(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173509
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】引き戸操作補助装置及び建具
(51)【国際特許分類】
E05F 13/02 20060101AFI20241205BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E05F13/02
E05B1/00 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091980
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川中 勝男
(72)【発明者】
【氏名】植野 ひかり
(57)【要約】
【課題】ハンドルをベース部材に対して取り外し可能に構成することで、ハンドルを適宜変更することができる引き戸操作補助装置及び建具の提供を目的とする。
【解決手段】枠体に対して開閉可能に設けられる引き戸1に配置された引き戸操作補助装置10であって、引き戸1の正面側に平面部を配置し、この平面部にハンドル11を取り外し可能に固定するベース部材12と、ベース部材12を移動可能に格納するケース13と、ハンドル11の操作時に、ケース13から突出するプッシュブロック14と、プッシュブロック14をケース13内に後退させる方向に付勢する弾性部材23とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に対して開閉可能に設けられる引き戸に配置される引き戸操作補助装置であって、
前記引き戸の正面側に平面部を有し、ハンドルを前記平面部において取り外し可能に固定するベース部材と、
前記ベース部材を移動可能に格納するケースと、
前記ハンドルの操作時に、前記引き戸の移動方向と反対方向に前記ケースから突出するプッシュブロックと、
前記プッシュブロックを前記ケース内に後退させる方向に付勢する弾性部材と、
を有する、引き戸操作補助装置。
【請求項2】
前記ハンドルの非操作時において、前記平面部が前記引き戸の正面部と実質的に平行に配置され、
前記ハンドルの操作時において、前記平面部が前記引き戸の正面から傾斜する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の引き戸操作補助装置。
【請求項3】
前記ハンドルの非操作時において、前記平面部は、前記扉の正面部と略同一面に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の引き戸操作補助装置。
【請求項4】
前記ケースには、前記ベース部材を軸支するピンが上下方向を向くように固定され、
前記ピンは、正面視における前記ケースの左右方向中心からオフセットした位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の引き戸操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の引き戸操作補助装置を備えた引き戸と、
前記引き戸が移動可能に取り付けられる枠体と、
を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引き戸操作補助装置及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引き戸を開ける際の操作力を軽減するための引き戸操作補助装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。従来の引き戸操作補助装置においては、ハンドル部とアシスト機構とが一体に構成されている。例えば、特許文献1に記載の引き戸操作補助装置においては、引き戸の戸先框に基枠を収設し、基枠に先端が弾性力に抗して戸先框より突出する押圧材を移動自在に支持させると共に、戸先框に縦軸回動自在に組付けた操作ハンドルに腕部片を突設し、該腕部片に前記押圧材に連結する駆動杆を設けた構成が公知となっている。
【0003】
従来の引き戸操作補助装置の構成においては、操作ハンドルと腕部片とが一体に構成されているため、ハンドルの意匠を変更するためには、引き戸操作補助装置自体を変更する必要があった。そのため、ユーザの多種多様な好みのデザインハンドルに対応することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ハンドルをベース部材に対して取り外し可能に構成することで、ハンドルを適宜変更することができる引き戸操作補助装置及び建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、この発明は、枠体に対して開閉可能に設けられる引き戸に配置される引き戸操作補助装置であって、
前記引き戸の正面側に平面部を有し、ハンドルを前記平面部において取り外し可能に固定するベース部材と、
