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特開2024-173477アクティブキャパシター回路装置及びインバータシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173477
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アクティブキャパシター回路装置及びインバータシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241205BHJP
   H02M 1/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091919
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】523211660
【氏名又は名称】Mazda Imasen Electric Drive株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】円尾 忠司
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740AA01
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5H740MM11
5H740NN03
5H740NN08
5H740NN17
5H770AA05
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA16
5H770GA17
5H770HA02W
5H770HA03W
5H770LA00W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】リップル電圧を効果的に抑制し、平滑化に用いるキャパシターを小型化する。
【解決手段】アクティブキャパシター回路装置10Aが、正極側配線5に電流を入出力する双方向電力変換部20と、双方向電力変換部20を制御する制御部33とを備える。制御部33が、正極側配線5の電圧が上昇した場合に、キャパシター25に蓄電し、正極側配線5の電圧が低下した場合にキャパシター25から放電するように動作する第1フィードバック回路16と、正極側配線5と双方向電力変換部20との間を流れる電流の増減に応じて、キャパシター25の蓄電量又は放電量が増減するように動作する第2フィードバック回路17とを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続されている正極側配線及び負極側配線との間に配設されるアクティブキャパシター回路装置であって、
キャパシターを有し、前記正極側配線に電流を入出力する双方向電力変換部と、
前記正極側配線の電圧変動を抑制するように前記双方向電力変換部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記正極側配線の電圧が上昇した場合に、当該正極側配線から前記キャパシターに蓄電し、前記正極側配線の電圧が低下した場合に、前記キャパシターから前記正極側配線に放電するように動作する第1フィードバック回路と、
前記正極側配線と前記双方向電力変換部との間を流れる電流が増加した場合に、前記キャパシターの蓄電量又は放電量が減少し、前記正極側配線と前記双方向電力変換部との間を流れる電流が減少した場合に、前記キャパシターの蓄電量又は放電量が増加するように動作する第2フィードバック回路と、
を有していることを特徴とするアクティブキャパシター回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記双方向電力変換部が、
直列に接続された2つのスイッチング素子を含み、一端が前記正極側配線と接続されるとともに、他端が前記負極側配線と接続されるハーフブリッジ回路と、
直列に接続されたインダクターとキャパシターを含み、一端が前記ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続されるとともに、他端が前記正極側配線又は負極側配線のいずれかと接続されているLC直列回路と、
を有しているアクティブキャパシター回路装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記双方向電力変換部が、
各々が直列に接続された2つのスイッチング素子を含む第1ハーフブリッジ回路及び第2ハーフブリッジ回路を並列に接続したフルブリッジ回路と、
一端が前記第1ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続され、他端が前記正極側配線と接続されるとともに、インダクターが配置されている第1中継配線と、
一端が前記第2ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続され、他端が前記負極側配線と接続されている第2中継配線と、
フルブリッジ回路と並列に接続されるとともに、キャパシターが配置されているブリッジ配線と、
を有しているアクティブキャパシター回路装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
n個の前記双方向電力変換部が並列に接続されていて、
前記双方向電力変換部の各々が、前記スイッチング素子のスイッチングの周期に対して360÷n度の位相差で駆動されるアクティブキャパシター回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記双方向電力変換部の各々が有する前記インダクター及び前記キャパシターに基づく共振周波数が、同一又は整数倍とならないように設定されているアクティブキャパシター回路装置。
【請求項6】
請求項1に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記制御部は、微分回路を介して前記正極側配線の電圧の変動成分を入力するアクティブキャパシター回路装置。
【請求項7】
請求項1に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
第2キャパシターが、前記双方向電力変換部と並列した状態で、前記正極側配線と前記負極側配線との間に配設されているアクティブキャパシター回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記正極側配線及び前記負極側配線を介して前記直流電源から電力が供給されるインバータを備え、
前記第2キャパシターの静電容量値と前記正極側配線及び前記負極側配線の寄生インダクタンスとによる共振周波数が、前記インバータのキャリア周波数よりも低くなるように、前記第2キャパシターの静電容量値が設定されているアクティブキャパシター回路装置。
