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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173574
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】正極材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241205BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241205BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241205BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023155824
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】112120622
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】劉浩▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】鄭詩▲チィ▼
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
(72)【発明者】
【氏名】呉乃立
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AA06
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE06
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB12
5H050EA11
5H050EA15
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気的な性能を向上させた、固体電解質被覆層を備える正極材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コア層と被覆層とを備える複数の粒子で構成された正極材料を提供する。コア層はLi[NiCoMnAl]O(a+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1)であるLi金属酸化物材料で構成される。被覆層はコア層を覆い、固体電解質で構成される。固体電解質は、コア層上で第1原料を反応させることによって形成し、且つ固体電解質の組成がLiInCl(x+y=6、0<x<6、0<y<6)である。正極材料は、前駆体を熱処理して形成し、且つ前駆体は、リチウム金属酸化物材料、第1原料および溶媒を混合して形成する。第1原料は、Li、In、ClおよびFを含有する。リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比が1:0.3~1:0.6である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料であって、複数の粒子で構成され、前記複数の粒子は、コア層と被覆層とを備え、
前記コア層は、リチウム金属酸化物材料で構成され、前記リチウム金属酸化物材料の組成がLi[NiCoMnAl]Oであり、且つa+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1であり、
前記被覆層は、前記コア層を覆い、前記被覆層は、固体電解質で構成され、前記固体電解質は、前記コア層上で第1原料を反応させることで形成され、且つ前記固体電解質の組成がLiInClであり、且つx+y=6、0<x<6、0<y<6であり、前記正極材料は、前駆体を熱処理して形成し、且つ前記前駆体は、前記リチウム金属酸化物材料と前記第1原料と溶媒とを混合して形成し、前記第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有し、前記リチウム金属酸化物材料と前記固体電解質との重量比が1:0.3~1:0.6である、ことを特徴とする正極材料。
【請求項2】
aは、0.9<a<1である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
xは4≦x≦5.5であり、yは、0.5≦y≦2である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記リチウム金属酸化物材料と前記固体電解質との重量比が1:0.4~1:0.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
前記粒子は粒子径を有し、前記被覆層は厚さを有し、前記粒子径と前記厚さの比が6:1~40:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
前記粒子の前記粒子径が5 μm~20 μmであり、前記被覆層の前記厚さが0.5 μm~3 μmである、ことを特徴とする請求項5に記載の正極材料。
【請求項7】
前記第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項8】
前記溶媒は揮発性有機溶媒である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項9】
前記熱処理は、真空環境または不活性ガス雰囲気下で行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項10】
