(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173577
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】発信機の取付構造及び防災装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168521
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2023091353
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 みのり
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の問題点を改善して、発信機の点検作業を更に容易なものにして作業効率を向上可能とする。
【解決手段】所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチ2410の操作部となるスイッチノブが操作される発信機24を取り付ける発信機の取付構造は、電装扉20の裏面側に設けられ、下側を軸として電装扉20の裏面側で発信機24の押釦スイッチ2410を上下方向に回動させる発信機点検構造を備え、押釦スイッチ2410は、保護板の押込みにより押釦スイッチ2410のスイッチノブが操作される位置から発信機点検構造により下向きに回転されることで電装扉20の裏面側でスイッチノブが操作可能な位置に移動する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより前記保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
前記発信機の取付構造は、前記電装板の裏面側に設けられ、下側を軸として前記電装板の裏面側で前記発信機の押釦スイッチを上下方向に回動させる発信機点検構造を備え、
前記押釦スイッチは、前記保護板の押込みにより前記押釦スイッチの操作部が操作される位置から前記発信機点検構造により下向きに回転されることで前記電装板の裏面側で前記押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動することを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の発信機の取付構造において、
前記発信機点検構造は、
前記発信機を前記電装板に取り付けるための取付部材の、前記発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に下側を軸として前記電装板の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられ、前記発信機の前記押釦スイッチが取り付けられた子扉と、
前記押釦スイッチの操作部が前記保護板の押込みにより操作される位置となる閉鎖位置で前記子扉を解除可能に保持する子扉保持部と、
前記子扉保持部による前記子扉の保持が解除され、前記子扉が下側を軸として前記電装板の裏面側で下向き回りに開放された場合に、前記押釦スイッチの操作部が前記電装板の裏面側で操作可能な位置となる開放位置で前記子扉の回転を止めるストッパ部と、
を備えたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記子扉は、上端を下端よりも短くした所定の形状であり、前記下端側が軸支されることで前記上下回りに開閉自在とし、前記上端側が前記子扉保持部により前記閉鎖位置で解除を可能に保持されることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記子扉保持部は、
保持環と当該保持環を着脱自在に係止する係止操作部を備えたパッチン錠を備え、
前記保持環を前記取付部材の前記子扉開口部の上部に配置し、前記係止操作部を前記子扉の上部に設けたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項5】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記子扉保持部は、前記取付部材の前記子扉開口部の上部に、前記取付部材の軸支される面に対して平行、かつ少なくとも前記閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と前記閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置との間で回動自在に軸支された回転ロックレバーを備えたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項6】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記子扉に、前記発信機の前記押釦スイッチの周囲の所定領域を覆う保護カバーが設けられたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項7】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記ストッパ部により規制される開放位置は、前記所定の装置が備える他の機器に前記押釦スイッチが当接しない位置であることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項8】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記ストッパ部は、前記子扉の下端をフ字形に屈曲させて形成した屈曲部を有し、前記屈曲部の端部を前記取付部材の裏面に当接することで前記子扉を前記開放位置で保持し、
前記子扉の回動中心点と前記開放位置で前記取付部材の裏面に当接する前記屈曲部の当接点とを結ぶ直線と前記取付部材の裏面とが成す角度範囲で前記子扉が回動することを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項9】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記子扉保持部を前記電装板の前面側から視認可能とする覗き窓が前記電装板に設けられたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項10】
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
前記発信機は、請求項1記載の発信機の取付構造により前記電装板に取り付けられ、
前記装置扉の開放により開放された扉開口部から前記発信機の取付構造の前記発信機点検構造にアクセス可能としたことを特徴とする防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機の取付構造、及び発信機を備えた消火栓装置等の防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内に設置され、火災等の非常時に使用するための防災機器を備えた防災装置が知られている。このような防災装置としては、消火栓装置や消火器箱等がある。例えば、消火栓装置は、開閉自在な消火栓扉を備えた消火栓収納部にノズルを装着したホースやバルブ類等の消火栓機器が収納され、道路に面する前面側から開閉可能な消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば2本の消火器が収納され、更に消火器扉に隣接して、消火器扉と同様に前面側から開閉可能な電装扉を備えている。また、電装扉には、前面側に赤色表示灯、発信機、応答ランプ、並びに裏面側に電話ジャック等の電装機器が設けられており、発信機は電装扉の閉鎖状態で前面側から操作可能になっている。
【0003】
ここで、消火器扉と電装扉は、装置前面の各扉開口部に設けられ、通常時、電装扉は、裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで、閉鎖位置で仮止め固定されており、例えば消火器扉は閉鎖位置に仮止め固定された電装扉に対して仮止め固定されている。
【0004】
また、発信機は、発信操作のための押釦スイッチを備えており、押釦スイッチの操作部である押釦が電装扉に設けられた所定の開口部を介して前面側から押圧操作できるようにして電装扉の裏面側から取り付けられており、また、電装扉の開口部の押釦位置の前面側には、透明な有機ガラス板等を使用した保護板(セフテクタ)が前面側から着脱自在に保持されている(特許文献1)。
【0005】
車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機の保護板を前面側から強く押し込むと、押釦スイッチの押釦が押し込まれて押釦スイッチがオン操作され、発信機から発信信号が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴う応答信号が防災受信盤から消火栓装置側に送られて応答ランプが点灯する。
【0006】
ところで、このような従来の発信機にあっては、定期点検等の際に、発信機を操作して正常に動作することを確認している。この発信機の点検作業時に火災時と同じ操作をする場合、点検終了後に保護板を再び開口部に嵌め込んで元の状態に戻す作業が必要になる。特許文献1においては、保護板は前面側からの押圧を受けて電装扉の前面パネルと押釦の間の空間に脱落するようになっており、保護板を通常位置に戻す作業には専用工具を必要として手間がかかる。或いは、保護板が破壊封板の場合には、保護板を新しいものに交換する作業が必要となり、同じように手間がかかる。
【0007】
このため、発信機の点検に手間と時間が掛かり、トンネル設備等においては所定間隔で設置されている多数の発信機を順次点検していく必要があるため、点検作業の効率が悪いことが問題となる。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2にあっては、特許文献2の