前記ベース部材を移動可能に格納するケースと、
前記ハンドルの操作時に、前記引き戸の移動方向と反対方向に前記ケースから突出するプッシュブロックと、
前記プッシュブロックを前記ケース内に後退させる方向に付勢する弾性部材と、を有するものである。
【0007】
また、前記ハンドルの非操作時において、前記平面部が前記引き戸の正面部と実質的に平行に配置され、
前記ハンドルの操作時において、前記平面部が前記引き戸の正面から傾斜する位置に配置されるものである。
【0008】
また、この発明は、前記ハンドルの非操作時において、前記平面部は、前記扉の正面部と略同一面に配置されるものである。
【0009】
また、前記ケースには、前記ベース部材を軸支するピンが上下方向を向くように固定され、
前記ピンは、正面視における前記ケースの左右方向中心からオフセットした位置に配置されるものである。
【0010】
また、この発明は、前記引き戸操作補助装置を備えた引き戸と、前記引き戸が移動可能に取り付けられる枠体と、を有する建具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハンドルが、前記ベース部材に対して取り外し可能に固定されるため、引き戸を開くために操作力を小さくすることができながら、使用者のニーズに合わせてハンドルの形状を変更することが容易となり、建具の意匠性も高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態にかかる引き戸操作補助装置が設けられた引き戸の全体構成を示す斜視図であって、(A)ハンドル非操作時の引き戸操作補助装置を示す斜視図(B)ハンドル操作時の引き戸操作補助装置を示す斜視図。
【
図3】同じく、カバー部材を取り外した引き戸操作補助装置を示す背面図。
【
図4】同じく、ハンドル非操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【
図5】同じく、ハンドル操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【
図11】同じく、カバー部材、プッシュブロック、ケースを示す背面側の分解斜視図。
【
図12】第二実施形態にかかるハンドル非操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【
図13】同じく、ハンドル操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【
図14】第三実施形態にかかるハンドル非操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【
図15】同じく、ハンドル操作時の引き戸操作補助装置を示す平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
以下に、
図1を用いて、第一実施形態に係る引き戸操作補助装置10を備えた引き戸1について説明する。なお、以下の説明において、
図1の紙面上下方向を上下方向と定義し、紙面左手前方向を前方向と定義し、前方向および上下方向と直交する方向を左右方向として定義する。すなわち、引き戸1に向かって手前側を前方、奥側を後方とする。
【0014】
引き戸1は、例えば、建物や大型加工機の開閉口を囲む枠体に配置され、枠体上をスライド可能に支持される。なお、引き戸において、閉まる方向を戸先側と定義し、開く方向を戸尻側と定義する。
【0015】
すなわち、正面視長方形型の開口部に対して引き戸1が戸先方向または戸尻方向へスライド移動することにより、開閉口が開閉可能となるように配置される。枠体はステンレスやアルミ等の金属で形成されている。
【0016】
引き戸1の戸先側であって、上下方向の2カ所には、
図9(A)に示すように引き戸操作補助装置10が設けられている。引き戸操作補助装置10は、引き戸1の正面側に平面部12fを有し、ハンドル11を平面部12fにおいて取り外し可能に固定するベース部材12と、ベース部材12を移動可能に格納するケース13と、を備える。なお、ケース13の前方開口部において、平面部12fは前方に露出している。
【0017】
引き戸操作補助装置10は、引き戸1の前面に配置されたハンドル11を戸尻方向へ引くという操作に伴い、プッシュブロック14を駆動させてケース13から引き戸の移動方向と反対方向に突出させることで、プッシュブロック14の突出片が枠体を押すように構成した装置である。
【0018】
ハンドル11は、様々な意匠の取手を有するハンドルであってよい。例えば本実施形態においては、
図9(A)に示すように、ベース部材12側端部から前面に突出した基端部11aと基端部11a前方から上下方向へ屈曲する持手部11bとからなる折り曲げ柱状のハンドルで構成される。基端部11aには、
