(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173588
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183694
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2023091790
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ラクスマン マハルジャン
(72)【発明者】
【氏名】田重田 稔久
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB26
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
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5H730FD41
5H730FD51
5H730FF09
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX23
5H730XX27
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】過電流保護の誤動作を防止可能な電力変換装置の提供。
【解決手段】トランスと、前記トランスの一次側に設けられる一次側ブリッジ回路と、前記トランスの二次側に設けられる二次側ブリッジ回路とを有するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路または前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記トランスに流れるトランス電流の過電流検出レベルを変更する、電力変換装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、前記トランスの一次側に設けられる一次側ブリッジ回路と、前記トランスの二次側に設けられる二次側ブリッジ回路とを有するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記一次側ブリッジ回路または前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記トランスに流れるトランス電流の過電流検出レベルを変更する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路または前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記トランスの一次巻線に流れる一次側トランス電流および前記トランスの二次巻線に流れる二次側トランス電流の過電流検出レベルを変更する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路および前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記一次側トランス電流および前記二次側トランス電流の過電流検出レベルを変更する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路および前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記トランス電流の過電流検出レベルを変更する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記直流電圧と前記トランス電流の過電流検出レベルとの対応関係に基づいて、前記直流電圧の検出値に対応する値に、前記トランス電流の過電流検出レベルを設定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記一次側ブリッジ回路に流れる一次側直流電流の過電流検出レベルを変更する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記一次側直流電流の過電流検出レベルとの対応関係に基づいて、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の検出値に対応する値に、前記一次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧検出値および前記一次側ブリッジ回路の定格直流電圧に基づいて、前記一次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧検出値、前記一次側ブリッジ回路の定格直流電圧、および前記定格直流電圧に対する直流過電流レベルに基づいて、前記一次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記二次側ブリッジ回路に流れる二次側直流電流の過電流検出レベルを変更する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側直流電流の過電流検出レベルとの対応関係に基づいて、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の検出値に対応する値に、前記二次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧検出値および前記二次側ブリッジ回路の定格直流電圧に基づいて、前記二次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記制御装置は、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧検出値、前記二次側ブリッジ回路の定格直流電圧、および前記定格直流電圧に対する直流過電流レベルに基づいて、前記二次側直流電流の過電流検出レベルを設定する、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
トランスと、前記トランスの一次側に設けられる一次側ブリッジ回路と、前記トランスの二次側に設けられる二次側ブリッジ回路とを有するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記一次側ブリッジ回路に流れる一次側直流電流の過電流検出レベルを変更し、または、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記二次側ブリッジ回路に流れる二次側直流電流の過電流検出レベルを変更する、電力変換装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記一次側ブリッジ回路に流れる一次側直流電流の過電流検出レベルを変更し、および、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記二次側ブリッジ回路に流れる二次側直流電流の過電流検出レベルを変更する、請求項14に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記トランス電流の検出値を複数の前記過電流検出レベルと比較することで生成される複数の過電流検出信号の中から、前記直流電圧に対応する過電流検出信号を選択する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記一次側直流電流の検出値を前記一次側直流電流の複数の前記過電流検出レベルと比較されることで生成される複数の過電流検出信号の中から、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧に対応する過電流検出信号を選択する、または、前記二次側直流電流の検出値を前記二次側直流電流の複数の前記過電流検出レベルと比較されることで生成される複数の過電流検出信号の中から、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧に対応する過電流検出信号を選択する、請求項14又は15に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの単相ブリッジ回路が高周波絶縁トランスを介して接続されたDAB(Dual Active Bridge)と呼ばれる双方向絶縁型DC/DCコンバータが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このコンバータは、ブリッジ間の位相差を調整する電力制御を採用した場合には、スイッチング損失を低減可能なZVS(Zero-Voltage Switching)を適用できるため、大電力用途に適している。
【0003】
一方、DC/DCコンバータの出力電流が耐電流閾値を超えたか否かを判定することで過電流を検出し、過電流が検出されると、DC/DCコンバータを一時的に停止する過電流保護を行う電力変換システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.W.A.A. De Doncker, D.M. Divan, and M.H. Kheraluwala,"A Three-Phase Soft-Switched High-Power-Density dc/dc Converter for High-Power Applications", IEEE Transactions on Industry Applications, Volume 27, Issue 1, Pages 63-73, January/February 1991.
