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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173524
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】箱の開封方法及び開封装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 69/00 20060101AFI20241205BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20241205BHJP
   B26D 1/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65B69/00 D
B25J13/08
B26D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092000
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】511087372
【氏名又は名称】アルトリスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519309429
【氏名又は名称】株式会社ノードクラフト
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】下岡 浩司
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晃久
【テーマコード(参考)】
3C027
3C707
3E058
【Fターム(参考)】
3C027KK01
3C027KK04
3C027KK08
3C027KK11
3C707BS09
3C707KS09
3E058AA02
3E058CA01
3E058GA02
3E058GA05
(57)【要約】
【課題】 安価な構成で、的確かつ安全に箱の開封を行うことができる箱の開封方法及び開封装置を提案する。
【解決手段】 粘着テープ6の貼付によって閉止された箱1を、該粘着テープ6を刃体5によって切断して開封するものにおいて、刃先部が円弧状の刃体5を、箱1の開封面15に対して立てた姿勢で粘着テープ6に上方側から押し当てて対向間隙16方向に移動させて開封面15側の粘着テープ6を切断する第1の切断ステップと、該第1切断ステップの実行後、刃体5を開封面15の面方向に沿うように寝かせた姿勢で縦隙間17内に進入させたのち、対向間隙16方向に移動させて箱1の前面12Aと開封面15の間及び該開封面15と後面12Bの間に貼付された粘着テープ6のうち刃体5の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第2の切断ステップを実行する。これによって、安価な構成で、的確かつ安全に箱の開封を行うことができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱の上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで所定の対向間隙をもって対向させてなる開封面と、該開封面の一端寄りに位置する箱の前面と、該開封面の他端寄りに位置する後面に至る部分に跨って粘着テープを貼付することで閉止された箱について、上記粘着テープを、ロボットアームの先端に装着した金属製の薄板で構成され刃先部が円弧状に成形された刃体を用いて切断して開封する箱の開封方法であって、
上記刃体を上記開封面に対して略垂直方向に立てた姿勢で該開封面側の上記粘着テープにその上方側から押し当てて上記対向間隙方向に移動させることで上記開封面側の粘着テープを上記対向間隙に沿って切断する第1の切断ステップと、
上記第1切断ステップの実行後、上記刃体を上記開封面の面方向に沿うように寝かせた姿勢で、該刃体によって上記一対のフラップの一方側を押し下げて該フラップと他方のフラップとの間に形成される縦隙間内に上記刃体を進入させたのち、上記対向間隙方向に移動させて上記箱の前面と上記開封面の間及び該開封面と上記後面の間に貼付された上記粘着テープのうち上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第2の切断ステップを実行することを特徴する箱の開封方法。
【請求項2】
請求項1の箱の開封方法において、
上記第2の切断ステップの実行後、上記刃体を上記第2切断ステップ時における刃体の進入方向とは逆方向から上記縦隙間に刃体を進入させて、上記箱の前面と上記開封面の間及び該開封面と上記後面の間に貼付された上記粘着テープのうち該進入方向の前方側に位置する部分を切断する第3の切断ステップを実行することを特徴する箱の開封方法。
【請求項3】
