(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173563
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】締結具、雄ねじ側部材、雌ねじ側部材
(51)【国際特許分類】
F16B 37/08 20060101AFI20241205BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20241205BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20241205BHJP
F16L 15/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16B37/08 A
F16B35/00 E
F16B7/18 A
F16L15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130623
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2023089103の分割
【原出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】522458549
【氏名又は名称】株式会社pate.to
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】内田 米房
【テーマコード(参考)】
3J039
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB01
3J039GA01
(57)【要約】
【課題】締結にかかる時間を短縮することができる締結具を提供する。
【解決手段】雄ねじ側のねじ山12が形成される雄ねじ面12A,12Bと当該雄ねじ側のねじ山12が形成されていない外周片13A,13Bとが交互に配置されるねじ部11を有する雄ねじ側部材と、雌ねじ側のねじ山22が形成される雌ねじ面22A,22Bと雌ねじ側のねじ山22が形成されていない内周片23A,23Bとが交互に配置され、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとが螺合可能なねじ孔21を有する雌ねじ側部材20と、を備え、雄ねじ側のねじ山12は、雄ねじ面12A,12Bと前記雌ねじ面22A,22Bとが螺合する際の相対回転方向前方から後方に向かうにしたがって、ねじ部11の径方向における幅が広がるように形成され、雌ねじ側のねじ山22は、相対回転方向前方から後方に向かうにしたがって、ねじ孔21の径方向における幅が狭まるように形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周方向において、雄ねじ側のねじ山が形成される雄ねじ面と当該雄ねじ側のねじ山が形成されていない外周片とが交互に配置されるねじ部を有する雄ねじ側部材と、
内周方向において、雌ねじ側のねじ山が形成される雌ねじ面と当該雌ねじ側のねじ山が形成されていない内周片とが交互に配置され、前記雄ねじ面と当該雌ねじ面とが螺合可能なねじ孔を有する雌ねじ側部材と、
を備え、
前記雄ねじ側のねじ山は、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面とが螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、前記ねじ部の径方向における幅が広がるように形成され、
前記雌ねじ側のねじ山は、前記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、当該ねじ孔の径方向における幅が狭まるように形成される、
締結具。
【請求項2】
前記雄ねじ面と前記雌ねじ面との螺合状態における前記ねじ部と前記ねじ孔との相対回転を係止するようにして、前記ねじ部及び前記ねじ孔に形成される係止部を更に備える、
請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記係止部は、
前記雄ねじ側のねじ山に形成される凸部と、
前記雌ねじ側のねじ山に形成され、前記螺合状態において前記凸部が嵌合される凹部と、
を備える、
請求項2に記載の締結具。
【請求項4】
前記凸部は、前記雄ねじ側のねじ山の前記相対回転方向後方側の端部に形成され、
前記凹部は、前記雌ねじ側のねじ山の前記相対回転方向前方側の端部に形成される、
請求項3に記載の締結具。
【請求項5】
前記係止部は、
前記雌ねじ側のねじ山に形成される凸部と、
前記雄ねじ側のねじ山に形成され、前記螺合状態において前記凸部が嵌合される凹部と、
を備える、
請求項2に記載の締結具。
【請求項6】
前記凸部は、前記相対回転方向前方側が凸曲面状、当該相対回転方向後方側が階段状であり、
前記凹部は、前記相対回転方向後方側が前記凸部の当該相対回転方向前方側に対応した凹曲面状、当該相対回転方向前方側が当該凸部の当該相対回転方向後方側に対応した階段状である、
請求項3から5のいずれか1項に記載の締結具。
【請求項7】
前記ねじ部は、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面との螺合状態において前記ねじ孔と連通する貫通孔を内側に有する筒状である、
請求項1に記載の締結具。
【請求項8】
前記貫通孔における軸心よりも径方向外側において、一端部が、前記相対回転方向を向くように設けられた雄ねじ側配管と、
前記ねじ孔における軸心よりも径方向外側において、一端部が、前記相対回転方向を向き、前記螺合状態において、当該一端部が前記雄ねじ側配管の前記一端部と嵌合するように設けられた雌ねじ側配管と、
を更に備える、
請求項7に記載の締結具。
【請求項9】
ねじ部の外周方向における一部に配置され、雄ねじ側のねじ山が形成される雄ねじ面と、
前記外周方向において前記雄ねじ面と交互に配置されることで前記ねじ部の外周を形成し、前記雄ねじ側のねじ山が形成されていない外周片と、
を備え、
前記雄ねじ側のねじ山は、ねじ孔と螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって前記ねじ部の径方向における幅が広がる、