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、DC/DCコンバータが同じ電力を伝送する場合でも、一次側または二次側のブリッジ回路の直流電圧条件によっては、トランスに流れるトランス電流のピークまたはブリッジ回路に流れる直流電流は変動する。そのため、上記の耐電流閾値のような一定の過電流検出レベルを用いて過電流保護を行うと、過電流保護が誤動作する場合がある。
【0007】
本開示は、過電流保護の誤動作を防止可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第一態様では、
トランスと、前記トランスの一次側に設けられる一次側ブリッジ回路と、前記トランスの二次側に設けられる二次側ブリッジ回路とを有するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記一次側ブリッジ回路または前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記トランスに流れるトランス電流の過電流検出レベルを変更する、電力変換装置が提供される。
【0009】
本開示の第二態様では、
トランスと、前記トランスの一次側に設けられる一次側ブリッジ回路と、前記トランスの二次側に設けられる二次側ブリッジ回路とを有するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記一次側ブリッジ回路に流れる一次側直流電流の過電流検出レベルを変更し、または、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の変化に応じて、前記二次側ブリッジ回路に流れる二次側直流電流の過電流検出レベルを変更する、電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の第一態様または第二態様によれば、過電流保護の誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。
【
図2】制御装置の要部の一構成例を示すブロック線図である。
【
図3】過電流保護部の要部の第1構成例を示すブロック線図である。
【
図4】過電流レベル設定部の要部の第1構成例を示すブロック線図である。
【
図5】過電流レベル設定部の要部の第2構成例を示すブロック線図である。
【
図6】過電流保護部の要部の第2構成例を示すブロック線図である。
【
図7】過電流保護部の選択指令部の一構成例を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。
図1に示す電力変換装置100は、トランス30の両側にブリッジ回路を備える双方向絶縁型DC/DCコンバータである。電力変換装置100は、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で双方向に電力を供給できる。
【0014】
電力変換装置100は、DC/DCコンバータ180と制御装置150を備える。DC/DCコンバータ180は、トランス30と、一次側ブリッジ回路130と、二次側ブリッジ回路140と、を備える。一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次側に設けられる。二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次側に設けられる。
【0015】
トランス30は、一次巻線31と二次巻線32とを有し、一次巻線31と二次巻線32とが磁気的に結合する変圧器である。一次巻線31および二次巻線32の巻線比は、適宜、設定される。本明細書においては、説明の便宜上、一次巻線31および二次巻線32の巻線比は1:1である場合について例示する。
【0016】
一次側ブリッジ回路130は、一次側直流端子(正側端子および負側端子)に接続され、一次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。また、一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次側に接続され、トランス30の一次巻線31との間で電力を授受する。
【0017】
一次側ブリッジ回路130は、一次側の直流母線対P1,N1を有し、一次側直流端子の正側端子が正側の直流母線P1に、一次側直流端子の負側端子が負側の直流母線N1に接続される。一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に一次側の直流母線対P1,N1によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0018】
一次側ブリッジ回路130は、複数のレグ11,12を有するフルブリッジ回路である。
【0019】
一次側ブリッジ回路130は、例えば、ハイサイドのアームQ1とローサイドのアームQ2とが直列に接続されたレグ11と、ハイサイドのアームQ3とローサイドのアームQ4とが直列に接続されたレグ12とを有する。アームQ1は、第1アームの一例であり、アームQ2は、第2アームの一例であり、アームQ3は、第3アームの一例であり、アームQ4は、第4アームの一例である。レグ11は、第1レグの一例であり、レグ12は、第2レグの一例である。
【0020】
