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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017358
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】移動体制御装置および移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240201BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119932
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】方波見 大樹
(72)【発明者】
【氏名】槙 修一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
(57)【要約】
【課題】移動体の車体情報を校正し、高精度な走行制御を実現すること
【解決手段】移動体の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力部と、前記状態情報に基づいて前記移動体の移動に関する制御内容を決定する制御機能部と、前記移動体の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成する生成機能部と、少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録機能部と、前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正機能部と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力部と、
前記状態情報に基づいて前記移動体の移動に関する制御内容を決定する制御機能部と、
前記移動体の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成する生成機能部と、
少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録機能部と、
前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正機能部と、を備えたことを特徴とする移動体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体制御装置であって、
前記移動体は、対向する2つの駆動輪を個別に駆動して直進と方向転換を行い、
前記車体情報は、前記駆動輪の径と、前記駆動輪の間隔とを含み、
前記生成機能部は、前記駆動輪の各々の回転を制御する駆動信号を生成し、
前記履歴記録機能部は、前記駆動輪の回転状態を示すエンコーダ値を前記制御内容に対応する情報として前記状態情報に対応付けて記録し、
前記補正機能部は、前記位置及び/又は角度の履歴と前記エンコーダ値の履歴とを用いて前記駆動輪の径及び/又は間隔を補正することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体制御装置であって、
前記移動体は、対向する2つの駆動輪を個別に駆動して前進と方向転換を行い、
前記車体情報は、前記駆動輪の間隔を含み、
前記入力部は、所定の基準方向に対する前記移動体の角度を前記状態情報として入力し、
前記補正機能部は、前記状態情報の履歴が示す前記移動体の角度の変化と前記制御内容から導かれる前記移動体の角度の変化との相違に基づいて、前記駆動輪の間隔を補正することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の移動体制御装置であって、
前記補正機能部は、前記状態情報の履歴から前記移動体の方向転換における角速度を求め、前記駆動輪の速度差を前記角速度で除算して前記駆動輪の間隔を算出し、該算出した駆動輪の間隔によって前記車体情報を更新することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の移動体制御装置であって、
前記補正機能部は、前記位置の履歴から求めた移動距離と前記エンコーダ値から求めた回転数とを用いて前記駆動輪の径を算出し、該算出した駆動輪の径によって前記車体情報を更新することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の移動体制御装置であって、
前記補正機能部は、前記駆動輪の径を補正し、補正後の駆動輪の径と前記エンコーダ値とを用いて前記駆動輪の速度差を算出し、算出した速度差を前記状態情報の履歴から求めた前記移動体の方向転換における角速度で除算して前記駆動輪の間隔を算出し、該算出した駆動輪の間隔によって前記車体情報を更新することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の移動体制御装置であって、
前記補正機能部は、前記移動体の直進時における前記状態情報の履歴を用いて前記駆動輪の径を補正し、前記移動体の方向転換時における前記状態情報の履歴を用いて前記駆動輪の間隔を補正することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項8】
移動体制御装置が、
移動体の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力ステップと、
