(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173502
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】推定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20241205BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091957
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 強
(72)【発明者】
【氏名】奥 洋介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB06
3D131LA34
(57)【要約】
【課題】前提条件を予め入力せずに、タイヤの溝の深さが所定の値まで減少する時期を推定できる。
【解決手段】推定装置は、車両に装着されたタイヤの溝の深さの現在の実測値と深さの過去の実測値とを取得する取得部300と、現在の実測値と過去の実測値とから、深さの減少量の現在の勾配を算出する算出部310と、現在の勾配に基づいて、深さが所定の値まで減少する時期を推定する推定部320と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの溝の深さの現在の実測値と前記深さの過去の実測値とを取得する取得部と、
前記現在の実測値と前記過去の実測値とから、前記深さの減少量の現在の勾配を算出する算出部と、
前記現在の勾配に基づいて、前記深さが所定の値まで減少する時期を推定する推定部と、
を備えた推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記現在の勾配に基づいて、前記深さの減少量の将来の勾配を推定し、推定した前記将来の勾配に基づいて、前記深さが前記所定の値まで減少する時期を推定する請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記車両の走行履歴と前記現在の勾配とに基づいて、前記将来の勾配を推定する請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記車両以外の他の車両の前記実測値と前記現在の勾配とに基づいて、前記将来の勾配を推定する請求項2に記載の推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記深さが前記タイヤの交換を推奨する値まで減少する時期を推定する請求項1に記載の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に装着されたタイヤの摩耗状態を推定する装置が開示されている。この装置は、順次取得されるタイヤの回転速度に基づいて算出したスリップ比と車両の駆動力との線形関係を表す回帰係数として、スリップ比及び駆動力の多数のデータセットに基づいて、駆動力に対するスリップ比の傾きを算出する傾き算出部を備える。また、この装置は、傾きの温度依存性を表す指標と、補正時の車両の外部の温度とに基づいて、算出された傾きを補正する傾き補正部と、補正された傾きに基づいて、タイヤの摩耗状態を推定する推定部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された装置は、タイヤの溝の深さの実測値を用いずにタイヤの摩耗状態を推定するため、摩擦エネルギー及び摩耗抵抗指数等の前提条件を予め入力しなくてはならないという課題がある。
【0005】
本開示は、上記事実を考慮して成されたもので、前提条件を予め入力せずに、タイヤの溝の深さが所定の値まで減少する時期を推定できる推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る推定装置は、車両に装着されたタイヤの溝の深さの現在の実測値と前記深さの過去の実測値とを取得する取得部と、前記現在の実測値と前記過去の実測値とから、前記深さの減少量の現在の勾配を算出する算出部と、前記現在の勾配に基づいて、前記深さが所定の値まで減少する時期を推定する推定部と、を備える。
【0007】
第1の態様に係る推定装置では、取得部が車両に装着されたタイヤの溝の深さの現在の実測値と前記深さの過去の実測値とを取得し、算出部が前記現在の実測値と前記過去の実測値とから、前記深さの減少量の現在の勾配を算出し、推定部が前記現在の勾配に基づいて、前記深さが所定の値まで減少する時期を推定する。第1の態様に係る推定装置によれば、前提条件を予め入力せずに、タイヤの溝の深さが所定の値まで減少する時期を推定できる。
【0008】
第2の態様に係る推定装置は、第1の態様に係る推定装置において、前記推定部は、前記現在の勾配に基づいて、前記深さの減少量の将来の勾配を推定し、推定した前記将来の勾配に基づいて、前記深さが前記所定の値まで減少する時期を推定する。
【0009】
第2の態様に係る推定装置によれば、推定された将来の勾配を用いずに、深さが所定の値まで減少する時期を推定する場合に比較して、高精度に当該時期を推定できる。
【0010】
第3の態様に係る推定装置は、第2の態様に係る推定装置において、前記推定部は、前記車両の走行履歴と前記現在の勾配とに基づいて、前記将来の勾配を推定する。
【0011】
第3の態様に係る推定装置によれば、車両の走行履歴を用いずに、深さが所定の値まで減少する時期を推定する場合に比較して、高精度に当該時期を推定できる。
【0012】