【請求項9】
請求項1に記載のアクティブキャパシター回路装置において、
前記双方向電力変換部と前記正極側配線との間を流れる電流を検出して前記制御部に出力する電流検出器を更に備え、
前記電流検出器が、前記正極側配線の電圧変動の大きさに対応した変換比率で、検出した電流を電圧に変換して出力するアクティブキャパシター回路装置。
【請求項10】
インバータシステムであって、
インバータと、
前記インバータに電力を供給する直流電源と、
請求項1~9のいずれかに記載されているアクティブキャパシター回路装置と、
を備え、
前記アクティブキャパシター回路装置が前記直流電源と前記インバータとの間を接続している配線に架設されているインバータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、アクティブキャパシター回路装置及びインバータシステムに関する。開示する技術はまた、DCリンクに設置される平滑コンデンサを省略ないし小型化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図8Aに、電気自動車などの車両に搭載される電気駆動システムの一例を示す。この電気駆動システム100は、高電圧(例えば数100V)な直流電源101、インバータ102、駆動モータ103などで構成されている。直流電源101とインバータ102との間は、インピーダンスを含む配線104によって接続されている。インバータ102は、直流電源101の電圧を公知のPWM制御によって変調し、3相の疑似正弦波を生成する。それにより、インバータ102は駆動モータ103を駆動する。
【0003】
その際、インバータ102は、約10KHzのキャリア周波数により、各相のスイッチング素子を駆動する。それにより、図8Aに矢印で示すように、配線を通ってインバータ102へ入力される電流I及び電圧Vは、多くの高調波を含む。その一例を図8Bに示す。
【0004】
この高調波の電流I及び電圧Vによってノイズが発生する。このノイズは、ラジオノイズや他の電子機器の誤動作の原因となり得る。過大なリップル電圧が生じると、インバータ102が誤作動するおそれもある。
【0005】
そこで、この高調波の電流I及び電圧Vを抑制するために、図8Aに示すように、電気駆動システム100には、電圧Vの平滑化を目的としたキャパシター105(いわゆる平滑コンデンサ)が設置されている。
【0006】
平滑コンデンサとしては、一般的に、大容量で高耐圧のフィルムコンデンサが採用される場合が多い。しかし、大容量で高耐圧のフィルムコンデンサは、高価である。しかも、そのサイズは大きく、高重量である。
【0007】
例えば、実効値電流100A程度のインバータにおいて、静電容量値が800μFのフィルムコンデンサを平滑コンデンサとして搭載した場合のリップル電圧を図8Cに示す。そのリップル電圧は、2.5Vpp(Voltage peak to peak)程度となる。そして、平滑コンデンサの体格は600cc程度となる。
【0008】
その一方で、リップル電圧は、経験的に1.4Vpp以下が望ましいとされている。そのリップル電圧を図8Dに示す。リップル電圧を1.4Vpp以下にする場合、フィルムコンデンサに求められる静電容量値は2700μF以上となる。
【0009】
このように、大電流を扱う電気駆動システムが備える平滑コンデンサは、容量が大きく、大型で高価になるという課題がある。
【0010】
開示する技術に関して、入力電流の歪を低減する技術(PFC、力率改善回路)が知られている。入力電流の歪低減に伴って、高周波のリップルを抑制できる。ただし、PFCは、正弦波の入力電圧に対して、電流の低い部分の電圧を昇圧する。そうすることにより、インバータに入力する流を正弦波に近づけて高周波の電流を抑制するとともに、電圧と電流の位相差を無くして力率を改善する。
【0011】
平滑コンデンサの容量削減を目的とする技術として、単相電流形整流器と三相電圧形インバータの直流部にコンデンサとスイッチによるバッファ回路を接続した構成の単相三相電力変換器が提案されている(非特許文献1)。そこでは、バッファ回路を制御することにより、平滑コンデンサの容量を1/60にしている。
【0012】
しかし、この技術の電源は交流である。従って、上述した電気駆動システム100のように、電源が直流の場合には適していない。
【0013】
直流電源を対象とした技術は、特許文献1に開示されている。そこでは、パッシブコンデンサCpとアクティブコンデンサCaを直列にした回路をDCリンクに並列に接続している。アクティブコンデンサCaの電圧は、パッシブコンデンサCpの電圧の変動を反転した状態にし、合計電圧が一定となるように制御する。そうすることでDCリンクの電圧変動を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2019―180164号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】大沼喜也、伊東淳一、「新しい単相三相電力変換器によるコンデンサ容量の低減法とその基礎検証」、電気学会半導体電力変換研資、SPC―08―162(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1の技術の場合、入力される電圧が一定と考えると、パッシブコンデンサCpの電圧が増加した場合に、アクティブコンデンサCaの電圧を減少させるように作用する。これは、アクティブコンデンサCaの電圧指値を出力とし、パッシブコンデンサCpの電圧を入力とした、いわゆるネガティブフィードバックループを形成している。
【0017】
このネガティブフィードバックループの制御ゲイン・位相の設定が不適切な場合には、DCリンクの電圧が不安定になって発振する可能性がある。
【0018】
開示する技術の目的は、リップル電圧を効果的に抑制し、平滑化に用いるキャパシターを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
開示する技術は、直流電源に接続されている正極側配線及び負極側配線との間に配設されるアクティブキャパシター回路装置に関する。
【0020】
前記アクティブキャパシター回路装置は、キャパシターを有し、前記正極側配線に電流を入出力する双方向電力変換部と、前記正極側配線の電圧変動を抑制するように前記双方向電力変換部を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記正極側配線の電圧が上昇した場合に、当該正極側配線から前記キャパシターに蓄電し、前記正極側配線の電圧が低下した場合に、前記キャパシターから前記正極側配線に放電するように動作する第1フィードバック回路と、前記正極側配線と前記双方向電力変換部との間を流れる電流が増加した場合に、前記キャパシターの蓄電量又は放電量が減少し、前記正極側配線と前記双方向電力変換部との間を流れる電流が減少した場合に、前記キャパシターの蓄電量又は放電量が増加するように動作する第2フィードバック回路と、を有していることを特徴とする。