図4に示すように、ベース部材12に取り付け可能な取付部20が設けられる。本実施形態においては、取付部20は、ハンドル11の基端部11aに設けられたネジ孔11d、ベース部材12に設けられた貫通孔12a、およびネジ部材21によって構成される。ネジ部材21を締結することにより、ベース部材12とハンドル11とが固定される。また、ネジ部材21をネジ孔11dから取り外すことにより、ベース部材12からハンドル11が取り外される。
【0019】
このように構成することにより、ベース部材12からハンドル11の取り外しが容易となるため様々な意匠のハンドルに取り替えが容易となる。例えば、
図9(B)のように、ベース部材12側端部から前面に突出した2カ所の基端部11aと、これに直交する丸棒状の持手部11bとからなる組立て柱状のハンドルでも良いし、
図9(C)のように、引き戸操作補助装置10を1カ所のみとし、丸棒状の持手部11bの中央で基端部11aと接合した構成でも良い。ハンドル11の基端部11aの個数は3個以上にしても良いし、基端部11aのピッチも適宜設定可能である。
【0020】
ベース部材12は、ハンドル11と共にケース13に対して移動可能に構成される部材である。また、ベース部材12は、ハンドル11の戸尻方向へ移動する力をプッシュブロック14へ伝達する部材でもある。
図2から
図8に示すように、ベース部材12は、ハンドル11の基端部11aが取り付けられる平面部12fが形成される前面側の板面12bを有する。板面12bの平面部12fは、ハンドル非操作時において、ケース13の前端および引き戸1の前面と実質的に平行であり、また互いに略同一面上に位置するように構成される。なお、実質的に平行とは、本明細書においては、平面部12fの法線とケース13の前端または引き戸1の前面における法線の成す角度が10度以内、より好ましくは5度以内であることをいう。また、
図6から
図8に示すように、前面には、取付部20を構成する貫通孔12aが設けられている。貫通孔12aは、板面12bの上下方向中央部であって、左右方向中央部に配置されている。
【0021】
図7および
図8に示すように、ベース部材12の板面12bの平面部12fと反対側の後面には後面当接部12cが設けられている。後面当接部12cは、ベース部材12の後側上下端であって、戸尻側に設けられている。後面当接部12cは、ハンドル11の操作時において、ケース13の前方内部の後側と平行に配置されるように傾斜して構成されている。
【0022】
図4から
図8に示すように、ベース部材12の板面12bの後側面には、後方に突出する突出部12dが設けられている。突出部12dは、ハンドル11の操作時および非操作時において、プッシュブロック14に設けられた係合溝14bの側面と当接している。
【0023】
また、
図4に示すように、ベース部材12の板面12bの戸尻側端部には、ハンドル11の非操作時において、ケース13の前面後側と当接するために一段切り欠かれた段差部12eが設けられている。これによって、ハンドル11の非操作時において、ハンドル11を固定するための平面部12fが引き戸1の正面側と実質的に平行になるように位置規制される。
【0024】
図2から
図5に示すように、ケース13は、前面にベース部材12を回動可能に配置し、後面をカバー部材15で覆っている。カバー部材15は、ケース13後面全てを被覆する板状または箱状の部材であり、ケース13背面の四隅にネジ等の固定部材によって取り付けられる。
【0025】
また、
図10に示すように、ケース13の前方内部の後側にはベース部材12の後面当接部12cと当接する後面13aが設けられている。後面13aは、ケース13の後側であって上部および下部に一部のみ設けられており、ケース13の後側中央部は開放されている。後面13aは、プッシュブロック14と当接しない位置に配置されている。
図4に示すように、後面13aには後面当接部12cと当接する際の衝突力を吸収するための弾性シート16A(二点鎖線で描画)が貼り付けられている。弾性シート16Aは、ゴムまたは弾性力を有する樹脂等で構成されており、後面当接部12cと広い面積が当接することにより、ハンドル11操作時の衝突力を吸収する。
【0026】
また、ケース13の前面後側であって段差部12eと当接する箇所には衝突力を吸収するための弾性シート16B(二点鎖線で描画)が貼り付けられている。弾性シート16Bは、ゴムまたは弾性力を有する樹脂等で構成されており、段差部12eと広い面積が当接することにより、ハンドル11が操作時の位置から非操作時の位置に戻るときの衝突力を吸収する。
【0027】
図11に示すように、ケース13の後方内部にはカバー部材15で覆うようにしてプッシュブロック14が格納されている。ここで、プッシュブロック14の上下2カ所の前面14eとケース13の上下2カ所のガイド面13eとが摺接すると共に、プッシュブロック14の後面14fとカバー部材15とが摺接するように構成されている。これにより、プッシュブロック14は、戸先方向または戸尻方向に移動可能に格納される。またケース13の側面には、プッシュブロック14の突出部14aが突出可能に開放された突出部用孔13dが設けられている。突出部14aは、プッシュブロック14の戸先側端部であってケース13の上下方向中央部に配置されている。