図1、
図2及び
図4に示すように、外扉側に保護板を設け、外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設け、押釦スイッチの押釦が内扉の前面側に位置するように構成している。このようにして、点検時には外扉のみを開放することで保護版を押圧することなく、即ち保護版を通常状態に保持したまま押しボタン操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-060580号公報
【特許文献2】特開2016-018219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような特許文献2の構成においては、経年腐食等によって大気、雨水、融雪剤、粉塵等の影響を受けやすい外扉が内扉に対して固着して開放困難になる等、あらたな不良要因を生じる可能性がある。また、前面側から外扉を比較的簡単に開放可能としているため、専門の点検者だけでなく一般の利用者が不要に外扉を開放してしまう可能性が高まり、好ましくない。
【0011】
また、特許文献2における、特許文献2の
図5乃至
図7に示すような通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設ける構成については、内側子扉が装置の設置状態に於ける上下方向を軸として回動し装置の幅方向(設置状態に於ける横方向)に開放するようになっており、例えば点検終了後に内側子扉を完全に閉鎖した状態に固定し忘れた際に、その状態を前面側から確認し難い場合があった。このように、特許特献2の各構成についても、更に改善の余地があった。
【0012】
本発明は、特許文献2における上述の問題点を解決し、発信機の点検作業を更に容易なものにして作業効率を向上可能とする発信機の取付構造及び発信機を備えた防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発信機の取付構造)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
発信機の取付構造は、電装板の裏面側に設けられ、下側を軸として電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを上下方向に回動させる発信機点検構造を備え、
押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により下向きに回転されることで電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動することを特徴とする。
【0014】
(発信機点検構造)
発信機点検構造は、
発信機を電装板に取り付けるための取付部材の、発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に下側を軸として電装板の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられ、発信機の押釦スイッチが取り付けられた子扉と、
押釦スイッチの操作部が保護板の押込みにより操作される位置となる閉鎖位置で子扉を解除可能に保持する子扉保持部と、
子扉保持部による子扉の保持が解除され、子扉が下側を軸として電装板の裏面側で下向き回りに開放された場合に、押釦スイッチの操作部が電装板の裏面側で操作可能な位置となる開放位置で子扉の回転を止めるストッパ部と、
を備える。
【0015】
(上端を下端よりも短くした子扉)
子扉は、上端を下端よりも短くした所定の形状であり、下端側が軸支されることで上下回りに開閉自在とし、上端側が子扉保持部により閉鎖位置で解除を可能に保持される。
【0016】
(子扉保持部1)
子扉保持部1は、
保持環と当該保持環を着脱自在に係止する係止操作部を備えたパッチン錠を備え、
保持環を取付部材の子扉開口部の上部に配置し、係止操作部を子扉の上部に設ける。
【0017】
(ストッパ部による開放位置)
ストッパ部により規制される開放位置は、所定の装置が備える他の機器や部材に押釦スイッチが当接しない位置である。
【0018】
(ストッパ部)
ストッパ部は、子扉の下端をフ字形に屈曲させて形成した屈曲部を有し、屈曲部の端部を取付部材の裏面に当接することで子扉を開放位置で保持し、
子扉の回動中心点と開放位置で取付部材の裏面に当接する屈曲部の当接点とを結ぶ直線と取付部材の裏面とが成す角度範囲で子扉が回動する。
【0019】
(子扉保持部2)
子扉保持部2は、取付部材の子扉開口部の上部に、取付部材の軸支される面に対して平行、かつ少なくとも閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置との間で回動自在に軸支された回転ロックレバーを備える。
【0020】
(保護カバー)
子扉に、発信機の押釦スイッチの周囲の所定領域を覆う保護カバーが設けられる。
【0021】
(子扉保持部の覗き窓)
子扉保持部を電装板の前面側から視認可能とする覗き窓が電装板に設けられる。
【0022】
(防災装置)
また、本発明の別形態にあっては、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
発信機は、前述した発信機の取付構造により電装板に取り付けられ、
装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
(発信機の取付構造の効果)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、発信機の取付構造は、電装板の裏面側に設けられ、下側を軸として電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを上下方向に回動させる発信機点検構造を備え、押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により下向きに回転されることで電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動するため、発信機の押釦スイッチの操作部を電装板の裏面側で直接オン操作可能な位置まで移動させるときには、押釦スイッチを自重の作用方向となる下向きに回転させることから当該操作が容易であり、発信機の点検作業を簡単且つ容易なものとし、点検作業の効率を向上可能とする。
【0024】
また、電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを回転させることで発信機の点検を行うことが可能であるため、電装板が設けられる所定の装置に電装板を開放することなく電装板の裏面側にアクセス可能な構造を設けておくことで、電装板が固着等により開放困難又は開放不可になった場合でも通常時における発信機の使用及び発信機の点検の双方が可能な状態が維持できる。また、電装板を開閉不可とする構成にすれば、一般の利用者による不要な開放を防止することができる。
【0025】
(発信機点検構造の効果)
また、発信機点検構造は、発信機を電装板に取り付けるための取付部材の、発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に下側を軸として電装板の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられ、発信機の押釦スイッチが取り付けられた子扉と、押釦スイッチの操作部が保護板の押込みにより操作される位置となる閉鎖位置で子扉を解除可能に保持する子扉保持部と、子扉保持部による子扉の保持が解除され、子扉が下側を軸として電装板の裏面側で下向き回りに開放された場合に、押釦スイッチの操作部が電装板の裏面側で操作可能な位置となる開放位置で子扉の回転を止めるストッパ部と、を備えるため、発信機の点検時等には、子扉保持部による保持が解除されることで、子扉が取り付けられている押釦スイッチを含む自重の作用方向となる下向きに回転し、ストッパ部により開放位置で回転が止まることで、押釦スイッチが電装板の裏面側で直接押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に露出することになり、発信機の点検作業を電装板の裏面側から簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0026】
また、子扉保持部により子扉が閉鎖位置で保持されていることで、通常時には発信機の押釦スイッチの操作部が保護板の押込みにより操作される位置で確実に保持されており、火災時等に利用者が問題なく発信機を使用することを可能とする。
【0027】
また、子扉の閉鎖位置は発信機の押釦スイッチの操作部が保護板の押込みにより操作される位置であるため、電装板の前面側から操作開口部を介して発信機の押釦スイッチの位置が正しい位置にあるかを確認することができ、点検終了時等に確認することで子扉の閉鎖忘れ等を未然に防止することを可能とする。
【0028】
(上端を下端よりも短くした子扉の効果)
また、子扉は、上端を下端よりも短くした所定の形状であり、下端側が軸支されることで上下回りに開閉自在とし、上端側が子扉保持部により閉鎖位置で解除を可能に保持されるようにしたため、扉下端側の強度や開放時の安定性を確保しつつ、発信機の押釦スイッチの操作部へのアクセス性を向上可能とする。
【0029】
(子扉保持部1の効果)
また、子扉保持部1は、保持環と当該保持環を着脱自在に係止する係止操作部を備えたパッチン錠を備え、保持環を取付部材の子扉開口部の上部に配置し、係止操作部を子扉の上部に設けるようにしたため、子扉保持部による子扉の保持と保持を解除するための操作を容易とし、手探りでの作業や作業手袋での作業等の作業しづらい状況であっても簡単且つ確実に点検作業することを可能とする。
【0030】
(子扉保持部2の効果)
