が溶接により取り付けられている。さらに、その支持部上に電気的要素として盗難対策装置が取り付けられている。盗難対策装置は、複数の端子部を有し、それらの端子部には、電線部材としてハーネスが接続されている。この構成によれば、盗難対策装置が燃料タンクの凹部内に設けられるので、盗難対策装置が、燃料タンクの上面から上方に突出しない。
【0007】
上記のように、電気的要素を燃料タンクの上面に設ける場合には、当該電気的要素から延びる電線部材が燃料タンク上で振動または遊動することに起因して燃料タンクを短寿命化させる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、電気的要素が燃料タンクの上方に大きく突出することを抑制しつつ、電線部材に起因する燃料タンクの短寿命化を抑制することを可能にする鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う鞍乗型車両は、凹部が形成された上面を有する金属製の燃料タンクと、前記凹部に設けられる電気的要素と、前記電気的要素に付随して設けられる電線部材と、前記燃料タンクと前記電線部材との間に設けられる保護部材とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気的要素が燃料タンクの上方に大きく突出することを抑制しつつ、電線部材に起因する燃料タンクの短寿命化を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の一方側面図である。
【
図3】燃料タンクおよびその周辺部材の構成を説明するための分解図である。
【
図4】
図3に示される複数の構成要素が燃料タンク上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
【
図5】
図3に示される複数の構成要素が燃料タンク上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
【
図6】
図3に示される複数の構成要素が燃料タンク上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
【
図7】
図3に示される複数の構成要素が燃料タンク上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
【
図8】
図3に示される複数の構成要素が燃料タンク上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
【
図10】
図6の保護部材の一方側面図(左側面図)である。
【
図11】
図6の保護部材を自動二輪車の左斜め前方かつ上方の位置から見た斜視図である。
【
図12】
図6の保護部材を自動二輪車の左斜め上方かつ後方の位置から見た斜視図である。
【
図13】本発明の一実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成による効果を説明するための図である。
【
図14】
図5の燃料キャップ装置の平面図を拡大した図である。
【
図15】他の実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成の第1の例を示す模式的断面図である。
【
図16】他の実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成の第2の例を示す模式的断面図である。
【
図17】他の実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成の第3の例を示す模式的断面図である。
【
図18】他の実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成の第4の例を示す模式的断面図である。
【
図19】他の実施の形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成の第5の例を示す模式的断面図である。
【
図20】参考形態に係る燃料タンクおよびその周辺部材の構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る鞍乗型車両について図面を参照しつつ説明する。鞍乗型車両の一例として自動二輪車を説明する。
【0013】
1.自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の一方側面図である。
図2は、
図1の自動二輪車100の平面図である。
図1および
図2では、自動二輪車100が路面に対して垂直に起立した状態が示される。
図1以降の各図では、自動二輪車100の前後方向FB、左右方向LRおよび上下方向UDが適宜矢印で示される。前後方向FBにおいて矢印が向かう方向を前方と呼び、その逆の方向を後方と呼ぶ。また、左右方向LRにおいて矢印が向かう方向を左方と呼び、その逆の方向を右方と呼ぶ。さらに、上下方向UDにおいて矢印が向かう方向を上方と呼び、その逆の方向を下方と呼ぶ。
図1以降の各図で方向の矢印とともに示される符号F,B,L,R,U,Dは、前方、後方、左方、右方、上方および下方をそれぞれ表す。
【0014】
図1の自動二輪車100は、金属製の車体フレーム1を備える。車体フレーム1は、メインフレーム1Mおよびリアフレーム1Rを含む。メインフレーム1Mの前端部はヘッドパイプHPを構成する。メインフレーム1Mは、ヘッドパイプHPから後方かつ下方に向かって延びるように形成されている。リアフレーム1Rは、メインフレーム1Mの後端部およびその後端部近傍から後方かつやや上方に向かって延びるように、メインフレーム1Mに取り付けられている。
【0015】
ヘッドパイプHPには、フロントフォーク2がヘッドパイプHPの中心軸を基準として回転可能に設けられている。フロントフォーク2の下端部に前輪3が回転可能に支持されている。フロントフォーク2の上端部には、ハンドル4が設けられている。
【0016】