【0028】
図4、
図5、
図10に示すように、ベース部材12は、ケース13の上下面に支持されるピン17によって回動可能に支持される。ケース13の上下面には、ピン17を挿入可能なピン支持孔13bが設けられている。ピン支持孔13bはケース13の左右方向において中心からオフセットされた位置に配置されている。
【0029】
本実施形態においては、ピン支持孔13bは戸先側に配置されている。このように構成することにより、ハンドル11の操作時において、ハンドル11を戸尻側に引くと、ベース部材12はピン17を中心として後側に回動する。これにより、
図5に示すように、ハンドル11およびベース部材12がケース13側へ没入する。このため、引き戸操作補助装置10の内部に油汚れが多少たまっていた場合でも、外部に漏出しにくく、ハンドル11を触る手が汚れることがない。
【0030】
図4および
図5に示すように、カバー部材15の中央部には、作業孔15aが設けられている。作業孔15aにはキャップ18を取り付けることができる。作業孔15aは、背面視において、ネジ部材21と重なるように配置されており、キャップ18を取り外した場合には、作業孔15aに工具を挿入することで、ネジ部材21を取り外し可能に構成されている。
【0031】
また、
図3に示すように、プッシュブロック14の戸先側端部であって上下方向両端部には、弾性部材23を挿入するための弾性部材挿入孔14cが形成されている。弾性部材挿入孔14cは、弾性部材23の一端を支持しつつ格納するための孔であり、プッシュブロック14の上下に二か所設けられている。
【0032】
弾性部材23は、プッシュブロック14を戸尻方向へ付勢する部材である。弾性部材23の一端は、弾性部材挿入孔14cに支持されており、他端は、ケース13の内側面であって、戸先側の内側面に支持されている。
【0033】
プッシュブロック14の上下方向中央部には、ベース部材12の突出部12dと係合する係合溝14bが切り欠かれて設けられている。突出部12dは、
図4に示すように、プッシュブロック14に設けられた係合溝14bの戸先側の側面と当接している。係合溝14bは、プッシュブロック14の戸尻側であって、上下方向中央部を切り欠くことにより形成されている。係合溝14bの戸先側の面は、ハンドル11の非操作時において、突出部12dの戸先側側面と平行となるように形成される。
【0034】
図1(A)に示すように、ハンドル11の非操作時においては、ベース部材12の平面部12fは、ケース13の前面と前後方向において略同一の位置に配置される。また、ケース13の前端面は、引き戸1の前面と略同一面に配置される。これにより、ハンドル11の非操作時においては、ベース部材12全体がケース13に格納され、さらに引き戸1の前面と略同一面に、ベース部材12前面およびケース13前面が位置するようになり意匠性が向上する。
【0035】
図1(B)に示すように、ハンドル11の操作時において、ベース部材12は、ケース13の前面に対して傾斜するように配置される。なお、本実施形態において、ハンドル11の操作時とは、ハンドル11に対して引き戸1の戸尻側へ力を加えた状態を指す。これにより、ハンドル11の操作時においては、引き戸1が戸尻側へと移動して引き戸1が開放される。
【0036】
ハンドル11の操作時において、
図5に示すように、ベース部材12はピン17を中心として後側に回動する。ベース部材12が後側に回動することで、ベース部材12の突出部12dが係合溝14bを戸先側へと押し出す。これにより、プッシュブロック14が弾性部材23の弾性力に抗して戸先側へと移動する。
【0037】
プッシュブロック14の移動により戸先側端部に設けられた突出部14aが引き戸1の戸先側面から突出する。これにより、突出部14aが、図示しない枠体と当接して、相対的に引き戸1が戸尻側へと移動する。このように突出部14aの当接する力によって引き戸1の移動がサポートされ、少ない力で引き戸1を戸尻側へ移動させることができるのである。
【0038】
以上に示すように、本実施形態に係る引き戸操作補助装置10は、枠体に対して開閉可能に設けられる引き戸1に配置される引き戸操作補助装置10であって、引き戸1の正面側に平面部12fを有し、ハンドル11を平面部12fにおいて取り外し可能に固定するベース部材12と、ベース部材12を移動可能に格納するケース13と、ハンドル11の操作時に、ケース13から突出するプッシュブロック14と、プッシュブロック14をケース13内に後退させる方向に付勢する弾性部材23と、を有するものである。
このように構成することにより、取付部20におけるベース部材12に対するハンドル11の固定を解除して取り外すことにより、ハンドル11を着脱可能に構成することができるので、使用者のニーズに合わせてハンドル11の形状を変更することが可能となる。