また、子扉保持部2は、取付部材の子扉開口部の上部に、取付部材の軸支される面に対して平行、かつ少なくとも閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置との間で回動自在に軸支された回転ロックレバーを備えるようにしたため、回転ロックレバーの回転操作だけで子扉の保持とその解除を行うことができ、手探りでの作業や作業手袋での作業等の作業しづらい状況であっても簡単且つ確実に点検作業することを可能とする。
【0031】
(保護カバーの効果)
また、子扉に、発信機の押釦スイッチの周囲の所定領域を覆う保護カバーが設けられたため、発信機の点検作業を電装板の裏面側に手を入れて行う場合に、押釦スイッチから引き出されている配線等に接触することを確実に防止して配線接続を保護することを可能とし、また、浸入した水が押釦スイッチや押釦スイッチから引き出されている配線に付着することを防止することを可能とする。
【0032】
(ストッパ部の効果)
また、ストッパ部により規制される開放位置は、所定の装置が備える他の機器や部材に押釦スイッチが当接しない位置であり、具体的なストッパ部の構造として、子扉の下端をフ字形に屈曲させて形成した屈曲部を有し、屈曲部の端部を取付部材の裏面に当接することで子扉を開放位置で保持し、子扉の回動中心点と開放位置で取付部材の裏面に当接する屈曲部の当接点とを結ぶ直線と取付部材の裏面とが成す角度範囲で子扉が回動するため、所定の装置が備える他の機器や部材に発信機の押釦スイッチが当接しないように子扉や押釦スイッチを手で支える必要がなく、点検作業を容易とし、手探りでの作業や作業手袋での作業等の作業しづらい状況であっても簡単且つ確実に点検作業することを可能とする。
【0033】
(子扉保持部の覗き窓の効果)
また、子扉保持部を電装板の前面側から視認可能とする覗き窓が電装板に設けられたため、点検が終了した後等に、子扉が閉鎖位置で正しく保持されていることを簡単に確認することを可能とする。
【0034】
(防災装置の効果)
また、本発明の別形態にあっては、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備えた防災装置であって、発信機は、前述した発信機の取付構造により電装板に取り付けられ、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能としたため、防災装置の1種である消火栓装置全般の電装扉(開閉可能とした電装板)には、発信機以外にも裏面に電話ジャックが設けられており、点検時には電話ジャックに受話器を接続して通話するために、装置扉に相当する消火器扉が必ず開放されることから、電装扉の裏面側で発信機の点検ができる本発信機の取付構造が適用されている消火栓装置では、発信機の点検のためだけに敢えて消火器扉を開放する作業とならず、かつ電装扉の裏面側で押し釦を押せるようにしたことで、受話器を持ちながら簡単且つ容易に発信機の点検を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した説明図である。
【
図2】消火器収納部の断面を平面で示した説明図である。
【
図3】電装扉及び消火器扉を取り出して示した説明図である。
【
図4】子扉保持部にパッチン錠を用いた発信機取付構造の第1実施形態を電装扉の左側面から示した説明図である。
【
図5】発信機取付構造の第1実施形態を電装扉の裏面から示した説明図である。
【
図6】取付板側の発信機取付構造の第1実施形態を取り出して示した説明図である。
【
図7】
図5に示した子扉を蝶番と共に示した説明図である。
【
図8】
図5に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を示した説明図である。
【
図9】消火器扉を開いた状態の消火栓装置を平面から見て示した説明図である。
【
図10】子扉保持部に回転ロックレバーを用いた発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の左側面から示した説明図である。
【
図11】発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の裏面から示した説明図である。
【
図12】発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図13】取付板側の発信機取付構造の第2実施形態を取り出して示した説明図である。
【
図14】
図10に示した子扉を蝶番と共に示した説明図である。
【
図15】
図10に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左側面から示した説明図である。
【
図16】
図10に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図17】子扉保持部にパネルロックを用いた発信機取付構造の第3実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図18】
図17に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図19】子扉保持部に角ラッチを用いた発信機取付構造の第4実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図20】
図19に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図21】子扉保持部に跳ね上げ式パッチン錠を用いた発信機取付構造の第5実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【
図22】
図21に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明に係る発信機の取付構造及び発信機を備える防災装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0037】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、電装板に発信機を取り付けるための発信機の取付構造及び当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた電装板が設けられる防災装置に関するものである。
【0038】
ここで、「電装板」は、防災装置といった所定の装置に形成された扉開口部に設けられるものであり、扉開口部に対して開閉不能又は開閉可能に取り付けられたものであり、扉開口部に対して開閉可能に取り付けられた場合には「電装扉」と呼ばれる場合がある。また、「電装扉」は通常時には閉鎖位置で仮止め固定された扉を含む。「仮止め固定」とは、固定状態を解除可能に固定したものであり、仮止め固定状態では扉を開閉することはできないが、必要に応じてその固定を解除することで扉が開閉可能になり、その仮止め固定するための構造は任意であるが、例えば工具を使用することなく操作可能なローレットねじや蝶ねじを用いて、扉裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して防災装置の筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで固定するものを含む。尚、「電装板」には、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の電装機器が取り付けられていても良い。
【0039】
また、「発信機」とは、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作されるものであり、操作され作動した場合には、例えば発信信号を送信する。そのため、「発信機」は、点検時に押釦スイッチの操作部を操作して正常に作動することが確認されるものである。尚、「前面側」といった場合には、電装板が装置の扉開口部に設けられた場合の装置の外側を指し、「裏面側」といった場合には装置の内側を指している。
【0040】
そして、実施形態の発信機の取付構造は、電装板の裏面側に設けられ、下側を軸として電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを上下方向に回動させる発信機点検構造を備えたことを特徴とし、これにより、発信機の押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により下向きに回転されることで電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動することになる。
【0041】
ここで、「保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置」とは、一般の利用者により発信機の操作が行える通常時の位置であり、利用者が発信機を使用できるように押釦スイッチの操作部が操作開口部に位置している状態である。一方、「電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置」とは、利用者が発信機を使用できる操作開口部を介さずに電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部を操作したい場合に移動させる位置であり、その移動は押釦スイッチの自重の作用方向となる下向きの回転となることから、点検作業を簡単且つ容易とし、点検の作業効率を向上することを可能とする。尚、「上下方向」とは、電装板が設けられる装置の設置状態に於ける方向である。
【0042】
また、発信機点検構造は、下側を軸として電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを上下方向に回動させる構造であれば任意であるが、例えば子扉、子扉保持部及びストッパ部を備えるものを含むものである。
