(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173598
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】塗料組成物、樹脂膜及び樹脂膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20241205BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20241205BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/80 093
C09D7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190179
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023091597
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 希絵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】山内 理計
(72)【発明者】
【氏名】原 和之
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034AA04
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CC03
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4J038NA26
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの、硬度に優れる塗料組成物、及び前記塗料組成物を用いた樹脂膜の提供。
【解決手段】ブロックポリイソシアネート成分と、ポリオールと、を含む塗料組成物であり、前記塗料組成物において、前記ポリオールの水酸基に対する前記ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が0.01以上2.0以下であり、前記ブロックポリイソシアネート成分は、一般式(I)で表される構成単位を含む、塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックポリイソシアネート成分と、ポリオールと、を含む塗料組成物であり、
前記塗料組成物において、前記ポリオールの水酸基に対する前記ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が0.01以上2.0以下であり、
前記ブロックポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートと1種以上のブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートを含み、前記ブロックポリイソシアネート成分は、下記一般式(I)で表される構成単位を含む、塗料組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R
11、R
12及びR
13の合計炭素数は4以上20以下である。R
14、R
15及びR
16はそれぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
【請求項2】
前記ポリオールの水酸基に対する前記ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が0.04以上0.8以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記ブロックポリイソシアネート成分は、前記一般式(I)中のR16が水素原子である構成単位(I-1)を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数が、4.0以上10.0以下である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記塗料組成物は、少なくとも2種類以上のノニオン系分散剤を含み、前記ノニオン系分散剤は、最も高いHLB値を持つ分散剤と最も低いHLB値を持つ分散剤のHLB値の差が5以上であり、全てのノニオン系分散剤のHLB値を加重平均した値が14以上17以下である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ノニオン系分散剤の総量は、前記ブロックポリイソシアネート成分の総量に対して、1質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の塗料組成物の硬化物である、樹脂膜。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の塗料組成物を塗布する工程と、塗布した塗料組成物を50℃以上100℃以下の温度で5分間以上1440分以下、または105℃以上200℃以下の温度で5秒間以上900秒間以下加熱して樹脂膜を得る工程を有する、樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、樹脂膜及び樹脂膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性を有することが知られている。脂肪族又は脂環族ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。一般にポリウレタン樹脂塗料は二液性である。二液性のポリウレタン樹脂塗料はポリオール及びポリイソシアネートの二成分からなり、別々に貯蔵し、塗装時に混合する必要がある。また、一旦混合すると塗料は短時間でゲル化し使用できなくなるのが現状である。このことは自動車又は弱電気塗装のようなライン塗装を行う分野においては、自動塗装を行うことを極めて困難にしている。また、イソシアネートは水と容易に反応するため、電着塗料のような水系塗料での使用は不可能である。更に作業終了時の塗装機及び塗装槽の洗浄等を充分に行う必要があるので作業能率が低下する。
【0003】
従来から、上述の欠点を改善するために、活性なイソシアネート基をすべてブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しないが、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の欠点を改善することができる。数多くのブロック剤の検討がなされており、例えば、フェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
また、従来から、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン化合物をブロック剤として用いたブロックポリイソシアネートを塗料組成物に配合する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-070151号公報
【特許文献2】国際公開第2013/151143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の塗料組成物の場合には、得られた樹脂膜の硬度の面で改良の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの、硬度に優れる塗料組成物、及び前記塗料組成物を用いた樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
【0007】
[1]ブロックポリイソシアネート成分と、ポリオールと、を含む塗料組成物であり、前記塗料組成物において、前記ポリオールの水酸基に対する前記ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が0.01以上2.0以下であり、前記ブロックポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートと1種以上のブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートを含み、前記ブロックポリイソシアネート成分は、下記一般式(I)で表される構成単位を含む、塗料組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R
11、R
12及びR
13の合計炭素数は4以上20以下である。R
14、R
15及びR
16はそれぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
[2]前記ポリオールの水酸基に対する前記ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が0.04以上0.8以下である、[1]に記載の塗料組成物。
[3]前記ブロックポリイソシアネート成分は、前記一般式(I)中のR
16が水素原子である構成単位(I-1)を含む、[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