一次側ブリッジ回路130は、アームQ1とアームQ2との中間接続点a1と、アームQ3とアームQ4との中間接続点b1とを接続するブリッジ部分21に、トランス30の一次巻線31が設けられたフルブリッジ回路である。一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に直列に接続されるリアクトルをブリッジ部分21に有してもよい。中間接続点a1は、第1接続点の一例である。中間接続点b1は、第2接続点の一例である。ブリッジ部分21は、第1ブリッジ部分の一例である。
【0021】
一次側ブリッジ回路130は、コンデンサC1と、アームQ1~Q4と、を有する。
【0022】
コンデンサC1は、一次側の直流母線対P1,N1の間に接続され、直流母線対P1,N1間の電圧(コンデンサC1の電圧)を平滑化する。
【0023】
アームQ1~Q4は、一次側のスイッチング素子である。その具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0024】
レグ11は、アームQ1とアームQ2とが直流母線対P1,N1の間に直列に接続された構成を含み、レグ12は、アームQ3とアームQ4とが直流母線対P1,N1の間に直列に接続された構成を含む。アームQ1~Q4は、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子とを有する。例えば、第1主端子は、ドレイン又はコレクタに対応し、第2主端子は、ソース又はエミッタに対応し、制御端子は、ゲートに対応する。アームQ1~Q4は、主端子間に逆接続されたダイオードを含んでよい。アームQ1~Q4がMOSFETの場合、このダイオードは寄生ダイオードであってもよい。
図1は、還流ダイオードD1,D2,D3,D4を例示する。
【0025】
このような構成により、一次側ブリッジ回路130は、アームQ1及びアームQ4がオン、アームQ2及びアームQ3がオフとなると、中間接続点a1を直流母線P1に電気的に接続し、中間接続点b1を直流母線N1に電気的に接続して、中間接続点a1と中間接続点b1の間の電圧V1を正電圧"E1"とする。E1は、直流母線対P1,N1の間の電圧値である。また、一次側ブリッジ回路130は、アームQ1及びアームQ4がオフ、アームQ2及びアームQ3がオンとなると、中間接続点a1を直流母線N1に電気的に接続し、中間接続点b1を直流母線P1に電気的に接続して、電圧V1を負電圧"-E1"とする。このようにして、一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に一次側の直流母線対P1,N1によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0026】
さらに、一次側ブリッジ回路130は、アームQ1及びアームQ3がオン、アームQ2及びアームQ4がオフとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を直流母線P1に電気的に接続して、電圧V1を実質的にゼロとする。又は、一次側ブリッジ回路130は、アームQ1及びアームQ3がオフ、アームQ2及びアームQ4がオンとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を直流母線N1に電気的に接続して、電圧V1を実質的にゼロとする。
【0027】
二次側ブリッジ回路140は、二次側直流端子(正側端子および負側端子)に接続され、二次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。また、二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次側に接続され、トランス30の二次巻線32との間で電力を授受する。
【0028】
二次側ブリッジ回路140は、二次側の直流母線対P2,N2を有し、二次側直流端子の正側端子が正側の直流母線P2に、二次側直流端子の負側端子が負側の直流母線N2に接続される。二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に二次側の直流母線対P2,N2によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0029】
二次側ブリッジ回路140は、複数のレグ13,14を有するフルブリッジ回路である。
【0030】
二次側ブリッジ回路140は、例えば、ハイサイドのアームQ5とローサイドのアームQ6とが直列に接続されたレグ13と、ハイサイドのアームQ7とローサイドのアームQ8とが直列に接続されたレグ14とを有する。アームQ5は、第5アームの一例であり、アームQ6は、第6アームの一例であり、アームQ7は、第7アームの一例であり、アームQ8は、第8アームの一例である。レグ13は、第3レグの一例であり、レグ14は、第4レグの一例である。
【0031】
二次側ブリッジ回路140は、アームQ5とアームQ6との中間接続点a2と、アームQ7とアームQ8との中間接続点b2とを接続するブリッジ部分23に、トランス30の二次巻線32が設けられたフルブリッジ回路である。二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に直列に接続されるリアクトルをブリッジ部分23に有してもよい。中間接続点a2は、第3接続点の一例である。中間接続点b2は、第4接続点の一例である。ブリッジ部分23は、第2ブリッジ部分の一例である。
【0032】
二次側ブリッジ回路140は、コンデンサC2と、アームQ5~Q8と、を有する。
【0033】
コンデンサC2は、二次側の直流母線対P2,N2の間に接続され、直流母線対P2,N2間の電圧(コンデンサC2の電圧)を平滑化する。
