(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173504
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20241205BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241205BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M10/0585
H01M10/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091960
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉下 那奈
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC10
5H011DD06
5H011FF02
5H011KK01
5H011KK03
5H028AA01
5H028BB04
5H028CC02
5H028HH05
5H029AJ11
5H029BJ04
5H029CJ03
5H029DJ02
5H029HJ03
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】外部からの衝撃に対する融着部の耐衝撃性に優れるラミネート型電池の提供。
【解決手段】電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有し、ラミネートフィルム4は、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部40を有し、融着部40は、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部40a、40b、及び融着部40の最も先端400よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部40cを含めた、3箇所以上の曲げ部を有し、融着部40は、先端400の少なくとも一部が電極体2側を向いた形状を有する、ラミネート型電池10A。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、
前記ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、
前記融着部は、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部、及び前記融着部の最も先端よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部を含めた、3箇所以上の曲げ部を有し、
前記融着部は、先端の少なくとも一部が前記電極体側を向いた形状を有する、ラミネート型電池。
【請求項2】
前記折り曲げ部及び前記先端側曲げ部が、いずれも弧状に曲げられている、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項3】
前記先端側曲げ部が配置される位置が、2箇所以上の前記折り曲げ部の中で、前記融着部の最も根元側の曲げ部に最も近い位置である、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項4】
前記融着部の先端と、前記電極体を覆う領域の前記ラミネートフィルムと、の最短距離が0.5mm以上5mm以下である、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項5】
前記融着部は、前記折り曲げ部として、20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の折り返し曲げ部、及び前記折り返し曲げ部よりも前記融着部における根元側に形成され70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所以上の直角曲げ部を有する、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項6】
請求項5に記載のラミネート型電池の製造方法であって、
ラミネートフィルムの端部同士が重ね合わされて内面が融着された、平面状の融着部を有する融着後ラミネート型電池を準備する工程と、
前記融着後ラミネート型電池における前記融着部に、20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた折り返し曲げ部を形成する折り返し曲げ工程と、
前記折り返し曲げ部よりも前記融着部における根元側の領域に、70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた直角曲げ部を形成する直角曲げ工程と、
を有し、
前記直角曲げ工程は、前記融着部の折り曲げ側の面に接触し且つ前記融着部に対して接触角度が異なる少なくとも3つの折り曲げローラと、前記折り曲げローラに対して前記融着部を介して対向する位置に設けられる前記折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、前記融着部を段階的に折り曲げて前記直角曲げ部を形成する工程であり、