[4]前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数が、4.0以上10.0以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[5]前記塗料組成物は、少なくとも2種類以上のノニオン系分散剤を含み、前記ノニオン系分散剤は、最も高いHLB値を持つ分散剤と最も低いHLB値を持つ分散剤のHLB値の差が5以上であり、全てのノニオン系分散剤のHLB値を加重平均した値が14以上17以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[6]前記ノニオン系分散剤の総量は、前記ブロックポリイソシアネート成分の総量に対して、1質量%以上30質量%以下である、[5]に記載の塗料組成物。
[7][1]~[6]のいずれか1つに記載の塗料組成物を硬化させて得られる樹脂膜。
[8][1]~[6]のいずれか1つに記載の塗料組成物を塗布する工程と、塗布した塗料組成物を50℃以上100℃以下の温度で5分間以上1440分以下、または105℃以上200℃以下の温度で5秒間以上900秒間以下加熱して樹脂膜を得る工程を有する、樹脂膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの、硬度に優れる塗料組成物、及び前記塗料組成物を用いた樹脂膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、ブロックポリイソシアネート成分と、ポリオールと、を含む。
【0010】
≪ブロックポリイソシアネート成分≫
本発明に用いられるブロックポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートと1種以上のブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートを含み、ブロックポリイソシアネート成分は、一般式(I)で表される構成単位を含む。以下において、一般式(I)で表される構成単位を「構成単位(I)」と記載する場合がある。
【0011】
[構成単位(I)]
ブロックポリイソシアネート成分に含まれるブロックポリイソシアネートの分子内において、下記一般式(I)で表される構成単位(I)を含む。
【0012】
【0013】
前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、4以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線はポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた残基との結合部位を表す。
【0014】
R11、R12、R13、R14、R15及びR16におけるアルキル基としては、炭素数は1以上20以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。
【0015】
置換基を有しないアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0016】
また、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が、置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
中でも、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び樹脂膜としたときの低温硬化性がより向上することから、R11、R12及びR13が、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましいが、少なくとも一つがエチル基であることが好ましい。
【0017】
R11、R12及びR13の合計炭素数は、4以上20以下であり、より好ましくは4以上12以下であり、より更に好ましくは4以上9以下であり、より更に好ましくは4以上6以下である。
R11、R12及びR13の合計炭素数が上記下限値以上であることにより、水系の塗料組成物としたときの貯蔵安定性を発現することができる。一方で、上記上限値以下であることにより、低温硬化性を発現させることができる。また、塗膜とした時の耐溶剤性を向上させる観点から、R11、R12及びR13の合計炭素数は4であることがより好ましい。
【0018】
R11、R12及びR13の合計炭素数は、合計炭素数が上記範囲であれば、R11、R12及びR13の各炭素数は限定されない。
【0019】
また、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、好ましくは炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基である。
中でも、R14、R15及びR16のうち、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、1つのみが水素原子であることがより好ましい。R14、R15及びR16のうち、少なくとも1つが水素原子であることで、低温硬化性を維持しつつ、水系樹脂組成物としたときの貯蔵安定性をより向上させることができる。つまり、構成単位(I)として、下記一般式(I-1)に示す構成単位(以下、構成単位(I-1)と呼ぶことがある)を含むことがより好ましい。
【0020】
【0021】
前記一般式(I-1)中、R11、R12、R13、R14及びR15は、前記一般式(I)に記載の通りである。波線はポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた残基との結合部位を表す。
【0022】
前記構成単位(I)における構成単位(I-1)のモル比率(構成単位(I-1)/構成単位(I))としては、10モル%以上がより好ましく、さらに好ましくは30モル%以上であり、よりさらに好ましくは50モル%以上であり、よりさらに好ましくは80モル%以上であり、よりさらに好ましくは90モル%以上である。
【0023】
[構成単位(II)]
ブロックポリイソシアネート成分の分子内において、下記一般式(II)で表される構成単位(以下、構成単位(II)と呼ぶことがある)を更に含むことが好ましい。
【0024】
【0025】
前記一般式(II)において、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線はポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた残基との結合部位を表す。
R21、R22、R23及びR24におけるヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基としては、上記「R11、R12、R13、R14、R15及びR16」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0026】
中でも、R21、R22、R23及びR24としては、水系樹脂組成物としたときの貯蔵安定性に優れることから、水素原子、又は、炭素数1以上4以下の置換基を有しないアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、又は、エチル基がより好ましく、低温硬化性に優れることから、メチル基、又は、エチル基がさらに好ましい。
【0027】
R21、R22、R23及びR24が全てメチル基である場合には、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位は、ともに、イソプロピル基となる。また、R21及びR22のいずれか一方が水素原子であり、他方がメチル基であり、且つ、R23及びR24のいずれか一方が水素原子であり、他方がメチル基である場合には、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位は、ともに、エチル基となる。中でも、R21、R22、R23及びR24が全てメチル基である、すなわち、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位がともにイソプロピル基であることが特に好ましい。
【0028】
前記一般式(I)で表される構成単位に対する前記一般式(II)で表される構成単位のモル比(構成単位(II)/構成単位(I))は、4/96以上96/4以下であることが好ましく、5/95以上95/5以下がより好ましく、7/93以上93/7以下がよりさらに好ましく、10/90以上90/10以下がよりさらにより好ましく、20/80以上85/15以下がよりさらに好ましく、30/70以上85/15以下がよりさらに好ましく、35/65以上85/15以下がよりさらに好ましく、50/50以上70/30以下がよりさらに好ましい。前記モル比が上記下限値以上であることで、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性をより良好なものとすることができ、上記上限値以下であることで、樹脂膜としたときの低温硬化性をより良好なものとすることができる。
【0029】
モル比は、例えば、塗料組成物を、1H-NMR及び13C-NMRにより、構成単位(I)に対する構成単位(II)の組成比を測定することで、構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比を算出することができる。
【0030】
一般式(I)において、R11、R12及びR13が全てメチルであることが好ましい。ジエステル部位の少なくとも1つのエステル基がtert-ブチル基であるブロックポリイソシアネート成分は85℃程度の低温での多価ヒドロキシ化合物との硬化性に優れることが知られているが、水系の塗料組成物においては、水との反応性が高く、水系の塗料組成物に配合し、多価ヒドロキシ化合物、硬化剤、及び水を含有する水系の塗料組成物として貯蔵した際に、粘度上昇やゲル化が起きやすい傾向がある。