【0034】
アームQ5~Q8は、二次側のスイッチング素子である。その具体例として、アームQ1~Q4と同様、MOSFET、IGBTなどの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0035】
レグ13は、アームQ5とアームQ6とが直流母線対P2,N2の間に直列に接続された構成を含み、レグ14は、アームQ7とアームQ8とが直流母線対P2,N2の間に直列に接続された構成を含む。アームQ5~Q8は、アームQ1~Q4と同様、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子と、ダイオードと、を有する。
図1は、還流ダイオードD5,D6,D7,D8を例示する。
【0036】
このような構成により、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5及びアームQ8がオン、アームQ6及びアームQ7がオフとなると、中間接続点a2を直流母線P2に電気的に接続し、中間接続点b2を直流母線N2に電気的に接続して、中間接続点a2と中間接続点b2の間の電圧V2を正電圧"E2"とする。E2は、直流母線対P2,N2の間の電圧値である。また、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5及びアームQ8がオフ、アームQ6及びアームQ7がオンとなると、中間接続点a2を直流母線N2に電気的に接続し、中間接続点b2を直流母線P2に電気的に接続して、電圧V2を負電圧"-E2"とする。このようにして、二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に二次側の直流母線対P2,N2によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0037】
さらに、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5及びアームQ7がオン、アームQ6及びアームQ8がオフとなると、中間接続点a2及び中間接続点b2の両方を直流母線P2に電気的に接続して、電圧V2を実質的にゼロとする。又は、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5及びアームQ7がオフ、アームQ6及びアームQ8がオンとなると、中間接続点a2及び中間接続点b2の両方を直流母線N2に電気的に接続して、電圧V2を実質的にゼロとする。
【0038】
制御装置150は、DC/DCコンバータ180を制御するコントローラである。制御装置150は、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で電力が伝送されるように、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間のスイッチングの位相差(以下、位相差δとも称する)を制御する。制御装置150は、電圧V1と電圧V2との位相差δを制御することによって、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で伝送される電力を調整する。制御装置150は、一次側ブリッジ回路130のアームQ1~Q4の制御端子のオン又はオフを制御するためのゲート信号g1~g4と、二次側ブリッジ回路140のアームQ5~Q8の制御端子のオン又はオフを制御するためのゲート信号g5~g8とを出力する。
【0039】
電力変換装置100は、一次側GDU160及び二次側GDU170を備える。一次側GDU160は、ゲート信号g1~g4に従って、一次側ブリッジ回路130のアームQ1~Q4のオン又はオフのスイッチングを制御する一次側駆動回路である。二次側GDU170は、ゲート信号g5~g8に従って、二次側ブリッジ回路140のアームQ5~Q8のオン又はオフのスイッチングを制御する二次側駆動回路である。
【0040】
制御装置150は、一次側ブリッジ回路130及び二次側ブリッジ回路140のそれぞれの直流電圧検出値、及び、一方のブリッジ回路(例えば、二次側ブリッジ回路140)の直流電流検出値を取得する。制御装置150は、これらの検出値と電流又は電力の指令値とに基づいて、ブリッジ間の伝送電力を制御するためのゲート信号g1~g8を生成してアームQ1~Q8を制御する。例えば、制御装置150は、電圧検出値E1、電圧検出値E2及び電流検出値I2を取得し、これらの検出値と電流指令値I2*とに基づいて、ブリッジ間の伝送電力を制御するためのゲート信号g1~g8を生成してアームQ1~Q8を制御する。
【0041】
制御装置150は、さらに、もう一方のブリッジ回路(例えば、一次側ブリッジ回路130)の直流電流検出値、及び、トランス30に流れるトランス電流検出値を取得する。制御装置150は、これらの検出値をさらに用いて、ブリッジ間の伝送電力を制御するためのゲート信号g1~g8を生成してアームQ1~Q8を制御してもよい。
【0042】
電圧検出値E1は、一次側ブリッジ回路130の直流電圧の検出値であり、より具体的には、直流母線対P1,N1の間の電圧E1の検出値である。電圧検出値E2は、二次側ブリッジ回路140の直流電圧の検出値であり、より具体的には、直流母線対P2,N2の間の電圧E2の検出値である。電流検出値I1は、一次側ブリッジ回路130に流れる一次側直流電流I1の検出値であり、より具体的には、直流母線P1に流れる一次側直流電流I1の検出値である。電流検出値I2は、二次側ブリッジ回路140に流れる二次側直流電流I2の検出値であり、より具体的には、直流母線P2に流れる二次側直流電流I2の検出値である。電流指令値I2*は、二次側ブリッジ回路140に流れる二次側直流電流I2の指令値であり、より具体的には、直流母線P2に流れる二次側直流電流I2の指令値である。指令値は、目標値とも称される。