前記熱処理の温度は100 ℃~250 ℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項11】
リチウム金属酸化物材料を用意し、前記リチウム金属酸化物材料の組成がLi[NiCoMnAl]Oであり、且つa+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1である、ステップ(a)と、
前記リチウム金属酸化物材料、第1原料および溶媒を混合し、前駆体を形成し、前記第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する、ステップ(b)と、
前記前駆体を熱処理し、複数の粒子で構成される正極材料を形成し、前記粒子は、コア層と前記コア層を覆う被覆層とを備え、前記コア層は、前記リチウム金属酸化物材料で構成され、前記被覆層は、固体電解質で構成され、前記固体電解質は、前記コア層上で第1原料を反応させることに形成し、且つ前記固体電解質の組成がLiInClであり、且つx+y=6、0<x<6、0<y<6、であり、前記リチウム金属酸化物材料と前記固体電解質との重量比が1:0.3~1:0.6である、ステップ(c)とを含む、ことを特徴とする正極材料の製造方法。
【請求項12】
aは、0.9<a<1である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項13】
xは4≦x≦5.5であり、yは0.5≦y≦2である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム金属酸化物材料と前記固体電解質との重量比が1:0.4~1:0.5である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項15】
前記粒子は粒子径を有し、前記被覆層は厚さを有し、前記粒子径と前記厚さとの比が6:1~40:1である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項16】
前記粒子の前記粒子径が5 μm~20 μmであり、前記被覆層の前記厚さが0.5 μm~3 μmである、ことを特徴とする請求項15に記載の正極材料の製造方法。
【請求項17】
前記第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択されるものである、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項18】
前記溶媒は揮発性有機溶媒である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項19】
前記熱処理は真空環境または不活性ガス雰囲気下で行われる、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【請求項20】
前記熱処理の温度は100 ℃~250 ℃である、ことを特徴とする請求項11に記載の正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極材料およびその製造方法に関し、特に、有機溶媒を介して製造され、電気的な性能を向上させた、固体電解質被覆層を備える正極材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性やエネルギー密度を考慮して全固体電池の開発が主流となっている。従来のリチウム電池と比較すると、全固体電池にはさまざまな面で改善の余地がある。正極材料については、ニッケル高含有量の正極材料は水分に非常に弱いという欠点があるため、固体電解質に関して、機械的特性を改善しながら厚さをいかに薄くするかが課題となっている。
【0003】
固体電解質の種類の中では、最も量産可能性が高いのは、酸化物固体電解質(Oxide solid electrolyte)、硫化物固体電解質(Sulfide solid electrolyte)およびハロゲン化固体電解質(Halide solid electrolyte)である。なかでも、ハロゲン化固体電解質は、高安定性、高安全性、高イオン伝導性および低界面インピーダンス(interface impedance)などの特徴を有しており、近年広く話題になっている材料の一つである。しなしながら、ハロゲン化固体電解質もニッケル高含有量の正極材料と同様、水分に非常に敏感であるという欠点があり、最も広く使用されているハロゲン化物固体電解質であるLiInClにも電気的性能を改善する余地がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来技術が直面する問題を解決するために、有機溶媒を介して製造することで、水分が正極材料に悪影響を与えることを回避でき、電気的な性能を向上させた、固体電解質被覆層を備える正極材料およびその製造方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正極材料およびその製造方法を提供することである。正極材料は、複数の粒子で構成され、各粒子は、コア層とコア層を覆う被覆層とを備える。コア層は組成Li[NiCoMnAl]Oのリチウム金属酸化物材料で構成され、ここで、0.8<x<1を有する。コア層中の高ニッケル含有量により、高エネルギー密度且つ低コストの正極材料を実現することができる。被覆層は組成LiInClの固体電解質で構成される。塩素とフッ素とで構成される固体電解質を使用することで、高放電容量および高放電容量維持率を有する正極材料を得ることができる。固体電解質の組成LiInClでは、x、yの数値範囲は4≦x≦5.5、0.5≦y≦2である。固体電解質における塩素およびフッ素の組成比を制御することによって、電気的な性能をさらに向上させることができる。また、コア層のリチウム金属酸化物材料と被覆層の固体電解質の重量比が1:0.3~1:0.6に制御することによって、均一なコアシェル構造を備える正極材料を得ることができる。
