(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173510
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】製パン用改質剤
(51)【国際特許分類】
A21D 2/14 20060101AFI20241205BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20241205BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20241205BHJP
【FI】
A21D2/14
A21D10/00
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091981
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 啓太
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB00
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK05
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK22
4B032DK30
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK54
4B032DL11
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、もっちり感と歯切れが向上した、風味良好なパンが得られる製パン用改質剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、ルテインを含有することを特徴とする、製パン用改質剤を提供する。また、上記課題を解決するために、グルテン及び上記製パン用改質剤を含み、ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製パン用穀粉生地を提供する。本発明の製パン用改質剤を、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、もっちり感と歯切れが向上した、風味良好なパンを得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインを含有することを特徴とする、製パン用改質剤。
【請求項2】
グルテン、及び、請求項1に記載の製パン用改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製パン用穀粉生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パンに使用することで、もっちり感と歯切れ、風味が向上したパンが得られる製パン用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人は米を主食とする民族であり、米本来の味が感じられ、もっちりとした食感が味わえる米が良いとされる。一方でパンにおいても穀粉本来の味が感じられ、もっちりとした食感のパンを好む傾向にある。
パンは、穀粉をイーストにて発酵後焼成したものであるため、パンには発酵臭がある。発酵臭は、それ自体をパンの風味ととらえることもあるが、穀粉本来の風味を感じにくくする原因にもなっている。
またパンは、穀粉を原料とするため穀粉に含まれる澱粉およびタンパク質がパンの食感に大きく影響を与える。パン製造時に水の配合量を多くすることで加熱によって澱粉がα化し、もっちりとした食感が得られるが、澱粉同士の結着が強くなり、内相の詰まったパンとなり歯切れが低下する。またパン製造時のミキシングにより穀粉に含まれるタンパク質が結合しグルテンを形成するが、ミキシングを強くすることでグルテン形成を促進した場合、もっちりとした食感のパンが得られるが、パンは噛み切りにくく歯切れが低下してしまう。反対にグルテン形成を抑制すると、かみ切りやすい歯切れのよい食感のパンが得られるが、弾力のない食感となりもっちり感が低下する。
パンをもっちりとした食感にする方法としては、酸性水中油型乳化油脂組成物を含有する湯種生地が提案されており、もっちりとした食感のパンが得られる方法が記載されている(特許文献1)。また特許文献2ではDEが2~9であるデキストリンを水相中に含有する製パン用乳化油脂組成物が提案されており、乳化剤を使用することなく、もっちり感と風味が良好なパンが得られる方法が記載されている。
一方でパンの歯切れを向上したパンを製造する方法として、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、モノグリセリンモノ脂肪酸エステル、プロピレングルコールモノ脂肪酸エステルを含有する油脂組成物を使用する方法が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-201468号公報
【特許文献2】特開2013-102745号公報
【特許文献3】特開2009-39070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、もっちりとした食感のパンは得られるが、歯切れが悪いパンとなり、穀粉本来の風味も得られない。特許文献2においても、もっちりとした食感で乳化剤による風味劣化を防止したパンは得られるが、歯切れは悪く食べやすさは改善されておらず、穀粉本来の風味も得られない。
また特許文献3では、歯切れは向上し、パンの食べやすさは向上するが、望まれるもっちりとした食感は得られず、またパンの風味向上効果についても望めない。