第4の態様に係る推定装置は、第2の態様又は第3の態様に係る推定装置において、前記推定部は、前記車両以外の他の車両の前記実測値と前記現在の勾配とに基づいて、前記将来の勾配を推定する。
【0013】
第4の態様に係る推定装置によれば、他の車両の実測値を用いずに、深さが所定の値まで減少する時期を推定する場合に比較して、高精度に当該時期を推定できる。
【0014】
第5の態様に係る推定装置は、第1の態様から第4の態様のうち何れか1の態様に係る推定装置において、前記推定部は、前記深さが前記タイヤの交換を推奨する値まで減少する時期を推定する。
【0015】
第5の態様に係る推定装置によれば、前提条件を予め入力せずに、タイヤの溝の深さがタイヤの交換を推奨する値まで減少する時期を推定できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、前提条件を予め入力せずに、タイヤの溝の深さが所定の値まで減少する時期を推定できる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る推定システムの概略構成の例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るセンタサーバのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るセンタサーバにおけるCPUの機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る測定履歴データベースの構成の例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る推定処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本実施形態の推定システム100は、ユーザ端末10と、車両12と、センタサーバ30と、を含んで構成されている。センタサーバ30は推定装置の一例である。なお、推定システム100に含まれるユーザ端末10及び車両12の数は、
図1に示した数に限られない。ユーザ端末10と、車両12と、センタサーバ30とは、それぞれ、ネットワークCN1を介して相互に接続されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の車両12は、タイヤ14A~14Dを装着している。以下では、タイヤ14A~14Dを区別しない場合は、これらを単に「タイヤ14」という。なお、本実施形態では、車両12として四輪車を適用しており、車両12は、4つのタイヤ14を装着している。しかし、この例に限られない。車両12として二輪車を適用してもよい。この場合、車両12は2つのタイヤ14を装着する。
【0020】
ユーザ端末10は、ユーザが所有する情報処理端末である。ユーザ端末10は、例えば、スマートフォン等の携帯可能な情報処理端末である。
【0021】
図2に示すように、センタサーバ30は、CPU(Central Processing Unit)30A、ROM(Read Only Memory)30B、RAM(Random Access Memory)30C、ストレージ30D、及び通信I/F(Inter Face)30Gを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D、及び通信I/F30Gは、内部バス30Hを介して相互に通信可能に接続されている。
【0022】
CPU30Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU30Aは、ROM30B又はストレージ30Dからプログラムを読み出し、RAM30Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU30Aは、ROM30B又はストレージ30Dに記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM30B又はストレージ30Dには、推定プログラムが格納されている。
【0023】
ROM30Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM30Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶している。
【0024】
推定プログラムは、センタサーバ30が有する各機能を実現するためのプログラムである。
【0025】
通信I/F30Gは、ネットワークCN1と接続するためのインタフェースである。
【0026】
図3は、CPU30Aの機能構成の例を示すブロック図である。
図3に示されるように、CPU30Aは、取得部300、算出部310、推定部320、及び出力部330を有している。各機能構成は、CPU30AがROM30B又はストレージ30Dに記憶された推定プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0027】
取得部300は、タイヤ14の溝の深さの現在の実測値とタイヤ14の溝の深さの過去の実測値とを取得する機能を有している。なお、以下では、タイヤ14の溝の深さを単に「深さ」といい、深さの実測値を単に「実測値」という。本実施形態では、取得部300は、通信I/F30Gを介して、ユーザ端末10から現在の実測値を取得する。
【0028】