【0006】
本発明のもう一つ目的は、正極材料およびその製造方法を提供することである。正極材料は、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるリチウム金属酸化物材料と、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する第1原料とを有機溶媒に混合し、熱処理して形成する。乾式混合に比べて、有機溶媒による湿式混合は、コストが低く且つ制御も容易であり、電極作製時の固体分散性を向上させながら水分の悪影響を排除することができる。さらに、湿式混合を通じて、第1原料はリチウム金属酸化物材料粒子の上面で直接反応してインサイチュ合成(In situ synthesis)を実現でき、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成して電気的な性能を向上させることができる。熱処理の温度は例えば100 ℃~250 ℃であり、これによって、エネルギー消費が少なく、製造コストが抑えられることができ、環境上の利点も得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の粒子で構成された正極材料を提供(用意)し、前記複数の粒子の各粒子は、コア層と被覆層とを備える。コア層は、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるリチウム金属酸化物材料で構成され、ここで、a+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1である。被覆層は、コア層を覆い、固体電解質で構成される。固体電解質は、コア層上で第1原料を反応させることによって形成し、且つ固体電解質の組成がLiInClであり、x+y=6、0<x<6、0<y<6である。正極材料は、前駆体を熱処理して形成し、且つ前駆体は、リチウム金属酸化物材料、第1原料および溶媒を混合して形成する。第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する。リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比が1:0.3~1:0.6である。
好ましくは、aは、0.9<a<1である。
好ましくは、xは4≦x≦5.5であり、yは、0.5≦y≦2である。
好ましくは、リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比が1:0.4~1:0.5である。
好ましくは、粒子は粒子径を有し、被覆層は厚さを有し、粒子径と厚さの比が6:1~40:1である。
好ましくは、粒子の粒子径が5 μm~20 μmであり、被覆層の厚さが0.5 μm~3 μmである。
好ましくは、第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択されたものである。
好ましくは、溶媒が揮発性有機溶媒である。
好ましくは、熱処理は真空環境または不活性ガス雰囲気下で行われる。
好ましくは、熱処理の温度が100 ℃~250 ℃である。
上記目的を達成するために、本発明は、リチウム金属酸化物材料を提供(用意)し、リチウム金属酸化物材料の組成がLi[NiCoMnAl]Oであり、ここで、a+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1である、ステップ(a)と、リチウム金属酸化物材料、第1原料および溶媒を混合し、前駆体を形成し、第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する、ステップ(b)と、前駆体を熱処理し、複数の粒子で構成される正極材料を形成し、粒子は、コア層とコア層を覆う被覆層とを備え、コア層は、リチウム金属酸化物材料で構成され、被覆層は、固体電解質で構成され、固体電解質は、コア層上で第1原料を反応させることで形成し、且つ固体電解質の組成がLiInClであり、ここで、x+y=6、0<x<6、0<y<6、であり、リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比が1:0.3~1:0.6である、ステップ(c)とを含む正極材料の製造方法を提供する。
好ましくは、aは、0.9<a<1である。
好ましくは、xは4≦x≦5.5であり、yは、0.5≦y≦2である。
好ましくは、リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比が1:0.4~1:0.5である。
好ましくは、粒子は粒子径を有し、被覆層は厚さを有し、粒子径と厚さの比が6:1~40:1である。
好ましくは、粒子の粒子径が5 μm~20 μmであり、被覆層の厚さが0.5 μm~3 μmである。
好ましくは、第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択されたものである。
好ましくは、溶媒が揮発性有機溶媒である。
好ましくは、熱処理は真空環境または不活性ガス雰囲気下で行われる。
