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特開2024-173578医療支援システム、及び医療支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173578
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医療支援システム、及び医療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173280
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2023090576の分割
【原出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】596079138
【氏名又は名称】東日本メディコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とする。
【解決手段】医療支援システム1は、処方情報取得部152と、情報特定部153と、提示部155,253と、を備える。また、複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する。この場合に、処方情報取得部152は、薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する。情報特定部153は、診断の根拠とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかを特定する。提示部155,253は、検査値と共に、情報特定部153が特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する処方情報取得手段と、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の基準値の内の何れであるのかを特定する特定手段と、
前記検査値と共に、前記特定手段が特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項2】
前記基準値によって、何れかの疾病に関連する基準範囲が定められている場合に、
前記特定手段は、前記複数の基準値それぞれについて、前記検査値が前記基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、をさらに特定し、
前記提示手段は、前記特定手段が前記さらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項3】
前記特定手段は、前記患者に対して過去に薬剤が処方された際に前記医療従事者が診断の根拠とした基準値が、前記複数の基準値の内の何れであるのかをさらに特定し、
前記提示手段は、前記特定手段が前記さらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項4】
前記基準値によって、薬剤の処方条件が定められている場合に、
前記特定手段は、前記複数の基準値それぞれについて、前記処方された薬剤が前記薬剤の処方条件を満たしているか、をさらに特定し、
前記提示手段は、前記特定手段が前記さらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項5】
前記提示手段は、前記医療従事者とは異なる他の医療従事者が、前記処方情報に基づいて前記薬剤の処方を実行しようとする場合に、前記他の医療従事者を前記被提示者として前記提示を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の医療支援システム。
【請求項6】
前記提示手段は、前記処方に基づいて前記患者に対して薬剤が調剤された場合に、前記患者を前記被提示者として前記提示を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の医療支援システム。
【請求項7】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する処方情報取得ステップと、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の基準値の内の何れであるのかを特定する特定ステップと、
前記検査値と共に、前記特定ステップが特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する提示ステップと、
を含むことを特徴とする医療支援方法。
【請求項8】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する処方情報取得機能と、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の基準値の内の何れであるのかを特定する特定機能と、
前記検査値と共に、前記特定機能が特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する提示機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする医療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療支援システム、医療支援方法、及び医療支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、医師は、各種検査における患者の検査値と基準値を比較することや、患者に対する問診結果に基づいて診断を行う。そして、診断結果に基づいて処方箋を交付する。
また、交付された処方箋は、患者によって調剤薬局に持ち込まれ、薬剤師による処方監査が行われる。そして、薬剤師は、この処方箋の内容に疑義が生じた場合には、医師に対して疑義照会を行うことで、重複投与や投与禁忌等の問題が発生することを防止する。
このような医療行為を支援するための技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、疑義照会の根拠となる添付文書の内容を、薬剤師の操作に応じて、医師に対して電子的に送信する。これにより、疑義照会を行う薬剤師や、これに対応する医師を支援することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-067763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように処方監査は、重複投与や投与禁忌等の問題を防止するために、非常に重要な医療行為である。そのため、より正確な処方監査を行うために、薬剤の処方に関する情報を、薬剤師等の医療従事者や患者が、より適切に把握できることが望まれる。この観点において、特許文献1に開示されているような一般的な技術には、未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明の課題は、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の医療支援システムは、
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する処方情報取得手段と、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の基準値の内の何れであるのかを特定する特定手段と、