且つ前記直角曲げ工程は、前記ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラに、前記折り返し曲げ部よりも前記融着部における先端側の領域を接触させて、前記先端側曲げ部を形成する工程である、ラミネート型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体がラミネートフィルムに覆われたラミネート型電池では、電極体を封入するためにラミネートフィルムの一部を融着して融着部を形成することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラミネート加工が施された外装体において、少なくとも1つの端部に折り曲げ部を有する二次電池の製造方法であって、外装体の端部の折り曲げの基点に押さえ板を当接させる工程と、当接させる工程後、端部を挟むように押さえ板と押さえ板に対向する位置に配置されている押し付け板とを摺動させて、基点を中心に端部を折り曲げるとともに、押さえ板と押し付け板とで端部を挟持することにより折り曲げ部を形成する工程と、を備え、押し付け板の端部と摺動する面は、端部の折り曲げを行う傾斜面と端部を挟持する挟持面とを有し、傾斜面は押し付け板の幅方向に直交する断面において、押し付け板の断面積が摺動方向に狭まるように傾斜しており、傾斜面は前記幅方向に傾斜している二次電池の製造方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極体を1枚のラミネートフィルムで覆うラミネート型電池では、ラミネートフィルムの一端側と他端側とを重ね合わせてその内面を融着して融着部を形成することで、電極体をラミネートフィルムにより封入する。また、電極体を複数のラミネートフィルムで覆うラミネート型電池では、複数のラミネートフィルムの端部同士を重ね合わせてその内面を融着して融着部を形成することで封入を行う。なお、ラミネート型電池の構造効率を向上させるため、これらの融着部を例えば折り曲げてラミネート型電池全体の外形のサイズを小さくすることが行われる。
【0006】
ここで、ラミネート型電池に含まれる電極体に衝撃が加えられた場合、電極体が破損し、求められる電池の性能を発揮できなくなることがある。そのため、ラミネート型電池には耐衝撃性が求められ、ラミネートフィルムの融着部においても、外部から加えられる衝撃に対する耐衝撃性を高めることが求められている。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、外部からの衝撃に対する融着部の耐衝撃性に優れるラミネート型電池、及び該ラミネート型電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>
電極体と、
前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、
前記ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、
前記融着部は、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部、及び前記融着部の最も先端よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部を含めた、3箇所以上の曲げ部を有し、
前記融着部は、先端の少なくとも一部が前記電極体側を向いた形状を有する、ラミネート型電池。
<2>
前記折り曲げ部及び前記先端側曲げ部が、いずれも弧状に曲げられている、<1>に記載のラミネート型電池。
<3>
前記先端側曲げ部が配置される位置が、2箇所以上の前記折り曲げ部の中で、前記融着部の最も根元側の曲げ部に最も近い位置である、<1>又は<2>に記載のラミネート型電池。
<4>
前記融着部は、前記折り曲げ部として、70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所以上の直角曲げ部、及び20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の折り返し曲げ部を有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載のラミネート型電池。
<5>
前記融着部の先端と、前記電極体を覆う領域の前記ラミネートフィルムと、の最短距離が0.5mm以上5mm以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のラミネート型電池。
<6>
<5>に記載のラミネート型電池の製造方法であって、
ラミネートフィルムの端部同士が重ね合わされて内面が融着された、平面状の融着部を有する融着後ラミネート型電池を準備する工程と、
前記融着後ラミネート型電池における前記融着部に、20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた折り返し曲げ部を形成する折り返し曲げ工程と、
前記折り返し曲げ部よりも前記融着部における根元側の領域に、70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた直角曲げ部を形成する直角曲げ工程と、
を有し、
前記直角曲げ工程は、前記融着部の折り曲げ側の面に接触し且つ前記融着部に対して接触角度が異なる少なくとも3つの折り曲げローラと、前記折り曲げローラに対して前記融着部を介して対向する位置に設けられる前記折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、前記融着部を段階的に折り曲げて前記直角曲げ部を形成する工程であり、
且つ前記直角曲げ工程は、前記ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラに、前記折り返し曲げ部よりも前記融着部における先端側の領域を接触させて、前記先端側曲げ部を形成する工程である、ラミネート型電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、外部からの衝撃に対する融着部の耐衝撃性に優れるラミネート型電池、及び該ラミネート型電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
