IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンファ精密機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子部品実装システム 図1
  • 特開-電子部品実装システム 図2
  • 特開-電子部品実装システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173471
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241205BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K3/34 512A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091911
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】519231500
【氏名又は名称】ハンファ精密機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深川 貴弘
【テーマコード(参考)】
5E319
5E353
【Fターム(参考)】
5E319BB05
5E319CC36
5E319CD04
5E319CD29
5E319CD51
5E319GG09
5E353BB04
5E353CC14
5E353EE42
5E353EE62
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】実装基板におけるはんだ部の印刷品質の向上及び安定化を実現することのできる電子部品実装システムを提供する。
【解決手段】印刷機2、印刷検査機3、実装機4A,4B、及びフィードバック設定部を備え、フィードバック設定部は、印刷ズレの総平均値、及び印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電子部品装着位置に電子部品を装着して実装基板を製造する電子部品実装システムであって、
複数の開口部が形成されたマスクと基板を位置合わせし、前記開口部を介して前記基板に設定された複数の電子部品装着位置に形成された電極にはんだ部を形成するスクリーン印刷装置と、
前記はんだ部が形成された基板を検査することにより、複数の前記電子部品装着位置における前記はんだ部の印刷ズレ及び当該印刷ズレの良否判定を含む検査データを作成する検査装置と、
前記検査装置による検査を終えた基板の複数の前記電子部品装着位置に電子部品を装着する電子部品装着装置と、
前記検査データに基づいて前記スクリーン印刷装置におけるマスクと基板の位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成するフィードバック手段と、を備え、
前記フィードバック手段は、前記印刷ズレの総平均値、及び前記印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する、電子部品実装システム。
【請求項2】
前記フィードバック手段は、前記印刷ズレの総平均値に、前記高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに所定の係数を乗じて得た値を加算した印刷ズレ値に基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する、請求項1に記載の電子部品実装システム。
【請求項3】
前記フィードバック手段は、前記高不良度電子部品装着位置として、前記印刷ズレの良否判定において不良と判定された頻度が最も高い電子部品装着位置を選択する、請求項1又は2に記載の電子部品実装システム。
【請求項4】
前記フィードバック手段は、前記高不良度電子部品装着位置として、前記印刷ズレの良否判定において不良と判定された頻度が所定数以上の電子部品装着位置を選択する、請求項1又は2に記載の電子部品実装システム。
【請求項5】
