(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017355
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】空輸管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20240201BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119928
(22)【出願日】2022-07-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】522096330
【氏名又は名称】株式会社自侑自財
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼井 武
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】平井 進造
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来、都市部等の遠隔地に輸送することが難しかった離島や地方の生鮮品や特産品などを低価格で空輸できる空輸管理システムを提供する。
【解決手段】空輸管理システム100において、旅客機に搭載される預け入れ手荷物量を、所定情報に基づいて予め推定算出する手荷物量推定部と、該手荷物量推定部が推定した預け入れ手荷物量である推定預け入れ手荷物量と当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出する搭載可能貨物量算出部とを備えるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客機に搭載される預け入れ手荷物量を、所定情報に基づいて予め推定算出する手荷物量推定部と、
該手荷物量推定部が推定した預け入れ手荷物量である推定預け入れ手荷物量と当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出する搭載可能貨物量算出部と、
を備えていることを特徴とする空輸管理システム。
【請求項2】
前記所定情報には、乗客の預け入れ手荷物量を含んだ過去フライト情報が含まれており、
前記手荷物量推定部が、前記旅客機のフライト情報と、前記過去フライト情報とに基づいて、当該旅客機における前記推定預け入れ手荷物量を算出することを特徴とする請求項1記載の空輸管理システム。
【請求項3】
前記所定情報には、前記旅客機を予約した乗客の情報である予約乗客情報がさらに含まれており、
前記手荷物量推定部が、前記予約乗客情報にさらに基づいて、当該旅客機における前記推定預け入れ手荷物量を算出することを特徴とする請求項2記載の空輸管理システム。
【請求項4】
空輸を希望する貨物である空輸希望貨物の量を含む貨物属性情報を受け付け、この貨物属性情報を前記旅客機の推定搭載可能貨物量と照らし合わせて、当該旅客機に搭載可能な空輸希望貨物を抽出する抽出部をさらに備えている請求項1記載の空輸管理システム。
【請求項5】
所定の旅客機に搭乗する乗客の預け入れ手荷物量を、所定情報に基づいて予め推定算出し、
推定算出した預け入れ手荷物量である推定預け入れ手荷物量と、当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出する
ことを特徴とする空輸管理方法。
【請求項6】
所定の旅客機に搭乗する乗客の預け入れ手荷物量を、所定情報に基づいて予め推定算出する手荷物量推定部と、
この手荷物量推定部が推定した預け入れ手荷物量である推定預け入れ手荷物量と、当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出する搭載可能貨物量算出部と、
としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする空輸管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客機による空輸を管理する空輸管理システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今般、商品の多様化、Eコマースの発達等による物流量増加が顕著となり、物流MaaSの推進に見られるように、物流の重要性が極めて大きくなっている。
【0003】
そのなか、コロナ禍による乗客減少も手伝って、公共交通の空きスペースを有効活用して貨物を運ぶ貨客混載輸送が着目されつつある。
【0004】
