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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173623
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】H形鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/088 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B21B1/088 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220295
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023088458
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 将彰
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AC01
4E002AC03
4E002BA03
4E002BA04
4E002BB01
4E002CA18
(57)【要約】
【課題】ブレークダウン圧延機による粗圧延工程の工夫によって、仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができるH形鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】H形鋼の製造方法における粗圧延工程において、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4を仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf以下に造形する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼素材をブレークダウン圧延機によって粗圧延して粗形鋼片とする粗圧延工程と、該粗圧延工程で粗圧延された前記粗形鋼片を中間圧延機によって圧延して仕上圧延用の被圧延材とする中間圧延工程と、該中間圧延工程で圧延された仕上圧延用の前記被圧延材を仕上圧延機によって仕上圧延して製品寸法のH形鋼とする仕上圧延工程とを有するH形鋼の製造方法であって、
前記粗圧延工程において、前記H形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、前記粗圧延工程終了後の前記粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を前記仕上圧延工程後の前記H形鋼のフランジ部の目標フランジ幅以下に造形することを特徴とするH形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記粗圧延工程における前記圧延パスは、前記粗圧延工程における最終圧延パスであることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼の製造方法。
【請求項3】
前記粗圧延工程は、
前記H形鋼素材のウェブ部を厚さ方向に圧延し、かつ、前記H形鋼素材のフランジ部を幅方向に圧延するサイジング圧延工程と、
前記H形鋼素材のウェブ部の内幅を拡幅するウェブ拡幅圧延工程と、
前記H形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する前記圧延パスを有するエッジング圧延工程と、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のH形鋼の製造方法。
【請求項4】
前記ウェブ拡幅圧延工程に用いるウェブ拡幅圧延用孔型における前記H形鋼素材のフランジ部を幅方向に圧延するフランジ圧延部の孔型深さは、前記サイジング圧延工程に用いるサイジング圧延用孔型における前記H形鋼素材のフランジ部を幅方向に圧延するフランジ圧延部の孔型深さよりも浅いことを特徴とする請求項3に記載のH形鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗圧延工程、中間圧延工程、及び仕上圧延工程を備えたH形鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、H形鋼は、粗圧延工程、中間圧延工程、及び仕上圧延工程を経て製造される。粗圧延工程では、加熱炉で加熱されたH形鋼素材をブレークダウン圧延機によって粗圧延して粗形鋼片とする。中間圧延工程では、粗圧延工程で粗圧延された粗形鋼片を中間ユニバーサル圧延機及び中間エッジング圧延機によって圧延して略製品寸法となる仕上圧延用の被圧延材とする。仕上圧延工程では、中間圧延工程で圧延された略製品寸法となる仕上圧延用の被圧延材を仕上ユニバーサル圧延機によって仕上圧延して製品寸法のH形鋼とする。
【0003】
従来、この種のH形鋼の製造方法として、例えば、特許文献1乃至5に示すものが提案されている。
特許文献1に示すH形鋼用粗形鋼片の圧延方法は、二重可逆式圧延機によりH形鋼用粗形鋼片を圧延するに際し、ウェブ深さをそれぞれ同一の深さとした隣り合う2つ以上の造形孔型のうち粗形鋼片のウェブ高さにマッチする2つの造形孔型のウェブ部を共用し、粗形鋼片をこの共用する2つの造形孔型のウェブ部に跨った状態に挿通してフランジ幅を縮小圧延する段階を有するものである。
【0004】
この特許文献1に示すH形鋼用粗形鋼片の圧延方法によれば、フランジ幅縮小のための孔型が必要ないので、単一断面のビームブランクからウェブ高さが高く、しかもフランジ幅の狭いH形鋼を圧延することができる。
【0005】
また、特許文献2に示すH形鋼の圧延方法は、素材鋼片に、ブレークダウン圧延、粗ユニバーサル圧延およびエッジング圧延を行う粗圧延、仕上ユニバーサル圧延を順次施すH形鋼の圧延方法において、先材の仕上ユニバーサル圧延後もしくは粗ユニバーサル圧延後の長さ方向のフランジ幅分布を求める。そして、フランジ幅分布に基づいて次材に対する粗ユニバーサル圧延のフランジ厚み圧下率、ウェブ厚み圧下率のいずれかまたは両方を、先材の設定値を基準として変更するものである。
【0006】
この特許文献2に示すH形鋼の圧延方法によれば、特別な装置なしで、製品長さ方向のフランジ幅精度が良好なH形鋼を安定して製造することができる。
【0007】
また、特許文献3に示すH形鋼の圧延方法は、素材鋼片に、ブレークダウン圧延、粗ユニバーサル圧延およびエッジング圧延を行う粗圧延、仕上ユニバーサル圧延を順次施すH形鋼の圧延方法において、粗ユニバーサル圧延中、被圧延材の長手方向でフランジ厚み圧下率、ウェブ厚み圧下率のいずれか一方または両方を変化させるものである。
【0008】
この特許文献3に示すH形鋼の圧延方法によれば、製品長さ方向のフランジ幅精度が良好なH形鋼を安定して製造することができる。
【0009】
更に、特許文献4に示すH形鋼用粗圧延材のフランジ幅可変圧延方法は、孔底の幅方向中央に中央膨出部と中央膨出部の両側に溝部を形成した複数のフランジ拡幅孔型と、ウェブ部及びフランジ部を圧下する整形孔型とを有する二重孔型ロールを用い、矩形断面鋼片を素材としてH形鋼フランジ相当側面に割り込み・拡幅圧延した後、整形圧延を行うものである。そして、各フランジ拡幅孔型のうち第1孔型を除く孔型および整形孔型における最後パス後の被圧延材のフランジ幅を当該孔型の孔底幅より狭くし各孔型に被圧延材のフランジ相当部が充満しないように圧延するものである。