箱の上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで所定の対向間隙をもって対向させてなる開封面の上記対向間隙に対応する部分に第1の粘着テープを貼付するとともに、上記開封面の前端部と箱の前面の間、及び該開封面の後端部と箱の後面の間に第2の粘着テープを貼付することで閉止された箱について、上記第1及び第2の粘着テープを、ロボットアームの先端に装着した金属製の薄板で構成され刃先部が円弧状に成形された刃体を用いて切断して開封する箱の開封方法であって、
上記刃体を上記開封面に対して略垂直方向に立てた姿勢で該開封面側の上記粘着テープにその上方側から押し当てて上記対向間隙方向に移動させることで上記第1の粘着テープを切断する第1の切断ステップと、
上記第1切断ステップの実行後、上記刃体を上記開封面の面方向に沿うように寝かせた姿勢で、該刃体によって上記一対のフラップの一方側を押し下げて該フラップと他方のフラップとの間に形成される縦隙間内に上記刃体を進入させて、これを上記対向間隙方向に上記開封面の一端部側へ移動させたのち、上記刃体の進入方向の前方側へ移動させて上記第2の粘着テープの上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第2の切断ステップと、
上記第2の切断ステップの実行後、上記刃体を上記第2切断ステップにおける刃体の進入方向とは逆方向から上記縦隙間に刃体を進入させて、これを上記対向間隙方向に上記開封面の他端部側へ移動させたのち、上記刃体の進入方向の前方側へ移動させて上記第2の粘着テープの上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第3の切断ステップを実行することを特徴する箱の開封方法。
【請求項4】
上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで対向させた状態で粘着テープによって固定することで閉止された箱の上記粘着テープを切断して該箱を開封する箱の開封装置であって、
上記箱を作業台上に位置決めして設置する位置決め機構と、上記箱の縦長と横長及び高さを検出し、その検出データを出力する検出部と、ロボットアームの先端のヘッド部に、金属製の薄板で構成され刃先部が円弧状に成形された刃体を取り付けたロボット装置と、上記ロボット装置を駆動する駆動部と、上記刃体の上記箱に対する相対位置を、上記検出部の出力する検出データに基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴とする箱の開封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、粘着テープで封止された箱の開封方法及び開封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着テープで封止された箱の開封方法として従来から種々の提案がされている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
特許文献1に示される箱開封装置は、カッタを箱に対して相対移動させるロボットと、ロボットを制御する制御部と、箱の開封面からの反射光を正面から計測して開封面を含む表面上の点群を三次元座標で表した三次元データを取得する3Dカメラとを備える。そして、制御部は、位置制御データ生成部と切断制御部とを備え、該位置制御データ生成部は、三次元データに基づいてカッタの切断経路を三次元座標値で表す位置制御データを生成し、また切断制御部は、位置制御データを基にロボットを制御して、カッタを箱に対して切断経路に沿って相対移動させることで箱の開封を行うものである。
【0003】
特許文献2に示されるものは、手動操作される開箱具であって、該開箱具は、把持部材と、該把持部材の先端に延設させた扁平で且つ肉厚のある合成樹脂材で形成した先端部材から成り、該先端部材へ先端方向と幅方向の外側に向けて徐々に肉薄としたテーパー部を形成すると共に、該先端部材のテーパー部の外周縁に沿って金属材料で形成した開封用の薄片を被覆して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-123390号公報
【特許文献2】実用新案登録第3221231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に示される箱開封装置は、3Dカメラによって開封面からの反射光を計測することで、開封面の三次元データを取得し、次いで、制御部によって開封面の三次元データに基づいてカッタの切断経路を三次元座標値で表す位置制御データを生成し、この位置制御データに基づいてカッタを移動させることで箱を開封するものであることから、カッタの切断経路の設定を高精度で行うことができるものの、開封面の三次元データの作成とそれに基づくカッタの位置制御データの作成を箱毎に行う必要があるため、開封作業に時間がかかるという問題がある。また、開封面の三次元データやカッタの位置制御データを作成するための機器やソフトウエアを備えるため、装置が高価であるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に示されるものでは、手動の開箱具を用いて、すべて人手によって箱の開封作業を行う必要があることから、開封作業における作業性が低く、大量の処理には対応しにくく、且つ開封コストも高くつくという問題がある。