【0021】
すなわち、このアクティブキャパシター回路装置によれば、第1フィードバック回路の制御におけるゲインを大きくしてリップル電圧を抑制する場合に、第2フィードバック回路により、電圧のフィードバック量に比例して双方向電力変換部を入出力する電流の大きさを制御できる。それにより、第1フィードバック回路のゲインが1以上の周波数帯域における位相回りが正帰還領域とならずに、異常発振によって意図しない電圧の変動を防止できる。
【0022】
リップル電圧に対しても、これを打ち消す方向に双方向電力変換部から電流を入出力することができる。従って、リップル電圧を効果的に低減できる。
【0023】
前記双方向電力変換部が、直列に接続された2つのスイッチング素子を含み、一端が前記正極側配線と接続されるとともに、他端が前記負極側配線と接続されるハーフブリッジ回路と、直列に接続されたインダクターとキャパシターを含み、一端が前記ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続されるとともに、他端が前記正極側配線又は負極側配線のいずれかと接続されているLC直列回路と、を有している、としてもよい。
【0024】
そうすれば、簡単な回路構成と少ない素子数で双方向電力変換部を構成できる。従って、コスト、信頼性、サイズなどにおいて有利である。
【0025】
前記双方向電力変換部が、各々が直列に接続された2つのスイッチング素子を含む第1ハーフブリッジ回路及び第2ハーフブリッジ回路を並列に接続したフルブリッジ回路と、一端が前記第1ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続され、他端が前記正極側配線と接続されるとともに、インダクターが配置されている第1中継配線と、一端が前記第2ハーフブリッジ回路における2つの前記スイッチング素子の間の部位に接続され、他端が前記負極側配線と接続されている第2中継配線と、フルブリッジ回路と並列に接続されるとともに、キャパシターが配置されているブリッジ配線と、を有している、としてもよい。
【0026】
そうすれば、キャパシターに印加される電圧は、正極側配線及び負極側配線の間に印加される電圧(DCリンク間電圧)をPWM制御して反転して印加することになる。従って、実質的にDCリンク間電圧を2倍したのと等価となり、結果的に、キャパシターの静電容量を半分にできる。
【0027】
n個の前記双方向電力変換部が並列に接続されていて、前記双方向電力変換部の各々が、前記スイッチング素子のスイッチングの周期に対して360÷n度の位相差で駆動される、としてもよい。
【0028】
そうすれば、双方向電力変換部の一群から入出力される電流の周波数成分は、各双方向電力変換部の駆動周波数をn倍したのと等価となる。従って、各双方向電力変換部の駆動周波数を過度に高くする必要が無くなるし、高周波のリップル電圧に対しても適切に対応できる。
【0029】
前記双方向電力変換部の各々が有する前記インダクター及び前記キャパシターに基づいて算出される共振周波数が、同一又は整数倍とならないように設定されている、としてもよい。
【0030】
そうすれば、各双方向電力変換部におけるインダクター及びキャパシターによる共振周波数が分散されるので、その共振周波数による共振電流が正極側配線に流れてリップル電流となるのを抑制できる。
【0031】
前記制御部は、微分回路を介して前記正極側配線の電圧の変動成分を入力する、としてもよい。
【0032】
そうすれば、リップル電圧の成分だけを抽出して制御部に入力できる。直流電源の電圧に応じて制御部の設定を変更する必要がなくなる。
【0033】
第2キャパシターが、前記双方向電力変換部と並列した状態で、前記正極側配線と前記負極側配線との間に配設されている、としてもよい。
【0034】
そうすれば、ラジオ周波数帯域以上の非常に高い周波数のリップル電圧に対しては、極小静電容量のキャパシターを用いてそのリップル電圧を平滑化できる。従って、高周波ノイズを効果的に抑制できる。
【0035】
前記正極側配線及び前記負極側配線を介して前記直流電源から電力が供給されるインバータを備え、前記第2キャパシターの静電容量値と前記正極側配線及び前記負極側配線の寄生インダクタンスとによる共振周波数が、前記インバータのキャリア周波数よりも低くなるように、前記第2キャパシターの静電容量値が設定されている、としてもよい。
【0036】
そうすれば、双方向電力変換部を入出力する電流では抑制困難な、第2キャパシターと寄生インダクタンスとの間に流れる非常に大きな共振電流を抑制できる。
【0037】
前記双方向電力変換部と前記正極側配線との間を流れる電流を検出して前記制御部に出力する電流検出器を更に備え、前記電流検出器が、前記正極側配線の電圧変動の大きさに対応した変換比率で、検出した電流を電圧に変換して出力する、としてもよい。
【0038】
そうすれば、第1フィードバック回路及び第2フィードバック回路において、正極側配線の電圧変動の大きさに対応した適切な比例関係に調整できるので、安定したフィードバック制御が可能になる。
【0039】
開示する技術はまた、インバータシステムであって、インバータと、前記インバータに電力を供給する直流電源と、上述したアクティブキャパシター回路装置と、を備え、前記アクティブキャパシター回路装置が前記直流電源と前記インバータとの間を接続している配線に架設されている、としてもよい。
【0040】
そうすれば、インバータシステムのサイズ、重量、コストを大幅に低減できる。
【発明の効果】
【0041】
開示する技術によれば、リップル電圧を効果的に抑制できる。それにより、平滑化するために用いるキャパシターを小型化することができる。従って、開示する技術をインバータシステムに採用することで、その小型化、軽量化、低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】開示する技術の第1形態の適用例を示す図である。
図2】第1アクティブキャパシター回路装置の構成図である。
図3A】実施例のリップル電圧の波形を表した図である。
図3B】実施例のゲイン及び位相を表したボード線図である。
図4A】比較例のリップル電圧の波形を表した図である。
図4B】比較例のゲイン及び位相を表したボード線図である。
図5】第2アクティブキャパシター回路装置の構成図である。
図6】第3アクティブキャパシター回路装置の構成図である。
図7】第4アクティブキャパシター回路装置の構成図である。
図8A】従来の電気駆動システムの一例を示す回路図である。
図8B】従来の電気駆動システムにおけるインバータへの入力電流及び入力電圧の一例である。
図8C】静電容量値が800μFのフィルムコンデンサを平滑コンデンサとして搭載した場合のリップル電圧の一例である。