【0039】
また、ハンドル11の非操作時において、ベース部材12の少なくともハンドル11を取り付ける平面部12fは、引き戸1の正面と実質的に平行であって段差がほとんど無い位置に配置されるように、弾性部材23がプッシュブロック14を付勢し、ハンドル11の操作時において、ベース部材12のハンドル11を取り付ける面が正面から傾斜する位置に配置されるように、ベース部材12が弾性部材23の弾性力に抗して移動し、ハンドル11の操作時において、ケース13側面からプッシュブロック14が側方に突出するものである。
【0040】
このように構成することにより、ハンドル11の操作時において、ベース部材12が後側に回動することで、ベース部材12の突出部12dが係合溝14bを戸先側へと押し出す。これにより、プッシュブロック14が弾性部材23の弾性力に抗して戸先側へと移動する。突出部14aが枠体に当接する力によって、引き戸1の移動がサポートされ、少ない力で引き戸1を戸尻側へ移動させることができる。
【0041】
また、ケース13の前端面は、引き戸1の前面と略同一面に配置されるものである。
このように構成することにより、引き戸1を正面から見たときにケース13が引き戸1と一体的に視認することができ、ケース13内部が正面側から見られないように構成することができる。またベース部材12もケース13の内部に格納されるため、正面側から見られないように構成することができる。
【0042】
また、ケース13には、上下方向を向くように配置され、ベース部材12を軸支するピン17が固定され、ピン17は、正面視におけるケース13の左右方向中心からオフセットした位置に配置されるものである。
このように構成することにより、ハンドル11を引いて傾斜させた場合であっても、ベース部材がケース13へ没入する。これにより、大型加工機においてケース13の内部に油汚れがたまっていた場合であっても、外部に油汚れが流出しにくく、手が汚れにくくなる。
【0043】
なお、本実施形態においては、取付部20の構成を、ネジ孔とネジ部材で構成したがこれに限定するものではなく、例えば、固定ピンとピン孔で構成することも可能である。
【0044】
[第二実施形態]
以下に、
図12および
図13を用いて、第二実施形態に係る引き戸操作補助装置50について説明する。
【0045】
引き戸操作補助装置50は、ハンドル51と、引き戸1の正面側に平面部52fを配置し、ハンドル51を移動可能に支持するベース部材52と、ベース部材52を移動可能に格納するケース53と、を備える。
【0046】
引き戸操作補助装置50は、引き戸1の前面に配置されたハンドル51を戸尻方向へ引くという動作に伴い、プッシュブロック54を駆動させてケース53から引き戸側面側へ突出させることで、プッシュブロック54の突出片が枠体を押すように構成した装置である。
【0047】
ハンドル51は、様々な意匠の取手を有するハンドルであってよい。例えば本実施形態においては、第一実施形態と同様に、ベース部材52側端部から前面に突出した基端部51aと基端部51a前方から上下方向へ屈曲する持手部51bとからなる折り曲げ柱状のハンドルで構成される。基端部51aには、ベース部材52に取り付け可能な取付部60が設けられる。本実施形態においては、取付部60は、ハンドル51の基端部51aに設けられたネジ孔51d、ベース部材52に設けられた貫通孔52a、およびネジ部材61によって構成される。ネジ部材61を締結することにより、ベース部材52とハンドル51とが固定される。また、ネジ部材61をネジ孔51dから取り外すことにより、ベース部材52からハンドル51が取り外される。
【0048】
このように構成することにより、ベース部材52からハンドル51の取り外しが容易となるため様々な意匠の取手を有するハンドルに取り替えが容易となる。
【0049】
ベース部材52は、ハンドル51と共にケース53に対して移動可能に構成される部材である。また、ハンドル51の戸尻方向へ移動する力をプッシュブロック54へ伝達する部材でもある。ベース部材52は、ハンドル51の基端部51aと取り付けられる引き戸1の前面側の板面52bを有する。板面52bは、ハンドル非操作時において、ケース53の前端および引き戸1の前面と略同一面上に位置するように構成される。また前面には、取付部60を構成する貫通孔52aが設けられている。貫通孔52aは、板面52bの上下方向中央部であって、左右方向中央部に配置されている。
【0050】
ベース部材52の板面52bと反対側の後面であって戸先側端部には、ベース側面部52cが設けられている。ベース側面部52cはベース部材52の回動に合わせて前面側へ板面52bが移動する際に、ケース53前面との間に外部からの塵埃が入ってこないように被覆する部分である。
【0051】
図12および
図13に示すように、ベース部材52の板面52bの後側面であって戸尻側端部には後方に突出する突出部52dが設けられている。突出部52dは、ハンドル51の操作時および非操作時において、プッシュブロック54の戸尻側側面と当接している。
