(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173473
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子部品実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241205BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K3/34 512A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091913
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】519231500
【氏名又は名称】ハンファ精密機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金京洙
【テーマコード(参考)】
5E319
5E353
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD26
5E319CD52
5E319GG15
5E353CC04
5E353CC14
5E353CC21
5E353EE42
5E353EE62
5E353LL03
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムにおいて、はんだ印刷装置によるはんだの印刷品質の低下を抑制する
【解決手段】印刷機2、検査機3、実装機4A,4B、及び管理コンピュータ6を備え、管理コンピュータ6は、印刷パラメータとして、印刷圧力、印刷速度、マスク離れ速度、はんだロールの高さ、スクリーンマスクのクリーニング条件、及びスクリーンマスクと基板との位置合わせに関するオフセット量を管理すると共に、印刷品質として、はんだ部の印刷ズレ、印刷面積及び印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpk、並びにはんだ部の不良率のうち少なくとも一つを評価かつ管理する。更に管理コンピュータ6は、印刷パラメータの変更を検知した場合、印刷パラメータの変更前後の印刷品質を比較し、印刷品質に低下傾向が見られた場合に警告表示又は製造停止を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムであって、
スクリーンマスクの上面に載せられたクリームはんだが練り合わせられて形成されたはんだロールをスキージにより前記スクリーンマスクに沿って移動させて、前記スクリーンマスクの下面側に配置された基板にはんだを印刷するはんだ印刷装置と、
前記はんだ印刷装置によりはんだが印刷されたはんだ部を含む基板を検査するはんだ検査装置と、
前記はんだ検査装置による検査を終えた基板に電子部品を装着する電子部品装着装置と、
前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷の印刷パラメータを管理すると共に、前記はんだ検査装置からの検査データに基づいてはんだの印刷品質を評価かつ管理する管理コンピュータと、を備え、
前記管理コンピュータは、前記印刷パラメータとして、前記スキージによる印刷圧力、前記スキージの移動速度である印刷速度、前記スクリーンマスクを基板から離す速度であるマスク離れ速度、前記はんだロールの高さ、前記スクリーンマスクのクリーニング条件、及び前記スクリーンマスクと基板との位置合わせに関するオフセット量を管理すると共に、前記印刷品質として、前記はんだ部の印刷ズレ、前記はんだ部の印刷面積、及び前記はんだ部の印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpk、並びに前記はんだ部の不良率のうち少なくとも一つを評価かつ管理し、
更に前記管理コンピュータは、前記印刷パラメータの変更を検知した場合、前記印刷パラメータの変更前の前記印刷品質と前記印刷パラメータの変更後の前記印刷品質とを比較する比較モードへ移行し、前記印刷パラメータの変更後の前記印刷品質に低下傾向が見られた場合に警告表示又は製造停止を実行する、電子部品実装システム。
【請求項2】
前記管理コンピュータは、前記印刷品質として、少なくとも、前記はんだ部の印刷ズレ及び前記はんだ部の印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpkを評価かつ管理する、請求項1に記載の電子部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムに関する。なお、本明細書では「電子部品」を単に「部品」ともいう。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムは、はんだ印刷装置、はんだ検査装置、電子部品装着装置等の複数の電子部品実装用装置を連結して構成されており、具体的な実装基板の製造条件等は、電子部品実装システム全体を管理する管理コンピュータにより管理されている。
【0003】
このような電子部品実装システムに関する従来技術として特許文献1には、実装基板の製造条件である生産プログラムのパラメータの値が変更されたことに起因して異常が生じたか否かを確認することが可能な部品実装システムの生産装置が開示されている。また、特許文献2には、電子部品実装システムを構成する生産ラインにおける生産不良の兆候を検出して、生産不良の原因を特定する生産ライン監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-201144号公報
