(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173540
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】可視光及び遠赤外光カメラ装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/45 20230101AFI20241205BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20241205BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241205BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20241205BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20241205BHJP
【FI】
H04N23/45
H04N23/54
H04N23/55
G03B19/07
G03B15/00 V
G03B15/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023099665
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
(72)【発明者】
【氏名】三井 辰郎
【テーマコード(参考)】
2H054
5C122
【Fターム(参考)】
2H054BB02
2H054BB05
2H054BB07
5C122DA11
5C122DA14
5C122DA16
5C122DA25
5C122DA30
5C122EA21
5C122EA47
5C122FB03
5C122FB15
5C122FH18
5C122HB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遠赤外光カメラを含むマルチスペクトルカメラで視認性を高めた画像を取得するカメラ装置を提供する。
【解決手段】カメラ装置は、遠赤外光用撮像素子5を有する遠赤外光(FIR)カメラ1並びに光束分離プリズム8及び可視光用撮像素子を有する可視光カメラ2を備え、遠赤外光撮像素子は、遠赤外光画像を出力し、光束分離プリズムは、入射した可視光を受光する第一プリズムP1と第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムP2を備え、第一プリズムは、入射した可視光の一部を反射光成分として取得し、第一可視光用撮像素子に入射させ、第二プリズムは、第一プリズムを透過して入射した可視光残余部分を第二可視光用撮像素子に入射させる。第一可視光用撮像素子による第一可視光画像と第二可視光用撮像素子による第二可視光画像とは、可視光合成画像として合成され、可視光合成画像と遠赤外光画像とが個別に又は合成されて出力される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外光用撮像素子を有する遠赤外光カメラ及び光束分離プリズム及び可視光用撮像素子を有する可視光カメラを備えるカメラ装置であって、
前記遠赤外光撮像素子は、前記遠赤外光カメラで取得した遠赤外光画像を出力し、
前記光束分離プリズムは、入射した可視光を受光する第一プリズムと該第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムとを備え、
前記第一プリズムは、入射した可視光の一部をプリズム硝材の反射により反射光成分として取得し、第一可視光用撮像素子に入射させ、
前記第二プリズムは、前記第一プリズムを透過して入射した可視光残余部分を第二可視光用撮像素子に入射させ、
第一可視光用撮像素子により光電変換された第一可視光画像と第二可視光用撮像素子により光電変換された第二可視光画像とは、可視光合成画像として合成され、
前記可視光合成画像と前記遠赤外光画像とがそれぞれ個別に又はそれぞれが合成されて出力されることを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
前記第一可視光用撮像素子の画像出力は、第二可視光用撮像素子の画像出力に比べ低照度の画像出力を取得し、
前記可視光合成画像は、前記第一可視光用撮像素子の画像出力が前記第二可視光用撮像素子の画像出力の飽和部分を補完するように合成され、