前記検査値と共に、前記特定手段が特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る医療支援システム1のシステム構成を示す図である。
図2】医療支援装置10(変形例の患者端末20も含む)を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図3】各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図4】対比情報生成部154が生成する対比情報の具体例について示すテーブルである。
図5】医療支援装置10が実行する対比情報提示処理の流れを示すフローチャートである。
図6】変形例1に係る医療支援システム1aのシステム構成を示す図である。
図7】患者端末20の機能的構成を示すブロック図である。
図8】患者端末20が実行する対比情報提示処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[システム構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る医療支援システム1のシステム構成を示す図である。
本実施形態における医療支援システム1は、医療従事者による医療行為をより適切に支援するシステムである。以下では、説明のための一例として、支援対象となる医療従事者が、保険薬局で業務に従事する薬剤師である場合を想定する。また、これも説明のための一例として、支援対象となる医療行為が、調剤時に行われる処方監査である場合を想定する。
ただし、これは説明のための一例に過ぎず、本実施形態の適用範囲を限定する趣旨ではない。本実施形態は、これ以外にも、病院や診療所といった様々な医療施設において、薬剤師や医師や看護師や理学療法士といった様々な医療従事者によって行われる、医学的又は薬学的な、様々な医療行為を支援することが可能である。
【0011】
図1に示すように、医療支援システム1は、医療支援装置10、並びに、病院端末、薬局用コンピュータ、及び外部サーバを含んで構成される。また、医療支援システム1を構成にするこれらの装置は、ネットワークNを介して、相互に通信可能に構成されている。このネットワークNは、例えば、インターネットや、保険薬局に敷設されたLAN(Local Area Network)等によって実現される。
【0012】
なお、図中には、各装置及び各端末をそれぞれ一台ずつ図示するが、これに限られない。例えば、医療支援装置10や薬局用コンピュータは、複数の保険薬局それぞれに対応して複数存在してもよい。他にも、例えば、病院端末は、これを利用して医療行為を行う医療従事者それぞれに対応して複数存在してもよい。他にも、例えば、外部サーバは、各種の機能それぞれに対応して複数存在してもよい。
【0013】
薬局用コンピュータは、保険薬局の業務に関する処理を実行するサーバコンピュータ等の情報処理装置であり、診療報酬明細書を作成するレセプトコンピュータとしての機能(レセコン機能)や、患者の薬歴を管理する機能(薬歴管理機能)を備える。
【0014】
外部サーバは、薬局用コンピュータと連携するサーバコンピュータ等の情報処理装置であり、電子お薬手帳や、電子処方箋や、MID-NET(Medical Information Database Network)等に関する各種医療情報をデータベースとして記憶するサーバとしての機能や、これら情報を活用した各種医療システムを実現するサーバとしての機能等を備える。
【0015】
医療支援装置10は、医療支援システム1に含まれる各装置と連携して、医療行為をより適切に支援するものであり、PC(Personal Computer)や、サーバコンピュータ等の情報処理装置によって構成される。医療支援装置10は、医療行為を支援するために、ネットワークNを介して接続された、薬局用コンピュータ(複数存在する場合はそれぞれの薬局用コンピュータ)や外部サーバ(複数存在する場合はそれぞれの外部サーバ)や病院端末(複数存在する場合はそれぞれの病院端末)が管理している各種情報を受信する。また、医療支援装置10は、これら受信した各種のデータを薬局用コンピュータや外部サーバや病院端末と同様のデータベース群(薬歴データベースを含む)によって管理する。すなわち、医療支援装置10は、薬局用コンピュータや外部サーバや病院端末が管理する各種情報の一部又は全部を取得する。
【0016】
このような構成において、医療支援装置10は、「対比情報提示処理」を実行する。ここで、対比情報提示処理は、医療従事者(例えば、医師)が診断の根拠とした情報を含む各種情報を、対比可能な情報(以下、「対比情報」と称する。)として提示する一連の処理である。
【0017】
具体的には、複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、医療支援装置10は、薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する。
また、医療支援装置10は、診断の根拠とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかを特定する。
さらに、医療支援装置10は、検査値と共に、特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する。
【0018】
このように、医療支援システム1は、医療従事者(例えば、医師)が薬剤を処方する診断の根拠とした基準値と、患者の検査値とを対比可能に提示する。よってこれを参照した被提示者(例えば、薬剤師)は、医師がどのような観点で診断を行ったのかを、適切に把握することができる。
【0019】
また、医療従事者は、診断において、検査値と基準値とを比較するが、そもそも基準値は一律に規定されているものではない。基準値は、例えば、医学学会や病院や大学等の団体それぞれに対応して複数存在し、各基準値の値は異なっている。そこで、医療支援システム1は、診断の根拠とした基準値に加えて、他の基準値もさらに対比可能に提示する。よってこれを参照した被提示者は、また、他の基準値ではどのような値が基準となっているのかということや、医療従事者が診断の根拠とした基準値よりも、他の基準値を採用することが望ましいのではないかということを、適切に把握することができる。
従って、本発明の実施形態に係る医療支援システム1によれば、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。
【0020】
[ハードウェア構成]
次に、医療支援システム1における、医療支援装置10のハードウェア構成を説明する。
医療支援システム1における、医療支援装置10は、上述したようにPCやサーバコンピュータ、あるいはこれらと通信を行うタブレット端末あるいはスマートフォン等の情報処理装置によって構成される。なお、変形例として後述する患者端末20も、同様に情報処理一般によって構成され、その基本的なハードウェア構成も医療支援装置10と同様である。
【0021】
図2は、医療支援装置10(変形例の患者端末20も含む)を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、各装置を構成する情報処理装置800は、CPU(Central Processing Unit)811と、ROM(Read Only Memory)812と、RAM(Random Access Memory)813と、バス814と、入力部815と、出力部816と、記憶部817と、通信部818と、ドライブ819と、を備えている。
