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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173518
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】合成樹脂製螺子キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65D41/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091990
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰地
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA06
3E084AA12
3E084AA25
3E084AA26
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB01
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HB02
3E084HD01
3E084HD03
3E084HD04
3E084KB01
3E084LA17
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】ストリップの強度を過度に増加させずにTEバンドがキャップ本体と連結されたまま容器口部から離脱可能な合成樹脂製螺子キャップを提供する。
【解決手段】本発明の合成樹脂製螺子キャップは、タンパーエビデントバンドが周方向に関して間隙を介して分断されて開栓側部と閉栓側部とに端部が区分けされると共に、タンパーエビデントバンドの開栓側部とスカート壁の下端部とを破断不能に接続する牽引ブリッジを有し、牽引ブリッジのうちタンパーエビデントバンドへの下側接続部は、スカート壁への上側接続部よりも径方向外側に位置付けられてなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、前記頂板部の周縁から降下するスカート壁と、前記スカート壁の下端部に設けられた破断可能な弱化部を介して連結されるタンパーエビデントバンドと、を含み、容器口部の外面に形成された雄螺条と螺合可能な雌螺条を前記スカート壁の内周面に備えた合成樹脂製螺子キャップであって、
前記タンパーエビデントバンドは、周方向に関して間隙を介して分断されて開栓側部と閉栓側部とに端部が区分けされると共に、
前記開栓側部と前記スカート壁の下端部とを接続する牽引ブリッジを含み、
前記牽引ブリッジのうち前記タンパーエビデントバンドへの下側接続部は、前記スカート壁への上側接続部よりも径方向外側に位置付けられてなることを特徴とする、合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項2】
前記タンパーエビデントバンドの上端よりも下方における前記牽引ブリッジの前記径方向における外径は、前記タンパーエビデントバンドの上端よりも上方における前記牽引ブリッジの前記径方向における外径より大きい、請求項1に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項3】
前記下側接続部における前記径方向の幅は、前記タンパーエビデントバンドの前記径方向における幅と実質的に等しい、請求項2に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項4】
前記上側接続部における前記径方向の幅は、前記スカート壁の前記径方向における幅と実質的に等しい、請求項2に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項5】
前記牽引ブリッジは、前記閉栓方向に凸となって湾曲した折り返し部を有し、
前記折り返し部において前記径方向の幅が変化する移行領域が設けられてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項6】
前記タンパーエビデントバンドの前記開栓側部の下方には前記閉栓側部に向けて周方向に延びる延長部が設けられ、
前記牽引ブリッジは、前記延長部の上面に接続されてなる、請求項5に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【請求項7】
前記スカート壁の下端には前記軸方向において下方に突出する第1案内突起が設けられると共に、前記タンパーエビデントバンドの上端には前記第1案内突起と閉栓時に係合可能な第2案内突起が設けられてなり、
