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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173570
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
H01L21/304 648G
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138810
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2023088809
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA22
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE35
5F043EE37
5F043GG10
5F157AA03
5F157AA12
5F157AA76
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157BB22
5F157BB23
5F157CE24
5F157CF22
5F157CF32
5F157CF34
(57)【要約】
【課題】基板の下方にノズルが配置される基板処理装置において、コンパクトな構造でありながら、ノズルの位置調整を高精度に行うことのできる機構を提供する。
【解決手段】この発明に係る基板処理装置は、円形の基板を水平姿勢に保持し、前記基板の中心を通る鉛直軸まわりに回転させる回転機構と、前記基板の下方に配置され、前記基板の下面周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出するノズル本体、前記基板の半径方向における前記吐出口の位置を変更可能に前記ノズル本体を支持する支持部、および前記支持部に対して前記ノズル本体を移動させることで前記吐出口の位置を調整する位置調整部を有するノズル機構と、を備える。前記支持部および前記位置調整部は、前記鉛直軸を中心として前記吐出口を通過する仮想円弧の内側に配置されている。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基板を水平姿勢に保持し、前記基板の中心を通る鉛直軸まわりに回転させる回転機構と、
前記基板の下方に配置され、前記基板の下面周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出するノズル本体、前記基板の半径方向における前記吐出口の位置を変更可能に前記ノズル本体を支持する支持部、および前記支持部に対して前記ノズル本体を移動させることで前記吐出口の位置を調整する位置調整部を有するノズル機構と、を備え、
前記支持部および前記位置調整部は、前記鉛直軸を中心として前記吐出口を通過する仮想円弧の内側に配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記支持部は、前記ノズル本体を前記半径方向に移動自在に支持し、
前記位置調整部は、前記半径方向に沿った前記ノズル本体の移動により前記吐出口の位置を調整する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記ノズル機構は、前記支持部に対して前記ノズル本体を前記半径方向に付勢する付勢部を有し、
前記位置調整部は、前記付勢部の付勢力に抗して前記ノズル本体の前記半径方向における静止位置を規制するとともに、該静止位置を前記半径方向に変更する、基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記位置調整部では、
前記ノズル本体および前記支持部のいずれか一方に、前記半径方向に沿って延設された雄ねじが設けられ、他方に前記雄ねじが挿通される貫通孔が設けられ、
前記雄ねじに螺合するナットがさらに設けられる、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記ノズル本体は、前記半径方向において断面形状が一定である柱状の中間部と、前記半径方向において前記中間部の一方端側に接続して設けられ前記処理液を吐出する吐出口が形成されたノズルヘッド部と、前記半径方向において前記中間部の他方端側に接続して設けられ前記雄ねじが形成された雄ねじ部とを有し、
前記支持部には、前記中間部の断面形状に適合させた形状の溝部または貫通孔が前記支持部側の係合部位として設けられ、前記中間部が前記ノズル本体側の係合部位であり、前記支持部側の係合部位と前記ノズル本体側の係合部位とが摺動自在に互いに係合している、基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記中間部の断面形状が非円形である、基板処理装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記ナットの外周部に、等角度間隔の目盛が形成されている、基板処理装置。
【請求項8】
請求項4ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記ノズル本体、前記支持部および前記ナットが樹脂製である、基板処理装置。
【請求項9】
請求項3ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
回転する前記基板の外周を囲みながら前記鉛直軸まわりに回転しながら、前記基板から飛散する前記処理液の液滴を捕集する回転カップ部をさらに備え、
前記支持部は、前記基板および前記回転カップ部の回転に追随しない固定部材に取り付けられており、しかも、前記固定部材に対する前記支持部の取り付け位置が変更可能である、基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
一の前記支持部に複数の前記ノズル本体が支持されている、基板処理装置。
【請求項11】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記基板の半径方向または前記半径方向に対して水平面内で傾斜した方向をノズル移動方向と定義したとき、
前記位置調整部は、前記ノズル移動方向に前記ノズル本体を駆動することで前記半径方向において前記吐出口の位置を調整するノズル移動機構を有する、基板処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理装置であって、
前記ノズル移動機構は、
前記支持部に取り付けられたアクチュエータにより前記ノズル本体を前記ノズル移動方向に駆動するノズル駆動部と、
一方端部が前記ノズル本体に連結されるとともに他方端部が前記支持部において前記ノズル移動方向に延設された貫通孔に延設され、前記ノズル本体と一体的に前記ノズル移動方向に移動するガイドシャフトと、
前記貫通孔において前記ノズル移動方向に互いに離間しながら、前記ガイドシャフトの外周面と前記貫通孔の内周面との間に嵌入されて前記ガイドシャフトと前記貫通孔との間のリング状空間をシールする一対のシールリングと、
を有する、基板処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理装置であって、
前記各シールリングは、前記ガイドシャフトの外周面と全周にわたって摺接するリング状摺接部位と、前記貫通孔の内周面と全周にわたって密着するリング状密着部位とを有する、基板処理装置。
【請求項14】
請求項12に記載の基板処理装置であって、
前記ノズル移動機構は、前記ノズル移動方向に移動自在な可動支持部をさらに有し、
前記ノズル本体および前記ガイドシャフトの一方端部は前記可動支持部を介して連結され、
前記ノズル駆動部は、前記アクチュエータにより前記可動支持部を前記ノズル移動方向に駆動することで、前記可動支持部、前記ノズル本体および前記ガイドシャフトを一体的に前記ノズル移動方向に移動させる、基板処理装置。
【請求項15】
請求項11に記載の基板処理装置であって、
一の前記支持部に複数の前記ノズル本体が支持され、
前記ノズル本体毎に、前記ノズル移動機構が設けられる、基板処理装置。
【請求項16】
請求項11に記載の基板処理装置であって、
一の前記支持部に複数の前記ノズル本体が支持され、
前記ノズル移動機構は、前記複数のノズル本体を一体的に駆動する、基板処理装置。
【請求項17】
請求項12ないし14のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
回転する前記基板の外周を囲みながら前記鉛直軸まわりに回転しながら、前記基板から飛散する前記処理液の液滴を捕集する回転カップ部をさらに備え、
前記支持部は、前記アクチュエータを保持しながら前記基板および前記回転カップ部の回転に追随しない固定部材に取り付けられている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャンバの内部空間で基板の周縁部に処理液を供給して上記周縁部を処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなど円形または略円形の基板に対する処理として、基板の少なくとも一方主面に形成された薄膜のうち、基板周縁部の薄膜だけを除去するものがある。例えば基板を回転させながらその周縁部にエッチング液を供給して、エッチング液の供給位置よりも外側の薄膜だけを除去する技術が知られている。このようにして薄膜を除去する処理については、ベベルエッチング処理と称されることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、処理チャンバ内に収容された基板処理装置において、水平姿勢の基板の下面周縁部をエッチング処理するために、基板の下方に下側周縁ノズルが設けられている。この下側周縁ノズルでは、ノズル支持部材に複数のノズルが取り付けられており、これらのノズルの各々は、基板の下面周縁部に向けて、薬液やリンス液等の処理液を上向きに吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-052835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような処理においては、薄膜のうち除去される領域の幅(エッチング幅)を予め定められた目標値に合わせる必要がある。このため、基板処理装置では、組み立て後や部品交換後の使用開始前に、所定のエッチング幅が得られるように調整作業を行う必要がある。また処理において必要とされるエッチング幅は必ずしも一定ではなく、目的に応じて変更されることがある。上記従来技術では、ノズル支持部材に対するノズルの取り付け構造については詳しく開示されておらず、どのようにして調整を行うかについては不明である。
【0006】
また、特に近年では、デバイスの微細化や歩留まりの向上等を目的として、エッチング幅の調整において求められる精度が高くなっており、例えば数十ミクロンオーダーでの調整が必要となってきている。このような調整を可能とするために適用可能な機構に関しては、これまでのところ確立されるには至っていない。
【0007】
また、この種の基板処理システムでは、フットプリント向上のため、基板処理ユニットが収容された処理チャンバを多段積みすることが広く行われている。また、各処理チャンバでのガスの使用量を抑制して環境負荷の低減を図るため、個々の処理チャンバのサイズ、例えば鉛直上方から見た平面サイズや高さを抑えることが求められている。このため、上記したノズルおよびその位置調整のための機構についても、できるだけコンパクトなものであることが望ましい。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の下方にノズルが配置される基板処理装置において、環境負荷の低減に貢献可能な構造でありながら、ノズルの位置調整を高精度に行うことのできる機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様は、円形の基板を水平姿勢に保持し、基板の中心を通る鉛直軸まわりに回転させる回転機構と、基板の下方に配置され、基板の下面周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出するノズル本体、基板の半径方向における吐出口の位置を変更可能にノズル本体を支持する支持部、および支持部に対してノズル本体を移動させることで吐出口の位置を調整する位置調整部を有するノズル機構と、を備え、支持部および位置調整部は、鉛直軸を中心として吐出口を通過する仮想円弧の内側に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、吐出口の位置が基板の半径方向において変更可能となるように、ノズル本体が支持部に支持されている。そして、位置調整部が支持部に対してノズル本体を移動させる。このノズル本体の移動により、吐出口の位置が調整される。したがって、当該吐出口から吐出された処理液の基板への着液位置が変化し、エッチング幅が調整される。しかも、ノズル本体および位置調整部は、鉛直軸を中心として吐出口を通過する仮想円弧の内側に配置され、鉛直上方からの平面視において、常時、上記半径方向において吐出口の内側に存在している。その結果、コンパクトな構造で、基板周縁部に対するエッチング幅の調整についても高精度に行うことが可能となる。このことは、基板処理装置内でのガス使用量の削減に寄与し、環境負荷の低減を可能とする。
【0011】
また、基板の下面周縁部に供給された処理液は半径方向に飛散する。このとき、ノズル本体および位置調整部の全部または一部が半径方向において吐出口の外側に存在すると、下面周縁部から飛散してきた処理液を散乱させ、基板に戻す可能性がある。しかしながら、上記構造を有する基板処理装置では、ノズル本体および位置調整部は常時、吐出口の内側に位置しているため、上記問題を確実に防止することができる。
【0012】
なお、上記発明において「円形の基板」とは、基板の主面が平面視において厳密な意味で円形を有しているものの他、包絡外形が円形であるものの外周部の一部にオリエンテーションフラットや切欠きのような円周とは異なる部位が存在する、「略円形の基板」を含む概念であるものとする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、基板の下方にノズルが配置される基板処理装置において、コンパクトな構造でありながら、ノズルの位置調整を高精度に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の主要部の構成を示す図である。
図3】本発明に係る基板処理装置の主要部の構成を示す図である。
図4】上カップが上昇した状態を示す図である。
図5】処理機構の構造および配置を示す図である。
図6】一の処理液吐出ノズルの構造を示す分解斜視図である
図7】処理液吐出ノズルの断面構造を示す図である。
図8】処理機構におけるノズル位置調整作用を説明する図である。
図9】鉛直上方から見た、吐出口、ベース部材、雄ねじ部、コイルばね、およびアジャストナットの位置関係を示す図である。
図10】基板観察機構の構成を示す図である。