図8D】静電容量値が2700μFのフィルムコンデンサを平滑コンデンサとして搭載した場合のリップル電圧の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、開示する技術について説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎない。説明では、複数の形態を例示する。各形態で共通する基本的な構成要素は、同じ符号を用い、その説明は省略ないし簡略化する。また、各形態において、同じ機能を有する構成要素の符号は、同じ数字を用い、符号を追記することで区別する場合がある。
【0044】
<第1形態>
図1に、開示する技術の第1形態(第1アクティブキャパシター回路装置10A)の適用例を示す。第1アクティブキャパシター回路装置10Aは、車載用のインバータシステム1に適用されている。すなわち、このインバータシステム1は、電気自動車やハイブリッド車などの、電気を用いて駆動する車両に搭載されている。
【0045】
インバータシステム1は、インバータ2、直流電源3などで構成されている。直流電源3は、多数のリチウムイオン二次電池などで構成されている。直流電源3は高電圧である(例えば数100V)。インバータ2は公知であるので、その具体的な構成は省略する(図8A参照)。
【0046】
直流電源3の正極端子3aは、正極側配線5を介してインバータ2の正極側入力端子2aと接続されている。直流電源3の負極端子3bは、負極側配線6を介してインバータ2の負極側入力端子2bと接続されている。正極側配線5及び負極側配線6はDCリンクを構成している。直流電源3はDCリンクを介してインバータ2に電力を供給する。
【0047】
そして、正極側配線5と負極側配線6との間に、第1アクティブキャパシター回路装置10Aが架設されている。第1アクティブキャパシター回路装置10Aは、高電位側端子11及び低電位側端子12を有している。高電位側端子11は正極側配線5と接続されている。低電位側端子12は負極側配線6と接続されている。
【0048】
第1アクティブキャパシター回路装置10Aは、正極側配線5に生じる電圧変動(リップル電圧)を抑制するように、これら高電位側端子11及び低電位側端子12を介して電流が出入りするように構成されている。
【0049】
(第1アクティブキャパシター回路装置10A)
図2に、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの構成を示す。第1アクティブキャパシター回路装置10Aは、双方向電力変換部20、制御部33、高電位側配線13、及び、低電位側配線14を有している。高電位側配線13は高電位側端子11と接続されている。低電位側配線14は低電位側端子12と接続されている。
【0050】
双方向電力変換部20は、2つのスイッチング素子(トップ側スイッチング素子21及びボトム側スイッチング素子22)、ノットゲート23、インダクター24、キャパシター25などで構成されている。双方向電力変換部20は、電流が入出力する第1端子20a、第2端子20b、及び、第3端子20cを有している。
【0051】
スイッチング素子21,22は、例えばNchパワーMOSFETである。これら2つのスイッチング素子21,22は直列に接続されており、いわゆるハーフブリッジ回路26を構成している。トップ側スイッチング素子21のソース端子は、ボトム側スイッチング素子22のドレイン端子と接続されている。トップ側スイッチング素子21のドレイン端子は、第1端子20aと接続されている。第1端子20aは、トップ側中継配線31により、高電位側配線13と接続されている。
【0052】
トップ側中継配線31に電流検出器40が設置されている。電流検出器40は、トップ側中継配線31を流れる電流に比例した電圧(例えば1V/1Aの比率で電流を変換した電圧)を検出する。電流検出器40は、双方向電力変換部20から流出する方向をプラス方向としている。そして、その検出した電圧を更に所定の変換比率で変換して、制御部33へ出力する。電流検出器40は、例えば公知のシャント抵抗やオペアンプなどを用いて構成できる。
【0053】
ボトム側スイッチング素子22のソース端子は、第2端子20bと接続されている。第2端子20bは、ボトム側中継配線27より、低電位側配線14と接続されている。ボトム側スイッチング素子22を迂回するように、LC直列回路28が接続されている。
【0054】
LC直列回路28の一端は、ハーフブリッジ回路26におけるトップ側スイッチング素子21とボトム側スイッチング素子22の間の部位に接続されている。LC直列回路28の他端は、ハーフブリッジ回路26におけるボトム側スイッチング素子22と第2端子20bの間の部位に接続されている。
【0055】
インダクター24及びキャパシター25は、このLC直列回路28に直列に配置されている。インダクター24は、ボトム側スイッチング素子22のドレイン端子の側に、キャパシター25はボトム側スイッチング素子22のソース端子の側に位置している。
【0056】
ボトム側スイッチング素子22のゲート端子は、ボトム側ゲート配線29により、第3端子20cと接続されている。トップ側スイッチング素子21のゲード端子は、トップ側ゲート配線30により、ボトム側ゲート配線29におけるボトム側スイッチング素子22のゲート端子と第3端子20cとの間の部位と接続されている。トップ側ゲート配線30には、ノットゲート23が設置されている。
【0057】
制御部33は、オペアンプ34、コンパレータ35、微分回路36などで構成されている。微分回路36は、例えば抵抗とコンデンサによって構成されており、高電位側端子11と接続されている。制御部33は、微分回路36を通して、正極側配線5の電圧の変動成分を取り込む。制御部33は、電流検出器40から出力される電圧に、その電圧の変動成分を加算する。
【0058】
変動成分が加算された電圧は、オペアンプ34の反転入力端子に入力される。オペアンプ34の非反転入力端子には、例えば2.5Vに設定されたリファレンス電源37のリファレンス電圧が入力される。オペアンプ34は、これら入力電圧の差を増幅して出力する。
【0059】
さらに、制御部33では、リファレンス電圧を中心に三角波信号38が生成されるように構成されている。三角波信号38の周波数は、例えば330KHzである。インバータ2のキャリア周波数(駆動周波数)は、一般的には10KHzである。三角波信号38の周波数は、インバータ2のキャリア周波数よりも十分に高く設定されている。その三角波信号38とオペアンプ34の出力信号とが、コンパレータ35に入力される。
【0060】
コンパレータ35は、これら信号を比較する。そして、オペアンプ34の出力信号が三角波信号38よりも小さい場合にコンパレータ35の出力電圧が「L」となり、オペアンプ34の出力信号が三角波信号38以下の場合にコンパレータ35の出力電圧が「H」となるように構成されている。すなわち、コンパレータ35は、330KHzの周波数で、「L」又は「H」からなるPWM信号を出力する。