【0022】
CPU811は、ROM812に記録されているプログラム、又は、記憶部817からRAM813にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM813には、CPU811が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0023】
CPU811、ROM812及びRAM813は、バス814を介して相互に接続されている。バス814には、入力部815、出力部816、記憶部817、通信部818、ドライブ819及び撮像部820が接続されている。
【0024】
入力部815は、各種ボタン等で構成され、指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部816は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部817は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部818は、ネットワークNを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0025】
ドライブ819には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア831が適宜装着される。ドライブ819によってリムーバブルメディア831から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部817にインストールされる。
【0026】
なお、情報処理装置800が、例えば、タブレット端末として構成される場合には、入力部815をタッチセンサによって構成し、出力部816のディスプレイに重ねて配置することにより、タッチパネルを備える構成とすることも可能である。
【0027】
[機能的構成]
次に、医療支援システム1における、医療支援装置10の機能的構成について説明する。
【0028】
[医療支援装置10の機能的構成]
図3は、医療支援装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、医療支援装置10のCPU811においては、ユーザインターフェース情報生成部(UI情報生成部)151と、処方情報取得部152と、情報特定部153と、対比情報生成部154と、提示部155と、データベース管理部(DB管理部)156と、が機能する。
【0029】
また、図3に示すように、医療支援装置10の記憶部817においては、患者属性データベース(患者属性DB)171と、処方箋データベース(処方箋DB)172と、薬歴データベース(薬歴DB)173と、基準値データベース(基準値DB)174と、対比情報データベース(対比情報DB)175と、が形成される。
【0030】
患者属性DB171には、患者の、住所、氏名、生年月日、年齢、性別、基礎疾患、常用薬(医薬部外品を含む)、使用言語、被保険者証の記号番号、及び緊急時連絡先等の患者の属性のデータが、各患者を識別する情報と対応付けて記憶されている。この患者の属性は、薬剤師が患者との対話において取得した情報や、患者がアンケート等に回答して提供した情報や、医師の所見等によって構成され、例えば、患者の、趣味、仕事内容、家族構成、好きな食べ物等の情報が含まれる。他にも、患者の属性には、例えば、患者が、アルコール飲料を摂取するか否か、車両運転を行うか否か、定期的な運動を行うか否か等の生活習慣に関する情報が含まれる。他にも、患者の属性には、例えば、健康診断等で検査された種々の項目についての検査値や、検査値の変動(例えば、最近体重が増加した等の変動)等の情報も含まれる。
【0031】
処方箋DB172には、患者に対して発行された処方箋のデータ(処方した保険医療機関名並びに保険医氏名、処方日、及び処方内容等)が、各患者を識別する情報や処方箋の持参日と対応付けて記憶されている。ここで、本実施形態では、処方箋には、これら一般的な処方箋の内容に加えて、薬剤を処方した医療従事者(例えば、医師)が診断の根拠とした基準値が含まれている。そのため、処方箋DB172には、この診断の根拠とした基準値を特定する情報として、例えば、この基準値を規定した、医学学会や病院や大学等の団体を示す情報も記憶されている。
【0032】
薬歴DB173には、患者に対して処方された薬剤の履歴(薬歴)のデータ(処方履歴、合併症を含む既往歴に関する情報、他科受診の有無等)が、各患者を識別する情報や処方を行った各薬剤師を識別する情報と対応付けて記憶されている。また、薬歴には、薬剤師が患者に対して行った服薬指導内容の履歴のデータ(服薬指導文等)が併せて記憶される。
【0033】
基準値DB174には、様々な医学学会や病院や大学等の複数の団体それぞれ規定した、複数の基準値が記憶されている。基準値は、例えば、各団体に対応する疾病等に関連して基準範囲が定められている。例えば、単一の基準値が規定されている場合には、患者の検査値が、その基準値を上回った場合(あるいは、下回った場合)には基準範囲内であり、その逆に、その基準値を下回った場合(あるいは、上回った場合)には基準範囲外と判定される。他にも、例えば、上限と下限を示す複数の基準値が規定されている場合には、患者の検査値が、その上限を下回り、且つ、下限を上回った場合には基準範囲内であり、その逆に、その上限を上回った場合やその下限を下回った場合には基準範囲外と判定される。
【0034】
一般的に、医療従事者(例えば、医師)は、患者の検査値と、診断の根拠とするために選択した何れかの基準値とを比較し、基準範囲外となった検査項目が多かったり、基準値からの乖離が大きかったりした場合に、その患者に異常がある(すなわち、疾病に罹患している)と診断する。一方で、基準範囲外となった検査項目が少なかったり、基準値からの乖離がそれほど大きくなかったりした場合に、その患者は正常である(すなわち、疾病に罹患しておらず健康である)と診断する。
【0035】
なお、基準値は、性別や年令に応じて、さらに複数規定されている場合もある。この場合、患者の性別や年令に適合した基準値が選択される。また、本実施形態において、基準値には、その基準値を規定した団体が定めた最大投与量や、投与禁忌となる薬剤の組み合わせといった処方条件が含まれていることを想定する。
【0036】
対比情報DB175には、対比情報生成部154が、処方箋に含まれる処方情報や、基準値DB174に含まれる基準値や、情報特定部153による特定結果等に基づいて生成した対比情報が記憶されている。対比情報の、より具体的な内容については、対比情報生成部154の説明の際に、図4を参照して後述する。
【0037】
UI情報生成部151は、医療支援装置10(変形例の医療支援装置10も含む)がユーザインターフェース画面(以下、「UI画面」と称する。)を表示するための各種情報(以下、「UI情報」と称する。)を生成することで、ユーザインターフェースとして機能する各種入出力画面の表示を実現する。UI情報生成部151は、UI画面として、例えば、対比情報提示処理において、処方箋や患者の薬歴等の各種情報を表示する表示領域や、薬剤師からの各種操作を受け付けるアイコン等を表示する表示領域や、対比情報の表示領域が含まれた画面を、出力部816に含まれるディスプレイに出力して表示する。また、UI情報生成部151は、必要に応じて、これら表示と共に、音楽、効果音、及び音声等を出力部816に含まれるスピーカから出力する。
