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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173520
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】伸縮式テント構造体
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/38 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
E04H15/38
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091996
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】500094381
【氏名又は名称】株式会社サンエープロテント
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】高山 敏彦
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141BB01
2E141CC04
2E141DD02
2E141DD14
2E141DD22
2E141DD25
2E141FF05
2E141GG01
(57)【要約】
【課題】伸縮式テントの伸縮時、特に収縮動作時、天井部の変形に伴う門型フレームの倒れ込みを防止する。
【解決手段】この伸縮式テント構造体8は、複数の門型フレーム2と、複数の第一伸縮リンク機構4及び第二伸縮リンク機構5とを備える。各第二伸縮リンク機構5は、一対の傾斜リンク5a,5bと、前後方向で隣り合う天井部10のそれぞれに固定され上下方向に延びる一対の固定リンク13とを有し、各傾斜リンク5a,5bの上下一方の端部5a1,5b1はともに固定リンク13又は天井部10に連結され、各傾斜リンク5a,5bの上下他方の端部5a2,5b2はともに固定リンク13に連結され、各傾斜リンク5a,5bの上下一方の端部5a1,5b1が一定の高さ位置に保持され、かつ上下他方の端部5a2,5b2が上下方向に移動可能に構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱部と、前記一対の柱部をその上端で連結する天井部とを一体的に有する複数の門型フレームと、前後方向への伸縮動作により前後方向で隣り合う前記門型フレームの間隔を拡縮可能に連結する複数の第一伸縮リンク機構及び第二伸縮リンク機構とを備えた伸縮式テント構造体であって、
前記各第二伸縮リンク機構は、互いに交差しかつ傾斜角が可変なように交差点で連結された一対の傾斜リンクと、前後方向で隣り合う前記天井部のそれぞれに固定され上下方向に延びる一対の固定リンクとを有し、
前記各傾斜リンクの上下一方の端部はともに前記固定リンク又は前記天井部に連結され、前記各傾斜リンクの上下他方の端部はともに前記固定リンクに連結され、
前記各傾斜リンクの上下一方の端部が一定の高さ位置に保持され、かつ上下他方の端部が上下方向に移動可能に構成されている、伸縮式テント構造体。
【請求項2】
相対的に下側に位置する前記各傾斜リンクの前記上下一方の端部又は前記上下他方の端部の下限位置が、前記固定リンクの下端部に設けられている請求項1に記載の伸縮式テント構造体。
【請求項3】
左右方向から見た場合に前記固定リンクが上下方向に延び、かつ前後方向から見た場合に前記固定リンクが上下方向に対して所定の角度だけ傾くように、前記一対の傾斜リンクと前記固定リンクとが連結配置されている請求項1に記載の伸縮式テント構造体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の構造体と、前記複数の門型フレームの間に架け渡されて前記各門型フレームを覆うテントシートとを備えた伸縮式テントであって、
前記テントシートの前後方向一端面に所定高さの開口部が設けられ、