【特許文献2】国際公開第2014/049872号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2の技術では基本的に、電子部品装着装置による部品実装工程を、異常検出や生産不良の兆候検出の対象としている。しかし本発明者らが、はんだ印刷装置を含む電子部品実装システム全体について、異常や生産不良の発生要因を詳細に検討したところ、実際の実装基板の製造工程では、製造環境(使用部材/材料、温湿度など)に合わせて製造中に、はんだ印刷装置によるはんだ印刷の印刷パラメータを変更することが少なからず実施されており、これが要因となりはんだの印刷品質の低下、ひいては実装基板の品質低下を招いていることがわかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムにおいて、はんだ印刷装置によるはんだの印刷品質の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明者らは、はんだの印刷品質に影響を与えるはんだ印刷の印刷パラメータを特定し、かつ管理コンピュータが印刷パラメータの変更を検知したときその変更前後の印刷品質を比較するとの技術的思想に基づき本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の一観点によれば次の電子部品実装システムが提供される。
電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムであって、
スクリーンマスクの上面に載せられたクリームはんだが練り合わせられて形成されたはんだロールをスキージにより前記スクリーンマスクに沿って移動させて、前記スクリーンマスクの下面側に配置された基板にはんだを印刷するはんだ印刷装置と、
前記はんだ印刷装置によりはんだが印刷されたはんだ部を含む基板を検査するはんだ検査装置と、
前記はんだ検査装置による検査を終えた基板に電子部品を装着する電子部品装着装置と、
前記はんだ印刷装置によるはんだ印刷の印刷パラメータを管理すると共に、前記はんだ検査装置からの検査データに基づいてはんだの印刷品質を評価かつ管理する管理コンピュータと、を備え、
前記管理コンピュータは、前記印刷パラメータとして、前記スキージによる印刷圧力、前記スキージの移動速度である印刷速度、前記スクリーンマスクを基板から離す速度であるマスク離れ速度、前記はんだロールの高さ、前記スクリーンマスクのクリーニング条件、及び前記スクリーンマスクと基板との位置合わせに関するオフセット量を管理すると共に、前記印刷品質として、前記はんだ部の印刷ズレ、前記はんだ部の印刷面積、及び前記はんだ部の印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpk、並びに前記はんだ部の不良率のうち少なくとも一つを評価かつ管理し、
更に前記管理コンピュータは、前記印刷パラメータの変更を検知した場合、前記印刷パラメータの変更前の前記印刷品質と前記印刷パラメータの変更後の前記印刷品質とを比較する比較モードへ移行し、前記印刷パラメータの変更後の前記印刷品質に低下傾向が見られた場合に警告表示又は製造停止を実行する、電子部品実装システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品を基板にはんだ接合により実装して実装基板を製造する電子部品実装システムにおいて、はんだ印刷装置によるはんだの印刷品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である電子部品実装システムの構成を示すブロック図。
【
図2】はんだ印刷装置としての印刷機の構成例を概念的に示す説明図。
【
図3】印刷パラメータの変更前後の印刷品質の変化例を概念的に示す説明図。
【
図4】管理コンピュータが実行する警告表示の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明の一実施形態である電子部品実装システムの構成をブロック図で示している。
図1に示す電子部品実装システム1は、はんだ印刷装置としての印刷機2、はんだ検査装置としての検査機3及び電子部品装着装置としての実装機4A,4Bを含む各装置を連結してなる電子部品実装ラインを通信ネットワーク5によって接続し、その全体を管理コンピュータ6によって管理し制御する構成となっている。
【0012】
印刷機2は、基板に形成された電子部品接合用の電極に対してペースト状のはんだをスクリーン印刷することにより、電極上にはんだ部を形成する。その具体的な構成については後述する。
【0013】
検査機3は、はんだ部の印刷状態の良否判断、電極に対するはんだ部の印刷ズレの検出、並びにはんだ部の印刷面積及び印刷体積の検出を含む印刷検査を行う。このような検査機3はSPIとも呼ばれ、その具体的な構成は周知であるので、説明を省略する。
【0014】
実装機4A,4Bは、はんだ部が形成された基板の電子部品装着位置に電子部品を装着する。本実施形態において実装機4A,4Bは、検査機3による検査を終えた基板の複数の電子部品装着位置に電子部品を装着する。その後、電子部品が装着された基板はリフロー機(図示せず)に送られ、所定の温度プロファイルに従って加熱される。この加熱によりはんだ部に含まれるはんだ粒子が溶融して電子部品と基板がはんだ接合される。なお、これらの実装機4A,4B及びリフロー機の具体的な構成も周知であるので、説明を省略する。
【0015】
図2に、印刷機2の構成例を概念的に示している。この印刷機2は、複数の開口部211が形成されたスクリーンマスク21と基板7を位置合わせし、開口部211を介して基板7に設定された複数の電子部品装着位置に形成された電極(図示せず)にはんだ部を形成する。具体的に印刷機2は、スクリーンマスク21の上面に載せられたクリームはんだが練り合わせられて形成されたはんだロール22をスキージ23によりスクリーンマスク21に沿って移動させて、このスクリーンマスク21の下面側に配置された基板7にはんだを印刷する。その後、基板7を下方に移動させることで、スクリーンマスク21を基板7から離す。なお、基板7を下方に移動させる代わりにスクリーンマスク21を上方に移動させることで、スクリーンマスク21を基板7から離すこともできる。また、上述したスクリーンマスク21と基板7との位置合わせも、一般的には基板7を水平面内で移動させることで実施するが、基板7を水平面内で移動させる代わりにスクリーンマスク21を水平面内で移動させることで位置合わせを実施することもできる。