【0038】
そのために、例えば、UI情報生成部151は、UI画面を表示するためのフレームのフォーマット及びフォーマットに挿入する実体的な内容をUI情報として生成する。フォーマットに挿入する実体的な内容としては、例えば、対比情報提示処理において、各データベースに記憶されている処方箋や患者の薬歴等の各種情報が含まれる。
また、UI情報生成部UI情報生成部151は、UI情報に対応して生成されたUI画面上での薬剤師からの入力に基づいた、各種情報や操作指示の内容を受け付ける。
【0039】
処方情報取得部152は、患者が持参した処方箋から、処方情報を取得する。そのために、まず処方箋の内容がレセコンとしての機能を有する薬局用コンピュータ、あるいは、医療支援装置10に入力される。入力方法は、紙媒体に印刷されている処方箋の内容を医療従事者(例えば、薬局の窓口担当や、薬剤師)が、入力部815に含まれるキーボード等の入力装置により手入力してもよい。あるいは、処方箋に印刷されているQRコード(登録商標)の規格に準拠した二次元コード等を読み取ることで、処方箋のデータの少なくとも一部を取得して入力してもよい。あるいは、外部サーバから電子処方箋を取得することで入力してもよい。
【0040】
処方情報取得部152は、このようにして、薬局用コンピュータ、あるいは、医療支援装置10に入力された処方箋の内容から処方情報を取得する。本実施形態において、処方情報には、例えば、患者の検査値と、医療従事者(例えば、医師)が薬剤を処方する診断の根拠とした基準値(以下、「根拠基準値」と称する。)を特定するための情報(例えば、団体名や団体の識別コード)と、薬剤の処方内容が含まれる。
処方情報取得部152は、取得した処方情報を、情報特定部153に対して出力する。
【0041】
情報特定部153は、処方情報取得部152から入力された処方情報や、基準値DB174に含まれる複数の基準値や、薬歴DB173に含まれる患者の薬歴等に基づいて、対比情報を生成するために必要な情報について特定する。対比情報を生成するために必要な情報とは、例えば、根拠基準値を特定するための情報(例えば、団体名や団体の識別コード)に対応する根拠基準値の値そのもの等である。情報特定部153は、根拠基準値を特定するための情報を検索キーとして、基準値DB174を検索することで、対応する根拠基準値の値そのものを特定することができる。この場合に、情報特定部153は、さらに根拠基準値以外の基準値(以下、「他の基準値」と称する。)の値そのものも特定する。
【0042】
これに加えて、例えば、基準値によって、何れかの疾病に関連する基準範囲が定められている場合に、情報特定部153は、前記複数の基準値それぞれについて、前記検査値が前記基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、をさらに特定する。
他にも、情報特定部153は、患者に対して過去に薬剤が処方された際に医療従事者が診断の根拠とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかをさらに特定する。他にも、情報特定部153は、基準値によって、薬剤の処方条件が定められている場合に、複数の基準値それぞれについて、処方された薬剤が薬剤の処方条件を満たしているか、をさらに特定する。
情報特定部153は、これら特定した、取得した対比情報を生成するために必要な情報を、対比情報生成部154に対して出力する。
【0043】
対比情報生成部154は、情報特定部153から入力された対比情報を生成するために必要な情報等に基づいて、対比情報を生成する。対比情報生成部154が生成する対比情報の具体例について、図4を参照して説明する。図4は、対比情報生成部154が生成する対比情報の具体例について示すテーブルである。
【0044】
図4に示すように、対比情報では、医療従事者が薬剤を処方する診断において用いられる複数の検査項目に対応して行(カラム)が設けられる。図中では、一例として検査項目Aから検査項目Nを図示する。また、最終行には、検査項目ではなく、処方条件に対応した行が設けられる。図中では、一例として、処方条件には、処方された薬剤の用法と用量が含まれる。また、患者検査値と、根拠基準値と、複数の基準値と、に対応して列(レコード)が、設けられる。
そして、行と列が交差するフィールド(セル)それぞれに、対応する情報が格納される。
【0045】
このような対比情報では、根拠基準値と、患者の検査値とを対比可能に示している。よってこれを参照した被提示者(例えば、薬剤師)は、医療従事者(例えば、医師)がどのような観点で診断を行ったのかを、適切に把握することができる。
また、このような対比情報では、根拠基準値に加えて、他の基準値もさらに対比可能に示している。よってこれを参照した被提示者は、また、他の基準値ではどのような値が基準となっているのかということや、診断基準値よりも、他の基準値を採用することが適切ではないかということを、適切に把握することができる。
従って、本発明の実施形態に係る医療支援システム1によれば、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。
【0046】
また、このような対比情報では、複数の基準値それぞれについて、検査値が基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、対比可能に示している。これにより、基準範囲内にあり正常と考えられる検査値がどれであるか、あるいは基準範囲外にあり異常と考えられる検査値がどれであるかということが、より適切に把握することができる。さらに、このような、正常や異常という関係性を、根拠基準値のみならず、他の基準値についてもより適切に把握することができる。特に、本例では、検査値が基準範囲外となっている場合に対応するフィールド(セル)の背景色を、他のフィールド(セル)の背景色と異ならせることで、より容易に把握することができる。なお、これのみならず、テキストの大きさや色を異ならせる等の他の方法で、対応するフィールド(セル)の表示態様を異ならせることでも、同様の効果を奏することができる。
【0047】
さらに、このような対比情報では、患者に対して過去に薬剤が処方された際に医療従事者が根拠基準値とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかを対比可能に示している。例えば、図中に「履歴回数」として示したように、その患者に関して、過去に何回根拠基準値として採用されたかを、対比可能に示している。これにより、今回行われた処方における根拠基準値が、過去に行われた処方における根拠基準値と合致しているか否かを、より適切に把握することができる。
【0048】
さらに、このような対比情報では、複数の基準値それぞれについて、処方された薬剤が薬剤の処方条件を満たしているかを対比可能に示している。
これにより、根拠基準値により定められている薬剤の処方条件(ここでは、用法と用量)満たしているか否かを、より適切に把握することができる。また、他の基準値を根拠とした場合に、その他の基準値により定められている薬剤の処方条件満たしているか否かを、より適切に把握することができる。