メインフレーム1MはヘッドパイプHPよりも下方の位置でエンジン5を支持する。エンジン5の上方でかつヘッドパイプHPの後方に位置するように燃料タンク10が設けられている。
図2に示すように、平面視で、燃料タンク10の略中央部には燃料キャップ装置70が設けられている。燃料キャップ装置70は、燃料タンク10の給油口12c(
図3)を開閉するための装置であり、蓋部材71および施錠装置79を含む。燃料キャップ装置70の詳細は後述する。
【0017】
燃料タンク10の前方には、前後方向FBにおいて当該燃料タンク10とヘッドパイプHPとの間に位置するように、キーシリンダ20が設けられている。キーシリンダ20の近傍の位置で、燃料タンク10の上面の一部は、上方からタンクカバー90により覆われている。
【0018】
燃料タンク10の後方には、シート8が設けられている。
図1に示すように、キーシリンダ20、燃料タンク10およびシート8は、車体フレーム1により支持され、メインフレーム1Mおよびリアフレーム1R上に位置する。
【0019】
メインフレーム1Mの後端下部から後方に延びるように、リアアーム6が設けられている。リアアーム6は、ピボット軸を用いてメインフレーム1Mに支持されている。リアアーム6の後端部に後輪7が回転可能に支持されている。後輪7は、駆動輪としてエンジン5から発生される動力により回転する。
【0020】
図1の自動二輪車100においては、例えばシート8の下方あるいは燃料タンク10の下方の位置に、ECU(Electronic Control Unit)30および図示しないバッテリが設けられている。また、キーシリンダ20の近傍の位置に防犯装置40が設けられている。
【0021】
図1に太い二点鎖線で示すように、本例の自動二輪車100には、車体フレーム1に複数の電気的要素を互いに接続するためのメインハーネスMHが取り付けられている。さらに、複数の電気的要素の各々は、
図1に太い点線で示すように、サブハーネスによりメインハーネスMHに接続される。これにより、上記のキーシリンダ20、ECU30、防犯装置40、燃料キャップ装置70および図示しないバッテリは、互いに電気的に接続される。この状態で、図示しないバッテリから、キーシリンダ20、ECU30、防犯装置40および燃料キャップ装置70の各々に電力が供給される。また、ECU30と、キーシリンダ20、防犯装置40および燃料キャップ装置70との間で、各種信号の授受が行われる。
【0022】
2.防犯装置40および燃料キャップ装置70
防犯装置40は、いわゆるイモビライザであり、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含む電気回路を有する。防犯装置40には、固有のID(識別子)コードが記憶されている。防犯装置40は、トランスポンダを備えるキーがキーシリンダ20に差し込まれて操作される場合に、当該トランスポンダに記憶されたIDコードを読み取る。また、防犯装置40は、読み取ったIDコードと、当該防犯装置40に記憶されているIDコードとを比較し、それらのIDコードが一致する場合にエンジン5の始動を許容する信号をECU30に与える。一方、防犯装置40は、比較された2つのIDコードが相違する場合に、エンジン5の始動を禁止する信号をECU30に与える。
【0023】
ECU30は、エンジン5の始動を許容する信号を受けた場合に、使用者によるキー操作に応答してエンジン5を始動させる。一方、ECU30は、エンジン5の始動を禁止する信号を受けた場合に、使用者によるキー操作に応答せず、エンジン5を始動させない。
【0024】
さらに、本実施の形態においては、ECU30は、エンジン5の始動を許容する信号を受けた場合に、使用者による給油口12c(
図3)の開閉を許容するための信号(以下、許容信号と呼ぶ。)を燃料キャップ装置70に与える。一方、ECU30は、エンジン5の始動を禁止する信号を受けた場合に、使用者による給油口12c(
図3)の開閉を禁止するための信号(以下、禁止信号と呼ぶ。)を燃料キャップ装置70に与える。
【0025】
燃料キャップ装置70の施錠装置79は、許容信号を受けた場合、蓋部材71を、使用者による給油口12c(
図3)の開閉操作が可能な解錠状態に移行させる。一方、施錠装置79は、禁止信号を受けた場合、蓋部材71を、使用者による給油口12c(
図3)の開閉操作が不可能でかつ給油口12c(
図3)を閉塞する状態で固定された施錠状態に移行させる。これにより、燃料タンク10内へ異物を挿入するいたずら、および燃料の盗難等を防止することが可能になる。なお、上記の許容信号および禁止信号は、防犯装置40により生成されてもよい。この場合、防犯装置40は、生成された許容信号および禁止信号を燃料キャップ装置70に直接出力することができる。
【0026】
3.燃料タンク10およびその周辺部材の構成
図3は燃料タンク10およびその周辺部材の構成を説明するための分解図であり、
図4~
図8は
図3に示される複数の構成要素(60,70,80,90)が燃料タンク10上に順次取り付けられる状態を示す平面図である。
図3に示すように、本例の燃料タンク10上には、取付片60、燃料キャップ装置70、保護部材80およびタンクカバー90が取り付けられる。
図3の分解図においては、燃料タンク10、保護部材80およびタンクカバー90が縦断面図で示される。各縦断面図は、図示の対象となる構成要素を
図2のA-A線を含む鉛直面で切断した縦断面図であり、
図2のA-A線は平面視で自動二輪車100の中心を通る車両中心線である。
【0027】
燃料タンク10は、金属材料により形成され、タンク本体部11、フィラー部材12およびガイド管13を含む。
図4に、燃料タンク10の平面図が示されている。タンク本体部11は、燃料を貯留するための内部空間を有し、
図4に示すように、平面視で略V字状に形成されている。以下の説明では、タンク本体部11の外周面のうち上方を向く部分を、タンク本体部11の上面11sと呼ぶ。
【0028】