【
図2】本実施形態の別の態様に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
【
図3】本実施形態の別の態様に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
【
図4】本実施形態の別の態様に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ラミネート型電池>
本開示の実施形態に係るラミネート型電池は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、融着部は、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部、及び融着部の最も先端よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部を含めた、3箇所以上の曲げ部を有し、融着部は、先端の少なくとも一部が電極体側を向いた形状を有する。
【0012】
融着部の先端の少なくとも一部が電極体側を向いているため、融着部に対して外部から衝撃が加えられた場合であっても、先端部がまず電極体側(電極体を覆うラミネートフィルム)に当たって受け止められ、その後はさらに融着部に対して外部から衝撃が加えられても融着部が変形しづらくなる。これにより、融着部における耐衝撃性が向上し、その結果、電極体の破損を抑制できる。
【0013】
以下、本開示に係るラミネート型電池の一実施形態について図面を用いて説明する。
以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
【0014】
(第1態様)
図1は、本実施形態に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
ラミネート型電池10Aは、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は、一端側と他端側とが重ね合わされ内面同士が融着された融着部40を有する。電極体2は、端面20(
図1に示されるのは融着部40が形成される側の端面)が傾斜面となる形状を有する。融着部40は、傾斜面である電極体2の端面20において、より外側に張り出している側の端部(
図1における端面20の下側の端部)から外側に向かって形成されている。融着部40は、融着部40の根元側(つまり電極体2に最も近い位置)から先端400側にかけて、略90°の角度となるよう弧状に曲げられた直角曲げ部40a、略0°の角度となるよう弧状に曲げられた折り返し曲げ部40b、及び融着部40の最も先端400よりの位置において略90°の角度となるよう弧状に曲げられた先端側曲げ部40cの、計3箇所の曲げ部を有する。先端側曲げ部40cは、残りの全ての曲げ部(つまり直角曲げ部40a及び折り返し曲げ部40b)の中で、融着部40の最も根元側の曲げ部に相当する直角曲げ部40aに最も近い位置に配置されている。
ここで、本開示における融着部の角度とは、曲げ部を挟んだ両側の融着部によって形成される最も小さい角における角度を指す。
【0015】
融着部40は、先端400が電極体2側を向いた形状を有する。
図1に示す融着部40は、融着部40の長手方向(
図1における奥行き方向)において、先端400のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する。
ここで、先端が電極体側を向いた形状を有するとは、融着部における先端が先端側曲げ部よりも電極体に近い位置に配置されていることを意味する。
【0016】
このように、
図1に示すラミネート型電池10Aは、先端400が電極体2側を向いた形状を有している。この融着部40に対して外部から衝撃が加えられた場合、例えば
図1における右側方向から融着部40に対して衝撃が加えられた場合を想定する。その際、融着部40が直角曲げ部40aを起点にして変形し、先端部400が最初に電極体2側(電極体2を覆うラミネートフィルム4)に当たって受け止められる。その後、さらに融着部40に対して外部から(例えば
図1における右側方向から)衝撃が加え続けられても、先端部400が電極体2側に接しているため、融着部40は変形しづらくなる。これにより、融着部40における耐衝撃性が向上し、その結果、融着部40に対して加えられる衝撃によって電極体2に破損が生じることを抑制できる。
【0017】
なお、
図1には、弧状に曲げられた3箇所の曲げ部を有する態様を示すが、曲げ部は角状、つまり角を有する形状で曲げられていてもよい。
【0018】
また、
図1には、融着部40の長手方向において、先端400のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する態様を示すが、融着部の先端は少なくとも一部が電極体側を向いた形状を有していればよい。融着部の先端の少なくとも一部が電極体側を向いた形状であることで、融着部に対して外部から衝撃が加えられた場合であっても、電極体側を向いた一部の先端部がまず電極体側に当たって受け止められるため、融着部における耐衝撃性が向上し、電極体の破損を抑制できる。
【0019】
なお、本開示の実施形態に係るラミネート型電池は、融着部において90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部、及び融着部の最も先端よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部を含めた、3箇所以上の曲げ部を有していればよい。融着部は、折り曲げ部として、70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所以上の直角曲げ部、及び20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の折り返し曲げ部を有することが、融着部における構造効率の向上の観点で好ましい。