貨客混載輸送によれば、公共交通事業者にとっては損益改善を図ることができ、物流業者にとっては輸送効率化と輸送費の低価格化を図ることができるからである。
【0005】
このような利点から、空路輸送(空輸)においても貨客混載輸送は着目されている。例えば、北九州に拠点を置く航空会社のスターフライヤーが、羽田空港で行われた「北九州市観光・物産フェア」での商品輸送に協力し、本格的に貨客混載事業を始めようとしている。
【0006】
ところで、旅客機による従来の貨客混載輸送では、旅客機の胴体部分に設けられた貨物搭載スペースが用いられる。
【0007】
しかしながら、前述した貨物搭載スペースは、乗客室に通路が2つあるような比較的大型の旅客機にのみ設けられており、離島や地方を飛ぶ小型機には、設けられていないか、非常に小さなスペースしか確保されていないのが実情である。
【0008】
したがって、従来の貨客混載による空輸方式は、貨物搭載スペースがほとんどない小型機には適用できず、この小型機しか発着しない離島や地方の特産品などは、結局のところ、高価格とはなるが貨物専用の航空機を用いて空輸するか、海路や陸路を主体とした時間のかかる輸送方式に頼らざるを得ない。
【0009】
つまり、現状の貨客混載空輸は、離島や地方の生鮮品などといった短時間輸送が必要とされる物品に適用できないので、このような地方生鮮品等を都市部などの遠方の地域に安価に提供することは依然難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
他方、大型機、小型機にかかわらず、ほとんどの旅客機の胴体部分には、乗客の預け入れ手荷物(機内持ち込みではない手荷物)を搭載するスペースが確保されている。
【0012】
そして、この預け入れ手荷物用スペースには、乗客の預け入れ手荷物が少ない場合や、乗客が少ない場合には、空きが生じるところ、従来、この空きは放置され、有効活用されていない。
【0013】
なぜならば、預け入れ手荷物用スペースにどれくらいの空きが生じるかは、飛行場の手荷物カウンターで乗客が預け入れ手荷物を持ちこんだ後でしか判明しない、つまり、旅客機の離陸数十分前まで判明しないため、その空きに貨物を積み込むためには、空きスペースが判明した後、離陸までの極めて短い時間に輸送可能な貨物を選別し、しかも倉庫から旅客機に運び込まなければならず、そのようなことは難しいと考えられていたからである。
【0014】
本発明は、前述した常識を打ち破ったものであって、旅客機の預け入れ手荷物用スペースに生じ得る空きを有効利用できるようにし、例えば、従来、都市部等の遠隔地に輸送することが難しかった離島や地方の生鮮品や特産品などを低価格で空輸できるようにすべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明に係る空輸システムは、
旅客機に搭乗する乗客の預け入れ手荷物量を、所定情報に基づいて予め推定算出する手荷物量推定部と、
前記手荷物量推定部が算出した推定預け入れ手荷物量と、当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出する搭載可能貨物量算出部と、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成であれば、預け入れ手荷物用スペースに生じる空きに搭載可能な貨物量を、推定であるとはいえ、予め算出できるので、その搭載可能貨物量に応じた貨物を予め準備できることとなり、預け入れ手荷物用スペースを利用した貨物空輸が可能となる。
【0017】
また、前述したように、この預け入れ手荷物用スペースは、ほとんどの旅客機に設けられているので、離島や地方を飛ぶ小型機にも本システムを適用できる。したがって、従来、輸送時間の制限等から都市部などに輸送できなかった離島や地方の生鮮品や特産品などを低価格、短時間で輸送することが可能になる。
【0018】
このように、本システムによれば、空輸における貨客混載の隆盛化に真に寄与でき、ひいては、地域発展や産業活性化を促進することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態における空輸管理システムを含むネットワーク全体の構成を示す全体俯瞰図である。
【
図2】同実施形態における空輸管理システムの機能ブロック図である。
【
図3】同実施形態における過去フライト情報の内容の一例である。
【
図4】同実施形態における乗客情報の内容の一例である。
【
図5】同実施形態における預け入れ手荷物情報の内容の一例である。
【