前記タンパーエビデントバンドのうち、前記開栓側部の上側領域には、上端から下方に延びる切欠部が設けられ、
前記開栓時に牽引された前記牽引ブリッジが干渉しないように、前記第2案内突起は、前記切欠部を基準として前記牽引ブリッジの延伸距離よりも離れて配置されてなる、請求項5に記載の合成樹脂製螺子キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部を封止する技術に関し、より詳細には合成樹脂で形成された合成樹脂製螺子キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
水やお茶あるいは清涼飲料水などの飲料用容器として、PETボトルなどのボトル容器やスパウト付き紙パック容器など開閉が可能なものが広く使用されている。これらの容器における容器口部を封止するキャップとしては、例えば樹脂を射出成形して所望の形状に成形した合成樹脂キャップが用いられている。かような合成樹脂キャップには、開封した履歴を示すタンパーエビデントバンド(以下、「TEバンド」とも称する)が設けられることがある。
【0003】
合成樹脂キャップには、容器口部に打栓によって嵌め込まれるタイプもあるが、容器口部の筒状側壁の外周面に形成された螺子部と螺子係合により装着される螺子タイプも多く存在する。また、近年では、ゼリー状食品などを可撓性シートによって収容可能なパウチも広く使用されている。かようなパウチの口栓としては、容器本体と熱溶着したスパウトで容器口部を形成し、この容器口部に対して合成樹脂キャップを用いて開栓又は閉栓を行っている。
【0004】
ここで特許文献1や特許文献2などに例示されるように、上記したTEバンドが非破断型連結片(ストリップ)を介してキャップ本体に接続される合成樹脂キャップも既知である。かような合成樹脂キャップにおいては、螺子に沿ってキャップを開栓した後でTEバンドがキャップ本体と共に容器口部から離脱することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5918977号
【特許文献2】特許第6364234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記した特許文献を含む技術では、いまだ市場のニーズを満たしているとは言えず、少なくとも以下に述べる課題が存在する。
すなわち、上記した特許文献1や特許文献2で示されたTEバンドがストリップを介してキャップ本体に接続されるタイプでは、開栓時にキャップ本体を開栓方向に回すことでまずキャップ本体とTEバンドを連結する弱化部が破断し、次いでストリップに牽引されたTEバンドの薄肉連結部や破断ブリッジが続いて破断することになる。
【0007】
このとき適正な合成樹脂キャップの開封を実現するためには、上記した薄肉連結部/破断ブリッジとストリップとは、微妙な強度のバランス関係で成立し得る。すなわち、まず上記した薄肉連結部や破断ブリッジに関しては、開栓時にストリップが塑性変形して開封履歴が明示できるまでは破断しない程度の強度に設定する必要がある。他方で、このストリップに関しては、開栓時に薄肉連結部や破断ブリッジが破断して開封履歴が明示できるまでは破断しない程度の強度に設定する必要がある。
【0008】
しかしながら特許文献1や特許文献2で示された構造では、上記した開栓時においてストリップの基部に応力が集中するおそれなどの課題もあり、ストリップの最適な形態には未だに改良の余地があると言える。この点について単純にストリップの強度を上げてしまうと、ストリップが開栓時に塑性変形し難くなってしまう。
【0009】
本発明の目的の1つは、ストリップの強度を過度に増加させず適正に塑性変形した状態でTEバンドがキャップ本体と連結されたまま容器口部から離脱可能な合成樹脂製螺子キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一形態における合成樹脂製螺子キャップは、(1)頂板部と、前記頂板部の周縁から降下するスカート壁と、前記スカート壁の下端部に設けられた破断可能な弱化部を介して連結されるタンパーエビデントバンドと、を含み、容器口部の外面に形成された雄螺条と螺合可能な雌螺条を前記スカート壁の内周面に備えた合成樹脂製螺子キャップであって、前記タンパーエビデントバンドは、周方向に関して間隙を介して分断されて開栓側部と閉栓側部とに端部が区分けされると共に、前記開栓側部と前記スカート壁の下端部とを接続する牽引ブリッジを含み、前記牽引ブリッジのうち前記タンパーエビデントバンドへの下側接続部は、前記スカート壁への上側接続部よりも径方向外側に位置付けられてなることを特徴とする。
【0011】