【0043】
一次側トランス電流検出値Iac1は、トランス30に流れるトランス電流の検出値であり、より具体的には、一次巻線31に流れる電流(一次側トランス電流Iac1)の検出値である。二次側トランス電流検出値Iac2は、トランス30に流れるトランス電流の検出値であり、より具体的には、二次巻線32に流れる電流(二次側トランス電流Iac2)の検出値である。一次側トランス電流検出値Iac1及び二次側トランス電流検出値Iac2は、トランス電流検出値の一例である。
【0044】
制御装置150の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御装置150の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0045】
電力変換装置100は、第1遮断器MCCB1及び第2遮断器MCCB2を備える。制御装置150は、過電流が後述の構成により検出された場合、第1遮断器MCCB1及び第2遮断器MCCB2を開放するための制御指令OCを出力する。制御装置150は、一次側直流電流I1の流れを第1遮断器MCCB1の開放により遮断することで、DC/DCコンバータ180を過電流(過大な一次側直流電流I1)から保護する。制御装置150は、二次側直流電流I2の流れを第2遮断器MCCB2の開放により遮断することで、DC/DCコンバータ180を過電流(過大な二次側直流電流I2)から保護する。
【0046】
図2は、制御装置の要部を示すブロック線図である。
図2に示す例では、制御装置150は、二次側ブリッジ回路140に流れる二次側直流電流I2が電流指令値I2*に追従するように、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間のスイッチングの位相差δを決定する。制御装置150は、電流制御部51、過電流保護部52およびゲート信号生成部53を有する。
【0047】
電流制御部51は、電流検出値I2及び電流指令値I2*に基づいて、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間のスイッチングの位相差δを演算する。電流制御部51は、例えば、減算器54及びPI調節器55を含む。減算器54は、電流指令値I2*と電流検出値I2との差(電流差ΔI)を算出する。PI調節器55は、減算器54により算出された電流差ΔIが零に収束するような位相差δをPI制御又はPID制御により演算する(P:比例制御、I:積分制御、D:微分制御)。
【0048】
過電流保護部52は、一次側トランス電流検出値Iac1と二次側トランス電流検出値Iac2と電流検出値I1と電流検出値I2とのうち、一部または全部の検出値を取得し、過電流の有無を検出する。過電流保護部52は、過電流が検出された場合、制御指令OCをゲート信号生成部53、第1遮断器MCCB1および第2遮断器MCCB2に出力する。
【0049】
ゲート信号生成部53は、電流制御部51より出力される位相差δに基づいて、ゲート信号g1~g8を生成する。位相差δに基づいてゲート信号g1~g8を生成する方法は、周知の方法でよい。
【0050】
ゲート信号生成部53は、過電流保護部52より出力される制御指令OCがTRUE(アサート)の場合、すべてのゲート信号g1~g8をオフにし、DC/DCコンバータ180の運転を停止する。
【0051】
図3は、過電流保護部の要部の第1構成例を示すブロック線図である。
図3に示す過電流保護部52Aは、過電流保護部52(
図2)の一構成例を示す。過電流保護部52Aは、過電流レベル設定部62および過電流判定部61を有する。
【0052】
過電流レベル設定部62は、一次側と二次側の少なくとも一方の直流電圧条件に基づいて、一次側トランス電流Iac1と二次側トランス電流Iac2と一次側直流電流I1と二次側直流電流I2とのうち、一部または全部の電流の過電流検出レベルを設定する。過電流検出レベルを、略して、過電流レベルとも称する。
【0053】
過電流レベル設定部62は、一次側トランス電流Iac1の過電流を検出するための過電流レベルIac1_oclを設定する。過電流レベル設定部62は、二次側トランス電流Iac2の過電流を検出するための過電流レベルIac2_oclを設定する。過電流レベル設定部62は、一次側直流電流I1の過電流を検出するための過電流レベルI1_oclを設定する。過電流レベル設定部62は、二次側直流電流I2の過電流を検出するための過電流レベルI2_oclを設定する。
【0054】
過電流判定部61は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値を、過電流レベル設定部62により設定された過電流レベルIac1_oclと比較器56により比較する。過電流判定部61は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値が過電流レベルIac1_oclよりも高いとき、一次側トランス電流Iac1の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号oc_Iac1をアサートする。過電流判定部61は、例えば、一次側トランス電流Iac1の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号oc_Iac1の論理レベルをハイレベルとする。