雄ねじ側部材。
【請求項10】
ねじ孔の内周方向における一部に配置され、雌ねじ側のねじ山が形成される雌ねじ面と、
前記内周方向において前記雌ねじ面と交互に配置されることで前記ねじ孔の内周を形成し、前記雌ねじ側のねじ山が形成されていない内周片と、
を備え、
前記雌ねじ側のねじ山は、ねじ部と螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって前記ねじ孔の径方向における幅が狭まる、
雌ねじ側部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結具、雄ねじ側部材、及び、雌ねじ側部材に関する。
【背景技術】
【0002】
締結具は、雄ねじと雌ねじとを螺合させて締結するものである。この締結具について、例えば下記特許文献1では、雄ねじと雌ねじの締結後の緩みを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1等の従来の締結具では、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山とを、互いの長さ分相対的に回転させるように螺合させて締結するので、これらのねじ山が長い場合には締結に時間がかかる。
【0005】
そこで本発明は、締結にかかる時間を短縮することができる、締結具、雄ねじ側部材、及び、雌ねじ側部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る締結具は、外周方向において、雄ねじ側のねじ山が形成される雄ねじ面と当該雄ねじ側のねじ山が形成されていない外周片とが交互に配置されるねじ部を有する雄ねじ側部材と、内周方向において、雌ねじ側のねじ山が形成される雌ねじ面と当該雌ねじ側のねじ山が形成されていない内周片とが交互に配置され、前記雄ねじ面と当該雌ねじ面とが螺合可能なねじ孔を有する雌ねじ側部材と、を備え、前記雄ねじ側のねじ山は、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面とが螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、前記ねじ部の径方向における幅が広がるように形成され、前記雌ねじ側のねじ山は、前記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、当該ねじ孔の径方向における幅が狭まるように形成される。
【0007】
また、本発明の第二態様では、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面との螺合状態における前記ねじ部と前記ねじ孔との相対回転を係止するようにして、前記ねじ部及び前記ねじ孔に形成される係止部を更に備える。
【0008】
また、本発明の第三態様では、前記係止部は、前記雄ねじ側のねじ山に形成される凸部と、前記雌ねじ側のねじ山に形成され、前記螺合状態において前記凸部が嵌合される凹部と、を備える。
【0009】
また、本発明の第四態様では、前記凸部は、前記雄ねじ側のねじ山の前記相対回転方向後方側の端部に形成され、前記凹部は、前記雌ねじ側のねじ山の前記相対回転方向前方側の端部に形成される。
【0010】
また、本発明の第五態様では、前記係止部は、前記雌ねじ側のねじ山に形成される凸部と、前記雄ねじ側のねじ山に形成され、前記螺合状態において前記凸部が嵌合される凹部と、を備える。
【0011】
また、本発明の第六態様では、前記凸部は、前記相対回転方向前方側が凸曲面状、当該相対回転方向後方側が階段状であり、前記凹部は、前記相対回転方向後方側が前記凸部の当該相対回転方向前方側に対応した凹曲面状、当該相対回転方向前方側が当該凸部の当該相対回転方向後方側に対応した階段状である。
【0012】
また、本発明の第七態様では、前記ねじ部は、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面との螺合状態において前記ねじ孔と連通する貫通孔を内側に有する筒状である。
【0013】
また、本発明の第八態様では、前記貫通孔における軸心よりも径方向外側において、一端部が、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面とを螺合する際の前記ねじ部の相対回転方向を向くように設けられた雄ねじ側配管と、前記ねじ孔における軸心よりも径方向外側において、一端部が、前記雄ねじ面と前記雌ねじ面とを螺合する際の当該ねじ孔の相対回転方向を向き、前記螺合状態において、当該一端部が前記雄ねじ側配管の前記一端部と嵌合するように設けられた雌ねじ側配管と、を更に備える。
【0014】
また、本発明の第九態様に係る雄ねじ側部材は、ねじ部の外周方向における一部に配置され、雄ねじ側のねじ山が形成される雄ねじ面と、前記外周方向において前記雄ねじ面と交互に配置されることで前記ねじ部の外周を形成し、前記雄ねじ側のねじ山が形成されていない外周片と、を備え、前記雄ねじ側のねじ山は、ねじ孔と螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって前記ねじ部の径方向における幅が広がる。
【0015】
また、本発明の第十態様に係る雌ねじ側部材は、ねじ孔の内周方向における一部に配置され、雌ねじ側のねじ山が形成される雌ねじ面と、前記内周方向において前記雌ねじ面と交互に配置されることで前記ねじ孔の内周を形成し、前記雌ねじ側のねじ山が形成されていない内周片と、を備え、前記雌ねじ側のねじ山は、ねじ部と螺合する際の相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって前記ねじ孔の径方向における幅が狭まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る締結具、雄ねじ側部材、及び、雌ねじ側部材によれば、締結にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る締結具の斜視図である。
【
図4】
図2に示す凸部及び
図3に示す凹部の拡大斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る雄ねじ側部材の