図11】微調整モードでのノズル位置調整を模式的に示す図である。
図12】ノズルブロックの変形例を示す図である。
図13】本発明に係る基板処理装置の他の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置に設けられた処理機構の構造および配置を示す図である。
図14A】処理液吐出ノズルの全部が後退したときの処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の構造を示す斜視図である。
図14B】処理液吐出ノズルの全部が後退したときの処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の断面構造を示す図である。
図15A】一の処理液吐出ノズルのみが先進したときの処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の構造を示す斜視図である。
図15B】一の処理液吐出ノズルのみが先進したときの処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の断面構造を示す図である。
図16】固定支持部に対する一対のグライドリングの装着方法を示す分解組み立て図である。
図17】グライドリングの構成を示す図である。
図18】自動調整モードでのノズル位置調整を模式的に示す図である。
図19】ノズル移動部の構成および動作を模式的に示す図である。
図20】本発明に係る基板処理装置の別の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置に設けられた処理機構の構造および配置を示す図である。
図21】本発明に係る基板処理装置のさらに別の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置の主要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、基板Sを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。なお、ここに示す基板処理システム100の主たる構成は、本願出願人の出願に係る特願2022-134816号に記載されたものと類似している。
【0016】
基板処理システム100は、各々が基板Sに対する処理主体となる処理ユニット(基板処理装置)1を複数備えている。図1では、4基の処理ユニット1が水平方向に配置された状態が示されているが、各処理ユニット1は上下方向にも多段に積み重ねられる。例えば処理ユニット1が6段にわたり積層配置されるとき、基板処理システム100は合計24基の処理ユニット1を備えることとなる。
【0017】
基板処理システム100に装備される複数の処理ユニット1の各々において、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうち下方に向けられた面を「下面」と称し、符号Sbを付す。また、上方に向けられた面を「上面」と称し、符号Stを付す。
【0018】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0019】
後述するように、本実施形態の処理ユニット1は、一方主面に金属または金属化合物の薄膜が形成された基板Sを受け入れ、基板Sに形成された薄膜のうち周縁部のみをエッチング処理により除去する、という処理を実行する。このようなエッチング処理は、「ベベルエッチング処理」または単に「ベベル処理」と呼ばれることがある。なお、基板処理システム100が備える複数の処理ユニット1の全てがこのようなベベルエッチング処理を実行する態様であってもよく、また互いに異なる処理を実行する複数種類の処理ユニットが組み合わされてもよい。
【0020】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Sに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0021】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0022】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Sを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置される。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Sの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Sを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0023】
図2および図3は本発明に係る基板処理装置の主要部の構成を示す図である。より具体的には、図2は基板処理装置の一態様である処理ユニット1の内部構造を示す側面図であり、図3はその平面図である。図2図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示される場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1は、チャンバ11内の内部空間12に基板処理部SPが配置された構造を有する。
【0024】
チャンバ11の底板11aの上面に、ベース支持部材16、16が互いに離間しながらボルトなどの締結部品により固定される。つまり、底板11aからベース支持部材16が立設される。これらベース支持部材16、16の上端部に、ベース部材17がボルトなどの締結部品により固定される。このベース部材17は、底板11aよりも小さな平面サイズを有するとともに、底板11aよりも厚肉で高い剛性を有する金属プレートで構成される。図2に示すように、ベース部材17は、ベース支持部材16、16により底板11aから鉛直上方に持ち上げられている。つまり、チャンバ11の内部空間12の底部において、いわゆる高床構造が形成されている。このベース部材17の上面に、基板Sに対して基板処理を施す基板処理部SPが設置される。この基板処理部SPを構成する各部は装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。
【0025】
図2に示すように、チャンバ11の天井面11fには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、処理ユニット1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の内部空間12に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井面11fに設けられた開口11f1を介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の内部空間12に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井面11fの直下に設けられている。
【0026】
図3に示すように、処理ユニット1では、4枚の側壁11b~11eのうち基板搬送ロボット111と対向する側壁11bに搬送用開口11b1が設けられており、内部空間12とチャンバ11の外部とが連通される。このため、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が搬送用開口11b1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。つまり、搬送用開口11b1を介して、内部空間12に対する基板Sの搬入出が可能となっている。また、この搬送用開口11b1を開閉するためのシャッター15が側壁11bに取り付けられている。
【0027】
シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、処理ユニット1では、未処理の基板Sをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Sが基板処理部SPに搬入される。当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の内部空間12内で基板Sに対する処理が基板処理部SPにより実行される。また、処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Sを基板処理部SPから搬出する。
【0028】
図3に示すように、側壁11dは、ベース部材17に設置された基板処理部SP(図2)を挟んで側壁11bの反対側に位置している。この側壁11dには、メンテナンス用開口11d1が設けられている。メンテナンス時には、同図に示すように、メンテナンス用開口11d1は開放される。このため、オペレータは装置の外部からメンテナンス用開口11d1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。一方、基板処理時には、蓋部材19がメンテナンス用開口11d1を塞ぐように取り付けられる。このように、本実施形態では、蓋部材19は側壁11dに対して着脱自在となっている。
【0029】
また、側壁11eの外側面には、基板処理部SPに対して加熱した不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を供給するための加熱ガス供給部47が取り付けられている。この加熱ガス供給部47は、ヒータ471を内蔵している。
【0030】
このように、チャンバ11の外壁側には、シャッター15、蓋部材19および加熱ガス供給部47が配置される。これに対し、チャンバ11の内側、つまり内部空間12には、高床構造のベース部材17の上面に基板処理部SPが設置される。以下、ベース部材17上に配置された基板処理部SPの構成について説明する。
【0031】
以下では、装置各部の配置関係や動作などを明確にするために、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。図3における座標系において、紙面上下方向に相当する水平方向を「X方向」とし、それと直交する水平方向を「Y方向」としている。さらに詳しくは、チャンバ11の内部空間12から搬送用開口11b1およびメンテナンス用開口11d1に向かう方向をそれぞれ「+X方向」および「-X方向」と称し、チャンバ11の内部空間12から側壁11c、11eに向かう方向をそれぞれ「-Y方向」および「+Y方向」と称し、鉛直上方および鉛直下方に向かう方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0032】
図2および図3に示すように、基板処理部SPは、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これらの機構は、ベース部材17上に設けられている。つまり、チャンバ11よりも高い剛性を有するベース部材17を基準とし、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9が相互に予め決められた位置関係で配置される。
【0033】
保持回転機構2は、基板Sの皮膜形成面を下方に向けた状態で基板Sを略水平姿勢に保持する基板保持部2Aと、基板Sを保持した基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の一部を同期して回転させる回転機構2Bと、を備えている。このため、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転機構2Bが作動すると、基板Sおよび飛散防止機構3の回転カップ部31は、鉛直方向Zと平行に延びる回転軸AXまわりに回転される。
【0034】
基板保持部2Aは、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結される。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向Zに延設される。また、回転軸部22には、回転機構2Bが接続される。
【0035】
回転機構2Bは、基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を回転させるための回転駆動力を発生するモータ23と、当該回転駆動力を伝達するための動力伝達部24とを有している。モータ23は、回転駆動力の発生に伴い回転する回転シャフト231を有し、回転シャフト231を鉛直下方に延設させた姿勢でベース部材17にとりつけられている。
【0036】
ベース部材17から下方に突出した回転シャフト231の先端部には、第1プーリ241が取り付けられている。また、基板保持部2Aの回転軸部22の下方端部には、第2プーリ242が取り付けられている。より詳しくは、回転軸部22の下方端部は、ベース部材17に設けられた貫通孔に挿通され、ベース部材17の下方に突出している。この突出部分に第2プーリ242が設けられている。そして、第1プーリ241および第2プーリ242の間に無端ベルト243が架け渡される。このように、本実施形態では、第1プーリ241、第2プーリ242および無端ベルト243により、動力伝達部24が構成される。
【0037】
このような構成を有する動力伝達部24を用いた場合、長尺のタイミングベルトを無端ベルト243として選定することができ、無端ベルト243の長寿命化を図ることができる。また、図3に示すように、この実施形態では、モータ23がチャンバ11のうちメンテナンス用開口11d1に臨む位置に配置されている。このため、蓋部材19をチャンバ11から取り外してメンテナンス用開口11d1を開放すると、メンテナンス用開口11d1を介して動力伝達部24およびモータ23が外部に露出する。その結果、オペレータによるメンテナンス作業が容易となり、メンテナンス作業の効率を向上させることができる。
【0038】
しかも、以下に説明する他の機構はベース部材17の上方に配置されるのに対し、動力伝達部24はベース部材17の下方に配置される。このような配置を採用することで、他の機構との干渉を考慮することなく、オペレータによるメンテナンス作業をさらに効率的に行うことができる。
【0039】
スピンチャック21の上面には吸着孔211が設けられており、吸着孔211の内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続される。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Sがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21の吸着孔211に付与すると、スピンチャック21は基板Sを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧を吸着孔211に付与すると、基板Sはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Sは水平移動可能となる。
