(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173499
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】非接触充電装置、非接触充電システム、非接触充電方法、及び非接触充電プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20241205BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241205BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241205BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241205BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241205BHJP
B60L 53/35 20190101ALI20241205BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/12
B60M7/00 X
B60L50/60
B60L53/12
B60L53/35
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091954
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松沢 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA01
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125BC21
5H125DD02
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電装置、非接触充電システム、非接触充電方法、及び非接触充電プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】非接触充電システム10は、道路18内に設けられ、車両12の受電コイル16に電力を供給する送電コイル14と、送電コイル14の車両が進入する方向側に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ車両12の受電コイル16の前方に設けられたアンテナコイル20から電力を受信する3以上のコイル22、24、30と、車両前後方向に沿って設けられた複数のコイル22、24の受信結果を用いてコイルとアンテナコイルとの間の距離を検知し、距離の検知結果と、車幅方向に沿って設けられた複数のコイルの受信結果を用いて車幅方向のずれ量を検出する横ずれ量及び車高検出部48と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルと、
前記送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルと、
前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する検出部と、
を備えた非接触充電装置。
【請求項2】
前記検知部は、複数の前記受信コイルの受信電力差を求め、前記距離と前記受信電力差の関係を用いて前記距離を検出し、
前記検出部は、前記受信電力差と位置ずれ量の予め定めた関係を用いて前記位置ずれ量を検知する請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項3】
前記送信コイル及び前記受信コイルは、それぞれ入力端子にキャパシタを接続することにより、予め定めた周波数に調整した請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記送信コイル及び前記受信コイルは、誘電体基板上の導体パターンで構成した請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項5】
道路内に複数の送電コイルが配列される場合、複数の送電コイルのうち、車両が進入する方向の先頭の受信コイル以外の送電コイルの間に、車幅方向に沿って配列した一対の受信コイルを設け、
前記検出部が、前記一対の受信コイルの受信結果を用いて車幅方向のずれ量をさらに検出する請求項1に非接触充電装置。
【請求項6】
前記検知部の検知結果に基づいて、前記送電コイルの通電を制御する制御部を更に備えた請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項7】
請求項1に記載の非接触充電装置と、
前記受電コイル、前記送信コイル、及び蓄電池を備え、前記受電コイルによって受電した電力により前記蓄電池を充電する車両と、
を含む非接触充電システム。
【請求項8】
コンピュータが、
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、
前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を行う非接触充電方法。