前記状態情報に基づいて前記移動体の移動に関する制御内容を決定する制御ステップと、
前記移動体の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成する生成ステップと、
少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録ステップと、
前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正ステップと、を含むことを特徴とする移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置および移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や物流倉庫などにおいて、部品の運搬や荷役作業用としてAGV(Automated Guided Vehicle)と呼ばれる無人搬送車が利用されている。無人搬送車は、例えば走行経路に描かれたガイドラインを検知するルート検出器を備え、ルート検出器からの検知信号に基づいて駆動輪をコントロールすることによって、ガイドラインに沿った走行が可能である。目的地まで移動体の自律移動を制御する技術として例えば、特許文献1に示す移動体システムが知られている。この公報には、「予め設定された走行経路に応じて配置された平板標識と、前記走行経路に沿って自律走行する移動体と、を有する移動体システムであって、前記移動体に設けられ、所定の探索範囲に検出用光を走査することにより、前記移動体と前記探索範囲内に存在する物体までの距離及び方向を検出する距離方向検出装置と、前記距離方向検出装置の検出結果に基づいて前記移動体の進行方向を決定する進行方向決定手段と、を有し、前記平板標識は、鏡面と、入射光を拡散反射する割合が当該鏡面よりも高い拡散反射面と、を含む、移動体システム」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-113765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、車体情報の校正が考慮されておらず、制御の精度が低下する場合があるという問題があった。例えば、制御側が認識している駆動輪径と、実際の駆動輪径に差があると、制御側が想定する移動距離と実際の移動距離に誤差が生じる。同様に、制御側が認識している駆動輪取付間隔と、実際の駆動輪取付間隔に差があると、制御側が想定する旋回角度と実際の旋回角度に誤差が生じる。駆動輪径や駆動輪取付間隔のような車体情報は、例えば個体差や経年劣化によって制御側が認識している値と相違する場合がある。
【0005】
そこで、本発明では、移動体の車体情報を校正し、高精度な走行制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の移動体制御装置の一つは、移動体の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力部と、前記状態情報に基づいて前記移動体の移動に関する制御内容を決定する制御機能部と、前記移動体の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成する生成機能部と、少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録機能部と、前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正機能部と、を備えたことを特徴とする。
また、代表的な本発明の移動体制御方法の一つは、移動体制御装置が、移動体の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力ステップと、前記状態情報に基づいて前記移動体の移動に関する制御内容を決定する制御ステップと、前記移動体の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成する生成ステップと、少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録ステップと、前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体の車体情報を校正し、高精度な走行制御を実現できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】移動体の構成図。
図2】移動体制御装置の構成図。
図3】車体情報データの説明図。
図4】補正データの説明図。
図5】駆動輪径の補正のシーケンス図。
図6】駆動輪取付間隔の補正のシーケンス図。
図7】車体情報の補正のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0010】
本実施例では差動二輪駆動の移動体を制御し、車体情報の補正機能を有する移動体制御装置について説明する。
差動二輪駆動の移動体は、対向する2つの駆動輪を備え、2つの駆動輪を個別に駆動して直進と方向転換を行う。駆動輪の直径を駆動輪径といい、移動体に取り付けられた状態での駆動輪の間隔を駆動輪取付間隔という。駆動輪径と駆動輪取付間隔は、車体情報の一部として管理する。車体情報には、駆動輪径と駆動輪取付間隔に限らず、移動体の寸法などを示す各種のパラメータを含めることができる。
【0011】