【0043】
ここで、「子扉」とは、取付部材の発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に下側を軸として電装板の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられ、発信機の押釦スイッチが取り付けられた扉である。また、子扉の形状は任意であるが、例えば上端を下端よりも短くした所定の形状、例えば台形形状であり、下端側が軸支されることで上下回りに開閉自在とし、上端側が子扉保持部により閉鎖位置で解除を可能に保持される。また、「取付部材」とは、発信機を電装板に取り付けるための部材であり、板部材とした取付板を含むものである。
【0044】
また、子扉に、発信機の押釦スイッチの周囲の所定領域を覆う保護カバーが設けられても良い。「発信機の押釦スイッチの周囲の所定領域を覆う」とは、必ずしも押釦スイッチの周囲全てを覆うことや押釦スイッチと外部を完全に遮断するように覆う必要はなく、押釦スイッチの周囲の必要な領域を覆うことを含む概念である。
【0045】
また、「子扉保持部」とは、閉鎖位置で子扉を解除可能に保持するものであり、子扉を解除可能に保持する構造は任意であるが、例えば公知の保持環と当該保持環を着脱自在に係止する係止操作部を備えたパッチン錠が用いられ、保持環を取付部材の子扉開口部の上部に配置し、係止操作部を子扉の上部に設けるものがあり、パッチン錠を構成する係止操作部としては係止レバーを含むものである。また、「子扉の閉鎖位置」は、押釦スイッチが保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置(通常時の位置)である。
【0046】
また、「子扉保持部」は、その他にも、回転ロックレバーを用いたものを含み、「回転ロックレバー」は、取付部材の子扉開口部の上部に、取付部材の軸支される面に対して平行、かつ少なくとも閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置との間で回動自在に軸支される。「少なくとも閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置との間で回動自在」とは、回転ロックレバーの回動範囲が閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置の間での回動に規制されているもの、即ち、回転ロックレバーの回動範囲がその2つの位置の間に限られたものや、回転ロックレバーの回動範囲が閉鎖位置にある子扉の上端を保持する位置と閉鎖位置にある子扉の上端の保持を解除する位置の間に限られない、即ち、回転ロックレバーの回動範囲がその2つの位置の間を超えたもの、例えば360°回動自在とするものを含む概念である。また、更に、「子扉保持部」は、パネルロック、角ラッチ、パッチン錠として跳ね上げ式パッチン錠等を用いたものを含む。
【0047】
また、「ストッパ部」とは、子扉保持部による子扉の保持が解除され、子扉が下側を軸として電装板の裏面側で下向き回りに開放された場合に開放位置で子扉の回転を止める(規制する)ものであり、その構造は任意であるが、例えば子扉の下端をフ字形に屈曲させて形成した屈曲部を有し、屈曲部の端部を取付部材の裏面に当接することで子扉を開放位置で保持し、子扉の回動中心点と開放位置で取付部材の裏面に当接する屈曲部の当接点とを結ぶ直線と取付部材の裏面とが成す角度範囲で子扉が回動するように規制するものがある。また、「子扉の開放位置」は、押釦スイッチが電装板の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置であり、更に装置が備える他の機器や部材に押釦スイッチが当接しない位置を含む場合もある。
【0048】
また、子扉保持部を電装板の前面側から視認可能とする覗き窓を電装板に設けるようにしても良い。
【0049】
そして、当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた電装板を備える防災装置は、発信機が設けられたあらゆる装置、機器等を含むものであり、例えば消火栓装置、消火器箱や非常通報装置等を含むものである。
【0050】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置されるものであり、内部に消火用ホース等の消火栓機器が収納されたものであり、「非常通報装置」とは、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の必要な電装機器が設けられたものであり、「消火器箱」とは、内部に消火器が収納されたものである。また、「消火栓装置」は、「非常通報装置」や「消火器箱」と一体に設けられたものを含み、「消火器箱」は、「非常通報装置」と一体に設けられたものを含む。
【0051】
また、「防災装置」は、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備え、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能とするものである。
【0052】
また、「装置扉」とは、例えば内部に収納されている消火栓機器や消火器等の使用時等の装置内部にアクセスするときに開放される扉であり、特許文献2の
図5乃至
図7に示すような従来の消火器箱にあっては、電装扉に隣接している消火器扉が装置扉に相当する。尚、電装板が設けられる扉開口部と装置扉が設けられる扉開口部は同一の扉開口部であっても良く、異なる扉開口部であっても良い。
【0053】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、「防災装置」が「消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置」であり、「電装板」が「電装扉」であり、「装置扉」が「消火器扉」であり、「発信機点検構造」が「子扉、子扉保持部及びストッパ部を備えるもの」である場合について説明する。
【0054】
また、発信機の取付構造は、子扉保持部にパッチン錠を用いたものを発信機取付構造の第1実施形態とし、子扉保持部に回転ロックレバーを用いたものを発信機取付構造の第2実施形態とし、子扉保持部にパネルロックを用いたものを発信機取付構造の第3実施形態とし、子扉保持部にスライドロックを用いたものを発信機取付構造の第4実施形態とし、子扉保持部に跳ね上げ式パッチン錠を用いたものを発信機取付構造の第5実施形態として分けて説明する。
【0055】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の発信機の取付構造及び発信機を備えた消火栓装置(防災装置)について、次のように分けて詳細に説明する。
a.消火栓装置
b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造
c.発信機取付構造の第1実施形態
c1.発信機の取付部分の構造
c2:取付板側の発信機点検構造
c3.子扉の構造及び子扉側の発信機点検構造
d.発信機の点検作業
e.発信機取付構造の第2実施形態
f.発信機取付構造の第3実施形態
g.発信機取付構造の第4実施形態
h.発信機取付構造の第5実施形態
【0056】
[a.消火栓装置]
まず、消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した
図1参照する。
【0057】
ここで、
図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、各種扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする(尚、
図1においてZ方向は図示されていない)。この点は
図2~
図22においても同様である。
【0058】
図1に示すように、消火栓装置10は、内部が消火栓収納部となる筐体10aと内部が消火器収納部となる筐体10bとに分割された構造であり、筐体10a,10bの前面には化粧枠11a,11bが設けられている。
【0059】
筐体10aの化粧枠11aの扉開口部には上下に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の下側にはヒンジにより下向きに開く前傾式の消火栓扉12が設けられ、扉開口部の上側にはヒンジにより上向きに開く保守扉14が設けられている。消火栓扉12には扉ハンドル1210が設けられ、利用者が扉ハンドル1210に手を入れて手前に引く操作を行うと、消火栓扉12のロックが解除されて消火栓扉12を開くことができる。また、筐体10aの内部である消火栓収納部には消火栓機器として、消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類等が収納されている。
【0060】
筐体10bの化粧枠11bの扉開口部には左右に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の左側にはヒンジにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、内部である消火器収納部には、例えば2本の消火器30を収納可能としている。消火器扉18には扉ハンドル1810が設けられ、利用者が扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うと、例えば磁気吸着による電装扉20に対する消火器扉18の仮止め固定が解除されて消火器扉18を開くことができる。また、消火器扉18には覗き窓1820が設けられ、外部から消火器30の有無を確認可能としている。
【0061】