タンク本体部11の上面11sの略中央部には、当該タンク本体部11の内部空間を上方に向けて開放する円形のフィラー用開口11Hが形成されている。そのフィラー用開口11Hを塞ぐように、フィラー部材12が設けられている。フィラー部材12は、金属材料により形成された単一部材であり、円板状の底面部12aと、底面部12aの外縁から上方に一定距離延びる円環状の周壁部12bとを含む。より具体的には、周壁部12bは、底面部12aの外縁から上方に一定距離延びる扁平な円筒形状を有する。
【0029】
平面視で底面部12aの中心よりもやや後方にずれた位置には、円形の給油口12cが形成されている。周壁部12bの上端部の全周は、タンク本体部11のフィラー用開口11Hの内縁に溶接により接続されている。このような構成により、本実施の形態に係る燃料タンク10は、その上面の略中央部にフィラー部材12からなる凹部を有する。
【0030】
ガイド管13は、金属材料により形成されている。
図3に示すように、ガイド管13は、フィラー部材12の底面部12aのうち給油口12cの形成部分に溶接により接続され、底面部12aの下面から下方に向かって一定距離延びている。これにより、燃料タンク10の内部空間と燃料タンク10の上方の外部空間とは、フィラー部材12の給油口12cおよびガイド管13の内部空間を通して連通する。
【0031】
図3に太い実線の矢印a1,a2で示すように、フィラー部材12の底面部12a上に、取付片60および燃料キャップ装置70が取り付けられる。
図5に、
図4の燃料タンク10上に取付片60および燃料キャップ装置70が取り付けられた状態が平面図で示される。
図5では、取付片60を前方に向かって見た拡大背面図が吹き出し内に示される。
【0032】
取付片60は、例えば帯状に延びる金属製の板状部材を、複数の部分で折り曲げ加工することにより作製される。具体的には、取付片60は、
図5の吹き出し内に示すように、当該取付片60の後方の位置から見て矩形のジグザク状に形成されている。本例の取付片60は、3つの下段部61と2つの上段部62とを有する。3つの下段部61は、上下方向UDにおいて同じ高さ位置にある。2つの上段部62は、上下方向UDにおいて同じ高さ位置にある。また、2つの上段部62の各々は、3つの下段部61よりも上方の位置で、左右方向LRにおいて隣り合う各2つの下段部61の間にある。さらに、各上段部62には、燃料タンク10上に後述する保護部材80を取り付けるためのねじ孔63が形成されている。取付片60の3つの下段部61は、当該取付片60がフィラー部材12の前端部近傍に位置するように、フィラー部材12の底面部12a上に溶接により接続されている。
【0033】
燃料キャップ装置70は、上記のように、蓋部材71および
図1の施錠装置79を含む。燃料キャップ装置70は、フィラー部材12の底面部12aにおける給油口12c(
図4)の形成部分に取り付けられる。使用者は、施錠装置79により蓋部材71が解錠状態にあるときに、蓋部材71を操作して給油口12cを開くことができる。一方、使用者は、施錠装置79により蓋部材71が施錠状態にあるときに、蓋部材71を操作しても給油口12cを開くことができない。
【0034】
燃料キャップ装置70には、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の一端が接続されている。サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の各々は、燃料キャップ装置70が燃料タンク10上に取り付けられた状態で、燃料キャップ装置70から前方に向かって引き出されている。サブハーネスLM1の他端は例えば
図1のメインハーネスMHに接続される。それにより、施錠装置79に対する各種信号の伝送および施錠装置79への電力供給が行われる。
【0035】
燃料タンク10は金属材料により形成されているので、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が燃料タンク10の上面11sに接触し、振動または遊動すると、燃料タンク10の上面11sが摩擦により劣化する可能性がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、
図3に太い実線の矢印a3で示すように、燃料タンク10上に保護部材80が取り付けられる。
図6に、
図5の燃料タンク10上に保護部材80が取り付けられた状態が平面図で示される。保護部材80は、樹脂材料により形成された略板状の部材であり、
図5の取付片60の2つの上段部62上にねじ止めされる。
【0037】
この取り付け時には、燃料キャップ装置70から引き出されるサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が、燃料タンク10の上面11sに直接接触しないように保護部材80上に配置される。それにより、燃料タンク10の上面11sが保護される。
【0038】
ここで、取付片60の構造の詳細を説明する。
図9は
図6の保護部材80の平面図であり、
図10は
図6の保護部材80の一方側面図(左側面図)である。
図11は
図6の保護部材80を自動二輪車100の左斜め前方かつ上方の位置から見た斜視図であり、
図12は
図6の保護部材80を自動二輪車100の左斜め上方かつ後方の位置から見た斜視図である。
【0039】
図9に示すように、保護部材80は、平面視で左から右に並ぶ板状の左部分81、中央部分82および右部分83を有する。中央部分82は、略矩形状に形成されている。中央部分82の後端部には、間隔をおいて左右方向LRに並ぶように、2つの取り付け用長孔84がそれぞれ形成されている。2つの取り付け用長孔84は、
図5の取付片60の2つの上段部62に形成された2つのねじ孔63に対応し、上記のように、保護部材80を取付片60にねじ止めするために用いられる。
【0040】
左部分81および右部分83は、中央部分82を基準として左右対称な構成を有する。左部分81および右部分83の前後方向FBの長さは、中央部分82の前後方向FBの長さよりも長い。前後方向FBにおいて、中央部分82は、左部分81および右部分83の前端部と、左部分81および右部分83の後端部との間に位置する。左部分81および右部分83の前端部近傍には、当該保護部材80上に後述するタンクカバー90を取り付けるための左右一対の貫通孔88が形成されている。