本実施例では、駆動輪径および駆動輪取付間隔を補正対象とする。両パラメータは移動体の制御に欠かせないパラメータであり、移動体製造時等の固定値をパラメータとして入力する。しかしながら実際は駆動輪の製造時の許容誤差や摩耗、振動などの影響を常に受けており、駆動輪のパラメータは変動する。そのため、車体情報を活用したオドメトリなどの機能を活用する際、誤差が大きいほど性能を十分に発揮することができなくなる。本実施では駆動輪から得られるエンコーダ値と位置センサから得られる位置情報を活用することで、駆動輪径の補正を行い、その後駆動輪取付間隔の補正を行うことで車体情報のパラメータの精度を高める。
【0012】
図1は、本実施例の移動体100の構成図を表している。移動体100は、車体106に2つの駆動輪105を取り付けた構成を有する。また、車体106は、位置センサ102、2つのエンコーダ103、2つの駆動部104、及び移動体制御装置101を搭載している。
【0013】
移動体制御装置101は、インターフェース部として入力部110及び出力部111を有している。
位置センサ102は、レーザスキャナやカメラなどを活用し、自己位置推定を行い、座標および角度データを出力する。例えば、位置センサ102は、レーザスキャナやカメラなどで検知した外界の状況と所定の地図データとを比較し、地図データ上の座標と、地図データ上の所定方向に対する角度とを特定して、移動体制御装置101の入力部110に入力として与える。
【0014】
2つのエンコーダ103は、2つ駆動輪105に対応して各々設けられ、駆動輪105の回転角度の取得を行う。エンコーダ103は、取得したエンコーダ値を移動体制御装置101の入力部110に入力として与える。
【0015】
2つの駆動部104は、2つ駆動輪105に対応して各々設けられ、移動体制御装置101の出力部111から出力される駆動信号を元に駆動輪105の回転を制御する制御ドライバである。駆動輪105は、パラメータとして駆動輪の大きさである駆動輪径107と駆動輪取付間隔108を持つ。
【0016】
図2は、本実施例の移動体制御装置101の構成図を表している。移動体制御装置101は、入力部110及び出力部111に加えて車体制御機能部112、駆動信号生成機能部113、データロギング機能部114、車体情報補正機能部115、車体情報データ118、補正データ119を備える。
【0017】
入力部110は、移動体100の座標と角度を示す状態情報を入力する。具体的には、位置センサ102から座標と角度の入力を受け、状態情報とする。また、入力部110は、エンコーダ103からエンコーダ値の入力を受ける。
【0018】
車体制御機能部112は、状態情報に基づいて移動体100の移動に関する制御内容を決定する制御機能部である。
駆動信号生成機能部113は、車体情報データ118を参照し、制御内容を実現するために駆動部104に与える駆動信号を生成する生成機能部である。
例えば、制御内容が移動体100の直進距離であれば、駆動信号生成機能部113は、直進距離を駆動輪径で除算することで、駆動輪の回転量を指定する駆動信号を生成する。直進時には、同一内容の駆動信号を2つの駆動輪に適用することができる。または、2つの駆動輪の駆動輪径を個別に管理している場合には、それぞれの駆動輪に与える駆動信号を個別に生成してもよい。
また、制御内容が移動体100の方向転換であれば、駆動信号生成機能部113は、2つの駆動輪に対して異なる回転量を指定する駆動信号を生成する。
このように、駆動信号生成機能部113は、駆動輪の各々の回転を制御する駆動信号を生成し、生成した駆動信号をインターフェース部の出力部111から出力する。
【0019】
データロギング機能部114は、状態情報の座標と角度、そしてエンコーダ値を時刻ごとに保管する履歴記録機能部である。保管されたデータは補正データ119として扱う。
例えば、データロギング機能部114は、駆動輪径の補正を行う場合には直進時のデータを取得し、補正データ119とする。同様に、データロギング機能部114は、駆動輪取付間隔の補正を行う場合には方向転換時のデータを取得し、補正データ119とする。
【0020】
車体情報補正機能部115は、状態情報の履歴が示す制御の結果と制御内容との差異に基づいて、車体情報を補正する補正機能部である。車体情報補正機能部115は、駆動輪径補正機能116と駆動輪取付間隔補正機能117を含む。車体情報補正機能部115は、データロギング機能部114にて作成した補正データ119を用いて車体情報の補正値を算出して車体情報データ118に格納されているパラメータを上書きする。
【0021】
具体的には、駆動輪径補正機能116は、補正データ119の座標の履歴から求めた移動距離とエンコーダ値から求めた回転数とを用いて駆動輪径を算出し、該算出した駆動輪径によって車体情報データ118の駆動輪径を更新する。
また、駆動輪取付間隔補正機能117は、補正データ119の角度の履歴から求めた移動体100の角度の変化と制御内容から導かれる移動体の角度の変化との相違に基づいて、駆動輪の間隔を補正する。例えば、駆動輪取付間隔補正機能117は、補正データ119の角度の履歴から移動体100の方向転換における角速度を求め、2つの駆動輪105の速度差を角速度で除算して駆動輪取付間隔を算出し、該算出した駆動輪取付間隔によって車体情報データ118の駆動輪取付間隔を更新する。
【0022】
なお、補正に際しては、駆動輪径補正機能116が駆動輪径を補正し、その後、駆動輪取付間隔補正機能117が補正後の駆動輪径を用いて駆動輪取付間隔を補正することが望ましい。