前記可視光合成画像と前記遠赤外光画像とがそれぞれ個別に又はそれぞれが合成されて同時に出力されることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記第一可視光用撮像素子の画像出力を調整しうるように構成したことを特徴とする請求項2記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記第一プリズムおよび前記第二プリズムが、高屈折率硝材で構成されていることを特徴とする請求項2記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記エアギャップが、5乃至30μmの範囲で形成され、エアギャップ内に窒素ガスが充填されていることを特徴とする請求項2記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記光束分離プリズムは、赤外光画像を取得する赤外光用プリズムを更に備えており、前記赤外光画像、前記遠赤外光画像及び前期可視光画像を同時に出力することを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記赤外光画像は、近赤外光画像及び・又は短波長赤外光画像であって、
前記赤外光画像の分離プリズムは、前記第一プリズムの入射側で第一プリズムに密着またはエアギャップを介して配置され、前記撮像レンズからの入射光の赤外光成分を反射し、可視光成分を透過させる分離プリズムであることを特徴とする請求項6記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外光画像と可視光画像とを利用するマルチスペクトルカメラにおいて、可視光画像の高ダイナミックレンジを取得するのに適した光束分離プリズム構成及びそれを遠赤外光画像と組合せて利用するカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラや静止画カメラなどに使用される固体撮像素子(センサ)の進歩により高解像度で、多種類の小型化された撮像装置が可能となり、可視光(カラー)撮影のみならず遠赤外光を撮影するサーマルカメラ(又はサーモカメラ)や監視カメラ(ナイトビジョン)との組合せや近赤外光(NIR)、短波長赤外光(SWIR)などの画像も撮影する広帯域のマルチスペクトルカメラが種々開発されている。これらのマルチスペクトルカメラは、可視光画像に加えて遠赤外光(FIR)やその他の赤外光(NIR及びSWIR)による波長特性を生かして監視カメラ、車載カメラ、医療用内視鏡カメラ、皮膚疾患観察カメラなど多種多様な用途に利用されている。
【0003】
可視光カメラ及び赤外光カメラは反射光を撮影するのに対し、遠赤外光カメラは、物体の放射熱を熱画像として撮影している。撮像センサも可視光及び近赤外光や短波長赤外光に対しては主として反射光像を取得するセンサが用いられ、遠赤外光に対しては感熱センサを用いて画像を取得している。ここで、可視光、赤外光、遠赤外光とは、技術常識や定義に従うものであるが、赤外光は、可視光より長波長帯域の近赤外光(NIR)及び短波長赤外(SWIR)を含む0.75~3μmの波長帯域、遠赤外光(FIR)は、3~1000μmの波長帯域を想定している。
【0004】
可視光領域の画像は、カラー画像を取得できるため人の眼による視認性が高いものの、逆光、夜間などの撮影においては、白飛び、黒つぶれなどにより画質が低下し、視認性が悪化する。そのため赤外光領域の赤外光画像を利用して画像を補完し、検知する種々の方法が開示されている。特に、遠赤外光(FIR)を撮影するサーマルカメラやナイトビジョンなどの遠赤外光(FIR)カメラは、物体の放射熱を捉えて熱画像を取得することが可能なため人物・動体検知、表面温度検知・計測、異常発熱検知、感染症対策、暗視下・悪天候下での観測など遠赤外光(FIR)センサ機能による熱画像と可視光(カラー)画像とを組合せたり補完したりすることで利用範囲が格段に広がっている。
【0005】
遠赤外光画像では、熱画像や蛍光画像などのモノクロ画像を加工した画像であり、監視カメラ等で求められる視認性に欠けるなどの欠点や不都合がある。サーマルカメラやナイトビジョンでは、逆光、夜、暗闇、霧、煙、粉塵、風雨などに晒される様ないかなる環境下であっても視認性の高い画像が求められている。そのために遠赤外光画像とカラー画像とを切り替えて表示する方法(特許文献1)、遠赤外光画像と可視光画像とを交互表示して合成する方法(特許文献2)などが開示されている。
【0006】