【0040】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続される。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユーティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からのガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Sの下面Sb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。
【0041】
回転機構2Bは、基板Sと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円板部材27aと、円板部材27aの周縁部に内蔵されるスピンチャック側磁石27bと、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵されるカップ側磁石27cとを有している。円板部材27aは回転軸部22と同軸に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。
【0042】
円板部材27aの外周縁部では、複数のスピンチャック側磁石27bが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。本実施形態では、互いに隣り合う2つのスピンチャック側磁石27bの一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0043】
これらのスピンチャック側磁石27bと同様に、複数のカップ側磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。これらのカップ側磁石27cは下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円板部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円板部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円板部材27aの外周面から所定間隔だけ離間対向させた状態で、下カップ32が回転軸部22および円板部材27aと同心状に配置される。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンおよび連結用マグネット(図示省略)が設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0044】
下カップ32は、ベース部材17の上面上において、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持される。この下カップ32の内周縁部において、上記したようにカップ側磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。互いに隣り合う2つのカップ側磁石27cの配置についてもスピンチャック側磁石27bと同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0045】
このように構成された動力伝達部27では、モータ23により回転軸部22とともに円板部材27aが回転すると、スピンチャック側磁石27bとカップ側磁石27cとの間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円板部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円板部材27aと同じ方向に回転する。このように、動力伝達部27は、スピンチャック側磁石27bとカップ側磁石27cとがいわゆるマグネットカップリングを構成しており、スピンチャック21に対する回転駆動力がマグネットカップリングを介して回転カップ部31に伝達される。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。スピンチャック21の回転により基板Sが回転するとき、回転カップ部31は基板Sと同一方向に同期して回転する。
【0046】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Sの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Sの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0047】
下カップ32は円環形状を有している。図2に示すように、その外径は基板Sの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Sから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置される。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピン(図示省略)と平板状の下マグネット(図示省略)とが交互に取り付けられている。
【0048】
一方、上カップ33は、図2に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径は下カップ32の外径と略同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Sを取り囲む面は、傾斜面334となっている。したがって、傾斜部位333は回転する基板Sの外周を囲んで基板Sから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間として機能する。
【0049】
傾斜部位333は、下円環部位331から基板Sの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、傾斜部位333に捕集された液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに下カップ32との隙間を介して回転カップ部31の外側に排出される。
【0050】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられる。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、上カップ33と下カップ32との隙間を外側から取り囲むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間として機能している。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに液受け部位341に案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0051】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画される。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置される。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から略水平方向に延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。この排気部位342は排気部38と接続される。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気部38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。
【0052】
上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持される基板Sの上面Stの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Sよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Sの上面Stのうち周縁部Ssを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持される。
【0053】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成される。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、図2に示すように、配管46を介して加熱ガス供給部47と接続される。加熱ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスをヒータ471により加熱して制御ユニット10からの加熱ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで基板処理部SPに供給する。
【0054】
ここで、ヒータ471をチャンバ11の内部空間12に配置すると、ヒータ471から放射される熱が基板処理部SP、特に後述するように処理機構5や基板観察機構9に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態では、ヒータ471を有する加熱ガス供給部47が、図3に示すように、チャンバ11の外側に配置される。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0055】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。例えば、円板部42がスピンチャック21に保持された基板Sに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Sの上面Stとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間の中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Sの周囲の雰囲気が基板Sの上面Stに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Sと円板部42とで挟まれた空間に巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Stが全体的に加熱され、基板Sの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Sが反るのを抑制することができる。
【0056】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、水平方向に延びる梁部材49に固定される。この梁部材49は、ベース部材17の上面に取り付けられた昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Sの搬出入を行うことが可能となる。
【0057】
雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きい。雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板S、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置される、より詳しくは、図2に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井面11fの開口11f1を下方から覆うように、パンチングプレート14の直下位置に固定配置される。このため、チャンバ11内に導入された清浄空気のダウンフローは、上密閉カップ部材62の内部を通過するものと、上密閉カップ部材62の外側を通過するものとに分けられる。
【0058】
また、上密閉カップ部材62の下端部は、内側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部621を有している。このフランジ部621の上面にOリング63が取り付けられている。上密閉カップ部材62の内側において、下密閉カップ部材61が鉛直方向に移動自在に配置される。
【0059】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、下密閉カップ部材61のフランジ部611がOリング63を介して上密閉カップ部材62のフランジ部621で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は下限位置に位置決めされる。この下限位置では、鉛直方向において上密閉カップ部材62と下密閉カップ部材61とが繋がり、上密閉カップ部材62の内部に導入されたダウンフローがスピンチャック21に保持された基板Sに向けて案内される。
【0060】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に拡径された円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、下密閉カップ部材61のフランジ部612がOリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成される。この密閉空間12a内において、基板Sに対するベベル処理が実行可能となっている。
【0061】
つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間12aが密閉空間12aの外側空間12bから分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間12aから外側空間12bに漏れるのを確実に防止することができる。よって、外側空間12bに配置する部品の選定・設計の自由度が高くなる。
【0062】
下密閉カップ部材61は鉛直上方にも移動可能に構成される。また、図2および図3に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定される。つまり、図4に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる2箇所で梁部材49の一方端部および他方端部とそれぞれ接続される。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部および他方端部を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0063】
この下密閉カップ部材61の内周面では、図2および図3に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設される。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設される。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0064】