【0055】
過電流判定部61は、二次側トランス電流検出値Iac2の絶対値を、過電流レベル設定部62により設定された過電流レベルIac2_oclと比較器57により比較する。過電流判定部61は、二次側トランス電流検出値Iac2の絶対値が過電流レベルIac2_oclよりも高いとき、二次側トランス電流Iac2の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号oc_Iac2をアサートする。過電流判定部61は、例えば、二次側トランス電流Iac2の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号oc_Iac2の論理レベルをハイレベルとする。
【0056】
過電流判定部61は、一次側直流電流検出値I1を、過電流レベル設定部62により設定された過電流レベルI1_oclと比較器58により比較する。過電流判定部61は、一次側直流電流検出値I1が過電流レベルI1_oclよりも高いとき、一次側直流電流I1の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号oc_I1をアサートする。過電流判定部61は、例えば、一次側直流電流I1の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号oc_I1の論理レベルをハイレベルとする。
【0057】
過電流判定部61は、二次側直流電流検出値I2を、過電流レベル設定部62により設定された過電流レベルI2_oclと比較器59により比較する。過電流判定部61は、二次側直流電流検出値I2が過電流レベルI2_oclよりも高いとき、二次側直流電流I2の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号oc_I2をアサートする。過電流判定部61は、例えば、二次側直流電流I2の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号oc_I2の論理レベルをハイレベルとする。
【0058】
過電流判定部61は、一次側トランス電流Iac1と二次側トランス電流Iac2と一次側直流電流検出値I1と二次側直流電流検出値I2のうち少なくとも一つの電流が過電流と判定した場合、制御指令OCをアサートする。例えば、過電流判定部61は、ハイアクティブの制御指令OCの論理レベルを論理和回路60によりハイレベルとする。
【0059】
図4は、過電流レベル設定部の要部の第1構成例を示すブロック線図である。過電流レベル設定部62は、一次側直流電圧の電圧検出値E1と二次側直流電圧の電圧検出値E2と一次側トランス電流の過電流レベルIac1_oclと二次側トランス電流の過電流レベルIac2_oclとの対応関係としてテーブル63を有する。過電流レベル設定部62は、テーブル63に基づいて、電圧検出値E1と電圧検出値E2に対応する値に、過電流レベルIac1_oclと過電流レベルIac2_oclを設定する。例えば、過電流レベル設定部62は、電圧検出値E1がAボルトで電圧検出値E2がBボルトの場合、過電流レベルIac1_oclを電流値Uに設定し、過電流レベルIac2_oclを電流値Vに設定する。
【0060】
なお、過電流レベル設定部62は、一次側直流電圧の電圧検出値E1と一次側トランス電流の過電流レベルIac1_oclとの対応関係に基づいて、電圧検出値E1に対応する値に過電流レベルIac1_oclを設定してもよい。
【0061】
過電流レベル設定部62は、二次側直流電圧の電圧検出値E2と二次側トランス電流の過電流レベルIac2_oclとの対応関係に基づいて、電圧検出値E2に対応する値に過電流レベルIac2_oclを設定してもよい。
【0062】
過電流レベル設定部62は、一次側直流電圧の電圧検出値E1と一次側トランス電流の過電流レベルIac1_oclと二次側トランス電流の過電流レベルIac2_oclとの対応関係に基づいて、電圧検出値E1に対応する値に、過電流レベルIac1_oclと過電流レベルIac2_oclを設定してもよい。
【0063】
過電流レベル設定部62は、二次側直流電圧の電圧検出値E2と一次側トランス電流の過電流レベルIac1_oclと二次側トランス電流の過電流レベルIac2_oclとの対応関係に基づいて、電圧検出値E2に対応する値に、過電流レベルIac1_oclと過電流レベルIac2_oclを設定してもよい。
【0064】
上記の各対応関係は、
図4に例示するようなテーブルにより規定されてもよい。あるいは、上記の各対応関係は、電圧検出値E1と電圧検出値E2の少なくとも一方を代入することで、過電流レベルIac1_oclと過電流レベルIac2_oclの少なくとも一方を算出する演算式により規定されてもよい。
【0065】
図5は、過電流レベル設定部の要部の第2構成例を示すブロック線図である。過電流レベル設定部62は、一次側直流電圧の電圧検出値E1と一次側直流電流の過電流レベルI1_oclとの対応関係を定める演算式64aに基づいて、電圧検出値E1に対応する値に、一次側直流電流の過電流レベルI1_oclを設定する。過電流レベル設定部62は、二次側直流電圧の電圧検出値E2と二次側直流電流の過電流レベルI2_oclとの対応関係を定める演算式64bに基づいて、電圧検出値E2に対応する値に、二次側直流電流の過電流レベルI2_oclを設定する。
