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特開2024-173487ガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173487
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/48 20060101AFI20241205BHJP
   C10J 3/46 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C10J3/48
C10J3/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091933
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高島 竜平
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 康平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章悟
(72)【発明者】
【氏名】武田 茂賢
(57)【要約】
【課題】ガス化炉の酸素比の上昇を抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができるガス化炉設備を提供する。
【解決手段】ガス化炉を備えるガス化炉設備であって、制御装置は、(a)燃料供給ラインの第1位置と燃料供給ラインにおける第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)ガス化炉に炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)ガス化炉に供給する炭素含有固体燃料の流量の設定値と燃料供給ラインにおける炭素含有固体燃料の実流量を演算した実流量演算値との差分、の何れかに基づいて、コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有固体燃料と酸化剤とを用いて可燃性ガスを生成するためのガス化炉と、
前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料供給ラインと、
前記ガス化炉のコンバスタ部に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給ラインと、
前記酸化剤供給ラインに設けられ、前記ガス化炉の前記コンバスタ部へ供給する前記酸化剤の流量であるコンバスタ酸化剤流量を調整するためのコンバスタ酸化剤流量調整装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
(a)前記燃料供給ラインの第1位置と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量を演算した実流量演算値との差分、の何れかに基づいて、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、ガス化炉設備。
【請求項2】
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項1に記載のガス化炉設備。
【請求項3】
前記コンバスタ部には、前記酸化剤と前記燃料供給ラインから供給された前記炭素含有固体燃料とを混合するバーナが設けられており、
前記バーナは、フローノズルを含み、
前記第1位置は、前記バーナにおける前記フローノズルの上流側の位置であり、前記第2位置は、前記バーナにおける前記フローノズルの下流側の位置である、請求項2に記載のガス化炉設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記第1指令値に負の補正値を加算した第2指令値を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項2に記載のガス化炉設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項4に記載のガス化炉設備。
【請求項6】
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を前記第2指令値に基づいて所定時間制御し、前記所定時間の経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項4に記載のガス化炉設備。
【請求項7】
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を前記第2指令値に基づいて制御し、前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項4に記載のガス化炉設備。
【請求項8】
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ラインと、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する、請求項2に記載のガス化炉設備。
【請求項9】
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する、請求項2に記載のガス化炉設備。
【請求項10】
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する、請求項1に記載のガス化炉設備。
【請求項11】
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記第1指令値に負の補正値を加算した第2指令値を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項10に記載のガス化炉設備。
【請求項12】
前記制御装置は、前記切替信号を検出しない場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項11に記載のガス化炉設備。
【請求項13】
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を前記第2指令値に基づいて所定時間制御し、所定時間の経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項11に記載のガス化炉設備。
【請求項14】
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ラインと、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する、請求項10に記載のガス化炉設備。
【請求項15】
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する、請求項10に記載のガス化炉設備。
【請求項16】
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する、請求項1に記載のガス化炉設備。
【請求項17】
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記第1指令値に負の補正値を加算した第2指令値を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項16に記載のガス化炉設備。
【請求項18】
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項17に記載のガス化炉設備。
【請求項19】
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を前記第2指令値に基づいて所定時間制御し、所定時間経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成された、請求項17に記載のガス化炉設備。
【請求項20】
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ラインと、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する、請求項17に記載のガス化炉設備。
【請求項21】
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する、請求項16に記載のガス化炉設備。
【請求項22】
請求項1乃至21の何れか1項に記載のガス化炉設備と、
前記ガス化炉で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンから排出されたタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、
前記ガスタービンおよび/または前記蒸気タービンの回転駆動に連結された発電機と、
を備える、ガス化複合発電設備。
【請求項23】
ガス化炉設備の運転方法であって、
前記ガス化炉設備は、
炭素含有固体燃料と酸化剤とを用いて可燃性ガスを生成するためのガス化炉と、
前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料供給ラインと、
前記ガス化炉のコンバスタ部に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給ラインと、
前記酸化剤供給ラインに設けられ、前記ガス化炉の前記コンバスタ部へ供給する前記酸化剤の流量であるコンバスタ酸化剤流量を調整するためのコンバスタ酸化剤流量調整装置と、
を備え、
前記運転方法は、
(a)前記燃料供給ラインの第1位置と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量を演算した実流量演算値との差分、の何れかに基づいて、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するステップを備える、ガス化炉設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炉内で燃料灰をスラグとして溶融処理するガス化炉では、微粉炭やバイオマス、廃棄物やチャー等が燃料として供給ホッパ等から搬送され、バーナにて周囲から空気又は酸素が投入されることで燃焼による高温雰囲気の確立と、理論酸素比以下の雰囲気でのガス化反応が進行される。上記反応が進行するガス化炉は、一般に周囲を水冷管から成る周壁管で構成される。また、その表面は耐火材もしくは連続流下してくる溶融スラグで通常は覆われている。
【0003】
ガス化反応させるために固体燃料量と酸素量の比率は理論酸素比よりも低い条件となるよう設定されガス化炉に通気される。しかし、それら固体燃料の搬送過程(ホッパからの排出、ストレーナの通過、分岐部や昇り/下り配管の通過等)や制御弁挙動、途中投入されるガス、分岐、供給ホッパ側の状態変化(保有量、切替)等により、比率が経時的に変化しうる。上記の燃料量と酸素量の比率が非定常的に変化することで、ガス化炉の酸素比が変動し、ガス温度が高い状態と低い状態を繰り返し変動することが生じうる。ガス温度が極端に高い状態に達すると、周壁水冷管に熱負荷変動とそれに伴う熱応力が生じ、管の損傷に繋がる可能性がある。また、水冷管の表面には、運転初期や安定条件下では溶融スラグや耐火材が強固に保持されているが、酸素比が変動してガス温度が高い状態となると、これらの一部が溶け出して薄くなったり、剥離及び脱落したりすることで、上記熱応力及び腐食の進行が顕著になる可能性がある。
【0004】
燃料搬送系統の流量調節弁によって流量を安定化させる必要があるが、制御対象である燃料流量自体は密度のバラつきを含んだ微粉燃料という固気二層流の物質であり、この燃料流量を燃料流量調節弁だけで一定に保つことは困難である。