また、上記した(1)に記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(2)前記タンパーエビデントバンドの上端よりも下方における前記牽引ブリッジの前記径方向における外径は、前記タンパーエビデントバンドの上端よりも上方における前記牽引ブリッジの前記径方向における外径より大きいことが好ましい。
【0012】
また、上記した(2)に記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(3)前記下側接続部における前記径方向の幅は、前記タンパーエビデントバンドの前記径方向における幅と実質的に等しいことが好ましい。
【0013】
また、上記した(3)に記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(4)前記上側接続部における前記径方向の幅は、前記スカート壁の前記径方向における幅と実質的に等しいことが好ましい。
【0014】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(5)前記牽引ブリッジは、前記閉栓方向に凸となって湾曲した折り返し部を有し、前記折り返し部において前記径方向の幅が変化する移行領域が設けられてなることが好ましい。
【0015】
また、上記した(5)に記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(6)前記タンパーエビデントバンドの前記開栓側部の下方には前記閉栓側部に向けて周方向に延びる延長部が設けられ、前記牽引ブリッジは、前記延長部の上面に接続されてなることが好ましい。
【0016】
また、上記した(5)に記載の合成樹脂製螺子キャップにおいては、(7)前記スカート壁の下端には前記軸方向において下方に突出する第1案内突起が設けられると共に、前記タンパーエビデントバンドの上端には前記第1案内突起と閉栓時に係合可能な第2案内突起が設けられてなり、前記タンパーエビデントバンドのうち、前記開栓側部の上側領域には、上端から下方に延びる切欠部が設けられ、前記開栓時に牽引された前記牽引ブリッジが干渉しないように、前記第2案内突起は、前記切欠部を基準として前記牽引ブリッジの延伸距離よりも離れて配置されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の合成樹脂製螺子キャップによれば、TEバンドとキャップ本体とを繋ぐストリップとしての牽引ブリッジの強度を過度に増加させずに、開栓時において牽引ブリッジが適正に塑性変形してキャップ本体とTEバンドが連結されたまま容器口部から離脱させることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップと容器口部を含むキャップユニットを示した模式図である。
図2図1のキャップユニットのうちの合成樹脂製螺子キャップを示す模式図である。
図3】実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップの正面図である。
図4図1における合成樹脂製螺子キャップのA-A断面図である。
図5】実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップの内周面側を示す模式図である。
図6図3におけるα部分を拡大した部分拡大図である。
図7】実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップのうち牽引ブリッジを主として示した模式図である。
図8】実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップのうち牽引ブリッジの断面を主として示した模式図である。
図9】開栓時における合成樹脂製螺子キャップの状態を説明するための状態遷移図である。
図10】容器口部に対する合成樹脂製螺子キャップの係合状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明中において適宜X方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ規定したが、本発明の権利範囲を減縮するものでないことは言うまでもない。なお、以下で詳述する本発明の特徴事項以外の事項については、例えば上記した特許文献に開示されたキャップユニットの構成や他の公知のキャップ構造を適宜参照して製造することができる。
【0020】
[キャップユニット]
図1は、本実施形態に係るキャップユニット300を示している。