【0007】
そこで本願発明は、安価な構成で、的確かつ安全に箱の開封を行うことができる箱の開封方法及び開封装置を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0009】
本願の第1の発明では、箱の上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで所定の対向間隙をもって対向させてなる開封面と、該開封面の一端寄りに位置する箱の前面と、該開封面の他端寄りに位置する後面に至る部分に跨って粘着テープを貼付することで閉止された箱について、上記粘着テープを、ロボットアームの先端に装着した金属製の薄板で構成され刃先部が円弧状に成形された刃体を用いて切断して開封する箱の開封方法であって、上記刃体を上記開封面に対して略垂直方向に立てた姿勢で該開封面側の上記粘着テープにその上方側から押し当てて上記対向間隙方向に移動させることで上記開封面側の粘着テープを上記対向間隙に沿って切断する第1の切断ステップと、上記第1切断ステップの実行後、上記刃体を上記開封面の面方向に沿うように寝かせた姿勢で、該刃体によって上記一対のフラップの一方側を押し下げて該フラップと他方のフラップとの間に形成される縦隙間内に上記刃体を進入させたのち、上記対向間隙方向に移動させて上記箱の前面と上記開封面の間及び該開封面と上記後面の間に貼付された上記粘着テープのうち上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第2の切断ステップを実行することを特徴としている。
【0010】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る箱の開封方法において、上記第2の切断ステップの実行後、上記刃体を上記第2の切断ステップ時における刃体の進入方向とは逆方向から上記縦隙間に刃体を進入させて、上記箱の前面と上記開封面の間及び該開封面と上記後面の間に貼付された上記粘着テープのうち該進入方向の前方側に位置する部分を切断する第3の切断ステップを実行することを特徴としている。
【0011】
本願の第3の発明では、箱の上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで所定の対向間隙をもって対向させてなる開封面の上記対向間隙に対応する部分に第1の粘着テープを貼付するとともに、上記開封面の前端部と箱の前面の間、及び該開封面の後端部と箱の後面の間に第2の粘着テープを貼付することで閉止された箱について、上記第1及び第2の粘着テープを、ロボットアームの先端に装着した金属製の薄板で構成され刃先部が円弧上に成形された刃体を用いて切断して開封する箱の開封方法であって、上記刃体を上記開封面に対して略垂直方向に立てた姿勢で該開封面側の上記粘着テープにその上方側から押し当てて上記対向間隙方向に移動させることで上記第1の粘着テープを切断する第1の切断ステップと、上記第1切断ステップの実行後、上記刃体を上記開封面の面方向に沿うように寝かせた姿勢で、該刃体によって上記一対のフラップの一方側を押し下げて該フラップと他方のフラップとの間に形成される縦隙間内に上記刃体を進入させて、これを上記対向間隙方向に上記開封面の一端部側へ移動させたのち、上記刃体の進入方向の前方側へ移動させて上記第2の粘着テープの上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第2の切断ステップと、上記第2の切断ステップの実行後、上記刃体を上記第2切断ステップにおける刃体の進入方向とは逆方向から上記縦隙間に刃体を進入させて、これを上記対向間隙方向に上記開封面の他端部側へ移動させたのち、上記刃体の進入方向の前方側へ移動させて上記第2の粘着テープの上記刃体の進入方向の前方側に位置する部分を切断する第3の切断ステップを実行することを特徴としている。
【0012】
本願の第5の発明では、上面側の左右一対のフラップを共に中央側に折り畳んで対向させた状態で粘着テープによって固定することで閉止された箱の上記粘着テープを切断して該箱を開封する箱の開封装置であって、上記箱を作業台上に位置決めして設置する位置決め機構と、上記箱の縦長と横長及び高さを検出し、その検出データを出力する検出部と、ロボットアームの先端のヘッド部に、金属製の薄板で構成され刃先部が円弧上に成形された刃体を取り付けたロボット装置と、上記ロボット装置を駆動する駆動部と、上記刃体の上記箱に対する相対位置を、上記検出部の出力する検出データに基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係る箱の開封方法及び箱の開封装置では、次のような効果が得られる。
【0014】
(a)上記刃体が金属製の薄板で構成され、刃先部が円弧上に成形されて先が尖っていないことから、該刃体で封止用の粘着テープを切断して箱を開封する場合、該刃体によって該箱の内容物を傷つけることがなく、信頼性の高い開封作業が実現される。
