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特開2024-173545高い残光輝度を有する蓄光顔料樹脂資材及びその製造方法
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  • 特開-高い残光輝度を有する蓄光顔料樹脂資材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173545
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】高い残光輝度を有する蓄光顔料樹脂資材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/04 20060101AFI20241205BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09C3/04
C09C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023100344
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】521070371
【氏名又は名称】株式会社木村通商
(72)【発明者】
【氏名】木村 一孝
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA11
4J037AA30
4J037CC12
4J037CC13
4J037CC14
4J037CC15
4J037CC16
4J037CC21
4J037CC23
4J037CC26
4J037CC27
4J037EE08
4J037EE22
4J037EE28
4J037FF02
(57)【要約】
【課題】高い残存輝度を有する蓄光顔料樹脂資材を提供する。
【解決手段】蓄光顔料と樹脂の混合物に電圧を印加した蓄光顔料樹脂資材の製造方法であって、蓄光顔料と樹脂の混合物を導電性を有する金属板に接触した状態で設置する工程と、金属板に電圧を印加する帯電工程と、を有する、蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光顔料と樹脂を含有することを特徴とする蓄光顔料樹脂資材。
【請求項2】
さらに電圧を一定時間印加させることを特徴とする、請求項1記載の蓄光顔料樹脂資材。
【請求項3】
前記蓄光顔料の有効成分が、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、臭化ラジウム、プロメチウム、トリチウムからなる群から選択された、少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の蓄光顔料樹脂資材。
【請求項4】
前記樹脂が、ウレタン系樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフイン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の蓄光顔料樹脂資材。
【請求項5】
蓄光顔料と樹脂と、を含有し、かつ電圧にて印加されてなる蓄光顔料樹脂資材の製造方法であって、前記蓄光顔料と前記樹脂とを含む混合物を、導電性を有する金属板に接触した状態で設置する工程と前記金属板に電圧を印可する帯電工程と、を有する蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【請求項6】
前記電圧が、5000~30000ボルトの範囲内で行われる請求項5に記載の蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【請求項7】
前記電圧印加工程が1時間以上行われる請求項5又は6に記載の蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【請求項8】
前記蓄光顔料の有効成分が、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、臭化ラジウム、プロメチウム、トリチウム、からなる群から選択された少なくとも1種である請求項5又は6に記載の蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂が、ウレタン系樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフイン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、からなる群より選択される少なくとも1種である請求項5又は6に記載の蓄光顔料樹脂資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板、ステッカー、玩具、釣具、時計、衣類、等の樹脂製品に用いられる蓄光顔料樹脂資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、火災など災害時における安全のための避難誘導など、生命を守るために誘導灯など設備は必要であるが、電気を通電して発光させる設備は停電などにより機能を停止してしまう。そのため電気が通電しなくとも光を発する誘導設備などが求められている。
【0003】
蓄光の素材は古くから残光輝度を高くする為に研究がなされてきており、これまで以上に残光輝度を高く保持できる蓄光資材が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-292282(JP、A)
【特許文献2】特許第5729698(JP、B2)
【特許文献3】特開2009-270081(JP、A)
【特許文献4】特開2002-235074(JP、A)
【特許文献5】特許第5967787(JP、B1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より残光輝度の高い、優れる新規な蓄光顔料樹脂資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、蓄光顔料と樹脂の混合物に電圧を印加する事で、より残光輝度が高くなることを見出した。
【0007】
本発明は、かかる知見により基づきなされたものであり、蓄光顔料と樹脂とを含有し電圧を印加することを特徴とする、蓄光顔料樹脂資材を提供するものである。
【0008】
さらに、本発明は蓄光顔料と樹脂と、を含有し、かつ電圧を印加されてなる蓄光顔料樹脂資材の製造方法であって、前記蓄光顔料と前記樹脂とを含む混合物を、導電性を有する金属板に設置する工程と、前記金属板に電圧を印加する帯電工程と、を有する蓄光顔料樹脂資材の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄光顔料と樹脂を単に混合した場合よりも、残光輝度が高い優れた蓄光顔料樹脂資材を提供することができる。また、これにより残光輝度が高くより安全な誘導設備の開発に貢献しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の蓄光顔料樹脂資材の製造方法を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに、本発明の実施形態に係る蓄光顔料樹脂資材について説明する。本実施形態に係る蓄光顔料樹脂資材は蓄光顔料と、樹脂と、を混合し電圧を印加する事を特徴とする。
【0012】