【0020】
(第2態様)
図2は、本実施形態の別の態様に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
ラミネート型電池10Bは、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は、一端側と他端側とが重ね合わされ内面同士が融着された融着部42を有する。融着部42は、融着部42の根元側(つまり電極体2に最も近い位置)から先端420側にかけて、略90°の角度となるよう弧状に曲げられた直角曲げ部42a、略90°の角度となるよう弧状に曲げられた直角曲げ部42b、略0°の角度となるよう弧状に曲げられた折り返し曲げ部42c、略90°の角度となるよう弧状に曲げられた直角曲げ部42d、及び融着部42の最も先端420よりの位置において略90°の角度となるよう弧状に曲げられた先端側曲げ部42eの、計5箇所の曲げ部を有する。先端側曲げ部42eは、残りの全ての曲げ部(つまり直角曲げ部40a、40b、40d、及び折り返し曲げ部40c)の中で、融着部42の最も根元側の曲げ部に相当する直角曲げ部40aに最も近い位置に配置されている。
【0021】
融着部42は、先端420が電極体2側を向いた形状を有する。つまり、融着部42における先端420が先端側曲げ部42eよりも電極体2に近い位置に配置されている。
図2に示す融着部42は、融着部42の長手方向(
図2における奥行き方向)において、先端420のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する。
【0022】
このように、
図2に示すラミネート型電池10Bは、先端420が電極体2側を向いた形状を有している。この融着部42に対して外部から衝撃が加えられた場合、例えば
図2における右側方向から融着部42に対して衝撃が加えられた場合を想定する。その際、融着部42が直角曲げ部42aを起点にして変形し、折り返し曲げ部42cが最初に電極体2側(電極体2を覆うラミネートフィルム4)に当たる。ただし、さらに衝撃が加え続けられることで、電極体2側に接触した折り返し曲げ部42cは滑ってずれる(
図2における上側方向にずれる)ものと考えられる。その後、さらに融着部42に対して衝撃が加え続けられると、次に先端部420が電極体2側(電極体2を覆うラミネートフィルム4)に当たって受け止められる。その後は、さらに融着部42に対して外部から(例えば
図2における右側方向から)衝撃が加え続けられても、先端部420が電極体2側に接しているため、融着部42は変形しづらくなる。これにより、融着部42における耐衝撃性が向上し、その結果、融着部42に対して加えられる衝撃によって電極体2に破損が生じることを抑制できる。
【0023】
なお、
図2には、弧状に曲げられた5箇所の曲げ部を有する態様を示すが、曲げ部は角状、つまり角を有する形状で曲げられていてもよい。
また、
図2には、融着部42の長手方向において、先端420のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する態様を示すが、融着部の先端は少なくとも一部が電極体側を向いた形状を有していればよい。
【0024】
(第3態様)
図3は、本実施形態の別の態様に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
ラミネート型電池10Cは、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は、一端側と他端側とが重ね合わされ内面同士が融着された融着部44を有する。融着部44は、融着部44の根元側(つまり電極体2に最も近い位置)から先端440側にかけて、略90°の角度となるよう弧状に曲げられた直角曲げ部44a、略0°の角度となるよう弧状に曲げられた折り返し曲げ部44b、及び融着部44の最も先端440よりの位置において略90°の角度となるよう弧状に曲げられた先端側曲げ部44cの、計3箇所の曲げ部を有する。
なお、先端側曲げ部44cは、残りの全ての曲げ部(つまり直角曲げ部44a及び折り返し曲げ部44b)の中で、融着部44の最も根元側の曲げ部には相当しない折り返し曲げ部44bに最も近い位置に配置されている。
【0025】
融着部44は、先端440が電極体2側を向いた形状を有する。つまり、融着部44における先端440が先端側曲げ部44eよりも電極体2に近い位置に配置されている。
図3に示す融着部44は、融着部44の長手方向(
図3における奥行き方向)において、先端440のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する。
【0026】
このように、
図3に示すラミネート型電池10Cは、先端440が電極体2側を向いた形状を有している。この融着部44に対して外部から衝撃が加えられた場合、例えば
図3における右側方向から融着部44に対して衝撃が加えられた場合を想定する。その際、融着部44が直角曲げ部44aを起点にして変形し、先端部440が最初に電極体2側(電極体2を覆うラミネートフィルム4)に当たって受け止められる。その後、さらに融着部44に対して外部から(例えば
図3における右側方向から)衝撃が加え続けられても、先端部440が電極体2側に接しているため、融着部44は変形しづらくなる。これにより、融着部44における耐衝撃性が向上し、その結果、融着部44に対して加えられる衝撃によって電極体2に破損が生じることを抑制できる。
【0027】
なお、
図3には、弧状に曲げられた3箇所の曲げ部を有する態様を示すが、曲げ部は角状、つまり角を有する形状で曲げられていてもよい。
また、