【0066】
演算式64a,64bにおいて、
E1r:一次側ブリッジ回路130の定格直流電圧
E2r:二次側ブリッジ回路140の定格直流電圧
I1_ocr:一次側ブリッジ回路130の定格直流電圧に対する直流過電流レベル
I2_ocr:二次側ブリッジ回路140の定格直流電圧に対する直流過電流レベル
を表す。つまり、I1_ocrは、一次側直流電流の過電流レベルI1_oclの最大値を表し、I2_ocrは、二次側直流電流の過電流レベルI2_oclの最大値を表す。
【0067】
なお、一次側直流電圧の電圧検出値E1と一次側直流電流の過電流レベルI1_oclとの対応関係は、演算式64aに代えて、テーブルにより定められてもよい。二次側直流電圧の電圧検出値E2と二次側直流電流の過電流レベルI2_oclとの対応関係は、演算式64bに代えて、テーブルにより定められてもよい。
【0068】
図6は、過電流保護部の要部の第2構成例を示すブロック線図である。
図6に示す過電流保護部52Bは、過電流保護部52(
図2)の一構成例を示す。過電流保護部52Bは、過電流検出部71および選択部72を有する。
【0069】
過電流検出部71は、一次側トランス電流Iac1と二次側トランス電流Iac2と一次側直流電流I1と二次側直流電流I2とのうち、一部または全部の電流に関しての過電流を検出する。
図6は、その代表例として、過電流検出部71が一次側トランス電流Iac1の過電流を検出する場合を示している。
【0070】
過電流検出部71は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値を、複数の異なる過電流検出レベルと比較することで、複数の過電流検出信号を生成する。
図6に示す例では、複数の異なる過電流検出レベルとして、一次側トランス電流Iac1の過電流を検出するためのN個の過電流レベルOCLVL1,OCLVL2,・・・,OCLVLNが示されている。N個の過電流レベルOCLVL1,OCLVL2,・・・,OCLVLNは、予め用意された閾値である。N個の過電流レベルOCLVL1,OCLVL2,・・・,OCLVLNは、その順に、レベル値が高くなる。過電流検出部71は、N個の過電流レベルOCLVL1,OCLVL2,・・・,OCLVLNと同数の比較器CP1,CP2,・・・,CPNを有する。
【0071】
過電流検出部71は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値を過電流レベルOCLVL1と比較する比較器CP1を有する。過電流検出部71は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値が過電流レベルOCLVL1よりも高いとき、過電流レベルOCLVL1よりも高い一次側トランス電流Iac1の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号OC1をアサートする。過電流検出部71は、例えば、過電流レベルOCLVL1よりも高い一次側トランス電流Iac1の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号OC1の論理レベルをハイレベルとする。
【0072】
他の比較器CP2~CPNも、それぞれ、比較器CP1と同様に、過電流検出信号OC2~OCNを生成する。例えば、過電流検出部71は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値を過電流レベルOCLVL2と比較する比較器CP2を有する。過電流検出部71は、一次側トランス電流検出値Iac1の絶対値が過電流レベルOCLVL2よりも高いとき、過電流レベルOCLVL2よりも高い一次側トランス電流Iac1の過電流が検出されたと判定し、過電流検出信号OC2をアサートする。過電流検出部71は、例えば、過電流レベルOCLVL2よりも高い一次側トランス電流Iac1の過電流が検出された場合、ハイアクティブの過電流検出信号OC2の論理レベルをハイレベルとする。
【0073】
選択部72は、複数の過電流検出信号OC1~OCNの中から、一次側直流電圧の電圧検出値E1と二次側直流電圧の電圧検出値E2の少なくとも一方の電圧検出値に対応する一つの過電流検出信号を選択する。選択部72は、その選択された一つの過電流検出信号を制御指令OCと設定することで、制御指令OCをアサートする。制御指令OCがアサートされることで、上述の通り、DC/DCコンバータ180の運転が停止する。
【0074】
過電流保護部52Bは、このように、複数の過電流検出信号OC1~OCNの中から、一次側直流電圧の電圧検出値E1と二次側直流電圧の電圧検出値E2の少なくとも一方の電圧検出値に対応する一つの過電流検出信号を選択する選択部72を有する。これにより、制御指令OCをアサートするための過電流検出レベルは、一次側ブリッジ回路130または二次側ブリッジ回路140の直流電圧の変化に応じて、複数の過電流レベルOCLVL1,OCLVL2,・・・,OCLVLNの中から選択的に変更される。
【0075】
選択部72は、電圧検出値E1と電圧検出値E2の少なくとも一方の電圧検出値と過電流検出信号との対応関係に基づいて、複数の過電流検出信号OC1~OCNの中から、当該少なくとも一方の電圧検出値に対応する一つの過電流検出信号を選択してもよい。
【0076】