本実施形態において、蓄光顔料樹脂資材はシート状フイルム、塗料、プラスティック混練などに利用され、残光輝度が高く優れた蓄光効果を発揮する。
【0013】
蓄光顔料としては、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、臭化ラジウム、プロメチウム、トリチウムからなる群から選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
蓄光顔料は、一次粒子径が1μm~1000μmであることが好ましく、25~500μmである事がより好ましい。
【0015】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、蓄光顔料とともに酸化チタン、炭酸カルシウム、ゼオライト、などの無機系物質を1種または2種以上併用することもできる。
【0016】
樹脂成分としては、ウレタン系樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフイン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、からなる群より選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
蓄光顔料と樹脂の配合割合は、蓄光顔料0.1~90重量%に対して樹脂10~99.9重量%であることが好ましく、蓄光顔料20~50重量%に対して樹脂50~80重量%であることがより好ましい。
【0018】
蓄光顔料と樹脂との混合物の使用方法は対象物に対して、噴霧、塗布したり、混練してもよい。
【0019】
電圧を印加する事により蓄光効果が向上するメカニズムは必ずしも明らかではないが、無機系蓄光顔料に外部電磁波エネルギーを印加する事により、蓄光顔料をより励起させるものと予想される。
【0020】
次に本発明の実施形態に係る蓄光顔料樹脂資材の製造方法について説明する。本実施形態に係る蓄光顔料樹脂資材の製造方法は、蓄光顔料と樹脂を含む混合物を導電性を有する金属板に接触した状態で設置する工程と、前記金属板に電圧を印加する帯電工程と、を有する。
【0021】
図1は、本実施形態において被処理物に電圧を印加する方法を説明するための図である。被処理物1に電圧を印加するための装置10は、絶縁体3と絶縁体3の上に設置された導電性を有する金属板2と、その金属板2と電気的に接続された電圧装置4とから構成される。
【0022】
被処理物1は、蓄光顔料と樹脂の混合物であり、ペースト状、液体、粉体であるがベース樹脂に蓄光顔料が添加されたマスターバッチであってもよい。またマスターバッチの形状に特に制限はなく、粉状、粒(ペレット状)であっても良い。
【0023】
金属板2は、電圧装置4から電圧を被処理物1に帯電させるものであり、導電性の金属が主材として使用される。導電性の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、などが挙げられる。形状は特に限定されないが、板状に成形したものを挙げることができる。
【0024】
絶縁体3は、被処理物1に帯電された電気がアースされないようにするための物であり、材質は非伝導性の物質が使用される。非導電性の物質としては例えば、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミック、などを挙げる事ができる。
【0025】
電圧装置4は、昇圧チッパ回路を備え、金属板2を介して高電圧を被処理物1に印加するものであり、市販のDC/DCコンバーターを利用することができる。
【0026】
電圧を印加する際は、金属板2に電圧装置4から誘導される端子を接続し、電圧装置4より端子を通じて電圧が印可される。金属板2の上に蓄光顔料が含まれたマスターバッチなどの被処理物1を置き、所定の時間電圧を加えるものとする。この際、被処理物1は、金属板2に接触する面が大きいほど好ましいが、少なくとも一部が金属板2に接触していれば良い。
【0027】
電圧を加える際に重要なことは、地面との間に絶縁性の高い物質であるゴムなどの絶縁体3を用いて土台を作成し、加えた電圧がアースされない様に滞留させる事である。
簡単な手法としては、絶縁性のあるプラスティックパレットを土台の代わりとして使用することができる。
【0028】
本実施形態において、電圧を印加する際の電圧は5000~30000ボルトの範囲内で行われることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、帯電工程は1時間以上行われることが好ましく、24時間から72時間の間で行われる事がより好ましい。
【0030】
電圧が問題なく印加されているかの確認は、フルークコーポレーション社の工業用マルチメーターを用いて測定し、5000ボルト以上の電圧が加えられている事を確認する。
【0031】
電圧を印加する方法は、本発明の手法に記載された内容に限定されるものではなく、他の手法においても、本発明の趣旨を逸脱しない限り適用することができる。
【0032】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0033】
本発明の製造方法によるグリーン系蓄光顔料樹脂資材の製造工程例。
(1)材料:蓄光顔料として、アルミン酸ストロンチウム系化合物(蓄光顔料:GDK1 1025W(商標)、エルティーアイ株式会社製)、樹脂(アクリル酸系樹脂:ペ ガール(商標)、高圧ガス工業株式会社製)を使用した。
【0034】
試料の調整は次の通り行った。アクリル酸系樹脂70重量%に、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料を30重量%を加え、ホモミキサー9000回転/分にて、5分間攪拌し蓄光顔料樹脂混合物とした。(蓄光顔料樹脂混合物A)
【0035】
蓄光顔料樹脂混合物Aに対して、図1に示す装置を用いて、10000ボルトで72時間帯電処理を行い前記蓄光顔料混合物を得た。(蓄光顔料樹脂混合物B)
【0036】
直径55mmのろ紙に、蓄光顔料樹脂混合物Aを塗布し24時間室温(20℃)にて乾燥させた。蓄光顔料樹脂混合物が0.4g塗布された検体を得た。(表中「コントロール」と表記する)
【0037】
直径55mmのろ紙に、蓄光顔料樹脂混合物Bを塗布し24時間室温(20℃)にて乾燥させた。蓄光顔料樹脂混合物が0.4g塗布された検体を得た。(表中「加電品1」と表記する)
【0038】
(残光輝度の経時変化測定方法)
前記の蓄光顔料樹脂混合物A(コントロール)および、蓄光顔料樹脂混合物Bについて残光輝度(単位:mcd/m)の輝度変化を測定した。
【0039】
輝度の測定は、JIS Z 9107:2008に準拠し、暗所に48時間以上外光を遮光した状態で保管し、その後常用光源D65、200ルクスの照度で20分間照射し、照射を止めた後に20分後、60分後の輝度を測定した。
【0040】
輝度の測定には、株式会社トプコン製、BM-5ASを使用し、照度の測定には、コニカミノルタ株式会社製、T-10を用いた。
【0041】
上記の測定結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0042】
上記表1より、電圧を加印した蓄光顔料樹脂混合物は、電圧印加なしのコントロール品と比べて60分後に、加電品1はコントロールと比較して、1.8倍の輝度を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0043】
1・・・被処理物
2・・・金属板
3・・・絶縁体
4・・・電圧装置
10・・・電圧を印加するための装置
図1