【0005】
特許文献1には、負荷変動に対してガス化炉出口ガス温度の変動を抑えて安定したスラグ排出を維持することを目的とした、石炭ガス化装置の自己学習ファジィ制御方法が開示されている。具体的には、石炭と酸素を供給してガスを生成する石炭ガス化装置の制御方法であって、所定の酸素/石炭比に基づき石炭供給量デマンドに対する酸素供給量デマンドを求め、該酸素供給量デマンドを、ガス化炉出口ガス温度と該出口ガス温度設定値との間の偏差及び該偏差の変化率を用いて自己学習ファジィ制御器により補正して、ガス化炉に供給する酸素量を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-146366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、ガス化炉出口ガス温度と該出口ガス温度設定値との間の偏差及び該偏差の変化率に基づいてガス化炉に供給する酸素量を決定しているため、ガス化炉内の酸素比が上昇してガス温度が高い状態となってからガス化炉に供給する酸素量を減少させる制御を行うこととなる。このため、溶融スラグ等の剥離及び脱落を抑制する効果は限定的であり、ガス化炉に生じる熱疲労や腐食を抑制する効果も限定的である。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができるガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るガス化炉設備は、
炭素含有固体燃料と酸化剤とを用いて可燃性ガスを生成するためのガス化炉と、
前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料供給ラインと、
前記ガス化炉のコンバスタ部に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給ラインと、
前記酸化剤供給ラインに設けられ、前記ガス化炉のコンバスタ部へ供給する前記酸化剤の流量であるコンバスタ酸化剤流量を調整するためのコンバスタ酸化剤流量調整装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
(a)前記燃料供給ラインの第1位置と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量を演算した実流量演算値との差分、の何れかに基づいて、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成され。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができるガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るガス化炉101を適用した石炭ガス化複合発電設備10の概略構成図である。
図2図1に示した石炭ガス化複合発電設備10におけるガス化炉101の縦断面及びその周囲の構成の一例を示す図であり、一実施形態に係るガス化炉設備40を示している。
図3図2に示した制御装置38のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の一例を示す図である。
図5図4に示したガス化炉設備40における制御装置38の制御の一例を示すフロー図である。
図6】比較形態におけるコンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116の酸素比、コンバスタ空気流量、コンバスタ部116の微粉燃料流量、及び、差圧ΔPの時系列変化を示している。
図7図4及び図5を用いて説明した実施形態におけるコンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116の酸素比、コンバスタ空気流量、コンバスタ部116の微粉燃料流量、及び、差圧ΔPの時系列変化を示している。
図8図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の他の一例を示す図である。
図9図2に示した制御装置38の制御の他の一例を示すフロー図である。
図10図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の更に他の一例を示す図である。
図11図10に示した制御装置38の制御の一例を示すフロー図である。
図12図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の更に他の一例を示す図である。
図13図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の更に他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の一実施形態に係るガス化炉101を適用した石炭ガス化複合発電設備10の概略構成図である。
以降の説明では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0014】
(石炭ガス化複合発電設備)
本実施形態に係るガス化炉101が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10は、空気を主とする酸化剤として用いており、ガス化炉101において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉101で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、実施形態1の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。なお、本実施形態では空気燃焼方式として説明するが、酸素を主とする酸化剤を用いる酸素燃焼方式(酸素吹き)としても良い。ガス化炉101に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0015】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10は、図1に示すように、給炭設備11と、ガス化炉101と、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0016】
給炭設備11は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉燃料を製造する。給炭設備11で製造された微粉燃料は、給炭ライン11a出口で、後述する空気分離設備42から供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉101へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5体積%以下に制限されるものではない。
【0017】
ガス化炉101は、給炭設備11で製造された微粉燃料が供給されると共に、チャー回収設備15で回収されたチャー(微粉燃料の未反応分と灰分)をエネルギーとして再利用する目的として供給されている。
【0018】
また、ガス化炉101には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉101に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42と給炭設備11からの給炭ライン11aとが接続された後、燃料供給ライン12としてガス化炉101と接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もチャー回収設備15からのチャー戻しライン46が接続された後、チャー供給ライン13としてガス化炉101に接続されている。更に、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉101において酸化剤(空気、酸素)として利用される。
【0019】
ガス化炉101は、例えば、2段噴流床形式で構成されており、内部に供給された微粉燃料およびチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉101は、石炭や灰分(石炭灰)などを外部に排出する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉101には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給する第1生成ガスライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、第1生成ガスライン49に不図示のシンガスクーラ(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備15に供給してもよい。
【0020】
チャー回収設備15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉101で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0021】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中には硫黄化合物(HSなど)が含まれているため、ガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄化合物を除去回収して、石膏等として有効利用する。
【0022】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉101に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0023】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。なお、蒸気タービン18とガスタービン17は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動させても良い。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、排熱回収ボイラ20への給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。
【0024】
そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に給水ライン72が設けられ、給水ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101の不図示のシンガスクーラで生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。従って、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、排気ガス浄化設備74を備えている。
【0025】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10の動作について説明する。
【0026】
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備11に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備11において細かい粒子状に粉砕されることで微粉燃料となる。給炭設備11で製造された微粉燃料は、空気分離設備42から第1窒素供給ライン43を流通して供給される窒素により燃料供給ライン12を流通してガス化炉101に供給される。
【0027】