対比情報生成部154は、生成した、このような対比情報を、提示部155に対して出力すると共に、対比情報DB175に記憶させる。
【0049】
提示部155は、対比情報生成部154から入力された対比情報を、被提示者に対して提示する。ここでは、被提示者は、医療支援装置10を操作する薬剤師である。提示は、例えば、対比情報を図4に示したテーブル形式で、出力部816に含まれるディスプレイに表示することや、通信部818に接続されたプリンタ(図示省略)から、紙媒体等に印刷することや、他の端末(図示省略)に対して対比情報を送信し、この他の端末で対比情報を表示することで実現される。このような提示を行う場合、対比情報のみを単体として提示してもよいし、他の情報の一部として提示してもよい。例えば、レセコンとしての機能を有する薬局用コンピュータから、薬剤師に対して発行される「指示箋」に含まれる情報の一部として提示してもよい。ここで、指示箋は薬剤師に対して調剤を指示する書面である。
【0050】
なお、今回処方される薬剤が複数存在する場合には、その複数存在する薬剤それぞれについて、情報特定部153による情報の特定や、対比情報生成部154による対比情報の生成や、提示部155による対比情報の提示が行われる。
【0051】
このようにして提示された対比情報を参照した被提示者(ここでは、薬剤師)は、図4を参照して説明したように、対比情報により示される様々な情報を得ることができる。これにより、被提示者は、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。例えば、対比情報を、上述したように指示箋に含まれる情報の一部として提示する場合、薬剤師は、対比情報により把握された情報も考慮した上で、処方監査を行うことができる。そのため、処方に疑義があることを、より確実に発見し、疑義照会を行うことができる。
【0052】
このような場面において、対比情報は、例えば、以下のように活用される。
最大投与量や、投与禁忌となる薬剤の組み合わせは、学会ごとに異なる。そのため、例えば、学会Aの基準値を採用している場合に、学会Aの規定する最大投与量の範囲内であるか、学会Aの規定する投与禁忌となっていないかを、薬剤師が確認することができる。例えば、学会Aの基準値を採用しているにも関わらず、学会Bの規定する最大投与量(学会Aの規定よりも多い投与量)を投与することになっている、等の誤りを発見することができる。
【0053】
また、学会によっては性別や、年齢に応じて、複数の基準値が存在する。そこで、例えば、患者が「女性」の場合に、誤って学会Aの「男性」についての基準値を採用していないか等の誤りも発見することができる。
さらに、学会Aの基準値において、複数の検査項目にて基準範囲外の検査値であるが、学会Bの基準値では、それよりもより多数の検査項目において基準範囲外の検査値となっている。そのため、そもそも学会Aではなく学会Bの基準値を採用して診断するべきではないのか、といった疑義も発見することができる。
【0054】
さらに、患者の過去の薬歴を参照できるような場合に、今まで通院していた複数の病院では全て学会Aの基準値を採用していたのに、今回処方を受けた新たな病院では学会B(学会Aとは全く異なる疾病に関する学会)の基準値を採用しているが、これで正しいのか、といった疑義も発見することができる。
【0055】
特に、患者の検査値が基準範囲内であるか否かは1回の処方箋の結果では、いわば「点」のデータだが、回数を重ねるとグラフのような「線」のデータになっていくので、より幅広い観点で疑義照会を行うことができる。例えば、過去に基準範囲外となった検査値は、どの基準値を根拠基準値とした場合であったか等を考慮することが可能になる。また、根拠基準値が一定せず、毎回異なる基準値が根拠基準値となっていること等を把握することができる。さらに、このようなデータを、患者に対して印刷媒体に印刷したり、患者の端末に送信したりすることで、過去の診断履歴に関する情報を患者と共有することも可能となる。
このように、対比情報を提示することで、薬剤師が様々な観点から疑義照会を行うことを支援することができる。
【0056】
DB管理部156は、薬局用コンピュータや外部サーバや病院端末が管理している各種データベースのデータと、医療支援装置10に備えられた各種データベースのデータとを同期させるための管理を行う。例えば、DB管理部156は、予め設定された時刻(例えば、各サーバの使用頻度が低い午前3時等の時刻)や各種データベースが更新されたタイミングで、医療支援装置10が管理している各種データベースにおいて更新されたデータを薬局用コンピュータや外部サーバや病院端末に送信すると共に、薬局用コンピュータや外部サーバや病院端末において更新された各種データベースのデータを薬局用コンピュータや外部サーバから受信することで、医療支援装置10が備える各種データベースを更新する。これにより、医療支援装置10に備えられた各種データベースのデータの内容は、適宜最新の内容に更新される。
【0057】
なお、DB管理部156は、薬局用コンピュータや外部サーバとの同期に加えて、さらに他の方法で各種データベースの内容を更新するようにしてもよい。例えば、医療支援装置10に対する、薬剤師やデータ管理者の入力操作に応じて、各種データベースの内容を更新するようにしてもよい。あるいは、薬局用コンピュータや外部サーバ以外の他のコンピュータから通信等で取得したデータや、リムーバブルメディア831から読み出したデータに基づいて、各種データベースの内容を更新するようにしてもよい。他にも、DB管理部156は、対比情報提示処理において、各機能ブロックが、情報を取得したり生成したりした場合に、この情報に基づいて各種データベースの内容を更新するようにしてもよい。
【0058】
[動作]
次に、医療支援システム1における、医療支援装置10の対比情報提示処理時の動作を説明する。
【0059】
[医療支援装置10の動作]
図5は、医療支援装置10が実行する対比情報提示処理の流れを示すフローチャートである。
医療支援装置10における対比情報提示処理は、医療支援装置10の電源が投入されると共に開始され、電源が投入されているあいだ繰り返し行われる。なお、説明の前提として、対比情報提示処理が実行されている間、UI情報生成部151は、常時UI情報を生成し、UI画面を表示している。
【0060】
ステップS11において、処方情報取得部152は、医療支援装置10に新たな処方箋の内容の入力があったか否かを判定する。新たな処方箋の内容の入力があった場合は、ステップS11においてYesと判定され、処理はステップS12に進む。一方で、新たな処方箋の内容の入力がない場合は、ステップS11においてNoと判定され、処理はステップS11の判定を繰り返す。
【0061】
ステップS12において、処方情報取得部152は、入力された処方箋の内容から処方情報を取得する。
ステップS13において、情報特定部153は、対比情報を生成するために必要な情報について特定する。
【0062】
ステップS14において、対比情報生成部154は、対比情報を生成するために必要な情報等に基づいて、対比情報を生成する。
ステップS15において、提示部155は、生成された対比情報を、被提示者に対して提示する。提示は、例えば、上述したように薬剤師に対して発行される指示箋に含まれる情報の一部として、対比情報を提示することで実現される。
【0063】