【請求項9】
コンピュータに、
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、
前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を実行させるための非接触充電プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触充電装置、非接触充電システム、非接触充電方法、及び非接触充電プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送電コイルセットまたは受電コイルセットに係るパラメータから、指標値を算出する指標値算出部と、送電コイルセット内の送電コイル、または受電コイルセット内の受電コイルを通過する直線の位置と、指標値との関係を示すデータに基づき、指標値から直線の位置を推定することにより、直線の位置から位置ずれの方向を推定する線位置推定部と、を備え、少なくとも2つの送電コイルから構成される送電コイルセットまたは少なくとも2つの受電コイルから構成される受電コイルセットの位置ずれの方向を推定する位置ずれ方向推定装置が提案されている。詳細には、2つ以上の送電コイルと、2つ以上の受電コイルによる電力伝送システムにおいて、これら送電コイルと受電コイルの間の結合係数を検出し、結合係数と位置ずれ量の関係から、送電コイルと受電コイルの水平位置ずれ量を求める手法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、送電ユニットに設けられた1つのLF送信アンテナと、受電ユニットに設けられた複数のLF受信アンテナと、車両走行中はLF方式で送電ユニットと受電ユニットとの位置関係を検出し、車両停車中はLPE方式で送電ユニットと受電ユニットとの位置関係を検出する車両ECU(制御システム)とを備え、駐車スペースに設けられる送電ユニットから車両に搭載される受電ユニットに非接触で送電する非接触電力伝送システムに適用される位置検出システムが提案されている。詳細には、車両の非接触電力伝送システムにおいて、駐車スペースおよび車両の一方に設けられた送受電コイルとは別の、少なくとも1つの送信アンテナと、その他方に設けられた複数の受信アンテナが設置されている。アンテナ間で無線通信する低周波信号(LF信号)を用いてユニットの位置関係を検出するLF方式と、送電コイルから出力される低電力(LPE電力)を受信アンテナで受けるLPE方式の二つを組み合わせることで、位置ずれ誤差を低減する方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、少なくとも1つの位置信号に対する磁場ベクトルを測定することにより、車両と誘導充電装置とを含む充電システムの充電位置を決定するための方法が提案されている。詳細には、送受電コイルの周囲に、送電周波数より高い周波数のアンテナを配置し、その間で電波の送受信を行い、その受信電力から、水平面の位置ずれ量を検知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6646602号公報
【特許文献2】特開2020-92555号公報
【特許文献3】米国特許第10081264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1-3では、送電コイルと受電コイルの水平位置ずれは、求められるが、高さ方向のずれを求めることができない。
【0007】
また、送電コイルと受電コイルの高さ方向の間隔が、車両の振動等でずれた場合には、検出した水平位置ずれに大きな誤差が生じる。
【0008】
本開示は、上記事実を考慮して成されたもので、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電装置、非接触充電システム、非接触充電方法、及び非接触充電プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1態様に係る非接触充電装置は、道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルと、前記送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルと、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知する検知部と、前記検知部の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する検出部と、を備える。
【0010】
第1態様によれば、検知部によって受信コイルと送信コイルとの間の距離が検知され、検出部によって送電コイルに対する受電コイルの車幅方向のずれ量を検出される。従って、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電装置を提供できる。
【0011】
第2態様に係る非接触充電装置は、第1態様に係る非接触充電装置において、前記検知部は、複数の前記受信コイルの受信電力差を求め、前記距離と前記受信電力差の関係を用いて前記距離を検出し、前記検出部は、前記受信電力差と位置ずれ量の予め定めた関係を用いて前記位置ずれ量を検知する。