図3には、融着部44の長手方向において、先端440のすべての領域が電極体2側を向いた形状を有する態様を示すが、融着部の先端は少なくとも一部が電極体側を向いた形状を有していればよい。
【0028】
図1~
図3に示す第1~第3態様では、電極体の端面が傾斜面である態様を示したが、電極体の形状はこれに限定されるものではない。例えば、
図4に示すように、直方体の形状の電極体2Dを用いることもできる。
【0029】
本開示の実施形態に係るラミネート型電池では、融着部の先端が電極体側を向いた形状を有する。この融着部の先端と、電極体を覆う領域のラミネートフィルムと、の最短距離は、外部からの衝撃に対する融着部の耐衝撃性の向上の観点から、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1mm以下であることがより好ましい。なお、融着部の先端と、電極体を覆う領域のラミネートフィルムと、の最短距離とは、例えば
図1では距離a1を、
図2では距離a2を、
図3では距離a3を、
図4では距離a4を指す。
【0030】
図1~
図3に示す第1~第3態様では、電極体を1枚のラミネートフィルムで覆うラミネート型電池を示した。しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、電極体を複数のラミネートフィルムで覆うラミネート型電池であってもよい。例えば、電極体を2枚のラミネートフィルムで覆うラミネート型電池であって、2枚のラミネートフィルムの端部同士を重ね合わせてその内面を融着して融着部を形成することで封入したラミネート型電池であってもよい。
【0031】
<ラミネート型電池の製造方法>
次に、本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造方法について説明する。
ラミネート型電池の製造方法は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、融着部は、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた2箇所以上の折り曲げ部、及び融着部の最も先端よりの位置において180°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の先端側曲げ部を含めた、3箇所以上の曲げ部を有し、融着部は、先端の少なくとも一部が電極体側を向いた形状を有し、融着部は、折り曲げ部として、20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所の折り返し曲げ部、及び折り返し曲げ部よりも融着部における根元側に形成され70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた1箇所以上の直角曲げ部を有する、ラミネート型電池を製造する方法である。
【0032】
そして、ラミネートフィルムの端部同士が重ね合わされて内面が融着された、平面状の融着部を有する融着後ラミネート型電池を準備する工程と、
融着後ラミネート型電池における融着部に、20°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた折り返し曲げ部を形成する折り返し曲げ工程と、
折り返し曲げ部よりも融着部における根元側の領域に、70°以上90°以下の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた直角曲げ部を形成する直角曲げ工程と、
を有し、
直角曲げ工程は、融着部の折り曲げ側の面に接触し且つ融着部に対して接触角度が異なる少なくとも3つの折り曲げローラと、折り曲げローラに対して融着部を介して対向する位置に設けられる折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、融着部を段階的に折り曲げて直角曲げ部を形成する工程であり、
且つ直角曲げ工程は、ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラに、折り返し曲げ部よりも融着部における先端側の領域を接触させて、先端側曲げ部を形成する工程である。
【0033】
・第1態様のラミネート型電池の製造例
まず、
図1に示す第1態様のラミネート型電池の製造方法を例にして、説明する。第1態様のラミネート型電池10Aにおける、直角曲げ部40a、折り返し曲げ部40b、及び先端側曲げ部40cは、例えば、以下に示す折り返し曲げ工程及び直角曲げ工程を施すことで形成することができる。
【0034】
まず、折り曲げられていない平面状の融着部40を有するラミネート型電池(融着後ラミネート型電池)に対し、折り曲げの操作を行って折り返し曲げ部40bを形成する(折り返し曲げ工程)。折り返し曲げ工程での折り曲げの操作は、例えば融着部40の折り曲げ側(つまり折り返し曲げ部40bにおける谷折り側)の面に接触し且つ融着部40に対して接触角度が異なる複数の折り曲げローラと、折り曲げローラに対して融着部40を介して対向する位置に設けられる折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、融着部40を段階的に折り曲げる方法が挙げられる。
【0035】
次いで、折り返し曲げ部40bが形成された融着部40に対し、折り返し曲げ部40bよりも融着部40における根元側の領域に、折り曲げの操作を行って直角曲げ部40aを形成する(直角曲げ工程)。直角曲げ工程での折り曲げの操作は、例えば融着部40の折り曲げ側(つまり直角曲げ部40aにおける谷折り側)の面に接触し且つ融着部40に対して接触角度が異なる少なくとも3つの折り曲げローラと、折り曲げローラに対して融着部40を介して対向する位置に設けられる折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、融着部40を段階的に折り曲げる方法が挙げられる。