【0031】
構成単位(I)におけるR11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であることにより、水系の塗料組成物に配合した場合であっても、多価ヒドロキシ化合物、硬化剤、及び水の混合液の貯蔵時の粘度上昇やゲル化を効果的に抑制し、良好な貯蔵安定性を発揮することができる。それと同時に、85℃程度の低温での硬化性に優れる樹脂膜が得られる。
【0032】
本発明に用いられるブロックポリイソシアネート成分に含まれるブロックポリイソシアネートの分子内において、少なくとも一部のイソシアネート基が2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は1級アルキル基を有するマロン酸エステル、及び、3級アルキル基を有するマロン酸エステルでブロック化されたブロックポリイソシアネートであってもよい。或いは、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基が2級アルキル基を有するマロン酸エステルでブロック化されたブロックポリイソシアネート、又は、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基が1級アルキル基を有するマロン酸エステルでブロック化されたブロックポリイソシアネート、及び、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基が3級アルキル基を有するマロン酸エステルでブロック化されたブロックポリイソシアネートの混合物であってもよい。
【0033】
[その他官能基]
ブロックポリイソシアネート成分は、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することができる。中でも、耐候性が優れることから、イソシアヌレート基を有することが好ましい。
【0034】
[ポリイソシアネート]
(イソシアネート)
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。
【0035】
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート。
【0037】
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート。
(4)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0038】
ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、耐候性が優れることから、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートが好ましい。また、上述した脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート以外のジイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、ブロックポリイソシアネート成分を低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
【0039】
ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を有することが好ましく、イソシアヌレート基に加えて、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することができる。
【0040】
(ポリオール)
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるポリイソシアネートは、上述したジイソシアネートと平均官能基数が3.0以上8.0以下であるポリオールとから誘導されたものであることが好ましい。これにより、ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数をより大きくすることができる。当該ポリイソシアネートでは、ポリオールの水酸基と、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基との反応により、ウレタン基が形成されている。
【0041】
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるポリオールの平均官能基数は3.0以上8.0以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3以上5以下がさらに好ましく、3又は4が特に好ましい。なお、ここでいうポリオールの平均官能基数はポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
【0042】
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるポリオールの数平均分子量としては、塗膜硬度、強度向上の観点において、100以上1000以下が好ましく、100以上900以下が好ましく、100以上600以下がより好ましく、100以上570以下がより好ましく、100以上500以下がさらに好ましく、100以上400以下がよりさらに好ましく、100以上350以下が特に好ましく、100以上250以下が最も好ましい。
ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、ブロックポリイソシアネート組成物は、塗膜としたときの低温硬化性により優れ、且つ、特に硬度や強度により優れる。ポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0043】
このようなポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、3価以上の多価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル社の「プラクセル303」(数平均分子量300)、「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)等が挙げられる。
【0044】
(ポリイソシアネートの製造)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0045】
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
【0046】
(ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、樹脂膜としたときの低温硬化性を高める点で、2以上が好ましく、樹脂膜としたときの低温硬化性、及び、多価ヒドロキシ化合物との相溶性の両立の観点から、3以上20以下がより好ましく、3.2以上10以下がさらに好ましく、3.5以上8以下が特に好ましく、4.0以上6以下が最も好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、例えば、ポリイソシアネートの数平均分子量Mn及びイソシアネート基含有率(NCO含有率)から下記式を用いて求めることができる。
平均イソシアネート基数=(ポリイソシアネートのMn×NCO含有率×0.01)/42
【0047】
[ブロック剤]
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は1級アルキル基を有するマロン酸エステル、及び、3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含むことが好ましく、2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含むことがより好ましい。ブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステル、1級アルキル基を有するマロン酸エステル、及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルをそれぞれ1種類含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
1級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジフェニル等が挙げられる。中でも、1級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、マロン酸ジエチルが好ましい。
【0048】
2級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。中でも、2級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、マロン酸ジイソプロピルが好ましい。
【0049】