【0041】
中央部分82の左右両側部には、略前後方向FBに延びる左右一対の第1リブ85a,85bが形成されている。より具体的には、第1リブ85a,85bの各々は、第1リブ85a,85bの左右方向LRの間隔が後方に向かって漸次大きくなるように、前後方向FBに対してわずかに傾斜している。左部分81の右側部および右部分83の左側部にも、略前後方向FBに延びる左右一対の第2リブ86a,86bが形成されている。より具体的には、第2リブ86a,86bの各々は、第2リブ86a,86bの左右方向LRの間隔が後方に向かって漸次大きくなるように、前後方向FBに対してわずかに傾斜している。さらに、左部分81の略中央および右部分83の略中央には、前後方向FBに延びる左右一対の第3リブ87a,87bが形成されている。
【0042】
図10、
図11および
図12に示すように、第1リブ85a,85b、第2リブ86a,86bおよび第3リブ87a,87bの各々は、板状の左部分81、中央部分82および右部分83の上面から上方に突出している。右の第1リブ85bの略中央部は切りかかれている。右の第2リブ86bの一部には、当該第2リブ86bの上端部から左方に向かって一定距離延びる突出片89が形成されている。突出片89は、前後方向FBにおいて第1リブ85bの切り欠き部分に重なる。
図9に示すように、中央部分82および右部分83のうち、平面視で突出片89に重なる部分には、開口部89xが形成されている。
【0043】
上記の構成を有する保護部材80においては、複数のリブ(85a,85b,86a,86b,87a,87b)により、当該保護部材80が予め定められた所定形状を維持するために必要な強度が確保される。さらに、本例では、複数のリブ(85a,85b,86a,86b,87a,87b)のうち、右側に位置する第1リブ85bと第2リブ86bとの間でかつ突出片89の下方に位置する空間が、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の通路を形成する。すなわち、第1リブ85b、第2リブ86bおよび突出片89は、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を、保護部材80上の予め定められた通路内に導くガイド部として機能する。また、この場合、第1リブ85bの切り欠き部分および中央部分82および右部分83の開口部89xは、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を上記の通路内に収容することを容易にするための作業スペースを形成する。
【0044】
図7に、
図6の燃料キャップ装置70から引き出されるサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が、第1リブ85bと第2リブ86bとの間でかつ突出片89の下方に配置された状態が示される。この場合、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2のうち燃料タンク10の上方に位置する部分が、保護部材80の第1リブ85b、第2リブ86bおよび突出片89により形成される通路内で束ねられ、保持される。
【0045】
サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が保護部材80における予め定められた通路内に保持された状態で、
図3に太い実線の矢印a4で示すように、燃料タンク10上にタンクカバー90が取り付けられる。
【0046】
タンクカバー90は、その前端部近傍に、
図9の保護部材80の左右一対の貫通孔88に対応する左右一対の貫通孔を有する。したがって、タンクカバー90の取り付け時には、タンクカバー90の一対の貫通孔と保護部材80の一対の貫通孔88とが重なるように、タンクカバー90が燃料タンク10上に位置決めされる。また、タンクカバー90の一対の貫通孔および保護部材80の一対の貫通孔88にねじが挿入され、タンクカバー90が保護部材80上にねじ止めされる。
【0047】
図8に、
図7の燃料タンク10上にタンクカバー90が取り付けられた状態が平面図で示される。タンクカバー90は、燃料キャップ装置70の蓋部材71を除いて、燃料タンク10のフィラー部材12および保護部材80の全体を覆うように形成されている。
【0048】
4.効果
(a)
図13は、本発明の一実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成による効果を説明するための図である。
図13では、説明の理解を容易にするために、
図1の自動二輪車100の燃料タンク10およびその周辺部材の構成が模式的断面図で示される。
【0049】
図13に示すように、本実施の形態に係る燃料タンク10は、上面の一部がフィラー部材12により凹状に形成されている。そのフィラー部材12の底面部12a上に燃料キャップ装置70が設けられている。すなわち、燃料タンク10の上面に凹部が形成され、その凹部内に燃料キャップ装置70が設けられている。
【0050】
それにより、燃料タンク10の上面のうちフィラー部材12以外の部分に燃料キャップ装置70が設けられる場合に比べて、燃料キャップ装置70が燃料タンク10の上方に大きく突出することが抑制される。
【0051】
また、上記の燃料タンク10は、金属材料により形成され、燃料タンク10とサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2との間には樹脂製の保護部材80が設けられている。そのため、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2と燃料タンク10との接触に起因して燃料タンク10の上面が劣化することが抑制される。
【0052】
これらの結果、燃料キャップ装置70が燃料タンク10の上方に大きく突出することを抑制しつつ、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2に起因する燃料タンク10の短寿命化を抑制することが可能になる。