また、化粧枠11bの扉開口部の右側にはヒンジにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。電装扉20には電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ26が設けられ、また、発信機24の下に配置された発信機操作を示すSOS銘板25が位置する電装扉20の裏面側には電話ジャックが設けられている。このように電装扉20に設けられた赤色表示灯22、発信機24、応答ランプ26及び電話ジャックにより非常通報装置が構成される。
【0062】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。また、火災が発生した場合には、利用者が発信機24の保護板を押し込んで発信機24の押釦スイッチがオンされることで、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴い防災受信盤から応答信号が消火栓装置10側に送信されて、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0063】
[b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造]
続いて、消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造について説明する。当該説明にあっては、消火器収納部の断面を平面(上面)で示した
図2、及び電装扉と消火器扉を取り出して示した
図3を参照する。尚、
図2は、
図1のa-a切断線の断面を示し、
図3(A)は扉の裏面(後面)を示し、
図3(B)は
図3(A)のb-b切断線の断面を平面(上面)で示している。
【0064】
まず、消火器収納部側の筐体の構造について説明する。
図2に示すように、筐体11bの内部である消火器収納部には2本の消火器30が収納され、筐体11bの内部後面には端子箱21a,21bが設けられている。端子箱21aには電装扉20に設けられた赤色表示灯22が配線用ケーブルを介して接続され、端子箱21bには電装扉20に設けられた発信機24、応答ランプ26、電話ジャック28及び筐体11aの消火栓収納部に設けられたポンプ起動スイッチとポンプ起動連動スイッチが配線用ケーブルを介して接続されている。
【0065】
また、
図3(A)に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の周囲には防水用のゴムシール17が設けられている。また、上側から順番に、赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28及び応答ランプ26を電装扉20に取り付けるために、取付板32(取付部材)が電装扉20の裏面側に設けられる。
【0066】
次に、消火器扉18及び電装扉20の構造について説明する。
図2、3に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の左側にはヒンジ18aにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、化粧枠11bの扉開口部13の右側にはヒンジ20aにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。消火器扉18と電装扉20は、ヒンジ18a,20aにより相対する向きに開く両開きする扉として化粧枠11bの扉開口部13に設けられており、消火器扉18と電装扉20の合わせ部分は、扉の閉鎖位置で電装扉20の扉枠2010が筐体11bの内部側に位置し、扉枠2010の外側(前側)に消火器扉18の扉枠1830が位置している。
【0067】
また、電装扉20は消火器扉18が仮止め固定される受け部として機能するものであり、消火器扉18の受け部として機能するために、電装扉20の上下2箇所にねじ穴を備えた取付片23が設けられ、取付片23に相対して筐体11b側に設けられた固定片(受け部)の通し穴を通したローレットねじ又は蝶ねじを取付片23にねじ込むことで、通常、電装扉20は扉開口13部に閉鎖位置で仮止め固定されている。
【0068】
そして、電装扉20の扉枠2010の中央にはマグネット2020が設けられ、マグネット2020に対して消火器扉18の扉枠1830の裏面(電装扉20の扉枠2010側)に設けられた磁気吸着板が吸着固定することで、消火器扉18は閉鎖位置で保持(仮止め固定)される。
【0069】
また、消火器扉18の扉ハンドル1810は、電装扉20側(右側)の略中央に設けられ、扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うことで、マグネット2020による磁気吸着を解除してヒンジ18aを軸に消火器扉18を開放可能とする。
【0070】
一方、電装扉20に設けられた発信機24等の電装機器の交換修理を行う場合等の電装扉20を開く必要がある際には、消火器扉18を開いた状態で、取付片23に対するローレットねじや蝶ねじ等による電装扉20の仮止め固定を解除してヒンジ20aを軸に電装扉20を開放可能とし、電装扉20の裏面側を前側に露出させて交換修理等の必要な作業を行うことになる。
【0071】
また、消火栓装置10の点検時には、発信機24の押釦スイッチの操作部を操作して発信機24が正常に機能することを確認する点検操作が行われる。本実施形態にあっては、発信機24を点検する場合には、電装扉20の前面側に位置する保護板の押込操作及び電装扉20の開放を必要とすることなく、電装扉20の裏面側で発信機24の押釦スイッチの操作部を直接操作可能とするために、消火器扉18を開いた状態で点検者が電装扉20の裏面側に手を入れ、電装扉20の裏面側で発信機24の押釦スイッチを下向きに回転させて押釦スイッチの操作部を露出させて、押釦スイッチの操作部を操作することを可能とする発信機点検構造を備えている。
【0072】
[c.発信機取付構造の第1実施形態]
続いて、発信機の取付構造として、子扉保持部にパッチン錠を用いた発信機取付構造の第1実施形態について説明する。当該説明にあっては、子扉保持部にパッチン錠を用いた発信機取付構造の第1実施形態を電装扉の左側面から示した
図4、発信機取付構造の第1実施形態を電装扉の裏面(後面)から示した
図5を参照する。
【0073】
(c1.発信機の取付部分の構造)
図4に示すように、電装扉20の裏面側には発信機24を含めた電装機器を電装扉に取り付けるための取付板32が設けられる。また、
図5に示すように、取付板32の発信機24の取付部分には後方から見て略台形形状(以下、台形形状と呼ぶ)の子扉開口部34が形成され、子扉開口部34には子扉36が開閉自在に設けられ、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。
【0074】
押釦スイッチ2410は2回路のa接点を備えたスイッチであり、後方に4本の配線引込用の先端の閉じたゴム等で作られた絶縁キャップ2420が設けられ、前方には操作部となるスイッチノブ2430が設けられている。端子箱21bからの配線用ケーブル(図示なし)は、絶縁キャップ2420の先端を切り、押釦スイッチ2410の中に引き込むことで押釦スイッチ2410の端子に接続されており、また、スイッチノブ2430には防水用のゴムカバーが装着されている。
【0075】
子扉36は、後方から見て略台形形状(以下、台形形状と呼ぶ)であり、下部が子扉開口部34の下側に設けられた蝶番44により子扉開口部34に取り付けられ、蝶番44の軸部4410を中心に取付板32の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられている。また、子扉36の上部には子扉保持部として機能するパッチン錠40が設けられ、パッチン錠40により子扉36が図示の閉鎖位置に保持され、パッチン錠40による子扉36の保持が解除されると、子扉36は蝶番44の軸部4410を中心に取付板32の裏面側で下回りに開放され、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が取付板32の裏面側で操作可能な位置に露出する。ここで、子扉36を台形形状としたことで、扉下端の強度を高めて開放状態の子扉36の安定性を確保しつつ、発信機24の点検時における押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430へのアクセス性を向上可能とする。尚、子扉36の扉形状は台形形状に限らず、任意の形状として良い。
【0076】
また、子扉36の下端左右両側にはストッパ部42が設けられ、ストッパ部42は子扉36を開放した場合に押釦スイッチ2410が取付板32の下側に取り付けている電話ジャック28に当接しない位置で停止するように子扉36の開放位置を規制している。
【0077】
ストッパ部42の構造や形状は任意であるが、例えば子扉36の下端にフ字形に屈曲した屈曲部を、子扉36の回動中心となる蝶番44の軸部4410の回動中心点と子扉36が開放位置で取付板32の裏面に当接する屈曲部の端部となる当接点4210を結ぶ線と、取付板32の裏面との成す角度θで子扉36を開放した場合に、発信機24の押釦スイッチ2410が下側に位置する電話ジャック28と当接しないように形成しており、例えば実施形態では角度θを50°に設定している。
【0078】
また、子扉36が閉鎖位置にあるときのスイッチノブ2430の位置に対応して電装扉20には保護板収納部2440が設けられている。保護板収納部2440には、特許文献1に示したと同様に、電装扉20の開口穴(操作開口部)に透明な有機ガラス板等を使用した保護板(セフテクタ)が前面側から着脱自在に保持されている。このため、車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機24の保護板を強く押し込むと、保護板が外れて押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が押し込まれて押釦スイッチがオン操作され、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力される。