また、取得部300は、ストレージ30Dに格納された測定履歴データベースから過去の実測値を取得する。本実施形態では、取得部300は、対象区分における車両12の過去の実測値を取得する。対象区分とは、タイヤ14が車両12に装着されてから深さが限界値(例えば、1.6mm)に達するまでの分割された走行距離の区分のうち、現在の車両12が属する区分である。具体的に、取得部300は、測定履歴データベースにおいて車両12の対象区分に関連付けられた実測値を全て取得する。以下では、タイヤ14が車両12に装着されてから深さが限界値に達するまでの分割された走行距離の区分を、単に「区分」という。測定履歴データベースについては詳細を後述する。
【0029】
また、本実施形態では、取得部300は、ROM30B又はストレージ30Dに格納された勾配データベースにおいて現在の走行距離に関連付けられた区分を、対象区分として取得する。勾配データベースとは、区分毎に、走行距離の範囲と深さの減少量の勾配(以下、単に「勾配」という。)の範囲と、が記憶されたデータベースである。例えば、勾配データベースでは、走行距離が大きくなる程、勾配は小さくなるように記憶されている。このように、本実施形態では、複数の区分(例えば、3区分)の勾配を用いてタイヤ14の特性を推定することで、非線形特性を含めたタイヤ特性を精度良く推定できる。
また、勾配データベースでは、区分毎に、走行距離の範囲と勾配の範囲とが車両の種類毎に記憶されていてもよい。
【0030】
また、取得部300は、現在の実測値を測定した際の車両12の走行履歴と、過去の実測値を測定した際の車両12の走行履歴と、を取得する。本実施形態では、走行履歴として、走行距離を適用する。具体的に、取得部300は、タイヤ14が車両12に装着されてから現在の実測値を測定するまでの車両12の走行距離(以下、「現在の走行距離」という)を車両12から取得する。また、取得部300は、タイヤ14が車両12に装着されてから過去の実測値を測定するまでの車両12の走行距離(以下、「過去の走行距離」という)を測定履歴データベースから取得する。しかし、この例に限られない。例えば、取得部300は、現在の走行距離に代えて、タイヤ14が車両12に装着されてから現在の実測値を測定するまでの期間を取得してもよい。また、取得部300は、過去の走行距離に代えて、タイヤ14が車両12に装着されてから過去の実測値を測定するまでの期間を取得してもよい。
【0031】
図4に示すように、本実施形態に係る測定履歴データベースには、車両ID(Identification)毎に、測定日、当該測定日に測定された実測値、及び当該実測値を測定した際の車両12の走行距離が記憶されている。車両IDとは、推定システム100に含まれる全ての車両12をそれぞれ識別する情報である。そして、測定履歴データベースには、区分毎に、測定日、当該測定日に測定された実測値、及び当該実測値を測定した際の車両12の走行距離が記憶されている。
【0032】
例えば、
図4に示す例では、区分は初期区分、中期区分、及び後期区分に分割されている。初期区分が最初の区分であり、初期区分より1つ後の区分が中期区分であり、中期区分より1つ後の区分が後期区分である。
図4に示す例では、車両IDが「0001」である車両は、初期区分において、2022年4月8日の実測値が7mmで走行距離は3000kmであり、2023年5月3日の実測値が6mmで走行距離は5000kmである。そして、車両IDが「0001」である車両は中期区分及び後期区分には深さが測定されていない。
図4に示す例では「-」は、データが記憶されていないことを表す。
【0033】
また、
図4に示す例では、車両IDが「0002」である車両は、初期区分において、2020年8月5日の実測値が7.5mmで走行距離は4000kmであり、2020年12月15日の実測値が6.3mmで走行距離は5032kmである。そして、中期区分において、2021年9月24日の実測値が5.8mmで走行距離は27200kmであり、2022年3月7日の実測値が4.2mmで走行距離は32000kmである。そして、後期区分において、2022年11月3日の実測値が3.6mmで走行距離は48059kmであり、2023年4月5日の実測値が2.5mmで走行距離は60000kmである。
【0034】
図3に戻って、算出部310は、現在の実測値と過去の実測値とから、深さの減少量の現在の勾配である算出勾配を算出する機能を有している。具体的に、算出部310は、現在の実測値と過去の実測値との差分を、現在の走行距離と過去の走行距離との差分で除して算出勾配を算出する。なお、取得部300が走行距離に代えて期間を取得した場合、算出部310は、現在の実測値と過去の実測値との差分を、現在の実測値を測定するまでの期間と過去の実測値を測定するまでの期間との差分で除して算出勾配を算出する。
【0035】
そして、算出部310は、ストレージ30Dに格納された勾配履歴データベースに算出勾配を記憶する。勾配履歴データベースとは、車両ID毎に、区分毎の算出勾配が記憶されたデータベースである。
【0036】
推定部320は、算出部310が算出する算出勾配に基づいて、深さが所定の値まで減少する時期を推定する機能を有している。
【0037】