【0053】
(b)燃料キャップ装置70から引き出されたサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2は、フィラー部材12の前方に延びている。ここで、燃料タンク10の上面のうちフィラー部材12よりも後方の部分の最大高さ位置H1は、燃料タンク10の上面のうちフィラー部材12よりも前方の部分の最大高さ位置H2よりも上方にある。そのため、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2がフィラー部材12の後方に延びる場合に比べて、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2と保護部材80とを含む燃料タンク10の周辺部材の高さ位置を低くすることができる。
【0054】
また、車両前部には、自動二輪車100に設けられるメインハーネスMHへの接続部が比較的多数存在する。そのため、サブハーネスLM1が車両前方に延びる場合には、当該サブハーネスLM1をメインハーネスMHに対して短い距離で合流させることができる。したがって、サブハーネスLM1の長さを、過剰に長くすることなく、適切に設定することができる。
【0055】
(c)上記のように、フィラー部材12の底面部12aには、保護部材80を燃料タンク10上に取り付けるための取付片60が接続されている。これにより、燃料タンク10の上面のうちフィラー部材12以外の部分に取付片60を設ける場合に比べて、燃料タンク10の周辺部材の高さ位置を低くすることができる。
【0056】
(d)保護部材80においては、第1リブ85b、第2リブ86bおよび突出片89により、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が予め定められた通路内に導かれ、保持される。この場合、車両走行時にサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が保護部材80における予め定められた経路から外れるように移動することが防止される。それにより、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が燃料タンク10における意図しない部分に接触することが防止される。
【0057】
(e)保護部材80は、樹脂材料で形成されているので、柔軟性を有する。それにより、保護部材80が燃料タンク10に取り付けられた状態で燃料タンク10が収縮等する場合でも、保護部材80が燃料タンク10の変形に追従する。したがって、燃料タンク10と保護部材80との間で安定した取り付け状態が維持される。
【0058】
(f)
図14は、
図5の燃料キャップ装置70の平面図を拡大した図である。
図14に示すように、燃料タンク10のフィラー部材12に燃料キャップ装置70が設けられた状態で、当該燃料キャップ装置70を前後方向FBに3等分した場合を想定する。ここで、3等分された燃料キャップ装置70の部分を、前から後に向かってキャップ前部70a、キャップ中央部70bおよびキャップ後部70cとする。
【0059】
この場合、本実施の形態に係る燃料キャップ装置70においては、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2は、燃料キャップ装置70のキャップ中央部70bに接続され、当該中央部分から引き出されている。
【0060】
サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の各々は、電線または流体通路を保護する保護チューブ等を含むことにより、屈曲可能な範囲に限界がある。そのため、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2は、許容される範囲を超えて屈曲されると、その変形に起因して短寿命化する可能性がある。
【0061】
上記の構成によれば、フィラー部材12内におけるサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の経路を、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2がキャップ前部70aから引き出される場合に比べて、長くすることができる。それにより、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を、燃料キャップ装置70からフィラー部材12の前方に引き出す場合に、それらのサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を上下方向UDに大きく屈曲させる必要がない。したがって、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2の短寿命化を抑制しつつ、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が燃料タンク10の上方に大きく突出することを防止することができる。
【0062】
(g)燃料タンク10の上面の一部上には、上方からフィラー部材12、保護部材80、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を覆うようにタンクカバー90が設けられている。これにより、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2がタンクカバーにより保護される。
【0063】
5.他の実施の形態
(a)自動二輪車100においては、保護部材80は、取付片60にねじ止めされるとともに、当該保護部材80の下面の一部が接着剤を用いてタンク本体部11の上面11s上に接続されてもよい。
【0064】
図15は、他の実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成の第1の例を示す模式的断面図である。