したがって、本発明の課題は、もっちりとした食感を有しつつ、歯切れが良好であり、さらには、穀粉本来の風味がする風味良好なパンが得られる製パン用改質剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、カロチノイドであるルテインがグルテンを含有する穀粉生地においてグルテンを改質し、もっちり感と歯切れ、穀粉本来の風味が向上したパンが得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は下記[1]~[2]である。
[1]ルテインを含有することを特徴とする、製パン用改質剤。
[2]グルテン、及び、[1]記載の製パン用改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製パン用穀粉生地。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製パン用改質剤によれば、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質する。これにより、もっちりとした食感を有しつつ、歯切れが良好であり、さらには、穀粉本来の風味がする風味良好なパンを得ることができる。
なお、本発明におけるもっちり感とは、一定の歪率で一定時間パンを圧縮し続けた際に、応力の低下量が少ないことであり、本発明のおける歯切れが良好とは、パンを破断するための応力値が小さいことを言う。もっちり感、歯切れともに、パンを喫食した際に食感として感じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において製パンとは、穀粉、イースト、水を含有する穀粉生地を焼成してパンを製造することを意味し、製パン用とは製パン時に配合する原料を意味する。
本発明の製パン用改質剤は、ルテインを含有することを特徴とし、グルテンを含有する製パン用穀粉生地に配合することにより、ルテインがグルテンを改質し、もっちり感と歯切れ、風味が向上したパンが得られる。
以下、本発明の製パン用改質剤、製パン用穀粉生地について詳細に説明する。
【0009】
[製パン用改質剤]
本発明の製パン用改質剤は、ルテインを含有することを特徴とし、製パン用原料として用いるものである。
ルテインはカロチノイド系色素の1種類であり、生体内で網膜の黄斑部に局在することで、目に進入するエネルギーの高い光を吸収し、光によって生じる活性酸素を除去することで光に対する目の保護に有益な成分として知られている。本発明における製パン用改質剤は、フリー体のルテイン又はエステル体のルテインのうち少なくとも1種を含むものである。ルテインは、グルテンを含有する製パン用穀粉生地中に含有された際、混合することで、グルテンにルテインが結合してグルテンを改質し、当該製パン用穀粉生地の伸展性と弾力性を向上させ、もっちり感と歯切れが向上したパンが得られる。またグルテンが改質されることでパンの内相は均一な気泡膜が形成され、パンを咀嚼した際に唾液とパンがなじみやすく、穀粉本来の風味が感じられ風味が向上したパンとなると推察される。色素であるルテインに、このようなパンにおける効果があることはこれまで知られておらず、本発明は従来技術からは想定できない新たな効果を見出したものである。
【0010】
ルテインは、ケール、パセリ、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、レタス、かぼちゃの皮などの植物由来、あるいは鶏卵などの動物由来のものいずれも使用することができるが、ルテイン含有量、風味の観点より植物由来のものが好ましく用いられる。
【0011】
本発明における製パン用改質剤は、ルテインを含有する食品素材からルテインを喪失しない方法で抽出、ペースト化、乾燥粉末化等の加工処理したものを使用することができる。ルテインは油溶性であるため、水分を含まない乾燥粉末もしくは油脂に溶解した状態で好ましく用いることができる。
本発明の製パン用改質剤にルテインを含有する乾燥粉末を用いる場合、水分含量は10質量%以下であることが好ましい。
また、乾燥粉末の粒径(D10%粒径、D90%粒径)は、乾燥粉末中のルテインが穀粉生地中に形成されたグルテンに作用しやすくするため、穀粉の粒径と同等のD10%粒径5μm以上、D90%粒径250μm以下が好ましい。ルテインを含有する乾燥粉末は、そのままもしくは小麦でんぷんなどと混合し所定の濃度に希釈して、本発明の製パン用改質剤とすることができる。
なお、本発明において「D10%粒径」(あるいは「D90%粒径」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、小さい側の粒子頻度%の累積値が10%(あるいは90%)となる粒子径として定義される。
本発明の製パン用改質剤としてルテインを油脂に溶解した状態で用いる場合、ショートニング、W/O、O/Wいずれでも効果を発揮できる。ルテイン含有油脂として、例えばルテインを含む動植物の乾燥粉末品を菜種油などの油と混合し、緩やかに加熱後、動植物の乾燥粉末品をろ過もしくはろ過せずに、食用油脂中にルテインが溶解したものを用いることができる。
【0012】
本発明の製パン用改質剤中のルテイン含有量は2質量ppm~200質量ppmが好ましい。下限値は、より好ましくは5質量ppm以上であり、特に好ましくは10質量ppm以上である。上限値は、より好ましくは150質量ppm以下であり、特に好ましくは100質量ppm以下である。
ルテイン含有量がこの範囲であれば、製パン用穀粉生地中のグルテンと適切な混合比にすることができ、本発明の効果をより発揮することができる。
【0013】
製パン用穀粉生地中に本発明の製パン用改質剤を含有させる際、製パン用穀粉生地中のグルテン1000000質量部に対してルテイン0.2~20.0質量部となるように配合することが好ましい。さらに好ましくは0.5~15.0質量部であり、最も好ましくは1.5~10.0質量部である。この範囲であれば、ルテインのグルテン改質効果を十分に発揮することができ、もっちり感、歯切れ、風味に優れたパンを得ることができる。