図2に相当する断面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る雌ねじ側部材の
図3に相当する断面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る雄ねじ面と雌ねじ面とが螺合した状態を概略的に表す軸方向断面図である。
【
図8】
図7に示す雄ねじ側配管と雌ねじ側配管の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
==第一実施形態==
以下、本発明の第一実施形態について説明する。
【0020】
《構成》
まず、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載。)に係る締結具1の構成について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る締結具1の斜視図である。
図1に示すように、締結具1は、雄ねじ側部材10及び雌ねじ側部材20を主要部として備えている。
【0022】
雄ねじ側部材10は、貫通孔14を内側に有する筒状のねじ部11を主要部として備えている。
【0023】
ねじ部11は、外周方向において、雄ねじ側のねじ山12が形成される雄ねじ面12A,12Bとねじ山12が形成されていない外周片13A,13Bとが交互に配置されるようにして、軸方向に延伸したものである。
【0024】
なお、外周片13A及び外周片13Bは、大まかには、円筒形状の外周面の周方向一部を切り取った形状である。
【0025】
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2には、ねじ部11が、周方向において、雄ねじ面12A、外周片13A、雄ねじ面12B、外周片13Bの順に配置されるようにして形成されている様子が示されている。また、
図2中の実線矢印は、雄ねじ面12Aを後述の雌ねじ面22Bに、雄ねじ面12Bを後述の雌ねじ面22Aに、それぞれ螺合する際の相対回転方向を示している。
【0026】
図2に示すように、ねじ山12の外径(一点鎖線矢印)は、外周片13A及び外周片13Bの外径(破線矢印)よりも大きくなっている。
【0027】
さらに、ねじ山12は、上記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、ねじ部11の径方向における幅が広がるように形成される。すなわち、
図2中の幅D1よりも幅D2の方が長くなっている。
【0028】
一方、
図1に示す雌ねじ側部材20については、ねじ孔21を主要部として備えている。
【0029】
ねじ孔21は、内周方向において、雌ねじ側のねじ山22が形成される雌ねじ面22A,22Bとねじ山22が形成されていない内周片23A,23Bとが交互に配置されるようにして、軸方向に延伸したものである。
【0030】
なお、内周片23A及び内周片23Bは、大まかには、円筒形状の内周面の周方向一部を切り取った形状である。
【0031】
図3は、
図1のIII-III断面図である。
図3には、ねじ孔21が、周方向において、雌ねじ面22A、内周片23A、雌ねじ面22B、内周片23Bの順に配置されるようにして形成されている様子が示されている。また、
図3中の実線矢印は、雄ねじ面12Aを後述の雌ねじ面22Bに、雄ねじ面12Bを後述の雌ねじ面22Aに、それぞれ螺合する際の相対回転方向を示している。
【0032】
図3に示すように、ねじ孔21は、ねじ山22部分の孔径(一点鎖線矢印)が内周片23A及び内周片23Bの孔径(破線矢印)よりも小さくなっている。
【0033】
さらに、ねじ山22は、上記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、ねじ孔21の径方向における幅が狭まるように形成される。すなわち、
図3中の幅D3よりも幅D4の方が短くなっている。
【0034】
ここで、雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bは、それぞれ、ねじ山22に加え、ねじ山22の(ねじ孔21の径方向)外側において、ねじ孔21の軸方向に延伸し、雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bにおけるねじ孔21の孔径が一定となるように、上記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方に向かうにしたがって、ねじ孔21の径方向における幅が広がるように形成される、扇状部材24を有している。
【0035】
つまり、雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bは、上記相対回転方向前方から当該相対回転方向後方にかけて、ねじ孔21の孔径については一定となるように形成されている。
【0036】
これによって、雌ねじ面22Bは雄ねじ面12Aと、雌ねじ面22Aは雄ねじ面12Bと、それぞれ螺合可能となっている。すなわち、径方向断面視(
図2及び
図3の断面視)において、ねじ山12とねじ山22とが重複するように螺合することができる。そして、これらを螺合させることで、ねじ部11をねじ孔21に締結することができる。
【0037】
なお、扇状部材24は、上述のように、すなわち、径方向断面視において、ねじ山12とねじ山22とが重複するように螺合するためであるので、雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bにおけるねじ孔21の孔径が完全一定ではなく略一定(例えば孔径の最大値と最小値の平均値からの誤差範囲が3%以内など)であればよい。
【0038】
また、筒状のねじ部11の貫通孔14は、上記螺合状態においてねじ孔21と連通する。これにより、雄ねじ側部材10及び雌ねじ側部材20を、例えば水道配管等の流路として使用することができる。
【0039】
ここで、本実施形態に係る締結具1は、
図2に示す凸部31、及び、
図3に示す凹部32を更に備えている。凸部31及び凹部32は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態におけるねじ部11とねじ孔21との相対回転を係止するようにして、ねじ部11及びねじ孔21に形成される係止部の一例である。