図15の例では、保護部材80は、当該保護部材80の後端部(一対の取り付け用長孔84の形成部分)が取付片60にねじ止めされるとともに、保護部材80の下面の略中央部が接着剤19によりタンク本体部11の上面11s上に貼り付けられている。この場合、保護部材80は、より強固に燃料タンク10上に取り付けられる。
【0065】
(b)自動二輪車100においては、取付片60は、フィラー部材12の底面部12a上に代えて、燃料タンク10の上面のうちフィラー部材12の前方に位置する部分に取り付けられてもよい。
【0066】
図16は、他の実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成の第2の例を示す模式的断面図である。
図16の例では、取付片60がフィラー部材12の底面部12aではなく、タンク本体部11の上面11sのうちフィラー部材12よりも前方の部分に取り付けられている。また、その取付片60に保護部材80がねじ止めされている。このような構成においても、少なくとも燃料キャップ装置70がフィラー部材12内に配置され、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が保護部材80上で前方に引き出される。それにより、燃料キャップ装置70が燃料タンク10の上方に大きく突出することを抑制しつつ、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2に起因する燃料タンク10の短寿命化を抑制することが可能になる。なお、本例の取付片60は、可能な限り高さ方向(上下方向UD)の寸法を小さくすることが好ましい。
【0067】
(c)自動二輪車100においては、保護部材80は、取付片60に代えて接着剤によりタンク本体部11の上面11s上に取り付けられてもよい。
図17は、他の実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成の第3の例を示す模式的断面図である。
【0068】
図17の例では、保護部材80が、上記の取付片60を用いることなく接着剤19によりタンク本体部11上に直接接続されている。この場合、取付片60を設ける必要がないので、部品点数を低減することができる。また、保護部材80の高さ位置が高くなることを低減することができる。
【0069】
(d)自動二輪車100においては、保護部材80は、タンク本体部11の上面11s上で、取付片60および接着剤を用いてタンク本体部11の上面11s上に取り付けられてもよい。
図18は、他の実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成の第4の例を示す模式的断面図である。この場合、保護部材80は、より強固に燃料タンク10上に取り付けられる。
【0070】
(e)上記実施の形態に係る自動二輪車100においては、保護部材80は、樹脂材料で形成されるが、本発明はこれに限定されない。保護部材80は、樹脂またはゴムにより形成されたシート状部材であってもよい。
図19は、他の実施の形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成の第5の例を示す模式的断面図である。本例では、ゴムにより形成されたシート状部材が保護部材80xとして用いられる。保護部材80xは、接着剤19を介してタンク本体部11の上面11s上に取り付けられている。この場合、保護部材80xは、金属製の保護部材80に比べて柔軟性を有する。それにより、保護部材80が燃料タンク10に取り付けられた状態で燃料タンク10が収縮等する場合でも、保護部材80が燃料タンク10の変形に追従する。したがって、燃料タンク10と保護部材80との間で安定した取り付け状態が維持される。
【0071】
なお、保護部材80がゴム製のシート状部材で形成される場合、タンクカバー90または燃料タンク10には、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2を保護部材80上の所定位置(通路)へ導く部材が設けられることが好ましい。
【0072】
(f)上記実施の形態に係る自動二輪車100には防犯装置40が設けられている。また、燃料キャップ装置70の施錠装置79は、防犯装置40の動作に基づいて蓋部材71を解錠状態と施錠状態との間で移行させる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。施錠装置79は、例えば使用者により操作可能な操作装置等からの指令信号に基づいて、蓋部材71の解錠状態と施錠状態との間の切替を電気的に行ってもよい。
【0073】
(g)燃料タンク10の上面には、フィラー部材12により形成される凹部内に、燃料キャップ装置70に加えて、他の電気的要素が設けられてもよい。他の電気的要素としては、キーシリンダ20、防犯装置40、メータユニット等の表示装置、あるいは自動二輪車100の各種機能をオンオフするためのスイッチング装置等が挙げられる。他の電気的要素には、電力供給用および信号伝送用のサブハーネスLM1が接続される。したがって、他の電気的要素に接続されたサブハーネスLM1を、フィラー部材12の前方に引き出しかつ保護部材80上に配置することで、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(h)上記実施の形態に係る自動二輪車100においては、燃料タンク10の一部がフィラー部材12により形成されることで、燃料タンク10の上面の一部に凹部が形成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
燃料タンク10においては、フィラー部材12を用いることなく、タンク本体部11の上面11sの一部に凹部が形成され、その凹部に給油口12cが形成されてもよい。また、その凹部内に燃料キャップ装置70が設けられてもよい。
【0076】