好ましくは、熱処理の温度が100 ℃~250 ℃である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態における正極材料の構造概念図である。
図2】本発明の1つの実施形態における正極材料の断面SEM画像である。
図3】本発明の1つの実施形態における正極材料の製造方法のフローチャート図である。
図4A】本発明の第1実施例の正極材料のSEM画像である。
図4B】本発明の第1実施例の正極材料のSEM画像である。
図5A】本発明の第2実施例の正極材料のSEM画像である。
図5B】本発明の第2実施例の正極材料のSEM画像である。
図6A】本発明の第3実施例の正極材料のSEM画像である。
図6B】本発明の第3実施例の正極材料のSEM画像である。
図7A】本発明の比較例の正極材料のSEM画像である。
図7B】本発明の比較例の正極材料のSEM画像である。
図8A】本本発明の第1実施例の放電容量-サイクル数曲線図である。
図8B】本本発明の第2実施例の放電容量-サイクル数曲線図である。
図8C】本本発明の第3実施例の放電容量-サイクル数曲線図である。
図8D】本本発明の比較例の放電容量-サイクル数曲線図である。
図9A】本本発明の第1実施例の放電容量維持率-サイクル数曲線図である。
図9B】本本発明の第2実施例の放電容量維持率-サイクル数曲線図である。
図9C】本本発明の第3実施例の放電容量維持率-サイクル数曲線図である。
図9D】本本発明の比較例の放電容量維持率-サイクル数曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴及び利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態は、以下の内容において詳細に説明する。本発明は、範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、以下の説明及び図面は、本発明を説明するために使用されており、本発明を限定するためのものではない。また、本発明の詳細な説明において、第1特徴が第2特徴の上又は上方に配置されることとは、配置された前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されている実施形態と、前記第1特徴と前記第2特徴との間に他の構造を介し前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されていない実施形態とを含む。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲に記載された異なる構成を説明するために使用されており、これらの構成は当該用語に限定されず、実施形態に関する内容では、該当構成は異なる符号で表示さているが、第1構成は第2構成と表示され、また、第2構成は第1構成と表示されることも可能であり、本発明の実施形態から逸脱しない。また、「及び/又は」という用語は、一つおよび複数の関連要素またはその全部の組合せを意味する。「およそ・約」という用語は、当業者によって一般に受け入れられる標準誤差範囲内の平均値を指す。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細書に記載されているすべての数値範囲、量、数値およびパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、内容に記載されない限り、本発明及び特許請求の範囲の数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメーターは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細書での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含むことを留意されたい。
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態における正極材料の構造概念図である。図2は、本発明の1つの実施形態における正極材料の断面SEM画像である。図2は、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(Focused ion beam scanning electron microscopy, FIB-SEM)によって測定された画像である。本実施形態では、正極材料は、複数の粒子1で構成され、且つ各粒子1はコア層10と被覆層20とを備える。コア層10は、Li[NiCoMnAl]Oからなるリチウム金属酸化物材料で構成され、ここで、a+b+c+d=1であり、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1である。被覆層20は、コア層10を覆い、且つ固体電解質で構成される。固体電解質は、コア層10で第1原料を反応させることにより形成され、固体電解質の組成は、LiInClであり、x+y=6、0<x<6、0<y<6である。正極材料は、前駆体の熱処理によって形成され、前記前駆体は、リチウム金属酸化物材料、第1原料、および溶媒を混合することによって形成される。第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含む。リチウム金属酸化物材料と固体電解質との重量比は、1:0.3~1:0.6である。塩素およびフッ素で固体電解質を形成することにより、高放電容量および高放電容量維持率を有する正極材料が得られる。