本実施形態では所定の値として、タイヤ14の交換を推奨する値(以下、「交換推奨値」という)を適用している。言い換えると、推定部320は、深さが交換推奨値まで減少する時期を推定する機能を有している。しかし、この例に限られない。所定の値として、いかなる値を適用してもよい。また、本実施形態では、交換推奨値はセンタサーバ30の管理人、又はユーザ等によって予め定められている。しかし、この例に限られない。交換推奨値はタイヤ14の種類毎に設定されてもよい。例えば、交換推奨値として、タイヤ14がサマータイヤの場合は4mmと設定し、スタッドレスタイヤの場合は新品時の深さから50%と設定してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、推定部320は算出勾配に基づいて、深さの減少量の将来の勾配(以下、単に「将来の勾配」という)を推定する。具体的に、推定部320は、算出勾配と、走行履歴としての走行距離と、車両12以外の他の車両(以下、単に「他の車両」という)の実測値と、に基づいて、将来の勾配を推定する。しかし、この例に限られない。推定部320は、走行距離又は他の車両の実測値を用いずに、算出勾配のみに基づいて将来の勾配を推定してもよい。
【0039】
本実施形態では、推定部320は、対象区分より後の区分における特定車両の勾配を、車両12の将来の勾配として推定する。特定車両とは、対象区分における勾配と算出勾配との差の順位が1位から所定の順位(例えば、4位)までの他の車両のうち、対象区分における走行距離の最大値が、車両12の現在の走行距離に最も近い他の車両である。しかし、この例に限られない。特定車両として、いかなる他の車両を適用してもよい。例えば、特定車両として、対象区分における走行距離の最大値と、車両12の現在の走行距離との差の順位が1位から所定の順位までの他の車両のうち、対象区分における勾配と算出勾配とが最も近い他の車両を適用してもよい。また、特定車両として、車両12と同じ種類の車両を適用してもよい。まとめると、特定車両とは、車両12の勾配と似ていることが想定される他の車両である。なお、特定車両は複数でもよい。この場合、推定部320は、対象区分より後の区分における特定車両の勾配の相加平均、相乗平均、又は調和平均等を、車両12の将来の勾配として推定する。
【0040】
具体的に、推定部320は、勾配履歴データベースから、対象区分における勾配と算出勾配との差の順位が1位から所定の順位までの他の車両を特定する。そして、推定部320は、特定した他の車両のうち、対象区分における走行距離の最大値が、車両12の現在の走行距離に最も近い他の車両を特定車両として特定する。そして、推定部320は、勾配履歴データベースにおいて、特定車両に関連付けられた対象区分より後の区分の勾配を、車両12の将来の勾配として推定する。例えば、対象区分が中期区分である場合、推定部320は、特定車両に関連付けられた後期区分の勾配を、車両12の将来の勾配として推定する。
【0041】
そして推定部320は、推定した将来の勾配に基づいて、所定の値としての交換推奨値まで深さが減少する時期を推定する。具体的に、推定部320は、現在の実測値と交換推奨値との差分を、推定した将来の勾配で除算することで算出した距離を、現在の走行距離に加えることで、交換推奨値まで深さが減少する走行距離を推定する。そして、推定部320は、推定した走行距離を車両12の1日あたりの走行距離で除算することで算出した日数を、現在の実測値の測定日に加えることで、交換推奨値まで深さが減少する時期を推定する。
【0042】
出力部330は、推定部320が推定した、交換推奨値まで深さが減少する時期を出力する。例えば、出力部330は、交換推奨値まで深さが減少する時期を、ユーザ端末10に出力する。なお、出力部330は、推定部320が推定した、交換推奨値まで深さが減少する走行距離を出力してもよい。
【0043】
次に、
図5を用いて、推定処理の流れについて説明する。CPU30AがROM30B又はストレージ30Dから推定プログラムを読み出して、RAM30Cに展開して実行することにより、推定処理が行なわれる。
【0044】
図5のステップS100において、CPU30Aは、ユーザ端末10から現在の実測値を取得するまで待機する。CPU30Aは、現在の実測値を取得すると(ステップS100:YES)、ステップS102に移行する。
【0045】
ステップS102において、CPU30Aは、車両12から現在の走行距離を取得する。
【0046】
ステップS104において、CPU30Aは、ステップS102において取得した現在の走行距離に基づき、対象区分を取得する。具体的に、CPU30Aは、勾配データベースにおいてステップS102において取得した現在の走行距離に関連付けられた区分を、対象区分として取得する。
【0047】
ステップS106において、CPU30Aは、対象区分における過去の実測値を取得可能であるか否かを判定する。具体的に、CPU30Aは、対象区分における車両12の過去の実測値が測定履歴データベースに記憶されているか否かを判定する。CPU30Aは、対象区分における車両12の過去の実測値を取得可能である場合(ステップS106:YES)、ステップS110に移行する。一方、CPU30Aは、対象区分における車両12の過去の実測値を取得できない場合(ステップS106:NO)、ステップS108に移行する。
【0048】
ステップS108において、CPU30Aは、取得した現在の実測値と、取得した現在の走行距離と、測定日(具体的には、ステップS108の実行日)を、車両12を識別する車両IDと関連付けて測定履歴データベースに記憶し、本推定処理を終了する。
【0049】
ステップS110において、CPU30Aは、対象区分における車両12の過去の実測値と過去の走行距離とを測定履歴データベースから取得する。
【0050】
ステップS112において、CPU30Aは算出勾配を算出する。具体的に、算出部310は、現在の実測値と過去の実測値との差分を、現在の走行距離と過去の走行距離との差分で除して算出勾配を算出する。
【0051】