【0015】
(b)刃体がロボットアームの先端に固定された金属製の薄板であり、超音波振動式や回転式の刃ではないことから、開封作業においては粘着テープや箱の切り屑(粉塵)の発生を防ぐことができ、環境に配慮した開封作業が実現される。
【0016】
(c)刃体が金属製の薄板であって適度に撓るため、箱の開封面の略中央部の粘着テープ上に上記刃体を下降させて押圧する際に刃体が撓ることで、刃先が箱の開封面の最も反発力が低く下がり易い左右方向の中央に滑って移動する。そのため、刃体を下降させる位置が箱の開封面の左右方向中央から少しずれていても、刃先を当該位置に正確に突き立てることができる(図6(ロ)参照)。この結果、刃体を箱の開封面の略中央部に下降させるための最低限の情報として、箱の縦長、横長及び高さの情報さえあれば、箱の開封面の左右方向中央(かつ、前後方向の略中央)に正確に刃先を突き立てることができるため、粘着テープの切断ミスによる箱の開封不良を低減でき、延いては信頼性の高い開封作業が実現される。
【0017】
(d)粘着テープを切断して開封する際の刃体の切断経路を定めるためには、箱の縦長・横長・高さの情報さえあればよいので、刃の切断経路を設定するための特別な機器やソフトウエアを備える必要がなく、開封装置を安価なものとすることができる。
【0018】
(e)上記刃体の刃先が円弧状であるため、開封時に箱の前後フラップを押しのけることができ、切断してしまうことがない(図7参照)。そのため、開封時に箱に与えるダメージを最小限に抑えることができ、箱を再使用する場合に便宜である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明の第1の実施形態に係る箱の開封装置の全体システム図である。
図2図1に示した箱の構造図である。
図3】刃体の斜視図である。
図4】上記刃体の可撓性を示す側面図である。
図5】第1の切断ステップの説明図である。
図6図5のB-B断面図である。
図7図5のC-C断面図である。
図8】第2の切断ステップの説明図である。
図9図8における刃体の挿入操作説明図である。
図10】第3の切断ステップの説明図である。
図11】本願発明の第2の実施形態に係る箱の開封装置の全体システム図である。
図12】第1の切断ステップの説明図である。
図13】第2の切断ステップの説明図である。である。
図14】第3の切断ステップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1の実施形態」
図1には、本願発明の第1の実施形態に係る箱の開封装置Zを示している。この開封装置Zは、作業台10上に位置決め機構8によって載置固定される閉止状態のダンボール等の箱1を開封するものであって、ロボット装置2を備えて構成される。このロボット装置2のロボットアーム3の先端部のヘッド部4には、上記箱1に貼付されたクラフトテープ等の粘着テープ6を切断するための刃体5が装着されている。
【0021】
また、このロボット装置2には、上記ロボットアーム3を駆動する駆動部(図示せず)と、上記箱1の縦長と横長と高さを検出する検出部(図示せず)と、該検出部の出力する検出データに基づいて上記刃体の上記箱に対する相対位置を変更制御する制御部(図示せず)が付設されている。
【0022】
ここで、上記箱1は、図2に示すように、ダンボール製の長矩形の筐体であって、長辺側において対向する側面11A,11Bと短辺側において対向する前面12Aと後面12Bと、上記側面11A,11Bの上端にそれぞれ連続する一対のフラップ13、13と、上記前面12Aと後面12Bの上端にそれぞれ連続する一対のフラップ14、14を備えている。
【0023】
そして、この箱1は、上記一対のフラップ14、14を内側にそれぞれ倒したのち、該フラップ14、14をその上側から抑えるように上記一対のフラップ13、13を倒し込んで閉じる。この場合、上記フラップ13、13は所定幅の対向間隙16を形成した状態 で略同一平面を形成しているので、この平面部分を開封面15とする。
【0024】
そして、このフラップ13、13によって上記開封面15が形成された状態で、上記前面12Aから上記開封面15の上記対向間隙16の形成部分を経て上記後面12Bに跨って粘着テープ6を貼付することで、上記箱1は閉止される(図1参照)。したがって、この閉止状態にある箱1を開封するためには、上記粘着テープ6を、上記開封面15の両端部部分と、上記対向間隙16に対応する部位で切断する必要があり、この粘着テープ6の切断に上記刃体5が使用されるものである。
【0025】
また、上記刃体5は、図3に示すように、金属製の薄板で一体形成され、その刃先部5aは円弧状に成形されている。この刃体5は金属製の薄板であるがために、図4に示すように高い可撓性を有し、その板厚方向に撓ることができる。例えば、刃体5を構成する金属がステンレスである場合には、十分な可撓性と耐久性を付与するために、刃体5の厚さは0.25~0.5mmであることが望ましい。
【0026】
続いて、上記箱1の開封作業について説明する。