図4は上カップが上昇した状態を示す図である。より具体的には、図4は昇降機構7の作動により、下密閉カップ部材61が上カップ33を上昇させた状態を示す図であり、その意味において、上カップ33が下降した状態を示す図2と対をなすものである。なお、図2図4とでは一部の位置関係が異なるのみで各構成自体は基本的に共通である。そこで図4では、図2に示される構成のうちここでの説明に直接関係しない一部について記載を省略している。
【0065】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4とともに上昇し始めた後で、図4に示すように、下密閉カップ部材61の突起部613が係合することで、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33および上面保護加熱機構4がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置への移動によって、基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間が形成される。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Sのローディングおよびスピンチャック21からの基板Sのアンローディングが実行可能となる。このように、本実施形態では、昇降機構7による下密閉カップ部材61の最小限の上昇によってスピンチャック21に対する基板Sのアクセスを行うことが可能となっている。
【0066】
昇降機構7は2つの昇降駆動部、すなわち第1昇降駆動部71、第2昇降駆動部72を有している。昇降駆動部71では、第1昇降モータ(図示省略)がベース部材17に取り付けられている。第1昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータに対し昇降部712が連結される。昇降部712は下密閉カップ部材61の側面を介して梁部材49の一方端部に結合され、第1昇降モータから上記回転力を受けると、第1昇降モータの回転量に応じて梁部材49の一方端部を鉛直方向Zに昇降させる。
【0067】
昇降駆動部72では、第2昇降モータ(図示省略)がベース部材17に取り付けられている。第2昇降モータに対し昇降部722が連結される。第2昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、下密閉カップ部材61の側面を介して梁部材49の他方端部に結合され、第2昇降モータの回転量に応じて梁部材49の他方端部を鉛直方向に昇降させる。
【0068】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる2箇所を同期させつつ鉛直方向に移動させる。したがって、上面保護加熱機構4および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0069】
次にセンタリング機構8について、基本的に公知であるため簡単に説明する。センタリング機構8は、ポンプ26による吸引を停止している間(つまりスピンチャック21の上面上で基板Sが水平移動可能となっている間)に、センタリング処理を実行する。このセンタリング処理により基板Sの偏心が解消され、基板Sの中心が回転軸AXと一致する。センタリング機構8は、図3に示すように、スピンチャック21の回転軸AXを挟んで互いに反対側に配置されたシングル当接部81およびマルチ当接部82と、シングル当接部81およびマルチ当接部82を当接移動方向に移動させるセンタリング駆動部83とを有している。
【0070】
センタリング駆動部83がシングル当接部81およびマルチ当接部82を連動させつつスピンチャック21上の基板Sに対して接近方向に移動し、シングル当接部81が有する1つの当接部位と、マルチ当接部82が有する2つの当接部位とがいずれも基板Sの端面に当接した状態となるように、基板Sの位置を調整する。このようにして、スピンチャック21上での基板Sの偏心が解消されセンタリングが実現される。
【0071】
次に処理機構5について説明する。図3に示すように、処理機構5は、基板Sの下面Sb側に配置されるノズルブロック50と、ノズルブロック50に処理液を供給する処理液供給部59とを有している。ノズルブロック50はそれぞれが処理液を吐出する3組の処理液吐出ノズル51A,51B,51C(図5)と、これらを支持する支持機構54とを有している。後述するように、支持機構54は、各処理液吐出ノズル51A~51Cの基板Sに対する位置を、基板Sの周方向において調整可能に構成されている。
【0072】
3組の処理液吐出ノズル51A~51Cに対して処理液供給部59が接続される。処理液供給部59はSC1液、DHF(希フッ酸)などの薬液や機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3組の処理液吐出ノズル51A~51CからSC1液、DHFおよび機能水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0073】
図2に示すように、本実施形態では、基板Sの下面Sbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、ノズルブロック50を支持するノズル支持部57が、スピンチャック21に保持された基板Sの下方に設けられている。ノズル支持部57は、鉛直方向に延設された薄肉の円筒部位571と、円筒部位571の上端部において径方向外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部位572とを有している。円筒部位571は、円板部材27aと下カップ32との間に形成されたエアギャップに遊挿自在な形状を有している。そして、図2に示すように、円筒部位571がエアギャップに遊挿されるとともにフランジ部位572がスピンチャック21に保持された基板Sと下カップ32との間に位置するように、ノズル支持部57は固定配置される。フランジ部位572の上面周縁部の一部に対し、ノズルブロック50が取り付けられている。
【0074】
図5は処理機構の構造および配置を示す図である。また、図6は一の処理液吐出ノズルの構造を示す分解斜視図であり、図7はその断面構造を示す図である。なお、以下では、スピンチャック21の回転軸AXから水平かつ外向きに向かう方向を、動径方向Rと称することがある。この動径方向Rは、スピンチャック21により保持される基板Sの半径方向、特に基板Sの中心から外向きの方向に相当する。
【0075】
図5に示すように、ノズル支持部57の上部に設けられた略円環状のフランジ部位572に、ノズルブロック50が取り付けられている。ノズルブロック50の支持機構54は、ベース部材541と押さえ部材542とを有している。ベース部材541は、3組の処理液吐出ノズル51A~51Cを一括して支持する。
【0076】
ベース部材541の両端部には長穴541a,541bが設けられており、ここに挿通されるねじ等の固結部材551,551がフランジ部位572に設けられたねじ穴に螺合することで、ベース部材541がフランジ部位572に固定される。したがって、フランジ部位572に対するベース部材541の取り付け位置が所定の範囲内で変更可能である。これにより、3本の処理液吐出ノズル51A~51Cの位置が一体として調整可能となっている。
【0077】
各処理液吐出ノズル51A~51Cは同一形状を有している。ここでは1つの処理液吐出ノズル51Aを例に取り、図6および図7を参照してその構造を説明する。なお、以下では各処理液吐出ノズル51A~51Cを区別する必要がないとき、これらを単に「処理液吐出ノズル51」ということがある。図7(a)は処理液吐出ノズル51の縦断面図であり、同図および図6に示すように、処理液吐出ノズル51の主要部であるノズル本体510は、動径方向Rに沿って細長い形状を有しており、(-R)方向に沿って、ノズルヘッド部51a、大径シャフト部51b、小径シャフト部51cおよび雄ねじ部51dをこの順番で有している。
【0078】
処理液吐出ノズル51の(+R)側に設けられたノズルヘッド部51aの先端には、処理液を吐出する吐出口511が設けられている。吐出口511は、処理液供給部59から内部のマニホールド部512を介して供給される処理液を仰角45度で斜め上向きに、かつ回転軸AXからみて外向きに吐出する。処理液は、基板Sの下面周縁部Ssに向けて吐出される。
【0079】
基板Sの下面Sbに金属薄膜または金属化合物薄膜が形成されており、吐出される処理液が当該被膜に対し溶解性を有するものである場合、基板下面Sbのうち処理液が着役した領域の薄膜がエッチング除去される。基板Sが回転している場合、遠心力の作用より、処理液は着液位置よりも外側に広がるため、結果として、着液位置よりも外側の薄膜が除去されることになる。
【0080】
また、ノズルヘッド部51aの下部には、(+R)側端面が平坦な反射面となった反射部材513が取り付けられている。反射部材513は、例えばレーザー変位計によりノズル位置を計測する際に用いられるものであり、レーザー変位計から出射されるレーザー光を反射することで、精度よく安定した位置計測を可能とするものである。
【0081】
大径シャフト部51bはベース部材541に設けられた溝に係合する。図7(b)または図7(c)に示すように、大径シャフト部51bの横断面は非円形の一定形状であり、ベース部材541にはこの断面形状に応じた溝が形成されている。したがって、処理液吐出ノズル51はベース部材541に対してある程度の範囲で動径方向Rに沿って移動可能であるが、図7(b)および図7(c)に太線矢印で示す方向の回転は抑止される。これにより、処理液の吐出方向が変動するのが防止される。
【0082】
なお、大径シャフト部51bの断面形状はこれらに限定されず、非円形の各種形状とすることができる。単にベース部の溝内で回転しないだけでなく、ガタが生じない形状であることが好ましい。図7(b)および図7(c)に示す形状は、押さえ部材542が取り付けられたときに大径シャフト部51bの紙面横方向の変位を規制する作用を有する点で好ましい形状の例である。
【0083】
大径シャフト部51bの上部は押さえ部材542によって押さえられ、押さえ部材542はねじ等の固結部材552によりベース部材541に固定される。これにより、大径シャフト部51bが上向きに変位してベース部材541から脱落することが抑制されている。押さえ部材542にはさらに、固定ねじ553が取り付けられており、位置調整後に固定ねじ553が締め付けられると、適宜のクッション部材554を介して固定ねじ553が大径シャフト部51bを押圧する。これにより、処理液吐出ノズル51のR方向への変位が抑止される。
【0084】
大径シャフト部51bの(-R)側には小径シャフト部51cが続いており、小径シャフト部51cの(-R)側には雄ねじ部51dが続いている。小径シャフト部51cにはコイルばね514が設けられ、雄ねじ部51dはベース部材541の(-R)側端部に設けられた貫通孔を介してさらに(-R)まで延びている。雄ねじ部51dにはアジャストナット515が螺合されている。
【0085】
したがって、処理液吐出ノズル51は、コイルばね514により(+R)方向へ付勢されつつ、その付勢力による変位はアジャストナット515によって規制された状態となっている。このため、オペレータがアジャストナット515をいずれかの方向に回転させると、その回転に応じて吐出口511の位置は(+R)方向または(-R)方向に変位することになる。これにより、基板Sの径方向における吐出口511の位置調整を行うことができる。
【0086】
アジャストナット515がコイルばね514の付勢力に抗して変位を抑止することでノズル位置を規定する構成としているため、バックラッシやガタの影響を受けにくいノズル位置調整を実現することが可能である。
【0087】
処理液吐出ノズル51(51A~51C)および支持機構54は、耐薬品性に優れた材料、例えば樹脂材料により構成される。例えばポリエチレン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;polytetrafluoroethylene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)樹脂等を、目的に応じて適宜選択し使用することができる。このうち、特にコイルばね514については、適度の弾性を必要とするため、そのような材料としてはPEEK樹脂を好適に適用することが可能である。
【0088】
図8は処理機構におけるノズル位置調整作用を説明する図である。図8上図に矢印Aで示すように、雄ねじ部51dに対してアジャストナット515を緩める(右ねじの場合)方向に回転させたとき、ノズル本体510に対して相対的にアジャストナット515は(-R)方向、つまり図において右方向に移動する。実際には、コイルばね514による付勢力により処理液吐出ノズル51全体がベース部材541に対して(+R)方向に付勢されている。このため、アジャストナット515の位置は変わらず、ノズル本体510が(+R)方向に変位する。
【0089】
これにより、破線矢印で示されるように吐出口511は図において左、つまり(+R)方向に変位する。その結果、吐出口511から吐出される処理液の基板下面Sbへの着液位置も(+R)方向、つまり基板Sの外側に向けて移動する。したがってエッチング幅は小さくなる。
【0090】
一方、図8下図に矢印Bで示すように、雄ねじ部51dに対してアジャストナット515を締める(右ねじの場合)方向に回転させたとき、ノズル本体510に対して相対的にアジャストナット515は相対的に(+R)方向、つまり図において左方向に移動する。ここでもコイルばね514の作用により、実際にはアジャストナット515の位置は変わらずノズル本体510が(-R)方向に変位する。
【0091】
これにより、破線矢印で示されるように吐出口511は図において右、つまり(-R)方向に変位する。その結果、吐出口511から吐出される処理液の基板下面Sbへの着液位置も(-R)方向、つまり基板Sの中心側に向けて移動する。したがってエッチング幅は大きくなる。このようにして、ノズル位置をR方向に移動させてエッチング幅を増減させることができる。
【0092】
なお、図6に示すように、アジャストナット515の外周面には周期的な凹凸が設けられている。具体的には、アジャストナット515の外周面では、10箇所の凸部515aと10箇所の凹部515bとが交互に、かつ等角度間隔で配置されている。このような凹凸は、ノズル位置調整時にノズル本体510の変位量を定量的に表す目盛としての機能を有している。
【0093】
ノズル本体510のR方向への変位量は、アジャストナット515の回転角度と雄ねじ部51dに設けられたねじのピッチとの関係によって決まる。例えば雄ねじ部51dのピッチが0.5mmであるとすれば、アジャストナット515が1回転するごとにノズル本体510は0.5mmずつ変位する。したがって、上記のようにアジャストナット515の外周面を10等分するように設けられた凹凸の対を1つの目盛と考えれば、アジャストナット515を1目盛分回転させるごとにノズル本体510は50μmずつ移動することになる。
【0094】
