IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173599
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 55/02 20060101AFI20241205BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L55/02
C08L67/00
C08L101/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193294
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】112120279
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】112132282
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA013
4J002BB035
4J002BB203
4J002BN151
4J002BN164
4J002CF062
4J002FD175
4J002FD204
4J002FD313
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炭素排出量を削減しつつ機械的性能の向上を達成可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ABS樹脂と変性ポリエステル樹脂とを含む樹脂組成物であって、変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル材料と、相溶化剤と、強化剤と、結晶化抑制剤と、スリップ剤と、酸化防止剤とを含む。相溶化剤は、PP-MA、PE-MA、ABS-MA、E-MA-GMA、E-VA-GMA、POE-GMA、PE-GMA、ABS-GMA、又はそれらの組合せを含む。強化剤は、POE、MBS、PTW、又はそれらの組合せを含む。結晶化抑制剤は、IPAコポリエステル、IPA及びCHDMコポリエステル、PETG、PCTG、又はそれらの組合せを含む。スリップ剤は、ステアレート、ポリエチレンワックス、変性シリコーン、フッ素樹脂、又はそれらの組合せを含む。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系、フェノール系、ホスファイト系酸化防止剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABS樹脂と、
ポリエステル材料と、
PP-MA、PE-MA、ABS-MA、E-MA-GMA、E-VA-GMA、POE-GMA、PE-GMA、ABS-GMA、又はそれらの組合せを含む相溶化剤と、
POE、MBS、PTW、又はそれらの組合せを含む強化剤と、
IPAコポリエステル、IPA及びCHDMコポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート cо-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、又はそれらの組合せを含む結晶化抑制剤と、
ステアレート、ポリエチレンワックス、変性シリコーン、フッ素樹脂、又はそれらの組合せを含むスリップ剤と、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、又はそれらの組合せを含む酸化防止剤と
を含む、変性ポリエステル樹脂と
を含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して8重量%~18重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記強化剤の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して3重量%~10重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記結晶化抑制剤の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して2重量%~8重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記スリップ剤の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~2重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸化防止剤の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~1重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル材料の添加量は、前記変性ポリエステル樹脂の総重量に対して61.0重量%~86.8重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ABS材料の添加量は、前記樹脂組成物の総重量に対して60重量%~100重量%の範囲である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ABS材料と前記変性ポリエステル樹脂の総添加量は100重量%である、