また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から第2窒素供給ライン45を流通して供給される窒素によりチャー供給ライン13を流通してガス化炉101に供給される。更に、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉101に供給される。
【0028】
ガス化炉101では、供給された微粉燃料及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉燃料及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉101から第1生成ガスライン49を通って排出され、チャー回収設備15に送られる。
【0029】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉101に戻されてリサイクルされる。
【0030】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスを燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0031】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと排熱回収ボイラ20への給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0032】
その後、排気ガス浄化設備74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0033】
(ガス化炉設備)
図2は、図1に示した石炭ガス化複合発電設備10におけるガス化炉101及びその周囲の構成の一例を示す図であり、一実施形態に係るガス化炉設備40を示している。図2に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、上述した給炭設備11、ガス化炉101及びチャー回収設備15とともに、制御装置38を備えており、給炭設備11、ガス化炉101、チャー回収設備15及び制御装置38は、ガス化炉設備40を構成する。以下、図2に示すガス化炉設備40の各構成について説明する。
【0034】
(給炭設備)
図2に示すように、給炭設備11は、微粉燃料ビン24、及び複数の燃料ホッパ251~253を備える。
【0035】
給炭設備11は、石炭(原炭)を不図示の石炭ミルなどで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉燃料を製造し、製造された微粉燃料は微粉燃料ビン24に一旦貯留される。図示する例では、複数の燃料ホッパ251~253は、微粉燃料ビン24に接続される3つの燃料ホッパ251,252,253を含み、微粉燃料ビン24との圧力差を利用して微粉燃料ビン24から微粉燃料を供給される。3つの燃料ホッパ251,252,253の各々は、ガス化炉101との圧力差を利用して燃料供給ライン12を介してガス化炉101に微粉燃料を供給可能に構成されている。
【0036】
(ガス化炉)
図2に示すように、ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉燃料及び酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(炉壁)111とを有している。
【0037】
そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111内部の空間154において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0038】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その外壁面が圧力容器110の内壁面と対向して設けられている。
【0039】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間154と外部空間(アニュラス部115)に分離する。ガス化炉壁111は、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、貯留水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が貯留水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、各種バーナが挿入されている。
【0040】
コンバスタ部116は、本実施形態では、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、炉内上方側から順に設けられた、例えば、複数のチャーバーナ125、複数のコンバスタ系微粉燃料バーナ126が設けられ、コンバスタより下方にある起動用燃焼室には不図示の複数のスラグ溶融バーナ、点火トーチ及び軽油バーナからなる燃焼装置が配置されている。スラグ溶融バーナは、生成された固化スラグを溶融するためのものである。スラグ溶融バーナの先端は、固化したスラグを溶融除去するために使用される。複数の点火トーチ及び軽油バーナは、ガス化炉101の起動に使用されるものである。コンバスタ部116で微粉燃料及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0041】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉燃料を供給し部分酸化燃焼させて、微粉燃料をガス化し分解することによって揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)である生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のリダクタ系微粉燃料バーナ(バーナ)127からなる燃焼装置が配置されている。
【0042】
ガス化炉101には、ガス化炉101の内部の圧力(図示する例ではガス化炉壁111の内部の圧力)を計測するための圧力計119が設けられている。
(燃料供給ライン)
図2に示すように、燃料供給ライン12は、複数の上流側燃料ライン部12a1~12a3、合流部12b、中間ライン部12c、分岐部12d、コンバスタ側燃料ライン部12e及びリダクタ側燃料ライン部12fを含む。
【0043】
複数の上流側燃料ライン部12a1,12a2,12a3の上流端は、それぞれ、複数の燃料ホッパ251,252,253に接続している。複数の上流側燃料ライン部12a1,12a2,12a3の下流端は合流部12bを介して中間ライン部12cの上流端に接続している。中間ライン部12cの下流端は分岐部12dを介してコンバスタ側燃料ライン部12eの上流端及びリダクタ側燃料ライン部12fの上流端に接続している。
【0044】
上流側燃料ライン部12a1には、燃料ホッパ251からの微粉燃料の排出量を調整する排出弁261が設けられており、上流側燃料ライン部12a2には、燃料ホッパ252からの微粉燃料の排出量を調整する排出弁262が設けられており、上流側燃料ライン部12a3には、燃料ホッパ253からの微粉燃料の排出量を調整する排出弁263が設けられている。
【0045】
複数の排出弁261~263は、ガス化炉101に微粉燃料を供給する燃料ホッパ251~253を切り替え可能な切替装置27を構成する。切替装置27は、後述の制御装置38からの切替信号Scに基づいて、複数の排出弁261~263の開閉状態を切り替えて複数の燃料ホッパ251~253のうち選択された燃料ホッパのみをガス化炉101に連通させることにより、ガス化炉101に微粉燃料を供給する燃料ホッパ251~253を切り替えるように構成されている。
【0046】
コンバスタ側燃料ライン部12eには、燃料供給ライン12からコンバスタ系微粉燃料バーナ126を介してコンバスタ部116に供給する微粉燃料の流量を調整可能な燃料流量調整弁28が設けられている。リダクタ側燃料ライン部12fには、燃料供給ライン12からリダクタ系微粉燃料バーナ127を介してリダクタ部118に供給する微粉燃料の流量を調整可能な燃料流量調整弁29が設けられている。燃料流量調整弁28及び燃料流量調整弁29は、燃料供給ライン12からガス化炉101へ供給する燃料の流量(ガス化炉101への微粉燃料の供給量)である燃料流量Fを調整するための燃料流量調整装置36を構成する。
【0047】
コンバスタ側燃料ライン部12eを通った微粉燃料は、複数のコンバスタ系微粉燃料バーナ126を介してガス化炉101のコンバスタ部116に供給される。リダクタ側燃料ライン部12fを通った微粉燃料は、複数のリダクタ系微粉燃料バーナ127を介してガス化炉101のリダクタ部118に供給される。
【0048】
(圧縮空気供給ライン)
図2に示すように、酸化剤供給ラインとしての圧縮空気供給ライン41は、上流側空気ライン部41a、分岐部41b、コンバスタ側空気ライン部41c及びチャー供給側空気ライン部41dを含む。
【0049】
上流側空気ライン部41aの下流端は、分岐部41bを介してコンバスタ側空気ライン部41cの上流端及びチャー供給側空気ライン部41dの上流端にそれぞれ接続しており、コンバスタ側空気ライン部41cの下流端はコンバスタ系微粉燃料バーナ126に接続している。チャー供給側空気ライン部41dの下流端はチャーバーナ125に接続している。したがって、圧縮空気供給ライン41は、コンバスタ側空気ライン部41c及びコンバスタ系微粉燃料バーナ126を介してコンバスタ部116に圧縮空気を供給し、チャー供給側空気ライン部41d及びチャーバーナ125を介してコンバスタ部116に圧縮空気を供給する。
【0050】
コンバスタ側燃料ライン部12eからコンバスタ系微粉燃料バーナ126に供給された微粉燃料は、コンバスタ系微粉燃料バーナ126でコンバスタ側空気ライン部41cから供給される空気と混合されてコンバスタ部116で部分燃焼する。チャー供給ライン13からチャーバーナ125に供給されたチャーは、チャーバーナ125でチャー供給側空気ライン部41dから供給される空気と混合されてコンバスタ部116で部分燃焼する。
【0051】
コンバスタ側空気ライン部41cには、圧縮空気供給ライン41からコンバスタ系微粉燃料バーナ126を介してコンバスタ部116に供給する空気(酸化剤)の流量を調整可能な空気流量調整弁54(酸化剤流量調整弁)が設けられている。チャー供給側空気ライン部41dには、圧縮空気供給ライン41からチャーバーナ125を介してコンバスタ部116に供給する空気(酸化剤)の流量を調整可能な空気流量調整弁55(酸化剤流量調整弁)が設けられている。空気流量調整弁54及び空気流量調整弁55は、圧縮空気供給ライン41からコンバスタ部116へ供給する空気の流量であるコンバスタ空気流量(以下、単に「コンバスタ空気流量」と記載する。)を調整するためのコンバスタ空気流量調整装置56(コンバスタ酸化剤流量調整装置)を構成する。
【0052】
(制御装置)
制御装置38は、ガス化炉101の要求負荷を示すガス化炉負荷指令に基づいて燃料流量調整装置36及びコンバスタ空気流量調整装置56を制御する。ガス化炉負荷指令は、例えばガス化炉101の目標圧力及び発電機19の出力デマンド等に基づいて制御装置38が算出した値であってもよいし、制御装置38の外部から与えられた値(例えば操作者によって設定された値等)であってもよい。また、ガス化炉負荷指令は、例えばガス化炉101の目標圧力と圧力計119によって計測したガス化炉101の内部の圧力との偏差に応じて設定された値であってもよい。
【0053】