遠赤外光画像を取得する遠赤外光カメラでは、上述の通り、人物、動体検知、体温や表面温度などの計測機能を行うのに主として利用されることがあるため、画像の視認性については、多くの場合可視光画像の品質に依存している。そのため、遠赤外光カメラ(ナイトビジョン、サーマルカメラ)においても、可視光画像での視認性が向上した画像との組合せが求められている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-10447号公報
【特許文献2】特開2016-217953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、主として以下の課題を解決する。
(1)サーマルカメラやナイトビジョンなどの遠赤外光カメラ及び可視光カメラを含むマルチスペクトルカメラにおいて視認性を高めた画像を取得しうるカメラ装置を提供する。
(2)簡易な光束分離光学系の構成で、拡張された可視光画像のダイナミックレンジを取得し、遠赤外光画像の欠点や不都合を補完するカメラ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決し上記目的を達成するために、本発明におけるカメラ装置は、遠赤外光用撮像素子を有する遠赤外光カメラ及び光束分離プリズム及び可視光用撮像素子を有する可視光カメラを備えるカメラ装置であって、前記遠赤外光撮像素子は、前記遠赤外光カメラで取得した遠赤外光画像を出力し、前記光束分離プリズムは、入射した可視光を受光する第一プリズムと該第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムとを備え、前記第一プリズムは、入射した可視光の一部をプリズム硝材の反射により反射光成分として取得し、第一可視光用撮像素子に入射させ、前記第二プリズムは、前記第一プリズムを透過して入射した可視光残余部分を第二可視光用撮像素子に入射させ、第一可視光用撮像素子により光電変換された第一可視光画像と第二可視光用撮像素子により光電変換された第二可視光画像とは、可視光合成画像として合成され、前記可視光合成画像と前記遠赤外光画像とがそれぞれ個別に又はそれぞれが合成されて出力されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のカメラ装置は、前記第一可視光用撮像素子の画像出力が、第二可視光用撮像素子の画像出力に比べ低照度の画像出力を取得し、前記可視光合成画像は、前記第一可視光用撮像素子の画像出力が前記第二可視光用撮像素子の画像出力の飽和部分を補完するように合成され、前記可視光合成画像と前記遠赤外光画像とがそれぞれ個別に又はそれぞれが合成されて同時に出力されるように構成することもできる。
【0011】
また、本発明のカメラ装置は、前記第一可視光用撮像素子の画像出力を調整しうるように構成することもできる。
【0012】
また、本発明のカメラ装置は、前記第一プリズム及び前記第二プリズムが、高屈折率硝材で構成されているように構成することもできる。
【0013】
また、本発明のカメラ装置は、前記エアギャップが、5乃至30μmの範囲で形成され、エアギャップ内に窒素ガスが充填されているように構成することもできる。
【0014】
また、本発明のカメラ装置は、前記光束分離プリズムは、赤外光画像を取得する赤外光用プリズムを更に備えており、前記赤外光画像、前記遠赤外光画像及び前期可視光画像を同時に出力するように構成することもできる。
【0015】
また、本発明のカメラ装置は、前記赤外光画像が、近赤外光画像及び・又は短波長赤外光画像であって、前記赤外光画像の分離プリズムは、前記第一プリズムの入射側で第一プリズムに密着又はエアギャップを介して配置され、前記撮像レンズからの入射光の赤外光成分を反射し、可視光成分を透過させる分離プリズムであるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
遠赤外光カメラは、物体の熱反射成分を捉えた熱画像であるため、画像自体が不明瞭である。本発明では、そのような熱画像の不明瞭性を補完するのにダイナミックレンジを高めた可視光画像で補完、表示することで撮影画像の視認性を向上させることができる。また、熱画像の視認性を高めるために用いる可視光画像の取得においては、光束分離プリズムに反射膜を設けずプリズム自体の内面反射画像によって入射可視光の一部を低照度の副可視光(サブカラー)画像として取得し、反射画像以外の残余可視光成分を高照度の主可視光(メインカラー)画像として取得し、高照度の主可視光画像が飽和する部分を低照度の副可視光画像で補完、合成する。