【0061】
コンパレータ35の出力端子は第3端子20cに接続されている。従って、コンパレータ35から出力されるPWM信号に応じて、トップ側スイッチング素子21とボトム側スイッチング素子22とが、それぞれ同期して、オン又はオフの逆のスイッチング動作をする。
【0062】
第1アクティブキャパシター回路装置10Aには、このような構成にすることによって、第1フィードバック回路16と第2フィードバック回路17とが形成されている。
【0063】
第1フィードバック回路16は、図2に矢印Y1で示すように、微分回路36を経由して正極側配線5の電圧(詳細にはその変動成分)を制御部33に取り込み、その電圧に基づいて、双方向電力変換部20の第1端子20aから電流を入出力する回路である。
【0064】
一方、第2フィードバック回路17は、図2に矢印Y2で示すように、電流検出器40から出力される電圧(詳細には電流値に応じた電圧)を制御部33に取り込み、その電圧に基づいて、双方向電力変換部20の第1端子20aから電流を入出力する回路である。
【0065】
第1フィードバック回路16の電圧及び第2フィードバック回路17の電圧は、加算された状態でオペアンプ34の反転入力端子に入力される。第1フィードバック回路16は、正極側配線5の電圧に基づくものであり、第2フィードバック回路17は、双方向電力変換部20から出力される電流に基づくものである。
【0066】
(第1フィードバック回路16による作用)
リップル電圧によって正極側配線5の電位が上昇すると、第1フィードバック回路16に入力される電圧が上昇し、オペアンプ34の反転入力端子に入力される電圧が上昇する。
【0067】
その結果、オペアンプ34の出力電圧が低下する。それにより、コンパレータ35から出力されるPWM信号のデューティ比が変化する。具体的には、コンパレータ35の出力電圧が「L」となる期間が長くなり、「H」となる期間が短くなる。
【0068】
それにより、双方向電力変換部20のスイッチング制御におけるPWM駆動の状態が変化する。具体的には、トップ側スイッチング素子21がオン(通電可)となる期間は長くなり、ボトム側スイッチング素子22がオンとなる期間は短くなる。その結果、第1端子20aからトップ側スイッチング素子21に電流が流れるようになり、インダクター24の作用によってキャパシター25に蓄電される。
【0069】
すなわち、高電位側配線13から第1アクティブキャパシター回路装置10Aに電流が流入するので、リップル電圧によって上昇した正極側配線5の電位が低下する。リップル電圧の上昇を抑制できる。
【0070】
一方、リップル電圧によって正極側配線5の電位が低下すると、第1フィードバック回路16の電圧が低下し、オペアンプ34の反転入力端子に入力する電圧も低下する。その結果、オペアンプ34の出力電圧は上昇する。
【0071】
それにより、コンパレータ35の出力電圧が「H」となる期間が長くなり、「L」となる期間が短くなる。そして、トップ側スイッチング素子21がオン(通電可)となる期間は短くなり、ボトム側スイッチング素子22がオンとなる期間は長くなる。その結果、インダクター24及びキャパシター25が放電することによって、トップ側スイッチング素子21及び第1端子20aを通って電流が流れるようになる。
【0072】
すなわち、第1アクティブキャパシター回路装置10Aから正極側配線5に電流が流入するので、リップル電圧によって低下した正極側配線5の電位が上昇する。リップル電圧を抑制できる。
【0073】
(第2フィードバック回路17による作用)
例えば、第1アクティブキャパシター回路装置10Aに流入する電流が増加すると、電流検出器40では、マイナス方向の電流が大きくなる。それに伴って、第2フィードバック回路17に入力される電圧が低下し、オペアンプ34の反転入力端子に入力される電圧が低下する。
【0074】
その結果、オペアンプ34の出力電圧が上昇する。それにより、コンパレータ35から出力されるPWM信号のデューティ比が変化する。具体的には、コンパレータ35の出力電圧が「L」となる期間が短くなり、「H」となる期間が長くなる。
【0075】
それにより、双方向電力変換部20のスイッチング制御におけるPWM駆動の状態が変化する。具体的には、トップ側スイッチング素子21がオン(通電可)となる期間は短くなり、ボトム側スイッチング素子22がオンとなる期間は長くなる。その結果、第1アクティブキャパシター回路装置10Aに流入する電流が減少する。キャパシター25の蓄電量が減少する。
【0076】
一方、第1アクティブキャパシター回路装置10Aに流入する電流が小さくなると、電流検出器40では、マイナス方向の電流が減少する。それに伴って、第2フィードバック回路17の電圧が上昇し、オペアンプ34の反転入力端子に入力する電圧が上昇する。
【0077】
その結果、オペアンプ34の出力電圧が低下する。それにより、コンパレータ35から出力されるPWM信号のデューティ比が変化する。具体的には、コンパレータ35の出力電圧が「L」となる期間が長くなり、「H」となる期間が短くなる。
【0078】
それにより、双方向電力変換部20のスイッチング制御におけるPWM駆動の状態が変化する。具体的には、トップ側スイッチング素子21がオン(通電可)となる期間は長くなり、ボトム側スイッチング素子22がオンとなる期間は短くなる。その結果、第1アクティブキャパシター回路装置10Aに流入する電流が増加する。キャパシター25の蓄電量が増加する。
【0079】
第1アクティブキャパシター回路装置10Aから流出する電流が大きくなったり小さくなったりした場合も同様である。それに応じて、第1アクティブキャパシター回路装置10Aから流出する電流が減少したり増加したりする。キャパシター25の放電量が減少したり増加したりする。
【0080】
すなわち、従来は次に説明するようにフィードバック制御の精度に問題があったが、第2フィードバック回路17により、リップル電圧による正極側配線5の電圧の上昇量または低下量に比例した電流に基づいてフィードバック制御することができる。従って、リップル電圧を精度高く制御できる。
【0081】
(第2フィードバック回路17が無い場合)
コンパレータ35から出力される330KHzのPWM信号のデューティと、第1端子20aを通して双方向電力変換部20から入出力される電流の値は比例しないという問題がある。
【0082】
すなわち、コンパレータ35から出力されるPWM信号のデューティは、ハーフブリッジ回路26におけるトップ側スイッチング素子21とボトム側スイッチング素子22の間の部位に発生する矩形波状の電圧の平均値と比例関係にある。その電圧の平均値の時間変化分とキャパシター25の静電容量とを掛け算して得られる電流がインダクター24に流れる。従って、最終的に、インダクター24を流れる電流と正極側配線5の電圧の変化量とは比例する。