【0012】
第2態様によれば、検知部により受信コイルと送信コイルとの間の距離と受信電力差の関係を用いて受信コイルと送信コイルとの間の距離が検出される。また、検出部により受信電力差と位置ずれ量の予め定めた関係を用いて位置ずれ量が検知される。従って、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とが検出可能となる。
【0013】
第3態様に係る非接触充電装置は、第1態様に係る非接触充電装置において、前記送信コイル及び前記受信コイルは、それぞれ入力端子にキャパシタを接続することにより、予め定めた周波数に調整した。
【0014】
第3態様によれば、送信コイル及び受信コイルには、入力端子にキャパシタが接続されるので、キャパシタにより共振周波数の調整が可能となる。
【0015】
第4態様に係る非接触充電装置は、第1態様に係る非接触充電装置において、前記送信コイル及び前記受信コイルは、誘電体基板上の導体パターンで構成した。
【0016】
第4態様によれば、誘電体基板上の導体パターンで構成されるので、簡易に誤差の少ないコイルの製造が可能となる。
【0017】
第5態様に係る非接触充電装置は、第1態様に係る非接触充電装置において、道路内に複数の送電コイルが配列される場合、複数の送電コイルのうち、車両が進入する方向の先頭の受信コイル以外の送電コイルの間に、車幅方向に沿って配列した一対の受信コイルを設け、前記検出部が、前記一対の受信コイルの受信結果を用いて車幅方向のずれ量をさらに検出する。
【0018】
第5態様によれば、送電コイルの間に、車幅方向に沿って配列した一対の受信コイルの受信結果を用いて 前記検出部によって車幅方向のずれ量がさらに検出される。送電コイル同士の間隔を詰めて車幅方向のずれ量を検出できる。
【0019】
第6態様に係る非接触充電装置は、第1態様に係る非接触充電装置において、前記検知部の検知結果に基づいて、前記送電コイルの通電を制御する制御部を更に備えた。
【0020】
第6態様によれば、検知部の検知結果に基づいて送電コイルの通電が制御部によって制御される。従って、送電コイルに常に通電する場合に比べて、全体の効率の改善及び不要な電磁波の放射防止が可能となる。
【0021】
第7態様に係る非接触充電システムは、第1態様に係る非接触充電装置と、前記受電コイル、前記送信コイル、及び蓄電池を備え、前記受電コイルによって受電した電力により前記蓄電池を充電する車両と、を含む。
【0022】
第7態様によれば、検知部によって受信コイルと送信コイルとの間の距離が検知され、検出部によって送電コイルに対する受電コイルの車幅方向のずれ量を検出される。また、充電コイルによって受電した電力により蓄電池が充電される。従って、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電システムを提供できる。
【0023】
第8態様に係る非接触充電方法は、コンピュータが、道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を行う。
【0024】
第8態様によれば、コンピュータにより、受信コイルと送信コイルとの間の距離が検知され、送電コイルに対する受電コイルの車幅方向のずれ量が検出される。従って、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電方法を提供できる。
【0025】
第9態様に係る非接触充電プログラムは、コンピュータに、道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を実行させる。
【0026】
第9態様によれば、コンピュータが、受信コイルと送信コイルとの間の距離を検知し、送電コイルに対する受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する。従って、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電プログラムを提供できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、送電コイルに対する車幅方向の位置ずれと、送電コイルと受電コイルとの間の距離とを検出可能な非接触充電装置、非接触充電システム、非接触充電方法、及び非接触充電プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る非接触充電システムの外観を示す上面図である。
【
図2】本実施形態に係る非接触充電システムの外観を示す側面図である。
【
図3】本実施形態に係る非接触充電システムの概略構成を示す図である
【
図4】マイクロコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【
図5】電磁界シミュレーションにより設計した13.56MHzで共振するコイルの構造例を示す図である。
【
図6】横ずれ量を検知するコイルの配置例を示す図である。
【