同図のとおり、キャップユニット300は、合成樹脂製螺子キャップ100と、容器口部200と、を含んで構成されている。なお、本実施形態の容器口部200は、例えば飲食物や薬品などの液体状又は固体状の内容物を収容する容器から内容物が注出される注出筒部210を備えた部位である。かような容器口部200は、例えば内容物が収容される容器本体と一体構造となっていてもよいし、当該容器本体とは別体となっていてもよい。
【0021】
容器本体としては、例えばPETに例示される樹脂製ボトルや紙製パックあるいは樹脂製パウチなど、本実施形態の容器口部200が適用可能な限りにおいて種々の公知の容器形態を適用してもよい。このうち容器本体と一体構造の容器口部200の適用例としては、例えばPETボトルなどのボトル容器の口部などが挙げられる。また、容器本体と別体の容器口部200としては、例えばパウチや紙製容器に熱溶着されるスパウトなどが挙げられる。
【0022】
以下では、容器口部200の具体的な構造としてスパウトを一例にして説明するが、上述のとおり本発明はこの形態に限られるものではない。
本実施形態における容器口部200は、一例として公知のスパウト構造が適用でき、注出筒部210、この注出筒部210に配置されたラチェット部220と周状突起230、及び、この注出筒部210の下方に配置されたフランジ部240などを含んで構成されている。
【0023】
注出筒部210は、容器口部200のうちで、その内部が中空となって内容物が注出される注出口を構成する内周面を備えた筒状(例えば円筒状)の部位である。また、注出筒部210の外周面には公知の雄螺条(不図示)が形成されている。この雄螺条は、閉栓時に合成樹脂製螺子キャップ100の後述する雌螺条21と螺合する。
【0024】
<合成樹脂製螺子キャップ100>
図2図8に、本実施形態における合成樹脂製螺子キャップ100を示す。
図2及び図3などから理解されるとおり、合成樹脂製螺子キャップ100は、頂板部10と、この頂板部10の周縁から軸方向(Z方向)に沿って降下するスカート壁20と、このスカート壁20の下端部に設けられた破断可能な弱化部WPを介して連結されるタンパーエビデントバンド30(以下、本実施形態では「TEバンド30」とも称する)と、を含んで構成されている。
【0025】
なお合成樹脂製螺子キャップ100を構成する樹脂としては、例えば低密度PE(ポリエチレン)、高密度PE、PP(ポリプロピレン)、あるいはPEとPPの混合樹脂など公知の合成樹脂が例示できる。また、本実施形態では、合成樹脂製螺子キャップ100のうちTEバンド30を除いた構成をキャップ本体とも称する。
【0026】
頂板部10は、容器口部200の注出口を閉塞する機能を有し、その下面(閉栓時に容器口部200と対向する側の面)には上記した注出筒部210の注出口を封止する公知のインナーリング部11を備えている。また図4に示すように、頂板部10の下面のうちインナーリング部11の外側には、閉栓時に注出筒部210の外周面と嵌合可能なアウターリング部12が形成されていてもよい。
【0027】
スカート壁20は、上記した頂板部10の周縁から降下するとともに、注出筒部210の外周面に形成された雄螺条と螺合する雌螺条21を内周面に有するように構成されている。また、スカート壁20の下端部(図中のZ方向における端部)には後述するTEバンド30の第2案内突起34と対応する第1案内突起22が設けられている。かような第1案内突起22は、スカート壁20の下端で軸方向において下方に突出するように設けられる。また、第1案内突起22は、周方向に沿って所定の間隔を有してスカート壁20の下端に複数個設けられていてもよい。
【0028】
第1案内突起22は、開栓時においてTEバンド30の第2案内突起34に乗り上がることでキャップ本体とTEバンド30とを連結する弱化部WPの破断を促進する機能を有する。なお、図1などに示すとおり、このスカート壁20の外周面には、例えば軸方向(Z方向)に延在する公知の滑り止め構造23(縦リブやナール、ローレットとも称される)が周方向(θz方向)に亘って複数形成されていてもよい。
【0029】
なお図3などに示すように、スカート壁20の下端面には、後述する牽引ブリッジ40や第1案内突起22が設けられている部分を除き、TEバンド30との間隔調整用リブ24が形成されていてもよい。図3などに示すように、本実施形態ではこの間隔調整用リブ24の下端に上記した弱化部WPが設けられている。
【0030】
TEバンド30は、スカート壁20の下端部に設けられた破断可能な公知の弱化部WPを介して当該スカート壁20の下端で連結される。合成樹脂製螺子キャップ100の初期開封時には、上記した弱化部WPが破断することで容器口部200に対する開封履歴が明示されることとなる。図2、3及び6などから理解されるとおり、本実施形態のTEバンド30は、周方向(軸周りθz)に関してバンド間隙GPを介して分断されて開栓側部31と閉栓側部32とに端部が区分けされる。