【0079】
尚、電話ジャック28は、取付板32の矩形の開口を有する起立した取付部分に取り付けられ、ジャック本体2810の先端に蓋部材2820を装着しており、点検者等が携帯している電話機のプラグを、蓋部材2820を外してジャック本体2810のジャック穴に差し込むことで、防災受信盤側の親電話機と接続して通話することを可能にしている。
【0080】
(c2.取付板側の発信機点検構造)
次に、発信機取付構造の第1実施形態が備える取付板側の発信機点検構造について説明する。当該説明にあっては、
図4、5に示した取付板側の発信機取付構造の第1実施形態を取り出して示した
図6を参照する。尚、
図6(A)は平面(上面)を示し、
図6(B)は裏面(後面)を示し、
図6(C)は左側面を示している。
【0081】
発信機取付構造の第1実施形態は、発信機点検構造として、子扉、パッチン錠(子扉保持部)及びストッパ部を備えているが、取付板32側には、発信機点検構造としてパッチン錠の保持環4030が固定部として設けられている。取付板32には前述したように台形形状の子扉開口部34が形成され、子扉開口部34の上側に位置する取付板32の上面には固定部4020が取り付けられ、固定部4020にはパッチン錠40を構成する略矩形状の保護環4030が回動自在に取り付けられている。尚、子扉開口部34の下側には
図4及び
図5に示した蝶番44を固定するためのねじ穴47が形成されている。
【0082】
(c3.子扉の構造及び子扉側の発信機点検構造)
次に、発信機取付構造の第1実施形態が備える子扉の構造及び子扉側の発信機点検構造について説明する。当該説明にあっては、
図4、5に示した子扉を蝶番と共に示した
図7及び
図5に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を示した
図8を参照する。尚、
図7(A)は平面(上面)を示し、
図7(B)は裏面(後面)を示し、
図7(C)は左側面を示している。
【0083】
図7(A)~(C)に示すように、発信機点検構造の子扉36は、
図6に示した子扉開口部34の形状に対応した台形形状の扉であり、上端の後方に屈曲して形成された扉張出部3610に、発信機点検構造のパッチン錠40を構成する係止レバー4010(係止操作部)が設けられている。
【0084】
また、子扉36の下端の両側に発信機点検構造のストッパ部42が設けられ、ストッパ部42の間となる下端中央を後方に屈曲して形成された張出部には蝶番44上側の固定部がねじ46により取り付けられ、蝶番44の下側の固定部は、
図6に示した取付板32に形成した子扉開口部34の下側のねじ穴47にねじをねじ込んで子扉開口部34の下側に取り付けられる。
【0085】
また、子扉36の略中央にはスイッチ取付穴38が形成されており、発信機24の押釦スイッチ24がスイッチ取付穴38に裏面側からスイッチノブ2430を挿入した状態で子扉36に取り付けられる。
【0086】
子扉36の下端の両側に形成されたストッパ部42は、子扉36が蝶番44の軸部4410を中心に下回りに開放された場合に、子扉36に取り付けられている発信機24の押釦スイッチ2410が取付板32の下側に位置する他の機器又はその他の部材(電話ジャック28等)に当接しないように子扉36の開放位置を規制する。
【0087】
このため、発信機24の点検時に、パッチン錠40の係止レバー4010を上方に引き上げて子扉36の保持を解除すると、子扉36は取り付けられている押釦スイッチ2410の重さを含む自重により蝶番44の軸部4410を中心に取付板32の裏面側で下向きに回転し、
図8に示すように、ストッパ部42の当接点4210が取付板32の裏面に当接して停止する開放位置まで移動する。
【0088】
そして、開放された子扉36に取り付けられている発信機24の押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430は、子扉36が閉鎖位置にあるときから上向きに角度θだけ傾斜した状態で露出するため、取付板32の裏面側で点検者等による発信機24の点検操作が可能となる。
【0089】
また、このように子扉36が他の機器又はその他の部材と当接せず、かつ押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を上側に露出させた開放位置で停止することから、電装扉20を開放する必要がなく、消火器扉18を開いた状態で閉鎖位置にある電装扉20の裏面側に手を入れることで発信機24の点検が可能となる。
【0090】
[d.発信機の点検作業]
続いて、発信機の点検作業について説明する。当該説明にあっては、
図8に加えて消火器扉を開いた状態の消火栓装置を平面(上面)から見て示した
図9を参照する。
【0091】
点検時に消火栓装置10の電装扉20に設けられた発信機24を点検者が点検する場合には、
図9に示すように、電装扉20を開放することなく消火器扉18を開放し、扉開口部13の消火器扉18の開放により開放された部分から電装扉20の裏面側に作業手袋をした状態の手を入れ、パッチン錠40の係止レバー4010を上方に引き上げて子扉36の保持を解除する。
【0092】
これにより、
図8に示したように、子扉36は、取り付けられている押釦スイッチ2410を含む自重により蝶番44の軸部4410を中心に取付板32の裏面側で下向きに回転し、ストッパ部42の当接点4210が取付板32の裏面に当接して停止する開放位置まで開放する。
【0093】
これにより、開放した子扉36に取り付けられている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430は子扉36が閉鎖位置にあるときから上向きに角度θだけ傾斜した状態で露出していることから、続いて、点検者は開放された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0094】
発信機24の点検終了後、子扉36を閉鎖位置に戻し、パッチン錠40の保持環4030を係止レバー4010に通し係止レバー4010を押し込むことで、子扉36を閉鎖位置に保持する。
【0095】
ここで、子扉36の閉鎖により発信機24が正しい位置に保持されている(戻されている)ことを確認するために、電装扉20の保護板収納部2440の開口穴に保持されている保護板を前面から見て、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が保護板の中心付近に確認できれば発信機24は正しい位置に保持されていることが確認できる。一方、スイッチノブ2430が保護板の中心から外れている場合には、子扉36が閉鎖位置で正しく保持されていないことが簡単に分かり、子扉36の位置が正しい位置となるように閉め直すことができる。
【0096】
子扉36の閉鎖を忘れた場合にも同様であり、子扉36を閉め忘れた場合にはスイッチノブ2430が傾斜した状態で見えることから、保護版を前面から確認することで簡単且つ確実に子扉36の閉め忘れを見つけることができる。
【0097】
尚、発信機24の点検で動作不良等の故障が見つかった場合には、発信機24の押釦スイッチ2410を新品と交換する修理作業を行うことになる。このような発信機24の交換修理作業にあっては、
図3に示した電装扉20の裏面側に設けた取付片23からローレットねじ又は蝶ねじを外して電装扉20の仮止め固定を解除して開放し、押釦スイッチ2410の交換作業を行うこととなる。
【0098】
[e.発信機取付構造の第2実施形態]
続いて、発信機の取付構造として、子扉保持部に回転ロックレバーを用いた発信機取付構造の第2実施形態について説明する。尚、説明が省略されている発信機取付構造の第1実施形態との共通部分については、発信機取付構造の第1実施形態の記載が適用される。
【0099】
当該説明にあっては、子扉保持部に回転ロックレバーを用いた発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の左側面から示した
図10、発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の裏面(後面)から示した
図11、発信機取付構造の第2実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した
図12、取付板側の発信機取付構造の第2実施形態を取り出して示した
図13、
図10に示した子扉を蝶番と共に示した
図14、
図10に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左側面から示した
図15、及び
図10に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した
図16を参照する。尚、
図13、14(A)は平面(上面)を示し、
図13、14(B)は裏面(後面)を示し、
図13、14(C)は左側面を示している。
【0100】
図10乃至
図12に示すように、電装扉20の裏面側には発信機24を含めた電装機器を電装扉に取り付けるための取付板32が設けられる。また、
図13(B)に示すように、取付板32の発信機24の取付部分には台形形状の子扉開口部34が形成され、子扉開口部34には子扉36が開閉自在に設けられ、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。
【0101】
子扉36は、台形形状であり、下部が子扉開口部34の下側に設けられた蝶番44により子扉開口部34に取り付けられ、蝶番44の軸部4410を中心に取付板32の裏面側で上下回りに開閉自在に設けられている。また、子扉36の上部には子扉保持部として機能する回転ロックレバー50が設けられている。
【0102】
回転ロックレバー50は、
図13に示すように、上面から見てコの字形に屈曲された矩形枠板部材であり、高さ方向(上下方向)における略中央の位置で回転軸52により取付板32に回動自在に支持されている。また、回転ロックレバー50は、
