(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017357
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】混合材料の流動性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
B28B 13/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B28B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119930
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 健司
(72)【発明者】
【氏名】桜井 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 達央
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055AB00
4G055CA26
(57)【要約】
【課題】混合材料の流動性を向上させる新規な方法を提供すること。
【解決手段】フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料に対して、5μm以上の振幅を有する超音波を照射することで、混合材料の流動性を向上させる方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料に対して、超音波を照射する工程を含み、前記超音波の振幅が5μm以上であることを特徴とする、混合材料の流動性を向上させる方法。
【請求項2】
前記超音波の振幅が5~35μmであることを特徴とする、請求項1に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
【請求項3】
前記超音波の周波数が10~200kHzである、請求項1又は2に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
【請求項4】
前記混合材料の水とセメントの質量比が0.30~0.60である、請求項1又は2に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
【請求項5】
ポンプ圧送用のフレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料の製造方法であって、請求項1又は2に記載の混合材料の流動性を向上させる方法を使用することを特徴とする、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料の流動性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの打設時には、コンクリートを均質に締め固めるために、バイブレータ等による締固めを十分に行う必要があった。他方で、土木や建設等の現場においては深い場所や鉄筋を配置した場所等のようにバイブレータ等による締固めの施工効率が低い場合がある。このような場合であっても、作業性、充填性等を確保するために、流動性を有するフレッシュコンクリート等が必要とされていた。そして、近年では、締固めなしで型枠内へ確実に充填することが可能な流動性が高くポンプ圧送性の優れたフレッシュコンクリート等が種々提案されている。
【0003】
ところで、フレッシュコンクリート等の流動性を向上させる方法としては、水硬性結合剤、化学混和剤(例えば、高性能AE減水剤等)、増粘剤等を添加する方法が知られていた。しかし、この方法によるとコスト高になる等の懸念があった。
【0004】
特許文献1では、遊離酸化カルシウムを0.0質量%より多く且つ1.0質量%未満含有することを特徴とするコンクリート組成物用微粉末を、フレッシュコンクリートに含ませることにより、流動性の経時変化の低減及び材料分離抵抗性の向上を低コストで実現できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、混合材料の流動性を向上させる新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料に対して、5μm以上の振幅を有する超音波を照射することで、骨材の沈降・凝集を生じさせることなく混合材料の流動性を向上させられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
[1]フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料に対して、超音波を照射する工程を含み、前記超音波の振幅が5μm以上であることを特徴とする、混合材料の流動性を向上させる方法。
[2]前記超音波の振幅が5~35μmであることを特徴とする、[1]に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
[3]前記超音波の周波数が10~200kHzである、[1]又は[2]に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
[4]混合材料の水とセメントの質量比が0.30~0.60である、[1]又は[2]に記載の混合材料の流動性を向上させる方法。
[5]ポンプ圧送用のフレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかである混合材料の製造方法であって、[1]又は[2]に記載の混合材料の流動性を向上させる方法を使用することを特徴とする、上記製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混合材料の流動性を向上させる新規な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】超音波照射前後の試験用フレッシュセメントペーストのフロー値の変化量(mm)と超音波の周波数及び振幅(μm)との関係を示したグラフである。
【