ステップS114において、CPU30Aは、勾配データベースにおいて、ステップS112において算出した算出勾配に関連付けられた区分が、ステップS104において取得した対象区分と同一であるか否かを判定する。CPU30Aは、算出した算出勾配に関連付けられた区分が、取得した対象区分と同一である場合(ステップS114:YES)、ステップS118に移行する。一方、CPU30Aは、算出した算出勾配に関連付けられた区分が、特定した対象区分と異なる場合(ステップS114:NO)、ステップS116に移行する。
【0052】
ステップS116において、CPU30Aは、勾配データベースにおいてステップS112で算出した算出勾配に関連付けられた区分へ対象区分を変更し、ステップS118に移行する。
【0053】
ステップS118において、CPU30Aは、勾配履歴データベースから、特定車両を特定する。具体的に、CPU30Aは、勾配履歴データベースから、対象区分における勾配と算出勾配との差の順位が1位から所定の順位までの他の車両を特定する。そして、CPU30Aは、特定した他の車両のうち、対象区分における走行距離の最大値が、車両12の現在の走行距離に最も近い他の車両を特定車両として特定する。
【0054】
ステップS120において、CPU30Aは、勾配履歴データベースにおいて、特定車両の対象区分より後の区分の勾配を、車両12の将来の勾配として推定する。
【0055】
ステップS122において、CPU30Aは、推定した将来の勾配に基づいて、深さが交換推奨値まで減少する時期を推定する。具体的に、推定部320は、現在の実測値と交換推奨値との差分を、推定した将来の勾配で除算することで算出した距離を、現在の走行距離に加えることで、交換推奨値まで深さが減少する走行距離を推定する。そして、推定部320は、推定した走行距離を車両12の1日あたりの走行距離で除算することで算出した日数を、現在の実測値の測定日に加えることで、交換推奨値まで深さが減少する時期を推定する。
【0056】
ステップS124において、CPU30Aは、ステップS122において推定した深さが交換推奨値まで減少する時期を出力し、本推定処理を終了する。
【0057】
[備考]
なお、上記実施形態では、推定装置として、ユーザ端末10とは別体で構成されたセンタサーバ30を適用していた。しかし、この例に限られない。推定装置としてユーザ端末10に内蔵された装置を適用してもよい。また、推定装置として、車両12に内蔵された装置を適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、算出部310は、現在の実測値と過去の実測値とから、算出勾配を算出していた。しかし、この例に限られない。例えば、算出部310は、車両12の整備の実績から車両12の使われ方(例えば、ブレーキを使用する頻度、及び相対的に多く走行している道路の種類等)を推定し、当該車両12の使われ方に基づいて、算出勾配を算出してもよい。これは、車両12が相対的にブレーキを多く使用する場合、又は砂利道を相対的に多く走行する場合等は、タイヤ14の摩耗が相対的に激しく進行するために、勾配が急になることを用いている。そして、車両12が相対的にブレーキを少なく使用する場合、又は平坦な道を相対的に多く走行する場合等は、タイヤ14の摩耗が相対的に緩やかに進行するために、勾配が緩やかになることを用いている。
【0059】
なお、上記整備の実績には、実測値に加えて、タイヤ14の補修の実績又は交換の実績等を含んでもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、推定部320は、対象区分より後の区分における特定車両の勾配を、車両12の将来の勾配として推定していた。しかし、この例に限られない。例えば、推定部320は、車両12の算出勾配に、特定車両から算出した区分毎の係数を乗算することで、車両12の将来の勾配を推定してもよい。この場合、上記区分毎の係数は、例えば、特定車両の中期区分及び後期区分における勾配を、特定車両の初期区分における勾配でそれぞれ除算することにより算出される。
【0061】
具体的に、取得部300が対象区分として初期区分を取得した場合、推定部320は、車両12の算出勾配(すなわち、車両12の初期勾配)に、特定車両から算出した区分毎の係数を乗算して、車両12の中期区分及び後期区分の勾配を推定する。
【0062】
また、推定部320は、特定車両だけでなく、タイヤ14に関するタイヤ情報(例えば、タイヤ14の種類等)も用いて、車両12の将来の勾配を推定してもよい。例えば、取得部300は、ユーザ情報からタイヤ情報を取得する。そして、算出部310は、タイヤ情報から、区分毎の係数を算出する。そして、推定部320は、算出勾配に、区分毎の係数を乗じることで、車両12の将来の勾配を推定する。
【0063】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0064】
また、上記実施形態では、各プログラムがROM又はストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0065】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0066】
その他、上記実施形態で説明したユーザ端末10と、車両12と、センタサーバ30と、の各々の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0067】
12 車両
14 タイヤ
30 センタサーバ(推定装置)
300 取得部
310 算出部
320 推定部