【0010】
この特許文献4に示すH形鋼用粗圧延材のフランジ幅可変圧延方法によれば、矩形断面のスラブを素材としてH形鋼の粗圧延材を二重孔型ロールを用いたブレークダウンミルで製造するに際して、ロール組替えをせずに一組のロール対のみでフランジ幅が異なりウェブ高さが等しい複数シリーズの粗圧延材を圧延することができる。
【0011】
また、特許文献5に示す形鋼用粗形鋼片の圧延方法は、素材から粗形鋼片を造形する粗造形圧延工程において、ウェブ高さを目的とする寸法となるまで拡大または縮小した後に、孔型ロールのウェブ部のフラットな部分を用いてフランジ幅を縮小するためのフランジ先端の圧下を行う際に、フランジ先端の圧下と造形孔型による造形圧延をそれぞれ所要回数もしくは交互に行うものである。
【0012】
この特許文献5に示す形鋼用粗形鋼片の圧延方法によれば、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる形鋼製品に対応する複数シリーズの粗形鋼片を、製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく造形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平2-207901号公報
【特許文献2】特開平11-151512号公報
【特許文献3】特開平11-156414号公報
【特許文献4】特開平2-169103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、H形鋼の製造に際しては、従来から、仕上圧延で製品形状となったH形鋼のフランジ幅がH形鋼の長手方向でばらついてしまい、製造の歩留まりが大きく低下するといった問題が存在する。
【0015】
図8には、仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向分布の一例が示されており、図8(a)にはH形鋼の長手方向の全長でフランジ幅が目標に対する公差範囲に入っている良好な例が示されている。また、図8(b)にはH形鋼の長手方向の先端部及び尾端部についてはフランジ幅が目標に対する公差範囲に入っているが、H形鋼の長手方向の中央部(定常部)についてフランジ幅が公差下限よりも小さくなっている悪い例が示されている。
【0016】
図8(b)に示すようなH形鋼の長手方向の中央部(定常部)についてフランジ幅が公差下限よりも小さくなっている場合、そのようなH形鋼については当然に製品とすることはできず不合格となるため、製造の歩留まりが大きく低下することになる。
【0017】
特許文献1に示すH形鋼用粗形鋼片の圧延方法の場合、フランジ幅縮小のための孔型が必要ないので、単一断面のビームブランクからウェブ高さが高く、しかもフランジ幅の狭いH形鋼を圧延することができる。しかし、仕上圧延後のH形鋼のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減する技術ではない。
【0018】
また、特許文献2に示すH形鋼の圧延方法の場合、特別の装置なしで、製品長さ方向のフランジ幅精度が良好なH形鋼を安定して製造することができる。しかし、このH形鋼の圧延方法の場合、中間圧延工程(粗ユニバーサル圧延工程)におけるフランジ厚み圧下率、ウェブ厚み圧下率のいずれかまたは両方を変更するもので、仕上圧延後のH形鋼の長手方向のフランジ幅を均一にする効果が少ないという課題があった。また、ウェブ高さが700mm以上、あるいはフランジ幅が350mm以上となる大きな断面寸法となるH形鋼を製造する場合に、H形鋼の長手方向のフランジ幅を均一にする効果が特に足りなくなる場合があった。
【0019】
また、特許文献3に示すH形鋼の圧延方法の場合も、製品長さ方向のフランジ幅精度が良好なH形鋼を安定して製造することができる。しかし、このH形鋼の圧延方法の場合も、中間圧延工程(粗ユニバーサル圧延工程)におけるフランジ厚み圧下率、ウェブ厚み圧下率のいずれか一方または両方を変化させるものであり、仕上圧延後のH形鋼の長手方向のフランジ幅を均一にする効果が少ないという課題があった。また、粗ユニバーサル圧延中に、H形鋼の長手方向でフランジ厚み圧下率、ウェブ厚み圧下率のいずれか一方または両方を変化させるものであって設備的にその技術を行うのが困難であるという課題があった。
【0020】
更に、特許文献4に示すH形鋼用粗圧延材のフランジ幅可変圧延方法の場合、矩形断面のスラブを素材としてH形鋼の粗圧延材を二重孔型ロールを用いたブレークダウンミルで製造するに際して、ロール組替えをせずに一組のロール対のみでフランジ幅が異なりウェブ高さが等しい複数シリーズの粗圧延材を圧延することはできる。しかし、仕上圧延後のH形鋼のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することはできない。
【0021】
また、特許文献5に示す形鋼用粗形鋼片の圧延方法の場合、同一の孔型ロールを用いて、フランジ幅の異なる形鋼製品に対応する複数シリーズの粗形鋼片を、製品疵の原因となる欠陥を発生させることなく造形することができる。しかし、仕上圧延後のH形鋼のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することはできない。
【0022】
なお、従来の通常のH形鋼の製造方法にあっては、特許文献4で開示されたように、ブレークダウン圧延機による粗圧延後の粗形鋼片のフランジ幅は製品フランジ幅よりも大きい寸法に仕上げ、中間ユニバーサル圧延機等による中間圧延以降でフランジ幅を製品寸法に近づけるように減じていくことが技術常識であった。
【0023】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ブレークダウン圧延機による粗圧延工程の工夫によって、仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができるH形鋼の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅が、図8(b)になってしまうような原因を探り、H形鋼の長手方向の中央部(定常部)を含む全長にわたってフランジ幅が目標に対する公差範囲内となるような解決策を見出すために、ブレークダウン圧延機による粗圧延条件に着目した。そして、粗圧延条件を種々の条件に変更して、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状がどのように変化するのかを調査した。
【0025】
その結果を図9に示す。図9は、粗圧延後の粗形鋼片の断面形状を示す図2(b)における矢印9で示す部分の拡大図である。