【0040】
図4は、
図2に示す凸部31及び
図3に示す凹部32の拡大斜視図である。
ただし
図4では、凹部32については仮想線(破線)で内側から見た様子を表している。また
図4は、凸部31と凹部32との嵌合状態を示しているが、理解しやすくするため、嵌合状態の凸部31と凹部32とをやや離隔して表している。
【0041】
また、
図4中の実線矢印は、雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bと雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bとを螺合させ、ねじ部11をねじ孔21に締結させる際の、ねじ部11及び凸部31の相対回転方向を表し、
図4中の破線矢印は、ねじ孔21及び凹部32の相対回転方向を表している。
【0042】
図4に示すように、凸部31はねじ山12の面に形成されている。ただし、凸部31は、雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bに形成された複数のねじ山12のうち、一か所に設けられていても、複数箇所に設けられていてもよい(なお、
図2では、一例として凸部31が二つのねじ山12に設けられている状態が示されている)。
【0043】
また凸部31は、上記相対回転方向前方31A側が凸曲面状、当該相対回転方向後方31B側が階段状である。
【0044】
凹部32はねじ山22の面に形成されている。凹部32は、凸部31と同数であるものとし、それぞれ、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態において凸部31に対応する箇所に設けられるようにしてもよい(なお、
図3では、一例として凹部32が二つのねじ山22に設けられている状態が示されている)。
【0045】
そして、凹部32は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態において、凸部31が嵌合されるものであり、相対回転方向後方32A側が凸部31の前方31A側に対応した凹曲面状、相対回転方向前方32B側が凸部31の後方31B側に対応した階段状である。
【0046】
さらに、本実施形態では、ねじ部11において、外周片13A及び外周片13Bは、それぞれ雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bよりも長くするのが好ましい。また、ねじ孔21において、内周片23A及び内周片23Bは、それぞれ雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bよりも長くするのが好ましい。
【0047】
特に、外周片13A及び外周片13Bは、ねじ部11の周方向において全周の1/2超から2/3以下の長さとするのが好ましい。また、内周片23A及び内周片23Bは、ねじ孔21の周方向において全周の1/2超から2/3以下の長さとするのが好ましい。これらの長さを1/2超にすることで、ねじ部11をねじ孔21に挿入しやすくなる。また、これらの長さを2/3以下にすることで、ねじ部11とねじ孔21との締結力を向上させることができる。
【0048】
さらに好ましくは、ねじ部11において、外周片13A及び外周片13Bは、それぞれ雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bよりも1%程度長くし、ねじ孔21において、内周片23A及び内周片23Bは、それぞれ雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bよりも1%程度長くする。
【0049】
また、ねじ部11の軸方向の長さは、従来のねじ部の軸方向の長さの2.1倍程度としてもよい。ねじ部11が軸方向に長いほど、雄ねじ側部材10と雌ねじ側部材20との締結力が向上する。したがって、仮に、雄ねじ面12Aと外周片13A、雄ねじ面12Bと外周片13B、雌ねじ面22Aと内周片23A、雌ねじ面22Bと内周片23Bが、周方向において同じ長さである場合は、ねじ部11の軸方向の長さを従来のねじ部の軸方向の長さの2倍とすることで従来の締結具と同等の締結力となる。ただし、上述のように、外周片13A及び外周片13Bを、雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bよりも1%程度長くし、内周片23A及び内周片23Bを、雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bよりも1%程度長くした場合は、軸方向の長さを2.1倍程度とすることで従来の締結具と同等の締結力となる。
以上が、本実施形態に係る締結具1の構成についての説明である。
【0050】
《動作》
次に、本実施形態に係る締結具1の動作について説明する。
まず、
図1に示すように、雄ねじ面12Aと内周片23B、雄ねじ面12Bと内周片23A、外周片13Aと雌ねじ面22A、外周片13Bと雌ねじ面22Bとが、それぞれ対向するような角度で、ねじ部11をねじ孔21に挿入する。
【0051】
ねじ部11をねじ孔21に挿入した状態から、雄ねじ面12Aと雌ねじ面22B、雄ねじ面12Bと雌ねじ面22Aがそれぞれ螺合するように、ねじ部11とねじ孔21とを90°相対回転させることで、ねじ部11とねじ孔21とを締結する。
【0052】
なお、上記螺合については、まず、雄ねじ面12Aのねじ山12における最も幅が狭い側(相対回転方向前方側。
図2の幅D1)が、雌ねじ面22Bのねじ山22における最も幅が広い側(
図3の相対回転方向前方側)から挿入される。
【0053】
そこから更に相対回転させていくと、最終的には、雄ねじ面12Aのねじ山12の最も幅が狭い側(
図2の幅D1)と雌ねじ面22Bのねじ山22の最も幅が狭い側、雄ねじ面12Aのねじ山12の最も幅が広い側(
図2の幅D2)と雌ねじ面22Bのねじ山22の最も幅が広い側が、それぞれ摺接するようにして、螺合することになる。
【0054】
なお、雄ねじ面12Aと雌ねじ面22Bの螺合についての上記説明は、雄ねじ面12Bと雌ねじ面22Aについても同様である。
【0055】