本実施形態において、リチウム金属酸化物材料は、例えば、Li[NiCoMn]Oのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)材料であり、a=0.83、b=0.12、c=0.05、すなわち、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム材料におけるニッケル、コバルト、マンガンの比率は83:12:5である。ニッケルコバルトマンガン酸リチウム材料は、例えば、固相合成法(solid-state synthesis)で製造されることが好ましい。別の実施形態において、リチウム金属酸化物材料は、組成比が異なるニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)材料であり、例えば、Li[NiCoAl]Oのニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)材料またはLi[NiCoMnAl]Oのニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム(NCMA)材料であり、且つゾルゲル法(Sol-gel process)によって製造することができる。好ましい実施形態では、リチウム金属酸化物材料の組成はLi[NiCoMnAl]Oであり、aの数値範囲が例えば0.9<a<1であり、すなわち、リチウム金属酸化物材料中のリチウム以外の金属元素においてニッケルが占めるモル比が90%を超える。例えば、組成がLi[NiCoMnAl]Oのニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム(NCMA)材料で、a=0.93、b=0.03、c=0.03、d=0.01であり、すなわち、ニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム材料中のニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムの比率が93:3:3:1である。コア層10中の高いニッケル含有量により、高エネルギー密度且つ低コストの正極材料を実現することができる。なお、本発明のリチウム金属酸化物材料の種類、組成比、および製造方法などについては、これに限定されるものではなく、ここでは詳細を省略する。
【0011】
本実施形態において、固体電解質の組成LiInClにおいて、x、yの範囲は例えば4≦x≦5.5、0.5≦y≦2であり、すなわち、塩素とフッ素との比率が5.5:0.5~4:2である。固体電解質内の塩素およびフッ素の組成比率を制御することによって、正極材料の電気的性能を向上させることができる。塩素とフッ素との比率が例えば5.3:0.7~4.5:1.5であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
好ましい実施形態では、リチウム金属酸化物材料および固体電解質の重量比が1:0.4~1:0.5である場合、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成することができる。例えば、図2に示すように、正極材料の粒子1は粒子径T1を有し、被覆層20は厚さT2を有する場合、粒子径T1と厚さT2の比が6:1~40:1である。粒子1の粒子径T1は5 μm~20 μmである。被覆層20の厚さT2は0.5 μm~3 μmである。
【0013】
本実施形態では、第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択され、溶媒は揮発性有機溶媒である。乾式混合に比べて、有機溶媒による湿式混合はコストが低く且つ制御も容易であり、電極作製時の固体分散性を向上させながら水分の悪影響を排除することができる。さらに、湿式混合を通じて、第1原料はリチウム金属酸化物材料粒子の表面で直接反応してインサイチュ合成(In situ synthesis)を実現でき、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成して電気的な性能を向上させることができる。第1原料としては、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)および塩化インジウム(InCl)が挙げられ、第1原料中のリチウム、インジウムおよびハロゲン元素(塩素とフッ素の和)のモル比は例えば3:1:6である。本実施形態において、揮発性有機溶媒は例えばエタノールである。もちろん、リチウム金属酸化物材料および第1原料と反応しない他の揮発性有機溶媒も適用可能であり、ここでは詳細を省略する。本実施形態において、前駆体は例えばリチウム金属酸化物材料、第1原料、導電材、バインダーおよび溶媒を混合し、真空環境または不活性ガス雰囲気下で反応させることにより形成される。導電材は例えばカーボンナノチューブ、導電性グラファイト(Conductive graphite)、導電性カーボンブラック(Conductive carbon black)、アセチレンブラック(Acetylene black)または気相成長炭素繊維(Vapor grown carbon fiber, VGCF)などが挙げられ、バインダーは例えばポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene difluoride, PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethene, PTFE)などが挙げられる。真空環境は例えば圧力が10-3 torr以下の真空反応瓶である。不活性ガス雰囲気は例えばアルゴン雰囲気または窒素雰囲気などが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0014】