図9(a)は、粗圧延工程においてH形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設けず、粗圧延工程終了後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を仕上圧延工程後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅よりも30mm大きい寸法とする一般的な圧延条件でH形鋼素材を粗圧延した場合の、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状を示している。図9(a)において、長手方向中央部(定常部)のフランジ部(破線で示される)の断面積が、長手方向尾端のフランジ部(実線で示される)の断面積よりも小さくなっている。長手方向中央部のフランジ部のフランジ厚t4Mが130mm、長手方向尾端のフランジ部のフランジ厚t4Bが146mmであり、前者は後者よりも16mm小さくなっている。
【0026】
これに対して、図9(b)は、粗圧延工程においてH形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、粗圧延工程終了後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を仕上圧延工程後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅より30mm小さい寸法とする圧延条件でH形鋼素材を粗圧延した場合の、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状を示している。図9(b)において、長手方向中央部(定常部)のフランジ部(破線で示される)の断面積が、長手方向尾端のフランジ部(実線で示される)の断面積とほぼ同じになっており、長手方向でフランジ部の断面積が揃っている。この理由は、粗圧延工程においてH形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、粗圧延工程終了後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を仕上圧延工程後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅より小さい寸法とすることで、フランジ部の厚みが増厚し、長手方向でフランジ部の厚み及び幅が揃うことになるからである。長手方向中央部のフランジ部のフランジ厚t4Mが150mm、長手方向尾端のフランジ部のフランジ厚t4Bが158mmであり、前者と後者の差が8mmで図9(a)の場合よりも当該差が小さくなっている。
【0027】
図9(b)に示すように、長手方向中央部(定常部)のフランジ部の断面積が、長手方向尾端のフランジ部の断面積とほぼ同じになり、長手方向でフランジ部の断面積が揃う。これにより、中間圧延工程及び仕上圧延工程を経た仕上圧延後においてはフランジ部の厚みが長手方向において均一になるばかりでなく、フランジ部のフランジ幅が長手方向において均一に近づき、仕上圧延後のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができることになる。
【0028】
なお、図9(a),(b)においては、フランジ部の長手方向中央部(定常部)以外に長手方向尾端の断面形状が示されているが、フランジ部の長手方向先端についても長手方向尾端と同様の断面形状となることが確認されている。
【0029】
本発明は、この知見をもとになされたものであり、本発明の一態様に係るH形鋼の製造方法は、H形鋼素材をブレークダウン圧延機によって粗圧延して粗形鋼片とする粗圧延工程と、該粗圧延工程で粗圧延された前記粗形鋼片を中間圧延機によって圧延して仕上圧延用の被圧延材とする中間圧延工程と、該中間圧延工程で圧延された仕上圧延用の前記被圧延材を仕上圧延機によって仕上圧延して製品寸法のH形鋼とする仕上圧延工程とを有するH形鋼の製造方法であって、前記粗圧延工程において、前記H形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、前記粗圧延工程終了後の前記粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を前記仕上圧延工程後の前記H形鋼のフランジ部の目標フランジ幅以下に造形することを要旨とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るH形鋼の製造方法によれば、ブレークダウン圧延機による粗圧延工程の工夫によって、仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができるH形鋼の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係るH形鋼の製造方法が適用されるH形鋼の圧延設備の概略構成図である。
図2】粗圧延前のH形鋼素材、粗圧延後の粗形鋼片、及び製品形状のH形鋼の断面形状を説明するもので、(a)は粗圧延前のH形鋼素材の断面図、(b)粗圧延後の粗形鋼片の断面図、(c)は製品形状のH形鋼の断面図である。
図3】粗圧延工程におけるサイジング圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。
図4】粗圧延工程におけるウェブ拡幅圧延の様子を説明するもので、(a)はウェブ拡幅第1圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図、(b)はウェブ拡幅第2圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。
図5】粗圧延工程におけるエッジング圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。
図6】中間圧延工程及び仕上圧延工程を説明するもので、(a)は中間圧延工程における中間ユニバーサル圧延工程を説明するための断面図、(b)は中間圧延工程における中間エッジング圧延工程を説明するための断面図、(c)は仕上圧延工程を説明するための断面図である。
図7】仕上圧延後の製品となったH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向偏差と、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅から仕上圧延後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅を減算した値であるΔBとの関係を示すグラフである。
図8】仕上圧延後のH形鋼のフランジ部のフランジ幅の長手方向分布の一例を示し、(a)はH形鋼の長手方向の全長でフランジ幅が目標に対する公差範囲に入っている良好な例を示すグラフ、(b)はH形鋼の長手方向の先端部及び尾端部についてはフランジ幅が目標に対する公差範囲に入っているが、H形鋼の長手方向の中央部(定常部)についてフランジ幅が公差下限よりも小さくなっている悪い例を示すグラフである。
図9】粗圧延条件を種々の条件に変更して、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状がどのように変化するのかの調査結果を示すもので、(a)は、粗圧延工程においてH形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設けず、粗圧延工程終了後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を仕上圧延工程後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅よりも30mm大きい寸法とする一般的な圧延条件でH形鋼素材を粗圧延した場合の、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状を示すグラフ、(b)は、粗圧延工程においてH形鋼素材のフランジ部のフランジ幅だけを圧下する圧延パスを設け、粗圧延工程終了後の粗形鋼片のフランジ部のフランジ幅を仕上圧延工程後のH形鋼のフランジ部の目標フランジ幅より30mm小さい寸法とする圧延条件でH形鋼素材を粗圧延した場合の、粗圧延後の粗形鋼片のフランジ部の断面形状を示すグラフである。
