(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173496
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】再生樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20241205BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091947
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹也
(72)【発明者】
【氏名】清水 庸平
【テーマコード(参考)】
3E086
4F401
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086DA08
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA15
4F401AA22
4F401AA24
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA13
4F401CA58
4F401CA79
4F401CB18
4F401DC04
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】成形時に汚れの発生が少ない、再生樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】芳香族イソシアネート誘導体を含有する再生用原料を含む再生用原料の集合物を溶融混練して再生樹脂組成物を製造する方法であって、再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減工程、及び低減工程により得られた再生用原料の集合物の溶融混練工程、を含む、再生樹脂組成物を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族イソシアネート誘導体を含有する再生用原料を含む再生用原料の集合物を溶融混練して再生樹脂組成物を製造する方法であって、
再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減工程、及び低減工程により得られた再生用原料の集合物の溶融混練工程、を含む、再生樹脂組成物を製造する方法。
【請求項2】
低減工程が、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を選択することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
低減工程が、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を、低減工程に供される再生用原料の集合物に添加することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
再生用原料として積層フィルムを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
積層フィルムが、ポリエチレンを含む層、ポリプロピレンを含む層、ナイロンを含む層、ポリエチレンテレフタラートを含む層、及びエチレンビニルアルコール共重合体を含む層からなる群より選択される1種以上の層を含む、請求項4に記載の製造方法
【請求項6】
溶融混練工程に供される再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率が0.25質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された再生樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の再生樹脂組成物を含む成形体。
【請求項9】
再生樹脂組成物を成形する際の汚れの発生を抑制する方法であって、
成形に用いる再生樹脂組成物中に、請求項7に記載の再生樹脂組成物を含む、汚れの発生を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャンプーや柔軟仕上げ剤、飲料等の液体成分や食品等の固体成分の包装容器の材料として、多層フィルムが用いられてきた(特許文献1)。かかる多層フィルム(又は積層フィルム)をパウチ加工することで、種々の包装容器が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルムをラミネートすることにより積層フィルムを製造する方法として、各フィルムを接着剤で接着する方法がある。特に、イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により生じるポリウレタンは接着力が強いことが知られており、ポリウレタンを接着剤として使用した積層フィルムを成形した包装容器が使用されている。