そのため合成された可視光合成画像は、光量を下げずに高感度の画像取得を可能となり、合成補完された可視光合成画像は、拡張されたダイナミックレンジが可能となる。ダイナミックレンジが拡張された可視光合成画像と遠赤外光画像とを同時表示又は合成表示することで、より視認性を高めた画像が取得できる。また、簡易なプリズム構成により遠赤外光画像の欠点や不都合を補完することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるカメラ装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】本発明による実施例1の可視光分離プリズムの構成例を示す説明図である。
【
図3】本発明による撮像素子の照度に対するセンサー出力を示す説明図である。
【
図4】本発明による実施例2のカメラ装置の構成例を示す説明図である。
【
図5】本発明による実施例3のカメラ装置の構成例を示す説明図である。
【
図6】本発明による実施例3の画像処理回路構成ブロック説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの説明図や図面も本発明の説明用に概略的又は模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、実施例で用いているシステム構成、ブロック図、寸法、材質、形状、その相対配置及び使用例は特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例0019】
図1は、本発明によるカメラ装置の構成例を示す説明図である。遠赤外光(FIR)カメラ1と可視光カメラ2とが組み合わされている2眼カメラを例示している。遠赤外光カメラ1と可視光カメラ2とは、同期信号発生器3により相互に同期が取れた画像を生成する。それぞれのカメラは、同一筐体内に収納され、取得したそれぞれの画像は、略同一の画像を表示するように構成されている。
【0020】
遠赤外光カメラ1は、遠赤外光レンズ4及び遠赤外光撮像素子(遠赤外光センサ)5を備えており、遠赤外光レンズ4により被写体画像を遠赤外光センサ5に収束させる。遠赤外光センサ5は、遠赤外線が保有する熱エネルギーを検出し、電気信号として出力する。遠赤外光レンズ4は、ゲルマニュウム、カルコゲナイドのガラス素材が多用されているが、利用目的や加工容易性、価格などに応じてシリコン、サファイア、セレン化亜鉛などの遠赤外光を透過させるガラス素材が利用可能である。また、遠赤外光センサ5は、ボロメータ、焦電素子などの熱型素子が多用されているが、目的によりHgCdTeを素材とする量子型素子(MCT)を用いることもできる。
【0021】
遠赤外光センサ5は、被写体の熱エネルギーを取得する過程でレンズなどの熱エネルギー及びセンサ自身の発熱、カメラ装置内の反射熱など被写体以外の熱量も検知しているため、それらを補正する温度補正手段6が設けられている。この温度補正手段6としては、センサ毎に測定された画素ごとの補正テーブルや基準温度デフォルト値に対してオフセットするオフセット法などにより補正し、被写体の温度を検知するよう校正される。温度補正手段6などにより校正がかけられた電気信号は、遠赤外光画像(FIR)として出力される。
【0022】
可視光カメラ2は、可視光レンズ7及び光束分離プリズム8を備えている。この光束分離プリズム8は、可視光レンズ7により集光された入射可視光を受光する第一プリズムP1とその後段で、第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムP2により構成されている。可視光第一プリズムP1では、プリズム自体の内面反射光を利用して
成分Cを透過させる。第一プリズムP1を透過した残余可視光成分は主可視光(メインカ
段9により主可視光成分による可視光画像が飽和する部分を副可視光成分により補完するように合成され、ダイナミックレンジが拡張された可視光合成画像(V)が出力される。
【0023】
遠赤外光画像(FIR)及びダイナミックレンジが拡張された可視光合成画像(V)とは、モニターディスプレイなどの表示装置10でそれぞれ個別にかつ同時に表示されたり、両画像が合成されて表示されたりして、監視、観察、比較、計測などに利用される。つまり、遠赤外光カメラ1と可視光カメラ2とは、同期信号発生器3により同期が取られており、同様の画角設定により同じ両方の画像が同時に取得できるため、両画像の同時表示又は両画像の合成表示により遠赤外光画像の熱画像による不明瞭な部分を可視光合成画像のカラー画像により認識し、視認性を高めることができる。