図2】超音波照射前後の試験用フレッシュモルタルのフロー値の変化量(mm)と超音波の周波数及び振幅(μm)との関係を示したグラフである。
【
図3】
図3Aは、バット状容器上の試験用フレッシュモルタルに周波数39kHz及び振幅15μmの超音波を60秒間照射した後の試験用フレッシュモルタルの状態を示す写真である。また
図3Bは、バット状容器上の試験用フレッシュモルタルに周波数27.5kHz及び振幅40μmの超音波を60秒間照射した後の試験用フレッシュモルタルの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「フレッシュ」とは、混合材料が固まる前の状態を意味する。
【0013】
[混合材料]
本実施形態に係る混合材料としては、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル及びフレッシュセメントペーストのいずれかを用いる。
【0014】
<フレッシュコンクリート>
本実施形態に係るフレッシュコンクリートは、セメント、水、細骨材、粗骨材、混和剤及び必要に応じて混和材を構成材料として含むものであって、未だ固まっていない状態のものをいう。
【0015】
セメントとしては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよく、例えば、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等)、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等を混ぜ合わせたセメント等)、エコセメント、特殊セメント(白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、グラウト用セメント、油井セメント等)等が挙げられる。これらのセメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
骨材としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよく、例えば、天然骨材(川砂や川砂利、陸砂や陸砂利、山砂や山砂利、海砂等)、人工骨材(砕石や砕砂、人工軽量骨材、高炉スラグ骨材等)、再生骨材等を挙げることができる。これらの骨材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
細骨材としては、目開き10mmの篩を通過し、かつ、目開き5mmの篩を85質量%以上通過する骨材を用いることができる。また粗骨材としては、目開き5mmの篩を85質量%以上とどまる骨材を用いることができる。
【0017】
混和剤としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよく、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の化学混和剤が挙げられる。
【0018】
また混和材としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよく、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、石灰石微粉末等の砕石粉、スラッジ粉、廃コンクリート微粉末、膨張剤等が挙げられる。
【0019】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートにおいて、水とセメントの質量比(W/C)が、0.30~0.60であることが好ましく、0.35~0.55であることがより好ましく、0.40~0.50であることがさらに好ましい。また骨材(細骨材及び粗骨材)とセメントの質量比((S+G)/C)が、0.5~4.0であることが好ましく、0.6~3.5であることがより好ましく、0.8~3.0であることがさらに好ましい。
【0020】
<フレッシュモルタル>
本実施形態に係るフレッシュモルタルは、セメント、水、細骨材、混和剤及び必要に応じて混和材を構成材料として含むものであって、未だ固まっていない状態のものをいう。セメント、水、細骨材、混和剤及び混和材としては、フレッシュコンクリートで言及したものを適宜用いることができる。
【0021】
本実施形態に係るフレッシュモルタルにおいて、水とセメントの質量比(W/C)が、0.30~0.60であることが好ましく、0.35~0.55であることがより好ましく、0.40~0.50であることがさらに好ましい。また細骨材とセメントの質量比(S/C)が、0.5~4.0であることが好ましく、0.6~3.5であることがより好ましく、0.8~3.0であることがさらに好ましい。
【0022】
<フレッシュセメントペースト>
本実施形態に係るフレッシュセメントペーストは、セメント、水、混和剤及び必要に応じて混和材を構成材料として含むものであって、未だ固まっていない状態のものをいう。セメント、水、混和剤及び混和材としては、フレッシュコンクリートで言及したものを適宜用いることができる。
【0023】
本実施形態に係るフレッシュセメントペーストにおいて、水とセメントの質量比(W/C)が、0.30~0.60であることが好ましく、0.35~0.55であることがより好ましく、0.40~0.50であることがさらに好ましい。
【0024】
[超音波の照射]
本実施形態において混合材料に対して超音波を照射する方法としては、超音波発生装置を用いる方法であれば、特に限定されない。超音波発生装置としては、超音波洗浄機、ホーン型超音波発生装置、超音波ホモジナイザー、超音波ミキサー等を用いることができる。
例えば、超音波洗浄機のように、ランジュバン型振動子(BL振動子)が容器の底面に設けられている装置を用いる場合には、水等の液体を媒介させて容器内の混合材料に超音波を間接的に照射できる。一方、BL振動子が円筒型のホーンに接続されている場合には、ホーンを容器内の混合材料に接触させることにより、混合材料に超音波を直接的に照射できる。
また上記超音波を間接的に照射する方法と超音波を直接的に照射する方法は組み合わせてもよく、また複数の超音波振動子を用いて複数の超音波を重ねて照射してもよい。