また、上述のようにして雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bと雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bとが螺合した状態において、凸部31と凹部32とが嵌合するため、ねじ部11とねじ孔21との相対回転を確実に係止することができる。
【0056】
なお、雄ねじ面12Aと雌ねじ面22B、雄ねじ面12Bと雌ねじ面22Aがそれぞれ螺合するようにねじ部11とねじ孔21とを相対回転させた際、凸部31は、その凸曲面状の前方31A側から凹部32に嵌合する。
【0057】
≪効果≫
本実施形態に係る締結具1は、外周方向において、雄ねじ側のねじ山12が形成される雄ねじ面12A,12Bと当該雄ねじ側のねじ山12が形成されていない外周片13A,13Bとが交互に配置されるねじ部11を有する雄ねじ側部材と、内周方向において、雌ねじ側のねじ山22が形成される雌ねじ面22A,22Bと雌ねじ側のねじ山22が形成されていない内周片23A,23Bとが交互に配置され、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとが螺合可能なねじ孔21を有する雌ねじ側部材20と、を備え、雄ねじ側のねじ山12は、雄ねじ面12A,12Bと前記雌ねじ面22A,22Bとが螺合する際の相対回転方向前方から相対回転方向後方に向かうにしたがって、ねじ部11の径方向における幅が広がるように形成され、雌ねじ側のねじ山22は、相対回転方向前方から相対回転方向後方に向かうにしたがって、ねじ孔21の径方向における幅が狭まるように形成される。
従来のねじ部はねじ山が連続しているのに対し、ねじ部11は、外周片13A及び外周片13Bが設けられていることで、(従来のねじ部と軸方向の長さが等しい場合に)ねじ山12が短い。同様に、従来のねじ孔はねじ山が連続しているのに対し、ねじ孔21は、内周片23A及び内周片23Bが設けられていることで、(従来のねじ孔と軸方向の長さが等しい場合に)ねじ山22が短い。したがって、本実施形態に係る締結具1は、締結にかかる時間を従来よりも短縮することができる。
さらに、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる際に、まず、ねじ山12の最も幅が狭い側からねじ山22に挿入されるので、挿入し始めの摩擦が少なく、螺合させやすい。
そして、螺合状態においては、ねじ山12の最も幅が広い側とねじ山22の最も幅が広い側とが摺接した状態となるので、摺接部分の面積を大きく取ることができ、螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態に係る締結具1は、外周片13A,13Bは、周方向において雄ねじ面12A,12Bよりも長く、内周片23A,23Bは、周方向において雌ねじ面22A,22Bよりも長い。
既に説明したように、ねじ部11をねじ孔21に挿入する際、最初に、雄ねじ面12Aと内周片23B、雄ねじ面12Bと内周片23A、外周片13Aと雌ねじ面22A、外周片13Bと雌ねじ面22Bが、それぞれ対向するような角度で挿入する。そのため、外周片13A,13Bを、周方向において雄ねじ面12A,12Bよりも長くし、内周片23A,23Bを、周方向において雌ねじ面22A,22Bよりも長くすることで、挿入時の角度が多少ずれた場合であっても、雄ねじ面12A,12Bのねじ山12と雌ねじ面22A,22Bのねじ山22とが当たることがなく、スムーズに挿入することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る締結具1は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態におけるねじ部11とねじ孔21との相対回転を係止するようにして、ねじ部11及びねじ孔21に形成される係止部を更に備える。
これにより、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0060】
また、本実施形態では、係止部は、雄ねじ側のねじ山12に形成される凸部31と、雌ねじ側のねじ山22に形成され、螺合状態において凸部31が嵌合される凹部32と、を備える。
これにより、簡易的な構造で雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態では、凸部31は、雄ねじ側のねじ山12の相対回転方向後方側の端部に形成され、凹部32は、雌ねじ側のねじ山22の相対回転方向前方側の端部に形成される。
これにより、雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bと雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bとが螺合するようにして、ねじ部11とねじ孔21とを相対回転させる際に、雄ねじ側のねじ山12の凸部31が、雌ねじ側のねじ山22の面に接触する長さが短くなり、より滑らかに嵌合することができる。
【0062】
また、本実施形態では、係止部は、雌ねじ側のねじ山22に形成される凸部31と、雄ねじ側のねじ山12に形成され、螺合状態において凸部31が嵌合される凹部32と、を備えるようにしてもよい。これにより、簡易的な構造で雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態では、凸部31は、相対回転方向前方31A側が凸曲面状、相対回転方向後方31B側が階段状であり、凹部32は、相対回転方向後方32A側が凸部31の相対回転方向前方31A側に対応した凹曲面状、相対回転方向前方32B側が凸部31の相対回転方向後方31B側に対応した階段状である。
これにより、雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bと雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bとが螺合するようにして、ねじ部11とねじ孔21とを相対回転させる際に、凸部31が、凸曲面状である相対回転方向前方31A側から凹部32に対して嵌合するので、滑らかに嵌合することができる。また、取り外す際には、凸部31の階段状である相対回転方向後方31B側から取り外すので、例えば、凸部31の相対回転方向後方31B側が垂直面である場合に比べて、容易に取り外すことができる。