前記フィードバック手段は、前記高不良度電子部品装着位置として、前記印刷ズレの良否判定において不良と判定された電子部品装着位置のうち印刷ズレ率が所定値以上の電子部品装着位置を選択する、請求項1又は2に記載の電子部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の電子部品装着位置に電子部品を装着して実装基板を製造する電子部品実装システムに関する。なお、本明細書では「電子部品」を単に「部品」ともいう。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムは、印刷装置、印刷検査装置、電子部品装着装置等の複数の電子部品実装用装置を連結して構成されている。このような電子部品実装システムにおいて、基板に形成されたはんだ接合用の電極に対して印刷されたはんだ部の位置ずれに起因して生じる実装不良を防止することを目的として、はんだ部の位置を実際に計測して取得したはんだ位置情報を他の電子部品実装用装置に送信する位置補正技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、印刷検査装置において一対の電極部位ごとにおけるはんだ部の位置ずれ量を算出して正規位置に対する偏差を求め、取得した偏差データを印刷装置にフィードバックする技術が開示されている。ところが、この特許文献1の技術では、基板に印刷された全てのはんだ部の位置ずれ量の平均値を偏差として用いる等、基板上の全てのはんだ部の印刷位置に基づいて作成した偏差データをフィードバックしていたため、隣接する電子部品装着位置の間隔が狭小なファインピッチ領域が存在する基板のような実装難易度の高い電子部品装着位置を一部に有する基板に対しては、印刷品質の確保に不十分な場合があった。
【0004】
そこで特許文献2には、上述のような実装難易度の高い電子部品装着位置を一部に有する基板に対応するために、実装難易度の高い電子部品装着位置における印刷ズレに基づいてフィードバックする技術が提案されている。しかし、この特許文献2の技術において実装難易度の高い電子部品装着位置はオペレータが設定することとなっており、オペレータの熟練度により印刷品質にバラツキが発生する問題があった。また、実装難易度の高い電子部品装着位置における印刷ズレに基づいてフィードバックするのみでは、基板全体としての印刷品質の確保に不十分な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-199070号公報
【特許文献2】特開2015-8185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、実装基板におけるはんだ部の印刷品質の向上及び安定化を実現することのできる電子部品実装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次の電子部品実装システムが提供される。
基板の電子部品装着位置に電子部品を装着して実装基板を製造する電子部品実装システムであって、
複数の開口部が形成されたマスクと基板を位置合わせし、前記開口部を介して前記基板に設定された複数の電子部品装着位置に形成された電極にはんだ部を形成するスクリーン印刷装置と、
前記はんだ部が形成された基板を検査することにより、複数の前記電子部品装着位置における前記はんだ部の印刷ズレ及び当該印刷ズレの良否判定を含む検査データを作成する検査装置と、
前記検査装置による検査を終えた基板の複数の前記電子部品装着位置に電子部品を装着する電子部品装着装置と、
前記検査データに基づいて前記スクリーン印刷装置におけるマスクと基板の位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成するフィードバック手段と、を備え、
前記フィードバック手段は、前記印刷ズレの総平均値、及び前記印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する、電子部品実装システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置を、印刷検査装置の検査データに基づいて自動的に抽出することができ、更にこの高不良度電子部品装着位置における印刷ズレと印刷ズレの総平均値とに基づいてフィードバック制御を行うことから、実装基板におけるはんだ部の印刷品質の向上及び安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である電子部品実装システムの構成を示すブロック図。
図2】印刷検査機が検査する基板の例を概念的に示す平面図。
図3図2の基板について印刷検査機が作成する検査データのデータ構造例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の一実施形態である電子部品実装システムの構成をブロック図で示している。図1に示す電子部品実装システム1は、スクリーン印刷装置としての印刷機2、検査装置としての印刷検査機3及び電子部品実装装置としての実装機4A,4Bを含む各装置を連結してなる電子部品実装ラインを通信ネットワーク5によって接続し、その全体を制御部6によって制御する構成となっている。
【0011】