制御装置38は、ガス化炉負荷指令が大きくなるにつれて、燃料流量調整弁28,29の各々の弁開度を大きくして燃料供給ライン12からガス化炉101のコンバスタ部116へ供給する微粉燃料の流量を大きくする。また、制御装置38は、ガス化炉負荷指令が大きくなるにつれて、空気流量調整弁54の弁開度を大きくして圧縮空気供給ライン41からコンバスタ部116へ供給する空気の流量を大きくする。制御装置38の機能の詳細については後述する。制御装置38は、燃料供給ライン12からガス化炉101へ供給する微粉燃料の流量の指令値Fcをガス化炉負荷指令に基づいて決定し、決定した指令値Fcに基づいて燃料流量調整弁28,29の各々の弁開度を制御する。また、制御装置38は、コンバスタ空気流量の指令値Ac1(第1指令値)をガス化炉負荷指令に基づいて決定し、決定した指令値Ac1に基づいて空気流量調整弁54,55の各々の弁開度を制御する。
【0054】
図3は、図2に示した制御装置38のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3に示すように、制御装置38は、例えばプロセッサ76、RAM(Random Access Memory)77、ROM(Read Only Memory)78、HDD (Hard Disk Drive)79、入力I/F80、及び出力I/F81を含み、これらがバス82を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。また制御装置38は、制御装置38の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する制御装置38における各部の機能は、例えばROM78に保持されるプログラムをRAM77にロードしてプロセッサ76で実行するとともに、RAM77やROM78におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。制御装置38を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。
【0055】
(燃料供給ラインの2つの位置の差圧に基づく制御)
図4は、図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の一例を示す図である。
幾つかの実施形態では、例えば図4に示すように、制御装置38は、燃料供給ライン12の第1位置s1と燃料供給ライン12における第1位置s1より下流側の第2位置s2との差圧に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56(より詳細には空気流量調整弁54及び空気流量調整弁55の各々の弁開度)を制御することにより、圧縮空気供給ライン41からコンバスタ部116へ供給する空気の流量であるコンバスタ空気流量を調整する。
【0056】
図4に示す例示的形態では、コンバスタ系微粉燃料バーナ126は、フローノズル130を含み、上記第1位置s1は、コンバスタ系微粉燃料バーナ126におけるフローノズル130の上流側の位置であり、上記第2位置s2は、コンバスタ系微粉燃料バーナ126におけるフローノズル130の下流側の位置である。図4に示すガス化炉設備40は、コンバスタ系微粉燃料バーナ126の内部におけるフローノズル130の上流側の第1位置s1の圧力P1を計測する圧力計90と、コンバスタ系微粉燃料バーナ126の内部におけるフローノズル130の下流側の第2位置s2の圧力P2を計測する圧力計92とを含む。
【0057】
図4に示す例示的形態では、制御装置38は、圧力計90によって計測した圧力P1と圧力計92によって計測した圧力P2との差圧ΔP(=P1-P2)が閾値ΔPthを下回った場合に、コンバスタ酸化剤流量を減少させるように、コンバスタ空気流量調整装置56を制御する。具体的には、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、空気流量調整弁54及び空気流量調整弁55の少なくとも一方の開度を減少させる(空気流量調整弁54及び空気流量調整弁55の少なくとも一方を閉じる方向に制御する)。制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、空気流量調整弁54の開度を維持したまま空気流量調整弁55の弁開度を減少させてもよいし、空気流量調整弁55の開度を維持したまま空気流量調整弁54の弁開度を減少させてもよいし、空気流量調整弁55の開度及び空気流量調整弁54の弁開度の両方を減少させてもよい。また、上記閾値ΔPthは、例えば図1に示したガス化複合発電設備10の発電デマンド(すなわち発電機19の出力デマンド)やガス化炉101の目標圧力等に応じて変化する値であってもよく、制御装置38は、例えばガス化複合発電設備10の発電デマンドが大きくなるにつれて閾値ΔPthを大きくしてもよいし、ガス化炉101の目標圧力が大きくなるにつれて閾値ΔPthを大きくしてもよい。
【0058】
図5は、図4に示した構成における制御装置38の制御の一例を示すフロー図である。
図5に示すように、S101において、制御装置38は、ガス化炉101の目標圧力及び発電機19の出力デマンドに基づいてガス化炉負荷指令を算出し、ガス化炉負荷指令に基づいてコンバスタ空気流量の第1指令値Ac1を算出する。すなわち、制御装置38は、ガス化炉101の目標圧力及び発電機19の出力デマンドに基づいてコンバスタ空気流量の第1指令値Ac1を算出する。
【0059】
S102aにおいて、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回ったか否かを判定する。S102aにおいて、上記差圧ΔPがΔ閾値Pthを下回っていないと判定した場合には、S103において、制御装置38は、S101で算出した第1指令値Ac1に基づいて、コンバスタ空気流量調整装置56を制御する。S103において、制御装置38は、例えば、第1指令値Ac1が示すコンバスタ空気流量に1未満の所定の比率r1をかけて得られる空気流量に基づいて空気流量調整弁54の弁開度を制御し、第1指令値Ac1が示すコンバスタ空気流量に1未満の所定の比率r2(例えばr2=1-r1)をかけて得られる空気流量に基づいて空気流量調整弁55の弁開度を制御してもよい。
【0060】
S102aにおいて、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回っていると判定した場合には、S104において、制御装置38は、S101で算出した第1指令値Ac1に負の値を有する補正値αを加算した第2指令値Ac2を算出する。すなわち、S104において、制御装置38は、下記式(a)に基づいて、コンバスタ空気流量の第2指令値Ac2を算出する。
Ac2=Ac1+α ・・・(a)
ここで、αはα<0を満たし、制御装置38は、差圧ΔPが0に近づくにつれて補正値αの絶対値が大きくなるように補正値αを算出してもよい。
【0061】
S105において、制御装置38は、第2指令値Ac2に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56を制御する。制御装置38は、例えば、第2指令値Ac2が示すコンバスタ空気流量に1未満の所定の比率r1をかけて得られる空気流量に基づいて空気流量調整弁54の弁開度を制御し、第2指令値Ac2が示す空気流量に1未満の所定の比率r2(例えばr2=1-r1)をかけて得られる空気流量に基づいて空気流量調整弁55の弁開度を制御してもよい。
【0062】
なお、制御装置38は、差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、第2指令値Ac2に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56を所定時間制御し、該所定時間の経過後に第1指令値Ac1に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56を制御してもよい。また、制御装置38は、差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、差圧ΔPが閾値ΔPthを上回るまで、第2指令値Ac2に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56を制御し、差圧ΔPが閾値ΔPthを上回った場合に、第1指令値Ac1に基づいてコンバスタ空気流量調整装置56を制御してもよい。
【0063】
ここで、図4及び図5を用いて説明した実施形態の作用効果について、比較形態との対比に基づいて説明する。比較形態の基本的な構成は図4に示した構成と同一であるが、比較形態では、制御装置38は、上記差圧ΔPによらずに第1指令値Ac1に基づいてコンバスタ空気流量を制御し、第2指令値Ac2に基づくコンバスタ空気流量の制御は行わない。
【0064】
図6は、比較形態におけるコンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116の酸素比、コンバスタ空気流量、コンバスタ部116の微粉燃料流量、及び、差圧ΔPの時系列変化を示している。図7は、図4及び図5を用いて説明した実施形態におけるコンバスタ部116のメタル温度、コンバスタ部116の酸素比、コンバスタ空気流量、コンバスタ部116の微粉燃料流量、及び、差圧ΔPの時系列変化を示している。
【0065】
図6に示すように、比較形態では、コンバスタ部116への微粉燃料の流量が一時的に落ち込む期間(例えば時刻t1から時刻t2までの期間、時刻t3から時刻t4までの期間及び時刻t5から時刻t6までの期間)では、コンバスタ部116の酸素比が上昇してメタル温度が高くなる。また、図6に示すように、比較形態では、コンバスタ部116への微粉燃料の流量が一時的に落ち込む期間において、差圧ΔPが閾値ΔPthを下回っているものの、コンバスタ空気流量は、上述の第1指令値Ac1に基づいて制御されている。
【0066】
これに対し、図7に示すように、上記実施形態では、コンバスタ部116への微粉燃料の流量が一時的に落ち込む期間(例えば時刻t1から時刻t2までの期間、時刻t3から時刻t4までの期間及び時刻t5から時刻t6までの期間)では、差圧ΔPthが閾値ΔPthを下回っているため、制御装置38が微粉燃料の一時的な落ち込みを検知してコンバスタ空気流量を減少させている。このため、比較形態と比較して、差圧ΔPthが閾値ΔPthを下回っている期間において、コンバスタ部116の酸素比の変動(酸素比の上振れ)が抑制され、コンバスタ部116の内部のガス温度の上昇が抑制されてコンバスタ部116のメタル温度の上昇が抑制される。したがって、ガス化炉101の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉101に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0067】
また、図4に示した構成では、コンバスタ系微粉燃料バーナ126におけるフローノズル130の上流側の第1位置s1と下流側の第2位置s2との差圧ΔPに基づいてコンバスタ酸化剤流量を制御することによって、当該差圧ΔPの変化が燃料供給ライン12の下流端に伝搬するまでのタイムラグを0に近付けることができる。したがって、差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、上記タイムラグを考慮せずにコンバスタ酸化剤流量を減少させることができ、コンバスタ部116の内部の酸素比の上昇を容易に抑制することができる。
【0068】
なお、図4等に示した実施形態では、コンバスタ系微粉燃料バーナ126におけるフローノズル130の上流側の位置と、コンバスタ系微粉燃料バーナ126におけるフローノズル130の下流側の位置との差圧ΔPに基づいてコンバスタ空気流量が制御されたが、差圧ΔPを計測する位置はこれに限らない。
【0069】