【0005】
しかしながら、このような積層フィルムを成形した包装容器のリサイクルを検討した結果、再生樹脂組成物の成形時に汚れが発生することがあることが新たに判明した。
【0006】
本発明は、成形時に汚れの発生が少ない、再生樹脂組成物の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記〔1〕~〔9〕に関する。
〔1〕 芳香族イソシアネート誘導体を含有する再生用原料を含む再生用原料の集合物を溶融混練して再生樹脂組成物を製造する方法であって、
再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減工程、及び低減工程により得られた再生用原料の集合物の溶融混練工程、を含む、再生樹脂組成物を製造する方法。
〔2〕 低減工程が、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を選択することを含む、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 低減工程が、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を、低減工程に供される再生用原料の集合物に添加することを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 再生用原料として積層フィルムを含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕 積層フィルムが、ポリエチレンを含む層、ポリプロピレンを含む層、ナイロンを含む層、ポリエチレンテレフタラートを含む層、及びエチレンビニルアルコール共重合体を含む層からなる群より選択される1種以上の層を含む、前記〔4〕に記載の製造方法
〔6〕 溶融混練工程に供される再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率が0.25質量%以下である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕 前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された再生樹脂組成物。
〔8〕 前記〔7〕に記載の再生樹脂組成物を含む成形体。
〔9〕 再生樹脂組成物を成形する際の汚れの発生を抑制する方法であって、
成形に用いる再生樹脂組成物中に、前記〔7〕に記載の再生樹脂組成物を含む、汚れの発生を抑制する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形時に汚れの発生が少ない、再生樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、上記汚れの発生要因やその解決方法を検討したところ、パウチを積層するために使用する接着剤として汎用される、芳香族イソシアネート誘導体からなるポリエステル系ポリウレタン樹脂が、再生樹脂製造時の熱により劣化して着色物として製造装置等に付着するというメカニズムを推定するに至った。そして、再生用原料の集合物中の芳香族イソシアネート誘導体の含有率を減らすことで、汚れの発生を抑制できることを実証し、本発明を完成させた。
【0010】
<再生樹脂組成物の製造方法>
本発明の再生樹脂組成物の製造方法は、芳香族イソシアネート誘導体を含有する再生用原料を含む再生用原料の集合物を溶融混練して再生樹脂組成物を製造する方法であって、
再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減工程、及び低減工程により得られた再生用原料の集合物の溶融混練工程、を含む方法である。
【0011】
〔再生用原料及びその集合物〕
本発明における再生用原料とは、食品、飲料、洗剤等の包装容器や当該包装容器の成形前の材料、好ましくは積層フィルムや、かかる積層フィルムが加工されたパウチ等が挙げられる。再生用原料は、通常使用済みのものであるが、全部又は一部が未使用品であってもよい。ここで積層フィルムとは、同一又は異質の高分子樹脂の2層以上がラミネートされた構造を有するフィルムである。本発明における再生用原料の集合物とは、かかる再生用原料が一定量集合した物である。
【0012】
再生用原料を構成する高分子樹脂としては、一般的に積層フィルムに使用されているもの、例えば、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体等のポリオレフィンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等、特に限定なく本発明の適用対象である。
従って、再生用原料が積層フィルムを含む場合、その積層フィルムは、ポリエチレンを含む層、ポリプロピレンを含む層、ナイロンを含む層、ポリエチレンテレフタラートを含む層、及びエチレンビニルアルコール共重合体を含む層からなる群より選択される1種以上の層を含むことが好ましい。