このようにして印刷機2によりはんだが印刷されたはんだ部(図示せず)を含む基板7は、次工程である検査機3へ搬送される。
【0016】
次に、管理コンピュータ6の具体的な機能について説明する。管理コンピュータ6は、印刷機2によるはんだ印刷の印刷パラメータを管理すると共に、検査機3からの検査データに基づいてはんだの印刷品質を評価かつ管理する。
まず印刷パラメータについて説明すると、管理コンピュータ6は印刷パラメータとして、「印刷圧力」、「印刷速度」、「マスク離れ速度」、「はんだロールの高さ」、「スクリーンマスクのクリーニング条件」、及び「スクリーンマスクと基板との位置合わせに関するオフセット量」の6項目の印刷パラメータを管理する。
各印刷パラメータについてより具体的に説明すると、「印刷圧力」とはスキージ23による印刷圧力のことであり、「印刷速度」とはスキージ23の移動速度である。また、「マスク離れ速度」とはスクリーンマスク21を基板7から離す速度であり、より具体的には基板7を下方に移動させる速度、スクリーンマスク21を上方に移動させる速度、又はこれらの合計速度である。
更に「はんだロールの高さ」とは、
図2に例示したはんだロール22の高さのことである。ここで、はんだロール22とは、スクリーンマスク21の上面に載せられたクリームはんだが練り合わせられて形成されたもので、その高さは印刷の進行と共に減少するが、本発明において「はんだロールの高さ」とは印刷開始前の初期高さのことをいう。なお、
図2に例示したはんだロール22の高さは、印刷中、高さセンサ(図示せず)により監視され、その高さが所定の閾値を下回ったら、クリームはんだ供給装置(図示せず)からクリームはんだが供給されて、上述の初期高さ(印刷パラメータとしての「はんだロールの高さ」)に復帰させる。
【0017】
「スクリーンマスクのクリーニング条件」とは、スクリーンマスク21をクリーニングする条件のことであり、例えば、クリーニングの頻度、態様(湿式、乾式、湿式と乾式の組合せ等)などが挙げられる。なお、スクリーンマスク21には印刷の進行に伴い、その開口部211にはんだが目詰まりするなどの汚染が生じるため、印刷中に、クリーニング装置(図示せず)により所定の頻度及び態様にてクリーニングが実行される。
【0018】
「スクリーンマスクと基板との位置合わせに関するオフセット量」(以下単に「オフセット量」という。)とは、印刷開始前に実行するスクリーンマスク21と基板7との位置合わせに関するオフセット量のことである。すなわち、スクリーンマスク21と基板7との位置合わせは、設計上は原点同士を一致させるようにするが、印刷機2の装置特性やスクリーンマスク21自体の変形等の影響により、原点位置からオフセットさせて位置合わせを行うことがあり、そのオフセットの大きさが「オフセット量」である。
【0019】
以上の印刷パラメータはいずれも、実装基板の製造条件を記述した生産プログラムにて規定されており、管理コンピュータ6は、生産プログラムとして各種印刷パラメータを管理している。また管理コンピュータ6は、印刷パラメータに変更があった場合、その変更の事実及び内容を、生産プログラムを介して検知することができる。
【0020】
続いて、はんだの印刷品質について説明する。管理コンピュータ6は、印刷品質として、はんだ部の印刷ズレ、はんだ部の印刷面積、及びはんだ部の印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpk、並びにはんだ部の不良率のうち少なくとも一つを評価かつ管理する。
はんだ部の印刷ズレとは、電極に対するはんだ部の印刷位置ズレのことであり、検査機3により検出される。また、はんだ部の印刷面積及び印刷体積も同様に、検査機3により検出される。更に検査機3は、これらはんだ部の印刷ズレ、印刷面積及び印刷体積の検査データに基づいて印刷状態の良否判断を行う。
そして、管理コンピュータ6は、検査機3からの検査データに含まれるはんだ部の印刷ズレ、印刷面積及び印刷体積の検査データに基づいて、それぞれの生産工程指数Cp又はCpkを評価する機能を有する。また管理コンピュータ6は、検査機3からの検査データに含まれる印刷状態の良否判断の結果に基づいて、はんだ部の不良率を評価する機能も有する。
【0021】
更に管理コンピュータ6は、上述の印刷パラメータのうち少なくとも一つの印刷パラメータの変更を検知した場合、印刷パラメータの変更前の印刷品質と印刷パラメータの変更後の印刷品質とを比較する比較モードへ移行し、印刷パラメータの変更後の印刷品質に低下傾向が見られた場合に警告表示又は製造停止を実行する機能を有する。例えば
図3に概念的に示しているように、印刷パラメータの変更後に印刷品質が複数回連続して低下した場合、管理コンピュータ6は警告表示又は製造停止を実行する。なお、
図4には警告表示の一例を示している。
【0022】
以上の通り本実施形態によれば、印刷パラメータの変更後の印刷品質に低下傾向が見られた場合、管理コンピュータ6が警告表示又は製造停止を実行することから、印刷機2によるはんだの印刷品質の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態では、印刷品質として、はんだ部の印刷ズレ、はんだ部の印刷面積、及びはんだ部の印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpk、並びにはんだ部の不良率のうち少なくとも一つを評価かつ管理するようにしたが、これら印刷品質のうち、少なくともはんだ部の印刷ズレ及び印刷体積に関する生産工程指数Cp又はCpkを評価かつ管理するようにすることが好ましい。はんだ部の印刷ズレ及び印刷体積が、印刷品質に特に影響を及ぼすからである。
【符号の説明】
【0023】
1 電子部品実装システム
2 印刷機(はんだ印刷装置)
21 スクリーンマスク
211 開口部
22 はんだロール
23 スキージ
3 検査機(はんだ検査装置)
4A,4B 実装機(電子部品装着装置)
5 通信ネットワーク
6 管理コンピュータ
7 基板