請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリエステル材料は、未加工ポリエステルペレット、リサイクルポリエステルペレット、又はそれらの組合せを含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バランスのとれた機械的性能、光沢のある外観、電気メッキ適用性のため、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)は、家電製品、電動工具、電子機器、事務用品等を含む、様々な分野で広く用いられている。しかし、ABS樹脂には高い炭素排出量(約3.5kgCO/kg~4kgCO/kgの範囲)という問題がある。このため、環境意識が高まって製品中の炭素削減の要求が高まるにつれ、より低い炭素排出量の材料の導入又は置き換えを探求すべきである。
【0003】
具体的には、ABS樹脂と比較し、ポリエステル樹脂(PET樹脂)は比較的低い炭素排出量(約2.6kgCO/kg~3kgCO/kgの範囲)の利点を提供し、炭素排出量を約15%~35%削減することができる。また、リサイクルPET樹脂(RPET)では更に、リサイクル源に応じて、炭素排出量を未加工PET樹脂と比較して60%~90%、ABS樹脂と比較して70%~92%削減することができる。よって、PET樹脂のABS樹脂への導入は全体的な炭素排出量を効果的に削減することができる。しかし、PET樹脂をABS樹脂へ導入する場合には、両者の異なる特性のため、克服すべき課題がある。ABS樹脂は極性の低い非晶質プラスチックであり、PET樹脂は極性の高い結晶プラスチックである。この特性の不一致は、ABS樹脂とPET樹脂との相溶性が劣る結果となる。その結果、ABS樹脂へのPET樹脂の導入は、相分離をもたらし、これは製品の機械的性能を損ない、表面の光沢を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、炭素排出量を削減しつつ向上された機械的性能を達成可能な樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施形態において、ABS樹脂と変性ポリエステル樹脂とを含む樹脂組成物を提供する。変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル材料と、相溶化剤と、強化剤と、結晶化抑制剤と、スリップ剤と、酸化防止剤とを含む。相溶化剤は、PP‐MA、PE‐MA、ABS‐MA、E‐MA‐GMA、E‐VA‐GMA、POE‐GMA、PE‐GMA、ABS‐GMA、又はそれらの組合せを含む。強化剤は、POE、MBS、PTW、又はそれらの組合せを含む。結晶化抑制剤は、IPAコポリエステル、IPA及びCHDMコポリエステル、PETG、PCTG、又はそれらの組合せを含む。スリップ剤は、ステアレート、ポリエチレンワックス、変性シリコーン、フッ素樹脂、又はそれらの組合せを含む。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、又はそれらの組合せを含む。
【0006】
本発明の1つの実施形態によると、相溶化剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して8重量%~18重量%の範囲である。
【0007】
本発明の1つの実施形態によると、強化剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して3重量%~10重量%の範囲である。
【0008】
本発明の1つの実施形態によると、結晶化抑制剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して2重量%~8重量%の範囲である。
【0009】
本発明の1つの実施形態によると、スリップ剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~2重量%の範囲である。
【0010】
本発明の1つの実施形態によると、酸化防止剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~1重量%の範囲である。
【0011】
本発明の1つの実施形態によると、ポリエステル材料の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して61.0重量%~86.8重量%の範囲である。
【0012】
本発明の1つの実施形態によると、ABS材料の添加量は、樹脂組成物の総重量に対して60重量%~100重量%の範囲である。
【0013】
本発明の1つの実施形態によると、ABS材料と変性ポリエステル樹脂の総添加量は100重量%である。
【0014】
本発明の1つの実施形態によると、ポリエステル材料は、未加工ポリエステルペレット、リサイクルポリエステルペレット、又はそれらの組合せを含む。
【発明の効果】
【0015】
上記に基づき、本発明の1つ以上の実施形態において提供する樹脂組成物は、ABS樹脂系に変性ポリエステル樹脂(相溶化剤、強化剤、結晶化抑制剤、スリップ剤、酸化防止剤といった様々な添加剤を使用)を導入する。これは、両者の間の劣った相溶性を改善し、対衝撃性、流動性、耐熱性を高める。その結果、炭素排出量を削減しつつ、向上された機械的性能を達成することができる。
【0016】