凸部515aと凹部515bとの周方向における長さは等しくなくてもよいが、これらを同じにすることで、実効的には1周を20等分した目盛と考えることができ、この場合には1目盛分の移動量は25μmとなる。このように、アジャストナット515の外周面に目盛を設けておくことで、ノズル本体510の移動量、ひいてはエッチング幅の変化量を調整作業時に可視化することができす。これにより、調整作業後にエッチング幅を実測して再度調整する、という作業の繰り返し回数を低減することが可能となり、調整作業をより効率よく行うことができる。

図5に戻って説明を続ける。処理液吐出ノズル51A~51Cはそれぞれ上記した構造を有している。支持機構54のベース部材541は、これらのノズル51A~51Cの長手方向がそれぞれ動径方向Rと一致するように、ノズル51A~51Cを等角度間隔で支持している。したがって、このノズルブロック50では、ノズル支持部57(フランジ部位572)に対するベース部材541の位置を調整することにより、3つの処理液吐出ノズル51A~51Cを一体的に、しかも大きなストロークで移動させる粗調整モードと、3つの処理液吐出ノズル51A~51Cをベース部材541に対して個別に、かつ細かく移動させる微調整モードとを実現可能となっている。これらの調整モードを組み合わせることで、この実施形態では、各処理液吐出ノズル51A~51Cの位置を大きなストロークでしかも精密に調整することが可能となっている。
【0095】
また、微調整モードを可能とするために、本実施形態では、処理液吐出ノズル51A~51Cの吐出口511に対し、ベース部材541、雄ねじ部51d、コイルばね514およびアジャストナット515が所定の位置関係を有している。この点について、図9を参照しつつ説明する。
【0096】
図9は、鉛直上方から見た、吐出口、ベース部材、雄ねじ部、コイルばね、およびアジャストナットの位置関係を示す図である。同図においては、処理液吐出ノズル51A~51Cの吐出口511がそれぞれ動径方向Rにおいて同一位置となるように調整されているケース(同図(a))と、処理液吐出ノズル51A~51Cの吐出口511がそれぞれ動径方向Rにおいて異なる位置となるように調整されているケース(同図(b))が示されている。
【0097】
これらの図面において、1点鎖線は、回転軸AX(図5)を中心として吐出口511を通過する仮想円弧を示している。「仮想円弧」は、回転軸AXを中心とし、回転軸AXから吐出口511までの距離を半径とする仮想円のうち吐出口511およびその近傍を切り取った円弧を意味している。図9(a)に示すケースでは、処理液吐出ノズル51A~51Cにそれぞれ対応する仮想円弧VAa~VAcは一致している。そして、ベース部材541、雄ねじ部51d、コイルばね514およびアジャストナット515は、当該仮想円弧VAa~VAcの内側(同図(a)の上方側)に配置され、鉛直上方からの平面視において、常時、動径方向Rにおいて吐出口511の内側に存在している。また、図9(b)に示すケースにおいても、処理液吐出ノズル51A~51Cにそれぞれ対応する仮想円弧VAa~VAcは相互に異なっているが、図9(a)に示すケースと同様である。なお、図9への図示を省略しているが、2つの処理液吐出ノズル51について仮想円弧が一致している場合にも、ベース部材541、雄ねじ部51d、コイルばね514およびアジャストナット515は、当該仮想円弧VAa~VAcの内側に配置され、鉛直上方からの平面視において、常時、動径方向Rにおいて吐出口511の内側に存在している。
【0098】
このように動径方向Rにおける吐出口511の位置を調整するための構成が吐出口511の内側に配置されており、外側へのはみ出しを防止している。また、本実施形態では、処理液を仰角45度で斜め上向きに、かつ回転軸AXから見て外向きに吐出するように、吐出口511が設けられている。したがって、微調整モードを実現しながらも平面サイズを抑えることができ、基板処理装置1のコンパクト化が可能となっている。その結果、基板処理装置1内でのガス使用量を削減することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0099】
また、基板Sの下面周縁部Ssに供給された処理液は飛散する。このとき、吐出口511の位置を調整するための構成の全部または一部が動径方向Rにおいて吐出口511の外側に存在すると、それらが下面周縁部Ssから飛散してきた処理液を散乱させ、基板Sに戻す可能性がある。しかしながら、上記構造を有する基板処理装置1では、ベース部材541、雄ねじ部51d、コイルばね514およびアジャストナット515のいずれもが常時、吐出口511の内側に位置しているため、上記問題を確実に防止することができる。
【0100】
さらに、本実施形態では、回転カップ部31は、回転する基板Sの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転するとともに、基板Sから飛散する処理液の液滴を捕集する。したがって、吐出口511の位置を調整するための構成の全部または一部が動径方向Rにおいて吐出口511の外側に存在させることは難しい。これに対し、上記構造を有する基板処理装置1では、回転カップ部31と、各処理液吐出ノズル51A~51Cの吐出口511の微調整とを並存させることが可能となっている。
【0101】
図5に戻って、説明を続ける。処理液吐出ノズル51A~51Cへ処理液を供給するための配管56は以下のような配置となっている。すなわち、処理液供給部59から各ノズル51A,51B,51Cへ処理液を通送する配管561,562,563はフレキシブルチューブにより構成され、各配管561,562,563はそれぞれ、ノズル支持部57のフランジ部位572に取り付けられた中継ブロック591により上流側配管と下流側配管とに区分される。
【0102】
具体的には、処理液吐出ノズル51AにSC1液を供給する配管561は、中継ブロック591よりも上流側の上流側配管561aと下流側の下流側配管561bとに区分される。上流側配管561aと中継ブロック591とは継手561cにより接続される。また、下流側配管561bと中継ブロック591とは継手561dにより接続される。上流側配管561aはチャンバ11の下方から、円板部材27aと下カップ32との間のエアギャップを通ってフランジ部位572の上部まで延びており、その内部に処理液供給部59から送出されるSC1液が通送される。SC1液はさらに、下流側配管561bを通送されて最終的に処理液吐出ノズル51Aから吐出される。
【0103】
同様に、処理液吐出ノズル51BにDHFを供給する配管562は、中継ブロック591よりも上流側の上流側配管562aと下流側の下流側配管562bとに区分される。上流側配管562aと中継ブロック591とは継手562cにより接続される。下流側配管562bと中継ブロック591とは継手562dにより接続される。また、上流側配管562aはチャンバ11の下方から、円板部材27aと下カップ32との間のエアギャップを通ってフランジ部位572の上部まで延びており、その内部に処理液供給部59から送出されるDHFが通送され、下流側配管562bを介して通送されたDHFは最終的に処理液吐出ノズル51Bから吐出される。
【0104】
また、処理液吐出ノズル51Cに機能水(CO2水)を供給する配管563は、中継ブロック591よりも上流側の上流側配管563aと下流側の下流側配管563bとに区分される。上流側配管563aと中継ブロック591とは継手563cにより接続される。下流側配管563bと中継ブロック591とは継手563dにより接続される。また、上流側配管563aはチャンバ11の下方から、円板部材27aと下カップ32との間のエアギャップを通ってフランジ部位572の上部まで延びており、その内部に処理液供給部59から送出される機能水が通送され、下流側配管563bを介して通送された機能水は最終的に処理液吐出ノズル51Cから吐出される。
【0105】
配管を中継ブロック591により上流側と下流側とに区分したことにより、それぞれの配管の引き回しを独立して設定することが可能である。このため、スピンチャック21の周辺の狭いスペースにも配管を収めることができる。また、マグネットカップリングを介した回転力の伝達にも影響を及ぼすことなく配管を通すことが可能である。この点については、後で図13図20および図21を用いて説明する実施形態においても同様である。
【0106】
次に、基板観察機構9について説明する。基板観察機構9は、処理が適切に行われているか否かを確認する目的で、処理される基板Sの周縁部Ssを光学的に観察するための機構である。
【0107】
図10は基板観察機構の構成を示す図である。より具体的には、図10(a)は基板観察機構9の動作を模式的に示す図であり、図10(b)は基板観察機構9の観察ヘッド93を示す斜視図である基板観察機構9は、光源部91と、撮像部92と、観察ヘッド93と、観察ヘッド駆動部94と、有している。光源部91および撮像部92は、ベース部材17において並設される。光源部91は、制御ユニット10からの照明指令に応じて照明光を観察位置に向けて照射する。この観察位置は、基板Sの周縁部Ssに対応する位置であり、図10(a)において観察ヘッド93が実線で示される位置に相当する。
【0108】
観察位置と、観察位置から基板Sの径方向外側に離れた退避位置(点線)との間を、観察ヘッド93は往復移動可能となっている。当該観察ヘッド93に対し、観察ヘッド駆動部94が接続される。観察ヘッド駆動部94はベース部材17に取り付けられている。そして、制御ユニット10からのヘッド移動指令に応じて、観察ヘッド駆動部94は観察ヘッド93を往復移動させる。より具体的には、基板Sの観察処理を実行しない間、観察ヘッド駆動部94は観察ヘッド93を退避位置に移動して位置決めしている。このため、観察ヘッド93は基板Sの搬送経路から離れ、チャンバ11に対して搬入出される基板Sに対して観察ヘッド93が干渉するのを効果的に防止することができる。一方、基板Sの観察処理を実行する際には、制御ユニット10からの基板観察指令に応じて、観察ヘッド駆動部94が観察ヘッド93を観察位置に移動させる。
【0109】
この観察ヘッド93は、図10(b)に示すように、拡散面931aを有する拡散照明部931と、3枚のミラー部材932a~932cで構成されるガイド部932と、保持部933と、を有している。
【0110】
拡散照明部931は、例えばPTFEで構成される。拡散照明部931は、水平方向に延設されたプレート形状を有しており、基板S側の端部に切欠部9311が形成されている。切欠部9311の鉛直方向サイズは基板Sの厚みよりも大きく、観察ヘッド93が観察位置に位置決めされると、切欠部9311が基板Sの周縁部Ssおよび周縁部Ssからさらに径方向内側に入った領域まで入り込む。この切欠部9311は、基板Sの周方向から見て逆C字形状を有している。また、拡散照明部931では、切欠部9311に沿って傾斜面が設けられている。傾斜面は切欠部9311に近づくにしたがって照明光が進む方向に傾斜するように仕上げられたテーパー面である。
【0111】
保持部933は、例えばPEEKで構成されており、基板S側の端部に、拡散照明部931と同様の切欠部が設けられている。また、保持部933は拡散照明部931と相互に嵌合可能な形状に仕上げられている。
【0112】
このように構成された観察ヘッド93が観察位置に位置決めされると、拡散面931aが光源部91による照明領域に位置する。この位置決め状態で制御ユニット10からの照明指令に光源部91が点灯すると、照明光が照明領域に照射される。このとき、拡散面931aが照明光を拡散反射させ、基板Sの周縁部Ssおよびその隣接領域を種々の方向から照明する。図10(b)に点線矢印で示すように、基板Sの周縁部Ss近傍のうち、上面で反射される光の一部がミラー部材932aにより反射される。また、基板Sの端面で反射される光の一部がミラー部材932bにより反射される。さらに、基板Sの下面で反射される光の一部がミラー部材932cにより反射される。これらの反射光は撮像部92に導光される。
【0113】
撮像部92は、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系と、CMOSカメラとを有している。したがって、観察ヘッド93から導光される反射光のうち観察レンズ系の光軸に平行な光線のみがCMOSカメラのセンサ面に入射され、基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域の像がセンサ面上に結像される。こうして撮像部92は基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域を撮像し、基板Sの上面画像、側面画像および下面画像を取得する。そして、撮像部92はその画像を示す画像データを制御ユニット10に送信する。
【0114】
観察ヘッド93は必要に応じ基板Sの周縁部に近接する位置に配置されるが、光源部91および撮像部92は基板Sに対し観察ヘッド93よりも十分に遠い位置に配置される。このため、基板Sに液体が付着していたとしても、これが光源部91および撮像部92に付着し撮像に支障を来すおそれは極めて低い。
【0115】
制御ユニット10は、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。排気制御部10Gは排気部38を制御する。
【0116】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続される。
【0117】
演算処理部10Aは、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random Access Memory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されるプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を制御することで所定の動作を実現する。例えば前記したベベル処理を実行することができる。
【0118】
次に、上記のように構成された処理ユニット1におけるノズル位置の調整作業について説明する。基板Sの周縁部Ssの薄膜を除去するベベル処理においては、エッチング幅を目標通りの大きさとするために、事前にノズル位置の調整を行っておく必要がある。というのは、前記した通り、エッチング幅はノズルからの処理液の着液位置によって決まり、着液位置はノズル位置の影響を受けるからである。
【0119】
ノズル位置の調整作業は例えば以下のようにして行うことができる。まず、処理液吐出ノズル51A~51Cが支持機構54に仮取り付けされた状態のノズルブロック50が、固結部材551によってフランジ部位572に取り付けられる。このとき、必要とされるエッチング幅に応じた粗調整モードとして、フランジ部位572への支持機構54の取り付け位置が調整される。これにより、複数のノズルを一体的に、精度は必ずしも高くないが大きなストロークで位置調整することができる。例えば20mm程度の調整幅を確保することができる。
【0120】
これに続いて、各処理液吐出ノズル51~53のそれぞれにつき、微調整モードでの位置調整が行われる。例えば次のようにして、処理液吐出ノズル51A~51Cの位置を微調整することができる。
【0121】