【0052】
ケース53は、前面にベース部材52を回動可能に配置し、後面をカバー部材55で覆っている。ケース53の後側中央部は開放されている。
【0053】
ケース53の戸尻側側面内側には、突出部52dの側面と当接する際の衝突力を吸収するための弾性シート56(二点鎖線で描画)が貼り付けられている。弾性シート56は、ゴムまたは弾性力を有する樹脂等で構成されており、突出部52dの側面と広い面積で当接することにより、ハンドル51操作時から非操作時に戻る際の衝突力を吸収する。
【0054】
ケース53の内部にはプッシュブロック54が格納されており、プッシュブロック54の上下面とケース53の上下面とが当接するように構成されている。これにより、プッシュブロック54は、戸先方向または戸尻方向に移動可能に格納される。またケース53の側面には、プッシュブロック54の係合部が突出可能に開放された突出部用孔53dが設けられている。
【0055】
ベース部材52は、ケース53の上下面に支持されるピン57によって回動可能に支持される。ケース53の上下面には、ピン57を挿入可能なピン支持孔が設けられている。前記ピン支持孔はケース53の左右方向において中心からオフセットされた位置に配置されている。
【0056】
本実施形態においては、前記ピン支持孔は戸尻側に配置されている。このように構成することにより、ハンドル51操作時において、ハンドル51を戸尻側に引くと、ベース部材52はピン57を中心として回動する。このとき、ベース部材52の戸先側はケース53よりも前方へ突出し、戸尻側は、ケース53内部に格納される。
ベース部材52の戸先側は、ベース側面部52cによって被覆されているためケース53の内部に塵埃等が入るのを防止する。また、ハンドル51操作時に誤ってケース53とベース部材52との間に手が入るのを防止することができる。
このような構成とすることによって、引き戸操作補助装置50の内部にオイルミスト等が入り難いため、大型加工機の引戸などに採用することができる。
【0057】
カバー部材55の中央部には、作業孔55aが設けられている。作業孔55aにはキャップ58を取り付けることができる。作業孔55aは、背面視において、ネジ部材61と重なるように配置されており、キャップ58を取り外した場合には、作業孔55aに工具を挿入することで、ネジ部材61を取り外し可能に構成されている。
【0058】
プッシュブロック54は、ケース53の後側に配置されており、ケース53に対して左右方向に移動可能に配置されている。プッシュブロック54の戸先側端部には、ケース53の側面に設けられた突出部用孔53dから突出可能に構成される突出部54aが設けられている。突出部54aは、プッシュブロック54の戸先側端部であって、ケース53の上下方向中央部に配置されている。
【0059】
またプッシュブロック54の上下方向中央部には、弾性部材63を支持するための弾性部材支持面54cが形成されている。弾性部材支持面54cは、弾性部材63の一端を支持する面であり、プッシュブロック54の突出部54aの戸尻側に一か所設けられている。
【0060】
弾性部材63は、プッシュブロック54を戸尻方向へ付勢する部材である。弾性部材63の一端は、弾性部材支持面54cに支持されており、他端は、カバー部材55の内側面であって、戸先側の内側面に支持されている。なお、弾性部材63の他端は、ケース53の内側面であって、戸先側の内側面に支持されるように構成してもよい。
【0061】
プッシュブロック54の上下方向両端には、ベース部材52の突出部52dと当接する当接面54bが設けられている。
【0062】
ハンドル51の非操作時においては、ベース部材52の平面部52fは、ケース53の前面と前後方向において略同一の位置に配置される。また、ケース53の前端面は、引き戸1の前面と略同一面に配置される。これにより、ハンドル51の非操作時においては、ベース部材52全体がケース53に格納され、さらに引き戸1の前面と略同一面に、ベース部材52前面およびケース53前面が位置するようになり意匠性が向上する。
【0063】
ハンドル51の操作時において、ベース部材52は、ケース53の前面に対して傾斜するように配置される。なお、ハンドル51の操作時とは、ハンドル51に対して引き戸1の戸尻側へ力を加えた状態を指す。これにより、ハンドル51の操作時においては、引き戸1が戸尻側へと移動して引き戸1が開放される。
【0064】
ハンドル51の操作時において、ベース部材52はピン57を中心として回動する。ベース部材52が回動することで、ベース部材52の突出部52dが当接面54bを戸先側へと押し出す。これにより、プッシュブロック54が弾性部材63の弾性力に抗して戸先側へと移動する。
【0065】