さらに、タンク本体部11の上面11sの一部に給油口12cを有しない凹部が形成される場合には、当該凹部に燃料キャップ装置70以外の電気的要素が設けられてもよい。他の電気的要素としては、キーシリンダ20、防犯装置40、表示装置、あるいはスイッチング装置等が挙げられる。この場合においても、他の電気的要素に接続されたサブハーネスLM1を、フィラー部材12の前方に引き出しかつ保護部材80上に配置することで、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
(i)上記実施の形態に係る自動二輪車100においては、燃料キャップ装置70にブリーザホースLM2が接続されるが、本発明はこれに限定されない。ブリーザホースLM2は、燃料キャップ装置70に接続されなくてもよい。
【0078】
(j)上記実施の形態は本発明を自動二輪車に適用した例であるが、これに限らず、自動四輪車、自動三輪車もしくはATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)等の他の鞍乗型車両に本発明を適用してもよい。
【0079】
6.実施の形態の各部と請求項の各構成要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明する。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0080】
上記の実施の形態においては、自動二輪車100が鞍乗型車両の例であり、フィラー部材12が凹部の例であり、タンク本体部11の上面11sおよびフィラー部材12が燃料タンクの上面の例であり、燃料タンク10が燃料タンクの例であり、燃料キャップ装置70が電気的要素の例であり、サブハーネスLM1が電線部材の例であり、保護部材80が保護部材の例であり、自動二輪車100が鞍乗型車両の例である。
【0081】
また、タンク本体部11の上面11sのうちフィラー部材12よりも後方に位置する部分が第1の部分の例であり、最大高さ位置H1が第1の部分の最大高さ位置の例であり、タンク本体部11の上面11sのうちフィラー部材12よりも前方に位置する部分が第2の部分の例であり、最大高さ位置H2が第2の部分の最大高さ位置の例である。
【0082】
また、取付片60が取付片の例であり、フィラー部材12の底面部12aが底面部の例であり、周壁部12bが周壁部の例であり、給油口12cが給油口の例であり、蓋部材71が蓋部材の例であり、施錠装置79が施錠装置の例であり、保護部材80xがシート状部材の例であり、接着剤19が接着剤の例であり、保護部材80のうち中心よりも右に位置する第1リブ85b、第2リブ86bおよび突出片89がガイド部の例であり、キャップ中央部70bが電気的要素の中央部分の例であり、タンクカバー90がタンクカバーの例である。
【0083】
7.参考形態
参考形態に係る自動二輪車の構成について、上記の各実施の形態に係る自動二輪車100と異なる点を説明する。以下に説明する自動二輪車においては、燃料タンク10およびその周辺部材の構成が、上記の各実施の形態に係る自動二輪車100と異なる。
【0084】
図20は、参考形態に係る燃料タンク10およびその周辺部材の構成例を示す模式的断面図である。
図20の燃料タンク10においては、燃料タンク10にフィラー部材12が設けられていない。タンク本体部11の上面11sには、前後方向FBにおける中心よりもやや後方にずれた位置に段差部stが形成されている。
【0085】
タンク本体部11の上面11sのうち段差部stよりも後方の部分の最大高さ位置H1は、段差部stよりも前方の部分の最大高さ位置H2よりも上方にある。上面11sのうち段差部stよりも前方の部分は、段差部stから燃料タンク10の前端部に向かって斜め下方に平坦に延びている。
【0086】
給油口12cは、段差部stの前方かつ段差部stの近傍に形成されている。燃料キャップ装置70は、上面11sにおける給油口12cの形成部分に取り付けられている。上面11sのうち給油口12cよりも前方の部分に、保護部材80yが接着剤19を介して貼り付けられている。保護部材80yはゴムにより形成されたシート状部材である。燃料タンク10の上面のうちタンク本体部11の段差部stよりも前方の部分を覆うようにタンクカバー90が設けられている。
【0087】
この参考形態では、燃料キャップ装置70から引き出されるサブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が、燃料タンク10上の保護部材80yの上方に配置される。それにより、サブハーネスLM1およびブリーザホースLM2が燃料タンク10の上面に直接接触しない。これにより、燃料タンク10の上面の劣化が抑制される。なお、本参考形態において、保護部材80yは、樹脂材料で形成された板状部材であってもよい。また、本参考形態において、タンク本体部11の上面11sには、段差部stが形成されていなくてもよい。
【0088】
8.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る鞍乗型車両は、
凹部が形成された上面を有する金属製の燃料タンクと、
前記凹部に設けられる電気的要素と、
前記電気的要素に付随して設けられる電線部材と、
前記燃料タンクと前記電線部材との間に設けられる保護部材とを備える。
【0089】
その鞍乗型車両においては、燃料タンクの上面の凹部に電気的要素が設けられる。それにより、燃料タンクの上面の凹部以外の部分に電気的要素が設けられる場合に比べて、電気的要素が燃料タンクの上方に大きく突出することが抑制される。また、上記の燃料タンクは、金属材料により形成され、燃料タンクと電線部材との間には保護部材が設けられる。そのため、電線部材と燃料タンクとの接触に起因して燃料タンクの上面が劣化することが抑制される。
【0090】
これらの結果、電気的要素が燃料タンクの上方に大きく突出することを抑制しつつ、電線部材に起因する燃料タンクの短寿命化を抑制することが可能になる。
【0091】
(第2項)第1項に係る鞍乗型車両において、
前記電線部材は、前記電気的要素から車両前方に延びてもよい。
【0092】