選択部72は、例えば、選択指令部73及びスイッチSWを有する。選択指令部73は、電圧検出値E1と電圧検出値E2の少なくとも一方の電圧検出値と過電流検出信号を選択するための選択指令SELとの対応関係に基づいて、当該少なくとも一方の電圧検出値に対応する選択指令SELを出力する。選択指令部73は、選択指令SELに従ってスイッチSWを切り替えることで、複数の過電流検出信号OC1~OCNの中から、当該少なくとも一方の電圧検出値に対応する一つの過電流検出信号を選択する。
【0077】
図7は、過電流保護部の選択指令部の一構成例を示すブロック線図である。選択指令部73は、電圧検出値E1と電圧検出値E2と選択指令SELとの対応関係としてテーブル74を有する。選択指令部73は、テーブル74に基づいて、電圧検出値E1と電圧検出値E2に対応する選択指令SELを出力する。例えば、選択指令部73は、電圧検出値E1がx
0以上x
1未満で電圧検出値E2がx
1以上x
2未満の場合、過電流検出信号OC2を選択するための選択指令SELを出力する。例えば、選択指令部73は、電圧検出値E1がx
0以上x
1未満で電圧検出値E2がx
N-1以上x
N未満の場合、過電流検出信号OCNを選択するための選択指令SELを出力する。x
1,x
2,・・・,x
Nは、その順に、値が大きくなる。
【0078】
なお、選択指令部73は、電圧検出値E1と選択指令SELとの対応関係に基づいて、電圧検出値E1に対応する選択指令SELを選択してもよい。選択指令部73は、電圧検出値E2と選択指令SELとの対応関係に基づいて、電圧検出値E2に対応する選択指令SELを選択してもよい。
【0079】
図6及び
図7は、過電流保護部52Bが、一次側トランス電流検出値Iac1を複数の過電流検出レベルと比較することで生成される複数の過電流検出信号の中から、電圧検出値E1または電圧検出値E2に対応する過電流検出信号を選択する場合を示している。しかし、過電流保護部52Bは、
図6及び
図7に示す構成と同様の構成により、二次側トランス電流Iac2、一次側直流電流I1または二次側直流電流I2の過電流を検出し、電圧検出値E1または電圧検出値E2に対応する過電流検出信号を選択してもよい。
【0080】
例えば
図6に示す一次側トランス電流検出値Iac1は、二次側トランス電流検出値Iac2に置換されてもよい。この場合、過電流保護部52Bは、二次側トランス電流検出値Iac2を二次側トランス電流の複数の異なる過電流検出レベルと比較することで、二次側トランス電流の過電流の検出有無を表す複数の過電流検出信号を生成する。そして、過電流保護部52Bは、生成されたそれらの複数の過電流検出信号の中から、電圧検出値E1または電圧検出値E2に対応する過電流検出信号を選択する。
【0081】
例えば
図6に示す一次側トランス電流検出値Iac1は、一次側直流電流検出値I1に置換されてもよい。この場合、過電流保護部52Bは、一次側直流電流検出値I1を一次側直流電流の複数の異なる過電流検出レベルと比較することで、一次側直流電流の過電流の検出有無を表す複数の過電流検出信号を生成する。そして、過電流保護部52Bは、生成されたそれらの複数の過電流検出信号の中から、電圧検出値E1または電圧検出値E2に対応する過電流検出信号を選択する。
【0082】
例えば
図6に示す一次側トランス電流検出値Iac1は、二次側直流電流検出値I2に置換されてもよい。この場合、過電流保護部52Bは、二次側直流電流検出値I2を二次側直流電流の複数の異なる過電流検出レベルと比較することで、二次側直流電流の過電流の検出有無を表す複数の過電流検出信号を生成する。そして、過電流保護部52Bは、生成されたそれらの複数の過電流検出信号の中から、電圧検出値E1または電圧検出値E2に対応する過電流検出信号を選択する。
【0083】
このように、本実施形態によれば、制御装置150は、一次側ブリッジ回路130または二次側ブリッジ回路140の直流電圧の変化に応じて、トランス30に流れるトランス電流の過電流検出レベルを変更する。これにより、一次側直流電圧E1または二次側直流電圧E2の変動により、トランス30に流れるトランス電流のピークが変動しても、過電流が誤検出されない。そのため、過電流保護の誤動作を防止することができ、直流電圧範囲内で定格電力を伝送することができると共に過電流の未検知による装置破損を防ぐことができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、制御装置150は、一次側ブリッジ回路130の直流電圧の変化に応じて、一次側直流電流の過電流検出レベルを変更し、または、二次側ブリッジ回路140の直流電圧の変化に応じて、二次側直流電流の過電流検出レベルを変更する。これにより、一次側直流電圧E1または二次側直流電圧E2の変動により、ブリッジ回路に流れる直流電流が変動しても、過電流が誤検出されない。そのため、過電流保護の誤動作を防止することができ、直流電圧範囲内で定格電力を伝送することができると共に過電流の未検知による装置破損を防ぐことができる。
【0085】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、一次側ブリッジ回路または二次側ブリッジ回路は、フルブリッジ回路に限られず、ハーフブリッジ回路でもよい。
【符号の説明】
【0087】
11,12,13,14 レグ
30 トランス
31 一次巻線
32 二次巻線
51 電流制御部
52A,52B 過電流保護部
53 ゲート信号生成部
54 減算器
55 PI調節器
100 電力変換装置
130 一次側ブリッジ回路
140 二次側ブリッジ回路
150 制御装置
160 一次側GDU
170 二次側GDU
180 DC/DCコンバータ
C1,C2 コンデンサ
D1~D8 還流ダイオード
Q1~Q8 アーム