図10乃至
図12に示す閉鎖位置(縦向き)で、下端側のロック部5010と取付板32の間に、閉鎖状態にある子扉36の上端に形成された係止片3630を挟み込んで、子扉36を閉鎖位置に保持している。
【0103】
ここで、
図14に示すように、子扉36の上端に形成された係止片3630の後面側の左右2箇所には、押圧突部56として機能するビスがねじ込み固定されており、
図10乃至
図12に示すように、回転ロックレバー50を縦向きとなるように回転させた場合にロック部5010に押圧突部56の一部が当接して押し出すことで、子扉36の係止片3630と回転ロックレバー50のロック部5010との間にガタ付きを生ずることなく、子扉36を閉鎖位置に圧接した状態で保持可能としている。
【0104】
また、
図11に示すように、閉鎖位置にある回転ロックレバー50のロック部5010の左右両側には、ストッパ突部54として機能するビスが取付板32にねじ込み固定され、ストッパ突部54の位置に対応して回転ロックレバー50のロック部5010の反対側にストッパ片5020が形成されている。回転軸52からストッパ片5020の端部(
図11にあっては上端)までのストッパ片5020の長さを回転軸52からストッパ突部54までの長さより長くすることで、
図15及び
図16に示すように、子扉36の閉鎖保持を解除するために回転ロックレバー50を開放位置(横向き)に回転させた場合に、ストッパ片5020がストッパ突部54に当接して停止するように回転の停止位置を規制している。
【0105】
また、
図10乃至
図12に示すように、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410を保護するための保護カバー60が設けられ、保護カバー60は上面カバー部6010、側面カバー部6020及び後面カバー部6030で構成されている。側面カバー部6020は発信機24の押釦スイッチ2410を操作するために手を入れる側、即ち、実施形態では左側に配置されている。
【0106】
また、後面カバー部6030は、押釦スイッチ2410の後部に設けた絶縁キャップ2420から引き込まれる配線を妨げないように、後部左側の1/3覆う程度の左右幅としている。また、後面カバー部6030の下端は電装扉の裏面側に引き回されている配線を傷つけないために、アール取りがされている。また、配線を傷つけないため、後面カバー部6030だけでなく、上面カバー部6010、側面カバー部6020及び後カバー部6030の端部をアール取りするか、或いは外側に湾曲させた形状とすることが望ましい。
【0107】
このように、子扉36に保護カバー60を設けたことで、
図15及び
図16に示すように、電装扉20の裏側に手を入れ、回転ロックレバー50を閉鎖位置(縦向き)から開放位置(横向き)に回転させて子扉36の閉鎖位置での保持を解除して子扉36を開放して、電装扉の裏側で露出した押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作する場合に、押釦スイッチ2410の後部から引き出されている配線に対する人為的な接触を防止し、配線の接続状態に悪影響を及ぼさないようにしている。
【0108】
また、保護カバー60は、化粧枠の扉開口部と電装扉20の間等から筐体内部に水が浸入した場合に、押釦スイッチ2410や配線に対する水の流れ込みや付着を阻止するように防水しており、押釦スイッチ2410や押釦スイッチ2410の後部から引き出されている配線の損傷を防止し、耐久性を向上可能とする。なお、防水効果を高めるために、上面カバー6010は、配線や他の機器が存在しない、例えば左側や後側に傾斜させた傾斜面とすることが望ましい。
【0109】
また、
図14に示すように、子扉36の下端両側にはストッパ部42が形成されている。ストッパ部42は子扉36の下部に略直角に屈曲したL字形で形成されており、先端(下端)にゴム等の軟質材料で作られた保護カバー4230が装着され、子扉36を開いた場合にストッパ部42に加わる衝撃を吸収すると共に、取付板32の傷付きを防止している。
【0110】
また、
図10に示すように、ストッパ部42は略直角に屈曲したL字形であり、子扉36の回動中心となる蝶番44の軸部4410の回動中心点と子扉36が開放位置で取付板32の裏面に当接するストッパ部42の端部となる当接点を結ぶ線と、取付板32の裏面との成す角度で定まる角度θが45°程度であるから、
図15に示すように、子扉36を開放してストッパ部42の端部が取付板32の裏面に当接した場合には、開放された子扉36に取り付けられている発信機24の押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430は、子扉36が閉鎖位置にあるときから上向きに約45°程度傾斜した状態で露出し、取付板32の裏面側で点検者等による発信機24の点検操作が可能となる。
【0111】
発信機取付構造の第2実施形態により電装扉20に取り付けられた発信機24を点検者が点検する場合には、
図9に示したように、電装扉20を開放することなく消火器扉18を開放し、扉開口部13の消火器扉18の開放により開放された部分から電装扉20の裏面側に作業手袋をした状態の手を入れ、
図10乃至
図12に示すように、閉鎖位置(縦向き)にある回転ロックレバー50を、
図15及び
図16に示すように、開放位置(横向き)まで回転させて子扉36の閉鎖位置での保持を解除し、子扉36をストッパ部42が取付板32の裏面に当接する開放位置まで回転させて開放し、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を露出させる。
【0112】
続いて、点検者は開放された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0113】
発信機24の点検終了後は、子扉36を閉鎖位置に戻し、回転ロックレバー50を開放位置(横向き)から閉鎖位置(縦向き)に回転させることで、子扉36の上端の係止片3630をロック部5010と取付板32の間に挟み込み、子扉36を閉鎖位置に保持する。
【0114】
尚、回動ロックレバー50の閉鎖位置(縦向き)から開放位置(横向き)までの回転方向は任意であり、
図16に示すように、後方から見て左回転(反時計回り)としても、逆に右回転(時計回り)としてもよく、いずれの場合も左右両側に設けたストッパ突部54の何れかに回転ロックレバー50のストッパ片5020が当接することで回転が規制される。
【0115】
[f.発信機取付構造の第3実施形態]
続いて、発信機の取付構造として、子扉保持部にパネルロックを用いた発信機取付構造の第3実施形態について説明する。当該説明にあっては、子扉保持部にパネルロックを用いた発信機取付構造の第3実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した
図17、及び
図17に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した
図18を参照する。
【0116】
図17、18に示すように、電装扉20の裏面に設けられた取付板32の子扉開口部34に、子扉36が開閉自在に設けられ、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。子扉36の上部には子扉保持部として機能するパネルロック70が設けられ、パネルロック70は、閉鎖位置にある子扉36の係止片3630の上部となる取付板32の位置に軸部72により回動自在に軸支され、閉鎖位置では上側にレバー部7010が位置し、下側に抑え部7020が位置している。
【0117】
パネルロック70は、閉鎖位置(縦向き)で、抑え部7020と取付板32の間に子扉36の係止片3630を挟み込むことで、子扉36を閉鎖位置に保持している。なお、パネルロック70以外の構造は、
図10乃至
図16に示した発信機取付構造の第2実施形態と基本的に同様になることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0118】
発信機取付構造の第3実施形態により電装扉20に取り付けられた発信機24を点検者が点検する場合には、
図17に示すように、閉鎖位置(縦向き)にあるパネルロック70のレバー部7010を、
図18に示すように、開放位置(横向き)まで回転させて子扉36の閉鎖位置での保持を解除し、子扉36をストッパ部42が取付板32の裏面に当接する開放位置まで回転させて開放し、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を露出させる。
【0119】
続いて、点検者は開放された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0120】
発信機24の点検終了後は、子扉36を閉鎖位置に戻し、パネルロック70のレバー部7010を開放位置(横向き)から閉鎖位置(縦向き)に回転させることで、子扉36の上端の係止片3630を抑え部7020と取付板32の間に挟み込み、子扉36を閉鎖位置に保持する。
【0121】
尚、パネルロック70のレバー部7010の閉鎖位置(縦向き)から開放位置(横向き)までの回転方向は任意であり、
図18に示すように、後方から見て右回転(時計回り)としても、逆に左回転(反時計回り)としてもよい。
【0122】
[g.発信機取付構造の第4実施形態]
続いて、発信機の取付構造として、子扉保持部に角ラッチを用いた発信機取付構造の第4実施形態について説明する。当該説明にあっては、子扉保持部に角ラッチを用いた発信機取付構造の第4実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した
図19、及び
図19に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した
図20を参照する。