ステップS16において、DB管理部156は、対比情報を参照した薬剤師が疑義照会を行ったか否かを判定する。この判定は、例えば、薬剤師から疑義照会に関連する指示操作を受け付けた否か等に基づいて行うことができる。薬剤師が疑義照会を行った場合は、ステップS16においてYesと判定され、処理はステップS18に進む。一方で、薬剤師が疑義照会を行わない場合は、ステップS16においてNoと判定され、処理はステップS17に進む。
【0064】
ステップS17において、DB管理部156は、行われた疑義照会の内容を、履歴情報として各DBに記憶させる。例えば、処方箋DB172における処方箋の情報や、薬歴DB173における薬歴の情報と、疑義照会の内容とを紐付けることにより、履歴情報として各DBに記憶させる。なお、疑義照会を支援するために、薬剤師が疑義照会しようとしている内容を、医療支援装置10から病院端末に対して、メールやテレビ電話等の形式で送信できるようにしてもよい。
【0065】
ステップS18において、DB管理部156は、今回の処理で提示した対比情報を、対比情報DB175に記憶させる。これにより本処理は一度終了する。ただし、医療支援装置10に、電源が投入されているあいだは、繰り返して再度行われる。
【0066】
以上説明した対比情報提示処理を行うことにより、医療支援システム1は、対比情報を提示し、これを参照した被提示者は、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。
【0067】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他の様々な実施形態を取ることが可能である共に、省略及び置換等種々の変形を行うことができる。この場合に、これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
一例として、以上説明した本発明の実施形態を、以下のようにして変形してもよい。また、以下のような変形を組み合わせるようにしてもよい。
【0068】
[変形例1]
上述の実施形態では、一例として、薬剤師が処方監査等を行う場合に、医療支援装置10から薬剤師に対して、対比情報を提示していた。すなわち、処方監査等の医療行為の、リアルタイムな支援を実現していた。これに限らず、他のタイミングで、対比情報を提示するようにしてもよい。例えば、患者に対して薬剤が調剤された後に、例えば、患者が自宅で薬剤を服用するタイミング等において、対比情報を提示するようにしてもよい。
【0069】
図6は、本変形例に係る医療支援システム1aのシステム構成を示す図である。この医療支援システム1aは、上述した実施形態における医療支援システム1と基本的には同等であるが、患者端末20をさらに含んで構成される点で異なる。
【0070】
患者端末20は、患者が保有するPCやスマートフォンやタブレット端末といった情報処理装置によって構成される。また、患者端末20は、医療支援装置10と同様に情報処理装置800のハードウェア構成を有している。また、患者端末20は、ネットワークNを介して、医療支援装置10等と通信を行うことが可能となっている。
【0071】
そして、本変形例では、患者端末20が、患者の操作に応じて、任意のタイミングで対比情報を提示する。例えば、患者が自宅で薬剤を服用するタイミング等において、対比情報を提示する。これにより、患者は、薬剤師による服薬指導後にも、対比情報を確認し、適切に薬剤を服用することが可能となる。すなわち、患者の自宅等においても、服薬指導という医療行為を支援することが可能となる。
【0072】
[患者端末20の機能的構成]
図7は、患者端末20の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、患者端末20のCPU811においては、ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)251と、対比情報取得部252と、提示部253と、が機能する。
【0073】
また、図7に示すように、患者端末20の記憶部817においては、ユーザインターフェース情報記憶部(UI情報記憶部)271と、対比情報記憶部272と、が形成される。
【0074】
UI表示制御部251は、UI情報に基づいて、患者端末20における対比情報提示処理におけるUI画面の表示を制御する。例えば、UI表示制御部251は、患者端末20における対比情報提示処理において、処方箋や患者の薬歴等の各種情報を表示する表示領域や、患者からの各種操作を受け付けるアイコン等を表示する表示領域や、対比情報の表示領域が含まれた画面を、出力部816に含まれるディスプレイに出力して表示する。また、UI表示制御部251は、必要に応じて、これら表示と共に、音楽、効果音、及び音声等を出力部816に含まれるスピーカから出力する。
【0075】
このようなUI画面の表示を実現するために、UI表示制御部251は、UI情報の取得要求として、患者を識別する情報を含ませた取得要求を、医療支援装置10に対して送信する。そして、UI表示制御部251は、その応答として、この患者に適合したUI情報を、医療支援装置10から受信することで取得する。また、UI表示制御部251は、この取得したUI情報をUI情報記憶部271に記憶させる。そして、UI表示制御部251は、UI情報記憶部271が記憶するUI情報を適宜読み出してUI画面の表示を実現する。すなわち、UI情報記憶部271は、UI情報を記憶する記憶部として機能する。
さらに、UI表示制御部251は、UI画面において患者から入力された各種情報や、患者から入力された操作指示の内容を、他の機能ブロックに出力したり、医療支援装置10に送信したりする。
【0076】
対比情報取得部252は、対比情報を取得する。そのために対比情報取得部252は、対比情報の取得要求として、患者を識別する情報を含ませた取得要求を、医療支援装置10に対して送信する。そして、対比情報取得部252は、その応答として、この患者に対して処方された処方箋に基づいて生成された、この患者に適合した対比情報を、医療支援装置10から受信することで取得する。
また、対比情報取得部252は、この取得した対比情報を対比情報記憶部272に記憶させる。すなわち、対比情報記憶部272は、対比情報を取得する記憶部として機能する。
【0077】
提示部253は、対比情報記憶部272が記憶する対比情報を患者に対して提示する。提示の方法は、医療支援装置10の提示部155と同様であり、出力部816に含まれるディスプレイに表示することや、紙媒体等に印刷する等の方法で実現される。
【0078】
[患者端末20の動作]
図8は、患者端末20が実行する対比情報提示処理の流れを示すフローチャートである。
患者端末20における対比情報提示処理は、患者端末20の電源が投入されると共に開始され、電源が投入されているあいだ繰り返し行われる。なお、説明の前提として、対比情報提示処理が実行されている間、UI表示制御部251は、常時UI画面を表示している。この場合に、表示のためのUI情報は、予め医療支援装置10から取得してUI情報記憶部271に記憶しておいてもよいし、表示時にリアルタイムに取得するようにしてもよい。
【0079】
ステップS21において、対比情報取得部252は、対比情報の取得指示操作を薬剤師から受け付けたか否かを判定する。取得指示操作を薬剤師から受け付けた場合は、ステップS21においてYesと判定され、処理はステップS22に進む。一方で、取得指示操作を薬剤師から受け付けていない場合は、ステップS21においてNoと判定され、処理はステップS21の判定を繰り返す。
【0080】