この箱1の開封作業は、以下に述べるように、第1の切断ステップ、第2の切断ステップ及び第3の切断ステップによって行われる。
【0027】
「第1の切断ステップ」
第1の切断ステップは、図5に示すように、上記刃体5によって上記箱1を封止する粘着テープ6を切断するステップであって、上記刃体5を実線図示するように、下方に向けて立てた状態で、その刃先部を上記粘着テープ6の長手方向中央部分に押し当てて押圧する。この場合、この押圧部分は剛性が最も低いことから下方に押し下げられる。これに伴って上記一対のフラップ13、13も図6に示すように、側方から上記対向間隙16に向けて谷状に傾斜する。
【0028】
ここで、上記刃体5の刃先部が図6(イ)に示すように、上記対向間隙16の直上に位置していれば、該刃体5は上記粘着テープ6を切断して下方に突出する。したがってこの状態で該刃体5を該対向間隙16に沿ってpa1からpa2まで移動させることで、粘着テープ6の略半分が切断される。続いて、該刃体5をpa3からpa4まで移動させることで、上記粘着テープ6の残り半分が切断される。
【0029】
一方、図6(ロ)に示すように、上記刃体5の刃先部5aの位置が、上記対向間隙16の直上位置から側方へズレている場合には、該刃体5が粘着テープ6側に押圧されると、該刃先部5aが鎖線図示5a1で示すように撓り変形すると同時に、粘着テープ6の傾斜に沿って上記対向間隙16側へ移動し、鎖線図示5a2で示すように上記対向間隙16内に侵入して粘着テープ6を切断することになる。即ち、この実施形態の刃体5を使用すれば、上記刃体5の中心が少し対向間隙16からズレていたとしても、確実に上記粘着テープ6を上記対向間隙16に対応する位置で切断できるということである。
【0030】
この結果、刃体5を箱1の開封面15の略中央部に下降させるための最低限の情報として、箱1の縦長、横長及び高さの情報さえあれば、箱1の開封面15の左右方向中央(かつ、前後方向の略中央)に正確に刃先を突き立てることができるため、粘着テープ6の切断ミスによる箱1の開封不良を低減でき、延いては信頼性の高い開封作業が実現される。
【0031】
また、この第1の切断ステップでは、上記刃体5を開封面15の終端付近まで移動させた場合に、図7に示すように上記側壁フラップ13で構成される開封面15の下側に位置するフラップ14が上記刃体5に接触してこれを押し下げることになるが、この場合、該刃体5の刃先が円弧状であり、且つ尖りを持たない薄板状であることから、該刃体5によって該端壁フラップ14部分が損傷を受けることがない。したがって、箱1を再使用する場合に便宜である。
【0032】
「第2の切断ステップ」
第2の切断ステップは、上記粘着テープ6の端部を、上記開封面15の一方の端部と上記前面12Aの間と、該開封面15の他方の端部と上記後面12Bの間で、それぞれ切断するステップである。
【0033】
具体的には、図8に示すように、刃体5を水平近くまで寝かせた状態で、該刃体5を上記第1の切断ステップにおいて切断分離された上記フラップ13、13の一方側に上方から押し付けて(図9(イ)参照)、該フラップ13、13間に縦方向に開く縦隙間17を形成するとともに(図9(ロ)参照)、この縦隙間17内に上記刃体5を差し込む(図9(ハ)参照)。
【0034】
次に、図8に示すように、上記刃体5を、pb1→pb2→pb3、pb4→pb5→pb6と移動させて、上記粘着テープ6の両端部を、刃体5の進入方向の前方側の位置でそれぞれ切断する。
【0035】
したがって、この第2切断ステップの完了時点においては、上記粘着テープ6の両端部のうち、上記刃体5の進入方向手前側の部分は未切断のまま残った状態となっている。しかし、この程度の粘着テープ6の残存状態であれば、人が手で引き開いて切断することも可能である。したがって、次の第3の切断ステップは必ずしも実行しなくてもよい。
【0036】
「第3の切断ステップ」
第3の切断ステップは、上記第2の切断ステップの実行後に残存する粘着テープ6の未切断部分を切断するステップであって、図10に示すように、上記第2の切断ステップ時における上記刃体5の挿入方向とは逆の方向から、上記縦隙間17内に上記刃体5を進入させる。そして、上記刃体5を、pc1→pc2→pc3に、さらにpc4→pc5→pc6と移動させることで、上記粘着テープ6の残存部分の切断が完了する。
【0037】
この第3の切断ステップの実行によって上記粘着テープ6は全ての部分で切断され上記フラップ13、13が非拘束状態となり、上記箱1は開封される。
【0038】
「第2の実施形態」
図11には、本願発明の第2の実施形態に係る箱の開封装置Zを示している。この開封装置Zは、その基本構成は上記第1の実施形態の場合と同様であるので、該第1の実施形態の該当部分を援用することで、ここでの説明を省略する。以下においては、箱1の実際の開封作業についてのみ説明する。
【0039】