【0064】
また、本実施形態では、ねじ部11は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態においてねじ孔21と連通する貫通孔14を内側に有する筒状である。
これにより、雄ねじ側部材及び雌ねじ側部材を水道配管等の流路として使用することができるので、利便性が向上する。
【0065】
また、本実施形態に係る雄ねじ側部材10は、ねじ部11の外周方向における一部に配置され、雄ねじ側のねじ山12が形成される雄ねじ面12A,12Bと、外周方向において雄ねじ面12A,12Bと交互に配置されることでねじ部11の外周を形成し、雄ねじ側のねじ山12が形成されていない外周片13A,13Bと、を備え、雄ねじ側のねじ山12は、ねじ孔21と螺合する際の(つまり、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとが螺合する際の)相対回転方向前方から相対回転方向後方に向かうにしたがってねじ部11の径方向における幅が広がる。
従来の雄ねじのねじ部はねじ山が連続しているのに対して、ねじ部11は、外周片13A及び外周片13Bが設けられていることで、(従来のねじ部と軸方向の長さが等しい場合に)ねじ山12が短いため、締結にかかる時間を従来よりも短縮することができる。
さらに、雄ねじ面12A,12Bを雌ねじ面に螺合させる際に、まず、ねじ山12の最も幅が狭い側から雌ねじ側のねじ山22間に挿入されるので、挿入し始めの摩擦が少なく、螺合させやすい。
そして、螺合状態においては、ねじ山12の最も幅が広い側まで挿入されるので、雌ねじ側のねじ山22との摺接部分の面積を大きく取ることができ、螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0066】
また、本実施形態に係る雌ねじ側部材20は、ねじ孔21の内周方向における一部に配置され、雌ねじ側のねじ山22が形成される雌ねじ面22A,22Bと、内周方向において雌ねじ面22A,22Bと交互に配置されることでねじ孔21の内周を形成し、雌ねじ側のねじ山22が形成されていない内周片23A,23Bと、を備え、雌ねじ側のねじ山22は、ねじ部11と螺合する際の(つまり、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとが螺合する際の)相対回転方向前方から相対回転方向後方に向かうにしたがってねじ孔21の径方向における幅が狭まる。
従来の雌ねじのねじ孔はねじ山が連続しているのに対して、ねじ孔21は、内周片23A及び内周片23Bが設けられていることで、(従来のねじ孔と軸方向の長さが等しい場合に)ねじ山22が短いため、締結にかかる時間を従来よりも短縮することができる。
さらに、雌ねじ面22A,22Bを雄ねじ面12A,12Bと螺合させる際に、まず、ねじ山22の最も幅が狭い側から雄ねじ側のねじ山12間に挿入されるので、挿入し始めの摩擦が少なく、螺合させやすい。
そして、螺合状態においては、ねじ山22の最も幅が広い側まで挿入されるので、雄ねじ側のねじ山12との摺接部分の面積を大きく取ることができ、螺合状態が緩むことを防ぐことができる。
【0067】
==第二実施形態==
以下、本発明の第二実施形態について説明する。
【0068】
《構成》
図5は、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載。)に係る雄ねじ側部材の
図2に相当する断面図である。また、
図6は、本実施形態に係る雌ねじ側部材の
図3に相当する断面図である。
【0069】
本実施形態においては、本発明の第一実施形態に係る締結具1の構成に加え、
図5に示す第一雄ねじ側配管41及び第二雄ねじ側配管42と、
図6に示す第一雌ねじ側配管43及び第二雌ねじ側配管44とを更に備えている。
【0070】
図5に示すように、第一雄ねじ側配管41は、その外径が貫通孔14の半径未満であって、貫通孔14における軸心O1よりも径方向外側に設けられている。なお、
図5では、三本の第一雄ねじ側配管41がねじ部11の径方向(つまり貫通孔14の径方向)に並べられている様子が示されているが、第一雄ねじ側配管41は一本以上であればいくつあってもよい。
【0071】
また、第一雄ねじ側配管41は、ねじ部11の軸方向(つまり貫通孔14の軸方向)に延伸しており、さらに、
図5のように、ねじ部11の先端側の端部41Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる場合のねじ部11の相対回転方向(
図5中の矢印の方向)を向くように設けられている。
【0072】
第二雄ねじ側配管42は、その外径が貫通孔14の半径未満であって、貫通孔14における軸心O1よりも径方向外側に設けられている。なお、
図5では、三本の第二雄ねじ側配管42がねじ部11の径方向(つまり貫通孔14の径方向)に並べられている様子が示されているが、第二雄ねじ側配管42は一本以上であればいくつあってもよい。
【0073】
また、第二雄ねじ側配管42は、ねじ部11の軸方向(つまり貫通孔14の軸方向)に延伸しており、さらに、
図5のように、ねじ部11の先端側の端部42Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる場合のねじ部11の相対回転方向(
図5中の矢印の方向)を向くように設けられている。
【0074】
さらに、第二雄ねじ側配管42は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合時の相対回転角度(90°)の二倍の角度(180°)で、各第一雄ねじ側配管41と離隔するように配置されている。
【0075】
図6に示すように、第一雌ねじ側配管43は、その外径がねじ孔21の半径未満であって、ねじ孔21における軸心O2よりも径方向外側に設けられている。なお、
図6では、三本の第一雌ねじ側配管43がねじ孔21の径方向に並べられている様子が示されているが、第一雌ねじ側配管43は、第一雄ねじ側配管41と同数であるものとする。
【0076】