図7】13.56MHzの透過係数のシミュレーションで求めた、車高Dが変わったときのずれ量YcとΔSの関係を示す図である。
【
図8】横ずれ量及び車高を推定するコイルの配置例を示す図である。
【
図9】13.56MHzの透過係数のシミュレーションで求めた、車高Dが変化したときのずれ量YcとΔS1の関係を示す図である。
【
図10】13.56MHzの透過係数のシミュレーションで求めた、車高Dが変化したときのずれ量YcとΔS2の関係を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る非接触充電システムにおいて、道路側に4個のコイルを配置したときの車両の横ずれ量、及び車高を検出する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】道路側に設ける複数のコイルの配置例の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る非接触充電システムの外観を示す上面図であり、
図2は、本実施形態に係る非接触充電システムの外観を示す側面図である。なお、以下の説明では、車両12の進行方向(
図1、2の左右方向)をx方向、車両12の車幅方向(
図1の上下方向)をy方向とする。また、車両12の上下方向(
図2の上下方向)をz方向とする。
【0030】
本実施形態に係る非接触充電システム10は、走行する車両12に非接触で送電して車両12に搭載された蓄電池を充電するものである。なお、車両12の一例としては、電気自動車が適用されるが、ハイブリッド自動車等の蓄電池を搭載した他の自動車を適用してもよい。
【0031】
本実施形態に係る非接触充電システム10は、車両12の底面に配置された受電コイル16と、道路18内に設けられ、受電コイル16に電力を供給するための複数の送電コイル14と、を備えている。すなわち、車両12が道路18を走行し、車両12の受電コイル16が道路18内の送電コイル14上に到達すると、送電コイル14に電流が流れて磁界が発生する。発生した磁界を車両12に搭載された受電コイルで受けることで、道路18から車両12への送電が可能となる。送電コイル14を道路18に沿って複数配置することで、走行しながら車両12に搭載された蓄電池を充電することが可能となる。
【0032】
道路18内に配置した、各送電コイル14は、個別に給電が可能とされ、全体の効率の改善及び不要な電磁波の放射防止のために、真上に車両12が存在するコイルのみに給電し、車両12が通過すると給電をオフするように制御する。
【0033】
このようなシステムの課題の一つとして、車両12が送電コイル14のある道路中央から側方にy方向に横ずれした場合、送電効率が急激に低下することが知られている。そのため、車両12の横ずれ量が予め定めた規定値以下となった場合のみ送電コイル14に給電することで、システム全体の効率を改善できる。
【0034】
ここで、車両12の横ずれ量を高精度で求める方法を検討した。本実施形態では、車両12の横ずれ量を高精度で求める手段として、Mhz帯で動作する1個のコイルを車両12の受電コイル16の前方に送信コイルの一例としてのアンテナコイル20を配置する。
【0035】
また、同じ周波数で動作するコイルを道路18内の送電コイル14の近傍に複数配置し、その受信電力から横ずれ量と、横ずれ量の検出精度に影響する送受電コイルの高さ方向の間隔(車高)を高精度に求められることを見出した。
【0036】
本実施形態では、
図1に示すように、送電コイル14の車両12が進入する方向側の道路18内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつアンテナコイル20から電力を受信する受信コイルの一例として4つのコイル22~28を配置する。また、送電コイル14間に車幅方向に配列した2つのコイル30、32を配置した例を説明するが、送電コイル14間にも車幅方向及び車両前後方向に配列した4つのコイルを配置してもよい。
【0037】
なお、送受電コイルの電磁波としては、85kHzが一例として適用する。道路18内の複数のコイル22~28の動作周波数として、コイルの小形化と雨が道路上にたまっていてもその減衰量を小さくするために、ISMバンドの13.56MHzとした。85kHzに近い周波数とすると、本コイルにも強い電流が流れてしまい、発熱等を生じるため、1MHz以上の周波数が望ましい。また、1GHz以上とすると、道路18上の雨の減衰の影響が大きくなるため、1GHz以下が望ましい。また、送電コイル14間に配置する横ずれ検知用のコイル30、32は、送電コイル14同士の間隔を詰めるために、本実施形態のように2個の受信コイルとし、高さ方向の急激な変化は小さいため、ずれ量のみを検知するようにしても構わない。また、車両12に搭載されるMhz帯のアンテナコイル20と道路18内のコイル22~32は、その入力部に挿入されるコンデンサの容量で共振周波数を調整可能なので、共振周波数が一致していれば、寸法やターン数が異なっていても構わない。ただし、道路18内のコイル22~32の寸法は、同一とすることが望ましい。また、Mhz帯のコイル22~32と送受電コイル(送電コイル14及び受電コイル16)のz方向の位置関係は、本実施形態では、同一としたが、ずれがあっても構わない。