他の実施形態では、例えば図8に示すように、制御装置38は、中間ライン部12cの第1位置s1と、中間ライン部12cにおける第1位置より下流側の第2位置s2との差圧に基づいてコンバスタ空気流量を制御してもよい。また、更に他の実施形態では、制御装置38は、中間ライン部12cの第1位置と、コンバスタ側燃料ライン部12eの第2位置との差圧に基づいてコンバスタ空気流量を制御してもよい。また、更に他の実施形態では、制御装置38は、コンバスタ側燃料ライン部12eの第1位置と、コンバスタ側燃料ライン部12eにおける第1位置より下流側の第2位置との差圧に基づいてコンバスタ空気流量を制御してもよい。図8に示す例示的形態の場合は、制御装置38は、差圧ΔPの変化が燃料供給ライン12の下流端に伝搬するまでのタイムラグを考慮して、コンバスタ空気流量を減少させる期間(すなわち、コンバスタ空気流量を第2指令値Ac2に基づいて制御する期間)を決定してもよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、例えば図4又は図8に示したガス化炉設備40において、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、ガス化炉101全体への空気流量を減少させるようにコンバスタ空気流量調整装置56を制御してもよい。この場合、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、ガス化炉101の酸素比が一定となるように、コンバスタ空気流量を減少させてもよい。
【0071】
(燃料ホッパの切替信号に基づく制御)
図9は、図2に示した制御装置38の制御の他の一例を示すフロー図である。
図9に示すフローチャートにおいて、S101、S103、S104及びS105の内容は、それぞれ、図5を用いて説明したS101、S103、S104及びS105の内容と同一であるため、ここでは説明を省略し、図5に示すフローとは異なるS102bについて説明する。
【0072】
図9に示すS102bでは、ガス化炉101に微粉燃料を供給する燃料ホッパ251~253を切り替えるための切替信号Scを制御装置38が検出したか否かを制御装置38が判定する。S102bにおいて、切替信号Scを検出していないと制御装置38が判定した場合には、S103に移行し、切替信号Scを検出したと制御装置38が判定した場合には、S104に移行する。
【0073】
なお、制御装置38は、制御装置38自体が切替信号Scを生成することをもって切替信号Scを検出してもよいし、制御装置38の外部で生成された切替信号Scを受信することで切替信号Scを検出してもよい。
【0074】
また、図9に示す例示的形態では、制御装置38は、切替信号Scを検出してから燃料ホッパ251~253の切り替えに伴う燃料流量の一時的な落ち込みが燃料供給ライン12の下流端に伝搬するまでのタイムラグを考慮して、コンバスタ空気流量を減少させる期間を決定してもよい。
【0075】
図9に示す例示的形態では、燃料ホッパ251~253を切り替える際にガス化炉101への微粉燃料の流量が当該切り替えに伴って一時的に低下することを考慮し、制御装置38は、切替信号Scを検出した場合に微粉燃料の流量の一時的な落ち込みを検知してコンバスタ空気量を減少させる。これにより、図4及び図5等を用いて説明した実施形態と同様に、コンバスタ部116の内部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部116の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。したがって、ガス化炉101の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉101に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、例えば図9に示したガス化炉設備40において、制御装置38は、上記切替信号Scを検出した場合に、ガス化炉101全体への空気流量を減少させるようにコンバスタ空気流量調整装置56を制御してもよい。この場合、制御装置38は、上記切替信号Scを検出した場合に、ガス化炉101の酸素比が一定となるように、コンバスタ空気流量を減少させてもよい。
【0077】
(燃料流量の設定値と実流量演算値との差に基づく制御)
図10は、図2に示したガス化炉設備40の詳細構成の他の一例を示す図である。図11は、図10に示した制御装置38の制御の一例を示すフロー図である。
図10に示す例示的形態では、ガス化炉設備40は、密度計94及び流速計96を含む。図示する例示的形態では、密度計94は、中間ライン部12cに設けられており、燃料供給ライン12を流れる微粉燃料の密度を中間ライン部12c内の位置で計測するように構成されている。また、図示する例示的形態では、流速計96は、燃料供給ライン12を流れる微粉燃料の流速を中間ライン部12c内の位置で計測するように構成されている。
【0078】
図11に示すフローチャートにおいて、S101、S103、S104及びS105の内容は、それぞれ、図5を用いて説明したS101、S103、S104及びS105の内容と同一であるため、ここでは説明を省略し、図5に示すフローとは異なるS102cについて説明する。
【0079】
図11に示すS102cでは、制御装置38は、密度計94で計測した微粉燃料の密度と、流速計96で計測した微粉燃料の流速と、燃料供給ライン12における密度計94及び流速計96が設けられる配管の断面積と、を乗算することで、燃料供給ライン12における微粉燃料の実流量の演算値である実流量演算値Faを算出する。そして、制御装置38は、燃料供給ライン12からガス化炉101に供給する微粉燃料の流量の設定値Fsと、算出した実流量演算値Faとの差分ΔF(=Fs-Fa)を算出する。そして、制御装置38は、算出した差分ΔFが閾値ΔFthを下回っているか否かを判定する。S102cにおいて、差分ΔFが閾値ΔFthを下回っていないと制御装置38が判定した場合には、S103に移行し、差分ΔFが閾値ΔFthを下回っていると制御装置38が判定した場合には、S104に移行する。
【0080】
図10及び図11を用いて説明した実施形態では、実流量演算値Faを密度計94で計測した微粉燃料の密度と流速計96で計測した微粉燃料の流速とに基づいて算出したが、制御装置38は、実流量演算値Faをその他の既知の方法で算出してもよい。例えば、燃料供給ライン12に微粉燃料の流量を検知する不図示の燃料流量計を設けて、燃料流量計で短い時間間隔(例えば数秒~数十秒)で検知した燃料流量を燃料流量計からガス化炉101までの距離(燃料流量計の位置からガス化炉101までの燃料の伝搬時間)に基づいて補正した値を実流量演算値Faとして用いてもよいし、上述の差圧ΔPと上記燃料流量計の計測値との関係に基づいて算出したガス化炉101近傍での燃料流量を実流量演算値Faとして用いてもよい。
【0081】
図10及び図11に示す例示的形態では、制御装置38は、微粉燃料の流量の設定値Fsと実流量演算値Faとの差分ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に微粉燃料の流量の一時的な落ち込みを検知してコンバスタ空気量を減少させる。これにより、図4及び図5等を用いて説明した実施形態と同様に、コンバスタ部116の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部116の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。したがって、ガス化炉101の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉101に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、例えば図10及び図11を用いて説明したガス化炉設備40において、制御装置38は、上記差分ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、ガス化炉101全体への空気流量を減少させるようにコンバスタ空気流量調整装置56を制御してもよい。この場合、制御装置38は、上記差分ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、ガス化炉101の酸素比が一定となるように、コンバスタ空気流量を減少させてもよい。
【0083】
幾つかの実施形態では、図2図4図8、又は図10に示した圧縮空気供給ライン41は、例えば図12に示すように、ガス化炉101のリダクタ部118に圧縮空気を供給するためのリダクタ空気供給ライン41eと、リダクタ空気供給ライン41eに設けられ、ガス化炉101のリダクタ部118に供給する空気の流量であるリダクタ空気流量を調整する空気流量調整弁98(リダクタ等酸化剤流量調整装置)と、を更に含んでいてもよい。リダクタ空気供給ライン41eの下流端はリダクタ系微粉燃料バーナ127に接続している。
【0084】
幾つかの実施形態では、図12に示す制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにリダクタ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。すなわち、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁98の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合において、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、コンバスタ空気流量の減少量とリダクタ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。
【0085】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0086】
幾つかの実施形態では、図12に示す制御装置38は、ガス化炉101に微粉燃料を供給する燃料ホッパ251~253を切り替えるための切替信号Scを制御装置38が検出した場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにリダクタ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。すなわち、制御装置38は、切替信号Scを制御装置38が検出した場合に、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁98の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合において、制御装置38は、切替信号Scを制御装置38が検出した場合に、コンバスタ空気流量の減少量とリダクタ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。
【0087】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、図12に示す制御装置38は、燃料供給ライン12からガス化炉101に供給する微粉燃料の流量の設定値Fsと、実流量演算値Faとの差分ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにリダクタ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。すなわち、制御装置38は、上記差圧ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁98の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合において、制御装置38は、上記差圧ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、コンバスタ空気流量の減少量とリダクタ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁98を制御してもよい。