図10】実施例において、本発明例1、本発明例2、比較例1、及び比較例2のそれぞれの製造方法で仕上圧延した後のH形鋼について、長手方向全長にわたる20点の位置のフランジ幅を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0033】
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0034】
図1に示すH形鋼の圧延設備1は、上流側から下流側に向けて、加熱炉2、ブレークダウン圧延機3、中間圧延機としての中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5、及び仕上圧延機としての仕上ユニバーサル圧延機6を順次配設してなる。
加熱炉2は、ブレークダウン圧延機3による粗圧延に供されるH形鋼素材(図2(a)参照)S1を所定温度に加熱する。
【0035】
H形鋼素材S1は、図2(a)に示すように、ウェブ高さ方向(図2(a)における左右方向)に延びるウェブ部S1Wと、ウェブ部S1Wのウェブ高さ方向の両端においてフランジ幅方向(図2(a)における上下方向)に延びる一対のフランジ部S1Fとを備えた鋼素材である。H形鋼素材S1は、連続鋳造でこの形状となるビームブランクをそのまま鋳造で製造する場合や、分塊圧延によってスラブからこの形状に造形される場合がある。
【0036】
H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅はW0で比較的短く、ウェブ部S1Wの厚みはT0で比較的厚い。また、H形鋼素材S1のウェブ高さはH0で比較的小さい。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅はB0で比較的大きく、フランジ厚はt0で比較的厚い。
ブレークダウン圧延機3は、加熱炉2からテーブルローラ(図示せず)上を搬送されたH形鋼素材S1を粗圧延して粗形鋼片(図2(b)参照)S2とする(粗圧延工程)。
【0037】
粗圧延後の粗形鋼片S2は、図2(b)に示すように、ウェブ高さ方向に延びるウェブ部S2Wと、ウェブ部S2Wのウェブ高さ方向の両端においてフランジ幅方向に延びる一対のフランジ部S2Fとを備えた鋼素材である。
【0038】
粗形鋼片S2のウェブ部S2Wの内幅はW4でH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅W0よりも大きく造形される。また、粗形鋼片S2のウェブ部S2Wの厚みはT4でH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの厚みT0よりも薄くなる。また、粗形鋼片S2のウェブ高さはH4でH形鋼素材S1のウェブ高さH0よりも大きく図2(c)に示す仕上圧延後の製品形状のH形鋼Hのウェブ高さHwに合わせた寸法に造形される。さらに、粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅はB4でH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅B0よりも小さく、かつ、仕上圧延後の製品形状のH形鋼Hのフランジ部Fのフランジ幅Bf(目標フランジ幅)よりも小さく造形される。また、粗形鋼片S2のフランジ部S2Fの厚みはt4でH形鋼素材S1のフランジ部S1Fの厚みt0よりも薄く、かつ、仕上圧延後の製品形状のH形鋼Hのフランジ部Fの厚みtFよりも厚く造形される。
【0039】
ここで、フランジ部S2Fの厚み(フランジ厚)は、フランジ高さ(幅)方向で分布を持つが、t4はその平均値を表している。
ブレークダウン圧延機3による粗圧延工程について、図3乃至図5を参照して詳細に説明する。図3は、粗圧延工程におけるサイジング圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。図4は、粗圧延工程におけるウェブ拡幅圧延の様子を説明するもので、(a)はウェブ拡幅第1圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図、(b)はウェブ拡幅第2圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。図5は、粗圧延工程におけるエッジング圧延の様子を、サイジング圧延用孔型、ウェブ拡幅第1圧延用孔型、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型とともに示す断面図である。
【0040】
ブレークダウン圧延機3による粗圧延工程は、サイジング圧延工程、ウェブ拡幅圧延工程、及びエッジング圧延工程を備えている。
サイジング圧延工程では、図3に示すように、ブレークダウン圧延機3に設けられた上圧延ロール31及び下圧延ロール32の周面に形成されたサイジング圧延用孔型33を用いて、複数パスでH形鋼素材S1のウェブ部S1Wを厚さ方向に圧延し、かつ、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延する。これにより、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの厚み(ウェブ厚)はT0からT1に減厚され、その厚み(ウェブ厚)T1に決定される。また、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅はW0からW1に拡幅される。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅はB0からB1に減幅される。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fの厚み(フランジ厚)はt0からt1に減厚される。また、H形鋼素材S1のウェブ高さはH0からH1に拡大される。
【0041】
また、ウェブ拡幅圧延工程は、図4(a)に示すウェブ拡幅第1圧延工程と、図4(b)に示すウェブ拡幅第2圧延工程とを備え、サイジング工程で粗圧延されたH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅を拡幅する。
【0042】