【0036】
なお、直角曲げ工程では、ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラに、折り返し曲げ部40bよりも融着部40における先端400側の領域を接触させることで、さらに先端側曲げ部40cを形成することができる。なお、ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラを融着部40における先端400側の領域に接触させる際、融着部40の長手方向において、先端400のすべての領域に接触してもよく、融着部40の先端400の一部にのみ接触してもよい。
【0037】
直角曲げ工程において、接触角度が異なる少なくとも3つの折り曲げローラを有する上記のローラ対群を用いて直角曲げ部40aを形成し、且つ上記ローラ対群における少なくとも1つの折り曲げローラを融着部40の先端400側の領域に接触させて先端側曲げ部40cを形成することで、融着部40におけるスプリングバックの発生を抑制できる。また、融着部40の先端400の少なくとも一部が電極体2側を向いた形状とすることができ、融着部40における耐衝撃性を向上させることができる。
【0038】
・第2態様のラミネート型電池の製造例
図2に示す第2態様のラミネート型電池の製造方法としては、上述の第1態様のラミネート型電池の製造例において、更に折り返し曲げ工程の後かつ直角曲げ工程の前、又は直角曲げ工程の後に、第2直角曲げ工程を行う方法が挙げられる。
【0039】
つまり、第1態様のラミネート型電池の製造例と同様にして折り返し曲げ部42cを形成し(折り返し曲げ工程)、次いで第1態様のラミネート型電池の製造例と同様にして直角曲げ部42a及び先端側曲げ部42eを形成する(直角曲げ工程)。その後、折り返し曲げ部42cと先端側曲げ部42eとの間の領域、及び折り返し曲げ部42cと直角曲げ部42aとの間の領域に、それぞれ直角曲げ部42b及び42dを形成する(第2直角曲げ工程)。第2直角曲げ工程での折り曲げの操作は、例えば融着部42の折り曲げ側(つまり直角曲げ部42dにおける谷折り側)の面に接触し且つ融着部42に対して接触角度が異なる複数の折り曲げローラと、折り曲げローラに対して融着部42を介して対向する位置に設けられる折り曲げローラと同数の対向ローラと、を有するローラ対群の各ローラ対の間を搬送させることで、融着部42を段階的に折り曲げる方法が挙げられる。なお、第2直角曲げ工程を、折り返し曲げ工程の後かつ直角曲げ工程の前に行ってもよい。
【0040】
上記に示す第2態様のラミネート型電池の製造例によれば、融着部42におけるスプリングバックの発生を抑制できる。また、融着部42の先端420の少なくとも一部が電極体2側を向いた形状とすることができ、融着部42における耐衝撃性を向上させることができる。
【0041】
なお、本開示の実施形態に係るラミネート型電池を製造する方法は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、
図3に示す第3態様のラミネート型電池の製造方法としては、直角曲げ部44a、折り返し曲げ部44b、及び先端側曲げ部44cを、それぞれ別の折り曲げ工程によって形成する方法が挙げられる。
【0042】
(電池の部材)
次いで、本実施形態に係るラミネート型電池を構成する、電極体及びラミネートフィルムについて説明する。
【0043】
(1)ラミネートフィルム
ラミネートフィルムとしては、例えば金属層を有するフィルムが挙げられ、さらに金属層の両面にそれぞれ樹脂層を有する三層構造のフィルムが挙げられる。なお、三層構造のフィルムにおいて、電極体側となる内側の樹脂層(つまり融着する樹脂層)を融着樹脂層とし、電極体側とは反対側の外周面側となる樹脂層を保護樹脂層とする。
【0044】
融着樹脂層の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。保護樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンが挙げられる。融着樹脂層の厚さは、例えば40μm以上100μm以下である。金属層の厚さは、例えば30μm以上60μm以下である。保護樹脂層の厚さは、例えば20μm以上60μm以下である。ラミネートフィルム全体の厚さは、例えば70μm以上、220μm以下である。
【0045】
(2)電極体
電極体は、電池の発電要素として機能する。電極体の形状は特に限定されないが、例えば、直方体の形状、端面が傾斜面となる形状等が挙げられる。電極体は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を、厚さ方向において、この順に有する。
【0046】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。
【0047】
正極活物質として、リチウム複合酸化物を含むことが好ましい。リチウム複合酸化物は、F、Cl、N、S、Br及びIよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、空間群R-3m、Immm、及びP63-mmc(P63mc、P6/mmcともいう。)より選ばれる少なくとも1つの空間群に属する結晶構造を有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、遷移金属、酸素、及びリチウムの主たる配列がO2型構造であってもよい。
【0048】