【0031】
すなわち図2に示すように合成樹脂製螺子キャップ100は、開栓に際してはPで矢視される方向に旋回され、閉栓に際してはQで矢視される方向に旋回される。従って本実施形態では、このTEバンド30の周方向における両端のうち開栓方向P側に位置する部分を開栓側部31としつつ閉栓方向Q側に位置する部分を閉栓側部32と定義する。
【0032】
また、図3及び図6などに示すように、開栓側部31と閉栓側部32とは、後述する初期開封時に破断可能なスプリットブリッジ50で連結されている。
また本実施形態のTEバンド30においては、このTEバンド30のうち開栓側部31の上側領域には、上端から下方に延びる切欠部VPが設けられている。換言すれば、本実施形態では、TEバンド30の開栓側部31の下側領域には閉栓側部32に向けて周方向に延びる延長部33が設けられており、この延長部33の上面33aが上記した切欠部VPの境界を区画している。
【0033】
また図4などに示すように、TEバンド30の上端には、前記した第1案内突起22と閉栓時に係合可能な第2案内突起34が設けられている。また同図に示すように、TEバンド30の上端には、水平方向内方に突出した内方フランジ30fが形成されている。この内方フランジ30fの上面は、スカート壁20の下端部に対面している。さらに図5などに示すように、TEバンド30の内周面30iには、公知のラチェット片35が周方向に沿って断続的に複数形成されている。
【0034】
これらのラチェット片35は、径方向内方且つ開栓方向側に指向するようにTEバンド30の内周面30iから延出する。ラチェット片35は、合成樹脂製螺子キャップ100が閉栓方向(例えば時計回り)への回転は許容するが、容器口部200の外面に形成されているラチェット部220(図10参照)との係合(当接)によってTEバンド30の開栓時における開栓方向(例えば反時計回り)への回転を制限する機能と形状を備えている。なお容器口部200に設けられるラチェット部220の構造としては、例えば特許文献2や特許文献3と同様の公知の構造を適用できる。
【0035】
なお図5及び図10などに示すように、本実施形態におけるTEバンド30は、上記したTEバンド30の内周面であって且つ容器口部200におけるラチェット部220の上方に設けられた周状突起230と係合可能なリブ36をさらに有していてもよい。かようなリブ36は、図5などに示すように、合成樹脂製螺子キャップ100の軸周り(周方向θz)において、上記したラチェット片35が容器口部200側のラチェット部220と係合した状態において周方向で当該ラチェット部220と重ならないように断続的に設けられることが好ましい。また、リブ36の径方向中心へ向けたTEバンド30の内周面からの突出量は、ラチェット片35の径方向中心へ向けたTEバンド30の内周面からの突出量よりも大きく設定されていてもよい。
これによりリブ36は、初期開封時にラチェット片35とラチェット部220が係合した状態で周状突起230と係合した際に、ラチェット部220が障害とならず下方へ適宜移動することが許容される。一例として、リブ36は、TEバンド30の内周面であって且つラチェット片35の周方向先端を基準とした場合に開栓方向の上流側(具体的には例えばラチェット片35の根元部分など)に設けられていてもよい。
【0036】
初期開封時にキャップ本体が開栓方向に回転することで軸方向上方へ移動するが、TEバンド30がリブ36を備えることで周状突起230とリブ36とが係合し、これによりTEバンド30が初期開封時に持ち上がり難くなることでラチェット片35とラチェット部220との係合を維持しやすくできる。
また、例えば容器口部200に初めて合成樹脂製螺子キャップ100をキャッピングする初期封止時にはラチェット片35がラチェット部220を乗り越えることになるが、その乗り越え時にはTEバンド30も径方向に若干広がることになる。かような初期封止時でのラチェット乗り越えでスプリットブリッジ50が破断することは避けねばならないが、本実施形態ではTEバンド30がリブ36を備えることで周状突起230とリブ36とが係合を維持しやすいためスプリットブリッジ50の強度を過度に下げずに済み、その結果としてスプリットブリッジ50の強度も上記ラチェット乗り越えに必要な強度を容易に確保できる。なお、ラチェット片35が容器口部200のラチェット部220を乗り越える時にTEバンド30が径方向に若干広がるが、本実施形態ではTEバンド30に設けられた切欠部VPによって柔軟にTEバンド30が拡径できるようになっている。
【0037】