【0083】
一方、トップ側スイッチング素子21とボトム側スイッチング素子22の各々がオンされる時間に応じて、インダクター24を流れる電流を分配する。そうして分配した電流のうち、トップ側スイッチング素子21がオンされる時間に流れる電流が、第1端子20aを通して双方向電力変換部20から入出力される電流である。
【0084】
従って、正極側配線5の電圧が変化する直前において、キャパシター25の電圧が低い場合はトップ側スイッチング素子21の通電時間が短いので、第1端子20aを流れる電流は小さい。逆に、キャパシター25の電圧が高い場合はトップ側スイッチング素子21の通電時間が長いので、第1端子20aを流れる電流は大きい。
【0085】
そのため、正極側配線5の電圧の変化に対して、第1端子20aを通して双方向電力変換部20から入出力される電流が比例しないので、その電流に基づいてリップル電圧の変動を精度高く制御できない。従って、第2フィードバック回路17が無いと、不具合がある。
【0086】
それに対し、上述したように、第2フィードバック回路17が有れば、第1端子20aを通して双方向電力変換部20に入出力する電流が大小に変化する。オペアンプ34の出力電圧もそれに応じて変化し、コンパレータ35から出力されるPWM制御のデューティ比も変化する。それにより、第1端子20aを通して入出力する電流を、高電位側配線13の電圧の変化に応じて調整できる。
【0087】
その結果、リップル電圧の大きさ、周波数成分に関わらず、精度高くリップル電圧を打ち消すための電流を双方向電力変換部20から入出力させることができ、リップル電圧(電流)を抑制することができる。
【0088】
(実施例)
図3Aに、上述したインバータシステム1の正極側配線5で発生するリップル電圧を示す。図3Bに、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの高電位側端子11を入出力としたフィードバック回路のゲイン及び位相を表したボード線図を示す。
【0089】
インバータ2の作動条件は、従来技術と同様とした。具体的には、三相の出力電力の実効値電流は100Aとした。キャリア周波数は10KHzとした。直流電源3の電圧は177Vとした。
【0090】
従来の平滑コンデンサであれば、図8Dに示したように、1.4Vpp以下のリップル電圧を実現するためには2700μF以上の静電容量を要していた。それに対し、この第1アクティブキャパシター回路装置10Aのキャパシター25の静電容量は330μFである。すなわち、開示する技術によれば、従来の静電容量の約1/10のキャパシター25によって1.4Vpp以下のリップル電圧を抑制できることが判った。
【0091】
そして、第1フィードバック回路16と第2フィードバック回路17との組み合わせにより、図3Bに示すように、ゲイン0dB以上で位相差は±90度の範囲外にあり、安定した制御が可能となっている。
【0092】
尚、電流検出器40において電流値Iから電圧値Vへ変換する際の変換比率(V:I)は、実験結果に基づいて設定されている。例えば、その変換比率を0とした場合は第2フィードバック回路が無いのと等価である。一方、その変換比率を高くし過ぎると、高電位側端子11の電圧が変動しても、双方向電力変換部20を入出力する電流がゼロに近づく。従って、その変換比率は適切な範囲に設定する必要がある。
【0093】
そこで、このインバータシステム1では、実験結果に基づいてその変換比率が最適化されている。具体的には、双方向電力変換部20を入出力する電流によって正極側配線5に作用する電圧変動ΔVaは、その電流の変動量ΔIaに、正極側配線5が有するインピーダンスZを乗じたものである(ΔVa=ΔIa・Z)。それにより、その電圧変動ΔVaを打ち消すために必要な、双方向電力変換部20を入出力する電流の変動量ΔIaはΔVa/Zとなり、その場合の電圧と電流の変動量の比率(ΔVa/ΔIa)はインピーダンスZとなる。
【0094】
ここで、正極側配線5のインピーダンスZは、RL直列回路と考えられるので、例えば、このインバータシステム1では、その直列抵抗Rは10mΩ、そのインダクタンスLは5μH、リップル電圧の周波数成分Fは10KHzとされており、Z=R+2πFLより、インピーダンスZは約0.315(Ω)となる。
【0095】
従って、この場合、上述した変換比率(V:I)は、0.315:1となり、約0.3以下であればよい。実質的には、0.2以上0.3以下:1が好ましい。従って、このインバータシステム1では、その正極側配線5の電圧変動の大きさに対応して、電流検出器40の変換比率(V:I)は、0.2以上0.3以下:1となるように設定されている。
【0096】
(比較例)
図4A及び図4Bに、実施例において第2フィードバック回路17の無い場合を比較例として示す。図4Aは、図3Aに対応しており、第2フィードバック回路17が無い場合において、上述したインバータシステム1の高電位側配線13で発生するリップル電圧を示している。図4Bは、図3Bに対応しており、第2フィードバック回路17が無い場合において、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの高電位側端子11を入出力としたフィードバック回路のゲイン及び位相を表したボード線図を示している。
【0097】
比較例では、図4Aに示すように、約4.9Vppのリップル電圧が存在している。従って、実施例における第2フィードバック回路17の効果が顕著であることが判る。また、図4Bに示すように、比較例では、ゲインの設定を1/6まで低減しているにも関わらず、0dB以上において、位相回りが±90度以内の領域がある。従って、比較例では、発振を伴った制御波形となっている。
【0098】
尚、双方向電力変換部20及び電流検出器40などは、逆向きに配置し、図2の上下を反転した構成としてもよい。
【0099】
すなわち、本実施形態の双方向電力変換部20では、キャパシター25の一端は低電位側配線14の側に接続したが、キャパシター25の一端は高電位側配線13の側に接続する。そして、電流検出器40はトップ側中継配線31に配置したが、ボトム側中継配線27に配置する。制御部33は、高電位側端子11の電圧ではなく、低電位側端子12の電圧を入力する。リファレンス電源37の基準側(低電位側)は、高電位側端子11と接続する。
【0100】
<第2形態>
図5に、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの別形態(第2アクティブキャパシター回路装置10B)を示す。
【0101】
第2アクティブキャパシター回路装置10Bの双方向電力変換部(第2双方向電力変換部20B)は、スイッチング素子を4つ含むフルブリッジ回路50を有している。具体的には、フルブリッジ回路50は、第1トップ側スイッチング素子21-1と第1ボトム側スイッチング素子22-1とが直列に配置された第1ハーフブリッジ回路26-1と、第2トップ側スイッチング素子21-2と第2ボトム側スイッチング素子22-2とが直列に配置された第2ハーフブリッジ回路26-2とを並列に接続して構成されている。