図6】同実施形態における貨物属性情報の内容の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
<構成>
本実施形態に係る空輸管理システム100は、基本的には無料で乗客が旅客機に積み込むことができる預け入れ手荷物の空きを利用して、貨物を空輸する際に用いられるものであり、物理的には、CPU、メモリ、通信ポートなどを備えた1または複数のコンピュータで構成されている。
【0022】
この空輸管理システム100は、
図1に示すように、インターネット等の通信ネットワークを介して、航空会社が用いるコンピュータ200および物流会社が用いるコンピュータ300と接続されており、前記メモリにあらかじめ格納されたプログラムにしたがって、CPUやその周辺機器が協動することにより、
図2に示すように、過去フライト情報格納部、手荷物量推定部、搭載可能貨物量算出部、抽出部等としての機能を発揮する。
【0023】
過去フライト情報格納部には、
図2、
図3に示すように、過去の各フライト情報が格納されている。過去フライト情報とは、過去のフライトごとの便番号、出発/到着空港、出発/到着日時、乗客数、乗客情報、預け入れ手荷物情報、周辺情報などを含んだ情報のことである。なお、この過去フライト情報格納部は、空輸管理システム100の構成要件である必要はなく、航空会社のコンピュータに設けられていてもよい。
【0024】
このうち、乗客情報とは、
図4に示すように、当該フライトにおける乗客の氏名、年齢、男/女、住所などの属性を含んだ情報のことである。
【0025】
預け入れ手荷物情報とは、
図5に示すように、前記乗客ごとの預け入れ手荷物量、すなわち預け入れ手荷物の重量および容量を含んだ情報のことである。この情報は、乗客が手荷物を預け入れるチェックインカウンタで取得される。
【0026】
周辺情報とは、例えば、当該フライトの出発/到着空港の近辺でその出発/到着日時近傍に開催されたイベント、天候などといったフライト近傍地域、フライト近傍日時での種々の周辺情報のことである。
【0027】
前記手荷物量推定部は、
図2に示すように、フライト予定の旅客機ごとの預け入れ手荷物量(容量および重量)を、前記過去フライト情報と、当該旅客機のフライト情報と、さらに必要であれば当該旅客機の予約情報とに基づいて、離陸時刻の少なくとも所定期間前(ここでは例えば1日前)までに推定算出するものである。なお、予約情報とは、当該旅客機を予約した乗客数および各乗客情報を含むものであり、航空会社のコンピュータ200から取得される。
【0028】
前記搭載可能貨物量算出部は、
図2に示すように、前記手荷物量推定部が各旅客機について推定した預け入れ手荷物量である推定預け入れ手荷物量と、当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差分に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量を算出するものである。この差分とは、重量の差分および容量の差分とを有する2次元値である。
【0029】
前記抽出部は、
図2に示すように、各空輸希望貨物の量(容量および重量)を含む貨物属性情報を受け付け、この貨物属性情報を前記搭載可能貨物量と照らし合わせて、空輸希望貨物の中から当該旅客機に搭載可能な搭載可能貨物を抽出するものである。なお、貨物属性情報は物流会社のコンピュータ300から取得される。
【0030】
<動作>
次に、この空輸管理システムの詳細な説明を兼ねて、その動作を
図6を参照して説明する。
【0031】
まず、前記手荷物量推定部が、フライト予定の旅客機に搭載されるであろう預け入れ手荷物量(容量および重量)を、当該旅客機のフライト情報と、前記過去フライト情報と、当該旅客機の予約情報とに基づいて、フライトの少なくとも所定期間前(ここでは1日前)までに算出する。ここでは、推定算出に、機械学習(AI)を用いているが、AIによらず、当該旅客機のフライト情報や乗客情報と近似する過去フライト情報から推定するなどしてもよい。なお、当該旅客機のフライト情報および予約情報は、航空会社のコンピュータ200から取得される。
【0032】
次に、前記搭載可能貨物量算出部が、前記推定預け入れ手荷物量と当該旅客機の許容預け入れ手荷物量との差分に基づいて、当該旅客機に搭載可能な貨物量である搭載可能貨物量(容量および重量)を算出する。
【0033】
具体的に説明すると、前記許容預け入れ手荷物量は、旅客機ごとに航空会社のコンピュータ200のデータベースに予め記録されており、前記搭載可能貨物量算出部は、旅客機の便名をキーとして、前記データベースから当該旅客機の許容預け入れ手荷物量を取得する。