相対的に下側に位置する前記各傾斜リンクの前記上下一方の端部又は前記上下他方の端部の下限位置が、前記開口部の上端近傍に配置されている、伸縮式テント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮式テント構造体に関し、特に収縮時の剛性を高めるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のテント構造体として、前後方向に移動可能に設けられた複数の屋根フレームと、各屋根フレームに覆設されたテントシートと、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを伸縮可能に連結するパンタグラフ機構と、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを平行移動可能に連結する平行移動機構と、から構成したことを特徴とする伸縮式テント(蛇腹式テントとも言う。)が知られている(特許文献1)。この伸縮式テントは、強風や地震等による外力が屋根に作用しても、屋根フレームが前後方向に揺動して転倒しないようにすることを目的として開発されている。
【0003】
また、さらに大きな外力が屋根に作用しても、屋根フレームが前後方向に揺動して転倒しないことを目的として、特許文献2には、平行移動機構を改良した伸縮式テント構造体が提案されている。この伸縮式テント構造体1では、縦向きに設けられて屋根フレーム2の各々を伸縮可能に連結する平行移動機構としての縦パンタグラフ機構4が設けられている。この縦パンタグラフ機構4は、前後方向に連結された複数のX形リンク4aを備え、縦パンタグラフ機構4の隣り合うX形リンク4aの上下端部の連結部4a1,4a2は、複数の屋根フレーム2の左右中央の棟位置に立設された束材2dに各々に連結されるとともに隣り合う屋根フレーム2間において縦材9と連結され、縦材9は、X形リンク4aの連結部4a1,4a2によって支持されるとともに、屋根フレーム2の上辺2a1と略平行に延びるとともに上辺2a1より短いテントシート支持部材10を上端部に備え、隣り合うX形リンク4aを互いに連結する上下端部の連結部4a1,4a2は、上端部4a1又は下端部4a2の何れか一方のみの連結部が上下方向に可動に連結されている(段落0017~0020、図2図8図10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-069058号公報
【特許文献2】特許第5250157号公報
【特許文献3】特許第5119100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の伸縮式テントには、特許文献1や特許文献2に開示のように、比較的短い柱材と、主トラス梁とで構成される屋根フレームと、地面から立設した仮設足場とで門型フレームが構成されるものと、例えば特許文献3に開示のように、比較的長い支柱と、支柱の上端に取り付けられ左右方向に延びる天井部とで門型フレームが構成されるものとがある。相対的に足の短い屋根フレームと仮設足場とで門型フレームが構成される場合、柱材の下部に設けた車輪が、仮設足場の上部に設けられたレールに沿って伸縮式テントの前後方向(伸縮方向)に転動可能とされることにより、各屋根フレームを前後方向に平行移動可能としている。また、相対的に足の長い支柱と天井部とで門型フレームが構成される場合、支柱の下部に設けた車輪が、接地された基台上のレールに沿って前後方向に転動可能とされることにより、各門型フレームを前後方向に平行移動可能としている。
【0006】
後者の場合(足の長い支柱と天井部とで門型フレームが構成される場合)、テントの収縮動作は、例えば支柱の下端部を人が収縮方向に沿って押すことにより、又はモータ等の駆動装置により支柱の下端部に収縮方向への移動力を付与することにより行われる。この際、門型フレームを押込んでいくにつれて、天井部が後方側に膨らむように変形し、支柱にねじれが生じると共に門型フレームが前方側への倒れ込みを生じる。支柱の下端部には車輪が設けられているため、支柱がねじれて車輪が傾くと、最悪レールに車輪が引っ掛かり転動不能な状態に陥るおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載の縦パンタグラフ機構は、角型フレームの前後方向への揺動を抑制する目的で設けられているが、この種の縦パンタグラフ機構を角型フレーム間に設けた場合であっても、上述した変形及び倒れ込みを抑えることは難しかった。
【0008】