牽引ブリッジ40は、湾曲した紐状の形状を備えて開栓時において破断不能に構成されると共に、上記したキャップ本体とTEバンド30とを接続する機能を有する。かような牽引ブリッジ40は、開栓に際して破断しない非破断型連結片として機能するものであり、キャップ本体を容器口部200から取り外したときにTEバンド30が容器口部200側に残留せずキャップ本体と共に容器口部200から離脱させるための部材である。
【0038】
<牽引ブリッジの詳細構造>
より具体的に図3などに示すように、本実施形態の牽引ブリッジ40は、スカート壁20の下端に連結された上側接続部41と、TEバンド30の上端に接続された下側接続部42と、を含んで構成され、上記したTEバンド30の開栓側部31とスカート壁20の下端部とを破断不能に接続する。
【0039】
なお牽引ブリッジ40は、前記した閉栓方向に凸となって湾曲した折り返し部43をさらに備えることが好ましい。かような折り返し部43は、牽引ブリッジ40の軸方向において中央よりも上側接続部41の側に設けられることが好ましい。さらに牽引ブリッジ40は、前記した折り返し部43の下方に設けられて開栓方向に凸となって湾曲した下側湾曲部44を備えることが好ましい。換言すれば、本実施形態の牽引ブリッジ40は、必ずしも折り返し部43及び下側湾曲部44は必要ではなく軸方向に延びる形状でもよいが、開栓方向に引っ張られた際に塑性変形が発生する程度の上記したごとき湾曲部を備えていることが望ましい。
【0040】
図3などから理解されるとおり、本実施形態における牽引ブリッジ40の全長は、上記した折り返し部43や下側湾曲部44を備えることで、スカート壁20の下端部とTEバンド30の上端との間隔に比して長くなるように設定されている。これにより、開栓時において牽引ブリッジ40に対して過度な応力が集中することを防止して牽引ブリッジ40の破断などを抑制することが可能となっている。
【0041】
図3及び図6に示すように、本実施形態における牽引ブリッジ40の下側接続部42は、TEバンド30の上端のうち延長部33の上面33aに対して軸方向に沿うように(Z方向に延びるように)接続されていることに特徴がある。
またこれらの図から理解されるとおり、牽引ブリッジ40を基準とした開栓方向(図2ではP方向)側には、上記した上端から下方に延びる切欠部VPが位置付けられている。
【0042】
このようにTEバンド30において牽引ブリッジ40の開栓方向側に切欠部VPを設けることで、開栓時に牽引ブリッジ40がTEバンド30の角部に干渉して一点集中となって過度な応力集中が生じてしまうことを抑制できる。従って本実施形態で示す牽引ブリッジ40によれば、この切欠部VPの存在によって過度な強度を必要とせずに、開栓時に後述するスプリットブリッジ50が破断できる程度の強度に設定出来る。
【0043】
また、図7及び図8などから理解されるとおり、本実施形態における牽引ブリッジ40は、上方に位置してスカート壁20の下端に接続される上側接続部41から、下方に位置してTEバンド30の上端に接続される下側接続部42まで、その断面が一様でなく厚みが軸方向(Z方向)に沿って変化する。
【0044】
一例として本実施形態における牽引ブリッジ40は、折り返し部43の中央付近がTEバンド30の内方フランジ30fと同一平面に位置するように構成されている。従って例えば合成樹脂製螺子キャップ100を射出成形によって製造する場合には、この折り返し部43の中央付近より下側においてはTEバンド30の構造に倣うように牽引ブリッジ40が成形されることが好ましい。かような観点から、牽引ブリッジ40のうち折り返し部43の中央付近より下方であって且つ内方フランジ30fと同一平面上に位置する部位は、図7に示すように径方向(図7でX方向)の幅が最も広い領域となる。
なお図7(a)などに示すように、本実施形態の牽引ブリッジ40における折り返し部43や下側湾曲部44は、軸(Z)方向に沿って径方向の幅が変化する領域を有する。このように牽引ブリッジ40は、折り返し部43や下側湾曲部44において径方向の幅が変化する移行領域TAが設けられていることが好ましい(図7参照)。これにより、スカート壁20やTEバンド30の形状を可能な限り変更せず材料を効率的に使用することが可能となる。
【0045】
また、図7から理解されるとおり、牽引ブリッジ40のうち折り返し部43の中央付近より下方であって且つ内方フランジ30fよりも下側に位置する部位は、径方向の幅がTEバンド30の厚みとほぼ同一となる。他方で、牽引ブリッジ40のうち折り返し部43の中央付近より上方に位置する部位は、径方向の幅がスカート壁20の下端における厚みとほぼ同一となる。このように、本実施形態の牽引ブリッジ40における上側接続部41における径方向の幅は、スカート壁20の径方向における幅と実質的に等しいことが好ましい。また、本実施形態の牽引ブリッジ40における下側接続部42における径方向の幅は、TEバンド30の径方向における幅と実質的に等しいことが好ましい。