ウェブ拡幅第1圧延工程では、図4(a)に示すように、ブレークダウン圧延機3に設けられた上圧延ロール31及び下圧延ロール32の周面に形成されたウェブ拡幅第1圧延用孔型34を用いて、複数パスでサイジング工程で粗圧延されたH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅をW1からW2に拡幅する。この際に、H形鋼素材S1のウェブ高さはH1からH2に拡大される。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅はB1からB2となる。ただし、この例では、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部34aの孔型深さb2(図4(b)参照)は、サイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1(図4(b)参照)と同一であり、B2はB1にほぼ等しい。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fの厚み(ウェブ厚)はt1からt2となるが、t2はt1にほぼ等しい。さらに、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの厚み(ウェブ厚)はT1からT2となるが、ウェブ拡幅第1圧延工程では、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの積極的な厚み圧下は行われず、T2はT1にほぼ等しい。
【0043】
また、ウェブ拡幅第2圧延工程では、図4(b)に示すように、ブレークダウン圧延機3に設けられた上圧延ロール31及び下圧延ロール32の周面に形成されたウェブ拡幅第2圧延用孔型35を用いて、複数パスでウェブ拡幅第1圧延工程で圧延されたH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅をW2からW3に拡幅する。この際に、H形鋼素材S1のウェブ高さはH2からH3に拡大される。また、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fの厚み(フランジ厚)はt2からt3となるが、t3はt2にほぼ等しい。さらに、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの厚み(ウェブ厚)はT2からT3となるが、ウェブ拡幅第2圧延工程においても、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの積極的な厚み圧下は行われず、T3はT2にほぼ等しい。
【0044】
なお、この例では、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅はB2からB3に減幅される。ウェブ拡幅第2圧延用孔型35におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部35aの孔型深さb3(図4(b)参照)は、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部34aの孔型深さb2よりも浅くなっている。サイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1は、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部34aの孔型深さb2に等しい。このため、ウェブ拡幅第2圧延用孔型35におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部35aの孔型深さb3は、サイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも浅くなっている(b3<b2=b1)。
【0045】
このようにすることで、ウェブ拡幅圧延工程の際に、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅を圧下することができ、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅を長手方向でより均等化することができる。
【0046】
本実施形態の場合、ウェブ拡幅圧延工程は、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34を用いたウェブ拡幅第1圧延工程と、ウェブ拡幅第2圧延用孔型35を用いたウェブ拡幅第2圧延工程の2段階で行っているが、1つのウェブ拡幅圧延用孔型を用いて1段階で行っても、3つ以上のウェブ拡幅圧延用孔型を用いて3段階以上で行ってもよい。また、サイジング圧延工程で圧延されたH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅W1もしくはウェブ高さH1が、後述する中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5による中間圧延工程以降における粗形鋼片S2のウェブ部S2Wの内幅またはウェブ高さに合った孔型であれば、ウェブ拡幅圧延工程自体が不要である。
【0047】
また、エッジング圧延工程では、図5に示すように、ブレークダウン圧延機3に設けられた上圧延ロール31及び下圧延ロール32の周面に形成されたサイジング圧延用孔型33及びこれに隣接するウェブ拡幅第1圧延用孔型34を用いて、ウェブ拡幅圧延工程で圧延されたH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下し、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅を後述する仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部HFの目標フランジ幅以下に造形する。つまり、エッジング圧延工程において、ウェブ拡幅第2圧延工程で圧延されたH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下してフランジ幅をB3からB4に減幅する。この粗形鋼片S2のフランジ幅B4は、仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標のフランジ幅Bf(図2(c)参照)以下である。
【0048】
これにより、粗形鋼片S2のフランジ部S2Fの厚み(フランジ厚)が増厚し、長手方向でフランジ部S2Fの厚み及び幅が揃い、図9(b)に示すように、長手方向中央部(定常部)のフランジ部の断面積が、長手方向尾端のフランジ部の断面積とほぼ同じになり、長手方向でフランジ部の断面積が揃う。これにより、中間圧延工程及び仕上圧延工程を経た仕上圧延後においてはフランジ部の厚み(フランジ厚)が長手方向において均一になるばかりでなく、フランジ部のフランジ幅が長手方向において均一に近づき、仕上圧延後のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができる。
【0049】
このH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下するエッジング圧延工程は、本実施形態では、ウェブ拡幅圧延工程が終了した粗圧延工程における最終圧延パスで実施されている。これにより、孔型設計や圧延パススケジュールの設計が簡便となり、好ましい。ただし、このH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下するエッジング圧延工程の圧下パスは、粗圧延工程における最終圧延パスのみならず、最終圧延パス以前の圧延パスで実施されてもよい。例えば、孔型形状を変えてエッジング圧延工程の圧下パスをウェブ拡幅第1圧延工程とウェブ拡幅第2圧延工程の間に行ってもよい。
【0050】