上述の正極材料によれば、本発明は正極材料の製造方法を提供する。図3は、本発明の1つの実施形態における正極材料の製造方法のフローチャート図である。まず、ステップS1に示すように、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるリチウム金属酸化物材料を用意し、ここで、a+b+c+d=1、0.8<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1である。本実施形態において、リチウム金属酸化物材料は例えば組成がLi[NiCoMn]Oであるニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)材料であり、a=0.83、b=0.12、c=0.05、すなわち、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム材料中のニッケル、コバルト、マンガンの比率が83:12:5である。好ましくは、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム材料は例えば固相合成法(solid-state synthesis)で製造される。別の実施形態では、リチウム金属酸化物材料は例えば組成の比率が異なるニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)材料であり、その組成がLi[NiCoAl]Oであるニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)材料または組成がLi[NiCoMnAl]Oであるニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム(NCMA)材料であり、且つ例えばゾルゲル法(Sol-gel process)で製造される。好ましい実施形態では、リチウム金属酸化物材料の組成がLi[NiCoMnAl]Oであり、aの数値範囲が例えば0.9<a<1であり、すなわち、リチウム金属酸化物材料中のリチウム金属以外の金属元素において、ニッケル金属が占めるモル比が90%を超える。例えば、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム(NCMA)材料で、a=0.93、b=0.03、c=0.03、d=0.01であり、すなわち、ニッケルコバルトマンガンアルミン酸リチウム材料中のニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムの比率が93:3:3:1である。コア層10中の高いニッケル含有量により、高エネルギー密度且つ低コストの正極材料を実現することができる。なお、本発明のリチウム金属酸化物材料の種類、組成比、および製造方法などについては、これに限定されるものではなく、ここでは詳細を省略する。
【0015】
さらに、ステップS2に示すように、リチウム金属酸化物材料、第1原料および溶媒を混合し、前駆体を形成する。第1原料は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する。第1原料は、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、塩化インジウム(InCl)およびフッ化インジウム(InF)からなる群から選択され、溶媒は揮発性有機溶媒である。乾式混合に比べて、有機溶媒による湿式混合は、コストで制御も容易であり、電極作製時の固体分散性を向上させながら水分の悪影響を排除することができる。さらに、湿式混合を通じて、第1原料はリチウム金属酸化物材料粒子の上面で直接反応してインサイチュ合成(In situ synthesis)を実現でき、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成して電気的な性能を向上させることができる。本実施形態において、リチウム金属酸化物材料と第1原料の重量比は例えば1:0.3~1:0.6であり、好ましくは、1:0.4~1:0.5である。第1原料は、例えば、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)および塩化インジウム(InCl)を含有し、且つ第1原料中のリチウム、インジウムおよびハロゲン元素(塩素とフッ素の和)モル比は例えば3:1:6である。本実施形態において、揮発性有機溶媒は例えばエタノールである。もちろん、リチウム金属酸化物材料および第1原料と反応しない揮発性有機溶媒も適用可能であり、ここでは詳細を省略する。本実施形態において、前駆体は例えばリチウム金属酸化物材料、第1原料、導電材、バインダーおよび溶媒を混合し、真空環境または不活性ガス雰囲気下で反応させることにより形成される。導電材は、例えば、カーボンナノチューブ、導電性グラファイト(Conductive graphite)、導電性カーボンブラック(Conductive carbon black)、アセチレンブラック(Acetylene black)または気相成長炭素繊維(Vapor grown carbon fiber, VGCF)などが挙げられ、バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene difluoride, PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethene, PTFE)などが挙げられる。真空環境は例えば圧力が10-3 torr以下の真空反応瓶である。不活性ガス雰囲気は例えばアルゴン雰囲気または窒素雰囲気であり、本発明はこれに限定されない。