R-3mに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、LixMeyOαXβ(MeはMn、Co、Ni、Fe、Al、Cu、V、Nb、Mo、Ti、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Ag、Ru、W、B、Si及びPからなる群より選択される少なくとも一種を表し、Xは、F、Cl、N、S、Br及びIからなる群より選択される少なくとも一種を表し、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.0、1≦α<2、0<β≦1を満たす。)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
Immmに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Lix1M1A1
2(1.5≦x1≦2.3を満たし、M1はNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、A1は少なくとも酸素を含み、A1に占める酸素の比率は85原子%以上である。)で表される複合酸化物(具体的な例としてLi2NiO2)、Lix1M1A
1-x2M1B
x2O2-yA2
y(0≦x2≦0.5、0≦y≦0.3であり、x2及びyの少なくとも一方は0でなく、M1AはNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、M1BはAl、Mg、Sc、Ti、Cr、V、Zn、Ga、Zr、Mo、Nb、Ta及びWよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、A2はF、Cl、Br、S及びPよりなる群から選択される少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0050】
P63-mmcに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、M1xM2yO2(M1はアルカリ金属(Na及びKの少なくとも一種が好ましい)を表し、M2は遷移金属(Mn、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい)を表し、x+yは0<x+y≦2を満たす。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0051】
O2型構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Lix[Liα(MnaCobMc)1-α]O2(0.5<x<1.1、0.1<α<0.33、0.17<a<0.93、0.03<b<0.50、0.04<c<0.33であり、MはNi、Mg、Ti、Fe、Sn、Zr、Nb、Mo、W及びBiよりなる群から選ばれる少なくとも一種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられ、具体的な例としてLi0.744[Li0.145Mn0.625Co0.115Ni0.115]O2等が挙げられる。
【0052】
また、正極は、正極活物質に加え、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる固体電解質を含むことが好ましく、正極活物質の表面の少なくとも一部が、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、又はハロゲン化物固体電解質で被覆されている態様がより好ましい。正極活物質の表面の少なくとも一部を被覆するハロゲン化物固体電解質としては、Li6-(4-x)b(Ti1-xAlx)bF6(0<x<1、0<b≦1.5)〔LTAF電解質〕が好ましい。
【0053】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF6等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0054】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Li4Ti5O12等の酸化物活物質が挙げられる。負極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0055】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質層としては、固体電解質層であることが好ましい。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0056】
固体電解質として、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる少なくとも1つの固体電解質種を含むことが好ましい。
【0057】
硫化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として硫黄(S)を含有することが好ましく、更には例えばLi元素、A元素、及びS元素を含有することが好ましい。A元素は、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、及びInよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。硫化物固体電解質は、O及びハロゲン元素の少なくとも一方を更に含有してもよい。ハロゲン元素(X)としては、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。硫化物固体電解質の組成は、特に限定されず、例えば、xLi2S・(100-x)P2S5(70≦x≦80)、yLiI・zLiBr・(100-y-z)(xLi2S・(1-x)P2S5)(0.7≦x≦0.8、0≦y≦30、0≦z≦30)が挙げられる。硫化物固体電解質は、下記一般式(1)で表される組成を有してもよい。