【0038】
本実施形態では、送電コイル14間の2つのMhz帯のコイル30、32は、横ずれ量を検知する横ずれ量検知用コイル34とされ、4つのMhz帯のコイル22~28は、横ずれ量及び車高を検知する横ずれ量及び車高検知用コイル36とされている。
【0039】
続いて、本実施形態に係る非接触充電システム10の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る非接触充電システム10の概略構成を示す図である。
【0040】
車両12には、受電コイル16及びMhz帯のアンテナコイル20の他に、送信回路40及び蓄電池42が設けられている。
【0041】
アンテナコイル20には、送信回路40が接続され、送信回路40によりアンテナコイル20から電磁波が道路18に対して放射される。
【0042】
蓄電池42は、受電コイル16に接続され、道路18から受電コイル16が受電した電力により蓄電池42が充電される。
【0043】
一方、道路18側には、非接触充電装置の一例として、受信電力検知部44、46、検出部の一例としての横ずれ量検出部50、検知部及び検出部の一例としての横ずれ量及び車高検出部48、制御部の一例としての送電制御部52、並びに電力変換ユニット54が設けられている。なお、受信電力検知部44、46、横ずれ量検出部50、横ずれ量及び車高検出部48、及び送電制御部52は、例えば、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、ストレージ11D、インタフェース(I/F)11E、及びバス11F等を含む一般的なマイクロコンピュータ11で構成してもよい。この場合、ROM11Bに記憶されたプログラムをCPU11Aが実行することにより各部の機能が実現される。
【0044】
道路18内に設置したMhz帯の各コイル22~32には、受信電力検知部44、46が接続され、車両12のアンテナコイル20から放射された電磁波が各コイル22~32で受信される各コイル22~28で電磁波を受信することで発生する電力が受信電力検知部44に入力され、コイル30、32で電磁波を受信することで発生する電力が受信電力検知部46に入力される。
【0045】
受信電力検知部44、46は、道路18に設けたMhz帯のコイル22~32によって受信した受信電力を検知し、検知結果を横ずれ量検出部50、及び横ずれ量及び車高検出部48に出力する。
【0046】
横ずれ量検出部50は、受信電力検知部46によって検知されたコイル30、32の受信電力の差に基づいて、横ずれ量を検出し、検出結果を送電制御部52に出力する。
【0047】
横ずれ量及び車高検出部48は、受信電力検知部44によって検知されたコイル22~28の受信電力の差に基づいて、横ずれ量及び車高(車両搭載コイルと路側コイルのz方向の距離)を検出し、検出結果を送電制御部52に出力する。
【0048】
なお、受信電力検知部44、46の検出対象は、電力に限定されるものではなく、電力以外に電圧、及び電流の少なくとも一方を検出してもよい。
【0049】
送電制御部52には、電力変換ユニット54及び送電コイル14が接続されており、送電制御部52は、電力変換ユニット54によって交流電力が直流電力に変換された電力を送電コイル14に供給する制御を行う。送電制御部52は、横ずれ量検出部50、並びに横ずれ量及び車高検出部48の検出結果から、横ずれ量が予め定めた規定値以下の場合、送電を開始するように、電力変換ユニット54からの電力を送電コイル14に供給するように制御する。
【0050】
続いて、本実施形態に係る非接触充電システム10における、横ずれ量及び車高の検出方法について説明する。
【0051】
図5は、電磁界シミュレーションにより設計した13.56MHzで共振するコイルの構造例を示す図である。
【0052】
アンテナコイル20及びコイル22~32は、誘電体基板上の導体パターンで構成されている。具体的には、長さL=150mmのFR-4基板上にエッティングにより半径R=70mmで6ターンのコイルを構成し、その入力部分に共振周波数が13.56MHzとなるように、キャパシタの一例として14pFのコンデンサCを装荷している。このような構造で、簡易に誤差の少ないコイルの製造が可能となる。
【0053】
そして、
図6に示すように、車両12側にコイル1が配置され、道路18の内部に2つのコイル2、3が距離I=170mmの間隔で水平に並べられているときの13.56MHzの透過係数を求めた。
【0054】
図7は、13.56MHzの透過係数のシミュレーションで求めた、車高Dが変わったときのずれ量YcとΔSの関係を示す図である。
【0055】
コイル2、3のy方向の中心に対する、コイル1のずれ量をYcとし、Yc=0~150mmと変化させる。また、コイル1とコイル2、3の高さDは、車両12の静止中の非接触充電の規格SAE J2954を参考に200mm~350mmの間で変化させたときのシミュレーション結果を示している。
【0056】
Ycが大きくなるにつれて、コイル1とコイル2の距離は近づいてその透過係数S21は高くなる。一方、コイル1とコイル3は、距離が離れるためにその透過係数S31は低くなる。そのため、Ycが大きいほど、その差ΔSは、大きくなり、その傾きは、車高Dが低くなるほど大きい。