中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5は、ブレークダウン圧延機3の下流側に設置され、図6(a),(b)に示すように、ブレークダウン圧延機3による粗圧延工程で粗圧延された粗形鋼片S2を圧延して略製品寸法となる仕上圧延用のウェブ部S3W及び一対のフランジ部S3Fを有する被圧延材S3とする(中間圧延工程)。なお、ここでいう略製品寸法とは、仕上圧延工程で被圧延材を製品寸法とすることができる寸法のことである。
【0051】
中間圧延工程は、図6(a)に示す中間ユニバーサル圧延機4による中間ユニバーサル圧延工程と、図6(b)に示す中間エッジング圧延機5による中間エッジング圧延工程とを含んでいる。
中間ユニバーサル圧延機4は、図6(a)に示すように、水平軸上を回転する上下一対の水平ロール41,42と、垂直軸上を回転する左右一対の竪ロール43,44とを有している。
【0052】
中間ユニバーサル圧延機4による中間ユニバーサル圧延工程では、リバース圧延で複数パスの圧延が行われ、図6(a)に示すように、水平ロール41,42により粗形鋼片S2のウェブ部S2Wの高さ方向の全面を板厚方向に圧下し、竪ロール43,44と水平ロール41,42の側面でフランジ部S2Fをその板厚方向に圧下する。
【0053】
また、中間エッジング圧延機5は、中間ユニバーサル圧延機4の下流側に設置され、図6(b)に示すように、それぞれが水平軸方向に大径ロール部及び小径ロール部を備えた上下一対の水平ロール51,52を備えている。
【0054】
中間エッジング圧延機5による中間エッジング圧延工程では、リバース圧延で複数パスの圧延が行われ、図6(b)に示すように、上下一対の水平ロール51,52の大径ロール部が中間ユニバーサル圧延された粗形鋼片S2のウェブ部S2Wを誘導し、小径ロール部がフランジ部S2Fの端面をその幅方向に圧下し、粗形鋼片S2を略製品寸法となる仕上圧延用の被圧延材S3とする。
【0055】
ここで、本実施形態においては、前述したように、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4を仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標のフランジ幅Bf以下に造形する。このため、中間エッジング圧延工程では、製品フランジ幅に合わせた中間エッジングの孔型深さ(上下一対の水平ロール51,52の小径ロール部間の距離)に対し、材料のフランジ部S2Fのフランジ幅が小さくなる。このため、中間エッジング圧延工程では、フランジ幅の圧下量がない(圧下量が0mm)となる圧延パスが発生する。
【0056】
しかしながら、粗圧延工程におけるエッジング圧延工程において、粗形鋼片S2のフランジ部S2Fの厚み(フランジ厚)を増厚させている。このため、中間ユニバーサル圧延機4による中間ユニバーサル圧延工程において、粗形鋼片S2のウェブ部S2Wの厚み圧下に対して、フランジ部S2Fの厚み圧下を相対的に大きくする「フランジ強圧下」がたやすく行える。「フランジ強圧下」を行うことで、中間ユニバーサル圧延でのフランジ部S2Fの幅広がりを促進させることができ、中間ユニバーサル圧延の後半パスではフランジ部S2Fのフランジ幅を製品フランジ幅よりも大きくすることができる。このため、中間エッジング圧延工程において、フランジ部S2Fのフランジ幅の圧下量を確保することができる。
【0057】
上記のとおり、中間ユニバーサル圧延工程で「フランジ強圧下」が行えるように、中間圧延工程でのフランジ部S2Fのフランジ総厚み圧下率Σrfとウェブ部S2Wのウェブ総厚み圧下率Σrwとの差Σrf-Σrwは、0.055以上であることが好ましく、0.060以上であることがさらに好ましい。
【0058】
ここで、中間圧延工程後のフランジ部S3Fのフランジ厚をtIとすれば、フランジ総厚み圧下率Σrfは、Σrf=(t4-tI)/t4と計算される。
【0059】
また、中間圧延工程後のウェブ部S3Wのウェブ厚をTIとすれば、ウェブ総厚み圧下率Σrwは、Σrw=(T4-TI)/T4と計算される。
通常、中間圧延工程後のフランジ部S3Fのフランジ厚tI及びウェブ部S3Wのウェブ厚TIは、製品のフランジ部Fのフランジ厚tF(図2(c)参照)及びウェブ部Wのウェブ厚Tw(図2(c)参照)から仕上圧延での必要な厚み圧下率を加味して決められる。したがって、Σrf-Σrwが前述した値となるように、粗形鋼片S2の段階でのフランジ部S2Fのフランジ厚t4及びウェブ部S2Wのウェブ厚T4を設定することが望ましい。
【0060】
また、仕上ユニバーサル圧延機6は、中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5の下流側に設置され、図6(c)に示すように、中間圧延工程で圧延された略製品寸法となる仕上圧延用の被圧延材S3を仕上圧延して製品寸法のH形鋼H(図2(c)参照)とする(仕上圧延工程)。
この仕上圧延工程を経てH形鋼Hは製造される。
【0061】
仕上ユニバーサル圧延機6は、図6(c)に示すように、水平軸上を回転する上下一対の水平ロール61,62と、垂直軸上を回転する左右一対の竪ロール63,64とを備えている。
仕上ユニバーサル圧延機6による仕上圧延工程では、上下一対の水平ロール61,62及び左右一対の竪ロール63,64によって被圧延材S3のウェブ部S3W及びフランジ部S3Fを製品寸法の厚みに圧下するとともに、フランジ部S3Fの角度おこしが行われる。これにより、図2(c)に示すように、ウェブ高さがHw、フランジ部Fのフランジ幅がBf、ウェブ部Wの厚み(ウェブ厚)がTw、フランジ部Fの厚み(フランジ厚)がtFの製品寸法のH形鋼Hが得られる。
【0062】
図7には、仕上圧延後の製品となったH形鋼Hのフランジ部Fのフランジ幅の長手方向偏差と、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4から仕上圧延後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bfを減算した値であるΔBとの関係が示されている。この図7は、製品形状のH形鋼Hの寸法につき、ウェブ高さHwが1000mm、フランジ部Fのフランジ幅が400mm、ウェブ部Wの厚み(ウェブ厚)Twが19mm、及びフランジ部Fの厚み(フランジ厚)tFが40mmとなるH形鋼で調査した結果を示すものである。
【0063】
図8に示すフランジ幅の公差上限と公差下限との差である公差は、上述寸法のH形鋼では±2mmであり、長手偏差3mm、すなわち長手方向における目標に偏差±1.5mmを目標とすると、図7を参照して、ΔBは0mm以下が好適であることを確認した。
このため、本実施形態に係るH形鋼の製造方法においては、粗圧延工程において、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する圧延パス(エッジング圧延工程)を設けている。そして、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4を仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf以下に造形するようにしている。
【0064】
ここで、「ΔBを0mm以下にする」という条件は、中間圧延工程でのフランジS2Fの幅広がりを従来よりも大きくとる、という条件をも成立させる。この条件によっても、製品段階でのフランジ幅Bf(仕上圧延後の目標フランジ幅と同等)を長手方向で揃える効果を発揮する。