以上の事情に鑑み、本発明は、伸縮式テントの伸縮時、特に収縮動作時、天井部の変形に伴う門型フレームの倒れ込みを防止することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決は、本発明に係る伸縮式テント構造体によって達成される。すなわち、このテント構造体は、一対の支柱部と、一対の支柱部同士をその上端で連結する天井部とを一体的に有する複数の門型フレームと、前後方向への伸縮動作により前後方向で隣り合う門型フレームの間隔を拡縮可能に連結する複数の第一伸縮リンク機構及び第二伸縮リンク機構とを備えた伸縮式テント構造体であって、各第二伸縮リンク機構は、互いに交差しかつ傾斜角が可変なように交差点で連結された一対の傾斜リンクと、前後方向で隣り合う天井部のそれぞれに固定され上下方向に延びる一対の固定リンクとを有し、各傾斜リンクの上下一方の端部はともに固定リンク又は天井部に連結され、各傾斜リンクの上下他方の端部はともに固定リンクに連結され、各傾斜リンクの上下一方の端部が一定の高さ位置に保持され、かつ上下他方の端部が上下方向に移動可能に構成されている点をもって特徴付けられる。
【0010】
例えば特許文献2に記載のように、伸縮リンク機構を、前後方向で隣り合うX形リンク(一対の傾斜リンク)の間に上下方向に延びる縦材を設けたリンク機構とした場合、この縦材は何れの門型フレームにも固定されていないため、この縦材の存在が当該リンク機構の伸縮方向における剛性低下の一因と考えられる。この点に関し、本発明では、前後方向で隣り合う門型フレームの間隔を拡縮可能に連結する第二伸縮リンク機構を、互いに交差しかつ傾斜角が可変なように連結された一対の傾斜リンクと、前後方向で隣り合う天井部のそれぞれに固定され上下方向に延びる一対の固定リンクとで構成し、各傾斜リンクの少なくとも上下一方の端部を固定リンクに連結した。このように一対の傾斜リンクと、門型フレーム(天井部)に固定された一対の固定リンクとで第二伸縮リンク機構を構成することによって、一対の傾斜リンク間に連結される縦材を省略することができる。よって、剛性低下の要因を取り除いて、第二伸縮リンク機構の伸縮方向における剛性を向上させることが可能となる。これにより天井部の変形が可及的に防止又は抑制されるので、当該変形に伴う門型フレームの倒れ込みを回避して、安定した収縮動作を実現することが可能となる。もちろん、上述のように第二伸縮リンク機構を構成することで、一の固定リンクがその前方側に位置する一対の傾斜リンクと第二伸縮リンク機構を構成し、かつ後方側に位置する一対の傾斜リンクとも第二伸縮リンク機構を構成する。よって、一つの第二伸縮リンク機構が伸縮動作を行うと、他の第二伸縮リンク機構も連動して伸縮動作を行う。よって、特定の第二伸縮リンク機構のみが伸縮することによる負荷の集中を防止して、安定した伸縮動作を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る伸縮式テント構造体において、相対的に下側に位置する各傾斜リンクの上下一方の端部又は上下他方の端部の下限位置が、固定リンクの下端部に設けられてもよい。
【0012】
このように、相対的に下側に位置する各傾斜リンクの上下一方の端部、又は上下他方の端部の下限位置を定めることによって、一対の傾斜リンクによる門型フレームの前後方向への伸縮量を増やすことができる。よって、門型フレームの間に前後方向で一組の第二伸縮リンク機構(一対の傾斜リンク及び一対の固定リンク)のみを設けた場合であっても、各門型フレーム間で所要の伸縮量を確保することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る伸縮式テント構造体において、左右方向から見た場合に固定リンクが上下方向に延び、かつ前後方向から見た場合に固定リンクが上下方向に対して所定の角度だけ傾くように、各一対の傾斜リンク及び固定リンクが連結配置されてもよい。
【0014】
このように固定リンクが前後方向から見た状態で上下方向に対して所定の角度だけ傾けた姿勢となるように各一対の傾斜リンク及び固定リンクを連結配置することによっても、上述した伸縮方向における剛性を確保しつつ、一対の傾斜リンクによる門型フレームの前後方向への伸縮量を増やすことができる。よって、門型フレームの間に設けられる第二伸縮リンク機構の数が前後方向で一組だけの場合であっても、各門型フレーム間で所要の伸縮量を確保することが可能となる。
【0015】
また、以上の説明に係る伸縮式テント構造体は、この構造体と、複数の門型フレームの間に架け渡されて各門型フレームを覆うテントシートとを備えた伸縮式テントとして好適に提供可能である。この場合、上記伸縮式テントにおいて、テントシートの前後方向一端面に所定高さの開口部が設けられ、相対的に下側に位置する各傾斜リンクの上下一方の端部又は上下他方の端部の下限位置が、開口部の上端近傍に配置されてもよい。