3級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ(2-メチル-2-ブチル)、マロン酸ジ(2-メチル-2-ペンチル)、マロン酸(tert-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチルー2-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)へキシルイソプロピル等が挙げられる。中でも、マロン酸ジ(2-メチル-2-ブチル)、マロン酸ジ(2-メチル-2-ペンチル)、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)イソプロピルが好ましく、マロン酸(2-メチルー2-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)へキシルイソプロピルが好ましく、あるいは、3マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸(2-メチルー2-ブチル)イソプロピル、又はマロン酸(2-メチルー2-ペンチル)イソプロピルが好ましい。
3級アルキル基を有するマロン酸エステルは、市販のものを使用してもよく、或いは、参考文献1(特開平11-130728号)の方法を用いて、合成したものを使用してもよい。
【0050】
(その他ブロック剤)
ブロックポリイソシアネート成分の製造に用いられるブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステル以外に、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性及び樹脂膜としたときの低温硬化性を阻害しない範囲内で、さらに、他のブロック剤を含んでもよい。
【0051】
他のブロック剤としては、例えば、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステル以外の活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
【0052】
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、アセチルアセトン等。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
【0053】
[親水性化合物]
ブロックポリイソシアネート成分に含まれるブロックポリイソシアネートは、イソシアネート基の一部が親水性化合物で変性されていてもよい。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、イソシアネート基の一部に親水性化合物に由来する構成単位が導入されていてもよい。
【0054】
親水性化合物は、親水性基を有する化合物である。親水性化合物は、親水性基に加えて、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも1つと反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0055】
親水性化合物としては、ノニオン性化合物、カチオン性化合物、アニオン性化合物が挙げられる。これら親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、親水性化合物としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性化合物が好ましく、得られる樹脂膜の硬度の低下を抑制する観点で、アニオン性化合物が好ましい。
【0056】
(ノニオン性化合物)
ブロックポリイソシアネート成分に含まれるノニオン性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ブロックポリイソシアネート成分に含まれるノニオン性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0057】
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上25以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
【0058】
ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性化合物に由来する構成単位の量(以下、「ノニオン性化合物の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、0.1質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましく、0.2質量%がさらに好ましく、0.25質量%が特に好ましい。
【0059】
また、ノニオン性化合物の含有量の上限値は、得られる樹脂膜の耐水性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、55質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、48質量%がさらに好ましく、44質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性化合物の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、0.1質量%以上55質量%以下が好ましく、0.15質量%以上50質量%以下がより好ましく、0.20質量%以上48質量%以下がさらに好ましく、0.25質量%以上44質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、ブロックポリイソシアネート組成物がより水に分散し、均質な膜が得られる傾向にある。
【0060】
得られる樹脂膜の硬度や強度の低下を抑制する観点で、ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性化合物の量をモル比で表すと、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対して、0.05モル%以上15モル%以下が好ましく、0.10モル%以上12モル%以下がより好ましく、0.10モル%以上9モル%以下がさらにより好ましく、0.10モル%以上6モル%以下がさらに好ましく、0.15モル%以上4モル%以下が最も好ましい。
【0061】
(カチオン性化合物)
ブロックポリイソシアネート成分に含まれるカチオン性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
【0062】
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
【0063】
カチオン性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
ブロックポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0065】
(アニオン性化合物)
ブロックポリイソシアネート成分に含まれるアニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0066】
ブロックポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(その他の構成成分)
ブロックポリイソシアネート成分は、上記ブロックポリイソシアネートに加えて、溶剤等の添加剤を更に含むことができる。
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、DPDMが好ましい。
【0068】
≪ブロックポリイソシアネート成分の製造方法≫
ブロックポリイソシアネート成分の製造方法としては、特に限定されないが、以下に示す2つの方法が挙げられる。
1)上記ポリイソシアネートと、上記3級アルキル基を有するマロン酸エステル、及び、上記2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は上記1級アルキル基を有するマロン酸エステルと、を反応させる方法。
2)上記ポリイソシアネートと、上記3級アルキル基を有するマロン酸エステル、上記2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び上記1級アルキル基を有するマロン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のブロック剤と、を反応させて、得られた反応物に鎖状アルキル基を有するアルコールを添加して、前記反応物の末端エステル部位のエステル交換により、前記アルコールに由来するアルキル基を導入する方法。
【0069】
上記2つの方法のうち、工程の容易さ及び構成単位(II)/構成単位(I)のモル比の制御のしやすさを考慮して、2)の方法が好ましい。
【0070】
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
なお、ブロック剤は、1級アルキル基を有するマロン酸エステル、2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルをそれぞれ1種類用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましい。
【0071】
溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する不揮発分の含有量は、前記第2の実施形態に記載の通りである。