図11は微調整モードでのノズル位置調整を模式的に示す図である。微調整モードでは、レーザー計測ユニット53が導入される。レーザー計測ユニット53は、3組の処理液吐出ノズル51A,51B,51Cのそれぞれに対応するレーザー変位計53A,53B,53Cと、それらを支持する支持フレーム531と、を備えている。支持フレーム531は例えば、基板処理部SPを支持するベース部材17に取り付けることができる。
【0122】
すなわち、支持フレーム531を固定するための雌ねじをベース部材17に予め形成しておき、必要に応じて固結部材555を用い支持フレーム531をベース部材17に固定することで、3組の処理液吐出ノズル51A,51B,51Cのそれぞれに対応して、レーザー変位計53A,53B,53Cをそれぞれ適切な位置に配置することができる。
【0123】
レーザー変位計53Aは、対応する処理液吐出ノズル51Aに対して距離計測用のレーザー光を照射する。具体的には、図に点線矢印で示すように、レーザー光は処理液吐出ノズル51Aの(+R)側先端部に設けられた反射部材513に向けて照射され、反射部材513で反射されたレーザー光がレーザー変位計53Aにより受光される。これにより、処理液吐出ノズル51Aの位置、より具体的にはレーザー変位計53Aから見た処理液吐出ノズル51Aまでの距離が求められる。
【0124】
調整作業を行うオペレータは、レーザー変位計53Aによる計測結果に基づいて、処理液吐出ノズル51Aに設けられたアジャストナット515を回転させ、これによりノズル位置を所期の目標位置に調整する。このようにして、処理液吐出ノズル51Aの位置を微調整し、エッチング幅を調整することができる。このときの調整精度としては、例えばミクロンオーダーとすることができる。
【0125】
同様に、レーザー変位計53Bは、対応する処理液吐出ノズル51Bに対して距離計測用のレーザー光を照射し、その反射光を受光して処理液吐出ノズル51Bの位置を計測する。また、レーザー変位計53Cは、対応する処理液吐出ノズル51Cに対して距離計測用のレーザー光を照射し、その反射光を受光して処理液吐出ノズル51Cの位置を計測する。これらの計測結果を用いてオペレータは、処理液吐出ノズル51B,51Cについての位置の微調整を行うことができる。
【0126】
各処理液吐出ノズル51A~51Cには、単純な形状の反射面を有する、例えばレーザー変位計に向く表面が平坦面である反射部材513が設けられており、レーザー光がこの反射部材513に入射し反射されるようにすることで、距離計測を確実に行うことができる。また、このような反射部材513を別途設けることで、ノズル本体510自体の形状に関しては高い設計自由度を確保することができる。
【0127】
レーザー変位計については、各ノズルの位置調整ごとに計測対象のノズルを切り替えることで、複数のノズルに対して1つだけ設けるようにすることも可能である。しかしながら、上記のように各処理液吐出ノズル51A,51B,51Cのそれぞれに対応して、レーザー変位計53A,53B,53Cを個別に配置すれば、次のような利点が得られる。まず、例えば1つのノズルに対して位置調整を行っている間に他のノズルの位置が変動してしまったような場合でも、オペレータはそのことを把握して適切に修正を行うことができる。また、各レーザー変位計53A,53B,53Cの配設位置を高精度に、かつ優れた再現性で設定することができるので、各ノズルの位置検出に際しても優れた精度を得ることが可能である。このように複数のノズルに対してレーザー変位計を1つだけ設ける点、および個別にレーザー変位計を設けたことによる作用効果については、後で説明する実施形態においても同様である。
【0128】
なお、レーザー計測ユニット53は調整作業の際に一時的に取り付けられるものであり、最終製品としての処理ユニット1の一部をなすものではない。このため、レーザー変位計の設置数が多くなっても、処理ユニット1の装置コストには影響を与えない。すなわち、調整作業の終了後、レーザー計測ユニット53は取り外される。ノズルブロック50およびレーザー計測ユニット53がメンテナンス用開口11d1に近い位置に取り付けられることで、ノズル位置の調整作業およびレーザー計測ユニット53の着脱作業を優れた作業性で実行することが可能である。これらの点については、後で説明する実施形態においても同様である。
【0129】
以上説明したように、この実施形態の処理ユニット1は、本発明の「基板処理装置」の一実施形態に相当するものである。この実施形態において、処理液供給ノズル51A~51Cの各々、特にノズル本体510が本発明の「ノズル本体」に相当し、支持機構54が本発明の「支持部」に相当している。そして、これらが一体として、本発明の「ノズル機構」として機能している。また、ノズル本体510のうち大径シャフト部51bが、本発明の「中間部」に相当している。また、回転軸AXが本発明の「鉛直軸」に相当している。
【0130】
また、コイルばね514が本発明の「付勢部」として機能する一方、雄ねじ部51dとアジャストナット515とが一体として本発明の「位置調整部」として機能している。また、アジャストナット515は本発明の「ナット」に相当している。また、保持回転機構2が本発明の「回転機構」として機能している。また、ノズル支持部57、特にフランジ部位572が、本発明の「固定部材」として機能している。
【0131】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、先に述べた処理ユニット1の高さを抑えるというニーズを重視して、ノズルブロック50を薄型に仕上げるために、ノズル本体510を動径方向Rを長手方向とする概略棒状の形状としている。このため、アジャストナット515がノズル本体510に対して基板Sの中心側に配置された構造となっている。
【0132】
結果的に、ノズル位置調整においては、オペレータがアジャストナット515を操作する際に、メンテナンス用開口11d1を介してノズルヘッド部51aよりも奥まで手を伸ばす必要が生じている。これに代えて、例えば次のようにアジャストナットをノズルヘッド部の下方でメンテナンス用開口11d1に臨む位置に配置することで、作業性をより向上させることも可能である。
【0133】
図12はノズルブロックの変形例を示す図である。なお、図12を参照してこの変形例の処理液吐出ノズル51Dを説明するに当たり、図7(a)に示す処理液吐出ノズル51Aの構成と対応する構成については、同一の符号を付して詳しい説明を省略するものとする。なお、一部の構成についてはその形状が図7(a)に示すものと異なっている場合もあるが、それらについても、理解に支障がないと考えられる限りにおいて同一の符号を用いるものとする。
【0134】
この処理液吐出ノズル51Dでは、図7(a)の構成では大径シャフト部51bの(-R)側に小径シャフト部51cおよび雄ねじ部51dが設けられるのに代えて、ノズルヘッド部51aの下部に下向きに延びる延伸部51eが設けられている。そして、延伸部51eには、R方向に貫通する貫通孔51fが設けられている。
【0135】
一方、支持機構54のベース部材541にも、下向きに延びる延伸部543が設けられている。そして、延伸部543の(+R)側側面から(+R)方向にシャフト部544が突設され、その先端部は雄ねじ部545となっている。シャフト部544はコイルばね514の内部に挿通されており、コイルばね514は、ノズル本体側の延伸部51eと、ベース部材541側のシャフト部544との間で、これらを互いに離間させる方向の付勢力を生じさせる。
【0136】
雄ねじ部545は貫通孔51fを通って延伸部51eの(+R)側側面よりも突出しており、ここにアジャストナット515が取り付けられる。したがって、アジャストナット515は、コイルばね514による付勢力に抗して、ベース部材541に対する延伸部51eの静止位置を規制しており、しかも、アジャストナット515を回転させることで、その静止位置は動径方向Rに沿って変化する。これにより、上記実施形態と同様に、ノズルヘッド部51aの上部に設けられた吐出口511の位置を動径方向Rに沿って移動させて、エッチング幅を調整することが可能になる。
【0137】
この構造によれば、アジャストナット515がメンテナンス用開口11d1に臨んだ配置となるため、オペレータによる調整作業の作業性は大きく向上する。その一方で、図7(a)に示す構成と比べて全体の高さが大きくなってしまうため、装置の薄型化という点では不利である。これらの構造については、より重要視される目的に応じて適宜選択して採用することが可能である。
【0138】
また、図12に示すように、動径方向Rにおける吐出口511の位置を調整するための構成が吐出口511の内側に配置されており、外側へのはみ出しを防止している。したがって、先の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0139】
また例えば、上記実施形態の処理ユニット1は、基板Sの周縁部Ssのうち下面Sb側に処理液を供給してベベルエッチング処理を行う装置である。しかしながら、これに加えて、基板Sの上面側についてベベルエッチング処理を行う装置にも、本発明を適用可能である。
【0140】
また、上記実施形態では、ノズル本体510の大径シャフト部51bの断面形状に対応して支持機構54のベース部材541に設けられた溝が、支持機構54側における本発明の「係合部位」として機能し、押さえ部材542がベース部材541からのノズル本体510の脱落を防止している。しかしながら、このように溝状の係合部位と押さえ部材542との組み合わせでノズル本体510を支持する構造に代えて、大径シャフト部51bの断面形状に合わせた形状の貫通孔をベース部材541に設け、ノズル本体510がこの貫通孔に挿通される構造であってもよい。
【0141】
また、上記実施形態の処理ユニット1はノズルブロック50にそれぞれ異なる処理液を吐出する3組の処理液吐出ノズル51A~51Cが設けられている。しかしながら、ノズルの配設数はこれに限定されるものではなく、その数は任意である。
【0142】
また、上記実施形態のノズルブロック50では、ノズル位置の調整に際し粗調整モードと微調整モードとを実行可能な構造が採られている。しかしながら、これらの2つの調整モードを有することは必須ではなく、例えば雄ねじ部を上記のものより長くすることで、微調整モードにおける調整範囲を広げることも可能である。
【0143】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、この発明に係る基板処理装置において、例えば位置調整部では、ノズル本体および支持部のいずれか一方に、半径方向に沿って延設された雄ねじが設けられ、他方に雄ねじが挿通される貫通孔が設けられ、雄ねじに螺合するナットがさらに設けられてもよい。このような構成によれば、ナットを回転させることでノズル本体と支持部との相対的な位置関係を変化させることができ、したがって支持部に対するノズル本体の位置調整を容易に行うことができる。また、ナットによる位置規制と付勢部による付勢力との協働により、支持部に対するノズル本体の位置を安定的に維持することができる。
【0144】
この場合において、例えばノズル本体は、半径方向において断面形状が一定である柱状の中間部と、半径方向において中間部の一方端側に接続して設けられ処理液を吐出する吐出口が形成されたノズルヘッド部と、半径方向において中間部の他方端側に接続して設けられ雄ねじが形成された雄ねじ部とを有し、支持部には、中間部の断面形状に適合させた形状の溝部または貫通孔が支持部側の係合部位として設けられ、中間部がノズル本体側の係合部位であってもよい。
【0145】
このような構成によれば、ノズル本体のうち半径方向の断面形状が一定である中間部と、これに対応する支持部の溝部または貫通孔とが互いに係合部位として係合することで、支持部は、基板の半径方向にはノズル本体を移動可能に支持する一方、これ以外の方向への変位を規制することができる。
【0146】
特に中間部の断面形状が非円形であると、ノズル本体が支持部に支持された状態で軸まわりに回転してしまうことが防止され、処理液の吐出方向が変動するのを抑制することが可能である。
【0147】
また例えば、ナットの外周部に等角度間隔の目盛が形成されていてもよい。雄ねじ部のピッチを介して、ナットの回転量とノズル本体の変位量との間には相関性があるから、ナットにこのような目盛を設けておくことで、その回転に対するノズル本体の変位量を可視化し、調整作業の利便性を向上させることができる。
【0148】
また例えば、ノズル本体、支持部およびナットについては樹脂製であることが好ましい。基板の下方に配置されるこれらの部材は処理液またはその蒸気雰囲気に曝露される可能性が高いから、これらは薬液に対する耐性の高い樹脂材料で形成されることが好ましい。また、これらが例えば金属製である場合、ナットの調整時に摺擦による微粉が生じ汚染の原因となり得るが、耐薬品性の高い安定した樹脂材料であれば、そのおそれは低い。
【0149】
また例えば、支持部は、基板の回転に追随しない固定部材に取り付けられており、しかも、固定部材に対する支持部の取り付け位置が変更可能であってもよい。このような構成によれば、固定部材に対する支持部の取り付け位置を変化させることで、基板に対するノズル本体の概略位置を変更することが可能である。例えばこの構成による粗調整と、上記した位置調整部による微調整とを組み合わせて、ノズル位置の調整範囲を広げ、かつその調整精度を良好なものとすることが可能になる。
【0150】
特に、一の支持部に対して複数のノズル本体が支持されている場合には、支持部の取り付け位置を変化させることにより、複数のノズル本体を一括して移動させることができるので、各ノズル本体の概略位置を容易に調整することが可能になる。
【0151】
また、上記実施形態では、吐出口の調整のために、ノズル本体を動径方向Rに移動させているが、水平面内において動径方向Rと傾斜した傾斜方向に移動させてもよい。
【0152】
また、上記実施形態のノズルブロック50では、オペレータがアジャストナット515を回転させることで処理液吐出ノズル51等の位置調整が行われる。これに代えて、位置調整部が、ステッピングモータやリニアモータなどの駆動源により半径方向にノズル本体を駆動することで半径方向において吐出口を位置決めするノズル移動機構を有するように構成してもよい。また、位置調整部が、上記駆動源により半径方向と傾斜した傾斜方向にノズル本体を駆動することで半径方向において吐出口を位置決めするノズル移動機構を有するように構成してもよい。これらの実施形態では、ノズル移動機構の作動によって自動的に吐出口の位置を調整可能となっており、上記した作業性の問題は生じない。
【0153】
上記ノズル移動機構を備えた実施形態(以下「自動調整タイプの基板処理装置」という)について図面を参照しつつ説明する。
【0154】
図13は本発明に係る基板処理装置の他の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置に設けられた処理機構の構造および配置を示す図である。この実施形態では、処理機構5は、基板Sの下面Sb側に配置されるノズルブロック50と、ノズルブロック50に処理液を供給する処理液供給部59とを有している。ノズルブロック50はそれぞれが処理液を吐出する3組の処理液吐出ノズル51A,51B,51Cと、これらを独立して移動させるノズル移動機構58とを有している。後述するように、ノズル移動機構58は、処理液吐出ノズル51A~51Cをそれぞれ独立して基板Sの半径方向に移動させる。これによって、各処理液吐出ノズル51A~51Cの基板Sに対する位置(以下「ノズル位置」という)は調整される。