また、第一雌ねじ側配管43は、ねじ孔21の軸方向に延伸しており、さらに、
図6のように、ねじ孔21の入口側の端部43Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる場合のねじ孔21の相対回転方向(
図6中の矢印の方向)を向くように設けられている。
【0077】
第二雌ねじ側配管44は、その外径がねじ孔21の半径未満であって、ねじ孔21における軸心O2よりも径方向外側に設けられている。なお、
図6では、三本の第二雌ねじ側配管44がねじ孔21の径方向に並べられている様子が示されているが、第二雌ねじ側配管44は、第二雄ねじ側配管42と同数であるものとする。
【0078】
また、第二雌ねじ側配管44は、ねじ孔21の軸方向に延伸しており、さらに、
図6のように、ねじ孔21の入口側の端部44Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる場合のねじ孔21の相対回転方向(
図6中の矢印の方向)を向くように設けられている。
【0079】
さらに、第二雌ねじ側配管44は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合時の相対回転角度(90°)の二倍の角度(180°)で、各第一雌ねじ側配管43と離隔するように配置されている。
【0080】
さらに、第一雌ねじ側配管43は、第一雄ねじ側配管41よりも、螺合時のねじ部11の相対回転角度90°、ねじ部11の相対回転方向前方側(つまり、ねじ孔21の相対回転方向後方側)に離隔して配置される。また、第二雌ねじ側配管44は、第二雄ねじ側配管42よりも、螺合時のねじ部11の相対回転角度90°、ねじ部11の相対回転方向前方側(つまり、ねじ孔21の相対回転方向後方側)に離隔して配置される。
【0081】
すなわち、ねじ部11をねじ孔21に挿入する時点では、
図5及び
図6に示すように、径断面視において、第一雄ねじ側配管41と第一雌ねじ側配管43と第二雄ねじ側配管42と第二雌ねじ側配管44とが、それぞれ90°ずつずれた位置に設けられている状態となる。
【0082】
これにより、まず、ねじ部11をねじ孔21に対して直線的に挿入する際に、雄ねじ側配管41,42と雌ねじ側配管43,44とが接触することがない。そして、ねじ部11をねじ孔21に挿入した状態から、ねじ部11とねじ孔21とを相対回転させ、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合させる。
【0083】
ここで、
図7は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bと螺合した状態を概略的に表す軸方向断面図である。なお、
図7では、第二雄ねじ側配管42及び第二雌ねじ側配管44については省略している。
【0084】
雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態において、
図7に示すように、第一雌ねじ側配管43の端部43Aが第一雄ねじ側配管41の端部41Aと嵌合するとともに、第二雌ねじ側配管44の端部44Aが第二雄ねじ側配管42の端部42Aと嵌合する。
【0085】
図8は、第一雄ねじ側配管41の端部41Aと第一雌ねじ側配管43の端部43Aの拡大図である。
【0086】
端部41Aには、円環状の突起部51が形成されている。また、端部43Aには、突起部51の形状に対応した円環状の窪み部52が形成されている。
【0087】
さらに、端部41Aの突起部51の根元には、スプリングワッシャ53、ワッシャ54、及び、Oリング55が順に重ねて設けられている。これらを設けることで、突起部51が形成された端部41Aと窪み部52が形成された端部43Aとが嵌合する際に、隙間なく第一雄ねじ側配管41と第一雌ねじ側配管43との嵌合部分における密閉性を確保することができる。
【0088】
ただし、第一雄ねじ側配管41の端部41Aの構成と第一雌ねじ側配管43の端部43Aの構成とは反対にしてもよい。
【0089】
なお、上述した
図8を用いての説明は、第二雄ねじ側配管42の端部42A、及び、第二雌ねじ側配管44の端部44Aについても同様である。
【0090】
なお、本実施形態では、複数の第一雄ねじ側配管41の端部41Aの軸方向の位置及び/又は周方向の位置が、互いに異なるようにしてもよい。同様にして、複数の第二雄ねじ側配管42の端部42Aの軸方向の位置及び/又は周方向の位置が、互いに異なるようにしてもよい。
【0091】
≪効果≫
本実施形態に係る締結具1は、貫通孔14における軸心O1よりも径方向外側において、一端部41A,42Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合する際のねじ部11の相対回転方向を向くように設けられた雄ねじ側配管41,42と、ねじ孔21における軸心O2よりも径方向外側において、一端部43A,44Aが、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとを螺合する際のねじ孔21の相対回転方向を向き、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A, 22Bとの螺合状態において、一端部43A,44Aが雄ねじ側配管41,42の一端部41A,42Aと嵌合するように設けられた雌ねじ側配管43,44と、を更に備える。
これにより、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態において、雄ねじ側配管41,42と雌ねじ側配管43,44とがそれぞれ連通するため、これらを雄ねじ側部材10及び雌ねじ側部材20から独立した用途の配管として使用することができるので、利便性が更に向上する。
なお、連通した第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43についての上記用途とは、例えば、流体の流路と固体の通路(第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43がそれぞれ二本以上の場合)や、油圧往路と油圧復路(第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43がそれぞれ二本以上の場合)、電気配線の配置(第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43がそれぞれ三本以上の場合であれば単層三線式など)や、ガス流路(第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43がそれぞれ三本以上の場合であればO2,N,CO2の流路など)が挙げられる。