プッシュブロック54の移動により戸先側端部に設けられた突出部54aが引き戸1の戸先側面から突出する。これにより、突出部54aが、枠体と当接して、相対的に引き戸1が戸尻側へと移動する。このように突出部54aの当接する力によって引き戸1の移動がサポートされ、少ない力で引き戸1を戸尻側へ移動させることができるのである。
【0066】
[第三実施形態]
以下に、
図14および
図15を用いて、第三実施形態に係る引き戸操作補助装置90について説明する。
【0067】
引き戸操作補助装置90は、ハンドル91と、引き戸1の正面側に平面部92fを配置し、ハンドル91を移動可能に支持するベース部材92と、ベース部材92を移動可能に格納するケース93と、を備える。
【0068】
引き戸操作補助装置90は、引き戸1の前面に配置されたハンドル91を戸尻方向へ引くという動作に伴い、プッシュブロック94を駆動させてケース93から引き戸側面側へ突出させることで、プッシュブロック94の突出片が枠体を押すように構成した装置である。
【0069】
ハンドル91は、様々な意匠の取手を有するハンドルであってよい。例えば本実施形態においては、第一実施形態と同様に、ベース部材92側端部から前面に突出した基端部91aと基端部91a前方から上下方向へ屈曲する持手部91bとからなる折り曲げ柱状のハンドルで構成される。基端部91aには、ベース部材92に取り付け可能な取付部100が設けられる。本実施形態においては、取付部100は、ハンドル91の基端部91aに設けられたネジ孔91d、ベース部材92に設けられた貫通孔92a、およびネジ部材101によって構成される。ネジ部材101を締結することにより、ベース部材92とハンドル91とが固定される。また、ネジ部材101をネジ孔91dから取り外すことにより、ベース部材92からハンドル91が取り外される。
【0070】
このように構成することにより、ベース部材92からハンドル91の取り外しが容易となるため様々な意匠の取手を有するハンドルに取り替えが容易となる。
【0071】
ベース部材92は、ハンドル91と共にケース93に対して移動可能に構成される部材である。また、ハンドル91の戸尻方向へ移動する力をプッシュブロック94へ伝達する部材でもある。ベース部材92は、ハンドル91の基端部91aと取り付けられる引き戸1の前面側の板面92bを有する。板面92bの平面部92fは、ハンドル非操作時において、ケース93の前端および引き戸1の前面と略同一面上に位置するように構成される。また前面には、取付部100を構成する貫通孔92aが設けられている。貫通孔92aは、板面92bの上下方向中央部であって、左右方向中央部に配置されている。なお、本実施形態において、ハンドル91の基端部91aが固定される平面部92fは、ハンドル91を固定する際の目安とするために、板面92bの最前面よりもわずかに凹ませているが、平面部92fがその周囲よりもわずかに突出させたものであっても良い。
【0072】
ベース部材92の板面92bと反対側の後面には、弾性部材であるトーションばね103の一のストレート部を受けるばね受け面92cが設けられている。
【0073】
ばね受け面92cは、ベース部材92の回動に合わせて後側へ板面92bが移動する際に、トーションばね103に弾性力に抗する回転力を加える部分である。
【0074】
また、
図14および
図15に示すように、ベース部材92の板面92bの後側面であって戸先側端部には後方に突出する突出部92dが設けられている。突出部92dは、プッシュブロック94に設けられた係合溝94bの側面と当接している。係合溝94bは、プッシュブロック94の戸尻側側面であって、上下方向中央部を切り欠くことにより形成されている。
【0075】
また、ベース部材92の板面92bの戸尻側端部には、ケース93の前面後側と当接するために一段切り欠かれた段差部92eが設けられている。
【0076】
ケース93は、前面にベース部材92を回動可能に配置し、後面をカバー部材95で覆っている。ケース93の後側中央部は開放されている。
【0077】
また、ケース93の前面内側であって段差部92eと当接する箇所には衝突力を吸収するための弾性シート96(二点鎖線で描画)が貼り付けられている。弾性シート96は、ゴムまたは弾性力を有する樹脂等で構成されており、段差部92eと広い面積が当接することにより、ハンドル91が操作時の位置から非操作時の位置に戻るときの衝突力を吸収する。
【0078】
ケース93の内部にはプッシュブロック94が格納されており、プッシュブロック94の上下面とケース93の上下面とが当接するように構成されている。これにより、プッシュブロック94は、戸先方向または戸尻方向に移動可能に格納される。またケース93の側面には、プッシュブロック94の突出部94aが突出可能に開放された突出部用孔93dが設けられている。
【0079】
ベース部材92は、ケース93の上下面に支持されるピン97によって回動可能に支持される。ケース93の上下面には、ピン97を挿入可能なピン支持孔が設けられている。前記ピン支持孔はケース93の左右方向において中心からオフセットされた位置に配置されている。
【0080】