超音波照射に用いる超音波発生装置、超音波振動子、反応容器、これらの数量等は、混合材料の量や超音波発生装置の処理能力等を勘案して適宜選択できる。
【0025】
照射される超音波の周波数としては、10~200kHzが好ましく、15~100kHzがより好ましく、19~50kHzがさらに好ましい。超音波の周波数が上記数値範囲内であることにより、混合材料の流動性を向上させることができる。
【0026】
照射される超音波の振幅としては、5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、5~35μmがさらに好ましく、6~30μmが特に好ましい。超音波の振幅が上記数値範囲の下限値以上であることにより、混合材料の流動性をより短時間で向上させることができ、また上記数値範囲の上限値以下であることにより、混合材料において骨材が沈降・凝集するリスクをより低減することができる。
【0027】
超音波発生装置における超音波発振器の出力は、10~3000Wが好ましく、100~2000Wがより好ましい。また超音波の照射時間としては、0.1~30分が好ましく、0.1~10分がより好ましい。
【0028】
混合材料の水とセメントの質量比に応じて、適切な周波数及び振幅を有する超音波を照射することにより、混合材料において骨材の沈降・凝集を生じさせることなく流動性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態に係る混合材料の流動性を向上させる方法を使用することにより、ポンプ圧送性に優れたフレッシュコンクリート、フレッシュモルタル又はフレッシュセメントペーストを製造することができる。上記方法を使用することで、混合材料の流動性を向上させることができ、コンクリートポンプ車の配管やホースを通じて、ポンプにより打設現場へ圧送するのに好適なフレッシュコンクリート、フレッシュモルタル又はフレッシュセメントペーストを製造することができる。
【実施例0030】
[試験1.超音波の周波数及び振幅が試験用フレッシュセメントペーストの流動性に及ぼす影響]
試験1では、まず試験用フレッシュセメントペーストを作製した。次いで、照射する超音波の周波数として19.5kHz、27.5kHz及び39kHzの3種類を選択した。そして上記各周波数において、所定の振幅を有する超音波を各試験用フレッシュセメントに対して照射した。超音波照射前後の試験用フレッシュセメントペーストのフロー値を測定し、この値に基づき試験用フレッシュセメンペーストの流動性を評価した。また超音波照射前後の試験用フレッシュセメントペーストのフロー値の変化量から、超音波の周波数及び振幅が、試験用フレッシュセメントペーストの流動性に与える影響を評価した。
【0031】
<試験用フレッシュセメントペーストの作製>
水とセメント(普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製))の質量比が0.45となるようにフレッシュセメントペースト(以下「試験用フレッシュセメントペースト」という。)1Lを作製した。なお、試験用フレッシュセメントペーストは必要になるごとに新たに1Lずつ作製することを繰り返した。
【0032】
<超音波照射前のフロー値の測定>
超音波照射前の試験用フレッシュセメントペーストについて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」を参考にしてフロー値を測定した。
【0033】
<超音波照射>
200mLビーカー中に試験用フレッシュセメントペーストが210g(115mL)になるように秤量した。200mLビーカーを回転台に置き、ホーン型超音波発生装置(製品名:オートチェイサー(AUTO CHASER)、株式会社カイジョー製)のホーン(Φ30mm)の先端を、200mLビーカー内の試験用フレッシュセメントペーストに10mm程度挿入した状態で設置した。200mLビーカーを30回/分で回転させながら、ホーン型超音波発生装置を稼働させ、所定の周波数及び振幅で20秒間、超音波を照射した(最大出力300W)。
【0034】
超音波の周波数及び振幅は以下のように設定した。
まず超音波の周波数を19.5kHzに固定し、振幅を5~50μmの範囲で11個選択し、200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストに、所定の振幅を有する超音波を上記方法により照射した。超音波照射後、200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストを超音波照射後のフロー値の測定に供した。
次いで超音波の周波数を27.5kHzに固定し、振幅を5~44μmの範囲で9個選択し、上記と同様に200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストに、所定の振幅を有する超音波を上記方法により照射した。超音波照射後、200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストを超音波照射後のフロー値の測定に供した。
さらに超音波の周波数を39kHzに固定し、振幅を5~19.5μmの範囲で7個選択し、上記と同様に200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストに、所定の振幅を有する超音波を上記方法により照射した。超音波照射後、200mLビーカー中の試験用フレッシュセメントペーストを超音波照射後のフロー値の測定に供した。
【0035】
<超音波照射後のフロー値の測定>
超音波照射後の試験用フレッシュセメントペーストについて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」を参考にしてフロー値を測定した。
【0036】
<超音波の周波数及び振幅とフロー値の変化量との関係>
超音波を照射する前後の試験用フレッシュセメントペーストのフロー値から、その変化量(mm)を求めた。