【0123】
図19、20に示すように、電装扉20の裏面に設けられた取付板32の子扉開口部34に、子扉36が開閉自在に設けられ、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。子扉36の上部には子扉保持部として機能する角ラッチ80が設けられ、角ラッチ80は、下方側を開放した矩形枠状の本体8010にスライダ8020を摺動自在に収納し、スライダ8020からは後方に向けてレバー部8030が取り出され、閉鎖位置にある子扉36の係止片3630の上部となる取付板32の位置に固定されている。また、第4実施形態の子扉36は、係止片3630にスライダ8020のサイズに対応した矩形のラッチ穴82が形成されている。
【0124】
角ラッチ80は、子扉36を閉鎖した状態で、係止片3630のラッチ穴82にレバー部8030の操作でスライダ8020を押し下げて嵌め入れることで、子扉36を閉鎖位置に保持している。なお、角ラッチ80及び子扉36のラッチ穴82以外の構造は、
図10乃至
図16に示した発信機取付構造の第2実施形態と基本的に同様になることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0125】
発信機取付構造の第4実施形態により電装扉20に取り付けられた発信機24を点検者が点検する場合には、
図19に示すように、ラッチ穴82に嵌め入れられたスライダ8020をレバー部8030の操作により、
図20に示すように、上方に引き上げて子扉36のラッチ穴82から抜き出すことで子扉36の閉鎖位置での保持を解除し、子扉36をストッパ部42が取付板32の裏面に当接する開放位置まで回転させて開放し、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を露出させる。
【0126】
続いて、点検者は開放された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0127】
発信機24の点検終了後は、子扉36を閉鎖位置に戻し、スライダ8020をレバー部8030の操作により押し下げて子扉36のラッチ穴82に嵌め込むことで、子扉36を閉鎖位置に保持する。
【0128】
[h.発信機取付構造の第5実施形態]
続いて、発信機の取付構造として、子扉保持部に跳ね上げ式パッチン錠を用いた発信機取付構造の第5実施形態について説明する。当該説明にあっては、子扉保持部に跳ね上げ式パッチン錠を用いた発信機取付構造の第5実施形態を電装扉の左後方から立体的に示した
図21、及び
図21に示した子扉を開いて発信機の押釦スイッチを露出させた状態を電装扉の左後方から立体的に示した
図22を参照する。
【0129】
図21、22に示すように、電装扉20の裏面に設けられた取付板32の子扉開口部34に、子扉36が開閉自在に設けられ、子扉36には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。子扉36の上部には子扉保持部として機能する跳ね上げ式パッチン錠90が設けられている。
【0130】
跳ね上げ式パッチン錠90は、公知の構造であり、基台9010を子扉36上端の係止片3630の上に固定し、レバー部9020を第1軸部9040により基台9010に対して回動自在に設け、掛金部9030を第2軸部9050によりレバー部9010に対して軸支し、レバー部9020と掛金部9030の間にスプリングを配置している。また、
図22に示すように、取付板32の段部32aには、跳ね上げ式パッチン錠90の掛金部9030を係止するための受け座92が固定されている。
【0131】
跳ね上げ式パッチン錠90は、子扉36を閉鎖した状態で、レバー部9020を第1軸部9040を中心に上側にスプリングの力で跳ね上げ、第2軸部9050を中心に掛金部9030を回転させて受け座92に係止し、この状態で、レバー部9020をスプリングに抗して押下げてロックすることで、子扉36を閉鎖位置に保持している。なお、跳ね上げ式パッチン錠90以外の構造は、
図10乃至
図16に示した発信機取付構造の第2実施形態と基本的に同様になることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0132】
発信機取付構造の第5実施形態により電装扉20に取り付けられた発信機24を点検者が点検する場合には、
図21に示すように、子扉36を閉鎖位置に保持している跳ね上げ式パッチン錠90のレバー部9020を、
図22に示すように、押し上げてロックを解除して掛金部9030を受け座92から外すことで子扉36の閉鎖位置での保持を解除し、子扉36をストッパ部42が取付板32の裏面に当接する開放位置まで回転させて開放し、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を露出させる。
【0133】
続いて、点検者は開放された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0134】
発信機24の点検終了後は、子扉36を閉鎖位置に戻し、掛金部9030を受け座92に係止し、レバー部9020をスプリングに抗して押下げてロックすることで、子扉36を閉鎖位置に保持する。
【0135】
[i.本発明の変形例]
本発明による発信機の取付構造及び防災装置の変形例について説明する。本発明の発信機の取付構造及び防災装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0136】
(防災装置)
上記の実施形態は、防災装置として発信機を備えた消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、発信機を備えた消火器箱を含むものである。この場合の消火器箱は、例えば消火器扉と電装扉が設けられた扉構造であり、
図1に示した内部が消火栓収納部となる筐体10aを除いた筐体10bのみとなる消火器箱としてもよい。また、防災装置として、その他に非常通報装置を含むものである。非常通報装置は、開閉自在な電装扉に消火栓装置の電装扉と同様に、赤色表示灯、発信機、応答ランプが設けられると共に電装扉の裏面側に電話ジャックが設けられ、発信機について上記の実施形態と同様に、発信機点検構造が設けられるものである。
【0137】
(子扉保持部の覗き窓)
また、上記の発信機取付構造の第1実施形態は、発信機の点検が終了した場合に、電装扉の前面側から保護板を介して発信機の押釦スイッチのスイッチノブの位置を確認することで、子扉を正しく閉鎖位置で保持され、発信機が正しい位置にあることを確認可能としているが、確認方法はこれに限定されず、子扉を保持するパッチン錠の状態を装置外部から視認可能とする覗き窓を電装扉20に設けるようにしてもよい。
【0138】
例えば、上記実施形態では、電装扉20のパッチン錠40に対応した位置(保護板収納部2440の上部)に開口を設け、その開口に覗き窓を設けるようにする。子扉が正しく閉鎖位置に保持されている場合にはパッチン錠40の係止レバー4010が保持環4030に保持された状態が覗き窓を介して確認することができ、仮に子扉36が閉め忘れた際には、パッチン錠40は
図8のような状態にあることから、覗き窓からは保持環4030のみが確認され、子扉36を閉め忘れたことを確認することができる。
【0139】
覗き窓による確認手段を設けておくことの利点としては、保護板が無色透明ではない場合や保護板が汚れてしまった場合等の保護板を介した確認が困難である場合に別の確認手段として機能する点、本来押釦スイッチのスイッチノブの位置(子扉の状態)を確認することを目的としたものではない保護板を介した確認を不要とする点等が挙げられる。また、発信機取付構造の第2乃至第5実施形態についても同様に、覗き窓を設けるようにしてもよい。
【0140】
(保護カバー)
また、上記の発信機取付構造の第2及び第3実施形態にあっては、子扉36に保護カバー60を設けているが、発信機取付構造の第1実施形態、第4実施形態及び第5実施形態についても同様に、子扉36に保護カバー60を設けるようにしてもよい。
【0141】
(ストッパ部)
また、上記の発信機取付構造の第1実施形態にあっては、ストッパ部42をフの字形とし、発信機取付構造の第2乃至第5実施形態にあっては、ストッパ部42をL字形としているが、発信機取付構造の第1実施形態のストッパ部42をL字形とし、発信機取付構造の第2乃至第5実施形態のストッパ部42をフの字形としてもよい。
【0142】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0143】
10:消火栓装置
10a,10b:筐体
11a,11b:化粧枠
12:消火栓扉
1210,1810:扉ハンドル
13:扉開口部
14:保守扉
17:ゴムシール
18:消火器扉
1820:覗き窓
20:電装扉
21a,21b:端子箱
22:赤色表示灯
23:取付片
24:発信機
2410:押釦スイッチ
2420:接続端子
2430:スイッチノブ
2440:保護板収納部
25:SOS銘板
26:応答ランプ
28:電話ジャック
30:消火器
32:取付板
34:子扉開口部
36:子扉
3610:扉張出部
3630:係止片
38:スイッチ取付穴
40:パッチン錠
4010:係止レバー
4020:固定部
4030:止め環
42:ストッパ部
4230:保護カバー
44:蝶番
46:ねじ
47:ねじ穴
50:回転ロックレバー
5010:ロック部
5020:ストッパ片
52:回転軸
54:ストッパ突部
56:押圧突部
60:保護カバー
6010:上面カバー部
6020:側面カバー部
6030:後面カバー部
70:パネルロック
7010:レバー部
7020:抑え部
72:軸部
80:角ラッチ
8010:本体
8020:スライダ
8030:レバー部
82:ラッチ穴
90:跳ね上げ式パッチン錠
9010:基台
9020:レバー部
9030:掛金部
9040:第1軸部
9050:第2軸部
92:受け座