印刷機2は、基板に形成された電子部品接合用の電極に対してペースト状のはんだをスクリーン印刷することにより、電極上にはんだ部を形成する。本実施形態において印刷機2は、複数の開口部が形成されたマスクと基板を位置合わせし、開口部を介して基板に設定された複数の電子部品装着位置に形成された電極にはんだ部を形成する。このような印刷機2の具体的な構成は周知であるので、説明を省略する。
【0012】
印刷検査機3は、はんだ部の印刷状態の良否判断、電極に対するはんだ部の印刷ズレの検出を含む印刷検査を行う。本実施形態において印刷検査機3は、はんだ部が形成された基板を検査することにより、複数の電子部品装着位置におけるはんだ部の印刷ズレ及び当該印刷ズレの良否判定を含む検査データを作成する。このような印刷検査機3はSPIとも呼ばれ、その具体的な構成は周知であるので、説明を省略する。
【0013】
実装機4A,4Bは、はんだ部が形成された基板の電子部品装着位置に電子部品を装着する。本実施形態において実装機4A,4Bは、印刷検査機3による検査を終えた基板の複数の電子部品装着位置に電子部品を装着する。その後、電子部品が装着された基板はリフロー機(図示せず)に送られ、所定の温度プロファイルに従って加熱される。この加熱によりはんだ部に含まれるはんだ粒子が溶融して電子部品と基板がはんだ接合される。なお、これらの実装機4A,4B及びリフロー機の具体的な構成も周知であるので、説明を省略する。
【0014】
本実施形態において制御部6は、フィードバック手段としてのフィードバック設定部を含む。フィードバック設定部は、印刷検査機3が作成した上述の検査データに基づいて、印刷機2におけるマスクと基板の位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。具体的にフィードバック設定部は、上述の検査データに含まれている印刷ズレの総平均値、及び印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。
【0015】
図2に、印刷検査機3が検査する基板の例を概念的に示している。また図3には、この基板6について印刷検査機3が作成する検査データのデータ構造例を概念的に示している。この基板6には、図2に破線で仮想的に示しているように、12個の小部品7A、4個の大部品7B及び1個のBGA(ボールグリッドアレイ)部品7Cが装着される。そのため、この基板6は、小部品7A用の電子部品装着位置8Aを12箇所、大部品7B用の電子部品装着位置8Bを4箇所、BGA部品7C用の電子部品装着位置8Cを1箇所、それぞれ有する。このうち小部品7A用の電子部品装着位置8Aは2個の電極9Aを有し、大部品7B用の電子部品装着位置8Bは2個の電極9Bを有する。またBGA部品7C用の電子部品装着位置8Cは9個の電極9Cを有する。そして、各電極9A~Cにはんだ部10A~Cが形成されている。
【0016】
印刷検査機3は、電子部品装着位置8A~Cにおけるはんだ部10A~Cの印刷ズレを電子部品装着位置8A~C毎に検査する。例えば、電子部品装着位置8Aは2個の電極9Aを有するから、電極9A毎にはんだ部10Aの印刷ズレを検査し、それらの平均をその電子部品装着位置8Aにおけるはんだ部10Aの印刷ズレとすることができる。このほか、2個の電極9Aの重心位置と2個のはんだ部10Aの重心位置との位置ズレをその電子部品装着位置8Aにおけるはんだ部10Aの印刷ズレとすることもできる。いずれにしても印刷検査機3は、電子部品装着位置8A~Cにおけるはんだ部10A~Cの印刷ズレを電子部品装着位置8A~C毎に検査する。
また印刷検査機3は、上述の電子部品装着位置8A~Cにおけるはんだ部10A~Cの印刷ズレの検査値に基づいて、その印刷ズレの良否判定を行う。例えば、電子部品装着位置8A~C毎に印刷ズレの許容値を設定し、その印刷ズレが許容値内であるか否かにより、その印刷ズレの良否判定を行う。
【0017】
このようにして印刷検査機3は、電子部品装着位置8A~Cにおけるはんだ部10A~Cの印刷ズレ及び当該印刷ズレの良否判定を含む検査データを作成する。
更に本実施形態において印刷検査機3は、上述の印刷ズレの良否判定において不良と判定された電子部品装着位置について印刷ズレ率を演算する。印刷ズレ率とは下記式の通り、「印刷ズレの許容値」に対する「印刷ズレ」の比率であり、上述の印刷ズレの良否判定において不良と判定された電子部品装着位置については100%を超える値となる。
印刷ズレ率(%)=(印刷ズレ/印刷ズレの許容値)×100
ここで、図3に示した検査データのうち、印刷ズレと印刷ズレ率は10枚の基板6の平均値、不良頻度は累積値である。
【0018】