車両前部には、鞍乗型車両に設けられるメインハーネスへの接続部が比較的多数存在する。そのため、電線部材が車両前方に延びる場合には、当該電線部材をメインハーネスに対して短い距離で合流させることができる。したがって、電線部材の長さを、過剰に長くすることなく、適切に設定することができる。
【0093】
(第3項)第2項に係る鞍乗型車両において、
前記燃料タンクの上面のうち前記凹部よりも後方の第1の部分の最大高さ位置は、前記燃料タンクの上面のうち前記凹部よりも前方の第2の部分の最大高さ位置よりも上方にあり、
前記保護部材は、前記燃料タンクの上面のうち前記第2の部分上に設けられてもよい。
【0094】
この場合、電線部材は、燃料タンクの上面のうち第1の部分よりも下方にある第2の部分を通る。また、保護部材は、燃料タンクの第2の部分上に位置する。そのため、電線部材および保護部材が第1の部分上に配置される場合に比べて、電線部材および保護部材を含む燃料タンクの周辺部材の高さ位置を低くすることができる。
【0095】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記凹部に固定され、前記保護部材を取り付け可能に構成された取付片をさらに備えてもよい。
【0096】
この場合、取付片を凹部に固定することにより、取付片は燃料タンクの上面のうち凹部以外の領域から上方に突出しない。それにより、燃料タンクおよびその周辺部材の高さ位置を低くすることができる。
【0097】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記凹部は、
底面部と、
前記底面部の外縁から上方に延びる環状の周壁部とを含み、
前記底面部には、前記燃料タンクの給油口が形成され、
前記電気的要素は、
前記給油口を開閉可能な蓋部材と、
前記電線部材を通して与えられる電気信号に基づいて、前記蓋部材を、前記給油口を閉塞する状態で固定された施錠状態と前記給油口を開閉可能な解錠状態との間で移行させる施錠装置とを含んでもよい。
【0098】
この場合、燃料タンクの給油口の蓋部材の施錠状態および解錠状態を電気的に切り替えることが可能になる。
【0099】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記保護部材は、樹脂またはゴムにより形成されたシート状部材を含み、
前記シート状部材は、前記燃料タンクの上面のうち前記凹部に隣り合う一部の領域上に接着剤を用いて貼り合わされてもよい。
【0100】
この場合、燃料タンクの上面のうち凹部以外の領域で、燃料タンクおよびその周辺部材の高さ位置を低くすることができる。
【0101】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記保護部材は、樹脂またはゴムにより形成されてもよい。
【0102】
この場合、保護部材は金属製の燃料タンクに比べて柔軟性を有する。それにより、燃料タンクが収縮等する場合でも、保護部材は燃料タンクの変形に追従する。したがって、燃料タンクと保護部材との間で安定した取り付け状態が維持される。
【0103】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記保護部材は、前記電線部材を当該保護部材における予め定められた通路内に導くガイド部を有してもよい。
【0104】
この場合、車両走行時に電線部材が予め定められた通路から外れるように移動することが防止される。それにより、電線部材が燃料タンクにおける意図しない部分に接触することが防止される。
【0105】
(第9項)第1項~第8項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記燃料タンクに前記電気的要素が設けられた状態で当該電気的要素を車両前後方向に3等分した場合に、前記電線部材は、前記電気的要素の中央部分に接続され、当該中央部分から引き出されてもよい。
【0106】
電線部材は、電線を保護する保護チューブ等を含むことにより、屈曲可能な範囲に限界がある。そのため、電線部材は、許容される範囲を超えて屈曲されると、その変形に起因して短寿命化する可能性がある。
【0107】
上記の構成によれば、電線部材が電気的要素の中央部分から引き出されるので、電線部材が電気的要素の中央部分よりも前方の前部分から引き出される場合に比べて、凹部内で電線部材の経路を長くとることができる。それにより、電線部材を、電気的要素から凹部の前方に引き出す場合に、電線部材を車両上下方向に大きく屈曲させる必要がない。したがって、電線部材の短寿命化を抑制しつつ、電線部材が燃料タンクの上方に大きく突出することを防止することができる。
【0108】
(第10項)第1項~第9項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記燃料タンクの上面上に設けられ、前記電線部材を上方から覆うタンクカバーをさらに備えてもよい。
【0109】
これにより、電線部材がタンクカバーにより保護される。
【符号の説明】
【0110】
1…車体フレーム,1M…メインフレーム,1R…リアフレーム,2…フロントフォーク,3…前輪,4…ハンドル,5…エンジン,6…リアアーム,7…後輪,8…シート,10…燃料タンク,11…タンク本体部,11H…フィラー用開口,11s…上面,12…フィラー部材,12a…底面部,12b…周壁部,12c…給油口,13…ガイド管,19…接着剤,20…キーシリンダ,30…ECU,40…防犯装置,60…取付片,61…下段部,62…上段部,63…ねじ孔,70…燃料キャップ装置,70a…キャップ前部,70b…キャップ中央部,70c…キャップ後部,71…蓋部材,79…施錠装置,80,80x,80y…保護部材,81…左部分,82…中央部分,83…右部分,84…取り付け用長孔,85a,85b…第1リブ,86a,86b…第2リブ,87a,87b…第3リブ,88…貫通孔,89…突出片,89x…開口部,90…タンクカバー,100…自動二輪車,FB…前後方向,H1,H2…最大高さ位置,HP…ヘッドパイプ,LM1…サブハーネス,LM2…ブリーザホース,LR…左右方向,MH…メインハーネス,UD…上下方向,st…段差部