【0016】
最後に、ステップS3に示すように、前駆体を熱処理し、複数の粒子1から構成される正極材料を形成する。各複数の粒子1は、コア層10と、コア層10を覆う被覆層20とを備える。コア層10は、リチウム金属酸化物材料で構成され、被覆層20は、固体電解質で構成される。固体電解質は、コア層10上で第1原料を反応させることによって形成され、且つ固体電解質の組成がLiInClであり、x+y=6、0<x<6、0<y<6である。リチウム金属酸化物材料と固体電解質の重量比が1:0.3~1:0.6である。本実施形態において、熱処理は、真空環境または不活性ガス雰囲気下で行われる。真空環境は例えば圧力が10-3 torr以下の真空反応瓶である。不活性ガス雰囲気は例えばアルゴン雰囲気または窒素雰囲気である。熱処理の温度が100 ℃~250 ℃であり、好ましくは、160 ℃~200 ℃であり、この場合、本発明の製造方法はエネルギー消費が少なく、製造コストが節約され、環境上の利点もある。本実施形態において、前駆体を例えば金属泊上に均一に塗布し、熱処理した後、切断して正極シートを形成する。
【0017】
本実施形態において、固体電解質の組成LiInClにおいて、x、yの範囲は例えば4≦x≦5.5、0.5≦y≦2であり、すなわち、塩素とフッ素との比率が5.5:0.5~4:2である。固体電解質の塩素とフッ素の組成比を制御することによって、正極材料の電気的な性能を向上させることができる。塩素とフッ素との比率が例えば5.3:0.7~4.5:1.5であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。好ましい実施形態では、リチウム金属酸化物材料および固体電解質の重量比が1:0.4~1:0.5である場合、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成することができる。正極材料の粒子1は粒子径T1を有し、被覆層20は厚さT2を有し、粒子径T1と厚さT2との比率が6:1~40:1である。粒子1の粒子径T1は5 μm~20 μmである。被覆層20の厚さT2は0.5 μm~3 μmである。
【0018】
以下、比較例および実施例を通じて、本発明の製造過程および効果を詳細に説明する。
【0019】
第1実施例:
【0020】
第1実施例は、以下の方法で製造された正極材料である。まず、リチウム金属酸化物材料を提供(用意)する。リチウム金属酸化物材料の組成は、Li[NiCoMnAl]Oであり、且つa=0.82、b=0.13、c=0.05である。換言すれば、リチウム金属酸化物材料は、ニッケル、コバルト、マンガンのモル比が82:13:5であるニッケルコバルトマンガン酸リチウム材料である。
【0021】
さらに、0.68gのリチウム金属酸化物材料、0.3gの第1原料、0.02gの気相成長炭素繊維(Vapor grown carbon fiber, VGCF)および0.01gのポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethene, PTFE)を3mlのアルコールに添加し、120 ℃で粉砕して材料を均一に混合し、前駆体を形成する。第1実施例における第1原料では、0.083gの塩化リチウム(LiCl)、0.0189gのフッ化リチウム(LiF)および0.199gの塩化インジウム(InCl)を含み、すなわち、第1原料中に、リチウム、インジウム、塩素、およびフッ素のモル比が約3:1:5.19:0.81である。
【0022】
最後に、前駆体を熱処理して正極材料を形成する。熱処理は、アルゴン雰囲気下、温度180 ℃、2時間で行った。
【0023】
第2実施例:
第2実施例の製造方法は、第1実施例の製造方法とほぼ同じであるが、異なる点は、第2実施例の第1原料には0.068gの塩化リチウム(LiCl)、0.029gのフッ化リチウム(LiF)および0.203gの塩化インジウム(InCl)を含有し、すなわち、第1原料中に、リチウム、インジウム、塩素、およびフッ素のモル比が約3:1:4.77:1.23である。
【0024】
第3実施例:
【0025】
第3実施例の製造方法は、第1実施例の製造方法とほぼ同じであるが、異なる点は、第3実施例の第1原料には0.053gの塩化リチウム(LiCl)、0.04gのフッ化リチウム(LiF)および0.207gの塩化インジウム(InCl)を含有し、すなわち、第1原料中に、リチウム、インジウム、塩素、およびフッ素のモル比が約3:1:4.35:1.65である。
【0026】
比較例:
【0027】
比較例の製造方法は、第1実施例の製造方法とほぼ同じであるが、異なる点は、比較例の第1原料には0.11gの塩化リチウム(LiCl)および0.19gの塩化インジウム(InCl)のみを含有し、すなわち、第1原料中に、フッ素を含有せず、且つリチウム、インジウム、および塩素のモル比が約3:1:6である。
【0028】