【0057】
この結果から、正確なずれ量を求めるためには、車高Dの寸法が分かっていれば、事前にYcとΔSの関係のチャートをメモリに記憶して置くことで、コイル1とコイル2、3が接近したときのコイル2、3の受信電力の差を計算することで、横ずれ量Ycを求められる。なお、Ycが負となったときは、ΔSの正負が反転する。
【0058】
しかし、その課題として、車高Dが、例えば、車両12の走行中の振動や、乗員の影響によってずれが生じたした場合に、ずれ量の検出に誤差が生じる。
【0059】
次に、コイルの数を増やすことで正確な車高Dの値を求められないか検討をした。その結果、
図8に示すように、x方向にもコイルを近接して配置し2列にすることで求められることを見出した。
【0060】
コイル1とコイル3、5のx方向の座標は同一で、コイル1は、y方向にのみオフセットさせている。また、コイル3とコイル5の距離I=170mm、コイル2とコイル3の距離J=50mmとしている。Yc、Dを変化させて、コイル2、3の透過係数の差ΔS1を求めた結果を
図9に示す。
【0061】
Ycが変わってもΔS1は、ほとんど変化せず、車高Dによってのみ変化することが分かる。この結果、ΔS1から、正確な車高Dの値が求められることが分かる。
【0062】
なお、コイル3とコイル5の受信電力を比較して、コイル5の方が高い場合には、コイル1は、コイル5に近づく方向にオフセットしているため、コイル4、5の透過係数から車高Dを推定するのが良い。また、コイル2、4の2個のコイルをどちらか片方にしても、高さ方向の検出精度が若干下がるが、同様に検知は可能である。
図10にこのときのコイル3とコイル5の透過係数の差ΔS2の変化を示す。すなわち、
図7とほぼ同じ結果となっており、ΔS1で車高Dを求めることで、ΔS2の結果から正確な横ずれ量Ycが求められることが分かる。
【0063】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る非接触充電システム10で行われる具体的な処理について説明する。
図11は、本実施形態に係る非接触充電システム10において、道路18側に4個のコイルを配置したときの車両12の横ずれ量及び車高を検出する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下では、道路18側のコイルは、4つの場合を説明する。また、以下では、コイル22を第1コイル22、コイル24を第2コイル24、コイル26を第3コイル26、コイル28を第4コイル28と言い換えて説明する。
【0064】
ステップ100では、受信電力検知部44が、道路18側のコイル22~28で信号を受信したか否かを判定する。該判定が肯定されるまで待機してステップ102へ移行する。
【0065】
ステップ102では、受信電力検知部44が、道路18側の各コイルの受信電圧を検知してステップ104へ移行する。すなわち、第1~4コイル22~28の受信電圧を検知する。
【0066】
ステップ104では、横ずれ量及び車高検出部48が、左右のコイルの受信電力を比較して、第2コイル24の受信電力の方が第4コイル28の受信電力より大きいか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ106へ移行し、肯定された場合にはステップ108へ移行する。
【0067】
ステップ106では、横ずれ量及び車高検出部48が、第3コイル26及び第4コイル28の受信電圧の差分ΔS1を算出してステップ110へ移行する。
【0068】
一方、ステップ108では、横ずれ量及び車高検出部48が、第1コイル22及び第2コイル24の受信電圧の差分ΔS1を算出してステップ110へ移行する。
【0069】
ステップ110では、横ずれ量及び車高検出部48が、事前に求めた車高DとΔS1の関係チャートと、算出したΔS1から、車高Dを推定してステップ112へ移行する。
【0070】
ステップ112では、横ずれ量及び車高検出部48が、第2コイル24及び第4コイル28の受信電圧の差分ΔS2を算出してステップ114へ移行する。
【0071】
ステップ114では、横ずれ量及び車高検出部48が、事前に求めた車高DにおけるYcとΔS2の関係チャートとΔS2の測定値からずれ量Ycを推定してステップ116へ移行する。
【0072】
ステップ116では、送電制御部52が、横ずれ量及び車高検出部48によって検出された位置ずれ量Ycが予め定めた規定値以下であるか否かを判定する。該判定が否定された場合には送電コイル14への通電を行わずにそのまま一連の処理を終了し、肯定された場合にはステップ118へ移行する。
【0073】
ステップ118では、送電制御部52が、送電を開始して一連の処理を終了する。すなわち、電力変換ユニット54によって変換された電力を送電コイル14に供給することにより、送電を開始する。
【0074】
このように処理を行うことにより、第1コイル22と第2コイル24、または第3コイル26と第4コイル28の受信結果を用いて車高を検出できる。また、検出した車高と、第2コイル26及び第4コイル28の受信電圧の差分から横ずれ量を検出できる。