ステップS22において、対比情報取得部252は、対比情報の取得要求として、患者を識別する情報を含ませた取得要求を、医療支援装置10に対して送信する。
【0081】
ステップS23において、対比情報取得部252は、取得要求の応答として、この患者に対して処方された処方箋に基づいて生成された、この患者に適合した対比情報を、医療支援装置10から受信することで取得する。
【0082】
ステップS24において、対比情報取得部252は、取得した対比情報を対比情報記憶部272に記憶させる。
ステップS25において、提示部253は、対比情報記憶部272が記憶する対比情報を、患者端末20の利用者に対して提示する。これにより、本処理は終了する。
【0083】
これにより、提示された対比情報を参照した被提示者である患者端末20の利用者は、医療支援装置10を利用する薬剤師同様に、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握することが可能となる。なお、患者端末20の利用者は、例えば、患者本人や、その家族や、患者に関連する医療従事者(例えば、訪問介護員)である。すなわち、本変形例によれば、対比情報を様々な関係者で共有することが可能となる。
【0084】
[変形例2]
上述した実施形態では、対比情報に、基準値DB174に記憶されている他の基準値を全て含ませて提示していた。これに限らず、一部の他の基準値のみを対比情報に含ませて、提示するようにしてもよい。この場合、例えば、検査値が基準範囲外となっている検査項目が所定数以上の他の基準値を、対比情報に含ませるようにしてもよい。その逆に、検査値が基準範囲外となっていない(あるいは、少ない)他の基準値は、罹患が疑われる疾病とは関係ないとして、対比情報に含ませないようにしてもよい。
【0085】
あるいは、過去に根拠基準値となっていない(あるいは、少ない)他の基準値は、罹患が疑われる疾病とは関係ないとして、対比情報に含ませないようにしてもよい。
他にも、薬剤師や患者といった被提示者による操作指示に基づいて、対比情報に含ませる他の基準値を任意に選択できるようにしてもよい。
本変形例によれば、他の基準値として比較情報に含ませる他の基準値を、より患者と関連性の高いものに限定することができ、被提示者による参照を、より簡便なものとすることが可能となる。
【0086】
[構成例]
以上のように、本実施形態に係る医療支援システム1は、処方情報取得部152と、情報特定部153と、提示部155,253と、を備える。また、複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する。
この場合に、処方情報取得部152は、薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、患者の検査値と、を示す処方情報を取得する。
情報特定部153は、診断の根拠とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかを特定する。
提示部155,253は、検査値と共に、情報特定部153が特定した診断の根拠とした基準値と他の基準値とを被提示者に対して対比可能に提示する。
【0087】
このように、医療支援システム1は、医療従事者(例えば、医師)が薬剤を処方する診断の根拠とした基準値と、患者の検査値とを対比可能に提示する。よってこれを参照した被提示者(例えば、薬剤師)は、医師がどのような観点で診断を行ったのかを、適切に把握することができる。
また、医療従事者は、診断において、検査値と基準値とを比較するが、そもそも基準値は一律に規定されているものではない。基準値は、例えば、医学学会等の団体それぞれに対応して複数存在し、各基準値の値は異なっている。そこで、医療支援システム1は、診断の根拠とした基準値に加えて、他の基準値もさらに対比可能に提示する。よってこれを参照した被提示者は、また、他の基準値ではどのような値が基準となっているのかということや、医療従事者が診断の根拠とした基準値よりも、他の基準値を採用することが望ましいのではないかということを、適切に把握することができる。
従って、本発明の実施形態に係る医療支援システム1によれば、薬剤の処方に関する情報を、より適切に把握可能とすることができる。
【0088】
基準値によって、何れかの疾病に関連する基準範囲が定められている。
この場合に、情報特定部153は、複数の基準値それぞれについて、検査値が基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、をさらに特定する。
提示部155,253は、情報特定部153がさらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する。
これにより、基準範囲内にあり正常と考えられる検査値がどれであるか、あるいは基準範囲外にあり異常と考えられる検査値がどれであるかということが、より適切に把握することができる。さらに、このような、正常や異常という関係性を、診断の根拠とした基準値のみならず、他の基準値についてもより適切に把握することができる。
【0089】
情報特定部153は、患者に対して過去に薬剤が処方された際に医療従事者が診断の根拠とした基準値が、複数の基準値の内の何れであるのかをさらに特定する。
提示部155,253は、情報特定部153がさらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する。
これにより、今回行われた処方において診断の根拠とした基準値が、過去に行われた処方において診断の根拠とした基準値と合致しているか否かを、より適切に把握することができる。
【0090】
基準値によって、薬剤の処方条件が定められている。
この場合に、情報特定部153は、複数の基準値それぞれについて、処方された薬剤が薬剤の処方条件を満たしているか、をさらに特定する。
提示部155,253は、情報特定部153がさらに特定した情報も、何れの基準値に対応する情報であるかを対比可能に提示する。
これにより、診断の根拠とした基準値により定められている薬剤の処方条件(例えば、用法や、用量や、投与禁忌)満たしているか否かを、より適切に把握することができる。また、他の基準値を根拠とした場合に、その他の基準値により定められている薬剤の処方条件満たしているか否かを、より適切に把握することができる。
【0091】
提示部155,253は、医療従事者とは異なる他の医療従事者が、処方情報に基づいて薬剤の処方を実行しようとする場合に、他の医療従事者を被提示者として提示を行う。
これにより、薬剤師による、処方監査の場面等において、医療支援システム1によって、より適切に把握されている情報を活用することができる。
【0092】
提示部155,253は、処方に基づいて患者に対して薬剤が調剤された場合に、患者を被提示者として提示を行う。
これにより、患者による、実際の服薬時の場面等において、医療支援システム1によって、より適切に把握されている情報を活用することができる。
【0093】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態においては、薬剤師による処方監査を対象として支援する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。すなわち、本発明において支援する対象には、各種医療情報が含まれる。