【0013】
〔芳香族イソシアネート誘導体〕
再生用原料の集合物の中には、芳香族イソシアネート化合物が用いられた芳香族ポリウレタンまたはその劣化物が含まれることがある。かかるポリウレタンまたはその劣化物を、「芳香族イソシアネート誘導体」と称する。
【0014】
芳香族ポリウレタンを加熱や紫外線照射することで分解し、ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物やポリエステル化合物などの芳香族ポリウレタン劣化物が生じる。再生用原料やその集合物における芳香族ポリウレタン中の芳香族イソシアネート化合物の含有率を求めることで、再生用原料やその集合物を例えば150~300℃で加熱して生じる芳香族ポリウレタンの劣化物の最大量を求めることができる。従って、芳香族イソシアネート化合物は、再生用原料の集合物中の芳香族イソシアネート誘導体の定量のための指標化合物ということができる。
【0015】
本発明における芳香族イソシアネート化合物とは、ポリウレタンの原料として使用される成分である。芳香族イソシアネート化合物の具体例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。芳香族イソシアネート誘導体の定量のための指標化合物として、かかる芳香族イソシアネート化合物の一種又は二種以上を選択して用いることができる
【0016】
〔再生用原料の収集〕
再生用原料を再生樹脂組成物に再生するために、ゴミ処理施設やリサイクル施設等にて再生用原料を収集し、再生用原料の集合物を得る。収集された集合物からガラスや金属等の異物を除去することが好ましい。
【0017】
〔再生用原料の集合物の細断〕
収集された再生用原料の集合物を、数cm~数十cm四方の大きさに細断してもよい。細断後、さらに小さく粉砕してもよい。細断や粉砕は、低減工程を経た後の集合物に対して行ってもよい。
【0018】
〔芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減〕
再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率を低減する具体的な処理としては、再生用原料の集合物全体における芳香族イソシアネート誘導体の含有率を低減できる処理であれば特に限定されないが、例えば、
(1)芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を選択する処理
(2)芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を、低減工程に供される再生用原料の集合物に添加する処理
(3)溶剤やフィルターによるろ過などによる、再生用原料の集合物から芳香族イソシアネート誘導体を低減する処理
が挙げられる。かかる処理は一種類を単独で行ってもよく、二種類以上を組み合わせて行ってもよい。
【0019】
上記(1)の処理としては、例えば人による検品・選別処理や各種センサーによる選別処理が挙げられる。即ち、再生用原料の集合物から芳香族イソシアネート誘導体が多いものを除去することで、集合物におけるその含有率を低減することができる。
上記(2)の処理としては、例えば芳香族イソシアネート誘導体を含まない又はその含有率が低い再生用原料(例えばバージン樹脂等)を、再生用原料の集合物に添加する処理や、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を特定しておき、かかる再生用原料を再生用原料の集合物に添加する処理等が挙げられ、かかる処理により、集合物における芳香族イソシアネート誘導体の割合を低減することができる。
上記(3)の処理としては、例えば熱キシレンでポリエチレンを溶解させて芳香族イソシアネートを分離除去する処理や溶剤によりポリウレタンを分解する処理、ポリウレタン樹脂との融点差を利用したフィルターろ過による分離する処理が挙げられる。かかる処理により、集合物における芳香族イソシアネート誘導体の割合を低減することができる。
【0020】
かかる低減工程を経ることにより、溶融混練工程に供する再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率を、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下とすることができる。汚れの発生を抑制する観点からは芳香族イソシアネート誘導体の含有率は低い方が好ましいため、好適な下限値としては0質量%である。
【0021】
上記の細断工程の前後や低減工程の前後に、再生用原料の集合物の洗浄や脱水、乾燥等の公知の処理を適宜行ってもよい。
【0022】
〔溶融混練工程〕
本発明は、再生用原料の集合物を溶融混練する溶融混練工程を有する。
溶融混練工程は、上記低減工程を経て得られた再生用原料の集合物を対象とする。かかる集合物を溶融混練することで、再生用原料やその集合物から再生樹脂組成物を製造することができる。