【0089】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、図2図4図8、又は図10に示した圧縮空気供給ライン41は、例えば図13に示すように、ガス化炉101のスラグホッパ122に圧縮空気を供給するためのスラグホッパ空気供給ライン41fと、スラグホッパ空気供給ライン41fに設けられ、ガス化炉101のスラグホッパ122に供給する空気の流量であるスラグホッパ空気流量を調整する空気流量調整弁99(リダクタ等酸化剤流量調整装置)と、を更に含んでいてもよい。図示する例では、スラグホッパ空気供給ライン41fの下流端は、スラグホッパ122に設けられたバーナ123(例えば軽油バーナ又はスラグ溶融バーナ等)に接続している。
【0091】
幾つかの実施形態では、図13に示す制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにスラグホッパ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。すなわち、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁99の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合、制御装置38は、上記差圧ΔPが閾値ΔPthを下回った場合に、コンバスタ空気流量の減少量とスラグホッパ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。
【0092】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0093】
幾つかの実施形態では、図13に示す制御装置38は、ガス化炉101に微粉燃料を供給する燃料ホッパ251~253を切り替えるための切替信号Scを制御装置38が検出した場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにスラグホッパ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。すなわち、制御装置38が切替信号Scを検出した場合に、制御装置38は、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁99の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合、制御装置38は、切替信号Scを検出した場合に、コンバスタ空気流量の減少量とスラグホッパ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。
【0094】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0095】
幾つかの実施形態では、図13に示す制御装置38は、燃料供給ライン12からガス化炉101に供給する微粉燃料の流量の設定値Fsと、実流量演算値Faとの差分ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、コンバスタ空気流量を減少させるとともにスラグホッパ空気流量を増加させるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。すなわち、制御装置38は、上記差圧ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、空気流量調整弁54,55の少なくとも一方の弁開度を小さくするとともに空気流量調整弁99の弁開度を大きくしてもよい。また、この場合、制御装置38は、上記差圧ΔFが閾値ΔFthを下回った場合に、コンバスタ空気流量の減少量とスラグホッパ空気流量の増加量とが同等となるようにコンバスタ空気流量調整装置56及び空気流量調整弁99を制御してもよい。
【0096】
これにより、コンバスタ部116のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉101全体に供給される空気の流量の変動を抑制することができ、ガス化炉101の圧力の変動を抑制することができる。したがって、発電機19の出力の変動を抑制することができる。
【0097】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0098】
例えば上述した実施形態では、集塵装置51で回収したチャーをガス化炉101で再利用するためのチャー供給ライン13が設けられていたが、チャーをガス化炉101で再利用しない場合には、ガス化炉設備40はチャー供給ライン13を備えていなくてもよい。また、ガス化炉101は、シンガスクーラを備えていなくてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、ガス化炉101に供給する酸化剤の例として、空気分離設備42で空気から分離生成された酸素を含む圧縮空気が用いられたが、ガス化炉101に供給する酸化剤は、酸素を含有するガスであればよく、例えば空気であってもよいし、空気よりも酸素濃度の高いガスであってもよい。
【0100】
また、図4及び図8に示したガス化炉101では、第1位置s1と第2位置s2との差圧ΔPを2つの圧力計を用いて計測したが、他の実施形態では、第1位置s1と第2位置s2との差圧ΔPを1つの差圧計(差圧計測装置)を用いて計測してもよい。なお、図4及び図8に示すガス化炉101では、圧力計90と圧力計92とが差圧ΔPを計測するための差圧計測装置を構成する。
【0101】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0102】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガス化炉設備(例えば上述のガス化炉設備40)は、
炭素含有固体燃料(例えば上述の微粉燃料(石炭))と酸化剤(例えば上述の空気(酸素))とを用いて可燃性ガスを生成するためのガス化炉(例えば上述のガス化炉101)と、
前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料供給ライン(例えば上述の燃料供給ライン12)と、
前記ガス化炉のコンバスタ部(例えば上述のコンバスタ部116)に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給ライン(例えば上述の圧縮空気供給ライン41)と、
前記酸化剤供給ラインに設けられ、前記ガス化炉の前記コンバスタ部へ供給する前記酸化剤の流量であるコンバスタ酸化剤流量(例えば上述のコンバスタ空気流量)を調整するためのコンバスタ酸化剤流量調整装置(例えば上述のコンバスタ空気流量調整装置56)と、
制御装置(例えば上述の制御装置38)と、
を備え、
前記制御装置は、
(a)前記燃料供給ラインの第1位置(例えば上述の第1位置s1)と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置(例えば上述の第2位置s2)との差圧(例えば上述の差圧ΔP)、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパ(例えば上述の燃料ホッパ251~253)を切り替えるための切替信号(例えば上述の切替信号Sc)、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値(例えば上述の設定値Fs)と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値(例えば上述の実流量演算値Fa)との差分(例えば上述の差分ΔF)、の何れかに基づいて、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0103】
本願発明者によれば、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する際には、燃料供給ラインにおける第1位置と第1位置より下流側の第2位置との差圧が低下する。また、燃料ホッパを切り替える際にも、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が当該切り替えに伴って一時的に低下する。また、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する際には、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量の設定値とガス化炉への炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値との差分が低下する。
【0104】
このため、上記(1)に記載のガス化炉設備では、前記燃料供給ラインの第1位置と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値との差分、の何れかに基づいてコンバスタ酸化剤流量調整装置を制御することによって、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する場合にコンバスタ酸化剤流量を減少させることができる。
【0105】
したがって、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0106】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が閾値(例えば上述の閾値ΔPth)を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0107】
上記(2)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0108】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のガス化炉設備において、
前記コンバスタ部には、前記酸化剤と前記燃料供給ラインから供給された前記炭素含有固体燃料とを混合するバーナ(例えば上述のコンバスタ系微粉燃料バーナ126)が設けられており、
前記バーナは、フローノズル(例えば上述のフローノズル130)を含み、
前記第1位置は、前記バーナにおける前記フローノズルの上流側の位置であり、前記第2位置は、前記バーナにおける前記フローノズルの下流側の位置である。
【0109】
上記(3)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部に設けられたバーナにおけるフローノズルの上流側の第1位置と下流側の第2位置との差圧に基づいてコンバスタ酸化剤流量を制御することによって、当該差圧の変化が燃料供給ラインの下流端に伝わるまでのタイムラグを0に近付けることができる。したがって、コンバスタ部に設けられたバーナにおけるフローノズルの上流側の第1位置と下流側の第2位置との差圧が閾値を下回った場合に、上記タイムラグを考慮せずにコンバスタ酸化剤流量を減少させることができ、コンバスタ部の酸素比の上昇を容易に抑制することができる。
【0110】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値(例えば上述の第1指令値Ac1)を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記第1指令値に負の補正値(例えば上述の補正値α)を加算した第2指令値(例えば上述の第2指令値Ac2)を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0111】