Li4-xGe1-xPxS4 (0<x<1) ・・・式(1)
式(1)において、Geの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも一つで置換されてもよい。また、Pの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Liの一部は、Na、K、Mg、Ca及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Sの一部は、ハロゲンで置換されてもよい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br及びIの少なくとも1つである。
【0058】
酸化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有することが好ましく、例えば、Li、Q元素(Qは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W及びSの少なくとも一種を表す。)、及びOを含有してもよい。酸化物固体電解質としては、ガーネット型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ナシコン型固体電解質、Li-P-O系固体電解質、Li-B-O系固体電解質等が挙げられる。ガーネット型固体電解質としては、例えば、Li7La3Zr2O12、Li7-xLa3(Zr2-xNbx)O12(0≦x≦2)、Li5La3Nb2O12等が挙げられる。ペロブスカイト型固体電解質としては、例えば、(Li、La)TiO3、(Li、La)NbO3、(Li、Sr)(Ta、Zr)O3等が挙げられる。ナシコン型固体電解質としては、例えば、Li(Al、Ti)(PO4)3、Li(Al、Ga)(PO4)3等が挙げられる。Li-P-O系固体電解質としては、Li3PO4、LIPON(Li3PO4のOの一部をNに置換した化合物)、Li-B-O系固体電解質としては、Li3BO3、Li3BO3のOの一部をCで置換した化合物等が挙げられる。
【0059】
ハロゲン化物固体電解質として、Li、M及びXを含む固体電解質(MはTi、Al及びYの少なくとも1つを表し、XはF、Cl又はBrを表す。)が好適である。具体的には、Li6-3zYzX6(XはCl又はBrを表し、zは0<z<2を満たす。)、Li6-(4-x)b(Ti1-xAlx)bF6(0<x<1、0<b≦1.5)が好ましい。Li6-3zYzX6の中でも、リチウムイオン伝導度に優れる点で、Li3YX6(XはCl又はBr表す。)がより好ましく、更にはLi3YCl6が好ましい。また、Li6-(4-x)b(Ti1-xAlx)bF6(0<x<1、0<b≦1.5)は、例えば、硫化物固体電解質の酸化分解を抑える等の観点から、硫化物固体電解質等の固体電解質とともに含まれることが好ましい。
【0060】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等が挙げられ、アルミニウム合金箔又はアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム合金箔及びアルミニウム箔は、粉末を用いて製造されてもよい。正極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。
【0061】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0062】
・電池構造
固体電池の構造は、正極/固体電解質層/負極の積層構造を有する。固体電池には、電解質として固体電解質を用いたいわゆる全固体電池が含まれ、固体電解質は電解質全量に対して10質量%未満の電解液を含んでもよい。なお、固体電解質は、無機系固体電解質とポリマー電解質を含む複合固体電解質であってもよい。
【0063】
正極は、正極活物質層と集電体とを有し、負極は、負極活物質層と集電体とを有する。
固体電解質層は、単層構造でもよいし、2層以上の多層構造でもよい。
固体電池は、例えば、
図5に示す断面構造を有していてもよく、固体電解質層Bは
図5のように2層構造でもよい。
図5は、固体電池の一例を示す概略断面図である。
図5に示す固体電池は、負極集電体113及び負極活物質層Aを含む負極と、固体電解質層Bと、正極集電体115及び正極活物質層Cを含む正極と、を有している。負極活物質層Aは、負極活物質101、導電助剤105及びバインダー109を含む。正極活物質層Cは、被覆正極活物質103、導電助剤107及びバインダー111を含み、被覆正極活物質103は、正極活物質の表面がLTAF電解質又はLiNbO
3電解質で被覆されている。
また、固体電池は、正極/固体電解質層/負極の積層構造の積層端面(側面)を樹脂で封止して構成されていてもよい。電極の集電体は、表面に緩衝層、弾性層、又はPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ層が配置された構成であってもよい。
【0064】
・電池
本開示におけるラミネート型電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0065】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
2 電極体
4 ラミネートフィルム
10A、10B、10C ラミネート型電池
20 端面
40a、42a、42b、42d、44a 直角曲げ部
40b、42c、44b 折り返し曲げ部
40c、42e、44c 先端側曲げ部
400、420、440 先端
101 負極活物質
103 被覆正極活物質
105、107 導電助剤
109、111 バインダー
113 負極集電体
115 正極集電体
A 負極活物質層
B 固体電解質層
C 正極活物質層