【0016】
上述のように下側に位置する各傾斜リンクの固定側の端部又は可動側の端部の下限位置を、テントシートに設けられる開口部の高さ寸法との関係で定めることにより、テントの有効高さ(テント内空間の有効容積)を最大限確保しながら、傾斜リンクによる前後方向への伸縮量を最大限増やすことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る伸縮式テント構造体によれば、伸縮時、特に収縮動作時、天井部の変形に伴う門型フレームの倒れ込みを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る伸縮式テントの正面図である。
図2図1に示す伸縮式テントを左右方向から見た側面図であって、最大限伸長した状態を示す側面図である。
図3図1に示す伸縮式テントを左右方向から見た側面図であって、最大限収縮した状態を示す側面図である。
図4図1に示す伸縮式テント構造体の正面図である。
図5図4に示す第二伸縮リンク機構を左右方向から見た側面図で、(a)伸長した状態と、(b)収縮した状態をそれぞれ示す側面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る伸縮式テント構造体の正面図である。
図7図6に示す第二伸縮リンク機構を左右方向から見た側面図で、(a)伸長した状態と、(b)収縮した状態をそれぞれ示す側面図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る伸縮式テント構造体の正面図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る伸縮式テント構造体の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第一実施形態に係る伸縮式テントの内容を図面に基づいて説明する。なお、以下では、伸縮式テントの収縮方向を前後方向、鉛直方向を上下方向、前後方向及び上下方向に直交する向きを左右方向として説明する。また、各図面において、前後方向をX方向、上下方向をZ方向、左右方向をY方向とする。
【0020】
図1は本実施形態に係る伸縮式テント1を前後方向から見た正面図、図2及び図3は伸縮式テント1を左右方向から見た側面図をそれぞれ示している。図1に示すように、この伸縮式テント1は、複数の門型フレーム2と、テントシート3と、第一伸縮リンク機構4と、第二伸縮リンク機構5と、基台6、及びレール7とを備える。このうち、テントシート3を除く残りの要素(複数の門型フレーム2、第一伸縮リンク機構4、第二伸縮リンク機構5、基台6、レール7)で本発明に係る伸縮式テント構造体8が構成されている。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、二張りの伸縮式テント1,1が前後方向(図2でいえば右方向が前方向、左方向が後方向)に並べて配設されている。この場合、前後の伸縮式テント1,1はそれぞれ前側端部1a(図2でいえば右側端部)と後側端部1b(図2でいえば左側端部)とを開口した形態をなし、各々の伸縮式テント1,1が前後方向に伸長した状態では、後側の伸縮式テント1の前側端部1aを、前側の伸縮式テント1の後側端部1bで覆った状態となり、合わせて一張りの長尺な伸縮式テント1’が形成されている。
【0022】
一方で、前後の伸縮式テント1、1がともに収縮した状態では、図3に示すように、左右の伸縮式テント1,1間に、テントシート3がなく側方及び上方が開放された開放空間Sが形成される。よって、この開放空間Sが形成された状態では、クレーン等(図示は省略)により吊り上げられた物体を開放空間Sの上方から降ろすことにより、後述する開口部3bよりも巨大な物体の伸縮式テント1’内への導入を可能としている。
【0023】
門型フレーム2は概ね門形状をなすもので、図4に示すように、一対の柱部9,9と、一対の柱部9,9同士をその上端で連結する天井部10とで構成される。
【0024】
各柱部9は、上下方向に延在するもので、上端が同一の高さに設定されると共に下端に車輪11を有している。この車輪11は、基台6上に設けられたレール7上を転動可能に構成されている。ここで、レール7は左右一対にかつ平行に設けられている。そのため、これら左右一対のレール7上を各車輪11が転動することで、一対の柱部9を有する門型フレーム2がレール7に平行に移動可能とされている。なお、車輪11がレール7上を転動可能な限りにおいて、車輪11及びレール7の構造は任意である。