【0072】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0073】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上80℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
【0074】
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0075】
前記2)の方法で製造する場合には、上記ブロック化反応に続き、エステル交換反応を実施する。
2)の方法のエステル交換反応に用いられる鎖状アルキル基を有するアルコールとしては、前記第1の実施形態と同じものを用いることができる。
また、アルコールが有する鎖状アルキル基は、前記ブロック剤と同じ鎖状アルキル基を有するものであってもよく、異なる鎖状アルキル基を有するものであってもよい。前記ブロック剤と異なる鎖状アルキル基を有するものである場合には、前記ブロック剤とアルキル置換の数が異なる鎖状アルキル基を有するモノアルコールを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ブロック剤として、2級アルキル基を有するマロン酸エステルを1種単独で用いた場合には、3級アルキル基を有するモノアルコールを用いることができる。
【0076】
2)の方法で製造する場合には、エステル交換反応中、或いは、エステル交換反応後に、生成したアルコール、或いは添加したアルコールの残留分を常圧、或いは、減圧下における蒸留等により、除去することが好ましい。
その中でも、エステル交換反応を効率よく進行させるため、エステル交換反応時に、蒸留等の作業を実施することにより、発生したアルコールを除去することが好ましい。この場合、交換反応により発生したアルコール成分を効率よく除去するために、添加するアルコール成分は、発生したアルコール成分の沸点よりも高いことがより好ましい。
【0077】
エステル交換反応は、一般に0℃以上150℃以下で行うことができ、30℃以上120℃以下で行うことが好ましく、50℃以上100℃以下で行うことがより好ましい。エステル交換反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
【0078】
構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比の制御は、ブロックされたイソシアネート基に対して添加するアルコールのモル比、或いは、エステル交換反応温度及びエステル交換反応時間の調整や、発生したアルコールの留去等を行うことにより、制御可能である。
【0079】
また、親水性化合物を用いる場合には、上記ポリイソシアネートと上記活性水素化合物と上記ブロック剤と上記親水性化合物とを反応させてもよい。
【0080】
ポリイソシアネートと活性水素化合物との反応、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、予めいずれの反応を行った後に、2つ目以降の反応を行うこともできる。中でも、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性された親水性化合物変性ポリイソシアネートを得た後、得られた親水性化合物変性ポリイソシアネートと活性水素化合物又はブロック剤との反応を同時又はそれぞれ順番に行うことが好ましい。親水性化合物変性ポリイソシアネートと活性水素化合物との反応、及び、親水性化合物変性ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、いずれを先に行ってもよい。
【0081】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0082】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性、及び、樹脂膜としたときの低温硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
【0083】
親水性化合物変性ポリイソシアネートと活性水素化合物との反応、及び、親水性化合物変性ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、上述の活性水素化合物変性反応、及び、上述のブロック化反応として記載された方法を用いることができる。
【0084】
≪ポリオール≫
塗料組成物が含むポリオールとは、一分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基(水酸基)を有する化合物を意味する。ポリオールとして具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられ、アクリルポリオール類であることが好ましい。
【0085】
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
【0086】
[ポリエーテルポリオール類]
ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0087】
上記(1)における多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
上記(2)におけるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
上記(2)における多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
【0088】
[ポリエステルポリオール類]
ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1A)又は(2A)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1A)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2A)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0089】
上記(1A)における多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0090】
[エポキシ樹脂類]
エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
【0091】
[含フッ素ポリオール類]
含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0092】
[アクリルポリオール類]
アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
【0093】
一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
【0094】
重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
【0095】
また、参考文献3(特開平1-261409号公報)及び参考文献4(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール類等が挙げられる。
【0096】
重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0097】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
【0098】
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0099】
[NCO/OH]
本実施形態の塗料組成物に含まれるポリオールの水酸基に対するブロックポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、0.01以上2.0以下であり、0.02以上1.0以下が好ましく、0.04以上0.8以下がさらに好ましい。上記範囲内であることにより、塗料組成物の貯蔵安定性と硬化性に優れる樹脂膜が得られる。
ブロックポリイソシアネート成分のイソシアネート基は、ブロック剤と反応したイソシアネート基と、反応していないイソシアネート基との両方を意味する。
【0100】
[水酸基価]
ポリオールの水酸基価は、30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が好ましく、40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましく、45mgKOH/g以上180mgKOH/g以下がさらに好ましい。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0101】
本実施形態の塗料組成物中におけるブロックポリイソシアネートの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下が好ましく、6質量部以上180質量部以下がより好ましく、10質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。ブロックポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。ブロックポリイソシアネートの含有量は、例えば、配合量から算出することもでき、或いは、核磁気共鳴(NMR)法及びガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS法)を用いて、同定及び定量して算出することもできる。