【0102】
第1ボトム側スイッチング素子22-1のゲート端子及び第2トップ側スイッチング素子21-2のゲート端子は、第1ゲート配線54によって第3端子20cと接続されている。第2ボトム側スイッチング素子22-2のゲート端子及び第1トップ側スイッチング素子21-1のゲート端子は、第2ゲート配線55によって第3端子20cと接続されている。
【0103】
それにより、第1トップ側スイッチング素子21-1と第2ボトム側スイッチング素子22-2とが連動してスイッチングする。第2トップ側スイッチング素子21-2と第1ボトム側スイッチング素子22-1とが連動してスイッチングする。
【0104】
そして、第2ゲート配線55にはノットゲート23が配置されており、第1トップ側スイッチング素子21-1及び第2ボトム側スイッチング素子22-2のスイッチングと、第2トップ側スイッチング素子21-2及び第1ボトム側スイッチング素子22-1のスイッチングとは、互いに反転して相補的にスイッチングするように構成されている。
【0105】
第1端子20aと、第1ハーフブリッジ回路26-1における第1トップ側スイッチング素子21-1と第1ボトム側スイッチング素子22-1との間の部位とが、第1中継配線51によって接続されている。この第1中継配線51に、インダクター24が配置されている。第2ハーフブリッジ回路26-2における第2トップ側スイッチング素子21-2と第2ボトム側スイッチング素子22-2との間の部位は、第2中継配線52によって第2端子20bと接続されている。
【0106】
そして、第1ハーフブリッジ回路26-1及び第2ハーフブリッジ回路26-2と並列に、ブリッジ配線53が接続されている。このブリッジ配線53にキャパシター25が配置されている。
【0107】
上述したアクティブキャパシター回路装置10Aの場合、キャパシター25に印加される電圧の最大範囲は、0Vから高電位側配線13の電圧までである(DCリンク間電圧)。それに対し、第2アクティブキャパシター回路装置10Bの場合、キャパシター25に印加される電圧の最大範囲は、その2倍である(±DCリンク間電圧)。
【0108】
従って、第2アクティブキャパシター回路装置10Bのキャパシター25の静電容量は、上述した第1アクティブキャパシター回路装置10Aのキャパシター25の半分にできる。
【0109】
<第3形態>
図6に、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの別形態(第3アクティブキャパシター回路装置10C)を示す。
【0110】
第3アクティブキャパシター回路装置10Cは、マルチフェーズ構成とされており、双方向電力変換部20を複数(本形態では3つ)有している点で、上述した第1アクティブキャパシター回路装置10A及び第2アクティブキャパシター回路装置10Bと異なる。
【0111】
すなわち、第3アクティブキャパシター回路装置10Cは、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、及び、第3双方向電力変換部20-3からなる双方向電力変換部群60を有している。
【0112】
第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々の第1端子20aは、並列した状態で、トップ側合流配線61により、高電位側配線13と接続されている。第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々の第2端子20bは、並列した状態で、ボトム側合流配線62により、低電位側配線14と接続されている。
【0113】
電流検出器40は、トップ側合流配線61における各第1端子20aよりも高電位側の部位に設置されている。
【0114】
第3アクティブキャパシター回路装置10Cの制御部(第3制御部33C)において、微分回路36、オペアンプ34、及び、リファレンス電源37は、上述したアクティブキャパシター回路装置10A等と同じである。
【0115】
第3制御部33Cには、3つの双方向電力変換部20-1,20-2,20-3に対応して、三角波信号38及びコンパレータ35が、それぞれ3つずつ設けられている。
【0116】
具体的には、第3制御部33Cでは、第1三角波信号38-1、第2三角波信号38-2、及び、第3三角波信号38-3が生成されるように構成されている。これら第1三角波信号38-1、第2三角波信号38-2、及び、第3三角波信号38-3の周波数は、全て同一とされている(例えば330KHz)。
【0117】
そして、第1三角波信号38-1と第2三角波信号38-2との間には、120度の位相差が設けられている。第2三角波信号38-2と第3三角波信号38-3との間にも、120度の位相差が設けられている。そして、第1三角波信号38-1と第3三角波信号38-3との位相差は、240度となっている。
【0118】
第3制御部33Cは、第1コンパレータ35-1、第2コンパレータ35-2、及び、第3コンパレータ35-3を有している。第1三角波信号38-1、第2三角波信号38-2、及び、第3三角波信号38-3は、それぞれ、これら第1コンパレータ35-1、第2コンパレータ35-2、及び、第3コンパレータ35-3に入力される。オペアンプ34の出力信号も、それぞれ、これら第1コンパレータ35-1、第2コンパレータ35-2、及び、第3コンパレータ35-3に入力される。
【0119】
第1コンパレータ35-1、第2コンパレータ35-2、及び、第3コンパレータ35-3は、それぞれ、入力したそれら信号を比較する。それにより、第1コンパレータ35-1、第2コンパレータ35-2、及び、第3コンパレータ35-3は、それぞれ、同一のデューティで、120度の位相差を持って分割されたPWM信号を出力する。
【0120】
そうすることにより、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、及び、第3双方向電力変換部20-3を、120度の位相差で駆動する。尚、双方向電力変換部などは3個に限らない。n個の双方向電力変換部が並列に接続されていて、双方向電力変換部の各々が、それらのスイッチング素子のスイッチングの周期に対して360÷n度の位相差で駆動されればよい。
【0121】
その結果、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々の第1端子20aから出力されて合成される電流は、等価的に330KHz×3の周波数成分を持つことになる。それにより、双方向電力変換部群60から出力される総電流値の330KHzのリップル成分が減少する。
【0122】