【0025】
柱部9は公知の構造を含む任意の構造をとることが可能であり、本実施形態ではともに上下方向に延びる一対の支柱9a,9bと、一対の支柱9a,9b同士を連結する複数の斜材9cとを少なくとも有する。本図示例では、内側の支柱9aの下端に車輪11が設けられている。これら支柱9a,9bと斜材9cは例えば金属製パイプで形成される。
【0026】
天井部10は公知の構造を含む任意の構造をとることが可能であり、本実施形態では、相対的に上方に位置し左右方向中央に近づくにつれて上方に移行する向きに延びる左右一対の上弦材10aと、相対的に下方に位置し左右方向中央に近づくにつれて上方に移行する向きに延びる左右一対の下弦材10bと、上下に位置する上弦材10aと下弦材10bとを連結する複数の斜材10cとを少なくとも有する。これら上弦材10aと下弦材10b、及び斜材10cは、例えば支柱9a,9b等と同様に金属製パイプで形成される。
【0027】
テントシート3は、互いに平行な姿勢で整列した複数の門型フレーム2の間に架け渡されて各門型フレーム2を覆っている(図1及び図2を参照)。このテントシート3は、伸縮式テント構造体8の上方と側方、及び前後端(ここでは前後端の一方)を覆うもので、本実施形態では、前後方向一端面3aに所定高さ及び間口(左右方向寸法)の開口部3bが設けられている。図1では、開口部3bに左右開閉式のカーテン12が設けられており、このカーテン12により開口部3bを開閉可能としている。
【0028】
第一伸縮リンク機構4は、自らの前後方向への伸縮動作により前後方向で隣り合う門型フレーム2の間隔を拡縮可能に連結するもので、本実施形態では、互いに交差しかつ傾斜角が可変なように交差点で連結された一対の傾斜リンク4a,4b(図2及び図4を参照)と、各傾斜リンク4a,4bと連結される柱部9の内側の支柱9aとで構成される。各傾斜リンク4a,4bの下端部がそれぞれ隣り合う門型フレーム2の支柱9aに回動自在に連結され、各傾斜リンク4a、4bの上端部が支柱9aに上下動自在にかつ回動自在に連結されている。
【0029】
なお、上述の連結配置とは逆に、各傾斜リンク4a,4bの上端部をそれぞれ支柱9aに対して回動自在に連結し、各傾斜リンク4a,4bの下端部をそれぞれ支柱9aに対して上下動自在にかつ回動自在に連結した形態としてもよい。もちろん、上述した動作を可能とする限りにおいて、固定側と可動側とを問わず、各傾斜リンク4a,4bと支柱9aとの連結構造は任意である。また、配設位置についても原則として任意であり、例えば後述する第二伸縮リンク機構5の動作を阻害しない限りにおいて、柱部9に限らず天井部10に設けることも可能である。さらに言えば、第一伸縮リンク機構4は、上述の如く自らの伸縮動作により前後方向で隣り合う門型フレーム2の間隔を拡縮可能に連結する限りにおいて任意であり、一対の傾斜リンク4a,4b以外のリンクで構成してもよい。
【0030】
第二伸縮リンク機構5は、自らの前後方向への伸縮動作により前後方向で隣り合う門型フレーム2,2の間隔を拡縮可能に連結するもので(図2を参照)、互いに交差しかつ傾斜角が可変なように交差点で連結された一対の傾斜リンク5a,5bと、前後方向で隣り合う天井部10のそれぞれに固定され、ともに上下方向に延びる一対の固定リンク13,13とで構成される(図5を参照)。
【0031】
各固定リンク13は、本実施形態では、前後方向と左右方向の何れから見た場合においても上下方向に延びており、その上端部13aが、天井部10を構成する下弦材10bに固定されている。よって、各固定リンク13は、天井部10から垂下した形態をなしている(図4を参照)。また、各固定リンク13の長手方向寸法(ここでは上下方向寸法)は、天井部10の上下方向寸法、すなわち上弦材10aと下弦材10bとの上下方向間隔よりも大きく設定されている。
【0032】
各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1はともに天井部10の上弦材10aに回動自在に連結されている。一方、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2はともに固定リンク13に対して上下動自在にかつ回動自在に連結されている。
【0033】