【0014】
ルテインの原料としては、市販品としては、例えば、「Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil」(サンブライト株式会社輸入・販売)等が商業的に入手できる。またルテインを含む原料をペースト化もしくは乾燥粉末化し用いてもよいし、ペースト化もしくは粉末化した市販品を使用してもよい。例えば、ケールパウダー(こだま食品株式会社製)、パセリパウダー(こだま食品株式会社社製)小松菜ファインパウダー(三笠産業株式会社製)、CSパセリY42(エスビー食品株式会社製)がルテインを含む野菜の粉末として商業的に入手できる。
【0015】
本発明におけるルテイン含有量の測定方法は、日本農林規格(JAS)0008:2019に準じて測定した。
【0016】
[製パン用穀粉生地]
本発明の製パン用穀粉生地とは、グルテン、穀粉、イースト、水、及び、本発明の製パン用改質剤を含有し、焼成してパンとするための生地である。本発明の製パン用穀粉生地中のグルテンは、穀粉に水、卵などの水分を含む液体を混ぜ合わせて、穀粉に含まれる成分から形成したものであっても、グルテンとして形成されているものを直接配合してもよい。穀粉原料としては、例えば、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を1種類以上混合したものを用いることができる。本発明の製パン用改質剤がグルテンの改質による製パン用穀粉生地の伸展性および弾力性を向上し、もっちり感、歯切れ、風味に優れたパンを得ることができるという観点から、製パン用穀粉生地には、小麦粉などのグルテンを形成する穀粉を穀粉生地に含む必要があるが、グルテンを形成しない米粉などの穀粉を混合して用いても良い。
【0017】
本発明の製パン用穀粉生地中のグルテン含有量は、製パン用穀粉生地中の穀粉を100質量%とした場合、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~13質量%、最も好ましくは1.5~11質量%である。
なお、本発明におけるグルテン含有量は、ISO 21415-2(2015)およびISO 21415-4(2006)に準じてドライグルテンとして測定した。
【0018】
本発明の製パン用改質剤は、製パン用穀粉生地中にどのように添加してもよいが、例えば、グルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉、水、製パン用改質剤を混合し、ミキサー等で十分に練り込むことにより得ることができる。グルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉、水、製パン用改質剤を混合する順番は問わない。
【0019】
本発明の製パン用穀粉生地中の製パン用改質剤の含有量は、穀粉100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。下限値として、より好ましくは0.5質量部以上である。上限値として、より好ましく5質量部以下であり、最も好ましくは3質量部以下である。0.1質量部以上とすることにより、穀粉に対する製パン用改質剤の均一混合性に優れ、10質量部以下とすることにより、穀粉の風味を十分に得ることができる。
なお、製パン用改質剤の作用効果を十分に発揮するという観点では、グルテンを含有する製パン用穀粉生地中の製パン用改質剤の好ましい配合量として、上述したとおりである。
【0020】
本発明の製パン用穀粉生地は、生地を加熱することができる限り、ストレート法、中種法、ノータイム法等いずれも製パン法にも使用することができる。また、生地を作製し、冷凍および冷蔵工程を経る場合、焼成後冷凍を経る場合等、いずれも工程にも使用できる。
【0021】
本発明の製パン用穀粉生地を焼成して得られるパンには、フィリングなどの詰め物をしたパンも含まれ、食パン、食事パン、特殊パン、調理パン、菓子パン等が挙げられる。具体的には、食事パンとして、フランスパン、バラエティブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロール)が挙げられる。調理パンとしては、サンドイッチ、ホットドック、ハンバーガー等、菓子パンとしては、ジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン等が挙げられる。
【0022】
本発明の製パン用穀粉生地は、その他成分としてイーストフード、乳化剤、油脂類、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー、レーズン等の乾燥果実等、製パン用に一般的に用いられる原料を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができる。
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
[製パン用改質剤の製造]
(実施例1-1~1-3、比較例1-1)
表1に示す配合組成をベースに以下の方法により実施例1-1を製造した。すなわちルテイン含有オイル(製品名:Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil、サンブライト株式会社輸入・販売、ルテイン含有量20g/100g)を用い、ルテイン含有オイル100g、菜種油9900gを混合、攪拌しルテイン含有オイル100倍希釈品(ルテイン含有量2000質量ppm)を得た。さらに、ルテイン含有オイル100倍希釈品125g、菜種油9875gを混合、攪拌して、製パン用改質剤(ルテイン含有量25質量ppm)を得た。
同様に、実施例1-2、1-3、比較例1-1についても表1に示す配合組成にて製パン用改質剤を製造した。
【0024】
(実施例2-1~2-5、比較例2-1)