【0023】
本発明における溶融混練工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。溶融混練工程の実施の際の運転条件や使用機器等は、本発明分野で公知のものを採用することができる。例えば、溶融混練工程での再生用原料の集合物の温度としては、各層の樹脂の溶融温度の観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、一方、熱による原料の劣化を抑制する観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
【0024】
<再生樹脂組成物>
溶融混練工程を経て得られた溶融混練物が再生樹脂組成物であるが、再生樹脂組成物には溶融混練物以外のものが含まれていてもよい。例えば、相溶化剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤を溶融混練物に添加したものも再生樹脂組成物である。
本発明の再生樹脂組成物は、上述の本発明の再生樹脂組成物の製造方法によって製造された再生樹脂組成物である。再生樹脂組成物の形状としては、例えばペレット等が挙げられる。
【0025】
<成形体>
本発明の成形体は、上記の本発明の再生樹脂組成物を含む成形体である。成形体としては、シート、フィルム、繊維、ボトル、チューブ、道具等が挙げられる。かかる成形体を公知の方法で加工することで、パウチ容器やボトル容器等の包装容器を製造することができる。
【0026】
<汚れの発生を抑制する方法>
本発明の汚れの発生を抑制する方法は、再生樹脂組成物を成形する際の汚れの発生を抑制する方法であって、成形に用いる再生樹脂組成物中に、本発明の再生樹脂組成物を含む方法である。
【0027】
再生樹脂組成物を用いてシート、フィルムを製造する際、製造装置、例えば圧延のためのロールに汚れが生じる場合がある。上述の本発明の再生樹脂組成物を使用することで、汚れの発生を抑制することができる。
【実施例0028】
以下、試験例及び製造例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の製造例に制限されるものではない。
【0029】
試験例1
〔検量線の作成〕
下記の製造例で使用した、パウチの接着に使用した接着剤のうち、「芳香族イソシアネート誘導体からなるポリエステル系ポリウレタン」は、硬化剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)を使用したので、芳香族イソシアネート誘導体からなるポリウレタンの指標化合物としてTDIを採用した。TDIの検量線は下記の要領で作成した。
即ち、DIC社製の硬化剤KW-75をTDIの標準試料として用い、種々の濃度のTDIの酢酸エチル溶液を調製した。この溶液を熱分解GC-MS装置で分析してTDIの検量線を作成した。検量線から、再生用原料の集合物中の芳香族イソシアネート誘導体の含有率を換算して求めた。熱分解GC-MSにおける具体的な分析条件を表1に示す。
【0030】
【0031】
製造例A
再生用原料のモデルとして、最外層がナイロン(Ny)、中間層がポリエチレンテレフタラート(PET)、及び最内層が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である積層構造の未使用パウチ容器を準備し、パウチAとした。
パウチAの各層の厚さは、Nyが15μm、PETが12μm、及びLLDPEが150μmであった。各層の接着に使用した接着剤は、脂肪族イソシアネート誘導体からなるポリエステル系ポリウレタンであった。
【0032】
パウチAを数cm四方の大きさに細断した後、液体窒素で冷却し、次いで粉砕した。得られた破砕物を試料とした。なお、パウチAは市場流通前の未使用品なので、パウチの洗浄は行わなかった。
【0033】
〔再生用原料の集合物中の芳香族イソシアネート誘導体の含有率の測定〕
得られた試料を0.2mg秤量し、熱分解GC-MS装置で分析した。熱分解GC-MS分析の具体的な分析条件は表1に記載のとおりである。
次いで、予め作成しておいた検量線からパウチAにおけるTDIの含有率を求め、パウチAにおける芳香族イソシアネート誘導体の含有率に換算した。結果を表2に示す。
【0034】
〔フィルムの製造〕
上記の試料を二軸押出機に供給して約230℃で溶融混練し、溶融ポリマーをダイスから押出し、ペレット化した再生樹脂組成物を得た。次いで、このペレットを単層のキャスト成形機に供給して上記ペレットからなるフィルムを得た。フィルム成形時の冷却ロールの温度は約80℃に設定した。
【0035】
〔冷却ロールの汚れの評価〕
上記のフィルムの製造処理を連続して2時間続けた後、冷却ロール上の外観の汚れを目視で観察した。結果を表2に示す。
なお、冷却ロール上の外観の汚れを次の基準で評価した。
1:冷却ロール上において着色物の付着は全く見られなかった。
2:冷却ロール上において黄色着色物の付着がわずかに見られた。