【0024】
図2は、光束分離プリズム8の実施例の詳細を示す説明図である。光束分離プリズム8は、第一プリズム(P1)21及びその第一プリズム21とエアギャップを挟んで第二プリズム(P2)22とにより構成されている。可視光レンズ7から入射した画像光束は、第一プリズム21へ入射し、第一プリズム21の反射面23により内面反射し、さらに全反射面24で反射されて第一可視光用撮像素子25に入射する。第一プリズム21の反射面23には波長選択性を有する金属薄膜やコーティングは一切施しておらず、プリズム硝
反射面23の反射角度は、入射光軸に対して全反射が生じない角度により構成する。全反射が生じない角度は、ボロシリケートクラウンガラスでは45°以内であるが、高屈折率の場合はより狭い角度となる。
【0025】
第一プリズム21と第二プリズム22との間にはエアギャップ30が設けられている。第二プリズム22の外面(入射面)26においても入射可視光の反射が生じ、この反射画像も第一プリズム21の第一可視光用撮像素子25へ入射し、反射画像(サブカラー画像
プリズム硝材の屈折率が同じものとなり反射が微小なものとなるためエアギャップを設定する。このエアギャップ30の間隔は、5~30μm程度で良好な結果を得ているが、可視光第一プリズム21の内面反射像と第二プリズム22の外面反射像とにより二重画像が影響しない程度のエアギャップであれば良い。
【0026】
このエアギャップ30は、空気の屈折率(真空中で1.0)とプリズム硝材の屈折率の違いにより反射率が異なってくる。ボロシリケートクラウンガラス(屈折率1.512)では、約2%程度の表面反射であり、高屈折率ガラス(屈折率1.67以上)では、約4%以上の表面反射となる。そのため可視光用第一プリズム21及び第二プリズム22の硝材としては、ハイインデクスタイプの高屈折率を有するものが望ましい。
【0027】
また、エアギャップには窒素を充填する様に構成しても良い。窒素ガスを封入することでプリズムガラス表面の酸化を防止することができる。この場合、窒素の屈折率は、1.000297であり、大気の屈折率は、1.000293であり、ほぼ同様の屈折率であるため反射率は空気の場合と同様であるとみなすことができる。
【0028】
可視光第一プリズム21に入射した可視光成分は、第一プリズム21の反射面23により内面反射した反射成分に加えて、第二プリズム22の入射側の外面26からの外面反射
一プリズム21による内面反射及び・又は第二プリズム22の外面反射のいずれか一方の反射でも良いが、両方の反射成分を得ることがより望ましい。このように蒸着やコーティングによる反射膜を形成することなく可視光第一プリズム21の内面反射及び第二プリズム22の外面反射により第一プリズムに入射した可視光成分の約4%以上の反射成分を取得することができる。ここで、プリズム硝材の反射による反射光成分とは、第一プリズム21による内面反射又は第二プリズム22の外面反射のいずれか一方の反射及び両方の反射成分のいずれでも構わない。
【0029】
これら反射成分は、プリズム硝材の屈折率、反射角度θ、反射光の波長などにより変動するが、設計条件により略4~20%の反射成分の取得が期待できる。可視光第一プリズム21の可視光反射成分は、第一プリズム21の出射面31より出射し、第一可視光用撮像素子25へ提供される。撮像素子25では入射した可視光成分の4~20%程度が光電
可視光用撮像素子25との間には、可視光のみを透過させる赤外光カットフィルター33を設けることが望ましいが、この赤外光カットフィルターは、必須というものではない。
【0030】
可視光第一プリズム21を透過して可視光第二プリズム22へ入射した可視光成分(残余成分)は、第二プリズム22の出射面32から出射し、第二の可視光用撮像素子27へ入射する。第二の可視光用撮像素子像27では、入射した可視光像を光電変換して可視光画像信号、メインカラーCとして出力する。可視光第一プリズム21の内面反射成分及び第二プリズム22の外面反射成分により可視光成分の4~20%が反射され、残余部分が透過するため第二プリズム22より出射して第二の可視光用撮像素子27に入力する可視光成分は入射可視光の80~96%程度が期待でき、多くのの可視光成分が第二の撮像素子27へ入力され、メインカラーCとして取得できることとなる。また、第二プリズムの出射面32と第二の可視光用撮像素子27との間には、可視光のみを透過させる赤外光カットフィルター34を設けることが望ましい。
【0031】