図4A図4Bは、本発明の第1実施例の正極材料のSEM画像である。図5A図5Bは、本発明の第2実施例の正極材料のSEM画像である。図6A図6Bは、本発明の第3実施例の正極材料のSEM画像である。図7A図7Bは、本発明の比較例の正極材料のSEM画像である。図8A図8Dは、第1実施例、第2実施例、第3実施例または比較例で製造されたボタン電池を測定して得られた放電容量-サイクル数曲線図である。表1は、第1実施例、第2実施例、第3実施例および比較例で製造されたボタン電池の第1サイクル目および第45サイクル目の放電容量をそれぞれ示している。ボタン電池の正極はそれぞれ第1実施例、第2実施例、第3実施例および比較例の正極材料であり、負極はリチウム金属である。電圧ウィンドウは2.5V~4.4Vであり、充放電レート(C-rate)は0.1Cであり、充電は定電流(Constant current, CC)方式で行われ、放電は定電流定電圧(Constant current constant voltage, CCCV)方式で行われる。定電流定電圧方式での放電は、放電中は一定の電流を維持し、上限電圧に達した後は放電が完了するまで一定の電圧を維持する。充放電測定の温度条件は55 ℃である。図8A図8Dおよび表1に示すように、第1サイクル目では、塩素とフッ素との比率が4.77:1.23である第2実施例の放電容量は196.18 mAh/gであり、比較例の放電容量よりわずかに高い。塩素とフッ素との比率が5.19:0.81である第1実施例の放電容量は189.49 mAh/gであり、比較例の放電容量より若干低いが、その差は明らかではない。第45サイクル目では、第1実施例の放電容量は160.21 mAh/gであり、比較例の放電容量147.91 mAh/gに比べて8.31 %増加した。第2実施例の放電容量は166.90 mAh/gであり、比較例の放電容量147.91 mAh/gに比べて12.83 %増加した。これによって、塩素とフッ素から構成される固体電解質を使用すると、高正極材料の放電容量を大幅に増加させることができ、且つ塩素とフッ素との比率が5.3:0.7~4.5:1.5である固体電解質はより優れた効果を発揮するすることがわかる。
【表1】
【0029】
図9A図9Dは、第1実施例、第2実施例、第3実施例および比較例で製造されたボタン電池を測定して得られた放電容量維持率-サイクル数曲線図である。表2は、第1実施例、第2実施例、第3実施例および比較例で製造されたボタン電池の第45サイクル目の放電容量維持率をそれぞれ示している。図9A図9Dおよび表2に示すように、第45サイクル目では、第1実施例の放電容量維持率は84.55 %であり、比較例の放電容量維持率76.65 %に比べて10.31 %増加した。第2実施例の放電容量維持率は85.07 %であり、比較例の放電容量維持率76.65 %に比べて10.98 %増加した。第3実施例の放電容量維持率は78.44 %であり、比較例の放電容量維持率76.65 %に比べて2.34 %増加した。これによって、塩素とフッ素から構成される固体電解質を使用すると、正極材料の放電容量維持率を大幅に増加させることができ、且つ塩素とフッ素との比率が5.3:0.7~4.5:1.5である固体電解質はより優れた効果を発揮することがわかる。
【表2】
【0030】
上述したように、本発明は、電気的性能を向上させるために、有機溶媒を介して製造される固体電解質被覆層を有する正極材料および製造方法を提供している。正極材料は、複数の粒子で構成され、且つ各粒子は、コア層と、コア層を覆う被覆層とを備える。コア層は、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるリチウム金属酸化物材料で構成され、ここで、0.8<x<1である。コア層中の高いニッケル含有量により、高エネルギー密度且つ低コストの正極材料を実現することができる。被覆層は、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する固体電解質で構成される。塩素とフッ素で固体電解質を形成することによって、高放電容量および高放電容量維持率を有する正極材料を得ることができる。固体電解質の組成は、例えば、LiInClであり、ここで、4≦x≦5.5、0.5≦y≦2である。固体電解質における塩素とフッ素との組成比を制御することによって、前述した電気的な性能をさらに向上させることができる。コア層のリチウム金属酸化物材料と被覆層の固体電解質の重量比を例えば1:0.3~1:0.6にすることによって、均一なコアシェル構造を有する正極材料を得ることができる。正極材料の製造方法は、組成がLi[NiCoMnAl]Oであるリチウム金属酸化物材料と、リチウム、インジウム、塩素およびフッ素を含有する第1原料とを有機溶媒に混合し、熱処理して正極材料を形成する。乾式混合に比べて、有機溶媒による湿式混合は低コストで制御も容易であり、電極作製時の固体分散性を向上させながら水分の悪影響を排除することができる。さらに、湿式混合を通じて、第1原料はリチウム金属酸化物材料粒子の表面で直接反応してインサイチュ合成(In situ synthesis)を実現でき、均一なコアシェル構造を有する正極材料を形成して電気的な性能を向上させることができる。熱処理の温度は例えば100 ℃~250 ℃であり、これによって、エネルギー消費が少なく、製造コストが節約され、環境上の利点もある。
【0031】
本発明は、当該技術分野における技術者によって様々な方法で修正または変更することができるが、その修正および変更はいずれも本発明の技術的思想から逸脱しなく本発明の特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0032】
1:粒子
10:コア層
20:被覆層
S1、S2、S3:ステップ
T1:粒子径
T2:厚さ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
【外国語明細書】