市販されているパセリおよびレタスを購入し、粉末化し製パン用改質剤に用いた。パセリ、レタスをそれぞれ100g用意し、真空凍結乾燥機(AdVantagePLUSにて水分が1%以下となるまで乾燥させた。その後、高速カッターミキサーにて粉砕をし、50メッシュの篩にてふるいがけをして、パセリおよびレタスの乾燥粉末を得た。それぞれのルテイン含有量、D90%、D10%粒径は、パセリ乾燥粉末(900質量ppm、D90%粒径150μm、D10%粒径50μm)、レタス乾燥粉末(180質量ppm、D90%粒径240μm、D10%粒径80μm)であった。また市販されているケール乾燥粉末(製品名「国産ケールパウダー」、こだま食品株式会社製)もルテイン含有量を測定したところ、ケール乾燥粉末(2800質量ppm、D90%粒径50μm、D10%粒径10μm)であった。
これら乾燥粉末を使用し、表2に示す配合組成にて実施例2―1を製造した。すなわちパセリ乾燥粉末3gと小麦でんぷん97gを均一分散させ製パン用改質剤(ルテイン含有量27質量ppm)を得た。
同様に実施例2-2~2-5、比較例2-1についても表2に示す配合組成をベースに製パン用改質剤を上記方法で製造した。なお、乾燥粉末のD90%およびD10%粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD―2100(株式会社島津製作所製)を用いて屈折率パラメーター1.60-0.10iの条件にて測定した。
【0025】
実施例1-1~1-3、2-1~2-5、比較例1-1、2-1の製パン用改質剤について、以下の方法で製パン用穀粉生地およびコッペパンを製造し、コッペパンのもっちり感、歯切れ、風味を評価した。
【0026】
[製パン用穀粉生地の製造]
表3に示す配合により製パン用穀粉生地を製造した。具体的には、小麦粉(株式会社ニップン社製、商品名:イーグル)1kg、イースト(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名:オリエンタルイースト)30g、イーストフード(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名:オリエンタルCオリエンタルフード)1g、上白糖250g、食塩12g、脱脂粉乳30g、全卵60g、水550gを関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに投入し、ドゥフックにて低速2分間、中低速5分間攪拌後、製パン用改質剤10g、ショートニング70gを投入し、低速3分間、中低速3分間混合し製パン用穀粉生地を得た。
なお製パン用穀粉生地中のグルテン含量は、小麦粉100gあたり10.2gであった。
【0027】
[コッペパンの製造]
表3に示す工程によりコッペパンを製造した。すなわち製パン用穀粉生地を30分間フロアタイムをとったのち、60gに分割し、30分間のベンチタイムをとり、(株)オシキリ製モルダーにてコッペパン型に成型し、温度38℃、湿度85%にて60分間ホイロをとり、205℃のオーブンにて9分間焼成しコッペパンを製造した。製造後、室温まで自然放冷し、ビニール袋に密閉し室温で保管し、翌日、もっちり感、歯切れ、風味の評価に用いた。
【0028】
(もっちり感の評価方法)
評価においては、測定する直前にコッペパンを中心から3cm幅にカットしサンプルとした。株式会社山電製レオメーターで応力緩和測定を行い、直径3cmの円盤型プランジャーにてパンのカットした側面を1mm/secで6mm、2分間圧縮変形させた。2分間の圧縮変形後の応力低下量を以下の[式1]により算出した。
[式1]
応力低下量=100-(6mm圧縮した際の2分後の応力値/6mm圧縮した際の初期の応力値)×100
比較例1-1もしくは比較例2-1の製パン用改質剤を使用した場合の応力低下量を100とした際の相対値で評価した。なお、比較例1-1の製パン用改質剤を使用したパンの応力低下量は15、比較例2-1のパンの応力低下量は12であった。
応力低下量の相対値が110以上の場合を「1」、110未満、105以上の場合を「2」、105未満、95以上の場合を「3」、95未満、90以上の場合を「4」、90未満の場合を「5」として評価した。「5」、「4」のみ、合格とした。
【0029】
(歯切れの評価方法)
評価においては、測定する直前にコッペパンを中心から3cm幅にカットしてサンプルとした。株式会社山電製レオメーターで破断測定を行い、カッター刃にてパンを上部から5mm/秒の速度で押し切る際に必要な最大応力[N]を測定し、歯切れの指標とした。比較例1-1もしくは比較例2-1の製パン用改質剤を使用した場合のパンの最大応力値[N]をそれぞれ100とした際の相対値で評価した。なお、比較例1-1の製パン用改質剤を使用したパンの応力値は12.4、比較例2-1のパンの応力値は13.6であった。
最大応力値が108以上の場合を「1」、108未満、102以上の場合を「2」、96以上、102未満の場合を「3」、90以上、96未満の場合を「4」、90未満の場合を「5」として評価した。「5」、「4」のみ、合格とした。
【0030】
(風味の評価方法)
コッペパンを食した際の風味を、10人のパネラーの官能評価にて評価した。比較例1-1もしくは比較例2-1の製パン用改質剤を使用した場合のコッペパンの穀粉の風味を基準とし、穀粉の風味が強く感じる(5)、穀粉の風味がやや強く感じる(4)、同等(3)、穀粉の風味がやや弱く感じる(2)、穀粉の風味が明らかに弱く感じる(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の平均値を風味の評点とし、4以上を合格とした。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
(評価結果)
表1、表2より、製パン用改質剤によって、パンのもっちり感、歯切れ、風味が向上することが分かる。