本実施形態では、固定リンク13の長手方向に沿った所定の領域に案内棒5cが固定されている。また、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2には、アイボルト(図示は省略)が左右方向に延びる軸線まわりに回動自在に連結されている。そして、このアイボルトの環状部(同じく図示は省略)が案内棒5cに挿通されている。
【0034】
ここで、下端部5a2,5b2の上下方向への可動範囲Rと上限位置P1及び下限位置P2は、各傾斜リンク5a,5bの長手方向寸法と、第二伸縮リンク機構5の最大伸長時における各傾斜リンク5a,5bの傾斜角(図5(a)を参照)、及び最大収縮時における各傾斜リンク5a,5bの傾斜角(図5(b)を参照)とに基づいて適正に設定される。上述のように、案内棒5c及びアイボルトを介して各傾斜リンク5a,5bと固定リンク13とが相互に連結されている場合、可動範囲Rと上限位置P1及び下限位置P2は、案内棒5cの上下方向位置及び上下方向寸法に基づいて設定される。
【0035】
本実施形態では、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2の下限位置P2が固定リンク13の下端部13bに設けられている。また、下端部5a2,5b2の可動範囲Rが、固定リンク13の長手方向寸法の半分以上の領域に設定されている(何れも図5(a)を参照)。よって、この場合、各下端部5a2,5b2の上限位置P1が、固定リンク13の長手方向中央よりも上方に設けられている。
【0036】
上記構成の第二伸縮リンク機構5は、前後方向で隣り合う門型フレーム2の間に一組だけ配設されている。そのため、一の第二伸縮リンク機構5を構成する固定リンク13は、前後方向で隣り合う他の第二伸縮リンク機構5の固定リンク13を兼ねている(図5(a)を参照)。
【0037】
また、上記構成の第二伸縮リンク機構5は、本実施形態では、天井部10の左右方向中央の一箇所に配設されている。すなわち、天井部10を構成する上弦材10aの最上部に各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1が連結され、下弦材10bの最上部に各固定リンク13の上端部13aが固定されている。
【0038】
なお、本実施形態では、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2と、固定リンク13との連結構造を、固定リンク13に設けられた案内棒5cと、各傾斜リンク5a,5bに設けられたアイボルトとで構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構造を採ることも可能である。要は、各下端部5a2,5b2が固定リンク13に対して上下動自在にかつ回動自在に連結される限りにおいて、上記連結構造は任意の構成を採り得る。
【0039】
以上述べたように、本実施形態に係る伸縮式テント構造体8によれば、前後方向で隣り合う門型フレーム2同士が、一対の傾斜リンク5a,5bと、門型フレーム2の天井部10のそれぞれに固定された一対の固定リンク13,13で構成される一組の第二伸縮リンク機構5のみで相互に連結される。これにより、従来技術(特許文献2)に記載の如く、一対の傾斜リンク間に連結される縦材を設けることなく、前後方向で隣り合う門型フレーム2同士を連結することができるので、剛性低下の要因を取り除いて、第二伸縮リンク機構5の伸縮方向における剛性を向上させることが可能となる。これにより天井部10の変形が可及的に防止又は抑制されるので、当該変形に伴う門型フレーム2の倒れ込みを回避して、安定した収縮動作を実現することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1を天井部10の上弦材10aに連結すると共に、各固定リンク13の上端部13aを天井部10の下弦材10bに固定することにより、天井部10の上端部から開口部3bまでの限られた上下方向スペースの中で、各傾斜リンク5a,5bを極力長くとることができる。これにより、一対の傾斜リンク5a,5bによる門型フレーム2の前後方向への伸縮量を増やすことができるので、隣り合う門型フレーム2,2の間に前後方向で一組の第二伸縮リンク機構5のみを設けた場合であっても、各門型フレーム2,2間で所要の伸縮量を確保することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明に係る伸縮式テント構造体は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことはもちろんである。