このように光束分離光学系をプリズムの組合せで構成することにより、入射した可視光成分の4~20%が第一プリズム21の内面反射及び第二プリズム22の外面反射により
が第二可視光用撮像素子27からメインカラーCとして得られることとなる。つまり、サ
2つのカラー画像が取得することができる。このような可視光成分の多い(例えば、90%)第二の撮像素子出力をメインカラーC信号とし、第一の撮像素子13から得られた可視光
Cは、飽和していない画像が得られるため両画像の補完、合成によりダイナミックレンジが拡張された可視光合成画像Vを得ることができる。
【0032】
次に、上述した光束分離光学系(光束分離プリズム)を用いたダイナミックレンジの拡
を10%取得したものとして説明する。
図3は、メインカラー信号とサブカラー信号のそれぞれの可視光撮像素子の照度に対する出力レベルを示した説明図である。それぞれの可視光撮像素子は同じ特性を有するものとし、その飽和レベルは一例として300%とする。これは白色光のみを入力することもなく通常ビデオ信号の規格化された信号振幅内におさえるためニー処理を施すため、規定レベル(100%レベル)に対して飽和レベルを数倍(300%)に設定した場合を例示している。
【0033】
メインカラーC信号成分の照度に対するセンサーレベルはAの直線で示され、サブカラ
度(lx)を示し、縦軸は、センサーレベルを示している。いずれも上段がメインカラー
あり、それぞれの撮像素子に入力される照度も90:10である。そのためメインカラーC信号で設定された撮像素子の飽和レベルである300%(約6千ルクス)に達する照度は、サブカラー撮像素子においては、3000%(約6万ルクス)に相当することとなる。
【0034】
従って、メインカラー撮像素子の規定レベル(100%)に達するまではメインカラー信号を使用し、それ以上の照度部分についてはサブカラー信号を使用するように合成する。どの照度以上でメインカラー信号をサブカラー信号に合成し、低照度によるカラー画像を使用するかのしきい値は、カメラの利用目的により調整し、設定できるように構成するが、一般的には、取得したセンサー画像の白飛び飽和が生じないようにセンサーの規定100%レベルに設定する。
【0035】
像ダイナミックレンジの拡張幅を調整することができる。取得したメインカラー画像Cと
される。この合成手段29では、入射光成分の相違により2つの照度の異なるサブカラー
部分をサブカラー画像により補完することでダイナミックレンジを拡大した可視光合成画像Vを取得することが可能となる。取得した可視光合成画像Vは、光束分離光学系8のプリズムP1に分離膜として金属膜やコーティング膜を有していないためにこれら分離膜の影響を受けることなく色再現性に優れ、ダイナミックレンジが拡張されたカラー画像Vを取得することができる。
入射した光束は、赤外光分離プリズム(PIR)41に入射し、反射面42により赤外光成分が反射され赤外光分離プリズム41内の全反射面43により全反射され、出射面44よりプリズム外に出射し、赤外光用撮像素子45へ入射する。赤外光用撮像素子45は、赤外光像を光電変換し、赤外光画像信号として出力する。
赤外光反射面42の反射膜は、赤外光波長略700nm以上の長波長を反射し、それ以下の可視光成分を透過させるように波長選択性を有する。反射面42は、利用目的により波長帯域や反射率を選定する。近赤外光を利用する場合は、700~1000nmの波長帯域を反射させるよう反射膜を構成する。反射膜は多層誘電体又は金属薄膜を蒸着コーティングなどで形成するが、無反射コーティング処理又は高効率反射防止膜を形成することが望ましい。また、赤外光出射面44と赤外光用撮像素子45との間には、赤外光のみを透過させる可視光カットフィルター46が設けてある。ここでは例示的に近赤外光(NIR)を想定しているが、利用目的によって短波長赤外(SWIR)であっても同様に適用できる。また、紫外光(UV)を反射する反射膜を備えた紫外光(UV)分離プリズムであっても同様に適用することができる。
例えば、皮膚疾患などの観察においては、可視光画像(V)で皮膚表面を観察し、赤外光画像(IR)で取得可能な皮下疾患状態を観察し、サーモ画像(FIR)で患部の発熱状態を観察するなどを行うダーモスコープや内視鏡などへの利用が考えられる。この様な皮膚表面の観察では照明による逆光画像による白飛びなどを極力減少させてより鮮明な可視光画像を取得することで、詳細な観察、診断が可能となる。本発明を適用すればダイナミックレンジが拡張された可視光画像とサーモ画像、あるいは可視光画像と赤外光画像との比較、観察により発熱部位や患部の特定などが適切に行われる。