【0046】
従って本実施形態では、図8に示すように、上側接続部41の中心からの最外径L1は、下側接続部42の中心からの最外径L2よりも小さく設定されている。すなわち牽引ブリッジ40のうちTEバンド30への下側接続部42は、スカート壁20への上側接続部41よりも径方向に関して外側に位置することが好ましい(図7及び図8を比較参照)。
また、上述したとおり牽引ブリッジ40は軸方向に沿って径方向の幅が変化する。そのため、例えば牽引ブリッジ40において径方向の幅が狭くなる部位(牽引ブリッジ40のうち折り返し部43の中央付近より下方であって且つ内方フランジ30fよりも下側に位置する部位)においては、他の部位に比して周方向の長さを長く設定してもよい。さらに、例えば牽引ブリッジ40において径方向の幅が広くなる部位(牽引ブリッジ40のうち折り返し部43の中央付近より上方に位置する部位)においては、他の部位に比して周方向の長さを小さく設定してもよい。
【0047】
従って、牽引ブリッジ40において、折り返し部43の中央付近より上方における径方向の幅は、折り返し部43の中央付近より下方であって且つ内方フランジ30fよりも下側における径方向の幅よりも広く設定し得る。また、牽引ブリッジ40において、折り返し部43の中央付近より上方における周方向の長さは、折り返し部43の中央付近より下方であって且つ内方フランジ30fよりも下側における周方向の長さよりも短く設定し得る。
これにより、牽引ブリッジ40の断面積は、径方向と周方向との長さを調整することで軸方向に沿って断面積が概ね均一となるように調整できる。
【0048】
<スプリットブリッジの詳細構造>
図6に示すように、本実施形態におけるスプリットブリッジ50は、開栓側部31と閉栓側部32との間のバンド間隙GPを跨ぐように、開栓側部31(本例では延長部33の側面)と閉栓側部32とを接続(橋絡)して開栓時に破断可能な少なくとも1つ以上の第1スプリットブリッジ51を含んでなる。なお本実施形態では周方向に関して1つの開栓側部31と閉栓側部32及びバンド間隙GPが図示されているが、例えば周方向において単一組または複数組(例えば本実施形態では周方向に180°間隔で2組)の開栓側部31と閉栓側部32及びバンド間隙GPを備えていてもよい。
【0049】
また、同図から理解されるとおり、本実施形態におけるスプリットブリッジ50は、前記した第1スプリットブリッジ51よりも軸方向において上方(スカート壁20に近い側)に設けられて開栓時に第1スプリットブリッジ51よりも先に破断可能な第2スプリットブリッジ52をさらに有している。かような第2スプリットブリッジ52は、例えば断面積が第1スプリットブリッジ51よりに比して小さく設定されるなど第1スプリットブリッジ51よりも低い強度を有して構成されていてもよい。
【0050】
このように本実施形態の合成樹脂製螺子キャップ100は、接続形態が互いに異なる複数種類のスプリットブリッジ50を備えてなる。すなわちスプリットブリッジ50のうち一方の第1スプリットブリッジ51は、TEバンド30の開栓側部31のうち特に延長部33の側面と閉栓側部32とを接続する。また、スプリットブリッジ50のうち他方の第2スプリットブリッジ52は、前記したバンド間隙GPを跨ぐように、TEバンド30における閉栓側部32と、牽引ブリッジ40における閉栓方向側の側面と、を接続している。
なおスプリットブリッジ50は、それぞれ1つずつの第1スプリットブリッジ51と第2スプリットブリッジ52を備えているが、例えば第1スプリットブリッジ51がさらに複数あってもよいし、第2スプリットブリッジ52がさらに複数あってもよいし、第1スプリットブリッジ51と第2スプリットブリッジ52の双方がそれぞれ複数あってもよい。
【0051】
かような配置形態の牽引ブリッジ40とスプリットブリッジ50の組み合わせを用いることで、容易に第2スプリットブリッジ52を破断させることができる。さらには牽引ブリッジ40の下側接続部42が延長部33に対して軸方向に沿うように接続されることから、この延長部33の開栓側部31に接続される第1スプリットブリッジ51の破断も上記第2スプリットブリッジ52に続けて安定して発生しやすくできる。
【0052】
<初期開封時における合成樹脂製螺子キャップの状態遷移>
次に図9も参照しつつ初期開封時における合成樹脂製螺子キャップ100の状態遷移について説明する。