【0075】
そして、横ずれ量の検出結果に基づいて、送電コイル14への電力の供給を制御するので、送電コイル14に常に通電する場合に比べて、全体の効率の改善及び不要な電磁波の放射防止が可能となる。
【0076】
なお、上記の実施形態では、アンテナコイル20、コイル22~32の形状を円形としては、これに限るものではない。例えば、
図12に示すように、方形でも構わない。
【0077】
また、上記の実施形態では、道路18側の4つのコイル22~28で横ずれ量及び車高を検知する例を説明したが、コイルは4つに限定されるものではない。例えば、
図13に示すように、横ずれ検知用のコイル2つの他に1つのコイルを設け、横ずれ検知用のコイルと車高検知用のコイルを1つ共用して車高検知用のコイルとし、全部で3個としてもよい。この場合、
図13に示すように、横ずれ検知用のコイル以外の1つのコイルは、横ずれ検知用のコイル間の中心線上に配置することが好ましいが、中心線上以外の位置でも構わない。
【0078】
また、上記の実施形態における非接触充電システム10で行われる処理は、コンピュータがプログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアで行う処理とする場合のプログラムは、各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。また、プログラムは、ROMに記憶した形態として説明したが、これに限るものではない。例えば、プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0079】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0080】
本開示は、以下の態様を採用してもよい。
(1)
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルと、
前記送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルと、
前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する検出部と、
を備えた非接触充電装置。
【0081】
(2)
前記検知部は、複数の前記受信コイルの受信電力差を求め、前記距離と前記受信電力差の関係を用いて前記距離を検出し、
前記検出部は、前記受信電力差と位置ずれ量の予め定めた関係を用いて前記位置ずれ量を検知する(1)に記載の非接触充電装置。
【0082】
(3)
前記送信コイル及び前記受信コイルは、それぞれ入力端子にキャパシタを接続することにより、予め定めた周波数に調整した(1)又は(2)に記載の非接触充電装置。
【0083】
(4)
前記送信コイル及び前記受信コイルは、誘電体基板上の導体パターンで構成した(1)~(3)の何れか1つに記載の非接触充電装置。
【0084】
(5)
道路内に複数の送電コイルが配列される場合、複数の送電コイルのうち、車両が進入する方向の先頭の受信コイル以外の送電コイルの間に、車幅方向に沿って配列した一対の受信コイルを設け、
前記検出部が、前記一対の受信コイルの受信結果を用いて車幅方向のずれ量をさらに検出する(1)~(4)の何れか1つに記載の非接触充電装置。
【0085】
(6)
前記検知部の検知結果に基づいて、前記送電コイルの通電を制御する制御部を更に備えた(1)~(5)の何れか1つに記載の非接触充電装置。
【0086】
(7)
(1)に記載の非接触充電装置と、
前記受電コイル、前記送信コイル、及び蓄電池を備え、前記受電コイルによって受電した電力により前記蓄電池を充電する車両と、
を含む非接触充電システム。
【0087】
(8)
コンピュータが、
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、
前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を行う非接触充電方法。
【0088】
(9)
コンピュータに、
道路内に設けられ、車両に設けた受電コイルに対して電力を供給するための送電コイルの車両が進入する方向側の道路内に、車幅方向及び車両前後方向の双方に沿って設けられ、かつ前記車両の前記受電コイルの前方に設けられた送信コイルから電力を受信する3以上の受信コイルのうち、前記車両前後方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記受信コイルと前記送信コイルとの間の距離を検知し、
前記距離の検知結果と、前記車幅方向に沿って設けられた複数の前記受信コイルの受信結果を用いて前記送電コイルに対する前記受電コイルの車幅方向のずれ量を検出する処理を実行させるための非接触充電プログラム。
【符号の説明】
【0089】
10 非接触充電システム
11 マイクロコンピュータ
12 車両
14 送電コイル
16 受電コイル
18 道路
20 アンテナコイル
22~32 コイル
44、46 受信電力検知部
48 横ずれ量及び車高検出部
50 横ずれ量検出部
52 送電制御部
C コンデンサ