【0155】
既に説明した実施形態(以下「先の実施形態」という)と同様に、3組の処理液吐出ノズル51A~51Cに対して処理液供給部59が接続される。本実施形態においても、基板Sの下面Sbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、フランジ部位572の上面周縁部の一部に対し、ノズルブロック50が取り付けられている。
【0156】
図14A図14B図15Aおよび図15Bは処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の構成を示す図である。これらのうち図14Aおよび図14Bは処理液吐出ノズルの全部が後退したときの全部後退状態を示しており、前者は全部後退状態での処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の構造を示す斜視図であり、後者は全部後退状態での処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の断面構造を示す図である。一方、図15Aおよび図15Bは一の処理液吐出ノズルのみが先進したときの部分先進状態を示しており、前者は部分先進状態での処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の構造を示す斜視図であり、後者は前進した処理液吐出ノズルおよびノズル移動機構の断面構造を示す図である。
【0157】
図13に示すように、ノズル支持部57の上部に設けられた略円環状のフランジ部位572に、ノズルブロック50が取り付けられている。ノズルブロック50には、処理液吐出ノズル51A~51C毎にノズル移動機構58が設けられている。以下においては、処理液吐出ノズル51A~51Cをそれぞれ動径方向R1~R3に移動させる3つのノズル移動機構を総称する場合、「ノズル移動機構58」と称する。一方、3つのノズル移動機構を個別に呼称する場合、処理液吐出ノズル51A用のノズル移動機構を「ノズル移動機構58A」と称し、処理液吐出ノズル51B用のノズル移動機構を「ノズル移動機構58B」と称し、処理液吐出ノズル51C用のノズル移動機構を「ノズル移動機構58C」と称する。
【0158】
これら3つのノズル移動機構58A~58Cは、それぞれノズル移動方向がそれぞれ動径方向R1~R3である点を除き、基本的には同一構成を有している。また、各処理液吐出ノズル51A~51Cは同一形状を有している。そこで、本明細書では、1つの処理液吐出ノズル51Cおよび当該ノズル移動機構58Cをこの順序で説明する。それ以外の吐出ノズル51A、51Bおよびノズル移動機構58A、58Bの同一構成については、同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0159】
処理液吐出ノズル51Cの構成について、図14A図14B図15Aおよび図15Bを参照しつつ説明する。処理液吐出ノズル51Cの主要部であるノズル本体510はノズル移動機構58Cのノズルヘッド部582に対して着脱自在に構成されている。ノズル本体510の先端には、処理液を吐出する吐出口511が設けられている。吐出口511は、処理液供給部59から供給される処理液を仰角45度で斜め上向きに、かつ回転軸AXからみて外向きに吐出する。処理液は、基板Sの下面周縁部Ssに向けて吐出される。なお、処理液吐出ノズル51(51A~51C)は、耐薬品性に優れた材料、例えば樹脂材料により構成される。例えばポリエチレン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;polytetrafluoroethylene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)樹脂等を、目的に応じて適宜選択し使用することができる。
【0160】
基板Sの下面Sbに金属薄膜または金属化合物薄膜が形成されており、吐出される処理液が当該被膜に対し溶解性を有するものである場合、基板下面Sbのうち処理液が着液した領域の薄膜がエッチング除去される。基板Sが回転している場合、遠心力の作用より、処理液は着液位置よりも外側に広がるため、結果として、着液位置よりも外側の薄膜が除去されることになる。
【0161】
また、ノズルヘッド部582の(+R3)側端部には、(+R3)側端面が平坦な反射面となった反射部材513が取り付けられている。反射部材513は、例えばレーザー変位計によりノズル位置を計測する際に用いられるものであり、レーザー変位計から出射されるレーザー光を反射することで、精度よく安定した位置計測を可能とするものである。
【0162】
次に、ノズル移動機構58Cの構成および動作について説明する。ノズル移動機構58Cは、固定支持部581と、ノズルヘッド部582と、ノズル駆動部583と、一対のグライドリング584、585と、ガイドシャフト586とを有している。これらのうち固定支持部581、ノズルヘッド部582およびノズル駆動部583(後で説明するモータ583a、配線583bを除く)を構成する材料としては、処理液吐出ノズル51と同様に、ポリエチレン樹脂等を、目的に応じて適宜選択し使用することができる。また、ガイドシャフト586はステンレス製棒材をPTFEでコーティングしたものを用いることができる。
【0163】
固定支持部581は、本発明の「支持部」の一例に相当するものであり、ノズル支持部57のフランジ部位572上に固設される。この固定支持部581の上方端部および下方端部に、貫通孔581a、581bがそれぞれ動径方向R3に延設されている。貫通孔581aには、その回転軸がノズルヘッド部582を向いた姿勢で、ノズル駆動部583の駆動源であるモータ583aが挿入されている。モータ583aはフッ素収縮チューブで被覆された配線583bを介してモータ駆動部583cと接続されている。なお、貫通孔581aの(-R3)方向側の開口については、上記配線583bを除きコーキング剤などにより封止されている。
【0164】
貫通孔581a内では、上記回転軸に対してノズル駆動部583のシャフト部材583dの(-R3)側端部が取り付けられている。また、貫通孔581aの(+R)方向側の開口に隣接し、グライドリング587が取り付けられ、シャフト部材583dを回転軸の回転軸線まわりに回転自在に軸支している。グライドリング587の構成については、後で説明する。
【0165】
シャフト部材583dのうちグライドリング587よりも(+R3)方向側の外周面には雄ネジが螺刻されており、雄ネジ部位として機能する。雄ネジ部位はノズルヘッド部582に設けられた雌ネジ部位に螺合される。このため、制御ユニット10からモータ駆動部583cに対してノズル移動指令が与えられると、それに応じてモータ駆動部583cがモータ583aの回転軸を回転させる。このときの回転方向と回転量に応じ、ノズルヘッド部582と、ノズルヘッド部582の(+R3)側端部に取り付けられた処理液吐出ノズル51Cおよび反射部材513とが一体的に動径方向R3に往復移動する。例えば上記回転軸が正方向に回転することで、ノズルヘッド部582等が例えば図14Aおよび図14Bに示す位置から図15Aおよび図15Bに示す位置に移動する。逆に、上記回転軸が逆方向に回転することで、ノズルヘッド部582等が逆方向に移動する。
【0166】
このようにモータ583aを本発明の「アクチュエータ」の一例として用い、処理液吐出ノズル51Cを動径方向R3に移動させているが、それだけでは処理液吐出ノズル51Cの位置決めには安定性を欠く。そこで、本実施形態では、一対のグライドリング584、585およびガイドシャフト586をガイド機構の主たる構成として追加することで、動径方向R3に沿った処理液吐出ノズル51Cの移動をガイドしている。より詳しくは、以下のように構成している。
【0167】
図16は固定支持部に対する一対のグライドリングの装着方法を示す分解組み立て図である。固定支持部581の下方端部に設けられた貫通孔581bは、図16に示すように、(-R3)方向側から(+R3)方向側に進むにしたがって内径が広がっている。その結果、貫通孔581bの内部には2箇所の段差部が形成されている。貫通孔581bのうち最も細い領域、つまり最も(-R3)方向側の貫通領域(以下「反ヘッド側貫通領域」という)では、その内径はガイドシャフト586の外径より若干広くなっている。その(+R3)方向側に隣接する貫通領域(以下「中間貫通領域」という)の内径は反ヘッド側貫通領域の内径よりも広く、かつグライドリング584、585の外径と同じまたは若干小さくなっている。さらに、その(+R3)方向側に隣接する貫通領域(以下「ヘッド側貫通領域」という)の内径は中間貫通領域の内径よりも広く、かつスペーサ588、589の外径と同じに仕上げられている。このため、ヘッド側貫通領域に対し、スペーサ588、589を嵌入可能となっている。
【0168】
図17はグライドリングの構成を示す図である。グライドリング584は、処理液の対する耐薬品性および耐水性を兼ね備えた樹脂材料で構成された第1リング部材と、上記耐薬品性および耐水性を兼ね備えた弾性材料で構成された第2リング部材とを一体化させたものであり、全体としてリング形状に仕上げられたシールリングである。より詳しくは、グライドリング584は、ガイドシャフト586の外径と同一の内径を有するリング状樹脂部材(第1リング部材)584aと、中間貫通領域の内径と同じまたは若干広い外径を有するリング状弾性部材(第2リング部材)584bとを有している。リング状弾性部材584bはリング状樹脂部材584aに外装されている。このため、グライドリング584では、リング状樹脂部材584aの内周面584a1がガイドシャフト586の外周面と全周にわたって摺接するリング状摺接部位として機能する一方、リング状弾性部材584bの外周面584b1が中間貫通領域の内周面と全周にわたって密着するリング状密着部位として機能する。なお、グライドリング585は、グライドリング584と全く同一構造を有しており、次に説明するように、スペーサ588によりグライドリング584から一定距離だけ(+R3)方向に離間して配置される。
【0169】
スペーサ588、589は、図16に示すように、ヘッド側貫通領域に嵌入可能な筒状形状を有している。スペーサ588に設けられた貫通孔は、互いに異なる内径の貫通領域を有している。その一方は、(-R3)方向側からグライドリング584、585の離間距離に対応した距離だけ進んだ位置まで設けられた(-R3)側貫通領域である。残りは、(-R3)側貫通領域から(+R3)方向にグライドリング585の厚みに相当する距離だけ延設された(+R3)側貫通領域である。もう一方のスペーサ589はガイドシャフト586の外径よりも若干広い内径を有するリング形状を有している。
【0170】
そして、図16に示すように、グライドリング584、スペーサ588、グライドリング584およびスペーサ589が(+R3)方向側から(-R3)方向側に当該順序で貫通孔581bに向けて嵌入される。グライドリング584は貫通孔581bの中間貫通領域に嵌入されるとともに、中間貫通領域と反ヘッド側貫通領域との間に形成された段差部に係止される。さらに、グライドリング584は動径方向R3において当該段差部とスペーサ588とに挟まれて貫通孔581b内に位置決めされる。
【0171】
また、ヘッド側貫通領域に嵌入されたスペーサ588の(+R3)側貫通領域に対し、グライドリング585が嵌入される。その後で、スペーサ589がヘッド側貫通領域に嵌入される。このため、グライドリング585は、動径方向R3において(+R3)側貫通領域および(-R3)側貫通領域との間で形成される段差部と、スペーサ589とに挟まれて貫通孔581b内に位置決めされる。こうして、一対のグライドリング584、585は動径方向R3において(-R3)側貫通領域の長さだけ相互に離間している。
【0172】
上記したようにグライドリング584、スペーサ588、グライドリング584およびスペーサ589の嵌入によって、グライドリング584、585が固定支持部581に装着される。そして、一対のグライドリング584、585に対してガイドシャフト586の(-R3)側端部が摺接自在に挿入される。より詳しくは、ガイドシャフト586の外周面がグライドリング584、585のリング状摺接部位と全周にわたって摺接しながら支持されている。このガイドシャフト586の(+R3)側端部はノズルヘッド部582に予め設けられた穴部に圧入され、ノズルヘッド部582に固定されている。したがって、ガイドシャフト586は、その(-R3)側端部が動径方向R3に沿って貫通孔581bまで延設された状態のまま、処理液吐出ノズル51Cおよびノズルヘッド部582と一体的に動径方向R3に移動する。しかも、ガイドシャフト586の(-R3)側端部は、常時、一対のグライドリング584、585により動径方向R3に摺動自在に支持されている。したがって、処理液吐出ノズル51Cは安定して動径方向R3に移動し、これによって処理液吐出ノズル51Cは高精度に位置決めされる。
【0173】
また、グライドリング584の外周面(リング状密着部位)が固定支持部581に直接的に密着するとともに、グライドリング585の外周面(リング状密着部位)がスペーサ588を介して固定支持部581に密着する。すなわち、各グライドリング584、585は、ガイドシャフト586の外周面と貫通孔581bの内周面との間に介装されてガイドシャフト586と貫通孔581bとの間のリング状空間をシールしている。その結果、上記リング状空間に処理液が入り込むのを効果的に防止することができる。
【0174】
このようなシール効果は、貫通孔581aへのグライドリング587の設置により、貫通孔581aにおいても得られる。本実施形態では、図14Bおよび図15Bに示すように、貫通孔581aの(+R3)側開口近傍に環状の溝部が設けられるとともに、当該溝部にグライドリング587が嵌入されている。グライドリング587はグライドリング584、585と同様に構成されている。つまり、グライドリング587は、シャフト部材583dの(-R3)側端部の外径と同一の内径を有するリング状樹脂部材(第1リング部材)と、貫通孔581a(図16)の内径と同じまたは若干広い外径を有するリング状弾性部材(第2リング部材)とを有している。リング状弾性部材はリング状樹脂部材を外装されている。このため、グライドリング587が上記溝部に嵌入されることで、リング状樹脂部材の内周面がシャフト部材583dの(-R3)側端部の外周面と全周にわたって摺接するリング状摺接部位として機能する一方、リング状弾性部材の外周面が上記溝部の内周面と全周にわたって密着するリング状密着部位として機能する。つまり、グライドリング587は、シャフト部材583dの外周面と貫通孔581aの内周面との間に介装されてシャフト部材583dと貫通孔581aとの間のリング状空間をシールしている。その結果、上記リング状空間に処理液が入り込むのを効果的に防止することができ、処理液の影響を受けることなく、ノズルを高精度に位置決めすることができる。
【0175】