また、駆動輪径補正機能116は、前記移動体の直進時における前記状態情報の履歴を用いて前記駆動輪の径を補正し、駆動輪取付間隔補正機能117は、移動体の方向転換時における状態情報の履歴を用いて駆動輪間隔を補正する。
【0023】
図3は、車体情報データ118の説明図である。本実施例では、車体情報データ118は、駆動輪径107、駆動輪取付間隔108に加えて、駆動輪一回転あたりのエンコーダ値を車体情報として保持する。
【0024】
図4は、補正データの説明図を表している。補正データ119は、データロギング機能部114によって生成され、車体情報補正機能部115が利用する。データ積算は、順番に積算周期や指定タイミングによって格納されていく。同図では、補正データ119は、時刻情報、座標情報、確度情報、エンコーダ値を対応付けて格納している。なお、エンコーダ値は、2つの駆動輪105についてそれぞれ個別に格納してもよい。
【0025】
図5は、駆動輪径の補正のシーケンス図である。移動体100が運転状態であり、駆動輪径107の補正を行う際、車体制御機能部112が各機能を用いて駆動輪径107の補正を行っていく。
【0026】
具体的には、まず、データロギング機能部114が一定期間、位置座標、角度及びエンコーダ値のロギングを行う。データロギング機能部114は、ロギングを終了すると、移動体100の挙動が直進の期間のデータを補正データ119に格納する。その後、駆動輪径補正機能116が補正データ119を参照し、算術式(120)~(122)を用いて駆動輪径107を算出していく。駆動輪径補正機能116は、算出した駆動輪径107で、車体情報データ118内の駆動輪径のデータを上書きし、駆動輪径の補正を終了する。
【0027】
ここで、算術式(120)~(122)について説明する。
【数1】
【数2】
【数3】
算術式120は、駆動輪回転数算出式のことを指し、補正データ119に格納されている運転情報から駆動輪の回転数の算出を行う。積算エンコーダ値は、直線期間に格納された最初のエンコーダ値と最後のエンコーダ値の差分となる。1回転あたりのエンコーダ値は駆動輪が一回転する際のエンコーダ値のことである。それらを用いて積算エンコーダ値を1回転あたりのエンコーダ値で除算することで駆動輪回転数が求まる。
算術式121は、駆動輪移動距離算術式を指し、補正データ119に格納されている運転情報から駆動輪の移動距離の算出を行う。積算された位置座標から次点の位置座標の距離間を求め、積算データ分繰り返し駆動輪移動距離を算出する。
算術式122は駆動輪径算出式のことを指し、算術式121にて求めた駆動輪移動距離を駆動輪回転数と円周率を乗算したもので除算することで駆動輪径107を算出することができる。
【0028】
なお、駆動輪径の算出に際しては、他の方法を用いてもよい。例えば、算術式(121)に代えて、X座標の差分の二乗とY座標の差分の二乗との和を求め、和の平方根を積算する、次の式を用いてもよい。
Σ((X(k+1)-X(k)+(Y(k+1)-Y(k)1/2
【0029】
図6は、駆動輪取付間隔の補正のシーケンスである。先に駆動輪径107の補正を行うことで正確な速度情報を算出することが可能となり、その結果、駆動輪取付間隔108の高精度な補正が可能となる。
移動体100が運転状態であり、駆動輪取付間隔108の補正を行う際、車体制御機能部112が各機能を用いて駆動輪取付間隔108の補正を行っていく。
【0030】
具体的には、まず、データロギング機能部114が一定期間、位置座標、角度及びエンコーダ値のロギングを行う。データロギング機能部114は、ロギングを終了すると、移動体100の挙動が旋回(方向転換)である期間のデータを補正データ119に格納する。その後、駆動輪取付間隔補正機能117が補正データ119を参照し、算術式(123)~(124)を用いて駆動輪取付間隔108を算出していく。駆動輪取付間隔補正機能117は、算出した駆動輪取付間隔108で、車体情報データ118内の駆動輪取付間隔のデータを上書きし、駆動輪取付間隔の補正を終了する。
【0031】
ここで、算術式(123)~(124)について説明する。
【数4】
【数5】
算術式123は、角速度算出式のことを指し、補正データ119に格納されている運転情報から移動体の角速度の算出を行う。角速度は、単位時間当たりの角度の変化量を平均して求めることができる。算術式124は、駆動輪取付間隔算術式のことを指し、算術式123にて求めた角速度で旋回中の車体速度を除算する事で駆動輪取付間隔108を算出することができる。
【0032】
なお、駆動輪取付間隔の算出に際しては、他の方法を用いてもよい。例えば、算術式(123)に代えて、2つの駆動輪の速度差を算出し、算出した速度差を移動体の方向転換における角速度で除算する、次の式を用いてもよい。
駆動輪取付間隔=(駆動輪の速度差)/角速度
ここで、駆動輪の速度は、エンコーダ値の時間変化と駆動輪径から求めることができる。したがって、駆動輪径を補正した後に、補正後の駆動輪径を用いて駆動輪取付間隔を算出することで、駆動輪取付間隔を高精度に求めることができる。
【0033】
図7は、車体情報の補正のフローチャートである。移動体制御装置101は、車体情報の補正を行う際に、次のステップS131~S138のステップを順次実行する。
まず、入力部110が、移動体100の位置の座標と角度を示す状態情報を入力する(ステップS131)。その後、車体制御機能部112が、状態情報に基づいて移動体100の移動に関する制御内容を決定する(ステップS132)。
【0034】