【0042】
図6は、本発明の第二実施形態に係る伸縮式テント構造体21の正面図を示している。この伸縮式テント構造体21は、門型フレーム22、特に天井部23の構造において、第一実施形態に係る伸縮式テント構造体8と相違する。以下、相違点を中心に伸縮式テント構造体21の構成を説明する。なお、第一実施形態と同じ構成をなす要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る伸縮式テント構造体21は、第一実施形態と同様、複数の門型フレーム22を備えると共に、第一伸縮リンク機構4と、第二伸縮リンク機構5とを備える。ここで、各門型フレーム22は、一対の柱部9,9と、各柱部9,9同士をその上端部で連結する天井部23とを一体に有する。
【0044】
天井部23は、本実施形態では、相対的に上方に位置し左右方向中央に近づくにつれて上方に移行する向きに延びる左右一対の弦材23aと、相対的に下方に位置し左右方向に沿って延びる梁材23bと、上下に位置する弦材23aと梁材23bとを連結する複数の斜材23cとを少なくとも有する。これら弦材23aと梁材23b、斜材23cは、例えば支柱9a,9b等と同様に金属製パイプで形成される。
【0045】
また、本実施形態では、天井部23の下部を構成する梁材23bが、伸縮式テント構造体21と、この構造体21を覆うテントシート3(図1図3を参照)とを備えた伸縮式テントの開口部3b(図6中、二点鎖線で示す部分)の上端又は近傍に配置されている。
【0046】
第二伸縮リンク機構5は、第一実施形態と同様、一対の傾斜リンク5a,5bと、一対の固定リンク13,13とで構成される。本実施形態では、各固定リンク13が、天井部23の左右方向中央位置において、弦材23aと梁材23bとに連結されている。この場合、各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1は固定リンク13に回動自在に連結され、下端部5a2,5b2は固定リンク13に対して上下動自在にかつ回動自在に連結されている(図7(a)を参照)。
【0047】
本実施形態においても、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2の下限位置P2は固定リンク13の下端部13bに設けられている。ここで、固定リンク13の下端部13bは梁材23bに固定されており、梁材23bは、開口部3bの上端又はその近傍に配設されていることから、下端部5a2,5b2の下限位置P2は、開口部3bの上端近傍に配置されている(図6を参照)。
【0048】
上記構成の第二伸縮リンク機構5は、前後方向で隣り合う門型フレーム22,22の間に一組だけ配設されている。そのため、本実施形態においても、一の第二伸縮リンク機構5を構成する固定リンク13は、前後方向で隣り合う他の第二伸縮リンク機構5の固定リンク13を兼ねている(図7(a)を参照)。
【0049】
このように、本実施形態に係る伸縮式テント構造体21によっても、前後方向で隣り合う門型フレーム22,22同士が、一対の傾斜リンク5a,5bと、門型フレーム22の天井部23のそれぞれに固定された一対の固定リンク13,13で構成される一組の第二伸縮リンク機構5のみで相互に連結される。これにより、従来技術に記載の如く、一対の傾斜リンク間に連結される縦材を設けることなく、前後方向で隣り合う門型フレーム22,22同士を連結することができるので、剛性低下の要因を取り除いて、第二伸縮リンク機構5の伸縮方向における剛性を向上させることが可能となる。これにより天井部23の変形が可及的に防止又は抑制されるので、当該変形に伴う門型フレーム22の倒れ込みを回避して、安定した収縮動作を実現することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のように、各傾斜リンク5a,5bの下端部5a2,5b2の下限位置P2を、テントシート3に設けられる開口部3bの上端近傍に設定することによって、伸縮式テント内の物体との干渉を確実に避けつつ、各傾斜リンク5a,5bの長手方向寸法を最大限大きく取ることが可能となる。よって、テントの有効高さ(テント内空間の有効容積)を最大限確保しつつも、各傾斜リンク5a,5b(第二伸縮リンク機構5)による前後方向への伸縮量を最大限増やすことが可能となる。
【0051】