上記(4)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉の圧力を目標圧力に基づいて適切に制御することと、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの負荷制御と、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。
【0112】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0113】
仮に、ガス化炉の目標圧力に基づいて算出した第1指令値に対してガス化炉の酸素比を増加させる方向の正の補正値を加算すると、コンバスタ部の内部のガス温度が上昇して熱応力が増大する。このため、上記(5)に記載のように、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を上回った場合には、第1指令値に正の補正値を加算せずに、第1指令値に基づいてコンバスタ酸化剤流量を制御する。すなわち、上記(5)の制御装置は、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を絞る方向の制御のみ行い、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を増加させる方向の制御は行わない。このため、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0114】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を所定時間制御し、前記所定時間の経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0115】
上記(6)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が一時的に減少した場合に、ガス化炉内の酸素比の上昇を効果的に抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0116】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を前記第2指令値に基づいて制御し、前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0117】
上記(7)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉の圧力を目標圧力に基づいて適切に制御することと、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。また、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が一時的に減少した場合に、ガス化炉内の酸素比の上昇を効果的に抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0118】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(7)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ライン(例えば上述のリダクタ空気供給ライン41e又はスラグホッパ空気供給ライン41f)と、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量(例えば上述のリダクタ空気流量又はスラグホッパ空気流量)を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置(例えば上述の空気流量調整弁98又は空気流量調整弁99)と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する。
【0119】
上記(8)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉全体に供給される酸化剤の流量(すなわちコンバスタ酸化剤流量とリダクタ等酸化剤流量の合計)の変動を抑制することができ、ガス化炉の圧力の変動及びガス化炉の出口ガス量の変動を抑制することができる。したがって、例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの出力の変動を抑制することができる。
【0120】
(9)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(7)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記燃料供給ラインにおける前記第1位置と前記第2位置との前記差圧が前記閾値を下回った場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【0121】
上記(9)に記載のガス化炉設備によれば、上記(8)に記載のリダクタ等酸化剤供給ラインを備えていない場合であっても、ガス化炉の酸素比の上昇を効果的に抑制して発熱量の変動を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0122】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【0123】
上記(10)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0124】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値(例えば上述の第1指令値Ac1)を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記第1指令値に負の補正値(例えば上述の補正値α)を加算した第2指令値(例えば上述の第2指令値Ac2)を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0125】
上記(11)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉の圧力を目標圧力に基づいて適切に制御することと、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの負荷制御と、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。
【0126】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記切替信号を検出しない場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0127】
仮に、ガス化炉の目標圧力に基づいて算出した第1指令値に対してガス化炉の酸素比を増加させる方向の正の補正値を加算すると、コンバスタ部の内部のガス温度が上昇して熱応力が増大する。このため、上記(12)に記載のように、前記切替指令が発生していない場合には、第1指令値に正の補正値を加算せずに、第1指令値に基づいてコンバスタ酸化剤流量を制御する。すなわち、上記(12)の制御装置は、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を絞る方向の制御のみ行い、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を増加させる方向の制御は行わない。このため、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0128】
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)又は(12)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を所定時間制御し、所定時間の経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0129】
上記(13)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が一時的に減少した場合に、ガス化炉内の酸素比の上昇を効果的に抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0130】
(14)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ライン(例えば上述のリダクタ空気供給ライン41e又はスラグホッパ空気供給ライン41f)と、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量(例えば上述のリダクタ空気流量又はスラグホッパ空気流量)を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置(例えば上述の空気流量調整弁98又は空気流量調整弁99)と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する。
【0131】
上記(14)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉全体に供給される酸化剤の流量(すなわちコンバスタ酸化剤流量とリダクタ等酸化剤流量の合計)の変動を抑制することができ、ガス化炉の圧力の変動及びガス化炉の出口ガス量の変動を抑制することができる。したがって、例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの出力の変動を抑制することができる。
【0132】
(15)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記切替信号を検出した場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【0133】
上記(15)に記載のガス化炉設備によれば、上記(14)に記載のリダクタ等酸化剤供給ラインを備えていない場合であっても、ガス化炉の酸素比の上昇を効果的に抑制して発熱量の変動を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0134】
(16)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【0135】
上記(16)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。
【0136】
(17)幾つかの実施形態では、上記(16)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記ガス化炉の目標圧力に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量の第1指令値を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記第1指令値に負の補正値を加算した第2指令値を算出し、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0137】
上記(17)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉の圧力を目標圧力に基づいて適切に制御することと、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの負荷制御と、ガス化炉の酸素比の上昇を抑制することとを両立することができる。
【0138】