図1に、所定の周波数及び振幅を有する超音波を照射する前後での試験用フレッシュセメントペーストのフロー値の変化量(mm)を縦軸として、また超音波の振幅(μm)を横軸としてプロットした図を示す。
【0037】
図1から、超音波の周波数を19.5kHz,27.5kHz、39kHzのいずれにした場合であっても、振幅が大きいほど、フロー値の変化量は大きくなり、試験用フレッシュセメントペーストの流動性が向上することが分かる。
【0038】
[試験2.超音波の周波数及び振幅が試験用フレッシュモルタルの流動性に及ぼす影響]
試験2では、まず試験用フレッシュモルタルを作製した。次いで、照射する超音波の周波数を39kHz及び27.5kHzの2種類を選択した。そして上記各周波数において、所定の振幅を有する超音波を各試験用フレッシュモルタルに照射した。超音波照射前後の試験用フレッシュモルタルのフロー値の変化量から、超音波の周波数及び振幅が、試験用フレッシュモルタルの流動性に与える影響を評価した。
【0039】
<試験用フレッシュモルタルの作製>
水とセメント(普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製))の質量比が0.45、かつ、細骨材(木更津産陸砂、表乾密度2.59g/cm3)とセメントの質量比が1.0となるようにフレッシュモルタル(以下「試験用フレッシュモルタル」という。)1Lを作製した。なお、試験用フレッシュセメントペーストは必要になるごとに新たに1Lずつ作製することを繰り返した。
【0040】
<超音波照射前のフロー値の測定>
超音波照射前の試験用フレッシュモルタルについて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」を参考にしてフロー値を測定した。
【0041】
<超音波照射>
200mLビーカー中に試験用フレッシュモルタルが245g(115mL)になるように秤量した。200mLビーカーを回転台に置き、ホーン型超音波発生装置(製品名:オートチェイサー(AUTO CHASER)、株式会社カイジョー製)のホーン(Φ30mm)の先端を、200mLビーカー内の試験用フレッシュモルタルに10mm程度挿入した状態で設置した。200mLビーカーを30回/分で回転させながら、ホーン型超音波発生装置を稼働させ、所定の周波数及び振幅で20秒間、超音波を照射した(最大出力300W)。
【0042】
超音波の周波数を39kHzに固定し、振幅を0~20μmの範囲で7個選択し、200mLビーカー中の試験用フレッシュモルタルに、所定の振幅を有する超音波を上記方法により照射した。超音波照射後、200mLビーカー中の試験用フレッシュモルタルを超音波照射後のフロー値の測定に供した。
次いで超音波の周波数を27.5kHzに固定し、振幅を20~40μの範囲で2個選択し、200mLビーカー中の試験用フレッシュモルタルに、所定の振幅を有する超音波を上記方法により照射した。超音波照射後、200mLビーカー中の試験用フレッシュモルタルを超音波照射後のフロー値の測定に供した。
【0043】
<超音波照射後のフロー値の測定>
超音波照射後の試験用フレッシュモルタルについて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」を参考にしてフロー値を測定した。
【0044】
<超音波の周波数及び振幅とフロー値の変化量との関係>
超音波を照射する前後の試験用フレッシュモルタルのフロー値から、その変化量(mm)を求めた。
図2に、所定の周波数及び振幅を有する超音波を照射する前後での試験用フレッシュモルタルのフロー値の変化量(mm)を縦軸として、また超音波の振幅(μm)を横軸としてプロットした図を示す。
【0045】
図2から、試験用フレッシュモルタルにおいては、超音波の振幅が5μm以上であれば、試験用フレッシュモルタルの流動性を向上させるものの、超音波の振幅が5μmより小さい場合には、試験用フレッシュモルタルの流動性が向上しないことが分かる。また、超音波の振幅が17μmの場合には、試験用フレッシュモルタルの流動性が向上したものの、超音波の振幅が7~13μmの場合に比べて流動性を向上させる程度は小さかった。
【0046】
[試験3:超音波の周波数及び振幅が試験用フレッシュモルタルの流動性に及ぼす影響]
試験3では、試験用フレッシュモルタルを作製し、これをバット状容器に秤量した。試験用フレッシュモルタルに、周波数39kHz及び振幅15μmの超音波を照射した場合と、周波数27.5kHz、振幅40μmの超音波を照射した場合とで、それぞれ試験用フレッシュモルタルの流動性に与える影響を目視で確認した。
【0047】
<試験用フレッシュモルタルの作製>
水とセメント(普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製))の質量比が0.45、かつ、細骨材(木更津産陸砂、表乾密度2.59g/cm3)とセメントの質量比が1.0となるようにフレッシュモルタル(以下「試験用フレッシュモルタル」という。)1Lを作製した。
【0048】
<超音波照射>
バット状容器(容量:0.33L、材質:アルミ製)に試験用フレッシュモルタルが115mmLになるように秤量した。バット状容器の下側中央にホーン型超音波発生装置(製品名:オートチェイサー(AUTO CHASER)、株式会社カイジョー製)のホーンの先端を接触させ、所定の周波数及び振幅を有する超音波を60秒間照射した(最大出力300W)。
【0049】
<超音波の周波数及び振幅と試験用フレッシュモルタルの流動性との関係>
図3Aは、試験用フレッシュモルタルに周波数39kHz、振幅15μmの超音波を60秒間照射した場合の試験用フレッシュモルタルの流動性を目視で確認したときの写真である。また
図3Bは、試験用フレッシュモルタルに周波数27.5kHz、振幅40μmの超音波を60秒間照射した場合の試験用フレッシュモルタルの流動性を目視で確認したときの写真である。
【0050】
図3A及びBから、振幅が15μmの超音波を照射した場合には、試験用フレッシュモルタルの流動性が向上するものの、振幅が40μmと大きな振幅を有する超音波を照射した場合には、骨材が沈降・凝集するというリスクが生じうるおそれがあることが分かる。