また、上述した各実施形態では何れも、第二伸縮リンク機構5が天井部10(23)の左右方向中央の一箇所に配設される場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。図8はその一例(本発明の第三実施形態)に係る伸縮式テント構造体31の正面図を示している。図8に示すように、この伸縮式テント構造体31は、天井部10の左右方向二箇所に第二伸縮リンク機構5を配設してなる。各伸縮リンク機構5の構造、並びに天井部10との連結構造については、第一実施形態と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0052】
このように、天井部10の左右方向で複数箇所に第二伸縮リンク機構5を設けることにより、伸縮式テント構造体31の伸縮方向における剛性をさらに高めることが可能となる。なお、天井部10の変形を効果的に抑止する観点から、複数の第二伸縮リンク機構5を天井部10に設ける場合であっても、各第二伸縮リンク機構5を図示の如く天井部10の左右方向中央になるべく近い位置に配設することが望ましい。
【0053】
また、上述した各実施形態では何れも、前後方向と左右方向何れの向きから見た場合においても、各固定リンク13が上下方向に延びるように天井部10(23)に固定される場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。図9はその一例(本発明の第四実施形態)に係る伸縮式テント構造体41の要部拡大正面図を示している。図9に示すように、この伸縮式テント構造体41においては、前後方向と左右方向何れの向きから見た場合においても、各固定リンク13が上下方向に延びるように天井部10(23)に固定される場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。図9はその一例(本発明の第四実施形態)に係る伸縮式テント構造体41の要部拡大正面図を示している。この伸縮式テント構造体41においては、左右方向から見た場合に、図5と同様、固定リンク13が上下方向に延び、かつ前後方向から見た場合に、図9に示すように、固定リンク13が上下方向に対して所定の角度だけ傾くように、一対の傾斜リンク5a,5bと固定リンク13とが連結配置されている。
【0054】
このように固定リンク13が前後方向から見た状態で上下方向に対して所定の角度だけ傾けた姿勢となるように各一対の傾斜リンク5a,5b及び固定リンク13を連結配置した場合、傾斜角度を大きくするほど、各傾斜リンク5a,5bの長手方向寸法を大きくできる。よって、伸縮式テント構造体8(21,31,41)の構造上、第二伸縮リンク機構5が配置できる上下方向のスペースに制約がある場合においても、円滑な伸縮動作を確保可能な範囲で固定リンク13を左右方向に傾けることにより、門型フレーム2(22)の前後方向への伸縮量をさらに増やすことができる。
【0055】
なお、上述した各実施形態では何れも、各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1が天井部10の一部又は固定リンク13に回動自在に連結され、下端部5a2,5b2が固定リンク13に対して上下動自在にかつ回動自在に連結されている場合を例示したが、もちろんこれとは逆の連結態様をとることも可能である。すなわち、図示は省略するが、各傾斜リンク5a,5bの上端部5a1,5b1が固定リンク13に対して上下動自在にかつ回動自在に連結され、下端部5a2,5b2が天井部10(23)の一部又は固定リンク13に回動自在に連結されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1’ 伸縮式テント
1a 前側端部
1b 後側端部
2,22 門型フレーム
3 テントシート
3b 開口部
4 第一伸縮リンク機構
4a,4b 傾斜リンク
5 第二伸縮リンク機構
5a,5b 傾斜リンク
5a1,5b1 上端部
5a2,5b2 下端部
5c 案内棒
6 基台
7 レール
8,21,31,41 伸縮式テント構造体
9 柱部
10 天井部
10a 上弦材
10b 下弦材
10c 斜材
11 車輪
12 カーテン
13 固定リンク
13a 上端部
13b 下端部
21 伸縮式テント構造体
23 天井部
23a 弦材
23b 梁材
23c 斜材
P1 上限位置(傾斜リンク)
P2 下限位置(傾斜リンク)
R 可動範囲(傾斜リンク)
S 開放空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9