本発明の上記特徴及び利点をより理解しやすくするため、以下に実施形態を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明において、本発明の様々な原理の完全な理解を提供するため、特定の詳細を開示する例示的な実施形態を、限定ではなく説明のために述べる。ただし、本発明の恩恵を受ける当業者にとって、本発明がここで説明する特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施され得ることは明らかであろう。加えて、本発明の様々な原理の説明を曖昧にしないよう、周知の装置、方法、及び材料の説明は省略する場合がある。
【0018】
本発明において、「ある数値~もう1つの数値」により表される範囲は、本明細書において範囲中の全ての数値を列記するのを避けるための概略的表現である。このため、本明細書において任意の数値及びより小さな数値範囲が明示的に述べられている場合と同様に、特定の数値範囲の記述は、数値範囲中の任意の数値と、数値範囲中の任意の数値により定義されるより小さな数値範囲をカバーする。
【0019】
範囲はここで、「約」1つの特定の値~「約」もう1つの特定の値として表現される場合があり、また、1つの特定の値及び/又はもう1つの特定の値と直線表現される場合がある。該範囲を表現するとき、もう1つの実施形態は、1つの特定の値から及び/又はもう1つの特定の値までを含む。同様に、ある値が先行する「約」を用いて近似として表現されるとき、該特定の値はもう1つの実施形態を形成すると理解される。更には、各範囲の端点はもう1つの端点に明らかに関係するか、もう1つの端点とは独立していると理解される。
【0020】
特に明記しない限り、数値範囲を定義するために本明細書で用いられる用語「~の間」は、記載された端点に等しい範囲及び記載された端点の間の範囲をカバーすることを意図している。例えば、サイズ範囲が第1の値と第2の値との間にある場合、サイズ範囲は、第1の値、第2の値、及び第1の値と第2の値との間の任意の値をカバーし得る。
【0021】
本明細書において、非限定的用語(例えば、可能である、することができる、又は他の類似の用語)は、必須でないか任意の実装、包含、添加、又は存在を指す。
【0022】
ここで用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、別途定義しない限り、本発明が属する技術分野における一般知識での意味又は一般的に理解される意味と同じ意味を有する。用語(一般的に使用される辞書で定義されている用語等)は、関連する技術的文脈における意味と一致する意味を持つとして説明されるべきであり、ここで明確に定義される場合を除き、理想化や過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0023】
本実施形態において、樹脂組成物はABS樹脂と変性ポリエステル樹脂とを含み、変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル材料と、相溶化剤と、強化剤と、結晶化抑制剤と、スリップ剤と、酸化防止剤とを含む。これにより、本発明の1つ以上の実施形態において提供する樹脂組成物は、ABS樹脂系に変性ポリエステル樹脂(相溶化剤、強化剤、結晶化抑制剤、スリップ剤、酸化防止剤といった様々な添加剤を使用)を導入する。これは、両者の間の劣った相溶性を改善し、対衝撃性、流動性、耐熱性を高める。その結果、炭素排出量を削減しつつ、向上された機械的性能を達成することができる。
【0024】
具体的には、添加剤の機能を以下に説明する。例えば、相溶化材はABS樹脂とポリエステル材料との間の相溶性を向上させ、ABS樹脂中に分散するポリエステル材料の比率を減少させ、大規模な相分離による耐衝撃性の大幅な低下を防止するために用いられる。このため、耐衝撃性を効果的に向上させることができる。強化剤は、ポリエステル材料の分散相の耐衝撃性を向上させるために用いられ、よって効果的に耐衝撃性を向上させることができる。結晶化抑制剤は、ポリエステル材料の結晶化速度を低下させ、結晶の相分離を防止するために用いられる。スリップ剤は、材料の流動性を向上させるために用いられ、射出成形時の流動性及び離型特性に貢献する。酸化防止剤は、材料の耐熱性及び加工性を向上させるために用いられる。このため、ポリエステル材料を添加剤で変性させることにより、変性ポリエステル材料をABS樹脂中に効果的に導入することができ、炭素削減の要件を満たしつつ良好な機械的性能及び加工性能を達成する。
【0025】
ここで、ポリエステル樹脂を変性させる方法は、例えば、ポリエステル材料を二軸押出機によって溶融状態に溶かすことと、溶融状態の変性ポリエステル樹脂を生成するため、ポリエステル材料に上述した添加剤を添加して均一に混合して添加剤とポリエステル材料とを分散させることとを含む。次に、溶融した変性ポリエステル樹脂をダイを通じて帯状に押し出し、本発明で提供する変性ポリエステル樹脂を取得するため、該帯を冷却水によってペレット化する。変性ポリエステル樹脂は、所望の製品を得るために、続いてABS樹脂ペレットとドライブレンド方式で混合され、押出成形又は射出成形されてよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0026】
ABS樹脂、ポリエステル材料、相溶化剤、強化剤、結晶化抑制剤、スリップ剤、及び酸化防止剤の詳細を以下に説明する。
【0027】
<ABS樹脂>
【0028】