また、連通した第二雄ねじ側配管42及び第二雌ねじ側配管44についての上記用途も、同様である。そのため、第一雄ねじ側配管41及び第一雌ねじ側配管43と、第二雄ねじ側配管42及び第二雌ねじ側配管44とでも異なる用途とすることができる。
【0092】
==変形例==
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述した具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び下記変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0093】
例えば、各実施形態においては、ねじ部11が、二つの雄ねじ面及び二つの外周片を備えるものとし、ねじ孔21が、二つの雌ねじ面及び二つの内周片を備えるものした。しかしながら、本発明はこれら各面の数を限定するものではない。すなわち、ねじ部11は、雄ねじ面及び外周片がそれぞれ一つ以上設けられていればよく、ねじ孔21は、雌ねじ面及び内周片がそれぞれ一つ以上設けられていればよい。ただし、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片は同数とするのが好ましい。
【0094】
なお、雄ねじ面と雌ねじ面とを螺合させるのに必要なねじ部11及びねじ孔21との相対回転の角度は、雄ねじ面と雌ねじ面の数によって異なる。
例えば、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片の周方向の長さが同じである場合、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片がそれぞれ一つずつであれば、相対回転の角度は180°となる。
あるいは、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片がそれぞれ二つずつであれば、相対回転の角度は90°となる(上記実施形態はこの形状を例として挙げている)。
あるいは、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片がそれぞれ三つずつであれば、相対回転の角度は60°となる。
あるいは、雄ねじ面、外周片、雌ねじ面、及び、内周片がそれぞれ四つずつであれば、相対回転の角度は45°となる。
すなわち、各面の数が多いほど、ねじ部11とねじ孔21との相対回転の角度は小さくなり、締結にかかる時間を短縮することができる。
【0095】
また、各面の数によらず、外周片は、周方向において雄ねじ面よりも長く、内周片は、周方向において雌ねじ面よりも長くするのが好ましい。そのように形成した場合は、当然上記相対回転の角度が変化する。
【0096】
あるいは、外周片は、周方向において雄ねじ面よりも短く、内周片は、周方向において雌ねじ面よりも短くしてもよい。これにより、ねじ部11とねじ孔21との締結力が向上する。
【0097】
さらに、上記第二実施形態において、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合時の相対回転角度が90°であるために、第一雄ねじ側配管41と第一雌ねじ側配管43と第二雄ねじ側配管42と第二雌ねじ側配管44とが、それぞれ90°ずつずれた位置に設けられているものとしたが、上述のように相対回転の角度が変わる場合は、当該相対回転の角度と等しい角度で各配管が離隔するように配置する。
【0098】
また、ねじ山12及びねじ山22は、従来のねじのようにねじ部11及びねじ孔21の径方向に対して傾斜していなくてもよい。従来のねじであれば、ねじ部を回転させていくことでねじ孔に挿入していくが、締結具1においては、内周片23A及び内周片23Bに雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bを相対させるようにして、ねじ部11をねじ孔21に直線的に挿入した後に、回転させて螺合させるので、回転中に軸方向に進ませる必要がないためである。
【0099】
また、ねじ山12、ねじ山22の各形状は、
図1~
図8に示したものに限らず、様々な形状に変更可能である。
【0100】
また、凸部31が雌ねじ面22A及び雌ねじ面22Bに、凹部32が雄ねじ面12A及び雄ねじ面12Bにそれぞれ形成されるものとしてもよい。その場合も、凸部31は、相対回転方向前方31A側が凸曲面状、相対回転方向後方31B側が階段状である。また、凹部32は、雄ねじ面12A,12Bと雌ねじ面22A,22Bとの螺合状態において、凸部31が嵌合されるものであり、相対回転方向後方32A側が凸部31の前方31A側に対応した凹曲面状、前方32B側が凸部31の相対回転方向後方31B側に対応した階段状である。
【0101】
また、雄ねじ側部材10は通常の雄ねじと同様に頭部を有するものとしてもよい。さらに、ねじ部11は、内側に貫通孔14を有さず通常のねじ部と同様に稠密であるものとしてもよい。そして、雌ねじ側部材20は、入口側(つまり雄ねじ側部材10の挿入側)と反対側に底面を有するものとしてもよい。
【0102】
また、締結具1は、直径数cm~数十mのものに使用可能である。材質についても、金属、塩ビ、ガラス他等、様々なものが適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…締結具、10…雄ねじ側部材、11…ねじ部、12…(雄ねじ側の)ねじ山、12A,12B…雄ねじ面、13A,13B…外周片、14…貫通孔、20…雌ねじ側部材、21…ねじ孔、22…(雌ねじ側の)ねじ山、22A,22B…雌ねじ面、23A,23B…内周片、24…扇状部材、31…凸部、32…凹部、41…第一雄ねじ側配管、42…第二雄ねじ側配管、43…第一雌ねじ側配管、44…第二雌ねじ側配管