(18)幾つかの実施形態では、(17)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が閾値を上回った場合に、前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0139】
仮に、ガス化炉の目標圧力に基づいて算出した第1指令値に対してガス化炉の酸素比を増加させる方向の正の補正値を加算すると、コンバスタ部の内部のガス温度が上昇して熱応力が増大する。このため、上記(18)に記載のように前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算部によって算出した前記実流量演算値との差分が閾値を上回った場合には、第1指令値に正の補正値を加算せずに、第1指令値に基づいてコンバスタ酸化剤流量を制御する。すなわち、上記(18)の制御装置は、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を絞る方向の制御のみ行い、上記差圧に基づいて酸化剤の流量を増加させる方向の制御は行わない。このため、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0140】
(19)幾つかの実施形態では、上記(17)又は(18)に記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記第2指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を所定時間制御し、所定時間経過後に前記第1指令値に基づいて前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するように構成される。
【0141】
上記(19)に記載のガス化炉設備によれば、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が一時的に減少した場合に、ガス化炉の酸素比の上昇を効果的に抑制してガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0142】
(20)幾つかの実施形態では、上記(17)乃至(19)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記ガス化炉のリダクタ部又は前記ガス化炉のスラグホッパに前記酸化剤を供給するためのリダクタ等酸化剤供給ライン(例えば上述のリダクタ空気供給ライン41e又はスラグホッパ空気供給ライン41f)と、
前記ガス化炉の前記リダクタ部又は前記スラグホッパへ供給する前記酸化剤の流量であるリダクタ等酸化剤流量(例えば上述のリダクタ空気流量又はスラグホッパ空気流量)を調整するリダクタ等酸化剤流量調整装置(例えば上述の空気流量調整弁98又は空気流量調整弁99)と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記コンバスタ酸化剤流量を減少させるとともに前記リダクタ等酸化剤流量を増加させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置及び前記リダクタ等酸化剤流量調整装置を制御する。
【0143】
上記(20)に記載のガス化炉設備によれば、コンバスタ部のガス温度の上昇を抑制しつつ、ガス化炉全体に供給される酸化剤の流量(すなわちコンバスタ酸化剤流量とリダクタ等酸化剤流量の合計)の変動を抑制することができ、ガス化炉の圧力の変動及びガス化炉の出口ガス量の変動を抑制することができる。したがって、例えばガス化炉で生成したガスを用いて発電を行う発電プラントにおいては、発電プラントの出力の変動を抑制することができる。
【0144】
(21)幾つかの実施形態では、上記(16)乃至(19)の何れかに記載のガス化炉設備において、
前記制御装置は、前記炭素含有固体燃料の流量の前記設定値と前記実流量演算値との前記差分が前記閾値を下回った場合に、前記ガス化炉への酸化剤の流量を減少させるように前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御する。
【0145】
上記(21)に記載のガス化炉設備によれば、上記(20)に記載のリダクタ等酸化剤供給ラインを備えていない場合であっても、ガス化炉の酸素比の上昇を効果的に抑制して発熱量の変動を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を効果的に抑制することができる。
【0146】
(22)本開示の少なくとも一実施形態に係るガス化複合発電設備は、
上記(1)乃至(21)の何れかに記載のガス化炉設備と、
前記ガス化炉で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービン(例えば上述のガスタービン17)と、
前記ガスタービンから排出されたタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラ(例えば上述の排熱回収ボイラ20)で生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービン(例えば上述の蒸気タービン18)と、
前記ガスタービンおよび/または前記蒸気タービンの回転駆動に連結された発電機(例えば上述の発電機19)と、
を備える。
【0147】
上記(22)に記載のガス化複合発電設備によれば、上記(1)乃至(21)の何れかに記載のガス化炉設備を備えるため、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる。したがって、ガス化複合発電設備を安定して運転することができる。
【0148】
(23)本開示の少なくとも一実施形態に係るガス化炉設備の運転方法において、
前記ガス化炉設備は、
炭素含有固体燃料(例えば上述の微粉燃料(石炭))と酸化剤(例えば上述の空気(酸素))とを用いて可燃性ガスを生成するためのガス化炉(例えば上述のガス化炉101)と、
前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料供給ライン(例えば上述の燃料供給ライン12)と、
前記ガス化炉のコンバスタ部(例えば上述のコンバスタ部116)に前記酸化剤を供給するための酸化剤供給ライン(例えば上述の圧縮空気供給ライン41)と、
前記酸化剤供給ラインに設けられ、前記ガス化炉の前記コンバスタ部へ供給する前記酸化剤の流量であるコンバスタ酸化剤流量(例えば上述のコンバスタ空気流量)を調整するためのコンバスタ酸化剤流量調整装置(例えば上述のコンバスタ空気流量調整装置56)と、
を備え、
前記運転方法は、
(a)前記燃料供給ラインの第1位置(例えば上述の第1位置s1)と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置(例えば上述の第2位置s2)との差圧(例えば上述の差圧ΔP)、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパ(例えば上述の燃料ホッパ251~253)を切り替えるための切替信号(例えば上述の切替信号Sc)、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値(例えば上述の設定値Fs)と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値(例えば上述の実流量演算値Fa)との差分(例えば上述の差分ΔF)、の何れかに基づいて、前記コンバスタ酸化剤流量調整装置を制御するステップを備える。
【0149】
本願発明者によれば、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する際には、燃料供給ラインにおける第1位置と第1位置より下流側の第2位置との差圧が低下する。また、燃料ホッパを切り替える際にも、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が当該切り替えに伴って一時的に低下する。また、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する際には、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量の設定値とガス化炉への炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値との差分が低下する。
【0150】
このため、上記(23)に記載のガス化炉設備の運転方法では、前記燃料供給ラインの第1位置と前記燃料供給ラインにおける前記第1位置より下流側の第2位置との差圧、(b)前記ガス化炉に前記炭素含有固体燃料を供給する燃料ホッパを切り替えるための切替信号、又は(c)前記ガス化炉に供給する前記炭素含有固体燃料の流量の設定値と前記燃料供給ラインにおける前記炭素含有固体燃料の実流量の演算値である実流量演算値との差分、の何れかに基づいてコンバスタ酸化剤流量調整装置を制御することによって、ガス化炉への炭素含有固体燃料の流量が低下する場合にコンバスタ酸化剤流量を減少させることができる。
【0151】
したがって、コンバスタ部の酸素比の上昇を抑制してコンバスタ部の内部のガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガス化炉の内壁に付着した溶融スラグの剥離及び脱落を抑制し、ガス化炉に生じる熱疲労及び腐食を抑制することができる
【符号の説明】
【0152】
10 石炭ガス化複合発電設備
11 給炭設備
11a 給炭ライン
12 燃料供給ライン
12a1,12a3,12a2 上流側燃料ライン部
12b 合流部
12c 中間ライン部
12d 分岐部
12e コンバスタ側燃料ライン部
12f リダクタ側燃料ライン部
13 チャー供給ライン
15 チャー回収設備
16 ガス精製設備
17 ガスタービン
18 蒸気タービン
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
24 微粉燃料ビン
27 切替装置
28,29 燃料流量調整弁
36 燃料流量調整装置
38 制御装置
40 ガス化炉設備
41 圧縮空気供給ライン
41a 上流側空気ライン部
41b 分岐部
41c コンバスタ側空気ライン部
41d チャー供給側空気ライン部
41e リダクタ空気供給ライン
41f スラグホッパ空気供給ライン
42 空気分離設備
43 第1窒素供給ライン
45 第2窒素供給ライン
46 チャー戻しライン
47 酸素供給ライン
48 異物除去設備
49 第1生成ガスライン
51 集塵装置
52 供給ホッパ
53 第2生成ガスライン
54,55 空気流量調整弁
56 コンバスタ空気流量調整装置
61 圧縮機
62 燃焼器
63 タービン
64 回転軸
65 圧縮空気供給ライン
66 燃料ガス供給ライン
67 燃焼ガス供給ライン
68 昇圧機
69 タービン
70 排ガスライン
71 蒸気供給ライン
72 給水ライン
73 復水器
74 排気ガス浄化設備
75 煙突
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
90,92 圧力計
94 密度計
96 流速計
98,99 空気流量調整弁
101 ガス化炉
110 圧力容器
111 ガス化炉壁
115 アニュラス部
116 コンバスタ部
117 ディフューザ部
118 リダクタ部
119 圧力計
122 スラグホッパ
123 バーナ
125 チャーバーナ
126 コンバスタ系微粉燃料バーナ
127 リダクタ系微粉燃料バーナ
130 フローノズル
154 空間
154 内部空間
251,252,253 燃料ホッパ
261,262,263 排出弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13