いくつかの実施形態において、ABS樹脂はアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを適切な比率で共重合させることにより形成してよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。例えば、ABS樹脂の特定の例は、Formosa Chemicals & Fibre Corporationの製品AG12A0である。
【0029】
いくつかの実施形態において、ABS樹脂の添加量は、樹脂組成物の総重量に対して60重量%~100重量%の範囲であるが、これは本願における限定として解釈されるべきではない。ここで、樹脂組成物はABS樹脂と変性ポリエステル樹脂から成り、換言すれば、ABS樹脂と変性ポリエステル樹脂の総添加量は100重量%であるが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0030】
<ポリエステル材料>
【0031】
いくつかの実施形態において、ポリエステル材料は、未加工(virgin)ポリエステルペレット、リサイクルポリエステルペレット、又はそれらの組合せを含む。例えば、ABS樹脂はリサイクル性が劣ること、そしてリサイクルABS樹脂の応用は単に黒色製品の生成に限られることから、透明、白色、又は他色製品を生成するために応用することのできるポリエステル材料の良好なリサイクル性(安定して容易に区別可能なリサイクル源)は、リサイクルポリエステルペレットをABS樹脂系に導入することを可能とし、これはプラスチック削減及び材料炭素排出量の削減に貢献する。また、結果得られる製品は環境にやさしく多色である。ただし、これは本願における限定として解釈されるべきではない。この場合、リサイクルポリエステルペレットの機械的性能及び収縮率は未加工ポリエステルペレットのものと類似である。
【0032】
いくつかの実施形態において、リサイクルポリエステルペレットの供給源は、ボトル(例えば、PETボトル)用リサイクルペレット、ポリエステルフィルムからの生産廃棄物、工業用剥離フィルムからのリサイクル及び再生ポリエステルペレット、ポリエステル繊維からのリサイクルポリエステルペレット、電子トレイからのリサイクルペレット、包装トレイからのリサイクルペレット、又はそれらの組合せを含むが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリエステル材料が重合された後のポリエステル材料の固有粘度(IV)は0.6dL/g~0.86dL/gの範囲である。このように、ポリエステル材料が重合された後のIVの範囲内で、ポリエステル材料は分子鎖の長さを効果的に増加させて耐衝撃性といった特性を向上させることができるが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。ここで、IVはASTM D2857試験方法により判定される。ポリエステル材料のIVは、固体重合及び/又は液体重合を通じて向上させることができる。固体重合の具体的な実施方法には、必要とするIV(0.6dL/g~0.86dL/g)を達成するため、固体PET材料を低圧高温(150℃~180℃)プロセスにかけることを含んでよい。液体重合の具体的な実施方法には、固体PET材料を液状に溶かして、必要とするIV(0.6dL/g~0.86dL/g)に達するよう押出機において液状のPET材料に真空重合を行うことを含んでよく、続いて更なる加工のためにペレット化プロセスが行われてよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、ポリエステル材料の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して61.0重量%~86.8重量%の範囲であるが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0035】
<相溶化剤>
【0036】
いくつかの実施形態において、相溶化剤は、PP-MA、PE-MA、ABS-MA、E-MA-GMA、E-VA-GMA、POE-GMA、PE-GMA、ABS-GMA、又はそれらの組合せを含む。換言すれば、相溶化剤は上記グラフト共重合体の1つ以上であってよく、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0037】
いくつかの実施形態において、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する相溶化剤の添加量は、8重量%~18重量%の範囲である。例えば、向上した相溶化効果を達成するため、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する相溶化剤の添加量は10重量%~15重量%の範囲であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0038】
<強化剤>
【0039】
いくつかの実施形態において、強化剤は、POE、MBS、PTW、又はそれらの組合せを含む。換言すれば、強化剤は上記ポリマーの1つ以上であってよく、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。他の適切なACRが強化剤として用いられる可能性も高い。
【0040】