3:冷却ロール上において黄色着色物の付着が明確に見られた。
4:冷却ロール上の全領域において黄色着色物の付着が明確に見られた。
上記の評価段階のうち、評価1が最も優れた評価である。評価の値が小さいほど、冷却ロールの洗浄頻度を少なくすることができる。
【0036】
製造例B
再生用原料のモデルとして、最外層がNy、中間層がPET、及び最内層がLLDPEである積層構造の未使用パウチ容器を準備し、パウチBとした。
パウチBの各層の厚さは表2に記載のとおりであった。各層の接着に使用した接着剤は、芳香族イソシアネート誘導体と脂肪族イソシアネート誘導体の混合物からなるポリエステル系ポリウレタンであった。
【0037】
次いで、製造例Aと同様にパウチBを細断し、粉砕して得られた破砕物を試料として得た。
得られた試料について、製造例Aと同じ方法で芳香族イソシアネート誘導体の含有率を測定した。
さらに、得られた試料を用いて、製造例Aと同じ方法でフィルムを製造し、冷却ロールの汚れを評価した。結果を表2に示す。
【0038】
製造例C
再生用原料のモデルとして、最外層がNy、中間層がPET、及び最内層がLLDPEである積層構造の未使用パウチ容器を準備し、パウチCとした。
パウチCの各層の厚さは表2に記載のとおりであった。各層の接着に使用した接着剤は、芳香族イソシアネート誘導体からなるポリエステル系ポリウレタンであった。
【0039】
次いで、製造例Aと同様にパウチCを細断し、粉砕して得られた破砕物を試料として得た。
得られた試料について、製造例Aと同じ方法で芳香族イソシアネート誘導体の含有率を測定した。
さらに、得られた試料を用いて、製造例Aと同じ方法でフィルムを製造し、冷却ロールの汚れを評価した。結果を表2に示す。
【0040】
製造例D
再生用原料のモデルとして、最外層がNy、中間層がPET、及び最内層がLLDPEである積層構造の未使用パウチ容器を準備し、パウチDとした。
パウチDの各層の厚さは表2に記載のとおりであった。各層の接着に使用した接着剤は芳香族イソシアネート誘導体からなるポリエステル系ポリウレタンであった。
【0041】
次いで、製造例Aと同様にパウチDを細断し、粉砕して得られた破砕物を試料として得た。
得られた試料について、製造例Aと同じ方法で芳香族イソシアネート誘導体の含有率を測定した。
さらに、得られた試料を用いて、製造例Aと同じ方法でフィルムを製造し、冷却ロールの汚れを評価した。結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
製造例E
パウチCには芳香族イソシアネート誘導体が0.25質量%含まれていたことが分かった。一方、パウチAにおける芳香族イソシアネート誘導体の含有率は検出限界の下限値未満であったことが分かった。
そこで、パウチCの10質量部に対してパウチAを90質量部添加することで、再生用原料の集合物における芳香族イソシアネート誘導体の含有率を低減する工程を行った。
【0044】
次いで、これら二種類のパウチを混合した後、製造例Aと同様に、パウチを細断し、粉砕して得られた破砕物を試料として得た。
得られた試料について、製造例Aと同じ方法で芳香族イソシアネート誘導体の含有率を測定した。
さらに、得られた試料を用いて、製造例Aと同じ方法でフィルムを製造し、冷却ロールの汚れを評価した。結果を表2に示す。
【0045】
表2から次のことが分かった。
芳香族イソシアネート化合物であるTDIの含有率が検出限界未満である再生用原料の集合物(パウチA)を用いて再生樹脂の成形体であるフィルムを製造した結果、冷却ロール汚れの評価は1であった。さらに、TDIの含有率が0.05質量%である再生用原料の集合物(パウチB)を用いてフィルムを製造した結果、冷却ロール汚れの評価は2であった。このように、予め、芳香族イソシアネート誘導体の含有率が低い再生用原料を選択することで、ロール汚れを軽減することができた。
【0046】
これに対して、集合物におけるTDIの含有率が0.43質量%であるパウチDを用いてフィルムを製造した結果、冷却ロール汚れの評価は4であった。集合物におけるTDIの含有率が0.25質量%であったパウチCを用いてフィルムを製造した結果、冷却ロール汚れの評価は3であり、パウチDを用いた場合よりもロールの汚れが軽減できたことが確認できた。
【0047】
さらに、製造例Eでは、パウチCにパウチAを添加することで、冷却ロール汚れの評価は2となり、パウチCを用いた場合よりもロールの汚れが軽減できたことが確認できた。このことから、芳香族イソシアネート誘導体の含有率の低減工程を行うことでロールの汚れを軽減できることが分かった。
本発明の再生樹脂組成物の製造方法は、パウチ等の包装容器のリサイクル分野、特にラミネートされた積層フィルムで製造されたパウチのリサイクル分野に適用することができる。
積層フィルムが、ポリエチレンを含む層、ポリプロピレンを含む層、ナイロンを含む層、ポリエチレンテレフタラートを含む層、及びエチレンビニルアルコール共重合体を含む層からなる群より選択される1種以上の層を含む、請求項4に記載の製造方法