【0102】
≪脱イオン水≫
本実施形態の塗料組成物は、脱イオン水を含む水系塗料組成物であってもよい。脱イオン水の含有割合は、水系塗料組成物の総量に対し、20質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上80量%以下がより好ましい。
【0103】
≪塩基性組成物≫
本実施形態の塗料組成物に含まれるポリオールが、カルボキシル基含有ポリオールの場合、カルボキシル基は、塩基性組成物で中和されていることが好ましい。
塩基性組成物としては、特に限定されないが、酸解離定数(pKa)が7.0以上であれば、特に制限されることはない。pKaが7.0以上あれば、ポリオール等のカルボキシル基の中和剤として使用することができる。酸解離定数(pKa)は、電位差滴定法により20℃で測定した。
【0104】
本発明における塩基性組成物の添加量は、その塩基性基が、ポリオールのカルボキシル基の量を100モル%としたときに、30モル%以上である。下限値としては、好ましくは、50モル%であり、より好ましくは、70モル%、さらに好ましくは、100モル%以上である。また、上限値としては、好ましくは、500モル%であり、より好ましくは、400モル%、さらに好ましくは、300モル%である。本発明においては、塩基性組成物(C)がポリオールのカルボキシル基の中和塩を形成する量よりも過剰に存在することに意味があると考えている。この場合のポリオールのカルボキシル基は、ポリオール製造時の仕込みの酸成分を基準としている。
【0105】
塩基性組成物は、酸解離定数(pKa)7.0~8.5の弱塩基性化合物とpKaが8.5を超える塩基性化合物からなり全塩基性組成物に対する弱塩基性化合物構成比が20モル%以上であることが好ましい。
【0106】
弱塩基性化合物の全塩基性組成物中の構成比の下限値は、30モル%が好ましく、より好ましくは、40モル%、さらに好ましくは50モル%である。本発明においては、弱塩基性化合物が全塩基性組成物中20モル%以上添加されることで、調整した塗料組成物のpHが高くなりすぎないため、好適である。
【0107】
弱塩基性化合物のpKaの上限値としては、8.3以下が好ましく、より好ましくは、8.0以下である。
pKaが7.0~8.5である弱塩基性化合物(C1)の具体例としては、モルホリン(pKa:8.4)、N-アリルモルホリン(pKa:7.1)、N-メチルモルホリン(pKa:7.4)、N-エチルモルホリン(pKa:7.7)等のモルホリン誘導体、トリアリルアミン(pKa:8.3)、トリエタノールアミン(pKa:7.8)等の3級アミン、2-メチルイミダゾール(pKa:7.8)、フタルアミド(pKa:8.3)等が挙げられる。
その中でも、N-アリルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエタノールアミン、2-メチルイミダゾールがより好ましく、さらに好ましくは、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンである。
【0108】
pKaが8.5を超える塩基性化合物の具体例としては、トリメチルアミン(pKa:9.8)、トリエチルアミン(pKa:11.0)、ジメチルエタノールアミン(pKa:9.4)等が挙げられる。
【0109】
本発明の塗料組成物の配合時のpHは、7.0~9.0が好ましい。その下限としては、より好ましくは、7.5であり、さらに好ましくは、7.8であり、その上限としては、より好ましくは、8.6であり、さらに好ましくは、8.4であり、最も好ましくは、8.2である。
塗料組成物のpHが7.0~9.0であれば、配合されているアルミ等の顔料、レオロジーコントロール剤等の添加剤の安定性が保てる。
【0110】
塩基性組成物の配合方法は、あらかじめポリオール、あるいはブロックポリイソシアネート成分に添加しておいてもよいし、ポリオールとブロックポリイソシアネート成物を混合・分散させた後に、添加してもよい。また、塩基性組成物は、あらかじめ、水、溶剤等に溶解させたものを添加しても構わない。
【0111】
≪ノニオン系分散剤≫
本実施形態の塗料組成物は、少なくとも2種類以上のノニオン系分散剤を含むことが好ましい。ここで「2種以上」とは、異なるHLB値を持つ複数のノニオン系分散剤を意味する。異なるHLB値を持つ複数のノニオン系分散剤を含有することで、ブロックポリイソシアネートの水中での乳化性を向上させることができ、水分散安定性を向上することができる。この効果は、少なくとも2種類以上のノニオン系分散剤を混合し、最大HLB値をもつノニオン系分散剤と、最小HLB値をもつノニオン系分散剤の差が5以上であり、かつ塗料組成物に含まれる全てのノニオン系分散剤の加重平均したHLB値が14以上17以下の場合に効果を強く発揮する。
【0112】
最大HLB値をもつノニオン系分散剤と最小HLB値を差は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは9以上である。また、上限としては20以下が好ましく、15以下がより好ましい。
【0113】
ノニオン系分散剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、分散剤の油と水への親和性の程度を表す値として一般的に用いられており、以下の計算により算出することが出来る。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
【0114】
使用するノニオン系分散剤としては、上記方法で算出されるHLB値が特定範囲のものであれば、特に限定されない。ノニオン系分散剤として具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型化合物、ポリオキシアルキレン誘導体型化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル型化合物、ソルビタン脂肪酸エステル型化合物、グリセリン脂肪酸エステル型化合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型化合物、ポリオキシエチレンヒマシ油型化合物、ポリオキシエチレンアルキルアミン型化合物等が挙げられる。これらのノニオン性分散剤の中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル型化合物が特に好ましい。
【0115】
ノニオン系分散剤の含有量は、ブロックポリイソシアネートの総量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1.5質量%以上20質量%以下がより好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下さらに好ましい。ノニオン系分散剤の含有量が上記下限値以上であることで、水系塗料組成物としたときの貯蔵安定性をより良好なものとすることができ、一方、上記上限値以下であることで、樹脂膜としたときの硬度をより良好なものとすることができる。
【0116】
上記条件を満たすノニオン系分散剤を系内に含む場合は、アニオン性分散剤をさらに使用してもよい。アニオン性分散剤として具体的には、例えば、脂肪酸塩型化合物、アルキル硫酸エステル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩型化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩型化合物、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩型化合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩型化合物、スルホコハク酸塩型化合物、アルキルリン酸塩型化合物等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらアニオン性分散剤を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0117】
これらのアニオン性分散剤の中では、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩が特に好ましい。
【0118】
≪その他の添加剤≫
本実施形態の塗料組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0119】
硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0120】
硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0121】
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0122】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0123】
≪塗料組成物の製造方法≫
塗料組成物を製造する場合には、まず、ポリオール又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。
【0124】
次いで、ブロックポリイソシアネート成分又はその水分散体を硬化剤として添加し、上述した2種以上のノニオン系分散剤、及び、脱イオン水を更に添加して、粘度を調整する。