フィードバック手段であるフィードバック設定部は、上述の検査データに含まれている印刷ズレの総平均値、及び印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。具体的にフィードバック設定部は、印刷ズレの総平均値に、高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに所定の係数を乗じて得た値を加算した印刷ズレ値に基づいて、基板とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成することができる。
【0019】
このようにフィードバック設定部は、印刷ズレの総平均値及び高不良度電子部品装着位置における印刷ズレに基づいて、制御パラメータの修正に関する情報を作成するところ、高不良度電子部品装着位置としては、印刷ズレの良否判定において不良と判定された頻度が最も高い電子部品装着位置を選択することができる。図3に示した検査データにおいては、小部品の部品ID=3の電子部品装着位置が高不良度電子部品装着位置となり、この高不良度電子部品装着位置における印刷ズレ(X,Y)mmは、(0.06,0.06)mmとなる。すなわち、上述の印刷ズレ値(Xt,Yt)mmは、印刷ズレの総平均値を(XAVE, YAVE)mm、係数をkとすると下記式の通りとなる。
印刷ズレ値(Xt,Yt)=(XAVE, YAVE)+(0.06,0.06)×k
=(XAVE+0.06k, YAVE+0.06k)
そしてフィードバック設定部は、この印刷ズレ値(Xt,Yt)に基づいて、基板6とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。
なお、上記の係数kは、例えば0<k<1の範囲内の任意の値とすることができる。
【0020】
また、高不良度電子部品装着位置としては、印刷ズレの良否判定において不良と判定された頻度が所定数以上の電子部品装着位置を選択することもできる。この頻度の所定数を2とした場合、図3に示した検査データにおいては、小部品の部品ID=2の電子部品装着位置と小部品の部品ID=3の電子部品装着位置が高不良度電子部品装着位置となる。このように高不良度電子部品装着位置が複数の場合、その印刷ズレ(X,Y)mmは、複数の高不良度電子部品装着位置における印刷ズレの平均値とする。すなわち、図3に示した検査データにおいては(0.04,0.045)mmとなり、上述の印刷ズレ値(Xt,Yt)mmは下記式の通りとなる。
印刷ズレ値(Xt,Yt)=(XAVE, YAVE)+(0.04,0.045)×k
=(XAVE+0.04k, YAVE+0.045k)
そしてフィードバック設定部は、この印刷ズレ値(Xt,Yt)に基づいて、基板6とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。
【0021】
更に、高不良度電子部品装着位置としては、印刷ズレの良否判定において不良と判定された電子部品装着位置のうち印刷ズレ率が所定値以上の電子部品装着位置を選択することもできる。この印刷ズレ率の所定値を120%とした場合、図3に示した検査データにおいては、小部品の部品ID=3の電子部品装着位置、小部品の部品ID=12の電子部品装着位置及びBGA部品の部品ID=1の電子部品装着位置が高不良度電子部品装着位置となる。そして、高不良度電子部品装着位置における印刷ズレ(X,Y)mmは、(0.033,0.033)mmとなる。すなわち、上述の印刷ズレ値(Xt,Yt)mmは、印刷ズレの総平均値を(XAVE, YAVE)mm、係数をkとすると下記式の通りとなる。
印刷ズレ値(Xt,Yt)=(XAVE, YAVE)+(0.033,0.033)×k
=(XAVE+0.033k, YAVE+0.033k)
そしてフィードバック設定部は、この印刷ズレ値(Xt,Yt)に基づいて、基板6とマスクの位置合わせに関する制御パラメータの修正に関する情報を作成する。
【0022】
このように本実施形態によれば、印刷ズレの不良度の高い電子部品装着位置である高不良度電子部品装着位置を、印刷検査装置3の検査データに基づいてフィードバック設定部が自動的に抽出することができ、更にこの高不良度電子部品装着位置における印刷ズレと印刷ズレの総平均値とに基づいてフィードバック制御を行うことから、実装基板におけるはんだ部の印刷品質の向上及び安定化を実現することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 電子部品実装システム
2 印刷機(スクリーン印刷装置)
3 印刷検査機(検査装置)
4A,4B 実装機(電子部品実装装置)
5 通信ネットワーク
6 制御部
7A 小部品(電子部品)
7B 大部品(電子部品)
7C BGA部品(電子部品)
8A~C 電子部品装着位置
9A~C 電極
10A~C はんだ部
図1
図2
図3