【0034】
そして、この搭載可能貨物量算出部は、前記許容預け入れ手荷物量と推定預け入れ手荷物量との差分から搭載可能貨物量を算出する。なお、ここでの搭載可能貨物量とは、重量および容量の2次元値である。
【0035】
他方、例えば物流会社に持ち込まれたり、輸送依頼されたりした空輸希望貨物は、その際に、その空輸希望貨物の属性情報(貨物属性情報)が、物流会社のコンピュータ300に入力される。
【0036】
貨物属性情報の内容は、
図6に示すように、例えば、空輸希望貨物の量(重量および容量)、輸送目的地、到着希望日時、希望便名などである。このうち、容量については、あらかじめ定められたいくつかの定型ボックスが用意してあって、当該空輸希望貨物が収容される定型ボックスの種類によって示される。
【0037】
なお、空輸希望貨物(が収容された定型のボックス)には、貨物属性情報と紐づけられたバーコード、QRコードなどの識別コードが付帯され、その後の目的地までの輸送において、所定の読み取り機でこの貨物属性情報を読み取り、その内容を表示ないしネットワークに送信できるようにしてある。
【0038】
このようにして物流会社のコンピュータに入力された貨物属性情報は、空輸管理システム100に送信され、前記抽出部で受け付けられる。
【0039】
次に、この抽出部は、旅客機の搭載可能貨物量が算出されると、それまでに受け付けた貨物属性情報が示す空輸希望貨物のうちから、当該旅客機に搭載する貨物を抽出する。
【0040】
具体的にこの抽出部は、当該旅客機の到着空港および到着日時で満足される輸送目的地および到着希望日時を有した空輸希望貨物を抽出し、さらに、それらの空輸希望貨物のうちから、当該飛行機の搭載可能貨物量が示す容量および重量のいずれも範囲内となる複数の空輸希望貨物を抽出する。
【0041】
なお、競合する空輸希望貨物がある場合(いずれを選択しても搭載可能な空輸希望貨物が複数ある場合や搭載可能な空輸希望貨物の複数の組み合わせがある場合等)、どの空輸希望貨物を優先して選択するかは、空輸希望貨物の属性情報の内容や他の旅客機の情報によって定められる。例えば、到着希望日時が早い空輸希望貨物を優先するとか、他の旅客機でも空輸可能な空輸希望貨物は優先度を下げるとか、申し込み順にするなどといった手法で定められる。
【0042】
このようにして、当該旅客機で輸送する空輸希望貨物が決定されると、その情報は物流会社のコンピュータに送信され、それら空輸希望貨物が空港に運び込まれて、当該旅客機の預け入れ手荷物用スペースに、離陸前に搭載される。
【0043】
<効果>
以上に述べた空輸管理システムによれば、預け入れ手荷物用スペースに生じる空きに搭載可能な貨物量を予め算出できるので、その搭載可能貨物量に応じた貨物を予め準備できることとなり、預け入れ手荷物用スペースを利用した安価な貨物空輸が可能となる。
【0044】
もっとも、前述した搭載可能貨物量は、過去のデータ等から推定した預け入れ手荷物量から推定算出されたものなので、実際に乗客が持ち込んだ預け入れ手荷物量と推定した預け入れ手荷物量とのずれによる誤差が生じ得るが、AIなどを利用しているので、その誤差を最小限にできる。その結果、仮に搭載できない貨物が発生したとしても、その量をわずかなものにして、次の便に搭載するなどの処置が可能になる。
【0045】
また、前述したように、この預け入れ手荷物用スペースは、ほとんどの旅客機に設けられているので、離島や地方を飛ぶ小型機にも本システムを適用できる。したがって、従来、輸送時間の制限から都市部などに輸送できなかった離島や地方の生鮮品や特産品などを貨客混載空輸により低価格、短時間で輸送することが可能になる。
【0046】
<変形例>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、生産者と需要者とをマッチングさせるアプリケーションを用い、マッチングされた生産者-需要者間で売買契約が成立した時点で、そのアプリケーションによって、生産者側で空輸希望貨物に付帯させる前記識別コードを発行できるようにしてもよい。そして、この識別コードにより、物流会社、航空会社等が一貫してその貨物を管理・輸送できるようにしてもかまわない。
【0047】
また、空輸希望貨物量、搭載可能貨物量などは、前記実施形態では重量と容量の二次元値としていたが、いずれか一方のみを用いるようにしてもよい。
【0048】
その他、本発明は前記実施形態に限られることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100・・・空輸管理システム