本実施形態においては、前記ピン支持孔は戸先側に配置されている。このように構成することにより、ハンドル91操作時において、ハンドル91を戸尻側に引くと、ベース部材92はピン97を中心として後側に回動する。これにより、ハンドル91およびベース部材92がケース93側へ没入する。このため、引き戸操作補助装置90の内部に油汚れが多少たまっていた場合でも、外部に漏出しにくく、ハンドル91を触る手が汚れることがない。
【0081】
カバー部材95の中央部には、作業孔95aが設けられている。作業孔95aにはキャップ98を取り付けることができる。作業孔95aは、背面視において、ネジ部材101と重なるように配置されており、キャップ98を取り外した場合には、作業孔95aに工具を挿入することで、ネジ部材101を取り外し可能に構成されている。
【0082】
プッシュブロック94は、ケース93の後側に配置されており、ケース93に対して左右方向に移動可能に配置されている。プッシュブロック94の戸先側端部には、ケース93の側面に設けられた突出部用孔93dから突出可能に構成される突出部94aが設けられている。突出部94aは、プッシュブロック94の戸先側端部であって上下方向中央部に配置されている。
【0083】
またカバー部材95の前面には、トーションばね103の他のストレート部が当接されている。
【0084】
トーションばね103は、ベース部材92の平面部92fが引き戸1の正面部と実質的に平行に配置されるように、ベース部材92を付勢する部材である。
【0085】
プッシュブロック94の上下方向中央部には、ベース部材92の突出部92dと係合する係合溝94bが切り欠かれて設けられている。ハンドル91の操作時および非操作時において、突出部92dは、プッシュブロック94に設けられた係合溝94bの側面と当接している。係合溝94bは、プッシュブロック94の戸尻側側面であって、上下方向中央部を切り欠くことにより形成されている。係合溝94bの戸先側の面は、ハンドル91の非操作時において、突出部92dの戸先側側面と平行となるように形成される。
【0086】
ハンドル91の非操作時においては、ベース部材92の板面92bまたは平面部92fは、ケース93の前面と前後方向において略同一の位置に配置される。また、ケース93の前端面は、引き戸1の前面と略同一面に配置される。これにより、ハンドル91の非操作時においては、ベース部材92全体がケース93に格納され、さらに引き戸1の前面と略同一面に、ベース部材92前面およびケース93前面が位置するようになり意匠性が向上する。
【0087】
ハンドル91の操作時において、ベース部材92は、ケース93の前面に対して傾斜するように配置される。なお、ハンドル91の操作時とは、ハンドル91に対して引き戸1の戸尻側へ力を加えた状態を指す。これにより、ハンドル91の操作時においては、引き戸1が戸尻側へと移動して引き戸1が開放される。
【0088】
ハンドル91の操作時において、ベース部材92はピン97を中心として後側に回動する。ベース部材92が後側に回動することで、ベース部材92の突出部92dが係合溝94bを戸先側へと押し出す。これにより、プッシュブロック94がトーションばね103の弾性力に抗して戸先側へと移動する。
【0089】
プッシュブロック94の移動により戸先側端部に設けられた突出部94aが引き戸1の戸先側面から突出する。これにより、突出部94aが、枠体と当接して、相対的に引き戸1が戸尻側へと移動する。このように突出部94aの当接する力によって引き戸1の移動がサポートされ、少ない力で引き戸1を戸尻側へ移動させることができるのである。
【0090】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0091】
例えば、上記において開示した実施形態は、いずれも戸先側に引き戸操作補助装置を配置して、引き戸を開放する際の操作力を軽減した事例であるが、本発明はこれに限るものではなく、例えば開示した実施形態を正面から見て180°反転させて戸尻側に配置して、引き戸を閉鎖するときの動き始めの操作力を軽減する目的のために用いても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 引き戸
10 引き戸操作補助装置
11 ハンドル
12 ベース部材
13 ケース
14 プッシュブロック
15 カバー部材
16A・16B 弾性シート
17 ピン
18 キャップ
20 取付部
21 ネジ部材
23 弾性部材
50 引き戸操作補助装置
51 ハンドル
52 ベース部材
53 ケース
54 プッシュブロック
55 カバー部材
56 弾性シート
57 ピン
58 キャップ
60 取付部
61 ネジ部材
63 弾性部材
90 引き戸操作補助装置
91 ハンドル
92 ベース部材
93 ケース
94 プッシュブロック
95 カバー部材
96 弾性シート
97 ピン
98 キャップ
100 取付部
101 ネジ部材
103 トーションばね