次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系塗料組成物を得ることができる。
【0125】
<樹脂膜>
本発明の一態様は、本実施形態の塗料組成物又は水系塗料組成物の硬化物である樹脂膜である。
樹脂膜は、本実施形態の塗料組成物又は水系塗料組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱して硬化させることで得られる。
【0126】
<樹脂膜の製造方法>
本発明の一態様は、本実施形態の塗料組成物を塗布する工程と、塗布した塗料組成物を50℃以上100℃以下の温度で5分間以上1440分以下、または105℃以上200℃以下の温度で5秒間以上900秒間以下加熱し樹脂膜を得る工程を有する、樹脂膜の製造方法である。
上記温度条件および硬化時間の範囲内にすることにより、硬度が良好な塗膜が得られる。
【0127】
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等が挙げられ、中でも、自動車車体の外板部又は自動車部品が好ましい。
【0128】
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材、紙、布等の繊維材料等が挙げられ、中でも、金属材料又はプラスチック材料が好ましい。
【0129】
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記プラスチック材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【実施例0130】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0131】
<試験項目>
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0132】
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネートのNCO含有率を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(質量%)を算出した。
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%)=(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0133】
[物性2]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
ポリイソシアネートの数平均分子量を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
重量平均分子量については、ブロックポリイソシアネート組成物又は多価ヒドロキシ化合物をそのまま測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
【0134】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0135】
[物性3]
(平均イソシアネート基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性1」において算出された値を用いた。
平均イソシアネート基数=(Mn×NCO含有率×0.01)/42
【0136】
[物性4]
(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量)
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート組成物約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート組成物を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート組成物を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート組成物を精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート組成物の固形分量(質量%)を算出した。
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量(質量%)=W2/W1×100
【0137】
[物性5]
(構成単位(I)の含有量(モル))
ブロックポリイソシアネート組成物中の構成単位(I)の含有量は、13C-NMRにより算出した。
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
【0138】
[物性6]
(構成単位(I)中の構成単位(I-1)のモル比率)
ブロックポリイソシアネート組成物中の構成単位(I)に対する構成単位(I-1)のモル比率(構成単位(I-1)/構成単位(I))は、以下に示す方法を用いて算出した。
具体的には、日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)を用いた、13C-NMRの測定により、構成単位(I)(構成単位(I-1)を含む)の合計モル量と構成単位(I-1)のモル量を算出し、そのモル比率を求めた。
【0139】
(測定条件)
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
【0140】
[物性7]
(構成単位(II)/構成単位(I)のモル比)
構成単位(I)に対する、構成単位(II)のモル比(構成単位(II)/構成単位(I))は、ブロックポリイソシアネート組成物をエバポレーターにより50℃以下で溶媒及びその他の成分を飛ばし、減圧乾燥した後、13C-NMRにより、構成単位(I)に対する構成単位(II)の組成比を測定することで、構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比を算出した。
【0141】
(測定条件)
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
【0142】
[評価1]
(貯蔵安定性)
得られた塗料組成物について、20mLガラス瓶にて、40℃で10日貯蔵した後のpHを測定し、配合直後のpHとの変化値(絶対値)を次の基準に従い評価した。
A:1.2未満
B:1.2以上1.7未満
C:1.7以上2.2未満
D:2.2以上
【0143】
[評価2]
(塗膜外観)
得られた塗料組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、表2に記載の条件で加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた評価板の塗膜外観を、目視観察により、次の基準に従い評価した。なお、評価結果は評価者20人の観察結果の平均である。
A:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯がかなり鮮明に映る。
B:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯が少し鮮明に映る。
【0144】
[評価3]
(硬化性)
得られた塗料組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、表2に記載の所定温度、所定時間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜のゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。得られたゲル分率から以下の評価基準に従い、低温硬化性を評価した。評価結果がC以上であるものを低温硬化性が良好であると評価した。
【0145】
(評価基準)
A:初期ゲル分率90質量%以上
B:初期ゲル分率80質量%以上90質量%未満
C:初期ゲル分率70質量%以上80質量%未満
D:初期ゲル分率70質量%未満
【0146】
[評価4]
(塗膜硬度:ケーニッヒ)
各水系塗料組成物をガラス板上に、乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、表2に記載の所定温度、所定時間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。Erichsen社の振り子式硬度計を用いて、各実施例及び比較例で得られたサンプル塗板のケーニッヒ硬度(回)を測定した。以下の評価基準に従い、塗膜硬度:ケーニッヒを評価した。
【0147】
A:60以上
B:50以上60未満
C:40以上50未満
D:30以上40未満
E:20以上30未満
F:20未満
【0148】
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートP-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)、平均官能基数:3、数平均分子量300):5.2質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を88℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を62℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が51質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-1」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP-1のNCO含有率は18.8質量%、数平均分子量は1180、平均イソシアネート基数は5.3であった。また、得られたポリイソシアネートP-1について1H-NMR分析を行い、イソシアヌレート基が存在することを確認した。