上記においては、処理液吐出ノズル51Cを動径方向R3に移動させるノズル移動機構58Cについて説明したが、その他のノズル移動機構58A、58Bについても同様に構成されている。このため、処理液の影響を受けず、ノズルを高精度に位置決めすることが可能となっている。
【0176】
また、本実施形態では、動径方向Rにおける吐出口511の位置、つまりノズル位置を調整するための構成が吐出口511の内側に配置されており、外側へのはみ出しを防止している。また、本実施形態では、処理液を仰角45度で斜め上向きに、かつ回転軸AXから見て外向きに吐出するように、吐出口511が設けられている。したがって、ノズル位置を自動調整するモードを実現しながらも平面サイズを抑えることができ、基板処理装置1のコンパクト化が可能となっている。その結果、基板処理装置1内でのガス使用量を削減することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0177】
さらに、本実施形態では、回転カップ部31は、回転する基板Sの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転するとともに、基板Sから飛散する処理液の液滴を捕集する。したがって、吐出口511の位置を調整するための構成の全部または一部が動径方向Rにおいて吐出口511の外側に存在させることは難しい。これに対し、上記構造を有する基板処理装置1では、回転カップ部31と、各処理液吐出ノズル51A~51Cの独立した位置調整とを並存させることが可能となっている。
【0178】
図13に戻って、説明を続ける。処理液吐出ノズル51A~51Cへ処理液を供給するための配管56は先の実施形態と同様に配置されている。図13中の符号561は処理液吐出ノズル51AにSC1液を供給するための配管を示し、符号562は処理液吐出ノズル51BにDHFを供給する配管を示し、符号563は処理液吐出ノズル51Cに機能水(CO2水)を供給する配管を示している。
【0179】
次に、上記のように構成された処理ユニット1におけるノズル位置の調整作業について説明する。基板Sの周縁部Ssの薄膜を除去するベベル処理においては、エッチング幅を目標通りの大きさとするために、事前にノズル位置の調整を行っておく必要がある。というのは、前記した通り、エッチング幅はノズルからの処理液の着液位置によって決まり、着液位置はノズル位置の影響を受けるからである。
【0180】
ノズル位置の調整作業は例えば以下のようにして行うことができる。まず、処理液吐出ノズル51A~51Cがノズル移動機構58に取り付けされた状態のノズルブロック50が、固結部材551によってフランジ部位572に取り付けられる。各処理液吐出ノズル51A~51Cのそれぞれにつき、自動調整モードでの位置調整が行われる。例えば次のようにして、処理液吐出ノズル51A~51Cの位置を微調整することができる。
【0181】
図18は自動調整モードでのノズル位置調整を模式的に示す図である。自動調整モードでは、先の実施形態で用いた同様のレーザー計測ユニット53が導入される。そして、支持フレーム531を固定するための雌ねじをベース部材17に予め形成しておき、必要に応じて固結部材555を用い支持フレーム531をベース部材17に固定することで、3組の処理液吐出ノズル51A,51B,51Cのそれぞれに対応して、レーザー変位計53A,53B,53Cをそれぞれ適切な位置に配置することができる。
【0182】
レーザー変位計53Aは、対応する処理液吐出ノズル51Aに対して距離計測用のレーザー光を照射する。具体的には、図に点線矢印で示すように、レーザー光は処理液吐出ノズル51Aの(+R)側先端部に設けられた反射部材513に向けて照射され、反射部材513で反射されたレーザー光がレーザー変位計53Aにより受光される。これにより、処理液吐出ノズル51Aの位置、より具体的にはレーザー変位計53Aから見た処理液吐出ノズル51Aまでの距離が求められる。
【0183】
演算処理部10Aは、レーザー変位計53Aによる計測結果とエッチング幅に基づいて、モータ駆動部583cにノズル移動指令を与え、これによりノズル位置を所期の目標位置に調整する。このようにして、処理液吐出ノズル51Aの位置を調整し、エッチング幅を調整することができる。このときの調整精度としては、例えばミクロンオーダーとすることができる。
【0184】
同様に、レーザー変位計53Bは、対応する処理液吐出ノズル51Bに対して距離計測用のレーザー光を照射し、その反射光を受光して処理液吐出ノズル51Bの位置を計測する。また、レーザー変位計53Cは、対応する処理液吐出ノズル51Cに対して距離計測用のレーザー光を照射し、その反射光を受光して処理液吐出ノズル51Cの位置を計測する。これらの計測結果およびエッチング幅を用いて演算処理部10Aは、処理液吐出ノズル51B,51Cについての位置を調整する。
【0185】
各処理液吐出ノズル51A~51Cには、単純な形状の反射面を有する、例えばレーザー変位計に向く表面が平坦面である反射部材513が設けられており、レーザー光がこの反射部材513に入射し反射されるようにすることで、距離計測を確実に行うことができる。また、このような反射部材513を別途設けることで、ノズル本体510自体の形状に関しては高い設計自由度を確保することができる。
【0186】
以上説明したように、他の実施形態(自動調整タイプの基板処理装置)において、動径方向R1~R3が本発明の「ノズル移動方向」に相当している。また、貫通孔581bが本発明の「貫通孔」の一例に相当している。また、グライドリング584、585が本発明の「一対のシールリング」の一例に相当している。さらに、ノズルヘッド部582が本発明の「可動支持部」の一例に相当している。
【0187】
なお、上記した他の実施形態では、本発明の「シールリング」として2種類のリング部材を組み合わせたグライドリングを用いているが、これに限定されるものではない。例えばその内周面がリング状摺接部位として機能するとともにその外周面がリング状密着部位として機能する、単一リング部材を本発明の「シールリング」として用いてもよい。また、3種類以上のリング部材を組み合わせたシールリングを用いてもよい。
【0188】
また、上記他の実施形態では、処理液吐出ノズル51(51A、51B、51C)がノズルヘッド部582(可動支持部)を介してノズル駆動部583およびガイドシャフト586と間接的に連結されているが、それらが直接的に連結されるように構成してもよい。
【0189】
また、上記した他の実施形態では、モータ583aが本発明の「アクチュエータ」の一例として使用されているが、例えばカードモータなどの駆動部品を本発明の「アクチュエータ」として用いてもよい。
【0190】
また、上記した他の実施形態では、処理液吐出ノズル51(51A、51B、51C)を動径方向R(R1~R3)に移動させているが、ノズル移動方向はこれに限定されるものではない。つまり、本発明の適用対象は、基板Sの半径方向(動径方向R)に対して水平面内で傾斜した方向に処理液吐出ノズル51を移動させる基板処理装置にも適用することができる。
【0191】
また、上記した他の実施形態の処理ユニット1はノズルブロック50にそれぞれ異なる処理液を吐出する3組の処理液吐出ノズル51A~51Cが設けられている。しかしながら、ノズルの配設数はこれに限定されるものではなく、その数は任意である。
【0192】
また、上記した他の実施形態は、ノズル移動方向にノズルを往復移動可能となっている。このため、次に説明するようにスキャンイン/スキャンアウト方式で処理液を基板Sの下面周縁部に供給するように構成してもよい。
【0193】
図19はノズル移動部の構成および動作を模式的に示す図である。図19(a)および図19(g)はホーム位置を示す模式図であり、図19(b)および図19(f)はプリディスペンス位置を示す模式図であり、図19(c)および図19(e)はプリディスペンス位置を示す模式図であり、図19(d)は最大処理位置を示す模式図である。また、同図中において、処理液を吐出中の処理液吐出ノズル51を明示するために、当該処理液吐出ノズル51をドットを付している。一方、処理液からの吐出を停止している処理液吐出ノズル51については、ドットを付与していない。また、同図中の点線矢印は処理液吐出ノズル51の移動方向を示している。ここでは、処理液吐出ノズル51Cをスキャンイン/スキャンアウトさせながら、処理液を供給する場合を例示しながら説明するが、処理液吐出ノズル51A、51Bについても、基本的に同一である。
【0194】
制御ユニット10は、基板Sに対してベベル処理を実行する前に、全ての処理液吐出ノズル51A~51Cがホーム位置P0に位置していることを確認する。このとき、一部または全部の処理液吐出ノズル51がホーム位置P0に位置していない場合、当該処理液吐出ノズル51は制御ユニット10からのホーム復帰指令に基づいてホーム位置P0に移動される。そして、図19(a)に示すように、全部の処理液吐出ノズル51がホーム位置P0に位置した状態で、供給対象の処理液を吐出する処理液吐出ノズル51(ここでは、ノズル51C)は、以下の動作を順番に実行する。つまり、
動作A:ホーム位置P0からプリディスペンス位置P1への往路移動(同図(b)中の点線矢印参照)、
動作B:プリディスペンス位置P1での処理液の吐出開始(同図(b)中のドット参照)、
動作C:処理液を吐出したままプリディスペンス位置P1から端面位置P2を経由した最大処理位置P3までの復路移動(同図(c)中の点線矢印参照)、
動作D:処理液を吐出したまま最大処理位置P3での反転移動(同図(d)中の点線矢印参照)、
動作E:処理液を吐出したまま最大処理位置P3から端面位置P2を経由したプリディスペンス位置P1への往路移動(同図(e)中の点線矢印参照)、
動作F:端面位置P2を通過した時点での処理液の吐出停止(同図(f)中のドット無参照)、
動作G:処理液を吐出停止したままプリディスペンス位置P1での反転移動(同図(f)中の点線矢印参照)、
動作H:処理液を吐出停止したままホーム位置P0への移動および停止(同図(g)中の点線矢印参照)、
がこの順序で実行される。
【0195】
上記動作中、特に動作Cにおいて、処理液吐出ノズル51Cのノズル511は処理液を吐出したまま端面位置P2を経由して基板Sの下方を入り込む、いわゆるスキャンイン動作が実行される。また、動作Dでは、最大処理位置P3への処理液の供給を継続させながら処理液吐出ノズル51Cの移動方向が反転される。さらに、動作Eにおいて、処理液吐出ノズル51Cのノズル511は処理液を吐出したまま端面位置P2を経由して基板Sの下方を通過する、いわゆるスキャンアウト動作が実行される。
【0196】
なお、基板Sにノッチが形成されている場合、ノッチ位置に対応して以下の制御項目、
・処理液供給部59に設けられた液吐出バルブ(図示省略)の開閉、
・動径方向R3における処理液吐出ノズル51Cの位置制御、
・処理液吐出ノズル51Cのノズル移動速度、
・基板Sの回転数、
・処理液吐出ノズル51Cからの単位時間当たりの選択処理液の吐出量(以下「吐出流量」という)、
が制御されるように構成してもよい。これらの制御によって、ノッチに到達する処理液の量、つまり切欠到達量が少なくなることで、ベベル処理における液はねの量を抑制することができる。
【0197】
また、自動調整タイプの基板処理装置では、複数の処理液吐出ノズル51が個別に移動するように構成しているが、図20図21に示すように、一括して移動するように構成してもよい。
【0198】
図20は本発明に係る基板処理装置の別の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置に設けられた処理機構の構造および配置を示す図である。この実施形態では、ベース部材541の両端部に対し、ねじ等の固結部材551,551が挿通される。そして、固結部材551,551がフランジ部位572に設けられたねじ穴に螺合することで、ベース部材541がフランジ部位572に固定される。さらに、ベース部材541上にカードモータ583eが取り付けられている。このカードモータ583eの駆動軸に対し、3本の処理液吐出ノズル51を支持する支持部583fが取り付けられている。この支持部583fは動径方向Rに移動自在に設けられている。このため、制御ユニット10からモータ駆動部583cに対してノズル移動指令が与えられると、それに応じてモータ駆動部583cがモータ583eを駆動し、3本の処理液吐出ノズル51を一括して支持したまま支持部538fを動径方向Rに移動させる。その結果、ノズル位置を一括して調整することが可能となっている。
【0199】
図21は本発明に係る基板処理装置のさらに別の実施形態の一例である自動調整タイプの基板処理装置に設けられた処理機構の構造および配置を示す図である。この実施形態が、図20に示す実施形態と大きく相違するのは、カードモータ583e、支持部538fおよび処理液吐出ノズル51の配置である。つまり、図20に示す装置では、これらが動径方向Rに沿って直線状に配置されている。このため、装置各部の寸法関係からカードモータ583eを上記のように配置するのが困難となる場合がある。これに対し、図21に示すように、カードモータ583eが処理液吐出ノズル51の動径方向Rから外れた位置に配置する。これによって、カードモータ583eから支持部538fに与える力の向きが水平面内において動径方向Rに対して傾斜した方向となる。これに対応し、支持部538fは上記力を受けると動径方向Rに移動するように構成されている。このため、制御ユニット10からモータ駆動部583cに対してノズル移動指令が与えられると、それに応じてモータ駆動部583cがモータ583eを駆動し、3本の処理液吐出ノズル51を一括して支持したまま支持部538fを動径方向Rに移動させる。その結果、ノズル位置を一括して調整することが可能となっている。また、このような構成を採用することで設計自由度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
この発明は、基板の下方に配置したノズルから基板の周縁部に処理液を供給して上記周縁部を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0201】
1 処理ユニット
2 保持回転機構(回転機構)
2A 基板保持部
2B 回転機構
4 上面保護加熱機構
5 処理機構
11 チャンバ
21 スピンチャック
50 ノズルブロック(ノズル機構)
51,51A~51C 処理液吐出ノズル
51d 雄ねじ部(位置調整部)
54 支持機構(支持部)
58,58A~58C ノズル移動機構
510 ノズル本体
511 吐出口
515 アジャストナット(ナット、位置調整部)
581 固定支持部(支持部)
581b 貫通孔
582 ノズルヘッド部
583 ノズル駆動部
584,585 グライドリング(一対のシールリング)
584a リング状樹脂部材
584b リング状弾性部材
584a1 内周面(リング状摺接部位)
584b1 外周面(リング状弾性部位)
586 ガイドシャフト
AX 回転軸(鉛直軸)
R、R1~R3 動径方向(半径方向)
SP 基板処理部
S 基板
Ss (基板の)周縁部
VAa~VAc 仮想円弧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21