上記した構造の合成樹脂製螺子キャップ100において、容器口部200に装着されているキャップ本体を開栓方向に回転させて開栓すると、TEバンド30は、牽引ブリッジ40により引っ張られて開栓方向に移動する。このときTEバンド30は、内周面に設けられたラチェット片35が容器口部200のラチェット部220と係合することで開栓方向 への移動が規制される。
【0053】
すなわち図9に示すように、TEバンド30の回転を規制されつつキャップ本体を引き続き開栓方向に回すことで、まず牽引ブリッジ40の折り返し部43が変形を開始しながら当該牽引ブリッジ40に接続する第2スプリットブリッジ52が破断する。第2スプリットブリッジ52が破断した後は、牽引ブリッジ40は、上記した切欠部VP内に移動してTEバンド30の上端(図9における第2案内突起34)と近接又は接触する。
【0054】
このように本実施形態のTEバンド30は開栓側部31の上方に切欠部VPが設けられていることから、当該切欠部VPがない場合に比して牽引ブリッジ40の特定箇所とTEバンド30とが当接せず相対的に緩やかに湾曲する。これにより、牽引ブリッジ40の側方にTEバンド30の開栓側部31によって過度な応力集中が発生することを防止できる。そしてその後の開栓動作で牽引ブリッジ40がさらにキャップ本体に引っ張られることで、第2スプリットブリッジ52に引き続いて第1スプリットブリッジ51も最終的に破断する。その際、第1スプリットブリッジ51が破断する前にTEバンド30が容器口部200から離脱せず、且つ牽引ブリッジ40が適正な塑性変形をするまでリブ36が周状突起230と係合を維持している。そして第1スプリットブリッジ51が破断した後は、適正な塑性変形を経た牽引ブリッジ40とTEバンド30が互いに連結された状態でキャップ本体が容器口部200から離脱する。これにより合成樹脂製螺子キャップ100の容器口部200に対する開栓動作が完了する。
【0055】
なお、開栓側部31に至近の第2案内突起34は、TEバンド30の上端において牽引ブリッジ40に過度な湾曲が生じない位置に配置されていることが好ましい。より具体的に第2案内突起34は、図9に示すように、開栓時に牽引された牽引ブリッジ40が干渉しないように、切欠部VPを基準として牽引ブリッジ40の延伸距離L3よりも離れて配置されてなることが好ましい。
【0056】
以上で説明した本実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップ100によれば、開栓方向の側に切欠部VPが設けられたTEバンド30とキャップ本体とを繋ぐ特徴的な牽引ブリッジ40とスプリットブリッジ50を用いることで、牽引ブリッジの強度を過度に増加させずに開栓時においてTEバンド30がキャップ本体と連結されたまま容器口部からキャップ本体を離脱できる。また、本実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップ100によれば、上記したスプリットブリッジの一部を牽引ブリッジと接続したことで、開栓時のトルクが過大とならずより適正な破断が生じるように2つのスプリットブリッジの強度をそれぞれ設定することができる。また、本実施形態に係る合成樹脂製螺子キャップ100によれば、TEバンド30が上記したリブ36を備えることで、開栓時におけるラチェット片35とラチェット部220の係合を維持しやすいため2つのスプリットブリッジの強度をより適正な形で設定することができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば上記した実施形態ではTEバンド30は上記したスプリットブリッジ50を介して開栓側部31と閉栓側部32とが接続されていたが、このスプリットブリッジ50に代えて公知のスコアラインなど開栓時に破断可能な他の弱化部によって接続される形態であってもよい。
また、上記た実施形態では牽引ブリッジ40の折り返し部43は、閉栓方向に凸となって湾曲した形状を有していたが、開栓時に塑性変形が充分に行われる限りにおいて開栓方向に凸となって湾曲した形状でもよいし、軸方向に沿った直線部を含む形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、牽引ブリッジの強度を抑制しつつ安定してスプリットブリッジの破断も可能な構造の合成樹脂製螺子キャップを含んだキャップユニットを実現するのに適している。
【符号の説明】
【0060】
100 合成樹脂製螺子
10 頂板部
20 スカート壁
30 TEバンド
40 牽引ブリッジ
50 スプリットブリッジ
200 容器口部
210 注出筒部
220 ラチェット部
230 周状突起(ビード部)
240 フランジ部
300 キャップユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10