【0065】
なお、ΔBをあまりにも小さくなるようにすると、中間圧延工程でのフランジ幅広がり量が足りなくなり、製品のフランジ幅Bfを確保できなくなる可能性が出てくる。したがって、ΔBは製品のフランジ幅Bfの-10%以上(-0.1Bf(mm)≦ΔB≦0(mm))とすることが好ましい。
【0066】
粗圧延工程においてエッジング圧延を行わない場合や粗圧延でエッジング圧延を行ってもその圧下量が少なくΔBが0mmを超える場合には、粗圧延でのエッジング圧延による「フランジ部S2Fの増厚」が不十分となる。すると、図9(a)に示すように、長手方向でフランジ部S2Fの厚み(フランジ厚)が揃わず、長手方向中央部(定常部)のフランジ部の断面積が、長手方向先尾端のフランジ部の断面積よりも小さくなる。このため、中間圧延工程及び仕上圧延工程を経た仕上圧延後においては、長手中央部(定常部)のフランジ幅が目標よりも小さくなってしまう。このような状況は、特に、ウェブ部Wの厚み(ウェブ厚)Twに対してフランジ部Fの厚み(フランジ厚)tFが相対的に厚い(tF/Tw≧2)の断面で発生しやすく、本願発明が特に有効となる。
【0067】
このように、本実施形態に係るH形鋼の製造方法によれば、粗圧延工程において、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する圧延パス(エッジング圧延工程)を設けている。そして、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4を仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf以下に造形するようにしている。
【0068】
これにより、粗形鋼片S2のフランジ部S2Fの厚みが増厚し、長手方向でフランジ部S2Fの厚み及び幅が揃い、長手方向中央部(定常部)のフランジ部の断面積が、長手方向尾端のフランジ部の断面積とほぼ同じになり、長手方向でフランジ部の断面積が揃う。これにより、中間圧延工程及び仕上圧延工程を経た仕上圧延後においてはフランジ部の厚み(フランジ厚)が長手方向において均一になるばかりでなく、フランジ部のフランジ幅が長手方向において均一に近づき、仕上圧延後のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るH形鋼の製造方法によれば、粗圧延工程における前述の圧延パスは、粗圧延工程における最終圧延パスであるので、粗圧延工程において、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する際の孔型設計や圧延パススケジュール設計を簡便なものとすることができる。
【0070】
また、本実施形態に係るH形鋼の製造方法によれば、粗圧延工程は、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wを厚さ方向に圧延し、かつ、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するサイジング圧延工程と、H形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅を拡幅するウェブ拡幅圧延工程と、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する圧延パスを有するエッジング圧延工程と、を含んでいる。
【0071】
これにより、粗圧延工程において、サイジング圧延工程でH形鋼素材S1のウェブ部S1Wを厚さ方向に圧延し、かつ、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延する。また、ウェブ拡幅圧延工程でH形鋼素材S1のウェブ部S1Wの内幅を拡幅する。更に、エッジング圧延工程でH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下する。これにより、粗圧延工程終了後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4を仕上圧延工程後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf以下に造形する。
【0072】
また、本実施形態に係るH形鋼の製造方法によれば、ウェブ拡幅第2圧延工程(ウェブ拡幅圧延工程)に用いるウェブ拡幅第2圧延用孔型(ウェブ拡幅圧延用孔型)35におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部35aの孔型深さb3は、サイジング圧延工程に用いるサイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも浅い。
【0073】
これにより、ウェブ拡幅圧延工程の際に、H形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅を圧下することができ、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅を長手方向でより均等化することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0074】
例えば、このH形鋼素材S1のフランジ部S1Fのフランジ幅だけを圧下するエッジング圧延工程の圧下パスは、粗圧延工程における最終圧延パスのみならず、最終圧延パス以前の圧延パスで実施されてもよい。例えば、孔型形状を変えてエッジング圧延工程の圧下パスをウェブ拡幅第1圧延工程とウェブ拡幅第2圧延工程の間に行ってもよい。
【0075】
また、ウェブ拡幅第2圧延工程に用いるウェブ拡幅第2圧延用孔型35におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部35aの孔型深さb3は、サイジング圧延工程に用いるサイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも浅くする必要は必ずしもない。
【0076】
また、サイジング圧延工程に用いるサイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも孔型深さを浅くするフランジ圧延部の孔型は、ウェブ拡幅第2圧延用孔型35に限らず、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34であってもよい。また、サイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも孔型深さを浅くするフランジ圧延部の孔型は、ウェブ拡幅圧延を1つのウェブ拡幅圧延用孔型を用いて1段階で行う場合、このウェブ拡幅圧延用孔型とすればよい。また、ウェブ拡幅圧延を3つ以上のウェブ拡幅圧延用孔型を用いて3段階以上で行う場合、3つ以上のウェブ拡幅圧延用孔型うちいずれかのウェブ拡幅圧延用孔型を当該孔型深さb1よりも孔型深さを浅くするフランジ圧延部の孔型とすればよい。
【0077】
また、H形鋼素材S1は、加熱炉2で加熱されたものに限らず、加熱してないものであってもよい。