【0149】
[合成例2]
(親水性化合物変性ポリイソシアネートP-2の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、ポリイソシアネートP-1:100質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):13質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):15質量部(ポリイソシアネートP-2のイソシアネート基100モル%に対して5モル%となる量)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.08質量部を混合し120℃で2時間撹拌して、親水性化合物変性ポリイソシアネートP-2を得た。得られたポリイソシアネートP-2のNCO含有率は14.0質量%、平均イソシアネート基数は5.0であった。
【0150】
[合成例3]
(ブロックポリイソシアネートBL-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2で得られたポリイソシアネートP-2:100質量部、マロン酸ジイソプロピル:63.9質量部(NCO基100モル%に対して102モル%)を仕込み、さらに、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて、固形分が60質量%となる割合で調製した。次いで、攪拌しながら、ナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部を滴下した後、溶液温度が55℃となるよう外浴を調整し、55℃で5時間ブロック化反応させ、固形分60質量%の、ブロックポリイソシアネート組成物中間体を得た。その後、2-メチル-2-ブタノール:75質量部(ブロックイソシアネート基に対して250モル%)を添加し、発生したイソプロピルアルコールを常圧下蒸留により、取り除きながら、80℃で3時間反応させた。その後、さらに、60℃で減圧下(50kPa)、イソプロパノール、及び2-メチル-2-ブタノールを留去し、最後に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を添加することで、固形分を60質量%に調整し、ブロックポリイソシアネート成分BL-1を得た。
【0151】
合成例3により製造したブロックポリイソシアネート成分BL-1について、具体的な構造と組成を表1に示す。
【0152】
【0153】
<塗料組成物の製造>
[実施例1]
(塗料組成物T-1)
合成例3で得られたブロックポリイソシアネート成分BL-1を16g容器に測り取った。次いでノニオン系分散剤D1:ニューコール714(日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、グリフィン式より算出されたHLB値が15.0)を、その総量がブロックポリイソシアネートの樹脂分の6重量%となる重量で、ブロックポリイソシアネートに添加した。次に脱イオン水を固形分が40質量%となる割合で加え、プロペラ羽を用いて800rpmで10分攪拌した。
次にアクリルポリオール水分散体(樹脂あたりの水酸基価:130mgKOH/g、自社製)を、ポリオール中の水酸基のモル量に対する、イソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が0.03となる割合で加えた。塗料組成物中の固形分が30質量%となる割合で脱イオン水を加え、プロペラ羽根を用いて700rpmで10分間撹拌した。最後に、塗料組成物のpHが8.2となるようトリエチルアミンを添加し、700rpmで10分間撹拌し、塗料組成物T-1を得た。作製した塗料組成物T-1を用いて、上記記載の方法を用いて評価を行った。結果を表2に記載する。表2中、「TEA」はトリエチルアミンを示す。
【0154】
[実施例2~4、7~9、比較例1]
ポリオール中の水酸基のモル量に対する、イソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)を表2に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、実施例2~4、7~9、比較例1の塗料組成物(T-2~T-4、T-7~T-10)をそれぞれ得た。作製した各塗料組成物を用いて、上記記載の方法を用いて評価を行った。結果を表2に記載する。
【0155】
[実施例5]
合成例3で得られたブロックポリイソシアネート成分BL-1を16g容器に測り取った。次いでノニオン系分散剤D2:ニューコール714(日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、グリフィン式より算出されたHLB値が15.0)とノニオン系分散剤D3:ニューコール704(日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、グリフィン式より算出されたHLB値が9.2)を、その総量がブロックポリイソシアネートの樹脂分の6重量%となる重量で、さらにD1とD2の平均HLB値が15となる割合で、ブロックポリイソシアネートに添加した。次に脱イオン水を固形分が40質量%となる割合で加え、プロペラ羽を用いて800rpmで10分攪拌した。
【0156】
次にアクリルポリオール水分散体(樹脂あたりの水酸基価40mgKOH/g、樹脂あたりの酸価13mgKOH/g、Tg20℃、数平均分子量100,000、樹脂固形分42質量%)を、ポリオール中の水酸基のモル量に対する、イソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が0.3となる割合で加えた。塗料組成物中の固形分が30質量%となる割合で脱イオン水を加え、プロペラ羽根を用いて700rpmで10分間撹拌した。最後に、塗料組成物のpHが8.2となるようトリエチルアミンを添加し、700rpmで10分間撹拌し、塗料組成物T-5を得た。作製した塗料組成物T-5を用いて、上記記載の方法を用いて評価を行った。結果を表2に記載する。
【0157】
[実施例6]
合成例3で得られたブロックポリイソシアネートを16g容器に測り取った。次いでノニオン系分散剤D1:ニューコール714(日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、グリフィン式より算出されたHLB値が15.0)を、その総量がブロックポリイソシアネートの樹脂分の6重量%となる重量で、ブロックポリイソシアネートに添加した。次に脱イオン水を固形分が40質量%となる割合で加え、プロペラ羽を用いて800rpmで10分攪拌した。
【0158】
次にアクリルポリオール水分散体(樹脂あたりの水酸基価:130mgKOH/g、自社製)を、ポリオール中の水酸基のモル量に対する、イソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が0.3となる割合で加えた。塗料組成物中の固形分が30質量%となる割合で脱イオン水を加え、プロペラ羽根を用いて700rpmで10分間撹拌した。最後に、塗料組成物のpHが8.2となるようN-エチルモルホリンを添加し、700rpmで10分間撹拌し、塗料組成物T-6を得た。作製した塗料組成物T-6を用いて、上記記載の方法を用いて評価を行った。結果を表2に記載する。表2中、「NEMO」はN-エチルモルホリンを示す。
【表2】
【0159】
[評価5]
(耐溶剤性)
得られた塗料組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、表3に記載の所定温度、所定時間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜の耐溶剤性の測定を行なった。産業用ワイパー3cm×3cmを4枚重ねにして、その上に表に記載の各種溶剤を0.5g滴下し、10分間25℃環境下で放置した。放置後に産業用ワイパーを取り除き、塗膜の外観を確認した。評価結果がC以上であるものを低温短時間条件下での硬化性が良好であると評価した。
【0160】
(評価基準)
A:溶剤ふき取り後の跡残りなし
B:試験部分の半分以下の面積で塗膜の変色が認められる
C:試験部分の半分以上の面積で塗膜の変色が認められる
D:塗膜の溶解が認められる
【0161】
[実施例1~4、6~9、比較例1]
上記の実施例1~9及び比較例1について、耐溶剤性の評価を行った。結果を表3に記載する。
【0162】
[比較例2]
アクリルポリオール水分散体(樹脂あたりの水酸基価:130mgKOH/g、自社製)の固形分が30質量%となる割合で脱イオン水を加え、プロペラ羽根を用いて700rpmで10分間撹拌した。塗料組成物のpHが8.2となるようトリエチルアミンを添加し、700rpmで10分間撹拌し、塗料組成物T-11を得た。作製した塗料組成物T-11を用いて、耐溶剤性の評価を行った。結果を表3に記載する。
【0163】