この第2の実施形態において、開封作業の対象となる箱1は、図11に示す通りである。即ち、この箱1は、開封面15の上記対向間隙16に対応する部分に第1の粘着テープ6を貼付するとともに、上記開封面15の一端部と上記前面12Aには該開封面15の端縁に沿ってその全長に亘って第2の粘着テープ7が貼付される一方、上記開封面15の他端部と上記後面12Bには該開封面15の端縁に沿ってその全長に亘って第2の粘着テープ7が貼付されており、これら略H形に貼付された第1の粘着テープ6と第2の粘着テープ7,7の三者によって上記箱1は封止されている。
【0040】
したがって、この箱1を開封するには、上記各粘着テープ6,7,7の全てを切断することが必要であり、この実施形態では以下に説明する第1の切断ステップと第2の切断ステップ及び第3の切断ステップによってこれを実現するようにしている。
【0041】
「第1の切断ステップ」
第1の切断ステップは、図12に示すように、上記刃体5によって上記箱1の上記開封面15に貼付された第1の粘着テープ6をその全長に亘って切断するステップであって、上記刃体5を下方に向けて立てた状態で、その刃先部5aを上記粘着テープ6の長手方向中央部分に押し当てて押圧する。この場合、この押圧部分は剛性が最も低いことから下方に押し下げられる。これに伴って上記一対のフラップ13、13も側方から上記対向間隙16に向けて谷状に傾斜する(図6参照)。なお、このように上記一対のフラップ13、13も側方から上記対向間隙16に向けて谷状に傾斜することで、上記刃体5と上記対向間隙16とが少しズレていても、刃体5の撓りによって該刃体5を的確に上記対向間隙16に突き刺して粘着テープ6を切断できることは勿論である。
【0042】
この状態で、上記刃体5をpd1→pd2と開封面15の一端部側へ移動させ、さらにpd3→pf4と開封面15の他端部側へ移動させることで、上記第1の粘着テープ6はその全長に亘って切断される。
【0043】
「第2の切断ステップ」
第2の切断ステップは、上記開封面15の両端部にそれぞれ貼付された上記第2の粘着テープ7,7の上記刃体5の進入方向の前方側部分を切断するステップである。
【0044】
具体的には、図13に示すように、刃体5を水平近くまで寝かせた状態で、その刃体5を上記第1の切断ステップにおいて切断分離された上記フラップ13、13の一方側に上方から押し付けて(図9(イ)参照)、該フラップ13、13間に縦方向に開く縦隙間17を形成するとともに(図9(ロ)参照)、この縦隙間17内に上記刃体5を差し込む(図9(ハ)参照)。
【0045】
次に、上記刃体5を、pe1→pe2→pe3と移動させて上記前面12A側の第2の粘着テープ7の略半分を切断する。さらに、上記刃体5を、pe4→pe5→pe6と移動させて上記後面12B側の第2の粘着テープ7の略半分を切断する。これで上記各第2の粘着テープ7,7は、共にその略半分が切断されたことになる。
【0046】
ここで、刃体5をpe2からpe3に移動させる際に、刃先部5aの方向を、縦隙間17に差し込んだ方向から箱1の前面12Aに対向する方向に略90度回転させることが望ましい。また、刃体5をpe5からpe6に移動させる際に、刃先部5aの方向を、縦隙間17に差し込んだ方向から箱1の後面12Bに対向する方向に略90度回転させることが望ましい。
【0047】
「第3の切断ステップ」
第3の切断ステップは、上記各第2の粘着テープ7,7の残り半分の部分を切断するものである。即ち、図14に示すように、上記刃体5を、上記第2の切断ステップにおける刃体5の進入方向とは逆方向から上記縦隙間17に差し込み進入させる。そして、上記刃体5を、pf1→pf2→pf3と移動させて、上記前面12A側の第2の粘着テープ7の残余部分を切断する。さらに、上記刃体5を、pf4→pf5→pf6と移動させて、上記後面12B側の第2の粘着テープ7の残余部分を切断する。
【0048】
ここで、刃体5をpf2からpf3に移動させる際に、刃先部5aの方向を、縦隙間17に差し込んだ方向から箱1の前面12Aに対向する方向に略90度回転させることが望ましい。また、刃体5をpf5からpf6に移動させる際に、刃先部5aの方向を、縦隙間17に差し込んだ方向から箱1の後面12Bに対向する方向に略90度回転させることが望ましい。
【0049】
この第3の切断ステップの実行によって、上記第1の粘着テープ6及び二つの第2の粘着テープ7の三者が全て切断され、上記フラップ13,13が非拘束状態となり、上記箱1は開封される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明に係る箱の開封方法及び開封装置は、商品の流通分野において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 ・・箱
2 ・・ロボット装置
3 ・・ロボットアーム
4 ・・ヘッド部
5 ・・刃体
6 ・・接着テープ
7 ・・粘着テープ
8 ・・位置決め機構
10・・作業台
11・・側面
12A・・前面
12B・・後面
13・・フラップ
14・・フラップ
15・・開封面
16・・対向間隙
17・・縦隙間
Z ・・開封装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11
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図14