その結果、高電位側配線13にノイズとして現れる三角波信号38の周波数成分の影響を低減できる。さらに、双方向電力変換部群60から出力される電流値に対し、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々を流れる電流値を1/3にすることができる。これら双方向電力変換部20に用いる電子部品で発生する抵抗性の電力損失を大幅に低減できる。
【0123】
さらに、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々が有するインダクター24及びキャパシター25は、そのインダクター24のインダクタンス値Lとキャパシター25の静電容量値Cによって直列共振回路を形成する。これら直列共振回路を流れる共振電流によって、正極側配線5にノイズが発生し得る。
【0124】
そこで、この第3アクティブキャパシター回路装置10Cでは、共振周波数が同一又は整数倍とならないように工夫されている。
【0125】
すなわち、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々が有するインダクター24のインダクタンス値は、1uH、1.4uH、1.8uHとされている。そして、第1双方向電力変換部20-1、第2双方向電力変換部20-2、第3双方向電力変換部20-3の各々が有するキャパシター25の静電容量値Cは100uFとされている。
【0126】
それにより、特定の周波数で共振することが抑制でき、正極側配線5にノイズが発生すること防止できる。
【0127】
<第4形態>
図7に、第1アクティブキャパシター回路装置10Aの別形態(第4アクティブキャパシター回路装置10D)を示す。
【0128】
第4アクティブキャパシター回路装置10Dは、上述した第1アクティブキャパシター回路装置10Aと比べて、高電位側配線13と低電位側配線14との間に第2キャパシター70を配設した点で異なる。
【0129】
インバータ2の入力側には、ノーマルモードノイズが発生する。このノーマルモードノイズの主成分は、インバータ2が備える3つのハーフブリッジ回路からなるインバータ回路においてオンオフの動作が反転する時に、個々のハーフブリッジ回路において、オフ側のスイッチング素子(又はフライホイールダイオード)のターンオフが遅れることにより、短時間ではあるが各ハーフブリッジ回路を貫通して流れる過大な電流に起因する。
【0130】
従って、ノーマルモードノイズを低減するためには、インバータ2の正極側入力端子2aと負極側入力端子2bとの間に、高い周波数領域で極低インピーダンスの特性を具備するキャパシターを配設することが最も効果的である。
【0131】
そこで、この第4アクティブキャパシター回路装置10Dでは、上述したように、高電位側配線13と低電位側配線14との間に第2キャパシター70が配設されている。具体的には、第2キャパシター70には、10uF程度の高周波特性に優れる積層セラミックコンデンサが用いられている。
【0132】
そして、第2キャパシター70は、キャパシターを構成する複数の素子を直列にすることなく、1つの素子で構成されている。複数の素子を直列に配置すると、これらのインピーダンスが直列になるので、ノイズ抑制効果の点で不利がある。従って、1つの素子で第2キャパシター70を構成することはノイズ抑制の点で優れる。
【0133】
第2キャパシター70はまた、高電位側配線13と低電位側配線14との間を直接かつ最短距離で接続するのが好ましい。上述した第1アクティブキャパシター回路装置10Aでは、スイッチング素子21,22などが介在する。そのため、そのインピーダンスにより、高い周波数領域におけるノーマルモードノイズの低減効果が小さく、効果的でない。
【0134】
第2キャパシター70が、正極側配線5及び負極側配線6に寄生する寄生インダクタンスと共振することにより、大きな共振電流が流れ得る。この現象は、第2キャパシター70の静電容量Cと寄生インダクタンスLから求められる共振周波数が、インバータ2のキャリア周波数よりも高い場合に現れる。
【0135】
従って、第2キャパシター70の静電容量Cの下限値は制限するのが好ましい。具体的には、寄生インダクタンスLは5μH程度である。そして、キャリア周波数fcは1/(2×PI×√(L×C))である。キャリア周波数fcが10KHzの時には静電容量C=50μFであるから、第2キャパシター70の静電容量Cは、その50μFよりも十分に大きい値、例えば200μF程度に設定するのが好ましい。
【0136】
第2キャパシター70の静電容量Cが大きくなると、正極側配線5に発生するリップル電圧も低くなる。その結果、双方向電力変換部20から入出力する電流も小さくなるので、双方向電力変換部20が有するキャパシター25は、その静電容量を小さくできる。
【0137】
それにより、第4アクティブキャパシター回路装置10Dにおいても、第2キャパシター70と双方向電力変換部20が有するキャパシター25の静電容量値の合計を330μF程度にすれば、1.4Vpp程度のリップル電圧を実現できる。従って、第4アクティブキャパシター回路装置10Dも、上述した第1アクティブキャパシター回路装置10Aと同様に、従来の静電容量の約1/10のキャパシターで、1.4Vpp以下のリップル電圧を抑制できる
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0138】
例えば、上述した各形態では、インバータとアクティブキャパシター回路装置とを分離して構成した。しかし、アクティブキャパシター回路装置はインバータに内蔵してもよい。
【0139】
双方向電力変換部は開示した構成に限らない。例えば、スイッチングキャパシター方式等、様々な構成が適用可能である。制御部も開示した構成に限らない。例えば、公知のマイコンを用いたデジタル演算等、様々な構成が適用可能である。三角波信号の周波数の設定、微分回路のカットオフ周波数の決定などは適宜変更できる。
【0140】
開示する技術は、車載用のインバータシステムに好適であるが、それに限らない。リップルを伴う直流電源の配線があれば適用できる。
【符号の説明】
【0141】
1 インバータシステム
2 インバータ
3 直流電源
5 正極側配線
6 負極側配線
10A アクティブキャパシター回路装置
11 高電位側端子
12 低電位側端子
13 高電位側配線
14 低電位側配線
20 双方向電力変換部
21 トップ側スイッチング素子
22 ボトム側スイッチング素子
23 ノットゲート
24 インダクター
25 キャパシター
26 ハーフブリッジ回路
27 ボトム側中継配線
28 LC直列回路
29 ボトム側ゲート配線
30 トップ側ゲート配線
33 制御部
34 オペアンプ
35 コンパレータ
36 微分回路
37 リファレンス電源
38 三角波信号
40 電流検出器
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D