いくつかの実施形態において、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する強化剤の添加量は、3重量%~10重量%の範囲である。例えば、向上した強化効果を達成するため、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する強化剤の添加量は5重量%~8重量%の範囲であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0041】
<結晶化抑制剤>
【0042】
いくつかの実施形態において、結晶化抑制剤は、IPA共重合体、IPA及びCHDM共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート cо-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(例えば、PETG、PCTGであり、PETGとPCTGはCHDMの比率が異なる)、又はそれらの組合せを含む。換言すれば、結晶化抑制剤は上記重合体の1つ以上であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0043】
いくつかの実施形態において、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する結晶化抑制剤の添加量は、2重量%~8重量%の範囲である。例えば、向上した結晶化抑制効果を達成するため、変性ポリエステル樹脂の総重量に対する結晶化抑制剤の添加量は4重量%~6重量%の範囲であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0044】
<スリップ剤>
【0045】
いくつかの実施形態において、スリップ剤は、ステアレート、ポリエチレンワックス、変性シリコーン、フッ素樹脂、又はそれらの組合せを含む。即ち、スリップ剤は上述した材料の1つ以上であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。ここで、例えば、ステアレートはステアリン酸亜鉛を指し、変性シリコーンは表面改質シリカを指し、フッ素樹脂はPTFEを指す。
【0046】
いくつかの実施形態において、スリップ剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~2重量%の範囲である。例えば、向上した流動性を達成するため、スリップ剤の添加量は変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.5重量%~1重量%の範囲であってよいが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0047】
<酸化防止剤>
【0048】
いくつかの実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、又はそれらの組合せを含む。即ち、酸化防止剤は上述した材料の1つ以上であるが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。ここで、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤はAO-1010、AO-1076、AO-1315を指し、フェノール系酸化防止剤はAO-20及びGP-45を指し、ホスファイト系酸化防止剤はAO-168、AO-618、TNPPを指す。
【0049】
いくつかの実施形態において、酸化防止剤の添加量は、変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.1重量%~1重量%の範囲である。例えば、向上した酸化防止効果を達成するため、酸化防止剤の添加量は変性ポリエステル樹脂の総重量に対して0.3重量%~0.5重量%の範囲であるが、これは本発明における限定として解釈されるべきではない。
【0050】
本発明において提供されるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)と同等であることに注意されたい。
【0051】
発明の効果を詳しく説明するため、以下に実施例と比較例を提供するが、本発明の範囲は実施例において提供されるものに限定されない。
【0052】
各実施例及び比較例において生成されたASTM標準試験片を下記方法に基づいて評価した。
【0053】
比重:ASTM D792標準試験方法に基づいて測定した。
【0054】
耐衝撃性:ASTM D256標準試験方法に基づいて測定し、試験片が破壊箇所で耐えることのできる総エネルギーを表す値(kg-cm/cm)を取得した。値が高いほど、試験片の耐衝撃性(又は耐性)が高いことを示す。
【0055】
引張強度:ASTM D638標準試験方法に基づいて測定し、試験片が引張変形に耐えることのできる総エネルギーを表す値を取得した。値が高いほど、試験片の引張強度が高いことを示す。
【0056】
曲げ強度:ASTM D790標準試験方法に基づいて測定し、曲げ歪及び変形に対する試験片の耐性を表す値を取得した。値が高いほど、試験片の曲げ強度が高いことを示す。
【0057】
曲げ弾性率:ASTM D790標準試験方法に基づいて測定し、試験片が曲げ歪及び変形に耐えることのできる総エネルギーを表す値を取得した。値が高いほど、試験片の剛性が高いことを示す。
【0058】