また、中間圧延工程では、中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5を用いて粗形鋼片S2を圧延しているが、中間ユニバーサル圧延機4及び中間エッジング圧延機5に限らず他の中間圧延機を用いてもよい。
【0078】
また、仕上圧延工程では、仕上ユニバーサル圧延機6を用いて略製品寸法となる仕上圧延用の被圧延材S3を仕上圧延をしているが、仕上ユニバーサル圧延機6に限らず他の仕上圧延機を用いてもよい。
【実施例0079】
本発明の効果を検証すべく、以下の製造条件でH形鋼を製造し、その製造結果として製造(仕上圧延)されたH形鋼の長手方向の全長にわたるフランジ幅を測定した。
【0080】
<製造条件>
(1)H形鋼の目標製品断面寸法
断面呼称がH1000×400×19×40となるH形鋼。目標製品寸法がウェブ高さHw:1000mm、フランジ部Fのフランジ幅Bf:400mm(仕上圧延後のフランジ幅の目標は、熱寸で403.2mm)、ウェブ部Wの厚み(ウェブ厚)Tw:19mm、フランジ部Fの厚み(フランジ厚)tF:40mmとなるH形鋼Hを製造した。
【0081】
(2)粗圧延工程で使用した圧延ロール
粗圧延工程で使用された圧延ロールは、図3乃至図5に示す上圧延ロール31及び下圧延ロール32である。上圧延ロール31及び下圧延ロール32の周面には、サイジング圧延用孔型33、ウェブ拡幅第1圧延用孔型34、及びウェブ拡幅第2圧延用孔型35が形成されている。ウェブ拡幅第2圧延用孔型35におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部35aの孔型深さb3は、サイジング圧延用孔型33におけるH形鋼素材S1のフランジ部S1Fを幅方向に圧延するフランジ圧延部33aの孔型深さb1よりも5mm浅い。
【0082】
(3)H形鋼素材及び粗圧延後の粗形鋼片の寸法
H形鋼素材S1の寸法:ウェブ高さH0が1160mm、フランジ部S1Fのフランジ幅B0が540mm、ウェブ部S1Wの厚み(ウェブ厚)T0が140mm、フランジ部S1Fの厚み(フランジ厚)t0が210mmであった。
粗圧延後の粗形鋼片S2の寸法:粗圧延工程において、本発明例1、本発明例2、比較例1、及び比較例2の製造方法で上述のH形鋼素材S1を粗圧延した。
本発明例1、本発明例2、比較例1、及び比較例2のいずれの場合も、粗圧延工程において、サイジング圧延及びウェブ拡幅圧延(ウェブ拡幅第1圧延及びウェブ拡幅第2圧延)を行った。
【0083】
また、本発明例1、本発明例2、及び比較例1の場合は、ウェブ拡幅圧延の後にエッジング圧延を行い、粗圧延工程の最終パスでエッジング圧延を実施したが、比較例2の場合は、エッジング圧延は行わず、ウェブ拡幅圧延で粗圧延工程を終了した。
【0084】
本発明例1におけるエッジング圧延での圧下量については、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4が仕上圧延後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf(仕上圧延後のフランジ幅の目標は、熱寸で403.2mm)に対して13.2mm小さくなる圧下量であった。また、本発明例2におけるエッジング圧延での圧下量については、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4が仕上圧延後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf(仕上圧延後のフランジ幅の目標は、熱寸で403.2mm)に対して3.2mm小さくなる圧下量であった。更に、比較例1におけるエッジング圧延での圧下量については、粗圧延後の粗形鋼片S2のフランジ部S2Fのフランジ幅B4が仕上圧延後のH形鋼Hのフランジ部Fの目標フランジ幅Bf(仕上圧延後のフランジ幅の目標は、熱寸で403.2mm)に対して6.8mm大きくなる圧下量であった。
【0085】
その結果、粗圧延後の粗形鋼片S2の寸法については、本発明例1、本発明例2、比較例1、及び比較例2のそれぞれについて、ウェブ高さH4が1300mm、ウェブ部S2Wの厚み(ウェブ厚)T4が55mmであった。
【0086】
また、フランジ部S2Fのフランジ幅B4については、
本発明例1:390mm(ΔB=-13.2mm)
本発明例2:400mm(ΔB=-3.2mm)
比較例1:410mm(ΔB=+6.8mm)
比較例2:430mm(ΔB=+26.8mm)
であった。
【0087】
なお、上記のフランジ幅圧下条件で、フランジ部S2Fのフランジ厚t4は長手定常部で、
本発明例1:144mm
本発明例2:141mm
比較例1:137mm
比較例2:131mm
となる。中間圧延工程後のウェブ部S3Wの目標ウェブ厚TIは19.3mm、フランジ部S3Fの目標フランジ厚tIは41.2mmであり、Σrwは0.649で、(Σrf-Σrw)は、
本発明例1:0.065
本発明例2:0.058
比較例1:0.050
比較例2:0.036
となる。
【0088】
(4)粗圧延工程、中間圧延工程、及び仕上圧延工程での圧延パス数
粗圧延工程:サイジング圧延工程17パス、ウェブ拡幅圧延工程2パス、エッジング圧延工程2パスの合計21パスであった。
中間圧延工程:中間ユニバーサル圧延及び中間エッジング圧延それぞれで21パスであった。
仕上圧延工程:1パスであった。
【0089】
<製造結果>
図10に、本発明例1、本発明例2、比較例1、及び比較例2のそれぞれの製造方法で製造した仕上圧延後のH形鋼について、長手方向全長にわたる20点の位置のフランジ幅を測定した結果を示す。H形鋼の長手方向全長にわたる20点の位置は、H形鋼の長手方向全長を20等分した位置である。また、フランジ幅は一対のフランジ部のフランジ幅の平均値であり、測定値は冷間での測定値である。
【0090】
本発明例1(図10における〇:ΔB=-13.2mm)及び本発明例2(図10における△:ΔB=-3.2mm)の場合、目標のフランジ幅Bf:400mm、公差上限402mm、公差下限398mmに対し、長手方向全長にわたるフランジ幅が公差範囲内に入り、良好であった。
【0091】
これに対して、比較例1(図10における□:ΔB=+6.8mm)及び比較例2(図10における×:ΔB=+26.8mm)の場合、目標のフランジ幅Bf:400mm、公差上限402mm、公差下限398mmに対し、長手方向中央部(定常部)のフランジ幅が公差下限を下回る不合格品となった。
【0092】
なお、比較例1及び比較例2の粗圧延条件では、特許文献2に記載されたH形鋼の圧延方法を参照して、中間圧延でのパススケジュールの工夫を試みたが、どのようにしても、長手方向中央部(定常部)のフランジ幅を公差下限より大きくすることができなかった。
このようにして、本発明により、仕上圧延後のフランジ部のフランジ幅の長手方向のばらつきを低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0093】
1 H形鋼の圧延設備
2 加熱炉
3 ブレークダウン圧延機
4 中間ユニバーサル圧延機
5 中間エッジング圧延機
6 仕上圧延機
S1 H形鋼素材
S1W ウェブ部
S1F フランジ部
S2 粗形鋼片
S2W ウェブ部
S2F フランジ部
S3 被圧延材
S3W ウェブ部
S3F フランジ部
H H形鋼
W ウェブ部
F フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10