駆動信号生成部113は、車体情報データ118を参照し(ステップS133)、制御内容を実現するために駆動部に与える駆動信号を生成し(ステップS134)、駆動信号を出力部111から駆動部104に出力する(ステップS135)。
【0035】
データロギング機能部114は、時刻、状態情報、エンコーダ値を対応付けて記録し(ステップS136)、記録の終了判定を行う(ステップS137)。記録を終了しない場合には(ステップS137;No)、ステップS131に戻る。
【0036】
記録を終了すると(ステップS137;Yes)、車体情報補正機能部115は、状態情報の履歴が示す制御の結果と制御内容との差異に基づいて、車体情報データ118を補正し(ステップS138)、処理を終了する。
【0037】
上述してきたように、実施例に開示した移動体制御装置101は、移動体100の位置及び/又は角度を示す状態情報を入力する入力部110と、前記状態情報に基づいて前記移動体100の移動に関する制御内容を決定する制御機能部としての車体制御機能部112と、前記移動体100の車体情報を参照し、前記制御内容を実現するために駆動部104に与える駆動信号を生成する生成機能部としての駆動信号生成機能部113と、少なくとも前記状態情報の履歴を記録する履歴記録機能部としてのデータロギング機能部114と、前記状態情報の履歴が示す制御の結果と前記制御内容との差異に基づいて、前記車体情報を補正する補正機能部としての車体情報補正機能部115と、を備える。
この構成と動作により、移動体の車体情報を校正し、高精度な走行制御を実現できる。
【0038】
また、移動体100は、対向する2つの駆動輪105を個別に駆動して直進と方向転換を行い、前記車体情報は、前記駆動輪の径と、前記駆動輪の間隔とを含み、前記生成機能部は、前記駆動輪の各々の回転を制御する駆動信号を生成し、前記履歴記録機能部は、前記駆動輪の回転状態を示すエンコーダ値を前記制御内容に対応する情報として前記状態情報に対応付けて記録し、前記補正機能部は、前記位置及び/又は角度の履歴と前記エンコーダ値の履歴とを用いて前記駆動輪の径及び/又は間隔を補正する。
このため、差動二輪駆動の移動体について、駆動輪の径及び/又は間隔を補正可能である。
【0039】
また、前記移動体100は、対向する2つの駆動輪105を個別に駆動して前進と方向転換を行い、前記車体情報は、前記駆動輪の間隔を含み、前記入力部110は、所定の基準方向に対する前記移動体100の角度を前記状態情報として入力し、前記補正機能部は、前記状態情報の履歴が示す前記移動体100の角度の変化と前記制御内容から導かれる前記移動体の角度の変化との相違に基づいて、前記駆動輪の間隔を補正する。
一例として、前記補正機能部は、前記状態情報の履歴から前記移動体の方向転換における角速度を求め、前記駆動輪の速度差を前記角速度で除算して前記駆動輪の間隔を算出し、該算出した駆動輪の間隔によって前記車体情報を更新する。
このため、差動二輪駆動の移動体について、駆動輪の間隔を簡易に求めることができる。
【0040】
また、前記補正機能部は、前記位置の履歴から求めた移動距離と前記エンコーダ値から求めた回転数とを用いて前記駆動輪の径を算出し、該算出した駆動輪の径によって前記車体情報を更新する。
このため、差動二輪駆動の移動体について、駆動輪径を簡易に求めることができる。
【0041】
また、前記補正機能部は、前記駆動輪の径を補正し、補正後の駆動輪の径と前記エンコーダ値とを用いて前記駆動輪の速度差を算出し、算出した速度差を前記状態情報の履歴から求めた前記移動体の方向転換における角速度で除算して前記駆動輪の間隔を算出し、該算出した駆動輪の間隔によって前記車体情報を更新する。
このように駆動輪径の補正結果を駆動輪取付間隔の補正に利用することで、駆動輪取付間隔を高精度に補正可能である。
【0042】
前記補正機能部は、前記移動体100の直進時における前記状態情報の履歴を用いて前記駆動輪の径を補正し、前記移動体100の方向転換時における前記状態情報の履歴を用いて前記駆動輪の間隔を補正する。
このため、状態情報の履歴を効率的に取得し、利用して車体情報を補正することができる。
【0043】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0044】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0045】
また、上記の実施例では、駆動輪径と駆動輪間隔の補正を例示したが、駆動輪径が信頼できるならば、駆動輪径からエンコーダの値を補正することも可能である。
また、移動体制御装置は、必ずしも移動体に搭載する必要はなく、移動体を遠隔制御する装置であってもよい。
また、移動体制御装置の機能を複数の装置に分け、システムとして動作する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
100:移動体、101:移動体制御装置、102:位置センサ、103:エンコーダ、104:駆動部、105:駆動輪、106:車体、107:駆動輪径、108:駆動輪取付間隔、110:入力部、111:出力部、112:車体制御機能部、113:駆動信号生成機能部、114:データロギング機能部、115:車体情報補正機能部、116:駆動輪径補正機能、117:駆動輪取付間隔補正機能、118:車体情報データ、119:補正データ
図1
図2
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図5
図6
図7