【0094】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、上述の実施形態における機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が医療支援システム1を構成するいずれかのコンピュータに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に示した例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0095】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0096】
また、上述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
1,1a 医療支援システム、10 医療支援装置、20 患者端末、N ネットワーク、151 ユーザインターフェース情報生成部(UI情報生成部)、152 処方箋情報取得部、153 情報特定部、154 対比情報生成部、155 提示部、156 データベース管理部(DB管理部)、171 患者属性データベース(患者属性DB)、172 処方箋データベース(処方箋DB)、173 薬歴データベース(薬歴DB)、174 基準値データベース(基準値DB)、175 対比情報データベース(対比情報DB)、251 ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)、252 対比情報取得部、253 提示部、271 ユーザインターフェース表示記憶部(UI情報記憶部)、272 対比情報記憶部、800 情報処理装置、811 CPU、812 ROM、813 RAM、814 バス、815 入力部、816 出力部、817 記憶部、818 通信部、819 ドライブ、831 リムーバブルメディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-11-06
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、医療支援システム、及び医療支援プログラムに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在し、前記複数の基準値それぞれによって、疾病に関連する基準範囲が定められている場合に
者の検査値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得手段と、
前記複数の基準値それぞれについて、前記患者の検査値が前記基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、を特定する特定手段と、
前記特定手段が前記複数の基準値それぞれについて特定した結果を、被提示者に対して対比可能に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項2】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在し、前記複数の基準値それぞれによって、薬剤の処方条件が定められている場合に、
患者の検査値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得手段と、
前記患者の検査値に基づいて、前記複数の基準値それぞれについて、前記処方された薬剤が前記薬剤の処方条件を満たしているか、を特定する特定手段と、
前記特定手段が前記複数の基準値それぞれについて特定した結果を、被提示者に対して対比可能に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項3】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得手段と、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の異なる基準値の内の何れであるのかを履歴として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する履歴に基づいて、同一の患者に対して過去に同一の薬剤が処方された際に、前記複数の異なる基準値それぞれについて、前記医療従事者が診断の根拠とした回数を被提示者に対して対比可能に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項4】
前記提示手段は、前記処方情報を処方した医療従事者とは異なる他の医療従事者が、前記処方情報に基づいて薬剤の処方を実行しようとする場合に、前記他の医療従事者を前記被提示者として前記提示を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の医療支援システム。
【請求項5】
前記提示手段は、前記処方情報に基づいて前記患者に対して薬剤が調剤された場合に、前記患者を前記被提示者として前記提示を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の医療支援システム。
【請求項6】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在し、前記複数の基準値それぞれによって、疾病に関連する基準範囲が定められている場合に
者の検査値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得機能と、
前記複数の基準値それぞれについて、前記患者の検査値が前記基準範囲内と基準範囲外の何れにあるのか、を特定する特定機能と、
前記特定機能が前記複数の基準値それぞれについて特定した結果を、被提示者に対して対比可能に提示する提示機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする医療支援プログラム。
【請求項7】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在し、前記複数の基準値それぞれによって、薬剤の処方条件が定められている場合に、
患者の検査値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得機能と、
前記患者の検査値に基づいて、前記複数の基準値それぞれについて、前記処方された薬剤が前記薬剤の処方条件を満たしているか、を特定する特定機能と、
前記特定機能が前記複数の基準値それぞれについて特定した結果を、被提示者に対して対比可能に提示する提示機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする医療支援プログラム。
【請求項8】
複数の異なる主体それぞれによって規定された複数の異なる基準値が存在する場合に、
薬剤を処方した医療従事者が診断の根拠とした基準値と、処方された薬剤と、を示す処方情報を取得する処方情報取得機能と、
前記診断の根拠とした基準値が、前記複数の異なる基準値の内の何れであるのかを履歴として記憶する記憶機能と、
前記記憶機能が記憶する履歴に基づいて、同一の患者に対して過去に同一の薬剤が処方された際に、前記複数の異なる基準値それぞれについて、前記医療従事者が診断の根拠とした回数を被提示者に対して対比可能に提示する提示機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする医療支援プログラム。