熱変形温度(HDT):ASTM D648標準試験方法に基づいて測定し、試験片の熱変形に対する耐性を表す値を取得した。値が高いほど、試験片の熱耐性が高いことを示す。
【0059】
収縮率:ASTM D955標準試験方法に基づいて測定し、「収縮率」は金型からの冷却固化されたプラスチック製品の寸法と元の金型の寸法との間の差異(百分率)を指す。
【0060】
<比較例1~3と実施例1~2>
【0061】
ASTM標準試験片を射出成形法を通じて表1に示す比率の樹脂組成物を用いて作製し、試験片の機械的特性を試験した。表1において、変性ポリエステル樹脂の成分は、77重量%の変性ポリエステルペレット(0.8dL/gのIVを有し、そのリサイクル源は剥離フィルムリサイクルポリエステルペレット)、12重量%の相溶化剤(E-MA-GMA)、5重量%の強化剤(MBS)、5重量%の結晶化抑制剤(ポリ(エチレンテレフタレート cо-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート))、0.5重量%のスリップ剤(ポリエチレンワックス)、及び0.5重量%の酸化防止剤(AO-1010+AO-618、比率1:1)を含む。ここで用いられるABS樹脂は、Formosa Chemicals & Fibre Corporationの製品AG12A0であり、ここで用いられる未変性ポリエステル樹脂はNan Ya Plastics Corporationの製品PET-3380R(0.8dL/gのIVを有する)である。
【0062】
【表1】
【0063】
試験のために作製されたASTM標準試験片の関連する特性を試験し、表1に詳細を示した。比較例1~3と実施例1~2の結果を比較した後、次の結論が得られた。実施例1~2において、耐衝撃性以外の特性は比較例1~3と比較して類似でありつつ、耐衝撃性を効果的に向上することができる。このため、機械的性能に明らかな向上がある。具体的には、比較例2~3において提供された未変性ポリエステル樹脂をABS樹脂に導入する場合、相分離が発生し、よって耐衝撃性、引張強度、及びHDTに大幅な低下をもたらす。一方、実施例1~2において、相溶性の問題は様々な添加剤を通じて克服することができ、よって材料の機械的性能がABS樹脂のものと類似のレベルに維持されることを確実にする。
【0064】
上記に基づき、本発明の1つ以上の実施形態において提供される樹脂組成物は、ABS樹脂に変性ポリエステル樹脂(相溶化剤、強化剤、結晶化抑制剤、スリップ剤、酸化防止剤といった様々な添加剤と変性ポリエステル材料とを用いる)を導入する。これは、両者の間の劣った相溶性を改善し、耐衝撃性、流動性、耐熱性を高めることができる。その結果、炭素排出量を削減しつつ、向上した機械的性能を達成することができる。
【0065】
当業者にとって、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な改変や変形を成すことができることは明らかであろう。上記を鑑み、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、改変及び変形を包含することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の樹脂組成物は、ABS樹脂と変性ポリエステル樹脂との間の劣った相溶性を改善し、耐衝撃性、流動性、耐熱性を高めることができ、よって炭素排出量を削減しつつ機械的性能を向上させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABS樹脂と混合物から成る樹脂組成物であり
前記ABS樹脂の添加量は、前記樹脂組成物の総重量に対して60重量%~75重量%の範囲であり、
前記混合物は、
PETであり、添加量は、前記混合物の総重量に対して61.0重量%~86.8重量%の範囲であるポリエステル材料と、
PP-MA、PE-MA、ABS-MA、E-MA-GMA、E-VA-GMA、POE-GMA、PE-GMA、ABS-GMA、又はそれらの組合せを含み、添加量は、前記混合物の総重量に対して8重量%~18重量%の範囲である相溶化剤と、
POE、MBS、PTW、又はそれらの組合せを含み、添加量は、前記混合物の総重量に対して3重量%~10重量%の範囲である強化剤と、
IPAコポリエステル、IPA及びCHDMコポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート cо-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、又はそれらの組合せを含み、添加量は、前記混合物の総重量に対して2重量%~8重量%の範囲である結晶化抑制剤と、
ステアレート、ポリエチレンワックス、変性シリコーン、フッ素樹脂、又はそれらの組合せを含み、添加量は、前記混合物の総重量に対して0.1重量%~2重量%の範囲であるスリップ剤と、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、又はそれらの組合せを含み、添加量は、前記混合物の総重量に対して0.1重量%~1重量%の範囲である酸化防止剤
から成る
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル材料は、未加工ポリエステルペレット、リサイクルポリエステルペレット、又はそれらの組合せを含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【外国語明細書】